今回ご紹介するモデルは「クロノマット B01 42 ジャパン エディション」です。
クォーツ全盛の1983年、当時ブライトリングを経営していたアーネスト・シュナイダーが自らパイロットの意見を聞き、イタリア空軍所属のアクロバット飛行チーム「フレッチェ・トリコローリ」のために研究を重ねて開発されたクロノマット。発表後は瞬く間に世界的人気モデルとなり、機械式時計復活のきっかけを作った腕時計でもあります。現在もナビタイマーと共に、「プロのための計器」を掲げるブライトリングのフラグシップモデルとして絶大な人気を誇るクロノマットが昨年、第四世代となる「クロノマット B01 42」へとフルモデルチェンジを果たしました。初代クロノマットを彷彿とさせる「クロノマット B01 42」をベースに、今年はダイヤルにブラック マザー オブ パールを採用した日本限定モデルが登場しました。
そもそも日本限定モデルとは、日本からのリクエストに応えてスイス・ブライトリング本社が特別に開発・製造しているモデルです。製作に当たっては、ブライトリング・ジャパンが国内のファンやショップの声を参考にしつつ商品企画をまとめてブライトリング本社と協議を重ねます。ダイヤル配置やカラーリング、針の仕様など内容は毎年異なり、試作や製品化検証も含めて発表までには約一年かかるそうです。今作も経験とノウハウを結集した日本ならではのモデルに仕上がっており、このモデルを入手できるのは日本国内のみですので、まさに世界が羨む限定モデルと言えます。
この限定モデルの最大の特徴はブラックMOP(マザー オブ パール)ダイヤルです。MOPとはその名の通り真珠養殖に使われる真珠母貝が原料で、腕時計のダイヤルには白蝶貝が多く使われています。製法は、まず貝殻をダイヤル径程度の円にくり抜き、これを重ねて円柱状に接着した上で、コンマ数ミリメートル単位で薄くスライスして仕上げています。天然素材のため色ムラなど品質も一定ではないためにデリケートな作業が求められるのはもちろん、腕時計のダイヤルに使うためには通常以上の堅牢性や紫外線への耐候性が要求されます。光の反射で虹色の光彩が現れる華やかさもあって、レディースウォッチに用いられることが多いMOPですが、これをスポーツモデルに採用した先駆けがブライトリング。なかでも光を受けると多彩な色味が浮かび上がるブラックMOPは、天然素材ならではの美しさが魅力であり、スポーティさや躍動感にエレガンスを添えてくれます。ブラックMOPダイヤルは見る角度や光の加減によって多彩に輝き、室内光ではネイビーのように見えますが明るい自然光の下では漆黒に映ります。天然素材であるがゆえに個体差も大きく、個々の腕時計の表情に違いが現れるのも特徴です。
ベゼルの3・6・9・12時位置には取り外し可能なライダータブ(突起を持った目盛り部分)を備えています。これは「フレッチェ・トリコローリ」のパイロットからの要望を取り入れたもので、時間を読み取り易くするだけでなく回転ベゼルを回して経過時間を計測でき、なおかつ分厚いグローブをしていても回転ベゼルの操作を容易にするためのパーツです。残り時間を計りたいというパイロットの要望にも応え、「15」と「45」を取り外して順番を入れ替えることにより、カウントダウン目盛りとしても機能します。またガラス表面への直接的な衝撃から保護することもでき、今もなおクロノマットに受け継がれているとても重要なパーツです。そして注目すべきはその仕上げ。ここ数年のクロノマットのベゼルは艶消しであるサテン仕上げが多かったのですが、今作は艶のある美しいポリッシュ仕上げとなっています。細かい違いに感じられますが、ブラックMOPダイヤルとも好相性で、武骨ながらも色気も感じさせるポイントです。またポリッシュ仕上げのベゼルに対してミドルケースは大部分にサテン仕上げが施されており、着用した際に立体的に感じられます。ケースサイズは先代の「クロノマット 44」より2mm小さい42mm、厚さも1.9mm薄い15.1mmと初代クロノマットのイメージを継承する程よいサイズ感で、腕が細い方でも持て余すことなく着用できます。リューズは袖に引っ掛からないよう先端を丸く設えたオニオン型を採用。深い溝を刻むことによりグローブをしていても操作し易い工夫がなされています。このねじ込み式リューズによって今作は200mの防水性能を備えており、クロノマットならではのタフさも継承しています。
フランス語で「筒」を意味する「ルーロー」を名に冠した「ルーローブレス」は今作の注目すべき大きなポイントの一つ。その名の通り筒状のパーツを連結させた、他ブランドではあまり見られないデザインです。このデザインのルーツも初代クロノマットで、パイロットにはどのようなデザイン・ディテール・機能が必要であるか研究に研究を重ねた末に採用された形状です。一つずつ丁寧に面取りされた筒状のパーツを連結させている為、着用すると非常にしなやかに腕に馴染んでストレスフリーな着け心地を実現しており、クロノマットの重量感のあるケースをしっかりと支えつつ、長時間着用していても疲れにくい工夫がなされています。ポリッシュ仕上げとサテン仕上げを織り交ぜ、コントラストが効いたブレスレットが手首の動きに合わせて煌めきます。
サファイアクリスタルガラス製の裏蓋によって、美しいコート・ド・ジュネーブやサンレイ等の装飾が施された、ブライトリング渾身の完全自社開発・製造のムーブメントをご覧頂けます。このムーブメント「ブライトリング 01」は高精度の証しであるCOSC(スイス公式クロノメーター検査協会)のクロノメーター認定取得はもちろんのこと、機械式時計ならではの悩みである日付調整の禁止時間帯を気にせず操作が可能な優れものです。
クロノマット B01 42 ジャパン エディション
品番:AB0134101B3A1
ムーブメント:ブライトリング 01(自社開発・製造)
パワーリザーブ:約70時間
素材:ステンレススチール
ケースサイズ:42mm
防水:200m
メーカー国際保証期間:5年
価格:1,166,000円(税込)
私事で大変恐縮ですが、一身上の都合により9月30日をもちましてカサブランカ奈良を退職することとなりました。対応させて頂いた皆様には大変お世話になりました。心より感謝申し上げます。
文責:藤本 画像:ブライトリング