パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

2019ニューモデルその3

さて、やっとメンズ紹介が本稿で終了する。PATEK PHILIPPE SA 提供画像は確かに美しいが、手撮りのリアル感がやっぱり良いのではというのが相方のご意見。恐らく来年は3年ぶりに同伴でのバーゼル詣でになりそうだが、この口うるさい相方は、ひたすら時計を眺めて「ああだ!こうだ!」と批評ではなく単なる好悪をのたまうだけだ。決してメモ取りする訳でもなく、ましてや撮影やその補助なんてとんでもない。むしろ気になるサンプルを独り占めしてジャマされる事すらある。結局一人で撮って、説明はボイスレコーダーで録って、後で聞いてノートに書き下ろす"お一人様状態"は何も変わりそうにない。
さて、今年のメンズ パテック フィリップの一押しはどれだろう。色んなご意見があるだろうが、あくまで個人的には見た目ではノーチラス年次カレンダーのコスメティックチェンジRef.5726/1A-014。機械的にはアラーム・トラベルタイムRef.5520Pと迷うところながら、私的には本稿最後にご紹介するカラトラバ・ウイークリー・カレンダーRef.5212Aを押したい。

5726/1A-014 ノーチラス年次カレンダー
だいぶ前から噂では聞かされていたステンレスブレスレットモデルの従来カラー2色のディスコン、それと置き換えるかのような超人気色ブルー、ブラック・グラデーション文字盤のデビュー。元々それなりの人気モデルではあったが、パテック フィリップ公式HPで公開されるや翌日には朝から電話とメールの対応に追われまくった。結局バーゼル出発前で既に片手で足りないご登録が入り、帰国前には両手を超えてしまった。ブラックブルーマジックが此処までとは予想できなかった。
※提供画像には全体が写っているものが無く、下の横位置画像が文字盤をほぼ取り込んでいる
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で、現物はどうかと言うと"滅茶苦茶に良い!"。正直なところ個人的にコレクションしたいレベルで良い顔をしている。時計とは面白いもので全く同じ文字盤カラーでもケース素材や文字盤内の構成要素(インデックス、針、カレンダーやクロノグラフ等の付加機能の表示)で微妙に違う色に見える事が多々ある。SSノーチラスでは3針の5711/1A、プチコンプリケーション5712/1Aそして新製品年次カレンダー5726/1Aの各ダイアルは全く同じ色で塗装されているが、個人的には少しづつ異なって見えてしまう。
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年次カレンダーのシンメトリックなレイアウトと適度な表示量が相まって何とも言えぬええ感じのお色目がたまりません。

Ref.5726/1A-014
ケース径:40.5mm(10時ー4時方向) ケース厚:11.3mm 
防水:12気圧
バリエーション:SS SS(ブラック・グラデーション文字盤 ストラップ仕様)
文字盤:ブルー、ブラック・グラデーション 蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
ブレスレット:両観音クラスプ付きステンレス3連ブレス 抜き打ちピン調節タイプ
価格:お問合せ下さい

Caliber 324 S QA LU 24H/303
自動巻ムーブメント センターセコンド、日付、曜日、月、24時間表示 ムーンフェイズ
直径:33.3mm 厚み:5.78mm 部品点数:347個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

5168G-010 アクアノート・ジャンボ3針カレンダー
何とも言えないこの色目。好き嫌いがハッキリ別れるモノほど、のめり込む人のはまり込み度合いも強くなる。時計に限らず嗜好品的なモノに対する感情とはそんなものではないだろうか。
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このカーキグリーンと言う色目は2年前に発表され大きな話題を呼んだデビューモデルのブラック・グラデーションのブルーダイアルとは大いに異なる点が二つある。まず全くグラデーションが無いモノトーンカラーである。もう一点は完全なマット(艶無し)仕上げである事。
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個人的にはステンレス素材でこの文字盤設定であれば、それはえらい争奪戦になっていただろうと思う。一般的にはこのミリタリーイメージ全開の色目は実用性の高いステンレスにこそふさわしいと思うが、プレシャスな18金素材と組み合わせてしまうのがパテック フィリップ流。両素材の価格差がどうこうという問題ではなく、敢えてやってしまうところが凄い。誤解を恐れずに言えば、パテック フィリップだから変な意味で上から目線にはならずに、これもまた一興と受け止めて頂ける顧客層が存在するという事なのだろう。確かにこのモデルに魅せられた或る顧客様が表現された「抹茶色」という和の表現は実に言い得て妙で、酸いも甘いも知り尽くした良い意味で少しだけ"枯れ"感を備えた方にピッタリなのかもしれない。
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ストラップは熱帯地方でも劣化しにくい意味から《トロピカル》の名称で親しまれるラバーを主体としたコンポジット素材。カラーはカーキグリーンでこちらも文字盤同様に完全マット仕上げに徹している。但し、従来の経験から愛用の程にストラップには徐々に艶が出てくると思われる。と此処まで書いて、このストラップカラーに既視感が或る事に気づいた。 顧客様のお一人がアクアノート3針5167A(もちろん黒文字盤)用の付け替えストラップとしてこの色でご購入頂いていた事があった。何故か2018年度のストラップカタログにはメンズでの設定が無くなっていて、レディスのクォーツ3針アクアノート・ルーチェのみ注文可能とされている。さらに記憶を辿れば、確かにルーチェにはこのカーキという文字盤が過去にあったハズだ。うかつにも同系色の既存ストラップがあった事に此処でやっと気づかされた。そしてどちらかと言えばメンズ向けの色目ではないかという事にも。
バックルはアクアノート・ジャンボ・フライバック・クロノグラフやノーチラス永久カレンダー等の最近のモデルに採用されている新しい両観音クラスプが採用され、脱着の安全性と操作感が向上している。

Ref.5168G-001
ケース径:42.2mm(10-4時方向)ケース厚:8.25mm ラグ×美錠幅:22×18mm
防水:120m ねじ込み式リューズ仕様
バリエーション:WGWG(別文字盤有) 
文字盤:カーキグリーン 蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
ストラップ:カーキグリーン・コンポジット《トロピカル》ストラップ(ラバー)
クラスプ:アクアノート フォールドオーバー 

Caliber 324 S C
自動巻ムーブメント センターセコンド、日付表示
直径:27mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、ムーブについての過去記事はコチラから

5212A-001 カラトラバ・ウイークリー・カレンダー
この時計の評価は分かれそうである。顔(文字盤)は表示がテンコ盛りで好き嫌いが出そうだし、年間の第何週目という表示に世界中でなじみのある文化圏がどの程度或るのか良くわからないからだ。
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日本には明確な四季がある。落ち葉が寒風に舞って、居酒屋に"おでん、鍋もの始めました"等の品書きが出始めると嫌でも、新年までの短くなった日数を思い煩う日々がやってくる。でも、赤道直下の雨期乾季しかないところなら確かにこの手の時計は実用的かもしれない。特に一周360度で一年の針表示は、直感的に一年間の消化度合いがつかみ易いだろう。55秒辺りを針が指せば、これはこれで気忙しい日々の到来を嫌でも実感させられるだろう。
それで個人的にはどうかと聞かれれば、エンジンを大いに評価したい。ウイークリーカレンダーのモジュール部分では無くて、センターローター自動巻のベースムーブメントCal.324系に多大なる改良が加えられて誕生した新キャリバーCal.26-330系が素晴らしいと思う。
ポイントは3つあって、まずハック(時刻合わせ時の秒針停止機能)を備えた事。従来、日差の出る機械式時計に秒まで合わせる為のハック機能の必要性を疑問視していたパテック フィリップ。しかしシリコン系素材のスピロマックス製髭ゼンマイが殆どのムーブに搭載された今日では、元々優秀な精度を誇ったパテック フィリップのムーブメントは、衝撃や帯磁といったトラブルから来る精度不良とどんどん無縁になって来ている。実際に愛用のCal.324ベースの年次カレンダーは、悪夢の様な落下事件後も日差2秒以内と抜群の精度を保っている。此処まで高精度を保てればハックの意味は充分にあるだろう。
2番目はカレンダー調整の禁止時間帯を無くして24時間いつでもカレンダー変更を可能にした事。この部分はロレックスやブライトリングの自社ムーブメントが先行していたのでキッチリとキャッチアップしてきた感じだ。
最後は使用するオーナー様側には解り難いがメンテナンス性の向上に繋がるテコ入れが多々ムーブメントに加えられた事。中でも特徴的なのがサファイアケースバックからもしっかり視認出来る3番車の形状。従来は歯車に必要不可欠なアガキが引き起こしてしまう秒針のバックラッシュを防ぐ為に4番車のステンレススティール製の秒カナにベリリウム製の摩擦バネを押し付けるスタイルを採用していた。そのためにメンテナンス時には両者の耐久性度合いの優劣から摩耗しやすいベリリウム製押えバネの交換が頻繁に発生していた。

Cal.26_330_th_image_b.png
新キャリバーではLIGAプロセス(X線を用いて微細な部品を形成加工する手法、詳しくは難解すぎて理解に至らず)で作られた全く新しい歯を持つ3番車を採用。従来の一つの歯を二つに分離することで従来のアガキと言う概念がこの歯には無い。また分離された片方の歯がバネの役割を果たすため噛み合う秒カナ(4番車)との摩擦を大きく低減させつつ秒針のバックラッシュを完全になくしている。上のイメージ図(左側)からは何となく歯医者さんを想像させる感じで機能美的なものは無いが、実際に目視可能な右画像の歯車はユニークで機能美もしっかりある。その他にも改良は多々あって主ゼンマイの手動巻き上げ時のムーブメントへのセーフティ機構が随分とスペックアップされている。個人的には一旦アドバンストリサーチで出して話題性を盛り上げれば良いくらい先進的な技術革新テンコ盛りだと思うのですが・・
それにつけても思うのは、セイコーがアンクル・ガンギ製作に採用しているMEMS(メムス)の技術もLIGAプロセスに似ており、従来の微細で高精度な部品作りが工作機械による型抜きや、優秀な職人による手作業と言う物理的かつアナログ的だったものに対して、様々なブランドが化学的などちらかと言うとデジタル的な新手法を駆使して、アナログの権化のような機械式腕時計作りを競っている状況は、アイロニーと言うかユーモアが効いている感じだし、とても素敵なことだと思う。
因みにこのムーブメントは既存の超人気モデルノーチラス3針Ref.5711にもベースキャリバーCal.26-330 S Cとして搭載され始めている。
両機の主要部を上下に並べて比較してみよう。
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上は従来機Cal.324 S C系 、下が新しいCal.26-330系。ローター軸左の下層部に覗く特徴的な3番車の違い以外もじっくり見てゆくと面白い。ローターの固定方法が全く違う、その固定部分の下側の切替車の形状とその固定方法は逆に今までのローター固定仕様と入替った様に見える。
尚、新型機では一般的な自動巻時計が苦手としてきたリューズの手動ゼンマイ高速巻上げ時の高トルクによる巻上げ機構への負荷から来るトラブルをクラッチ形式の見直しや減速歯車を投入することで大きく改善している。

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今後はノーチラスRef.5711のみならず色んなリファレンスでCal.324からCal.26-330への置換えがなされるのだろう。性能は確かに進化形のCal.26-330がよさそうだが、Cal.324には2004年の初出からセンターローター自動巻基幹キャリバーを担ってきた実績と言うアドバンテージがある。車で言えば「新しいエンジンの搭載車は一年間様子を見てから・・」という格言がある。
ただ先に触れたように本当に市場でのテストが必要であればアドバンストリサーチと言う引き出しが有るのだから、パテック フィリップの技術陣はこの新しいキャリバーに相当の自信を持っているのだろう。
そして324の進化としながらも1970年のCal.350に遡る300番代の三桁のキャリバー名称ではなく、同社の自動巻初号機1953年初出Cal.12-600ATの2桁ハイフン3桁スタイルへとまるで先祖帰りしたような名付けをしてきた事は実に興味深い。
やはり300系列のマイナーチェンジではなくて完全なフルモデルチェンジとの意気込みが感じられる。ちなみに26はキャリバーのケーシング径26.6mmから、330は厚さである3.3mmに由来する。但し総径は27mmなので従来機Cal.324と変わらない。
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左がCal.324、右がCal.26-330。画像が小さく見づらいが、TWENTY・NINE 29 で始まる石数の表示が新エンジンでは30石に変更されている。また"高低温下6姿勢での歩度調整済み"の文字刻印のレイアウトも微妙に変わっている。ちなみ基幹ベースキャリバーの総部品数は新しいCal.26-330が212個と1つ少なくなった。
飛躍を遂げた新キャリバーも、熟成を重ねた従来機も、それぞれに素晴らしいのだが、そのパワーリザーブが最長で45時間に留まっている事には少し改善を希望したい。多くの時計愛好家にとって全てのコレクションを日々順繰りに愛用してゆくというよりは、メインの実用モデル数個をその日の気分、服装、場面や会う人などを想定して着替えるというのが現実ではなかろうか。その際に昨今増えてきた自動巻キャリバーの70時間前後のパワーリザーブと言うのは凄く実用性が高い。個人的にはたった1日分程度の延長が凄く便利だと思う。ワインダーの弊害が色々なブランドで指摘されるようになった最近は、なおさらそれが望まれる。

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カレンダー部分のメカニカルなうんちくは有るがパテック フィリップの技術力からしてこの部品数92個からなるウイークリーカレンダーモジュールの設計・製造はそんなに困難だったとは思えない。それよりも機械の事ばかりになったので独特な文字盤について見てゆきたい。
面白いのは暖かみのあるクリーム色っぽい文字盤上に転写された手書き風の文字達だ。実際にパテック フィリップの社内デザイナーが手書きで書き起こし、ティエリー・スターン社長自らが採用を決めたという肝入りの書体である。曜日も月もその天地左右のスペースは同じなのだが描かれる文字数は異なる。そのために同じ文字、例えば"Y"でも様々な横幅の"Y"が出て来て実に面白い。一般に目にする外国の方々の手書き文字と言うのは癖が非常に強くて読みづらく感じる。でもこの書体は習字の楷書レベルに感じるし、何より読みやすく親しみを持てる。そして数字の"7"のお腹に横バーが入っているのも何とも微笑ましい。
書き込むほどに自分自身が、このニューモデルのファンになって来ている。初見でピンと来ずとも、やがて徐々に気になって声を掛けて・・いや、違う。そうではなくて、このモデルもまぎれもなくそんな"パテック マジック"を持ち合わせていると言う事だ。いつしか気に入ってしまう顔や姿かたちは、飽きの来ない恋女房になってしまうと言う訳だ。

Ref.5212A-001
ケース径:40mm ケース厚:10.79mm ラグ幅:20mm
防水:30m サファイアクリスタル・バック
ケースバリエーション:SSのみ 
文字盤:シルバー・オパーリン文字盤、転写によるブラック手書き書体
インデックス:酸化ブラック仕上18金WGインデックス
時分針:酸化ブラック仕上18金WGドフィーヌハンド
ストラップ:ハンドステッチ・ライトブラウン・カーフスキン
クラスプ:ピンバックル 

Caliber 26-330 S C J SE
自動巻ムーブメント センターセコンド、日付、曜日、週番号表示
直径:27mm 厚み:4.82mm 部品点数:304個 石数:50個
※ケーシング径:26.6mm
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責・撮影:乾 画像提供:PATEK PHILIPPE SA 





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