パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

5116R-001 貴重なEMAILが着信 やっと!の実機編

ようやくの実機編である。さすがに書き疲れた感が漂っているが、そんな時の特効薬は画像の見直しに尽きる。特に今回は白七宝焼文字盤の表面テクスチャーの表現が総てであって、誰の目にも違いが明らかになる捉え方を撮影力として求められた。と言うか自ら求めて自虐的に七転八倒して苦悶を味わってしまった。それでも何とか当初の目的は達成出来た様に勝手に思う。一方で、もう一度おんなじ撮影再現が困難な"危ういナァ技術レベル"を自覚させられる結果ともなってしまった。ともあれ画像を・・
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パテックのブランドロゴの盛り上がりが凄い。12時辺りのインデックスも肉厚な感じがする。ただ文字盤表面にエナメル感が無い。そうこれはRef.5116Rに似て非なるRef.5119JのWhite lacquered, black Roman numerals 白ラッカー塗り、黒ローマン文字(クラッシックなシリコン転写技法による)である。そうラッカーの盛り上がりはそれなりにしっかりとある。あって当たり前で、もし薄すぎれば下地の白が透けて最悪グレィッシュで不気味な黒になってしまう。漆黒にするにはこれぐらいの盛りが必要なのだろう。確か以前にどこかの時計雑誌で誰かが他ブランドに比べてパテックの転写文字の厚み(盛り)は非常に薄くエレガントに仕上げてあるウンヌン・・という記事があったが、一体他ブランドはどのくらい盛っているのか一度検証せねばならない。下はライティングを少し変えて同じくRef.5119J。文字盤表面はどこまでも平滑かつ均一である。
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そして次がいよいよ真打Ref.5116Rの御登場となる。まず画像をご覧召され・・
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う~ん、ようわからんノゥ!やたら汚いのはサファイアクリスタルを拭く余裕が無かったのですよ。でもパテックのロゴが明らかに転写プリントのRef.5119Jのそれとは異なってかなり薄い。それでいて下地の白が透ける気配が無いのは、焼結が塗りとは彩色においての性格が根本的に違うからだと思っている。そして恐らく不透明な釉薬を用いているのではないだろうか。
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少しライティングを変えた1枚。上と同じようだが2時から3時辺りにエナメル独特の表面感が見られる。ローマンインデックスもかなり焼かれて荒れた仕上がり感が見てとれる。しかしロゴもインデックスもあまりにも整然と描かれており、人が細密用の筆で書いたものとは思えない。たぶん黒い釉薬を転写手法で塗り付けたのではと想像している。で、さらにアレコレといじくっている内に次のような画像が撮れてしまった(注:"撮った"では無いのが残念!)。
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写真としては明度がおかしいし順光でも逆光でもない変てこな画像なのだがエナメルの表面感をほぼ全体で捉えた貴重なカット。この環境下で比較するために、Ref.5119Jを同様に撮りたかったのだが残念ながらどうやってみても叶わなかった。
仮に、皆様がどちらかの店頭で運良く白の塗りと焼きの文字盤を見る機会があっても肉眼ではほぼ絶対と言って良いほどその違いは判らないだろう。その場にルーペ(キズミ)があったらどうか?黒ならそれなりに見えるかもしれない。でも白文字盤の場合まず見えないが、上の画像のような表面状態に対する既視感を持っていれば光の当て具合の工夫である程度は見えるかもしれない。
最近の女優が4K画質の環境を「毛穴まで一体どうやって隠せというの・・」と嫌うような撮影を今回はやった。その意味ではこの荒れたエナメル文字盤を美しいと見るかどうかは意見が分かれるかもしれない。生身の人肌とアンドロイドの合成の肌をマクロレベルで較べてどっちが良いのか問われているようなもので答えようが無い問題かもしれない。ただ歩留まりの悪さ(結果、高額)とは反して陶磁器ゆえの圧倒的な耐光性が半永久的に文字盤変色を防いでくれる。此処に関しては塗りは全く歯が立たない。

エナメル文字盤の歴史を振り返ると一般的には1900年代前半の1920年代から1930年代の比較的短い期間に多数の高級時計ブランドが採用していたようだ。しかしその後は簡単で歩留まりの良い塗り文字盤が主流になる。そして1990年代になって機械式時計が徐々に復活してゆく中で、前回記事でも少し触れたユリス・ナルダンやヴァシュロン コンスタンタンなどが徐々に生産を復活し始める。
ところがパテックは1960年代から1970年代前半のスイス製機械式時計暗黒の時代にかなり生産数を減少させた以外は1900年代を通じてずっと精力的に各種エナメルダイアルを作り続けてきた。1950年代のアンティーククロワゾネワールドタイムが各オークションハウスで非常な高額で落札され続けているのも当時はパテックしか伝統の技を継承していなかった事が由縁の一つかもしれない。なぜにパテック フィリップは生産効率が悪く当時は市場性が疑われたような高難度の文字盤製作に拘り続けたのか?
それは明らかにスターンファミリーの出自に直結していると思っている。1932年、Ref.96(クンロク)がデビューしたまさにその年に現社長のティアリー氏から三代前(曾祖父)に遡ったジャン及びシャルルのフィリップ家の兄弟が同社の株主(実質経営者)となり、翌年の1933年にはPatek, Philippe & Cie S.A.(株式会社パテック, フィリップ社)が登記され創業家からの経営移譲が終了した。このスターン家は元々パテックにダイアルを供給してきたジュネーブの高級文字盤製作会社(スターン兄弟文字盤製作所)を営んでいたという経緯があった為にダイアルへの拘り方が半端では無い。
下画像はパテック フィリップ インターナショナルマガジンVol.ⅢNo.02 P.16-17に掲載されているスターン家4代である。左のモノクロは45歳のアンリ・スターン(1911-2002)、左下がその父シャルルで右下は叔父のジャン。右のカラー写真、上から当時専務だった42歳のフィリップ(1938‐)、社長アンリ71歳、そして現社長ティエリー(1970-)はたった10歳。
スターンファミリー4代008.jpg
シャルル・スターンの息子アンリ・スターンが1958年社長に就任し、その息子であるフィリップ・スターンは1993年にその役を継承した。そして2009年に現社長ティエリー・スターンがその任に着いている。時計のプロである前に彼らには文字盤命の遺伝子が受け継がれており、常に他ブランドとは一線を画したダイアルを求め続けるのだろう。恐らくこれからも・・

文字盤以外のRef.5116Rの特徴や詳細は紹介済みのRef.5119G-001とほぼ共通なのでそちらをご覧いただきたい。最後に一応は撮った裏蓋側の絵もご覧いただいて本稿を終了したい。
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Ref.5116R-001
ケース径:36mm ケース厚:7.93mm ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:RGのみ 
文字盤:本白七宝文字盤(Authentic white enamel)
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター
価格:税別 2,930,000円(税込 3,164,400円)2016年7月現在

Caliber:215PS

ムーブメントはパテックを代表する手巻キャリバー215PS。構成部品たった130個の完全熟成の名機に2006年に発表されたシリコン系素材Silinvar®「シリンバー」採用の革新的なSpiromax®スピロマックスひげゼンマイが搭載されたことで耐磁性と耐衝撃性が格段に向上している。まさにパテック フィリップの哲学"伝統と革新"を体現した頼もしいエンジンである。

直径:21.9mm 厚み:2.55mm 部品点数:130個 石数:18個 パワーリザーブ:44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

※最終画像以下のスペック等は過去記事のコピペ+修正なのだが、修正時に気づいたのがケース厚がRef.5119よりも0.5mmも厚くなっている事だ。インデックスとブランドロゴ部分は明らかにラッカーの塗りの方が厚く見えるので、結論として下地となる本白七宝そのものが塗りよりも分厚いという事になる。
これは前稿で触れたように0.5mmの金線の高さがベースの白七宝の厚みとされているのか、または反り返り防止策としての文字盤裏への捨てエナメル焼結による厚み増加なのか、あるいは焼結による真鍮文字盤自体の歪み防止の為に厚みそのものをうんと持たせているのか?実にエナメルの世界は深い。まだまだその扉を開けかけたぐらいなのか・・そのうちに焼きの現場を見れんもんかいノォ

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

『第一回パテック フィリップ展』のご案内
だいぶ先になりますが・・と言っていたが、いつの間にかもう一か月後となった今夏のお盆真最中8月11日(木・山の日)~15日(月)に当店初の『パテック フィリップ展』を開催いたします。カサブランカ流の"何か"が違う展示会イベントに出来ないかと日々無い知恵をしぼっております。是非ご期待下さい。詳細等が詰まりましたら順次ご案内申し上げます。
展示会期間中の土日13日14日の両日午後2時から「パテックフィリップに夢中」と題してライブトークイベントを実施いたします。正規輸入元のパテック フィリップ ジャパンからの特別ゲストを迎えて、突っ込みどころ満載のパテック フィリップの謎に乾はじめ当店スタッフががぶり寄ってゆきます。参加ご希望の場合は席(※本音は寄集めの椅子の都合で)に限りがありますので案内状送付希望を下記からいただき申し込み用紙にお名前等ご記入の上、FAXにてお申込み下さい。

※案内状(7月下旬発送予定)のご希望がございましたら、コチラからお問合せ下さい。


2016年7月17日現在 5116R-001 店頭在庫あります。
(パテック フィリップ在庫管理担当)岡田

Comments [2]

No.1

ちょうど先頃両者を検討し購入したところでしたので大変興味深く拝読しました。本稿に限らず素晴らしい考察に感心しきりです。

ジュネーブシールさま、コメントありがとうございました。コメントが非常に少ないので今頃になって気づきまして誠に失礼いたしました。公開にも操作が必要なため反映もさせていただけずご気分を害されたのではと反省しきりです。
大変励みになるご意見を頂戴し、ブログ継続への何よりの励みにさせていただきます。
今回の不手際にご容赦いただき今後ともご笑読いただければ幸いです。
本当にありがとうございました。

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