パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

手巻き 一覧

カラトラバ5196P

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今月はユニークなレアモデルが連続で入荷してくる。前回の年次カレンダーレギュレーターRef.5235と同様に展示会サンプルが無い(来た事が無い)手巻きカラトラバのクンロクケースのRef.5196P。モデル的にはパテックを代表するシンプルウオッチの極みでどちらの正規店でも最低一本は何色かの18金モデルが並んでいるド定番。ところがプラチナは製造数が極めて少ないらしく入荷予定が全く読めないレアモデルとなっている。
上の画像でリーフ針とブレゲスタイルのアラビアインデックス、さらにベゼルもほぼ黒に見合える。だが、ラグを見るとケースはポリッシュ仕上げされており撮影時にブラックアウトしたものと判る。
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角度を変えて実機に迫って撮るとブラックアウトするもののだいぶ印象は変わる。ともかくこの仕様は撮影が困難なので実機を見るに限るが、殆ど並ばないので今は"チャンス!"
6時の真下にはケースにラウンドダイアモンドがプラチナ製である証として埋め込まれている。これは現会長のフィリップ・スターン氏が1970年代にご自分のプラチナウオッチにカスタムで埋め込んだものが社内で評判になり標準仕様となったものである。
さて、この少しノスタルジックな文字盤は完全な復刻デザインである。カラトラバ初号機Ref.96がリリースされた1932年のわずか6年後の1938年から1960年代にかけて長く製造されたRef.570の40年代の代表的な文字盤だったようだ。
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右のプラチナ製は1992年にパテック社によって文字盤交換されているミュージアムピースで、針もインデックスも18金製で極めて現行の5196に近い。それもそのはずで注釈に2004年バーゼルでのRef.5196デビューの際の原型と説明されている。機械は当時の手巻きCal.12'''-120。厚さ4mm、直径26.75mm。現行のCal.215と比べると1.45mm厚く、4.85mmも大きいがケース径は35~36mmとわずかに小さい。厚みは現代の方が若干薄い。まあ当時は薄く小さくを心掛けたムーブを素直に頃合いのケースで包み込んでいた時代だったと思われる。今気づいたが1940年代初頭と言うのは第二次世界大戦の戦時下である。アラビアインデックスの採用には影響が有ったのかもしれない。
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久々に撮るソリッドな裏蓋。現行のほぼすべての機械式モデルが裏スケルトン仕様であるパテックコレクションの中で、正に希少なノーマルケースバックモデル。今年40周年のアニバーサリーイヤーを迎えたゴールデンエリプスの定番2型(RGとPT)とこちらの5196のみの特別仕様?になっている。
僅かに空気が入ったかのような保護シールもスケルトンモデルには無い特別感?が・・・
ラグの裏4か所には、下のピンバックル裏側と共にPT950のホールマーク等がしっかり刻印されている。
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イエローゴールドモデル紹介時にも撮った再度ビューを再撮影。個人的には最もパテックを代表する優美なフォルムだと思っている。リューズ左下側の不自然な修正はフォトショギブアップしました。修行の一環と言う事で・・
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18金モデルのバーインデックスに較べてアラビアインデックス+2トーンカラーダイアルの組合せは上品やエレガントと言うよりも遊び心が有って個性的である。それを敢えてプラチナケースでやると言うのがパテックの余裕。決して万人受けするモデルでは無いと思うが、一目惚れの人には堪らない魅力を感じさせる一本に違いない。

Ref.5196P-001

ケース径:37mm ケース厚:7.68mm ラグ×美錠幅:21×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:PTの他にYG,WG,RG,
文字盤:ツートーンシルバリィグレイ ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター

Caliber:215 PS

ムーブメントはパテックを代表する手巻キャリバー215PS。構成部品たった130個の完全熟成の名機に2006年に発表されたシリコン系素材Silinvar®「シリンバー」採用の革新的なSpiromax®スピロマックスひげゼンマイが搭載されたことで耐磁性と耐衝撃性が格段に向上している。まさにパテック フィリップの哲学"伝統と革新"を体現した頼もしいエンジンである。

直径:21.9mm 厚み:2.55mm 部品点数:130個 石数:18個 パワーリザーブ:44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2018年5月20日現在
YG 5196J-001 店頭在庫有ります
WG 5196G-001 お問い合わせください
RG 5196R-001 お問い合わせください
PT 5196P-001 店頭在庫有ります

店頭に中々在庫が持てないグランドコンプリケーションクラス。皆さんご存知だとは思うけれど時価(価格表でPrice on request表示のもの)となっているモデルは100%客注対応でほぼ受注生産に近く、サンプルすら日本には常備されていない。価格設定されているモデルでも生産数が極端に少なくて人気の高い数モデルについては、ある程度の購買実績を積み上げて、手続きを経ないと購入できない。例えばワールドタイムクロワゾネモデルRef.5131や永久カレンダースプリットセコンドクロノグラフRef.5204などがそれにあたり、もちろん在庫することは不可能だ。これら特別なタイムピースは撮影のチャンスもまず無いし、手に取ってじっくり見る事すら叶わないので、掘り下げたご紹介も難しい。このように閉鎖的とも見える現在の販売手法には批判的なご意見もあるが、あくまで個人的とお断りして色んな意味で″仕方がない"と思う部分と下駄履き絶対お断りというメゾン系ブランドが時計業界に一つ位はあっても良いように思っている。
結局グラコンで在庫したり紹介出来たりするのは永久カレンダーか今回紹介の永久カレンダークロノグラフあたりに限られてしまう。それでも前者が1,000万円前後、後者は約1800万円なので気軽にストックは出来る代物ではない。今回も展示会にやってきたサンプルをドタバタと撮影した。
以前にも書いたがパテックを代表する顔はたくさんあるが、手巻きの永久カレンダークロノグラフもその一つだと思う。パテック フィリップ マガジン各号のオークションニュースでは常連のように出品が多い。

まずシリーズ生産された最初の永久カレンダークロノグラフモデルは1941年~1951年(たぶん?)に281個製作されたRef.1518。画像は1943年製作のタイムピースで極めて希少性が高くイエローゴールドの時計としてのオークションレコードCHF6,259,000(=約7億千3百万円余り)で2010年にジュネーブで落札されている。
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ちなみに昨年11月に腕時計の世界最高落札価格は更新されている。これまたRef.1518(下)で、わずか4個体しか確認されていないステンレススチール製である。価格はCHF11,002,000(約12億5400万円余り)ヴィンテージウオッチの価値においては、希少性が材質や機能性をしばしば凌駕するようだ。尚、それまでのレコードホルダーはやはりパテック。ただしヴィンテージではなく2015年にオンリーウォッチ・チャリティー・オークションの為に1点製作されたやはりステンレス仕様のRef.5016Aだった。パテックだけがパテックを超えてゆく状態はいつまで続くのやら・・
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1951年以降は1518と同じレマニアのキャリバー13'''を搭載したRef.2499が登場した。インデックスはアラビア数字からバーになり、6時のカレンダーサークルが力強く大き目になった。2499は85年まで34年間の長きにわたって製作された。生産終了時には記念のプラチナ仕様が2個だけ1987年に製作され、1989年にパテック フィリップ創業150周年にオークション出品された。当時の落札価格がCHF24万(=約2,736万円)だったが2012年に14倍の価格CHF344万(=3億9千万円強)で落札されたのは著名なロックギタリストのエリック・クラプトンが長期間所有していたからである。尚、残るもう一つのプラチナモデルはパテック社のミュージアムピースとして収蔵されている。

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1986年からはレマニアの新しいクロノグラフキャリバーCH27-70系を採用したRef.3970がスタートした。それまでのCal.13'''と異なりうるう年表示と24時間表示がインダイアルに追加された。そんなに古いものではないのに画像が荒くて恐縮です。
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Ref.3970は18年間のロングセラーの後、2004年に後継機種Ref.5970にバトンを渡す。キャリバーCH27-70Qはヌーベルレマニアエボーシュの最後のエンジンとしてそのまま引き継がれたが、ケース形状についてはクラシカルとモダンの融合への挑戦がなされた。まずウイングレットと呼ばれる翼を模した段差付きのラグ形状は1942年発表のRef.1561からインスパイアされたとある。またクロノグラフプッシャー形状も華奢なラウンドから1518時代に採用が多かった少し武骨で大振りなスクエアボタンとなった。ボタン上下面のサテン仕上げが実に渋い。それらとは裏腹に内反りしたベゼルは知る限り2000年代になってからチャレンジングなモデルに共通して採用されている現代パテックの特徴的なデザインである。
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そして2011年、今回紹介のRef. 5270がようやく登場となる。このモデルチェンジではウイングレットラグやコンケーブベゼル等のケースデザインが5970からほぼ継承されたが、エンジンはパテック初の完全自社設計製造のマニュファクチュール度100%の新開発手巻きクロノグラフCal.CH29-535をベースとして永久カレンダーモジュールが組み込まれて搭載された。新キャリバーはポストレマニア時代を背負う自社開発クロノキャリバー3部作の最終発表の集大成キャリバーとして高い完成度を有していると思われる。新エンジンよって文字盤には若干の変更が加えらている。3時と9時のインダイアルがセンター針と横一線ではなくて少し6時側方向に下がった事で、4時のインデックスが歴代モデルで採用されていた短めのバーからピラミッドになった。うるう年が3時の指針から4時半の小窓の数字表示となり、24時間表示も9時の指針から7時半の窓表示された。結果的にインダイアルがすっきりし、視認性が格段に向上した。
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現行のRef.5270の詳細。まずウイングレットラグ。サンプルなので小キズや埃はご勘弁と言う事で・・
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サイドは当然それなりの貫禄。と言っても12.4mmはマザーキャリバーCH29-535PSを積んだRef. 5170(10.9mm厚)に加えること1.5mmで、ムーブメントの厚さ比較でも1.65mm差となっている。ただラグも含めてグラマラスなケースデザインからは数字以上の存在感を受ける。
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スクリュー(捻じ込み)構造のトランスペアレンシイのケースバックからは機械式時計一番の男前?正統派手巻きクロノグラフが堪能できる。各プッシャーと連動して正確無比に動作するレバー類のパフォーマンスは見飽きる事が無い。
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ご多聞に漏れずRef. 2499時代に迎えたスイス機械式時計暗黒時代1960年~80年代前半にはかなり生産数が絞られたようだが、1941年以来絶えることなく生産され続けているパテックの永久カレンダークロノグラフ。日常的に愛用されるシンプルな時刻表示機能に特化した腕時計がその時々の時代背景で様々な表情の流行り廃りを経験するのとは対照的に、贅沢かつ趣味性が強く蒐集指向もある為なのか殆ど顔が変わらずに脈々と作り続けられている永久カレンダークロノはやっぱり安心してお勧めできるパテック フィリップの代表格だと思う。

Ref.5270R-001

ケース径:41mm ケース厚:12.4mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RGのみ
文字盤:シルバーリィ オパーリン、ゴールド植字バーインデックス
ストラップ:手縫いマット(艶無)・ダークブラウン・アリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:税別 17,920,000円(税込 19,353,600円)2017年8月現在

Caliber CH 29-535 PS Q:手巻クロノグラフ永久カレンダームーブメント
瞬時運針式30分計、昼夜表示、コラムホイール搭載
直径:32mm 厚み:7mm 部品点数:456個 石数:33個 
パワーリザーブ:最低65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

2017年9月12日現在 ご予約対応となります。

文責:乾

Patek Philippe Internaional Magazine Vol.Ⅱ No.5 P.66 VolⅢ No.3 P.68 No.8 P.70 Vol.Ⅳ No.3 P.68
Wristwataches Martin Huber & Alan Banbery P.305

気がつけばもう8月も後半。今夏は梅雨明け以降で湿気がひどく寝苦しい夜が続いた。ところが盆を過ぎてからは夜が急に涼しくなり早朝足が攣ったり鼻かぜ気味になったりと体調管理が難しく厳しい夏だ。このやけに過ごしにくい粘着質の暑さはまだまだ続きそうなのだが・・皆様いかがお過ごしでしょうか。
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本日紹介は今年の新製品として初紹介となるRef.5170P-001。2010年にパテック フィリップ完全自社開発製造となる初の手巻クロノグラフムーブメントCH29-535PSを搭載してイエローゴールドのメンズモデルとして発売以来ホワイトゴールド、ローズゴールドとバリエーションが発表され今年初のプラチナ素材でのローンチとなった。この顔には既視感をお持ちの方も多いと思う。ケース形状は全く違うが昨年秋に発表されたノーチラス40周年限定モデルとして発表されたWGクロノグラフモデルとプラチナ3針モデルで採用された濃青色にバゲットダイアインデックスのコンビネーション。
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ノーチラスの文字盤には特徴的な横縞ボーダー柄があり、微妙な光の当たり加減によって作り出される魅惑的で多彩な表情に悩殺されっぱなしのノーチラスファンが跡を絶たない。5170PのダイアルはBlue sunburst black gradated 放射状の微細な刷毛目紋様の上に文字盤中心の青から円周部の黒へとグラデーションしている。手法は微妙に違うのだが色目の印象が非常に近くて派生モデルっぽく見える。
一般的に言ってメンズウオッチへのダイアモンド装飾はギラギラ感が押し出され過ぎる事が多く、好きな方はそれが魅力で着けておられる。パテックにおいてもベゼルへのダイアセッティイングモデルは存在感タップリで何処にも誰にも負けない立派なものです。ただ一連のノーチラスと言い、5170Pにしてもじっくり見ないと綺麗なバーインデックスに見えてしまったりする。これが押し出しは要らないが自分で満足できる特別感は欲しい時計ファン、パテックファンの背中を押したようだ。個人的にもベゼルダイアは一生腕に巻く事は無さそうだが、この手のモデルは躊躇なく着用可能だ。
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ダイアインデックスを包み込みダイアルにセットしているWGのホルダー。ショーピースを慌てての撮影なのであまり鮮明ではない。万が一の脱落を防ぐためか天地の爪がガッシリしている。ファセット面が非常に少ないのもキラキラ感を抑えている要因であろう。
今年の新製品で一番気になったこのモデル。バーゼルで始めて見てその文字盤の美しさに吸い込まれそうになった。先日久々にサンプルを見直してもその思いは変わらない。漆黒の艶っぽいアリゲーターストラップもダイアとの相性がすこぶる宜しい。
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ケース厚は10.9mmは薄すぎず暑すぎずバランスが良く端正で完成されたカラトラバクンロクケースに仕上がっている。スクエアのプッシュボタンは安定感があり、リセットボタンの押し加減は風の様に軽やかで癖になりそうな独特のフィーリングを持っている。
パテック社の商品分類ではグランド(超複雑)ではなく普通のコンプリケーション(複雑)に分類されている手巻クロノグラフ。しかしその製造方法はいわゆる″二度組"と言われるグランドコンプリケーションレベルと同じであり、時としてパテック社の関係者もグラコンと勘違いをしていることすらあって、価格的にもCH29系クロノはグラコン扱いで良いように思う。巷ではヌーベル・レマニア社のパテック向け専用手巻きクロノグラフキャリバーCH27-70が搭載された自社製化直前のRef.5070、それもプラチナ(ダイアルは確か濃い目のブルー)の人気が今日でもまだまだ高いそうだ。今回の5170のプラチナも将来そんな伝説のモデルに化ける可能性が有るかもしれない。

Ref.5170P-001

ケース径:39.4mm ケース厚:10.9mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:PT、RG(ブラック010ホワイト001
文字盤:ブルー サンバースト ブラック グラデーテッド バゲットダイアモンドアワーマーカーインデックス
ストラップ:手縫いシャイニー(艶有)ブリリアントブラックアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:税別 10,500,000円(税込 11,340,000円)2017年8月現在

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以下過去記事より転載
搭載キャリバーは何度見ても惚れ惚れする美人ムーブのCH 29-535 PS。古典的と言われる水平クラッチ(キャリングアーム方式)は美観に優れ、クロノ操作を見る楽しみを与えてくれる。ところがクロノグラフスタート時にドライビングホイール(A、クロノグラフ出車)と常に咬み合っているトランスミッションホイール(B、中間車)が、水平移動してクロノグラフホイール(C、クロノ秒針車)と噛み合う際に、タイミングによって歯先同士がぶつかるとクロノ秒針が針飛びや後退を起こす弱点がキャリングアームにはある。これを解消するためにパテック社ではクロノグラフ輪列(前述のA~C)に特許による新しい歯型曲線を採用している。その他にもコラムホイールカバー(D、偏心シャポー)やレバーやらハンマー等々あっちゃこっちゃに、これでもかと特許技術を投入することで、古典的美観はそのままに時代を先んずる革新的かつ独創的な手巻クロノグラフキャリバーを完成させている。
※パテック社によるCH29-535の解説は→コチラから
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Caliber CH 29-535 PS:コラムホイール搭載手巻クロノグラフムーブメント

直径:29.6mm 厚み:5.35mm 部品点数:269個 石数:33個 受け:11枚 
パワーリザーブ:最低65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾

前回に続いてディスコン(生産中止)の銘品紹介シリーズ。レディスコンプリケーションのトラベルタイムRef.7134G。天才時計師ルイ・コティエ氏によって考案されたトラベルタイム機構の特許をパテックが取り製造を始めたのは50年以上も前の1959年。その後クォーツ全盛期時代に製造は一旦途切れている。スイスの機械式時計がようやく復活した1990年代後半になって現代のトラベルタイムの製造が再開した。
今回紹介のRef.7134Gは2013年に発表され2016年にディスコンされた少し短命なモデル。或る意味製造個数も少ないはずで希少性は高い。
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実はこのモデルの生産中止で現在レディスのトラベルタイムコレクションのラインナップが無くなっている。個人的には1997年から再開された現代トラベルタイムのレディスでは一番お洒落で良い顔をしていると思う。何が良いって文字盤の色目が表現の仕様が無い微妙な薄めのブラウン。同色のアリゲーターストラップのカラー名称がシャイニー トープ(Shiny taupe)。そう、某有名ブランドE社の中々買えない超人気レディースバッグにも採用されている有名な色目。いわゆる旬のお色。
全ての針と6時側のスモールセコンドインダイアルと12時側のホームタイムと連動した24時間インダイアル、パテック フィリップのロゴ等の情報一切が白色でまとめられておりスッキリと締まった表情になっている。18金製のアラビアインデックスはポリッシュされており少々視認性に難がありそうだが、オフィスや屋外など光量がしっかりある環境なら充分見易い。逆に少しトーンダウンしたレストランのディナー席などではインデックスが変に悪目立ちしないのでラグジュアリーなドレスウオッチとなる。ベゼルにはトップウェルセットンのダイアモンド112個(~0.59ct)が丁寧にセッティングされている。パテックのダイアセットはその時計作りのポリシー同様に実用性を高めるため衣類の袖口が引っかかったりしないよう滑らかさを最優先した手法を採用している。海外を舞台に働くキャリアウーマンにはうってつけの一本と言えそうだ。

Ref.7134G-001
ケース径:35mm ケース厚:9.2mm ラグ×美錠幅:18×14mm 防水:3気圧
112個のダイヤ付ベゼル(~0.59カラット)
ケースバリエーション:WG 
文字盤:ブラウン サンバースト 18金植字アラビアインデックス
ストラップ:シャイニー トープ アリゲーターストラップ
価格:税別 4,510,000円(税込 4,870,800円)2016年11月現在
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Caliber:215 PS FUS 24H
この時計手巻きである。実用性からすれば極薄自動巻きCal.240にトラベルタイムモジュールを積めば良さそうだが、たぶん文字盤レイアウトに無理があって手巻きの名キャリバー215が採用されている。ビックリするのはトラベルタイムモジュールの薄さだ。ベースキャリバー215の素の厚みが2.55mmで部品点数130個なのでモジュールは厚さ0.8mmに48点のパーツで構成されている事になる。他のメンズのトラベルタイムと違ってホームとローカルタイムの昼夜表示が無いにしても凄い部品密度である。ケースの厚みは9.2mmと意外にある。たぶんトラベルタイム操作プッシャーを組み込む為にある程度の厚みが必要なのだろう。

直径:21.9mm 厚み:3.35mm 部品点数:178個 石数:18個
パワーリザーブ:最短44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2017年6月9日現在 店頭在庫有ります

気付けば2月以来商品紹介が出来ていない。この時期はバーゼルワールドを始めとして生産中止情報や2017新作ダイジェストなど話題はそこそこにある。反面、例年2月から夏場にかけては本年の新作入荷がまずないので商品情報はどうしても少な目である。しばらくは緩やかな更新でご容赦下さい。
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パテック フィリップの七不思議に生産終了品のヒョッコリ入荷というものがある。最終生産ロット品がゆっくり出荷されたのか。最近何かの理由で再生産されたのか。パテックからの明確な答えは無い。今回は今年生産中止発表されたクロノメトロゴンドーロの多分最終生産ロットだと思われるローズゴールドモデルRef.5098Rのご紹介。
1920年代頃にブラジルの高級時計宝飾品店のゴンドーロ・ラブリオ社の求めに応じて納入されていたのはイエローゴールド製。(下画像:良く紹介されている1925年製イエローゴールドモデル)
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色目的にはローズは大変近い。ただ文字盤上に特徴的な楕円形のインデックス表示部分とPATEK PHILLIPE GENEVEやCHRONOMETRO GONDOLO、SWISS MADEの文字表記部分については金色(PP社表現はハニーブラウン)の平滑面になっていてギョーシェ装飾が施されたシルバーカラー部とくっきりとしたツートンカラー仕様になっている。2007年にローズに先駆けて復刻発表されたプラチナモデルRef.5098Pも1920年代のオリジナル同様に全体がシルバーで統一されていた。ツートン仕様は2009年発表の現代復刻モデルのローズバージョンでの新規採用となる。これは好みの別れるところで個人的には甲乙付け難い。
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何といってもこのモデルの魅力の第一は18金素材の文字盤にビッシリと施された手作業によるギョーシェ(波状の微細な彫装飾)だ。調べればこれまた18世紀の天才時計師アブラアン・ルイ・ブレゲ考案らしい。手作業とは言ってもギョーシェ専用のマシンに文字盤をセットして人の手で操作しながら複雑なパターンを掘り出すスタイル。バイトと呼ばれる鏨(のみ)を使ってムーブメント構成パーツである地板や受けにフリーハンドで施されるエングレーブ(彫金)とは異なる。またモノトーンのプラチナモデルと異なり装飾後の色付け工程も一手間増えていそうだ。
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誠に優美かつ正当なトノーシェイプのケース形状も魅力的だ。全体が曲線で構成されており色気漂う女性のグラマラスな姿態を想像させられる。表裏両面のサファイアクリスタルもケース同様緩やかにカーブしている。普通此処まで曲面だと鏡代わりに顔をうつすと歪んだりするのだが、パテックレベルになると冷間鍛造とポリッシュの技術が凄い為一切ゆがまない。ラグは紳士用腕時計黎明期に採用された貫通ピンをねじ止めしたオフィサー(将校)タイプ。画像は無いがもちろんピンタイプのバックルもオフィサー仕様となっている。
2月に紹介したRef.5205R-010を現代セクシー系とするとRef.5098Rはクラシカルな色香が漂うどこかアンティークっぽいモデル。昨今あまりにもハイテク化が進む現代車の反動なのか、アナログなヴィンテージカ―の静かなブームが起きそうな気配がある。そんなクラシックな出で立ちにこそ着けてみたい魅力的タイムピースだ。

Ref.5098R-001

ケース径:32×42mm ケース厚:8.9mm ラグ×美錠幅:17×14mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RGの他にPT いづれも製造中止
文字盤:ギヨーシェ装飾18金製 ツートーン
ストラップ:マット(艶無)ダークブラウンアリゲーター
価格:税別3,930,000円(税込 4,244,400円)2016年11月現在 


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1900年代のオリジナルクロノメトロゴンドーロのムーブメントは当時パテック社の主要エボーシュであったルクルト社製の丸型キャリバー12"'が搭載されていた。2007年のモデル復刻にあたってパテックはケース形状にふさわしい角型の専用新キャリバー25-21RECを開発した。同社にとって1934年に開発した名キャリバーCal.9"'-90(上)以来の73年ぶりの自社角形ムーブメントと言われており、明らかに意識したレイアウトが採用されている。往年の名キャリバーへの強烈なオマージュと言えそうだ。
尚、Ref.5098が全て生産中止になった今、同じくゴンドーロシリーズのレクタングラーシェイプのRef.5124のWGYGにのみこのキャリバーが搭載されている。
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Caliber 25-21 REC(手巻き)
サイズ:24.6×21.5mm 厚み:2.57mm
部品点数:142個 石数:18個 パワーリザーブ:最低44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製) 振動数:28,800振動
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

文責:乾

2017年6月2日現在
5098R-001 店頭在庫有ります
(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)

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2013年バーゼルワールドのパテック フィリップ最大の話題作エイトデイズRef.5200G。画像では時分針をお約束の10時10分ではなく、8時20分としてブランドロゴを見せるようにした。さてスイスの時計業界には数年から10年くらいの期間で何かしらテーマというか流行があって、ロングパワーリザーブは2010年頃から現在も続くロングなトレンドである。どちらかというと保守的なデザイン性からパテック フィリップは何事も奥手のように思われるが、実際には新進気鋭の先物取りが多い。このロングパワーリザーブもミレニアムイヤーの2000年に3000個限定で発表された10-Day Ref.5100モデルにその遺伝子は遡る。もちろん当時腕時計では最もロングパワーリザーブで主ゼンマイを収めた香箱を2個積んだCal.28-20/220を搭載していた。このキャリバーはパテック社のR&D(研究開発)スタッフ35名をして開発に3年を要した大プロジェクトだったようだ。
※画像はPATEK PHILIPPE INTERNATINAL MAGAZINE No.7より
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ちなみにチョッとビックリしたのだがパワーリザーブ表示機構というのもクロノスさんの記事によれば20年ほど前にパテックが初めて装備したらしい。時期からして1998年のノーチラスRef.3710が最初らしいのだが調べきれなかった。
※下画像はWRISTREVIEWさんより借用
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勉強不足だったがこのパワリザ機構というのは結構複雑でリスクもあるようで歯車の設計と磨き上げに絶対の自信を持つパテックならではの開発だったような。
もう少し前置きを書くと2003年にはこのCal.28-20/220にトゥールビヨンキャリッジを組み込んだCal.28-20/222が開発されて10 Day Tourbilon Ref.5101がプラチナケース(2012年YGケースで再発表)で発表されている。
※画像はPATEK PHILIPPE INTERNATINAL MAGAZINE Vol.Ⅱ No.1より、ムーブメントイラストの余計な線は元原稿の解説用の引き込み線。

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今回本題のRef5200Gと長ったらしい前置きの2モデルとの大きな違いはデイデイトカレンダーの搭載である。しかも瞬時日送り式というのがポイントで、真夜中の0時(あたり)に0.003秒で変更される。パテック社のリリース特集記事によればこの画期的なカレンダー機構搭載はゼンマイのトルクをかなり消費するために10デイズの2日間分のパワーリザーブを献上?することで実現されている。さらに2005年~2008年にPP社アドバンスドリサーチ部門により開発された最新鋭のPulsomax®脱進機とSpiromax®髭ぜんまいが積まれたことによる時計精度の向上と持続時間の延長がはかられた事も大きく寄与している。しかし発売当初は異常に入荷が少なく安定供給まで1年以上掛かった記憶があり、製造技術的にはハードルが高かったようである。
デザイン的には10 Day Tourbilon Ref.5101とシンプルなレクタンゴンドーロのRef.5124をミックスした印象。よく天地の長さ(46.9mm)による腕への座りを心配される方が多いが、緩やかなカーブでなじみは非常に良い。またラグを除いた時計部の天地は35mm以下でけっして大振りな時計ではない。
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ケースのフォルムはRef.5124Gに似るがケース巾とラグ巾は8DAYSが狭いので、天地左右のバランスは10Day Tourbilon Ref.5101に近い。両者の良い所取りとなっている。撮影時に気が付いたのだがこの文字盤はスノーマンダイアルと名付けたらどうだろうか。そのひょうきんさは本来上下にくっついているPATEK PHILIPPEとGENEVEの文字が大きく上下に離れている事も一因している。そして10時10分になると雪ダルマは完璧な両腕を持つ。顔の真ん中には8日分のパワーリザーブインジケーターがありガス欠状態の真っ赤な9日目も一応は正常に動くはずとなっている。実際に巻き上げるとさすがにロングで135回で全巻きを示すが巻き止まりが無いままずっと巻ける。取説では″20回余分に巻いて終わり"となっているのでどうも巻き止まりがない設計のようだ。さすがにそれ以上は怖くて巻き続ける気になれなかった。お腹の同軸内側が秒針、外が日付。真上の窓に曜日ディスク。取説には瞬時日送りが深夜0時とあるが実機の手動運針では0時数分過ぎだったので結構巾がありそうだ。ピカピカの鏡面仕上げの18金ドーフィンハンド(時分)とエッジの効いたバーインデックスはパテックお得意の組み合わせ。

ケースの厚みは11.63mmとけっこうあるが優美なカーブにより1cmを超えている印象は無い。リューズに並ぶコレクター(プッシュボタン)は左が曜日、右が日付調整用である。
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Ref.5200G-001
ケース径:32.4×46.9mm ケース厚:11.63mm
ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧

ケースバリエーション:WG別ダイアル有のみ 
文字盤:マットブルーサンバースト ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)ネイビーブルーアリゲーター
価格:税別 6,030,000円(税込 6,512,400円)2016年11月現在

長ったらしいキャリバー名Caliber 28-20 REC 8J PS IRM C Jは、天地ー左右サイズが28✖20mmでRectangular(仏英:長方形)・8Jour(仏:日)=8日巻き・Petit Seconde(仏:小さい秒)=小秒針(英:Small Second=通称スモセコ)さらにIndicateur de réserve de marche(仏:パワーリザーブ表示)最後のC JはCalendrier Jour(仏:カレンダー 日、英:Date Day)の頭文字の短縮表現。仏語Calibreの意味は″口径"なので従来多くのムーブメントは、その直径(mm、古くはリーニュ)で簡潔に命名されていたものが、2000年以降のどこかから覚え難いが解りやすい名称になってきた。冒頭のおさらいになるが原点と言える2000年の10DAYSのCal.28-20/220は移行途上の名付けだろうか。2003年の10Day Tourbilon Ref.5101搭載の派生キャリバーCal.28-20/222(プレスリリース記載並びに地板刻印)はバーゼルより数か月後発行のゼネラルカタログではCal.TO 28-20 REC 10J PS IRMと記載されており、正にこの年辺りで移行されたと推測している。出来れば3つのムーブを並べ比較したかったが適当な画像が無かった。どれもが美しいが個人的には最新の8DAYSのキャリバーの装飾性が最も高いと思う。一見3本の別れた地板のように見える部分は実は剛性の高い一枚物に凝った化粧が施されている。
注:Ref.5101のCaliber名称については最初どちらの表現が正しいのか判然としなかったが最近入手したパテックマガジンのバックナンバーと2012ゼネラルカタログから混在していたことが解った。(11/17追記)
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Ref.5124の記事でも触れたが8DAYSでもケースとキャリバー双方の形とサイズに親和性が高くて完全な専用ムーブである事の特別感を感じさせてくれる。ビスポークエンジンゆえにコストに反映されるのだが、その割には結構頑張った価格設定ではないか。
最新鋭のPulsomax®脱進機とSpiromax®髭ぜんまいに迫ってみた下の画像。一番左の穴石(赤い人口ルビー)の下方に見える黒っぽい(実際は青っぽい)歯車がシリコン素材をベースとしたSilinver®製のガンギ車。同素材のアンクルは他のパーツに隠され見えない。パテックはこれら脱進機2パーツをディープ反応性イオンエッチング(DRIE)製法と呼ばれる技術で従来の機械的製法の最大10倍の精度で作り上げている。難解すぎて良く理解はできないがセイコーが採用しているメムス(MEMS)に似た化学的な手法で写真の現像焼き付けのイメージで非常に高精度なパーツが製作されているようだ。テンプの上側に黒くグルグルっと巻かれているのが同じ素材のSpiromax®髭ぜんまい。ピンぼけご容赦!_DSC8176.jpg

Caliber 28-20 REC 8J PS IRM C J
デイデイトカレンダー、パワーリザーブインジケーター搭載8日巻き手巻ムーブメント
サイズ:28×20mm 厚み:5.05mm 部品点数:235個 石数:28個
パワーリザーブ:最大192時間(8日間) 
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2016年11月12日 現在
5200G-001 ご相談ください
5200G-010 ご予約対応となります
(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)



2016年新作レディスモデルのテーマの一つが"ダイア"。既存モデルをベースにしたダイアモンドデコレーションバージョンの追加であった。圧巻はダイアモンドリボンのメレダイア文字盤敷き詰め+ラグダイアモデルRef.4968/400R-001。全くの新作としか思えないほど原型を留めていない。その一方で一体何が変わったの?間違い探しですか。というモデルがRef.4897/300G-001。その原型が下のロングセラーRef.4897G-001。
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現物ではその違いがはっきりするのだけれどもモニター画像の比較では実に解りにくい。従来72個のラウンドブリリアントカット(約0.47カラット)のダイアモンドで飾られていたベゼル。これがバージョンアップされて48個のバゲットダイア(約1.21カラット)がセットされ、さらに美錠(ストラップバックル)にも6個のこれまたバゲットダイア(約0.19カラット)が埋め込まれた。で、気になるこれらダイアモンドのお値段比較ですが、従来品Ref.4897G-001が税別314万円に対して、結構瓜二つのラグジュアリー版のRef.4897/300G-001はほぼ50%UPの同470万円ナリ。特別にモデル名も"LADIES CALATORAVA JOAILLERIE"と与えられた。
この価格差と見た目差をどう捉えるか。枕で紹介したホントに姉妹?のダイアモンドリボンでは(姉に較べれば)清楚な妹が税別594万円に対して、ゴージャス極まりない姉(但しバゲットは一切無し)が同742万円で約25%UP。こちらにもモデル名に″JOAILLERIE"の名が追加されている。種明かしすればバゲットダイアはとても高価なものなんです「チャンチャン!」と言う事なのだけれども・・・
個人的には今回紹介するRef.4897G-001はかなりお買い得ではないかと思う。ダイアのあしらわれ方もむしろラウンドの方が清楚で好感が持てるという意見もある。特に日本人女性にはこちらの方がバランスが良さそうである。

このモデルは2009年に見た目を変えずに微妙なモデルチェンジを受けているが、初代は女性用ウルトラシン(極薄)のメカニカルとして2006年にデビューしたRef.4896Gである。
今この時計をボーイズ扱いで小柄な男性にお薦めしようとは思わないが、2006年の初見時は真剣にそれを考えたし、実際に百貨店部門で男性向けの販売実績もあった。逆に言えばデビュー時には日本の女性市場では少々大振り感があった。たったの10年で我々プロのサイズ感も大きく変わっている事に我ながら愕然とする。しかしいつもながらのパテック フィリップのケースの薄さ(たった6.6mm裏スケ、初代は6.35mmでノーマルケースバック)で装着感は実に良さそうだ。
さて、この時計の最大の魅力は文字盤。妖しいまでのミステリアスなサンレイパターンを表現するギョーシェ(細かい連続パターンの筋目彫り)加工を施し、ミッドナイトブルーラッカーを塗って焼いて磨いての12工程で大層な手間をかけて仕上げている。その上から転写プリント手法で最終銀粉をまぶしたアローシェイプインデックスとブランドロゴの化粧。ルーペで見ると下地ギョーシェの影響を全く受けていないブランドロゴと楔上のアワーマーカーが少し浮き上がって見える。実は2012年の秋にスイスのダイアル工場で実際にこの転写プリントの現場を見ているのでこの時計は個人的にとても思い入れが深い。是非店頭でその吸い込まれそうな文字盤をご覧いただきたい。
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さらにロゴ廻りに肉薄すると・・ なぜか浮いているように見えるのは私だけでしょうか?
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この時計はいわゆるココイチ時計でデイリーユースにはあまりにシックで色の個性も強い。ではいわゆるパーティーウオッチかというとインデックス及び18金のドーフィンハンドの片面がサテン調(ロジウムメッキ仕上げ)なので視認性がとっても良く実用性は高いのでバリキャリ向け・・・少しオーナーとTPOを選んでしまう上級?な一本。ただ色目の違いによって印象が大きく異なるモデルでもあり、素材違いのローズゴールドを含めてカラーバリエーションが全4色用意されており、薄色2色はデイリーユースにも向いている。まあ妖艶な美人は懐もずいぶん深いと言う事なのか。

Ref.4897G-001
ケース径:33mm ケース厚:6.6mm ラグ×美錠幅:17×14mm 防水:3気圧
72個のダイヤ付ベゼル(約0.47カラット)
ケースバリエーション:WG(別ダイアル有)の他にRG(別ダイアル有) 
文字盤:ギョーシェ彫装飾のナイトブルー、18金パウダー転写インデックス
ストラップ:ミッドナイトブルーサテンストラップ
価格:税別 3,140,000円(税込 3,391,200円)2016年11月現在
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Caliber:215

ムーブメントはパテックを代表する手巻キャリバー215。シンプル極まりない2針なので超薄仕様だ。2006年に発表されたシリコン系素材Silinvar®「シリンバー」採用の革新的なSpiromax®スピロマックスひげゼンマイが搭載されたことで耐磁性と耐衝撃性が格段に向上している。まさにパテック フィリップの哲学"伝統と革新"を体現した頼もしいエンジンが搭載されている。

直径:21.9mm 厚み:2.55mm 部品点数:130個 石数:18個 
パワーリザーブ:最短44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2016年11月3日現在
4897G-001   店頭在庫有ります
色違い、素材違いはご予約対応となります。
(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)
関連ブログ:着物でパテックフィリップ、ショパール(2016/4/30記事)

ようやくの実機編である。さすがに書き疲れた感が漂っているが、そんな時の特効薬は画像の見直しに尽きる。特に今回は白七宝焼文字盤の表面テクスチャーの表現が総てであって、誰の目にも違いが明らかになる捉え方を撮影力として求められた。と言うか自ら求めて自虐的に七転八倒して苦悶を味わってしまった。それでも何とか当初の目的は達成出来た様に勝手に思う。一方で、もう一度おんなじ撮影再現が困難な"危ういナァ技術レベル"を自覚させられる結果ともなってしまった。ともあれ画像を・・
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パテックのブランドロゴの盛り上がりが凄い。12時辺りのインデックスも肉厚な感じがする。ただ文字盤表面にエナメル感が無い。そうこれはRef.5116Rに似て非なるRef.5119JのWhite lacquered, black Roman numerals 白ラッカー塗り、黒ローマン文字(クラッシックなシリコン転写技法による)である。そうラッカーの盛り上がりはそれなりにしっかりとある。あって当たり前で、もし薄すぎれば下地の白が透けて最悪グレィッシュで不気味な黒になってしまう。漆黒にするにはこれぐらいの盛りが必要なのだろう。確か以前にどこかの時計雑誌で誰かが他ブランドに比べてパテックの転写文字の厚み(盛り)は非常に薄くエレガントに仕上げてあるウンヌン・・という記事があったが、一体他ブランドはどのくらい盛っているのか一度検証せねばならない。下はライティングを少し変えて同じくRef.5119J。文字盤表面はどこまでも平滑かつ均一である。
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そして次がいよいよ真打Ref.5116Rの御登場となる。まず画像をご覧召され・・
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う~ん、ようわからんノゥ!やたら汚いのはサファイアクリスタルを拭く余裕が無かったのですよ。でもパテックのロゴが明らかに転写プリントのRef.5119Jのそれとは異なってかなり薄い。それでいて下地の白が透ける気配が無いのは、焼結が塗りとは彩色においての性格が根本的に違うからだと思っている。そして恐らく不透明な釉薬を用いているのではないだろうか。
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少しライティングを変えた1枚。上と同じようだが2時から3時辺りにエナメル独特の表面感が見られる。ローマンインデックスもかなり焼かれて荒れた仕上がり感が見てとれる。しかしロゴもインデックスもあまりにも整然と描かれており、人が細密用の筆で書いたものとは思えない。たぶん黒い釉薬を転写手法で塗り付けたのではと想像している。で、さらにアレコレといじくっている内に次のような画像が撮れてしまった(注:"撮った"では無いのが残念!)。
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写真としては明度がおかしいし順光でも逆光でもない変てこな画像なのだがエナメルの表面感をほぼ全体で捉えた貴重なカット。この環境下で比較するために、Ref.5119Jを同様に撮りたかったのだが残念ながらどうやってみても叶わなかった。
仮に、皆様がどちらかの店頭で運良く白の塗りと焼きの文字盤を見る機会があっても肉眼ではほぼ絶対と言って良いほどその違いは判らないだろう。その場にルーペ(キズミ)があったらどうか?黒ならそれなりに見えるかもしれない。でも白文字盤の場合まず見えないが、上の画像のような表面状態に対する既視感を持っていれば光の当て具合の工夫である程度は見えるかもしれない。
最近の女優が4K画質の環境を「毛穴まで一体どうやって隠せというの・・」と嫌うような撮影を今回はやった。その意味ではこの荒れたエナメル文字盤を美しいと見るかどうかは意見が分かれるかもしれない。生身の人肌とアンドロイドの合成の肌をマクロレベルで較べてどっちが良いのか問われているようなもので答えようが無い問題かもしれない。ただ歩留まりの悪さ(結果、高額)とは反して陶磁器ゆえの圧倒的な耐光性が半永久的に文字盤変色を防いでくれる。此処に関しては塗りは全く歯が立たない。

エナメル文字盤の歴史を振り返ると一般的には1900年代前半の1920年代から1930年代の比較的短い期間に多数の高級時計ブランドが採用していたようだ。しかしその後は簡単で歩留まりの良い塗り文字盤が主流になる。そして1990年代になって機械式時計が徐々に復活してゆく中で、前回記事でも少し触れたユリス・ナルダンやヴァシュロン コンスタンタンなどが徐々に生産を復活し始める。
ところがパテックは1960年代から1970年代前半のスイス製機械式時計暗黒の時代にかなり生産数を減少させた以外は1900年代を通じてずっと精力的に各種エナメルダイアルを作り続けてきた。1950年代のアンティーククロワゾネワールドタイムが各オークションハウスで非常な高額で落札され続けているのも当時はパテックしか伝統の技を継承していなかった事が由縁の一つかもしれない。なぜにパテック フィリップは生産効率が悪く当時は市場性が疑われたような高難度の文字盤製作に拘り続けたのか?
それは明らかにスターンファミリーの出自に直結していると思っている。1932年、Ref.96(クンロク)がデビューしたまさにその年に現社長のティアリー氏から三代前(曾祖父)に遡ったジャン及びシャルルのフィリップ家の兄弟が同社の株主(実質経営者)となり、翌年の1933年にはPatek, Philippe & Cie S.A.(株式会社パテック, フィリップ社)が登記され創業家からの経営移譲が終了した。このスターン家は元々パテックにダイアルを供給してきたジュネーブの高級文字盤製作会社(スターン兄弟文字盤製作所)を営んでいたという経緯があった為にダイアルへの拘り方が半端では無い。
下画像はパテック フィリップ インターナショナルマガジンVol.ⅢNo.02 P.16-17に掲載されているスターン家4代である。左のモノクロは45歳のアンリ・スターン(1911-2002)、左下がその父シャルルで右下は叔父のジャン。右のカラー写真、上から当時専務だった42歳のフィリップ(1938‐)、社長アンリ71歳、そして現社長ティエリー(1970-)はたった10歳。
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シャルル・スターンの息子アンリ・スターンが1958年社長に就任し、その息子であるフィリップ・スターンは1993年にその役を継承した。そして2009年に現社長ティエリー・スターンがその任に着いている。時計のプロである前に彼らには文字盤命の遺伝子が受け継がれており、常に他ブランドとは一線を画したダイアルを求め続けるのだろう。恐らくこれからも・・

文字盤以外のRef.5116Rの特徴や詳細は紹介済みのRef.5119G-001とほぼ共通なのでそちらをご覧いただきたい。最後に一応は撮った裏蓋側の絵もご覧いただいて本稿を終了したい。
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Ref.5116R-001
ケース径:36mm ケース厚:7.93mm ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:RGのみ 
文字盤:本白七宝文字盤(Authentic white enamel)
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター
価格:税別 2,930,000円(税込 3,164,400円)2016年7月現在

Caliber:215PS

ムーブメントはパテックを代表する手巻キャリバー215PS。構成部品たった130個の完全熟成の名機に2006年に発表されたシリコン系素材Silinvar®「シリンバー」採用の革新的なSpiromax®スピロマックスひげゼンマイが搭載されたことで耐磁性と耐衝撃性が格段に向上している。まさにパテック フィリップの哲学"伝統と革新"を体現した頼もしいエンジンである。

直径:21.9mm 厚み:2.55mm 部品点数:130個 石数:18個 パワーリザーブ:44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

※最終画像以下のスペック等は過去記事のコピペ+修正なのだが、修正時に気づいたのがケース厚がRef.5119よりも0.5mmも厚くなっている事だ。インデックスとブランドロゴ部分は明らかにラッカーの塗りの方が厚く見えるので、結論として下地となる本白七宝そのものが塗りよりも分厚いという事になる。
これは前稿で触れたように0.5mmの金線の高さがベースの白七宝の厚みとされているのか、または反り返り防止策としての文字盤裏への捨てエナメル焼結による厚み増加なのか、あるいは焼結による真鍮文字盤自体の歪み防止の為に厚みそのものをうんと持たせているのか?実にエナメルの世界は深い。まだまだその扉を開けかけたぐらいなのか・・そのうちに焼きの現場を見れんもんかいノォ

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

『第一回パテック フィリップ展』のご案内
だいぶ先になりますが・・と言っていたが、いつの間にかもう一か月後となった今夏のお盆真最中8月11日(木・山の日)~15日(月)に当店初の『パテック フィリップ展』を開催いたします。カサブランカ流の"何か"が違う展示会イベントに出来ないかと日々無い知恵をしぼっております。是非ご期待下さい。詳細等が詰まりましたら順次ご案内申し上げます。
展示会期間中の土日13日14日の両日午後2時から「パテックフィリップに夢中」と題してライブトークイベントを実施いたします。正規輸入元のパテック フィリップ ジャパンからの特別ゲストを迎えて、突っ込みどころ満載のパテック フィリップの謎に乾はじめ当店スタッフががぶり寄ってゆきます。参加ご希望の場合は席(※本音は寄集めの椅子の都合で)に限りがありますので案内状送付希望を下記からいただき申し込み用紙にお名前等ご記入の上、FAXにてお申込み下さい。

※案内状(7月下旬発送予定)のご希望がございましたら、コチラからお問合せ下さい。


2016年7月17日現在 5116R-001 店頭在庫あります。
(パテック フィリップ在庫管理担当)岡田

どう読んでも"イーメール"e-mail"としか読めない。何年やっても初級から抜け出せないフランス語かぶれの姐に言わせると仏語の読みは"エマーユ"となるそうだ。ただ厳密にフランス語表記するならば"ÉMAIL"とEの上にラテン系言語に特有のアクセンテギューをつけなければならないはずだ。今回これに気づかされて長年のもやもやが吹っ切れた。そう、英語っぽくしか見えないのはアクセンテギューが無いからだったのだ。ティエリー社長頼むからちゃんと付けて下さいよ。
重箱の隅はほっといて、パテック フィリップのタイムピースにおいて6時位置にインデックスの巾にほぼ合わせて極小で描かれるこの5文字は、水戸黄門の印籠級の扱いがなされている。しかし総てのモデルで6時位置に5文字表記があって、この違いは教えられないと気づかずに見過ごしてしまう方が多い。その非"EMAIL"モデルの5文字表記は"SWISS"となっている。しかしながらこのRef.5116に限らず、今やパテック フィリップのエナメル文字盤モデルは総てが超レアなので店頭で見比べる機会はまず皆無だろう。画像では上がRef.5116のエナメル焼き文字盤、下がRef.5119のホワイトラッカー塗り文字盤。インデックスの黒っぽさに微妙な違いがあるのがわかる程度で文字盤の表面感は全く同じとしか思えない。

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エマーユは日本語では"七宝"。七つの宝なのでとても貴重で高い価値を持っている事になる。でも普段使いする鍋やマグカップの表面処理に多用されている琺瑯(ホウロウ:この漢字は絶対書けませんナァ)も原理は同じ・・らしい。
また当店一階で扱っているエントリークラスのボールウオッチのクラシカルな白文字盤が魅力なキャノンボールⅡにはコールドエナメルなる手法がなされている。かくのごとくエナメルは多様性があり根本から勉強をしなければならぬ次第となった。コールドエナメルの良い記事を見つけたので貼っときまして説明は省略御免です。

まず、ウイキペディアでエナメルを引いてみると英語表記は"ENAMEL"であり、陶磁器の釉薬("ゆうやく"よりも"うわぐすり"が解りやすいでんナぁ)とある。正確ににはポーセリン エナメル(porcelain enamel)と言う。そして原材料の名称に留まらず金属表面をその材料で加工する行為もエナメルであり、美術的技法を七宝焼き(仏:Cloisonné:クロワゾネ)と言い、工業的な製法としては琺瑯と呼び一応区別されている。その他にもこれら本来のエナメル特有の光沢感を連想させる塗料やカバン、靴・・等々なんやかやとあって定義が好き勝手に拡大している感があるが、本稿では時計文字盤に限って自ら学びつつ掘り下げての紹介が出来ればと思っている。

ここのところ更新が間延びしたが、公私とも色々あった以上にこのエナメルという奴は奥が実に深そうで取っつきにくかったのが延び延びの原因・・これはやっぱり言い訳やナぁ。
ブログ遅延の為に店頭に出せない金庫のRef5116Rにストレスを抱えながら10日程経った頃に大阪のホテルでパテック フィリップの本黒七宝焼文字盤を拝見する貴重な機会を得た。しかも単純なキズミ(時計師用ルーペ)ではなく、どちらかというと宝石用の照明(通常ライトと蛍光確認用のブラックライト)を備えたカール・ツァイス仕様のレンズ搭載の超高級ルーペを拝借してというおまけつきだった。価格数十万と聞いたこのルーペが凄いのは普通のキズミがレンズ中央部分にのみにしか焦点が合わないのだがレンズ全面に焦点が合ってしまって笑らけるくらい見易かった。正直購入を検討し、色々とググってみるが何とも見当たっていない。どなたかご存知の方おられれば是非ご紹介下され。
たぶん過去にもバーゼルのパテックブース等で黒エナメルは見ているはずなのだが、なんせ頭の中がエナメル、エナメル、エナメル・・状態で見なければ初見と同じだったという事で。
閑話休題、このルーペでみたブラックエナメルダイアルは見事に凹凸や気泡跡などまさしく焼きの痕跡がしっかりあって、これをラッカー(塗り)と見間違える事はド素人でもまず有り得ないだろう。ちなみにこの見分けやすい黒の七宝文字盤の方が白七宝よりも製作が非常に困難との理由で現在はパテック フィリップのほぼ独占状態になっているらしい。パテックHP内の参考記事はコチラ

次に"七宝焼き"をググれば、かなり色々と詳しく出てきた。ママ引用(文字)すると以下である。
七宝焼(しっぽうやき)とは金属工芸の一種で伝統工芸技法のひとつ。青銅などの金属製の下地の上に釉薬(ゆうやく:クリスタル、鉱物質の微粉末をフノリでペースト状にしたもの)を乗せたものを摂氏800度前後の高温で焼成することによって、融けた釉薬によるガラス様あるいはエナメル様の美しい彩色を施すもの。日本国内では、鉄に釉薬を施したものを、主に琺瑯(ほうろう)と呼ぶ。中国では琺瑯(ほうろう/読み:ファーラン)という。英語では、enamelエナメル)という。七宝焼の名称の由来には、宝石を材料にして作られるためという説と、桃山時代前後に法華経の七宝ほどに美しい焼き物であるとしてつけられたという説がある。
歴史的には紀元前から始まって発祥は中近東。シルクロードから中国経由で飛鳥時代には日本へやってきていたようだ。ウイキペディアによれば日本、中国そしてヨーロッパにそれぞれ多種の技法があって近似のものも多い。全部紹介出来ないし、したところで引用だらけになるので時計に関するヨーロッパ系のものだけ以下引用する。

ペイントエナメル(painted enamel)

あらかじめ単色で焼き付けたエナメルを下地とし、その上に、筆を使ってさらにエナメル画を描き、焼き付ける技法。人物や植物を描いたミニアチュールが例として挙げられる。
時計文字盤でのミニュアチュールは細密画と言われる手法だったはず。数年前のバーゼル会場のブランパンブースのエントランスにあるイベントスペースで女性細密画師のデモンストレーションを拝見した記憶がある。

シャンルヴェ
(champlevé)
土台の金属を彫りこんで、できたくぼみをエナメルで埋めて装飾する技法。初期の頃は、輪郭線の部分をライン状に彫りこんでいた。技術の発達につれて、逆に、面になる部分を彫りこんでエナメルで装飾し、彫り残した金属部分を輪郭線とするようになった。
日本の象嵌七宝に近いらしい。時計文字盤ではたまに見るかナぁ、前述のペイントエナメルや後述するクロワゾネ手法の際に部分的に採用されていた記憶があるような気も・・

クロワゾネ(cloisonné)
土台となる金属の上に、さらに金属線を貼り付けて輪郭線を描き、できた枠内をエナメルで埋めて装飾する技法。シャンルヴェよりさらに細かい表現が可能になる。日本の有線七宝はここに属する。
時計のエナメル文字盤装飾で最も多用されている技法ではないかと思う。忘れられないのは1990年代に奈良の百貨店テナント時代に盛んに販売していたユリスナルダン。数年間にわたり毎年限定でサンマルコというラウンドケース時計の文字盤に往時の天才クロワゾネ職人ミッシェル・ベルモー氏が焼き上げていた風景や海戦(シーバトル)シリーズの限定モデルだ。当然のことながら製作数が少なく各5~50個程度でYG、WGが主でPtもわずかにあったかもしれない。18Kでアリゲーターストラップ仕様で確か200万円前後だったはず。価格については隔世の感あり。これも何で買っとけへんかってん、どアホでんな~
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画像が綺麗だったもので、アンティーウオッチマンさんのホームページより借用加工させていただきました。事後承諾ご容赦下さい。そして下は今年のバーゼルのパテックブース一階(あちら風に言えばグランドフロアまたは単に"G"?か)に希少なハンドクラフトとしてショーケースの中に飾られてたクロワゾネのユニークピース。NIKONのコンデジでノーフラッシュだから当然ASA上げてほぼ絞り解放でシャッタースピード稼いで撮った一枚。敏腕レタッチャーの竹山が明日からのスイス出張の為、成田前泊に先程出発した為にディスプレイ用のウオッチリングやら背景やらをフォトショップでにわかレタッチ親父自らが怪しげに加工しております。それゆえ今回は文字盤だけご注目という事でご勘弁ください。

クロワゾネどころかエナメルそのものもド素人とまずお断りした上で、この上下の文字盤は随分印象が異なる。ナルダンのこのピースはたぶん後期型でミッシェル・ベルモさん自身ではなく彼の娘さん(お名前失念)の作と思われるのだが、一個一個の有線(金製)で囲まれた部分がほぼ単色である。ベネチアの観光名所リマト橋下の運河の薄黄緑色の部分と空のもう少し濃い黄緑の2箇所だけは濃い目の緑が塊状に散りばめられて焼結されている。その他は単色のみで彩色の異なりは総て有線で区切る事でなされている。いわば単色の布切れをパッチワークした状態。
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それに対してパテックは有線の区切りそのものが非常に少ない。鳥の顔の目の下のパート(区切り)では中央部分が白いが顎はコバルトブルーでその境界は微妙にグラデーションしている。例えば全く同じ文字盤二枚に有線を全く同じ位置に配置できたとしても2色の釉薬を同位置に塗り分ける事はまず不可能だろうし、焼結工程での混ざり合う具合など神のみぞ知る世界ではないのか。もちろんこの顔パートだけではなく殆どの区切りで2色、いや3色もありそうだ。この着色の技法の違いが両者を全く違うクロワゾネエナメルダイアルにしている。パテックの手法では絶対に同じ文字盤が世界に一枚しか存在しない。つまり究極のユニークピースたる由縁が此処にある・・としておこう、ふぅ~なんせ素人ですから断定は禁物。再来月のパテック展でのライブトークイベントも決まった事だし、この辺の推測の整合性を突っ込んでみる事としよう。そうそうなぜ七宝文字盤は黒や濃色の方が白色よりも製造が困難なのかも聞かなあかんしなぁ あぁしんど!
やはり予想通り大長編の気配が漂ってきた。後編では実機紹介となるがこれまた撮影が滅茶苦茶厄介だった。白色の七宝なのでルーペでさえラッカーとの違いは見慣れないとまず無理。はたしてマクロレンズで捉えきれるのか?次回に斯うご期待。

文責:乾

『第一回パテック フィリップ展』のご案内
だいぶ先になりますが今夏のお盆真最中8月11日(木・山の日)~15日(月)に当店初の『パテック フィリップ展』を実施いたします。カサブランカ流の"何か"が違う展示会イベントに出来ないかと日々無い知恵をしぼっております。是非ご期待下さい。詳細等が詰まりましたら順次ご案内申し上げます。
展示会期間中の土日13日14日の両日午後2時から「パテックフィリップに夢中」と題してライブトークイベントを実施いたします。正規輸入元のパテック フィリップ ジャパンからの特別ゲストスタッフを迎えて、突っ込みどころ満載のパテック フィリップの謎に乾はじめ当店スタッフががぶり寄ってゆきます。参加ご希望の場合は席(※本音は寄集めの椅子の都合で)に限りがありますので案内状送付希望を下記からいただき申し込み用紙にお名前等ご記入の上、FAXにてお申込み下さい。

※案内状(7月下旬発送予定)のご希望がございましたら、コチラからお問合せ下さい。





2009年発表の古典的な水平クラッチ コラムホィール手巻クロノグラフキャリバーのエンジンCH29-535 PSは、同年まずメンズに先駆けて婦人向けコンプリケーションRef.7071に搭載されデビューした。その名も"レディス ファースト クロノグラフ"。同モデルを皮切りにパテックは矢継ぎ早にレディス ファーストの名を冠した婦人用コンプリケーションを発表してゆく。このレディス複雑時計開発ストーリーは別の機会にぜひまた紹介したい。
新たなレディスマーケット開拓のマイルストーンとなったCH29-535 PSは、翌2010年にメンズモデルRef.5170に積み込まれ、まずはYG素材で発表。さらに3年後の2013年にはWG素材の白文字盤、昨年2015年には今回の紹介実機である同WG素材でダイアルデザイン違いの黒文字盤が登場した。
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この文字盤変更でパルスメーター(脈拍測定計)が無くなり、針の形状と色使いが微妙に変更されスッキリした。漆黒を背景にブレゲ数字インデックス、クロノ秒針を除く4本の針全てが鏡面仕上げされている為にブラックアウトした際は、真っ白のクロノ秒針と外周秒レールとサイズアップされた2カウンターのみが強烈に浮き出るインパクトたっぷりのスポーティな顔に仕上がっている。
同時に発表されたクロノ秒針がもう一本多いスプリットセコンドクロノグラフRef.5370Pと似通った色使い、サブダイアル比率、リーフの針形状、さらにベースキャリバーまで同じと来れば、下世話ながらお代は三分の一弱の血を分けた兄弟分と言えないだろうか・・・

運良く撮影がかなった白文字盤。イメージがかなり異なるので好き嫌いは、はっきり別れるところかも知れない。当店のスタッフでも若手になるほど黒人気となっている。個人的にはオーソドックスで落ち着いた印象のホワイトに惹かれ気味。どっちにしても贅沢な悩みには違いない。
_DSC7382 のコピー.jpg
ホワイトダイアルはインデックスとペンシル形状の時分針と小秒針が鏡面、クロノ関連のセンター秒針と30分針が黒でまとめられている。よってブラックアウトになると下のように全部が暗転する。
ところで以前に掲載画像についてはデジタル処理を避けたい意向を表明した。しかし最近は誤解を招きそうな画像には必要に応じて修正を加えている。実は上画像のオリジナルは下である。文字盤の色目を確保した為にブラックアウト状態にしか写せなかった。
しかし実際の仕様と異なって見えるのは困る。そこでコンピューターにめっぽう強い当店スタッフの竹山のゴッドハンド?でたちまち下写真が上の写虚!となった。ちなみに珍しくハック機能が付いていたリューズにも手品?がチョッピリ・・・ ネタバレついでに黒文字盤も竹山謹製である。
_DSC7382.jpg
ちなみに必殺検品担当の岩田は、スクエア形状のプッシャー上下面が鏡面では無くヘアライン仕立てな事とリセットプッシャーの押し心地にすっかりやられてしまった様だ。
※本稿の作成中に2016年生産中止予定リストが届き、シルバリィホワイトダイアルのディスコンが決まった。残念だ!

Ref.5170G

ケース径:39.4mm ケース厚:10.9mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WG(ブラック010ホワイト001
文字盤:エボニィ ブラック オパーリン010、シルバリィ ホワイト001 ゴールド植字ブレゲ数字インデックス
ストラップ:手縫いシャイニー(艶有)ブリリアントブラックアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:税別 9,110,000円(税込 9,838,800円)2015年7月現在

搭載キャリバーは何度見ても惚れ惚れする美人ムーブのCH 29-535 PS。古典的と言われる水平クラッチ(キャリングアーム方式)は美観に優れ、クロノ操作を見る楽しみを与えてくれる。ところがクロノグラフスタート時にドライビングホイール(A、クロノグラフ出車)と常に咬み合っているトランスミッションホイール(B、中間車)が、水平移動してクロノグラフホイール(C、クロノ秒針車)と噛み合う際に、タイミングによって歯先同士がぶつかるとクロノ秒針が針飛びや後退を起こす弱点がキャリングアームにはある。これを解消するためにパテック社ではクロノグラフ輪列(前述のA~C)に特許による新しい歯型曲線を採用している。その他にもコラムホイールカバー(D、偏心シャポー)やレバーやらハンマー等々あっちゃこっちゃに、これでもかと特許技術を投入することで、古典的美観はそのままに時代を先んずる革新的かつ独創的な手巻クロノグラフキャリバーを完成させている。
※パテック社によるCH29-535の解説は→コチラから
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Caliber CH 29-535 PS:コラムホイール搭載手巻クロノグラフムーブメント

直径:29.6mm 厚み:5.35mm 部品点数:269個 石数:33個 受け:11枚 
パワーリザーブ:最低65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾
Patek Philippe Internaional Magazine VolⅢ No.6 及び11

2016年3月12日現在
 5170G-010 店頭在庫あります
 5170G-001 お問合せ下さい
(パテック フィリップ在庫管理担当  岡田)

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