パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

決して前回記事の続編ではない。あまりにも蜘蛛の糸が短すぎたのか。一気に極楽浄土への扉の取っ手を掴んでしまった。6月20日にPPJに申請をして、七夕の7月7日に出荷された異例尽くしのカラトラバSS限定モデル。天国よりは近そうな天の川から来たにしても呆れるほど早い。モダンな顔した特別モデルにはワープ機能が備わっていた様だ。
当店に始めてやって来る時計は、検品前に先ず撮影をする。理由は汚れ(微細な埃)がほぼ無い最高のコンディションだからだ。前にも触れたが、PPJはかなり前から日本着荷時点の検品を取り止めている。理由は初期不良率が限りなくゼロであって、むしろ検品時にキズ等の瑕疵を発生させるリスクの方が優るからと聞いている。結果、スイスパテック社で出荷検品後に真空パックされたタイムピース達は国内30店舗の着荷時まで無菌?最低埃レベルが保たれている訳だ。
これは何を意味するかというと今回の様な限定モデルの場合、PPJのスタッフですらプロトサンプルではない最終形の販売用実機を生では見ていないと言う事になるはずだ。勿論、当店が国内第一号入荷では無いと思うので、もう既に何人かの正規販売員と強運のVIP顧客様がご覧になられている事はお断りしておく。
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前回のネット画像情報のみでの印象は、あくまでも個人的見解として少々懐疑的と表明した。しかし実機を前にしてこの予測は見事に裏切られてしまった。この時計の紹介はかなり難しい。その理由は後述してゆくが各部をパート毎に見てゆくと「はて?」と首を傾けざるを得ない思いが強い。ところが全体を総合的に見た時にバランスが取れていてデザインの完成度が高く感じさせられてしまう不可思議さが、パテックらしくないこの時計にはある。
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バックルは定番のピンバックルSSなので特に説明はない。文字盤やケース、ムーブメントを飛ばして脇役とも言えそうな画像を持ち出したのは、この限定モデルの最大の特徴と言えそうな風変わりなストラップを、ぐぐっと寄りで見て頂きたかったからだ。
textileとfabricという英語はいずれも繊維を意味するが、前者が加工前の素材を後者が加工後の製品状態を表わすと初めて知った。その伝でゆくとザックリと平織されたテキスタイルを加工してこのファブリック製のストラップは作られたとなる。誰もがそう思ってしまうだろう。でもこれは物凄く良く出来たgimmickだ。ギミックの日本語訳はしっくりする言葉があまり無く『仕掛け、トリック、からくり』等が検索されるが、個人的にもギミック以外に適当な表現が、エッシャーのだまし絵の様なこの型押しカーフストラップには見い出せない。カーフ表皮にアリゲーターの文様が型押しされたなんちゃってストラップは、とうの昔に市民権を得ているので、それはギミック(だまし)では無くフェイク(模倣、模造)と呼びたい。因みにRさんに多い(しょっちゅう見ている様な気がするが)決して見た事の無い時計はコピー(偽物)と言う。
言葉遊びはこの辺りで止して、画像上はまさかの型押し?(パテック的にはエンボス)と見える。実際に起稿しながら今一度金庫から現物を出して子細にキズミで再確認せざるを得なかった。画像より実機の方がだまされ感は若干弱いが、予備知識なしの初見では誰もが化かされてしまうくらい、このキツネは凄い。
しかしこの色目には既視感が有る。前世代のメモリーしか搭載されていないオツムゆえ引き出しの数も数える程しかないが、色目の既視感が直球過ぎて間髪置かずに、ブルージーン或いはヴェールボスフォールと呼ばれるエルメスがお得意にしている青系カーフレザーの近似色ではないかとの曲解に至る。さらに白く太目なステッチが1.5mm弱の巾で粗目に施されている為に、単純迷?解な頭の中はもうHERMÈS、HERMÈS・・となってしまった。_DSC00370.png

もうこうなると何でもかんでもブランディングせずに済まされなくなってしまう。まっ、チョッとブランディングの意味は取り違えているのだが・・で、これまた何処かで見た顔ではないか?いや、何処かで絶対見ているはずだ!となってしまう。どうです、見えてきましたか?そう、そうなんですよ、"L"で始まるブランドの"T"で始まるアレですョ。
ブランドとそのアイコン、パテックでは例えばノーチラス、ルイヴィトンだと例えばモノグラム、エルメスなら例えばバーキン、それらの事である。そしてそれらの所有スタイルは乱暴に言って、完全に2種族に分類される。実に判り易いメジャーなアイコン種族は、何を所有しており、その価値も出来るだけ沢山の人々に確実に認知される事を希望しているコスパ意識が高い方々で構成されている。数的には圧倒的にマイナーな少数民族であるアンチアイコン種族は真逆であって、非常にニッチな限られたごく少数の同類、極端な例では自分しかその価値が判らないという時計やカバンを好む複雑な思考回路を持っている方々と言えよう。筆者がいづれに属するかはご想像にお任せする。
閑話休題、文字盤の色についてもう少しだけ見てゆきたい。時計を横置きした画像と文字盤に迫った直上の画像で随分と色目の違いを感じる。これは完全にライティングの差でしか無い。このブルーカラーは一見爽やかで若々しさが強調された色目なのだが、快晴の太陽光や色温度の高い蛍光灯の下ではその本来持っている青色の特性をしっかり発揮する。ところが一方でホテルのロビーやレストラン等の色温度が低く低照度の下では少し妖しさを漂わせた艶っぽい藍色の顔がちらついてくる。お日様の似合う健康的な昼の顔だけでは無く、それなりに大人のお付き合いもさせて頂きますというから驚いた。個人的にはこの時計の最大の魅力ではないかと思う。まるでカメレオンの様な二面性を隠し持つ不思議なタイムピースだ。
話を少し脱線させるがこの限定モデル、そのままダウンサイジングしてレディスモデルに仕立てたら滅茶滅茶売れそうな気がする。ケース径35mmくらい、素材は18金WGでベゼルにダイアを纏わせてやる。物凄く良い感じに仕上がりそうだ。

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紛れもなく6000系のサイドビュー。厚さは9.07mm(サファイアクリスタル・ガラス~ケースバック)で2020春生産中止となった6006Gの8.86mmより僅か0.2mm程厚い。ところが搭載されるムーブメント厚は限定6007がセンターフルローターCal.324 S Cで3.3mm、6006GのマイクロローターCal.240 PS Cは3.43mmである。Cal.240は本来マイクロローターの恩恵でパテックを代表する極薄自動巻銘キャリバーで2針の素(す)の状態では2.53mmしか厚みが無いが、スモールセコンドやポインターデイト・カレンダー等の付加機能モジュールが盛り込むれて若干厚みが出ている。それにしても薄いムーブなのに、最終のケース厚が出る6007。理由として考えられるのは文字盤の違いか。6006はセンター3針✚オフセンターの小秒針の構成で、全くのフラットダイアルにインデックス等のディスプレイは全て薄く仕上がるシリコン転写プリント。対して限定6007はセンター3針ながら、ダイアルは再外周部に秒インデックス、その内側に厚みの出るアラビア数字アワーインデックスが植字され、さらに逆三角形のインデックスが細いレールに並べられたアワーサークルが来るダブルアワー表示が来て、さらにその内側文字盤センターにカーボン調の凸凹なテクスチャーが来る4つの同心円から構成されており、それぞれのサークルに微妙な高低差が見られる。この辺りに厚みの答えが有りそうだが、良くは判らない。
尚、時計本体重量は58gで標準的なピンバックル18金モデルよりも20~25gは軽い。昨年カラトラバ・ウィークリー・カレンダー5212AがSSの定番モデルでラインナップされてはいるが、パテックの非スポーツ系のSSモデルが稀な為、手に取った際に感じる驚かされる軽さのインパクトが、初見時に普通は優先する視覚を凌駕してしまう稀有なパテックだ。

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あちゃー!久々にやってしまいました。何とも締まりのない画像。原因はモチベーション不足。最近はおうちでしっかり寝るしかないので寝不足は関係ありません。
またぞろ個人の好悪を枕詞とお断りした上で、この後ろ姿は頂けません。まず裏スケじゃなくてノーマルバックにした方が好ましかった。この限定を手に出来る最上級顧客は誰もがCal.324のスケルトンバック仕様モデルを数本は持っているはずなので、白い特別装飾で中途半端に隠されてしまったムーブメントが可哀そうですらある。逆もまた真なりで21金製のフルローター始めムーブメント構成部品が、白い特別装飾を読み取り辛くしている。"一粒で二度美味しい"では無くて、二粒で互いの味を相殺してしまっている。私見ながらポリッシュ仕上げのSS製ノーマルケースバックを採用してもう少し控えめなサイズで梨地サテンフィニッシュによる刻印装飾あたりが妥当な選択だったように思える。さらに言えば顧客にとって普段それほどなじみの無い工場に起因した限定モデルなので、少々大振りなカラトラバ十字に変えて2006年のジュネーブ・サロン改装記念限定モデルのように建築物(PP6)をデフォルメしたイラストのエングレーブにしておいた方が良かったのではないか。
本日の重箱はスミがやたらと多い様で、さらに根掘り葉掘りは続く。一見この装飾は天地がキッチリ12時-6時に垂直を通してあるように見える。しかし6000系の裏蓋はスナッチ(スナップとも)では無くてスクリューバック方式の為に10角形は天地キッチリとはまずならない。それどころかメンテナンスで開閉を繰り返すたびに微妙にその位置はずれてしまう。実際この実機も特別装飾と10角形の垂線はシンクロしていない。さらに家政婦が見るが如く眼力を上げてゆくと、納品時点でほんの僅か時計回り方向に0.2度ほど装飾がずれている。この何ともイケてない装飾工程を想像するに
①一旦スクリューケースバック(裏蓋)をミドルケースに閉めてみる
②垂線を意識した何らかのマーキングを裏蓋に施してから一旦外す
③マーキングで位置決めした裏蓋の内側に装飾を転写?する
④再度、裏蓋を閉めて、マーキングを消して、終わり
ところが最後に閉め直す段で、微妙に増し締め気味になって時計回り側にズレが出たという想像だ。
パテックのスクリューケースバック構造は、ほぼ全てが日常生活防水に過ぎない。6000系リファレンスのケース構造に拘らなければ普通にスナッチ構造を採用していれば裏蓋装飾の垂直性は容易に達成できたはずだ。それともPP6繋がりで6000系採用だったのか?いづれにせよスクリューバックに拘るのであれば10角形と特別意匠の垂線の二者をキッチリ合わせて、敢えて45度位は斜めに閉められている方が私的にはスッキリする。
長くなるがもう一つ方法があって、王者パテック的にはどうかと思いつつも、ここはもうギミックついでに見た目スクリューバック裏蓋にして実は巧妙なスナッチにする手が有る。こうすれば意匠と10角形とミドルケースの全3者ての垂線がシンクロする。これなら時計通が初見して意表を突かれ、初心者には何の事やらさっぱり気付けない。究極のだまし絵タイムピースが完成していたはずだ。
attestation_c.gif"ATTESTATION"とは英語で『証書、証明‥』の意味。過去5年の当店パテック取扱いの中で唯一の限定モデルであったノーチラス発売40周年記念限定にも発行添付されてきた。でも書体が微妙に異なったり、ノーチの時は非常に特徴的で美しかったブルーダイアルに因んで、カラトラバ十字、品番やキャリバー名がシックでメタリックな濃青色で箔押しされていた。今回は全身が青を纏っているのに金色での箔押しとなっている。また前回は無かったジュネーブ・サロン(本店ブティック)イラストが薄く背景に敷かれている。なぜかここもPP6では無い。さらに今回はご購入者名前(画像はフェイク修正済)も印字されている。保証書のように連続画一的では無くて、不定期で間隔の開いてしまうアテステーションにはアレンジがなされるようである。

そろそろ、まとめにかかりたい。記事の大半が懐疑心と猜疑心のパレードようになってしまった。しかし、冒頭でも書いたように、この時計は部分で見てはいけない。さらに見方を誤ると超有名2大ブランドのハイブリッドウォッチの気配すら漂ってきてしまう。一度その先入観に捕らわれてしまうと拭い去る事が、困難かつ厄介で始末に悪い。ギミックフルでトレンドセッターブランドの既視感満載、パテックらしさほぼ皆無?作ちゃった感が凄すぎて、自分自身の持つパテックワールドの概念に収まらない、今日的で意欲的かつ挑戦的なヤバイ一本と言えそうだ。
撮影から起稿を通して、穴の開くほど実機を見倒した。「意外と思ったより良いじゃないか」「でもなんか違うナ」「コレクションとしては悪くないぞ、資産価値もタップリ有って」「でも、着用はこっぱずかしくて、チョッと・・」これだけ延々と自問自答を繰り返した時計も過去珍しい。やっぱりヤバイ一本だ。

Ref.6007A-001 ニュースリリース(日本語)
ケース径:40mm ケース厚:9.07mm(サファイアクリスタル・ガラス~ケースバック) 
※カラトラバ十字と《New Manufacture 2019》と装飾されたサファイアクリスタル・バック
ラグ巾:22mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:SSのみ 
文字盤:真鍮製 ブルーグレー 中央にカーボン模様の浮出し装飾 夜光塗料塗布の18金植字アラビアインデックス
針:夜光塗料塗布の18金バトン形状の白ラッカー着色時分針 白塗装ブロンズ製秒針
ストラップ:ブルーグレー 織物模様がエンボス加工された装飾ステッチ入りカーフスキン


Caliber 324 S C.
センターローター自動巻 センター3針(時分秒) 3時位置
窓表示カレンダー
直径:27.0mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個 受け:6枚

パワーリザーブ:最小35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製) 髭持ち:可動式
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
価格:お問い合わせください。

文責、撮影:乾 画像修正:藤本

今年は何もかも異例尽くしだ。見送られていた2020NEW MODELが6月18日にPPJからファックスでやってきて、詳細は公式HPを参考とあって、その結果"来た!見た!驚いた!"と腰を抜かしそうになった。それでなくとも"だまし、だまし"の腰痛爆弾を抱える老体なれば、心尽くしとは言わぬが心配りぐらいの発表プロローグは欲しかった。
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※他の商品画像はPP公式HPでご覧ください
何となく想像していたのは、今春に一旦自粛されたスイス・パテック社発信の公式インスタの公開再開タイミングでのニューモデル発表。実際6月19日(ブランド創業1839年に因み毎月18日スイス時間の18:39にUP)には6007Aをトピックスにしてインスタアップされていたので、これは予想通りではあった。もしかするとこの段取りで毎月同じタイミングでチョットづつ小出しに新製品発表をするのだろうか。それはそれでエキサイティングで楽しみではある。
そして、予想通りお問い合わせの嵐が怒涛のようにやってきて、今度は足をすくわれて溺れそうになる。現在の世界に於ける日本のマーケットシェアは5~10%と想像されるが、その割に今回のカラトラバSS限定Ref.6007A-001の日本入荷予定本数は非常に厳しく、その理由も不明らしい。結果として各正規店の最重要顧客(ベスト ロイヤル カスタマーとでも言えようか)のご要望が優先されそうだが、どの辺りがカットラインになるかは視界不良にして五里霧中という状況の様だ。実機撮影のチャンスも犍陀多(かんだた)になったつもりで蜘蛛の糸を登るが如しである。
一見、限定数1,000本はパテックとしては少なすぎるという事は無さそうだが、記事を書き進める中でまたしても、ああでもない、こうでもない、ひょっとして・・などど千路に乱れる妄想が湧き上がってくるので少しお付き合い願いたい。そもそもこの限定モデルは、2015年から建築が進められていた6番目の生産拠点となる最新工場"PP6"の完成竣工を祝って発表されたものである。サファイアクリスタルのケースバックにある2019は昨年中に既に一部の部署が移転し業務を開始していた為である。勿論コロナ禍が無ければ、4月には新工場のお披露目イベントが開催予定だったので、その際に発表されていた事は想像に難くない。ところでパテックはフィリップ・スターン時代に2度同様のストーリーを持った限定モデルを発表している。
新工房落成限定_b.png
まず最初が1997年にジュネーブ郊外のプラン・レ・ワット村に社運を掛けて竣工させた新本社工場の落成記念モデル3部作だった。上画像のパゴダ(男女各1モデル)とミニット・リピーターである。これらの紹介は過去記事よりご覧下さい。此処で興味深いのはステンレスモデルが全く無い事である。逆に今回はステンレスしかない。パゴダは上の画像以外にも素材のバリエーション等が有って、全てを合計すれば2750本という事になって今回の3倍弱という随分大盤振る舞いがなされた。当時のフィリップ・スターンが新工場構想にかけた想いの強さがうかがえる。当時と現在を比較すれば、年産数もかなり増えているが、パテックの顧客の増え方はその比ではない。そう考えれば今日の1000本限定数は相対比較をすれば凄く稀少と言える。一方、プラチナ製リピーター5029のたった10本(YGとPGも各10本)なんて直営ブティックでファミリーにごく近い雲上顧客に配給販売されたのだろう。でも、今回はそんな特殊なモデルも無い。異例尽くしと言わずしてなんと表現したら良いのか。
2番目の記念モデルは、1953年から様々な運用をし続けてきたジュネーブ・ローヌ通りのブランドの本丸とも言えるサロン(直営ブティック)を2年の歳月を掛けて2006年に全面改築がなされた際に発表された下の2モデルである。
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記憶違いでなければ合計400本のこれらの限定モデルは、その出自からしてパテック直営のジュネーブサロンのみでの販売であったように思う。ただ(ご本人曰く)ブランドへの貢献度合いの高かったごく一部のパテック社スタッフにも授与では無いが購入が許可されたので、5565Aは時々間近で拝見している。今現在ならいざ知らず、当時に於いて、これは役得だったのか、拒絶不可能な義務だったのかは判断に苦しむところである。
今回の6007Aは過去のコレクションにデザインアーカイブが有るわけではなく、見た事もなく、馴染もなく、個人的にはおよそパテックらしからぬ顔と受け止めていたが、上画像左の5565Aと現行ラインナップからドロップ中のカラトラバ6000系を足して2で割って、さらにこれまで全く採用されてこなかった最近のスイス時計トレンドである"テキスタイル"の切り口をパテック風に解釈しました。ということかもしれない。ただある顧客様曰く
「カーフストラップにテキスタイルパターンを型押しする手法は、既にIWCが実装済みであり、見た目は織物にしか見えないが実際の触感は紛れもなく"皮革"だった」というご意見が有った。
ダイアルセンターのカーボン・パターン装飾もパターンに過ぎず、ギミックが詰め込まれているという点は、知りうる限りパテックの全く新しいアプローチとなる。ただ資産価値を無視して単純かつ純粋に時計として見た場合、かなり評価や好き嫌いは分かれる時計だろう。精神的にはともかくも年齢的に還暦を迎えた自分自身的にはこの時計を腕に巻きたい誘惑は全く無い。IWC云々の顧客様も含め相当数のブランドに渡って、幅広く時計収集されている方にこの傾向は強い。
また自身の計算違いか誤解であってほしいのだが価格設定が微妙なのである。比較すべきモデルは、昨年ディスコンになったカラトラバRef.5296。全く同じエンジンを積む3針センターセコンド・シンプルカレンダー自動巻でピンバックル仕様の18金素材モデル。ところがステンレスの限定6007Aの方が少し高いのである。またエンジンは異なるがデザインソースらしい今年のディスコンモデルRef.6006Gとの比較では、6007Aが10%ほど安いのだが、アリゲーターストラップ+WG製フォールディングバックル仕様の6006Gに対して、カーフストラップ+SS製ピンバックルの6007A。これらを足したり引いたりするとSSの6007A限定モデルはやはりチョッと割高になってしまう。限定だから大目に見て、目くじら立てずにマスクで隠して!と言われても1ロット1000本というのは、パテックの各リファレンスに於いて年産本数のマキシマムに近似と思われ、特別に小ロットとも思い難い。資料を見る限り、この限定モデルにはいわゆる限定シリアルナンバーの刻印が無い事もケースの加工・管理という点でコストが省かれており少し気になる。
重箱と老婆心はさておいて、パテック フィリップの顧客層はこの10数年で非常に若くなったと言われている。実際、当店でも30代前半のカスタマーもニューゲストも増えてきている。この方達には今回の6007Aは直球ド真ん中でノックアウトだろう。この若く新しいニューカマーに対して「しっかり頑張ってパテックを収集する事で、いつかこんな特別モデルを手にしてください」というメッセージがこの特殊なカラトラバには込められているのではないか。勿論、既にコレクションを充実させている若きロイヤルカスタマーにとっては、目の前にある、手を伸ばせば届く現実的な"夢"である。
今は、どうか蜘蛛の糸が切れずに「酒が旨くて♪、ネーちゃんが綺麗な♪♪」天国の撮影スタジオまで登り切れる事を願うばかりである。

Ref.6007A-001 ニュースリリース(日本語)
ケース径:40mm ケース厚:9.07mm(サファイアクリスタル・ガラス~ケースバック) 
※カラトラバ十字と《New Manufacture 2019》と装飾されたサファイアクリスタル・バック
ラグ巾:22mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:SSのみ 
文字盤:真鍮製 ブルーグレー 中央にカーボン模様の浮出し装飾 夜光塗料塗布の18金植字アラビアインデックス
針:夜光塗料塗布の18金バトン形状の白ラッカー着色時分針 白塗装ブロンズ製秒針
ストラップ:ブルーグレー 織物模様がエンボス加工された装飾ステッチ入りカーフスキン


Caliber 324 S C.
センターローター自動巻 センター3針(時分秒) 3時位置
窓表示カレンダー
直径:27.0mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個 受け:6枚

パワーリザーブ:最小35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製) 髭持ち:可動式
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
価格:お問い合わせください。

PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅰ No.2
文責:乾

「多分、今年はまだ無理だと思いますが駄目モトでエントリーしときましょう」
パテック フィリップのコレクションには購入しにくいモデルが多々あるが、さらに購入方法が一筋縄でゆかない物もある。正直なところ我々販売店にも明確な基準が掴めているわけでも無い。さらに突っ込んで言えば輸入元であるPPJ(パテック フィリップ ジャパン)のスタッフですら、納期は勿論の事、入荷の可否が薄ぼんやりとしか予想出来ない事も間々ある様だ。
判り易いのは通常のカタログに未掲載の限りなくユニークピース(一点もの)や或いはそれに近い一桁しか製作されないレア・ハンドクラフト群。当然時価であり、現物はショーケースのガラス越しに年一回のスイスの展示会(昨年まではバーゼルワールド)の際にパテックのブース内展示を見るしかない。PPJ経由で注文を入れても大半が却下され極少数しか入荷していないようだ。
次がカタログUPされているが価格設定が、時価となっているグランド・コンプリケーション群。ミニット・リピーターとスプリットセコンド・クロノグラフが代表モデルで、永久カレンダーやトゥールビヨンが追加搭載されたハイブリッドな超複雑モデル等も有る。さらには現代に於いては新月の夜を選んで、人跡未踏地まで赴むかねば感動に浸る事すら難しくなった満天の星座達が生み出す一大叙事詩を、手首の上で真昼でも堪能できる"どこでもプラネタリウム!"の様な天文時計が組み合わさったドラえもんウオッチの様なモデル等もそれである。
アレや、コレや、ソレらの時計達は、注文そのものは一応可能だ。ただ経験的に複数のパテック フィリップのタイムピースを購入している実績の有る店舗からのオーダーでないとまず購入の見込みは無いと思われる。では、どの程度の実績が必要か?という事が判然としない。基準と言うものが無い。しかし無い無い尽くしで、取りつく島もなく溺れる人を見捨てる訳にもゆかず、個人的な独断でロープ付きの浮き輪を投げる事とする。
本数的な実績(同一店舗限定)は、8本から10本程度かと思われる。その内には定価設定有りのグランド・コンプリケーションが2本位(永久カレンダーと永久カレンダー・クロノグラフとか)含まれるのが望ましそうだ。さらにはノーチラス&アクアノート比率が半分以下と言う辺りだろうか。さらに言えば理由の如何を問わず、購入品が間を置かずに夜店の屋台などに並んでいたりすると実に面倒で難儀な話になって・・・1970年代のジャンジャン横町のようなラビリンスに迷い込み生還はおぼつかなくなるのである。
では、皆さんが高い関心を持たれているノーチラス&アクアノートの購入基準はどうか。過去何度かこの難問には触れてきた経緯があるが、コロナがやって来ようが、世界各地でデモの嵐が吹き荒れようが、お問い合わせの電話とメールと来店は引きも切らない。増える一方の狂喜乱舞にして百花繚乱なのである。2015年という微妙な最近にパテックの取り扱いをスタートした当店の最初の2年ぐらいは、今にして思えば"パラダイス"と呼んで差支え無かった。狂喜乱舞の温度が今現在より低温だった事もあるが、運よく知名度の低い天国に辿り着かれた幸運な方がおられた。しかし今は、この2年弱位で天国は、地獄とは言わずとも荒涼な荒野になってしまった。店頭限定での購入希望登録は受け付けているが、過去と将来のパテックご購入実績がお有りの顧客様へ優先的に販売したいので、中々ご登録だけのお客様にまで現在の入荷数では廻らない状況になってしまった。パテック社の方針として生産数を増やす事は考え辛いので、現在の異常人気が落ち着かない限り荒野を襲う嵐の厳しさは増すばかりではなかろうか。ただし、アレやコレやソレやの時価モデルの購入が棒高跳びレベルとすれば、ノーチやアクアはモデルによっては少し高目のハードル程度の高さだと言えなくもない。
毎回の事ながら長い前置きはさておいて、本題に入ろう。前述の棒高跳びレベルにはもう一群あって、定価設定の有るカタログモデルながら、本日冒頭の「駄目モトでエントリーしときましょう」というややこしいモデル。エントリー過程は、もっとややこしい話になるので、僭越な言い方になるが棒高跳びの半分くらいまでよじ登って頂ければご説明申し上げます。そんな意味深な本日の紹介モデルRef.5231J-001YG製ワールドタイム・クロワゾネ文字盤仕様。
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通常の現代ワールドタイム第三世代Ref.5230と何がどう違うのか。結論から言うと品番末尾と見た目が違うだけである。具体的には素材が、5230には設定の無いイエローゴールドである事。次に文字盤センターがギョーシェ装飾ではなくクロワゾネ(有線七宝)と称される特殊なエナメル加工で装飾されている事。最後が時針の形状がパテック特有の穴開き針(Pierced hour hand)では無くてRef.5130(2006~2015年、現代ワールドタイム第二世代)で採用されてファンも多かったアップルハンドが採用されている。分針はリーフハンドでほぼ同じ形状だ。個性的で押出の強いクロワゾネの印象によってレギュラーモデルの5230との相違感が圧倒的で、見落としてしまいそうになるがアップルハンドも特別感の醸成に大きく貢献している。
過去にベースモデルの5230を始め、第2世代5130も紹介してきた。さらにレア・ハンドクラフトの一つであるエナメルも或る程度(完璧に理解出来ているわけでは無いが・・)記述している。まさかの入荷に発注されたお客様同様にビックリして意気込んで撮影し、記事を書き始めたものの、さて一体何を書こうかしらん。
一体全体どうしてこのタイムピースがそれほど希少で追い求められるのか。これは重要な考察になりそうである。思うに幾つかの要素がありそうだ。まずレア・ハンドなのでそもそも年間の製作数が非常に限られる。価格がそこまで高額ではなく、永久カレンダーや手巻クロノグラフより手頃である為に購入を検討をする方が多い。カタログ外のユニークピース・クラスの文字盤全面クロワゾネ2針のシンプル自動巻時計よりも手頃で、購入過程はややハードルが低い(あくまで今回感じた事だが・・コロナが影響したか)。そんなこんな諸事情が有るが、恐らく最大の理由はその歴史に有りそうな気がする。ワールドタイムの父とも言えるジュネーブの時計師ルイ・コティエは、1937年~1965年の間にワールドタイムを400個あまり製作しているのだが、当時製作された世界地図をモチーフにしたクロワゾネ装飾のセンターダイアルを持つヴィンテージな個体が、2000年頃以降のオークションで「そら、もう、なんで?」だったり「・・・・・?」だったりが続いた。いつの世も数寄者のガマ口は、熱気球クラスだという事らしい。

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28年間で400個は平均年産数は約14個。『パテック フィリップ正史』によれば、アンリ・スターンが社長就任した1959年の年産が6,000個とあるので、わずか2.3%に過ぎない。その中でクロワゾネ技法による地球装飾バージョンはどの程度あったのかは判然としない。さらに上図の中央は北米大陸であり、左はユーラシア大陸とアフリカ、さらにオセアニアまでが広く描かれたバージョンとなっていて図柄にはかなりバリエーションがある。現代よりはクロワゾネに携わる職人が多かったと思われるが、手仕事ゆえ量産は利かなかっただろうからモチーフ毎の個体数は限定的と想像される。
単純比較は出来ないが6月1日の為替レート(1CHF≒112円)として、左の1415の売価が約219,000円。49年後の落札額が約3億840万円で単純計算では1,400倍。中央の2523は売価不明ながら1989年にCHF36万(4千万円強)で落札された経緯を持ち、その後23年で約3億1千万円に大化けしている。
2000年に40年以上の時を経て復刻された現代ワールドタイムのRef.5110にはクロワゾネバージョンが用意されなかった。2006年にその第2世代としてRef.5130がデビュー。さらに2年後の2008年に待望の現代版クロワゾネダイアル・バージョン(上画像右端)が蘇った。大西洋を中心に両側にヨーロッパ・アフリカ大陸と南北アメリカ大陸が描かれている。今回紹介の5231とほぼ図柄は重なるが、使用されている七宝釉薬の多彩さでは5231の方が上回っている様に見られる。同モデルでは他にWG・PT素材も製作された。図柄は全て異なっており、PTはメタルブレス仕様で今現在も継続生産販売されているが入手の困難度合いは、やはり棒高跳びの世界となっている。
生産中止YGモデル5130Jの市場価格だが、個体によって非常にばらつきがある様だ。OSVALDO PATRIZZI他の資料では上記の60万ユーロ(約7,400万円)等というとんでもない見積もりもあるが、一方で18,000ユーロ(220万円余り)と言うにわかに信じがたい見積もりもある。ネット検索での国内2次マーケットでは税込1,100~1,200万円辺りが多いようだ。現代ワールドタイムもクロワゾネ仕様になるとプレミア価格にはなっている。ただ、なってはいるもののノーチラスSSの様な狂乱相場ではない。これはやはり実用性の延長にある時計として捉えられるばかりでは無く、嗜好、趣味、鑑賞といった芸術的側面を有している事で、良くも悪くも対象顧客が絞り込まれてしまうからだろう。平たく言えばニッチマーケットの稀少モデルなのであろう。
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さて、クロワゾネ(仏:cloisonné、有線七宝)等のエナメル技法について書きだすとキリがない。そしてまた何度も繰り返しになるが、製作現場をおのれのマナコで確と見た事も無いので資料を探してきて、ふわふわと書き綴っているに過ぎない。上画像の左右を較べると右側で有線の何たるかが何となく判るだろうか。
久々のエナメル紹介なので、製作工程のおさらいを少し。まず文字盤素材(大体18金)
に図柄を描いて(鉛筆なのかペンなのか、良く知らない)、高さ0.5mmの金線(銀、銅の事も)をスケッチに従って、辛気臭く曲げながら接着剤で文字盤に貼り付けてゆく。次にフォンダンと呼ばれる透明の釉薬(粉状ガラスの水溶液)を塗布し摂氏750~800度辺りの決められた温度に熱した窯で焼く。時間は極めて短い様だ。焼結の状態を常に目視して焼き過ぎを防ぐ。この際に文字盤裏側にも透明釉薬の捨て焼をする。これは表側の塗布・焼成を繰り返す事で表裏の膨張率が異なって文字盤が反る事を防止するためである。金線で囲まれた部分に様々な色の釉薬を焼成後の色滲みを想像しながら塗布してゆく。これを焼成するが、釉薬は焼成で目減りするので、何度も塗布と焼成を繰り返して金線の高さまで焼成面を盛り上げてゆく。勿論、この時点で表面は凸凹なので金線もろとも全体を均一にポリッシュ(恐らく砥石と水)する。平滑になったら最後にフォンダン(透明釉薬)を塗布焼成し保護膜を作って完成。
15分、30分等のクォーターインデックスはかなり早い段階で植字されていると思われる。時分針用のセンターの針穴は元々開いているだろうが、焼結後にエナメル層を穿って開け直す必要があるはずだが、クラックが入るリスクがある。その他にも焼成時のトラブルもあるので、エナメル文字盤は歩留まりがとても悪い。ゆえに生産数が限られてしまう。幾多の艱難辛苦を乗り越えて完成した良品文字盤にPATEK PHILIPPE GENEVEのブランドロゴをシリコン転写してお疲れさまとなる。かなり書き込んだ過去記事はコチラから。
日本に於いてシルクロードから伝わった七宝が盛んに作られるようになったのは17世紀と割に遅い。さらに有線七宝は、明治時代になってから急速に技術発展したが、現在は後継者難もあり存続が危ぶまれている。
愛知県には2010年まで七宝町という町があって、現在も僅かに数軒が七宝を製作している。前から信州に行くときにでもどちらかの窯元?さんを訪問して、見学したいものだと思いつつ未だ実現できていない。彼の地の若き有線七宝職人達の挑戦が紹介された動画が有ったのでご興味のある方はコチラから。スイスのクロワゾネダイアルそのものの製作工程動画は、残念ながら適当なものが見つからなかった。

Ref.5231J-001
ケース径:38.5mm ケース厚:10.23mm 
ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:YGのみ
文字盤:18金文字盤、クロワゾネエナメル(中央にヨーロッパ、アフリカ、アメリカ大陸)
ストラップ:ブリリアント(艶有り)チョコレートブラウン手縫いアリゲーター
バックル:18金YGフォールドオーバークラスプ
価格:お問い合わせください

マイクロローター採用の極薄自動巻Cal.240をもう何度撮影した事だろう。でもこの角度から捉えたのは初めての気がする。初見でどうという事なく、必要な仕上げをぬかりなく極めてまじめに、そう必要にして充分に施されているのはパテックのエンジン全てに共通である。奇をてらっておらず、飽きが来ないのは表の顔だけじゃなくパテックのデザイン哲学の土台なのだろう。
世の中に彼女にしたい美人時計は一杯あるが、雨の日も、晴れの日も、健やかなる時も、病める時も、絶品の糠漬けを作り続けてくれる愛妻時計の趣を持っているのがパテック フィリップの最大の魅力だと思う。
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Caliber 240 HU

直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:239個 石数:33個 
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅱ No.01
PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅲ No.07
PATEK PHILIPPE THE AUTHORIZED BIOGRAPHY パテック フィリップ正史(Nicholas Foulkes ニコラス・フォークス)
COLLECTING NAUTILUS AND MODERN PATEK PHILIPPE Vol.Ⅲ(Osvaldo Patrizzi他)

文責・撮影:乾 画像提供:PATEK PHILIPPE S.A.

ようやく峠を超えた感がある新型コロナ禍。何も良い事が無かった様だが、パテック フィリップの2020年新作発表が、一旦見送られた事で個人的には助かった事が一つ。昨年秋から今春に渡って悪戦苦闘して連続投稿してきた『パテック フィリップ正史』の為に遅れてしまった2019の新作モデルを今頃でも紹介が出来る。まあコロナのデメリットと拙ブログのメリットでは全く勘定は合わないのだけれど・・・

本日のご紹介は、とてもユニークなカラトラバ・ウィークリー・カレンダーRef.5212A-001。2015年に良くも悪くもパテックらしくないと話題を振りまいたカラトラバ・パイロット・トラベルタイム5524G-001初見時の驚愕と同じ様なファーストインプレッションを覚えた。ただパイロット・トラベルがパテック フィリップ・ジャパンのトップN氏から「ハミルトンじゃありません」と紹介され、巷では"ゼニス?"と噂されたようにパテックらしくないが、何処かで見たような既視感が有り過ぎたのに対して、ウィークリー・カレンダーは中期出張者向けのレンタルマンションカテゴリーの様な既聴感は何処となく感じたが、それまで全く見た事の無い顔をしていた。
これはパテックを始めあらゆるブランドのタイムピースに於いて既視感が全く無いという事であった。しかしながら伝統に則った正統カラトラバケースの品の良さから来るのか個人的には"今迄に見た事も無いパテックなのだが、とてもパテックらしい"と言うパラドクシカルな好印象を初見から抱かせた時計だった。
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ラグは最近のパテックで好んで採用される段差付ラグ。永久カレンダーRef.5320Gや手巻クロノグラフのRef.5172G等は2段仕立てだが、ウィークリー・カレンダーに採用されたスッキリ一段仕様も、この時計の全体から来るカジュアル感には好もしい様な気がする。尚、このラグ形状はPPマガジン(Vol.Ⅳ No.6)のRef.5320紹介記事に記載が有り、PATEK PHILIPPE GENEVE Wristwatchesに掲載されている下画像左のRef.2405(1945年)に辿り着く。1960年代にも結構採用されたデザインで下画像右のシリーズ生産されたらしいクロワゾネ(有線七宝)モデルで顕著なようだ。
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ストラップも最近のパテックお好みのカーフ、しかも明るめのオレンジっぽいギリギリのライトブラウン系統のお色目。少し太めの白っぽくラフなステッチ。アクアとノーチ以外のシリーズではチョッとお久のステンレス素材仕様。と全てのお膳立てはカジュアルだ。
機能は大きく異なるが、ステンレスモデルの前任者とは年次カレンダー・フライバック・クロノグラフRef.5960/1Aの白文字盤(2014-2017)・黒文字盤(2017単年度)の2モデルになる。
しかし、このモデルは元々2006年に画期的にして現代的なパテック社自社開発設計・製作のマニュファクチュール・フライバック・クロノグラフ・キャリバーCal.CH 28-520系を初搭載しプラチナケースを纏ってセンセーショナルなデビューを果たしたRef.5960Pの素材違い・ストラップ仕様違いであって完全なオリジナルモデルとしてステンレス素材で唐突いきなりリリースされたわけでは無かった。しかし素材を問わず5960は売れに売れたクロノグラフモデルだった。特に初期のプラチナモデルは結構長期間に渡りプレミア価格が2次マーケットで発生した。個人的にはそれまでのプレミアパテックというのはアンティーク市場を除いて、現行モデルではノーチラスSS3針Ref.5711/1Aにほぼ絞られていたが、このプラチナ・クロノグラフが今日のプレミアパテック一杯状態の引き金になった印象がある。そう強烈な印象がある。

そういう意味ではラグジュアリースポーツ系でも無く、素材バリエでも無く、SSにもかかわらず限定モデルでも無いウィークリー・カレンダーは現行パテックラインナップに於ける異端児である。発表資料によればRef.5212と言う品番にはルーツがあるとされ、1955年製作のユニークピース(世界に唯一つ)Ref.2512の品番数字順の入替がリファレンスに反映されたとある。このルーツモデルは現在ジュネーブのパテック フィリップ・ミュージアムに所蔵されている。後述するがルーツモデルの品番2512には1952年製と言うのもあって、1955年製モデルの資料が乏しく画像もすぐ見つからず、ミュージアムの資料にも見当たらない。
一体どちらがウィークリー・カレンダーの原点なのか判然としなかった。最終的にPPJからアドバイスで昨年秋発行のPPマガジンVol.Ⅳ No.7の現代ウィークリー・カレンダー紹介記事にて下のルーツモデル画像(左)を得た。既読の記事でありインデックスを貼ってPPマガジン記事まとめエクセルにも書き込んでいるのにこの様だ。コロナで自宅での早飲み・深酒がアルチューハイマ―を進行させたのかもしれない。ともかく色々と厄介でお騒がせな奴だ。
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正確なリファレンスは2512/1となっている。現行パテックの品番概念なら"/1"が末尾に付くと金属ブレスモデルをまず想定するのだけど、何ともシックなストラップ付のドレスウォッチだ。文字盤も漆黒なのでYG製にしては地味な仕上がりでウィークリー・カレンダーRef.5212Aとの類似点は、我が家には未着のアベノマスクの様な小さな段差付きラグが一段仕様になっている点とベゼルがミドルケースに合体する部分が巻き込まれた様な個性的なデザインとなっているケース形状にある。PATEK PHILIPPE GENEVE Wristwatchesの巻末資料にある1952年?製ラージラウンドケースに手巻センターセコンドCal.27 SC搭載モデルの記載があり年号は違うがこのモデルと思われる。過去のタイムピースにまつわる蘊蓄話の年号のあやふやさと言うのは良くある話で、過去ファミリー継承がたったの一度しか無く、資料の散逸が少なかったであろうパテック社ですら避けられぬのだから、他のブランドは推して知るべきだろう。
しかし驚かされるのが時計ケース径で46mmもある。当時の時計としては馬鹿でかいのでユニークピースという事からして、当時の何処ぞの超セレブリティからの特注品だったのかもしれない。尚、PPマガジンVol.Ⅲ No.8のオークションページに、この個体の落札記事(右側画像)が有る。事前見積りを6倍上回る962,500USドル(2020/6/1レートで1億を少し超える!当時のレートでも9千万超)。
ところで、各種資料で簡単に確認できる2512は、YG製スプリットセコンドクロノグラフ(Cal.13''')であり、ダイアルは黒でアラビアインデックス。ミュージアム資料によれば1952年製とあり、1998年に発表された超人気大振り手巻クロノグラフモデルRef.5070のルーツとも記載があり、こちらの説は確かに頷ける。

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右画像のRef.2512は、ミュージアム公式ブックには1950-1952年(ユニークピースなので2年かけて一個作った?)とあり、左のRef.5070のデザインモチーフになったと記載がある。さらにアンティーク資料(OSVALDO PATRIZZI著)によれば1950年に製作され1952年7月14日にイタリア・トリノの時計店ASTRUA&C.,にて販売されたとある。
枝葉末節はさておき上画像の両者は瓜二つと言って良い。しかし5070の42mmもミレニアム前後頃には充分に大きかったのだが、50年代当時の45mmって異様にでかい。OSVALDO著のキャプションにはAVIATOR'S WRISTWATCHとあってパイロット仕様ならではという事か。尚、30分計の針形状が凝ってますナァ。
脱線ついでに全くの個人的戯れとして想像するに、近似の品番、YGケース+黒文字盤、一段の段付きラグ、ほぼ同寸の巨大なサイズ、製作年代も同じとくれば、相当恰幅の良いイタリアはトリノの大旦那が地元の贔屓時計店を通じて同時、或いは前後して発注された時計達ではないのかと思うのは穿ち過ぎだろうか。まあ、あれやこれや気の済むまで妄想を膨らませる事が出来るのもコロナのメリットと言うべきなのか。
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優美なカーブを描くウイングレットラグとケース。冷間鍛造で鍛えられたケースを自社で切削加工し全面に複雑なポリッシュ仕上げがなされている。ボックス・タイプのサファイア・ガラスが"風防"を彷彿とさせてヴィンテージテイストを与えている。
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暖かみのあるクリーム系の文字盤色はパテックお得意で、他ブランドがこの系統の色目使いで成功する事があまり無い様に思われる。しかし何と言ってもこのダイアルの最大の特徴は個性タップリの手書き文字に或る。勿論製造過程はシリコンスタンプによる転写方式によるが、原稿は全てパテック社所属デザイナーの描き起しだ。彼の地の人々の手書き文字と言うのは我々日本人から見ると殆ど謎解き象形文字にしか見えない。しかしこの新規描き起こし文字は素晴らしく読みやすく暖か味に溢れている。ヨーロッパ人によるアラビア数字とアルファベットの楷書体?と言えばよいのか。
我らアジア人には年間を50数週で表現したり把握したりはなじみが薄いが、例えばコロナ自粛が一段と緩和されそうな6月1日は23週目となって、文字盤上の26分辺りを指針する。見ようによっては今年も早くも半分間近と焦らせられるという塩梅である。意外に便利なのか、ストレスフルなのか。因みに5~6年に一度53週目の有る年がやってくるらしい(詳細は面倒で不明)が、2020年の本年がそれにあたるらしいので縁あってご購入された方は年末に是非ともお確かめあれ。
そして、個人的にこの文字盤で出色は読み取りの良さである。カレンダーの要素は内側から、曜日、週、月と3本の針表示が有り、3時位置にはノーマルな日付窓表示。さらに時分針とセンター秒針もあって、針は全部で5本ある。これだけのプリント表示と針が有りながら決して視認性は悪くない。これはバトン型アワーインデックスとドフィーヌ形状の時分針(いづれもWG製)両者が酸化処理でマットな漆黒に仕上げられている事と、残るPfinodal(銅合金の一種)製の3針もロジウム・プレート加工されており、非常に文字盤のベースカラーとのコントラストが良好な事による。また各針の長さ設定が絶妙である事も大きく視認性に寄与している。

Ref.5212A-001
ケース径:40mm ケース厚:10.79mm ラグ幅:20mm
防水:30m サファイアクリスタル・バック
ケースバリエーション:SSのみ 
文字盤:シルバー・オパーリン文字盤、転写によるブラック手書き書体
インデックス:4面ファセット酸化ブラック仕上18金WGインデックス
時分針:2面ファセット酸化ブラック仕上18金WGドフィーヌハンド
曜日、週、月の各指針:赤い塗装先端を備えたロジウムプレートPfinodalハンマー型表示針
ストラップ:ハンドステッチ・ライトブラウン・カーフスキン
クラスプ:ステンレス素材のピンバックル

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解像度一杯いっぱい、愛機Nikon D300ではこれが限界。ウィークリー・カレンダーの売りの一つがこの新キャリバーCal.26-330 S C J SEだ。全くの新設計では無く現行の主力フルローター自動巻エンジンであるCal.324系を徹底的に改良している。大きな改良ポイントは2つ。まずはサファイアクリスタル・バック越しに目を奪われる上記画像の中心部の金色のムカデっぽい奇妙な3番車。従来は4番車(秒針)に付く秒カナをベリリウム製のバネで抑える事で秒針の挙動安定を図っていたが、LIGA製法(独語:X線を利用したフォトリソグラフィ、電解めっき形成での微細加工)によって製造されたバックラッシュ防止機能を持った画期的な歯車を3番車に採用している。歯車一つ一つがバネ構造になっている為にこの歯車には従来のアガキ(微細な隙間)が無い。
Cal.26_330_th_image_b.pngもう一つが自動巻機構の見直し。従来の巻上げシステムの中に新たなクラッチ機構を加え、さらに手巻時に於ける自動巻上げ機構へのダメージを緩和する減速歯車が導入されている。元々熟成度合いが高かったCal.324は信頼度と耐久性、さらにメンテナンス性も高められた。またこれまで採用に積極的でなかったハック(時刻合わせ時の秒針停止機能)が採用されている。携帯精度が恐ろしく良いムーブメントなのでこれは嬉しい。さらに新規のウィークリー・カレンダーは瞬時では無いがトルクをため込んでの半瞬時日送り式が採用されている。尚、リューズ操作で行う日付調整は禁止時間帯の無いエブリタイムストレスフリーとなっている。これら全てが相まって324の派生キャリバー名では無く、Cal.26-330系として新たな名称を与えられた。でも、26.6mmの直径と3.3mmの厚さからの命名発想そのものは1960年頃までパテック社で日常的に採用されていたわけだから"温故知新キャリバー"と言えそうだ。ただこの秀逸新エンジンにも唯一残念があって、何度も触れているが現代自動巻としてはパワーリザーブが少々短い。せめて72時間を近い将来のマイナーチェンジで実現される事を切に願う。
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Caliber 26-330 S C J SE
自動巻ムーブメント センターセコンド、日付、曜日、週番号表示
直径:27mm 厚み:4.82mm 部品点数:304個 石数:50個
※ケーシング径:26.6mm
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅲ No.8
PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅳ No.7
PATEK PHILIPPE GENEVE Wristwatches (Martin Huber & Alan Banbery)
COLLECTING PATEK PHILIPPE Vol.1(Osvaldo Patrizzi)
文責・撮影:乾 画像提供:PATEK PHILIPPE S.A.

※似たような内容で重複も有りますが、参考ブログ記事はコチラ 

【お知らせ】
最後までお読みいただきまして有難うございます。
先日、パテック社より気になる情報が来ましたのでご紹介いたします。
日本を含め世界に於いて、コロナ禍を悪用した詐欺まがいの悪徳な販売提案事例が散見されているとの事です。特に入手が困難なモデルを餌に、あたかも正規ルートであるかのようなドメインを使用して販売代金をだまし取る手口の様です。疑わしき事案に遭遇されましたら下記あてご確認をされる事をお勧め致します。

パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター:03-3255-8109

【お詫びと訂正】2020/6/13
本文中のラグの仕様説明について誤りがありました。当初記載のウイングレットラグでは無く、段差付きラグ(特に固有名称無し)が本モデルラグの仕様となります。6/13付にて訂正加筆致しました。

結構行楽日和が多かった自粛GWも終わった。しかしながら新型コロナ感染拡大との戦いは、まるで第三次世界大戦の様相となっている。GDP第2位の中国は、どうやら終息を迎えた様だが1位のアメリカやG7に名を連ねる先進国は満身創痍としか言いようがない。途上国はこれからのように見えるが、実態の把握がどこまで出来ているのか疑わしい。検査数の少なさで叩かれている我が国だが、個人的には首都圏を始めとした大都市圏も含めて、まあまあ頑張っていると思う。ごく一部の例外を除いて、流石に日本人は自主的自粛が出来る素晴らしい民族なのだろう。しかし経済への影響は想像すら出来ない。戦後の復興期が何時から始まるのか判らないが、たぶん秋ぐらいからしかまともな商売は出来そうな気がしない。
今年はホワイトアスパラもソーセージも楽しめなかった異常な春だった。さらに来年1月に延期?を決めたバーゼルワールドからパテックやロレックス等のメジャーブランドがそっくり撤退を決める異常事態となった。結果的にこの流れを受けてバーゼルワールド自体が開催の中止を決定した。
来春の新作発表は4月にジュネーブで開催予定の"Watches & Wonders 2021"(旧名称:S.I.H.H.,通称:ジュネーブサロン)がジュネーブ空港直近の見本市会場のパレ・エクスポ(モーターショーで有名)で開催される。カルティエを筆頭としたリシュモン・グループが、その核を成しているが、バーゼルワールド同様に昨今は、集客に陰りもあって開催期間を短縮したり、一般客を入場させたりしていた。正式な話としては聞いていないが、パテックやロレックス等のバーゼル撤退組も同時期にパレ・エクスポ内での開催を検討しているようだ。ただ既存のW & W 2021に組み込まれるのか、別の枠組みを目指すのかは不明である。
世界の時計業界に於ける大激震真最中なのだが、今現在注目しているのが2020年新作発表の扱いである。大御所のロレックスとパテックが相談したのかどうかは知らないが、新作の発表を見送っている。来年まで持ち越すのか、世界が有る程度落ち着きを取り戻して商売も普通に出来るような状況を待っているのか。いづれかは判らないし、落ち着くタイミング次第という事も有ろう。ただ個人的には賢明だと思うのが、現状でWEBのみ使って生産の裏付けも無いままに中途半端に発表しても勿体ないだけではないかという事だ。
カルティエを筆頭にしたリシュモンや、ウブロやゼニス等を要するLVMHグループ、この二大時計コングロマリット傘下のブランドがニューモデルをこぞって発表している。スォッチグループでは代表的なオメガは発表を控えている様だが、ブレゲやブランパンは新作発表をしていて対応が分かれている様だ。

しかし、第二次大戦の戦後復興以来の経済不況がやって来そうな中で、ラグジュアリーウオッチの価値と言うものはどこまで担保されるのだろうか。想像するにあらゆる商品分野で必要最低限の実用性を備えた低価格な商品が求められるようになるだろう。給与生活者をメインターゲットにしてきたミドルレンジ(そこそこのステータス、若干オーバースペックな実用性、購入顧客の半分は分割支払いが前提な価格設定)は、そもそも厳しい状況であったが、総崩れになる可能性が高い。ではハイエンドはどうなるか。此処は元々の価値がしっかり裏打ちされているブランドやモデルはある程度売れ続けるが、そうでない物は一気に成長したブランドが多いのでストンと落ち込んでしまう可能性がある。兆候が出始めると投げ売りが発生し、ブランド価値が大きく損なわれるかもしれない。
パテック フィリップに関しては、価値の裏付けがかなりしっかりしている。むしろ、今現在世界中で若干デフレ気味と言われているが、戦後は過去いづれもハイパーインフレになっているので保有価値がさらに上がる可能性がある。商品トレンドは保守傾向に傾くと思われるが、パテックは元々がコンサバ志向なので路線変更は不要に思われる。

暗い話ばかりで申し訳ないのだが、せめて興味を共有して面白く楽しみたいのが棚上げになった2020パテック フィリップ新作予想!尚、ブランドからは全く情報は頂いておりませんし、例年若干のリーク情報が聞こえるのだが、今年は全くそれも無し。完全な個人的想像、むしろ願望に近い。
1、ノーチラス 永久カレンダー ローズゴールド 5740/1R-001
現在WGで人気モデルとなっている5740/1G-001のRG素材追加、文字盤は普通ならブラウンだが、個人的希望は艶感の有るブラック。この追加で多少なりとも人気分散されスムーズな受注と納品に繋がれば嬉しい。
2、カラトラバ クンロク 自動巻3針カレンダー 5596G,R-001又は6296G,R-001
昨年、生産中止となったド定番だった5296の後継モデル。ここ数年のカラトラバシリーズのダイエットは個人的には少し異常。実用時計最右翼のモデル復活は絶対必要。最近の傾向でYGは無い様な気がする。
3、ノーチラス 年次カレンダー SS 追加文字盤 5726/1A-015
こちらも異常人気で、生産中止迄に恐らく納めきれない2019年新作5726/1A-014の状況を少しでも改善してもらえたらのリクエストモデル。文字盤カラーはシックな濃い目のグレーだと復活になるのでブラックか。
4、アクアノート ・ルーチェ自動巻 SS 5069A-001,010,011
此処数年のレディースコレクションの見直しトレンドがクォーツからメカニカルへの移行。特に実用レディス筆頭だったTwenty~4®に大ナタが振るわれ、レクタングルケースの人気クォーツモデル群が全廃された。
さて同じく今年全モデル生産中止が発表されたアクアノート・ルーチェのクォーツSSモデルの5067Aは毎年のようにニューカラーを追加しながらソールドアウト確実なベストセラーだった。仮にメカニカル化されれば価格は200万円台前半になりそうだが需要は凄くある。カラーはホワイト、ブラックはマストで他に1~2色出れば嬉しい限りだ。
5、ゴンドーロ メンズ レクタングラ―
一番無さそうなシナリオだが、今現在ゴンドーロにはメンズモデルが存在しない。しかし終盤のリストラモデルが売れていなかったかと言うとそこそこ売れていた。素晴らしい角型のキャリバー2型がお蔵入り状態は一体どうした事だろう。具体的な時計像は想像困難だが、何か出てきても良いと思うので、敢えて。

拙ブログを見て頂いてのメールや電話でのお問い合わせを、時々頂いているのですが、コメントが来た事が有りません。今回はご興味があれば、是非とも新作予想をされてみませんか?勿論単なる希望モデルで構いません。今回記事で予想した同一モデルでも嬉しい限りです。実際のモデル発表が、いつどのような形になるかは判りませんが、見事正解の方にはパテックのオリジナルノベルティーをプレゼント予定です。ご応募は今月末までとさせて頂きます。
実はこの企画は4月に当店の一軒隣にオープン予定だった奈良県初の高級ホテル『J.W.マリオット ホテル』(未だに開店時期未発表)の施設を活用しながら『パテック フィリップ展』をバーゼルワールド2020直前に開催し、会場で新作予想をして頂く予定でした。残念ながら新型コロナ過で展示会は中止しましたが、せめて新作予想企画だけでも楽しんで頂けたらと思う次第です。

文責:乾

日々、新型コロナウイルス関連のバッドニュースが相次いでいる中、4月30日から開催されるスイス時計最大の祭典"バーゼル・ワールド"と、それに先立つ4月下旬に開催予定だった"従来の通称ジュネーブ・サロン"の開催も早々と中止が決定された。来年はかつてない無いほど早い1月末の厳冬のバーゼルワールドとなる様だ。今年は久々に2大時計見本市が良い季節に連続開催される事になって、大きな盛り上がりを期待していただけに大変残念だ。新型コロナウイルスのリスク拡大の現状況では致し方ない。
ところで今安全な場所の一つとしてクリーンルームに近い時計のファクトリーが考えられる。白衣を着用し、エアーシャワーを浴びて入室する。高められた室内圧によって常時換気されている。そこそこ隣と距離も或る作業机で指サックを嵌めた手を黙々と動かす時計師達。会話もほぼ無いのでこれほど安全な環境は無さそうだ。ひょっとしたら今年は商品の入荷はスムーズかもしれない。

前回までの"パテック フィリップ正史"要約をモタモタと時間を掛け過ぎて、2019年の新製品紹介が今回からとなってしまった。
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2017年に発表されたジャンボサイズのアクアノートの新色追加モデルRef.5168G-010。ケース素材はホワイトゴールドで変わらないが、何とも大胆なカーキグリーンなる緑色が採用されている。昨年の公式HP上でのモニター画面初見では「個人的にはこれは無い!」の印象だった。好き嫌いがはっきり分かれるモデルで初出のブラック・グラデーションがかかったブルー文字盤に比較してご希望者はかなり少ないだろうと思っていた。バーゼルで実物サンプルを見た印象もほぼ同じで、この色違い2モデルは同じ時計では無い感じがする。
勿論色が違うのだが、最大の違いは"艶"感の有無だ。ブルーはグラデーション効果も有ってダイアルの艶感がしっかりある。通称"トロピカル"と呼ばれ紫外線による劣化に強いコンポジット素材のパテック フィリップ独自の特殊なラバーストラップにも少し艶がある印象だ。対してグリーンの方は、「良くぞ此処まで」と言いたいほど艶が取り除かれている。ストラップの表面加工は同じだと思うが、色目のせいなのか艶っ気が全く感じられない。この緑色は和風では"国防色(古っ!)"、英語では"ミリタリー・グリーン"とも言えそうだが、個人的には或る顧客様がおっしゃった"抹茶色"が一番しっくりする。ただし、このトロピカルストラップは着用を重ねると、どの色でも表面が次第に磨かれ艶が出る。恐らく関心を持たれるのはアウトドア好きでミドルエイジ迄と予想していたが、見方によっては"枯れた"感を求めるご年配の方まで幅広い年齢層に受けが良い。
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バックルは一昨年2018年にデビューしたジャンボサイズ仲間のクロノグラフモデルRef.5968A-001から新規採用が始まったニュータイプの両観音仕様。4か所に増えたキャッチで外れにくいが、両側2か所のプッシュボタンで外しやすい優れモノだ。ただ、やや大きめのボタンが、人によっては着用時に少し手首に不快に接触して着け心地を損ねると言う意見もある。特に旧タイプバックルのご愛用経験の有るオーナー様は気にされる方が多い。
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見慣れてはいるけれど、撮影の度に惚れ直すムーブメントの後ろ姿。21金ローターも地板もやり過ぎていないけれど上質極まりない装飾(ペルラージュやコート・ド・ジュネーブ)が施されている。完全に熟成期を迎えたCal.324系は徐々に昨年発表されたニューキャリバーCal.26-330系に積み替えられると思われる。でも画期的なシステムを盛り込んだ新エンジンには無い信頼感が最終期のエンジンにはあって、これはこれで捨てがたい。

Ref.5168G-010
ケース径:42.2mm(10-4時方向)ケース厚:8.25mm ラグ×美錠幅:22×18mm
防水:120m ねじ込みリューズ仕様
ケースバリエーション:WG(カーキグリーン) WG(ブルー) 
文字盤:カーキグリーンにエンボス加工 夜光塗料付ゴールド植字インデックス
ストラップ:カーキグリーンコンポジット《トロピカル》ラバーストラップ アクアノート フォールドオーバー クラスプ付き
価格:お問い合わせ下さい 


Caliber 324 S C

直径:27mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、ムーブについての過去記事はコチラから

文責・撮影:乾





今回も随分と日が空いてしまった。例年2月前半は商売が暇な時期という事で、各ブランドが展示会やらミーティング、イベント等を仕込んで来るので、やたらと出張が多い。特に今年は1月下旬から4週連続で東京往復をした為、まとまった時間が取れなかった。
それは言い訳であって、いよいよ残り僅かになってきた正史のまとめは、ほぼ直近20年間の出来事なのだが、何だかとっても書き辛いのが遅延の大きな理由だ。この時期はフィリップからティエリーへの権限移譲がなされた大切な時期なのだが、フィリップ自身は徐々に黒子を決め込んで行く。かといってティエリーの色が全面に出てくるにはまだ少し移行期間が必要だという事もあるのだろう。
フィリップの敷いたレールに乗っかって生産体制の垂直統合化がより一層進化した時期とは言い過ぎだが、景況に多少の波は有っても高級機械式時計市場への追い風が常に吹いていた良い時代だった。20世紀までのピンチとチャンスがジェットコースターのようにやってきた波乱と背中合わせではない比較的順風満帆な20年を語っても、面白みには欠けてしまうのは止むを得ないかも知れない。
大きなトピックスとしては2009年にパテック フィリップ社独自の品質基準であるパテック フィリップ・シール(以下PPシール)を発表・採用し、それまでの基準として採用していたジュネーブ・シールの使用中止がある。そもそもジュネーブ・シールは1886年にジュネーブ市議会が同地で製造された機械式ムーブメントの製造技術を保護するために「ジュネーブ天文台の時計作動検査に関する法律」を可決した事に始まるとウィキペディアにはある。基準は12条からなり認定されたムーブの地板にはジュネーブ州の紋章の刻印がなされた。
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高級機械式腕時計のお墨付きとしてCOSC(Controle Officiel Suisse des Chronometres)いわゆるクロノメーターと並ぶ2大基準であることは有名だ。
実はパテック社が、ジュネーブ・シールに関しては最長にして最大の擁護者であり、記憶違いでなければ高級時計ブランドの中で、検査や認定過程を経ずに全ての機械式ムーブメントにジュネーブ・シールを自社の製造過程で刻印が許可された唯一のブランドであると聞いた。逆にクロノメーター基準に関してパテックは過去全く基準として採用していないのは興味深い。実際随分長きに渡って-3秒~+2秒を出荷基準としている彼らにとって費用と時間を掛けてCOSCを取りに行くメリットは無いのだろう。
さて、なぜ独りよがりにも聞こえそうな自社基準PPシールなのか?フィリップ・スターンは、いくつかの理由を挙げている。まずジュネーブ・シール基準の最終見直し年度は、半世紀以上も前の1957年であまりにも時代にそぐわない基準になっている。ムーブメントの美的基準が中心で、時計精度の規定が無い事。さらにジュネーブ州内での製造・調整という制限が、現在のスイス時計産業の製造拠点分布の現状にはそぐわない事。

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個人的には、COSCもジュネーブ・シールもさらに新参のカルテ・フルリエ(2004年にショパールやパルミジャーニ等が共同設立した独立検定機関)も今日ではあまり意味を成さないと思っている。そのいづれもがコストが掛かっていて時計の価格に乗っかっている。国産も含めて中堅以上のブランドの機械は相当に高精度なので文字盤に記入されるデザイン要素だけの様な気がする。確かに見慣れたロレックスのダイアルに「SUPERLATIVE CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED」の文字列が無ければデザイン的に落ち着かないのかも知れない。でも100%クロノメーター宣言したブライトリングもCOSCが購入の決め手になっているとはとても思えない。
PPシールについては消費者や購買者へでは無くて、ブランド自身の製品基準コミットメントの意味合いが強いと思っている。
その路線を貫く事が、同社をあらゆる部品の内製化(マニュファクチュール度合いの向上)へと向かわせる事となった。2001年"カラム社"買収(ハイエンドなケース製造スペシャリストでスタッフ80名)、2006年"ポリアート社"取得(ポリッシング専門工房でスタッフ60名)、同年SHG社に投資(高度ジェムセッティング工房でスタッフ50名強)。これらの事業体はジュネーブから車で1~2時間のル・クレ・デュ・ロクルの近代的工場に収容されている。その他にも本社工場の直近にはケースとブレスの製造拠点としてペルリー工房を2003年から稼働している。
スターンファミリーのルーツは1932年にジャガー・ルクルトと競ってブランドを入手したスターン兄弟文字盤製作所の買収に遡る。2004年に古くからの名門ダイアルサプライヤーであった"フルッキガー&フィス社"(1860年創業)が財政難に陥っているのを救済すべく買収し、70名の職人を得て文字盤製造事業復活を果たした。尚、現在社名を"フルッキガー文字盤会社"として年産12万枚のダイアルを生産している。パテック社以外の著名ブランドへも供給がなされている。ちなみにパテックの文字盤はインデックスのプレス成型仕上げが一切採用されていない。シリコン転写の文字付けは勿論あるが、立体的なインデックスや装飾は全て手作業によるアップリケ(植字)仕上げである。2012年に現地見学の機会を得たが、文字盤工場と言うのは作業内容が判り易いので無茶苦茶に面白い。是非再訪の機会を得たいものだ。
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上画像:2009年にPPシール発表に際して撮影されたスターン親子
さて、結構有名な事業継承の逸話は2006年のクリスマスの出来事である。一時行方不明となっていたウォッチが巧妙に仕込まれたUS10ドル金貨をフィリップ・スターンからコイントスで受け取ったティエリー・スターンへと事業は引き継がれた。まさか作り話ではなかろうが、少々芝居がかっていてこのくだりは飛ばして先を急ぎたい。※但し、
実際の社長就任は2009年だった。
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新社長ティエリーの最初の大仕事は、2014年のブランド創業175周年記念イベントであり、その象徴は7年の歳月を要して開発された超複雑の音鳴り系の怪物傑作時計グランドマスター・チャイムRef.5175に尽きる。たった7本しか製造されなかったが、現在現行コレクションとしてカタログ掲載されているRef.6300Gとして販売されている。時価で2億円以上する高額時計ながら多数の注文があると言うから驚きだ。相当な購入実績が無いとまず入手は困難だろう。因みに昨年11月のオンリーウォッチ(2年に一度の難病治療目的のチャリティーオークション)にパテックは、ステンレス素材のグランドマスター・チャイムRef.6300A-010を出品。同オークションでの最高落札モデル常連であるパテックは、今回も3,100万スイスフラン(落札前日終値レートで34億弱)という腕時計史上最高額で落札されている。しかも最後まで競り合ったのが30歳前後の方々という事であり、あまりに凄すぎて言葉を失ってしまう。

二つ目のティエリーの成果は、2012年ドバイを皮切りに世界主要5都市で開催された"パテック フィリップ・ウォッチアート・グランド・エグジビション"である。昨年秋のシンガポールが記憶には新しく、真っ赤なアクアノートに興味を抱かれた方も多いと思う。
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出来れば個人的に弾丸ツアーで訪問したかったのだが、都合がつかず断念した。
「レベルの高い時計愛好家が多いとされる日本(東京)が近い将来選択されても不思議はないので大いに期待したい・・」
とパテック フィリップ ジャパンのスタッフに昨年話していたのだが、2022年東京での開催が正式に決定された。会場や日程は未定ながら、絵画館で実施された2014年の175周年記念イベントの数倍の規模での開催となる。前例に従えば日本の正規販売店の最重要顧客向けに限定モデルが用意される事は間違いないだろう。この特別なモデルの争奪戦は凄い事になるだろう。パテックによる購入希望顧客の選択基準は全く想像出来ないが、全くの私見として昨今のスポーツモデルへの人気集中があまりにも酷い傾向なので、各シリーズを偏らずにバランスの良いコレクションを収集している方にご販売が出来ればと思っている。


最後はさらなる工場の拡張で"新社屋PP6"の名称で現在の本社工場に隣接して2015年から工事が始まり既に完成している。床面積5万平方メートルの5階建てで建物の長辺が200mという巨大建造物だ。これで少しは人気モデルが増産されるという事は無く、主に部品製造とレアハンドクラフトの工房や時計技術者の教育やトレーニング施設として使われる様だ。人と物の両面でさらに自社化を推進するための新社屋のようである。こちらも是非とも現地見学をしてみたい。

尻切れトンボの様な最終回になってしまったが、最後にご案内したいのが"パテック フィリップ正史"の巻末にある三つの付表である。一つ目は時計品番(リファレンス)索引で、品番管理が始まった1932年のRef.96から2015年迄の全モデルを網羅している。品番で追っかければ、キャリバー・発表年(初出)・製造素材が一目でわかる。二つ目はキャリバーナンバー毎にどの時計に搭載されていたのかが一目瞭然だ。三つ目はやはり1932年から各年に発表製造された時計の品番が網羅されている。製造終了年度が記されていないのが残念だけれど非常に便利な資料である。
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5カ月強に渡った正史の要約は、正直なところ何度か挫折しそうだった。でも経営者のビジョン(信念)とたゆまぬ努力がブランドや企業を構築するという当たり前すぎるが、自分自身も含めて中々出来ていない事をスターンファミリーから再認識させられた貴重な経験となった。長文にお付き合い頂きありがとうございました。


文責:乾

参考・引用:PATEK PHILIPPE THE AUTHORIZED BIOGRAPHY パテック フィリップ正史(Nicholas Foulkes ニコラス・フォークス)
「パテック フィリップ正史(日本語版)」は正規販売店にて購入可能です。在庫の有無は各自ご確認下さい。税別24,200円
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出来ればフィリップ・スターン時代は前後半の2回で終わりたかった。正直9月半ばに正史要約を始めた時は2ヶ月位で終えるつもりだった。何しろ2019年新製品が徐々に入荷する時期であり、その紹介は非常に興味深いし拙ブログを構成する大事な記事だからである。しかし正史要約の途中にそれを挟む事は、煩雑となり中途半端すぎて出来なかった。かくして取り敢えず入荷してくるニューカマーについては、撮影だけ済ませてご納品という事になった。撮影から原稿着手迄の時間が長くなると、どうしても印象が薄れがちになる。撮影と相前後して手元に現物を置きながら、原稿を同時進行して行くのが理想的なのだが・・
正史要約がとうとう4か月目に突入してしまった。それ程読めば読むほど正史は奥深く面白い。特にフィリップ・スターンの功績があまりにも偉大であるため、3分割となってしまった。本稿では創業150周年祝賀を成し遂げる事でスイス機械式複雑時計の復活を確信したフィリップが、家族経営による独立路線に邁進し、確立し、そして維持継続して、将来的なティエリー・スターンへの経営継承の為に時計製造の垂直統合を図り、事業規模拡大をダイナミックに進めてゆくフィリップ・スターン経営の総仕上げ編となっている。

フィリップ・スターンは1970年代初めに将来の年間生産量を約25,000個まで増産したいと考えていた。しかし下方修正余儀無しで1990年に17,500個へと目標は定めなおされた。大きな称賛を浴びたキャリバー89の様な超複雑時計の開発は、ブランドの技術的優位の確立に貢献しても、僅か4個の市場投入では事業構築の基盤にはなり得なかった。パテックをパテック フィリップたらしめる為にこれらの超絶時計の開発と発表は必須であるがゆえに、その原動力として商業的なシンプルかつ上質な高級時計を量産する事での事業拡大が必要不可欠であった。スイス高級機械式時計の復活にフィリップが邁進した結果、急速に業界は投資家達の興味と注目を集めメゾンを貫く事が困難になって来ていた。実に皮肉な話ではある。
フィリップ・スターンが社長に就任した1993年当時のパテックの製造拠点は、歴史的なローヌ通りの本社を筆頭にジュネーブ市内の8ヶ所に点在していて極めて生産効率が悪かった。またどうしても各拠点でセクショナリズムに陥りやすくベクトルの統合も難しかったと推測される。「市内各所に散在する工房からなる小さい王国のパッチワーク」と比喩したフィリップは究極の殿様ではあったが、各拠点には封建的な城主も多々いた事を示している。

フィリップが目を付けたのは、ジュネーブ郊外の小さな村プラン・レ・ワットであった。1990年代初めのプラン・レ・ワットには車の販売代理店、荒廃した古城、数軒のレストラン以外は何もなく、およそパテックの新しい統合拠点としてふさわしい場所とは誰もが思えない辺鄙なエリアであった。
時代的には、まだまだクォーツとの戦いは継続しており、機械式時計製作への巨額な投資などは疑問視されていた状況で、人里離れた25,000平方メートル(約7,600坪)の土地にパテックの年商に等しい投資をフィリップは大英断で行った。敷地内には15世紀に築城された古城シャトー・ブランが有り、後にパテック フィリップにより完全にリノベーションされ、現在はVIP招待サロンとして用いられている。尚、その後同地には世界的に著名な時計ブランド(ロレックス、ヴァシュロン・コンスタンタン、ハリー・ウィンストン、ピアジェ等)が続々と工場を建設し、現在は一大時計工場団地と化している。
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1996年に工場は落成した。巨大な新拠点は訪れる人々にブランドの世界観を見て体験する事を可能にし、それまで掴みづらかったブランドの大きさを等身大で理解させる事を容易にした。これが結果的にはパテックの知名度向上とさらなる需要喚起に結び付いた。
翌1997年には新本社工房の正式落成を記念して2種類の限定モデルが発表・発売された。一つは創業150周年記念として復刻されたシンプルなオフィサーケースモデルRef.3960(1989年)を発展させたミニット・リピーターRef.5029。もう一つは1950年を挟んで前後15年間に製作されていた"パゴダ(PAGODA:仏塔)"と称される個性的なケースシェイプを持つRef.5500(紳士用)とRef.4900(婦人用)であった。前者の限定モデルにはスイス公式クロノメーター試験COSCとジュネーブ・シール認定機関が合同して特別に発行した個別歩度証明書が、時計製作史上はじめて付けられていた。このパゴダの冷間鍛造用の金型も破棄され将来の再生産を不可能にする事で、限定モデルの希少性が約束された。
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正史では話が少し横道に逸れ、この頃のティエリー・スターンの動向に触れている。祖父アンリ、父フィリップ同様にニューヨークのヘンリー・スターン・ウォッチ・エージェンシーでの見習いを終了したティエリーは、1997年にジュネーブに戻りジュネーブ・ヴィユー・グルナディエ通りのケース・ブレスレット工房のアトリエ・レユニ社(同所はパテック フィリップ・ミュージアムとして現在再活躍中)で修行を積む。1996年迄稼働していた同工房も新社屋に移転され、ティエリーは新生パテック フィリップでのキャリアをスタートさせる。この時期まだまだフィリップの時代であり、ティエリーの経営参画はもう少し後の事になる。
寄り合い所帯でスタートした巨大な新工房では、古参の棟梁達の適応に数年を要したが、創造性と発明の才が一気に開花して、それまでのベーシックでシンプルな時計群(カラトラバ、エリプス、ノーチラス・・)とグランド・コンプリケーション・コレクション(永久カレンダーやミニット・リピーター等)の間を埋める(有用な)コンプリケーションが誕生した。1996年発表の年次カレンダーRef.5035がそれである。
現在では各ブランドが様々なアニュアル(年次)・カレンダーを製作しているが、パテックは間違いなくその先駆者である。アニュアル・カレンダーを製作する一番簡単な方法は、実に単純で乱暴に言えば従来の永久カレンダーから48カ月で一回転する歯車を省くだけでよい。パテックが凄いのは全く別のアプローチで従来の永久カレンダーを構成する主要パーツであるレバーやカムを使わずに歯車の組み合わせによる新設計で特許技術を獲得し完成させた点にある。機械式時計に於いて歯車の増加=摩擦の増大なので、高トルクのゼンマイパワーが必要となりパワーリザーブ的には厳しくなる宿命を負っている。この課題をパテックの技術陣は歯車の歯型曲線の新設計と開発、さらにお家芸である徹底的な歯型研磨で摩擦の増加を極力抑える事で乗り切った。このプロセスの成就は、単に年次カレンダーモジュール製作に留まらず、それ以降のパテック フィリップ製品の様々なコンプリケーション化に大きく寄与したと推察している。
さらには温故知新と言えるトラベルタイムRef.5034が1997年に発表される。このモデルは約40年前に遡る1959年にジュネーブの時計師ルイ・コティエによる特許の下で製造開始されたRef.2597HSが原点である。
レディス用コレクションにも、それまでのパテックには全くラインナップされた事の無い画期的なタイムピースがリリースされた。1999年発表のTwenty~4®は、時代を反映し自立した女性が、自分自身での購買を決意する高い実用性を備えた時計の提案だった。現在に続くこのレクタングラ―のベストセラーレディスウォッチは、女性達にパテック フィリップ・ブランドへの門戸を開く大きな役目をはたした。
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ミレニアムイヤーの2000年には2つの香箱を搭載した10日間のロングパワーリザーブモデルの10デイズRef.5100が限定製作された。その独特なケースシェイプは、1954年に発表されマンタ・レイ(鬼イトマキエイ)と呼ばれたトノ―ケースを持つRef.2554からインスパイアされた。尚、同モデルのエンジンは2018年2月に生産中止が決まったゴンドーロ8デイズRef.5200に引き継がれていた。現行ラインナップには同エンジンの系譜に連なるモデルが無いが、個人的にはきっと近い将来に新機軸でリバイバルされるものと信じている。
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特別な年に過去の膨大な遺産から想起されるケースやダイアルデザインを用いて最先端のパテック技術を盛り込んだエンジンを積むというスタイルは、熱狂的な時計愛好家の渇望を生みブランドをさらに高みへと導いていった。
しかし何と言ってもミレニアムイヤーモデルの極め付きは"スターキャリバー2000"である。150周年記念モデル"キャリバー89"開発時と同様にパテック時計師の頂点であるポール・ビュクランを含むドリームチームが1993年に結成され開発・設計・製作に当たった。
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135個の歯車、73個のスプリング、33枚の受けを含む1,118個のパーツからなるムーブメント、21の複雑機能と6つの特許技術革新を誇るスターキャリバー2000の相当に複雑な詳細をここに記述するのは割愛するが、4素材(YG,WG,RG,PT)のセットが4つ、さらにPT素材のみが4つセットされた特別なセットが一つ製作された。製作時計合計数は20個という事になる。これはプロトタイプを含めてたった5個しか製作されなかった(出来なかった?)キャリバー89に較べて、部品点数と複雑機能数で若干劣るとは言え凄まじい技術革新の10年間があったと言わざるを得ない。

マニュファクチュール・パテック フィリップは激動の20世紀を次のように総括している。「この1世紀の間に、機械式タイムピースは懐中から手首へと移動し、電子的に動くクォーツ・タイムキーパーの前で消滅の危機に直面し、次いで辛くも破滅を免れ、そして世紀末になって評価され重んじられるオブジェとして再興した」と・・
新しいミレニアムの初め数年間には、トゥールビヨンをいくつかのタイムピースで精力的に復活させている。まず2001年にスカイムーン・トゥールビヨンRef.5002をケース径わずか42.8mmという実着用サイズでリリースした。さらに2003年にはミレニアム・ウォッチであった10デイズ・レクタングラ―Ref.5100の系譜である10日巻トゥールビヨンRef.5101を発表。
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上画像:左10デイズ・トゥールビヨンRef.5101(2003)、右スカイムーン・トゥールビヨンRef.5002(2001)
これらのテーマ性を持った複雑時計製作と並行して、フィリップ・スターンが情熱を傾けたのが、約1000点に及ぶ個人コレクションを展示・紹介する博物館の開設であった。彼はパテック フィリップによって製作された時計展示に留まらずに時計製作史の全期間にわたって歴史的に重要な傑作を網羅陳列する事をも画策した。これはヨーロッパ、特にジュネーブの希少な時計群と自社ブランドの創業以来の傑作時計の展示という2つのテーマ性を持ったミュージアムに他ならなかった。これらの崇高で貴重なタイムピースを収める箱としてケース・ブレスレット工房アトリエ・レユニ社の為に、1975年に購入されたジュネーブ市内ヴィユー・グルナディエ通りの建物が大規模にリノベーションされた。このリノベーション事業を委ねられたのは、フィリップの妻ゲルディ・スターンであった。「展示品の品質とその展示方法において、世界で最も美しく誉れ高い、時計製作のみに捧げられた時計博物館」をコンセプトに2年間に渡って改装は進められ2001年に落成した。
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フィリップ・スターン夫妻の情熱が込められたミュージアムには過去2回訪れている。時期は定かではないが開館後の間も無い頃に駆け足で見た。確か早春でSIHH(ジュネーブサロン)の最中に見たはずなのだが、短時間かつ知識不足過ぎて歴代クンロクモデルぐらいしか印象になかった。2度目はパテック社の招きによってファクトリー見学ツアーのメニューとして訪れた2012年11月。この時はガイドが付き、さらに正史の翻訳家でもある小金井先生のライブ通訳と解説も聞けた贅沢極まりない見学で、ほぼ全体像を把握する事が出来た。しかしである。もう一度じっくり一人で訪れたいのである。この4年半、手元でダイナミックにパテックの現行モデル販売に関わり、拙ブログを書き込む内に知らずと身に付いたブランドと傑作タイムピースの知識。さらに今回四苦八苦しながらも書き進めてきた正史の要約を通じて得られた数々の情報。これらを携えて一日腰を据え、時計史とブランド史を堪能出来るか否か、どこまで理解度合いが進行しているのかを確かめてみたいのである。

ミュージアムの開設によって時計製作の遺産は強固に守り継がれる事になったが、フィリップは「全く新たな地平線」と表現すべきプロジェクトも並行して進めていた。彼はそのことを「技術革新を通じて伝統を永続させる選ばれた者の宿命」であるとした。2005年100個のみ製作された極めて特別な年次カレンダーRef.5250Gからそれは始まった。極めて特別であったのは従来金属製であったガンギ車にシリコン素材を採用した事である。
スイスレバー式に代表される脱進機の完成以降、機械式時計の進化の焦点は、その殆どが機械式の心臓部とも言われるテンプ廻り及びそれに連なるアンクルとガンギ車からなる脱進機の改良に明け暮れていたと言っても良いだろう。テン輪に於いては1800年代末期から1900年代前半にかけてスイス人物理学者シャルル・エドワール・ギョームが開発したインヴァール合金、エリンヴァール合金さらにはベリリウム青銅グリュシュデールが、画期的な進歩を機械式時計にもたらした。パテック フィリップ社独自のテン輪への技術革新の大きな足跡としては、1949年/1951年に特許を取得したジャイロマックス・テンプであろう。髭ゼンマイの進化では1933年に開発されたステンレス系新素材ニヴァロックスがある。
長きにわたり金属素材が独占していた心臓部廻りの主要パーツは、非磁性・耐衝撃・耐変形・耐温度変化を高度に実現するための開発競争が続いていたが、ミレニアムを迎える頃から各ブランドがこぞってシリコン素材の可能性に注目し、実用化競争が始まった。これに対するパテック社の解答が、汎用的な定番製品への搭載に先立つ試験的採用モデルへの限定的な搭載、すなわちアドバンストリサーチと呼ばれる特別な商品群の製作であった。手始めのRef.5250Gのガンギ車へシリコン素材の試験搭載に続いて、翌年の2006年にはSilinvar®と称してシリコン・ベースの新素材を開発して髭ゼンマイへの採用がなされSpiromax®と命名された。これを同年に搭載し300個限定で発表されたのが年次カレンダーRef.5350Rである。さらには2008年に第3弾としてアンクルもシリコン素材Silinvar®を用いて300個限定の年次カレンダーRef.5450Pを発表。
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完全にシリコン化された脱進機はPulsomax®脱進機と命名された。進化はまだまだ止まらなかった。シリコン化の総仕上げとして2011年にSilinvar®素材を主材として24金を部分的にインサートした砂時計形状のGyromaxSi®テンプと名付けられた全く新しいテンプが、組み込まれた永久カレンダーRef.5550Pが300個限定でリリースされた。
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このGyromaxSi®テンプ+Pulsomax®脱進機+Spiromax®髭ゼンマイの3者の組合せによるシリコン製心臓部全体パッケージを総称して、パテック社はOscillomax®と命名した。その構成部分には17件の特許技術が盛込まれている。Oscillomax®が組込まれたベースキャリバーには、1977年以来同社の実用的な基幹エンジンとして活躍してきた極薄自動巻Cal.240が採用された。従来素材の心臓部で構成される既存の240のパワーリザーブは48時間であるのに対し、高いエネルギー消費効率を誇るOscillomax®ベースのスペシャルチューンのハイスペックエンジンCal.240 Q Siでは、70時間のロングパワーリザーブへと画期的な駆動時間の延長が実現した。

ところで全くの私見ながら、現在のパテック フィリップの実用的基幹自動巻ムーブメント群の唯一の弱点は、パワーリザーブの物足らなさにあると思う。10年前までは48時間パワーリザーブも標準的ではあったが、今日に於いては最低70時間近くは欲しいのである。実際に使い比べるとスペック上では1.5倍程度の違いが、使い勝手の上で倍ほどの違いを感じてしまう。特にパテックオーナーの大部分の方に取っては、複数個の愛用時計をTPOに応じて使い分けるのは日常的であろうから、3日間放置しても"即!"再着用出来るか否かは重要である。しかしながらパテック社はOscillomax®という素晴らしい答えを導きながら、ダイナミックな定番コレクションへの搭載を見送り続けている。さらに言えば手巻の8日巻Cal.28-20系も2018年春に一旦お蔵入りさせている。1996年発表の年次カレンダー開発から始まり、アドバンストリサーチ開発を通じて、飽くなきエネルギー効率化を推進させて来た同社の流れからして、少し違和感を覚えるのは筆者だけであろうか。

文責:乾

参考・引用:PATEK PHILIPPE THE AUTHORIZED BIOGRAPHY パテック フィリップ正史(Nicholas Foulkes ニコラス・フォークス)
PATEK PHILIPPE GENEVE Wristwatches (Martin Huber & Alan Banbery)
PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE Vol.Ⅰ07,08,10 Vol.Ⅱ 01,07 Vol.Ⅲ 05 Vol.Ⅳ 01
COLLECTING PATEK PHILIPPE Vol.1(Osvaldo Patrizzi)

皆様、新年あけましておめでとうございます。本年も拙ブログにお付き合いの程、宜しくお願い申し上げます。
約30年近く時計に関わる商いをしてきたが、昨年の12月ほど消費マインドの低下を感じた事は過去無かった。パテックの客注分の入荷で売り上げと利益だけは、お陰様でなんとか最低限確保できたが、購入目的のご来店がこの時期としては極端に少なく歳末感やクリスマス商戦感が全く感じられ無かった。まるで店は暇だったのだがスタッフを含め何かとバタバタと忙しく、12月はとうとう記事が一本も公開できなかった。
そして気が付けば令和2年が既に始まって居り、また一つ齢を重ねる宿命が待っている。同時に店舗は老舗としての年輪を加える事になり、いつも複雑な心境にさせられる年頭である。

今回は、この時期のフィリップ・スターンの記述に有る"ライフスタイルの変化"から始まるノーチラスの話題から始めたい。彼自身も父アンリ・スターンの血を受けてスキーやヨットの愛好家であり、セミプロ級の腕前で数々の優勝タイトルに輝いた経歴を持っており、一早くフィットネスや健康に関する時代の変化を察知したのであろう。1968年4月のニューヨーク・タイムズが『最新流行のスポーツ、ジョギング』と題された記事を報道。フィットネスへの熱狂が始まるきっかけとなった。
多くの人々が、健康の為に運動し、スポーティで頑丈な時計が求められるようになった。
このニーズに最初に答えたのが、1972年に天才時計デザイナーのチャールズ・ジェラルド・ジェンタにより考案されたオーディマ・ピゲのロイヤル オークであった。遅れること4年の第二弾が、同じくジェンタデザインを採用したパテック フィリップのノーチラスである。デビュー当時の両者は同じデザイナーによって考案され、ジャガー・ルクルト社が開発したエンジン(AP/Cal.2121、PP/Cal.28-255)もほぼ同じ物であり、まるで兄弟の様であったが決定的に違ったのは、その防水性の差である。ロイヤル オークがそのケースの薄さゆえ僅か50m防水にあったのに対して、ノーチラスは125mもの防水性を確保した。
ジェンタはエレガントな薄いケースデザインを優先したため、ロレックスの厚いオイスターケースに代表されるスクリューバックと言う裏蓋構造を取る事が当時の技術では出来なかった。その解決策として彼はケースを2ピース構造とし、ベゼルとケースの間にゴムパッキンを挟む事で防水性能を確保し、薄いケースデザインを実現した。防水に対する基本的な考え方は両者同じながらロイヤル オークが特徴的な8本のビスでベゼルとケースを合体させていたのに対して、ノーチラスは3時と9時の"耳"と呼ばれる部分の採用でベゼルとケースをより強固に圧着固定する事に成功した。
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いつの時代も時計と車の流行は、連動している様でエレガントなスポーツウオッチ誕生と呼応するように1970年にデビューしたのがエレガントなSUV"砂漠のロールスロイス"と呼ばれたイギリスの名車レンジローバーである。パテック社内でも「レンジの時計バージョン、ラグジュアリーSUVにふさわしい防水スポーツウォッチ」の位置づけとしてノーチラスは開発された。後付けで知った話ながらレンジオーナーとしてはくすぐったい気持ちではある。
この時期、まだまだスイス機械式時計は冬の時代が続いていたが、1930年代ほどの深刻さでは無かったようだ。ただ強いスイスフランと金価格の高騰と乱高下によって、創業140周年を盛大に祝う事が、はばかられる代わりに1989年の150周年を特別な祝賀にする事をフィリップ・スターンは決心する。時を同じくして当時パテック社内で最高の時計師であったマックス・ステュデールから過去にない最も複雑な携帯用機械式時計製作の打診を受けたのである。後述するキャリバー89開発のプロジェクトの種はこの時蒔かれていたのかも知れない。

1980年の年末、フィリップ・スターンは極東への長期出張などを通じて、時代を席巻し機械式時計を駆逐してきたクォーツ時計が目新しさを失いつつあり、思慮深い時計購入者は真に永遠の価値を持ち偉大な芸術作品同様の陳腐化しない価値を維持出来るのは見事に設計された複雑な機械式時計である事を再認識し始めたと推察するようになった。
1980年の広告コピー「コンプリケーテッド・ウォッチ:昨日の名人芸、今日のコレクターズアイテム、明日のミュージアムピース」は現在にも立派に通じるパテック フィリップのブランド価値を表現する名言だと思う。
アンリ・スターンが個人的な趣味として収集していた七宝細密画コレクションは非常に僅かな物であったが、現社長ティエリー・スターンが子供時代に時計に興味を持つきっかけとなった。また今日のパテック フィリップ・ミュージアムの膨大なコレクションの始まりでもあった。アンリで始まったコレクションの収集はフィリップに引き継がれてより本格的になってゆくが、そこには重要なキーパーソンであるアラン・バンベリーの存在が有った。
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ロンドン出身の彼はジュネーブの時計学校で時計製作を学び、苦労して完璧なフランス語を習得する。ユニバーサルで1年働いた後、ロンドンに戻り兵役を経て王室御用達宝飾店ガラード社に5年間勤める。このガラード時代にパテックの時計を含むジュエリーセットを展示会でモナコ大公妃のグレース(元アメリカの著名女優グレース・ケリー、エルメスのケリーバッグの命名は彼女に由来)に販売した。このジュエリーセットの納品を通じて、バンベリーはパテック社に直接の繋がりを持った。さらに彼の能力に興味を持ったアンリ・スターンとロンドンで面談をするチャンスを得た。これが転機となり1965年3月にパテック社に入社し、アジア・アメリカ市場の営業担当として活躍、さらにフィリップ・スターンのミュージアム・コレクション収集を精力的にサポートした。特に著名な収集品として正史には、創業時の共同経営者であったフランソワ・チャペック製作の掛時計とスイス人俳優ミッシェル・シモンが所有していたリピーター系の懐中時計2点が紹介されている。
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これらの宝物は、大半がオークションハウスのカタログから丹念に探された。収集はまず懐中時計からスタートし、1975年頃からは腕時計もその対象となった。収集の基本はパテックがかつて製作した異なるタイプのムーブメントを集める事だった。また保存状態や所有者の来歴、さらに彫刻・七宝などの特別な装飾なども主要な評価基準とされた。最終的にはフィリップとバンベリーは1000点以上のコレクションを集めている。ちなみにアラン・バンベリーは、拙ブログでほぼテキスト的に熟読している『PATEK PHILIPPE GENEVE』(絶版)の著者の一人である。同書は現在要約している"正史"にも多数の画像等が引用されており、共通の記述も多々ある。

コレクションの充実に伴って、販売店の店内で開催される特別展示会の目玉として出品され、注目を集めると共に新作商品の販売にも大きく寄与した。これはかつて万国博覧会時代に受賞時計が果たした広告塔の役割に通じる物であり、それらのシナジーをフィリップ・スターンはまるでフラッシュバックのように感じていたのかもしれない。
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1979年当時のパテック社の一日当たりの生産量は平均43個であり、数年で倍増されたと言っても非常に少量であり量産化されたとは言えない。1個当たりの製作期間は8ヶ月も掛かっており、著名バイオリンのストラディバリウスのそれよりも長い期間を要した。正に時計師の忍耐、献身、誇りが、世代を超えて継承可能な生きた芸術作品を生み出したと言えよう。

1974年にフィリップ・スターンは『独立宣言』なる小冊子を制作し、販売店に配布した。冊子では家族企業としての独立を再宣言し、長年のパートナーである販売店に安心を与えると同時に、当時の時計業界を取り巻いていたクォーツショックやそれに伴う流通の激変についても躊躇なく大胆に言及し警告している。
前回記事でニコラス・G・ハイエックが巨大な時計コングロマリットであるスウォッチ・グループを築き上げたいきさつに触れたが、その他にネガティブな話として1930年代にスターン兄弟文字盤会社よりも先に、パテック社の買収を試みたジャガー・ルクルト社が筆記具の部品製造に手を出したり、IWCが玩具用のモーターを製造した事などがある。さらにはブライトリング社の1979年の休業とアーネスト・シュナイダー経営のシクラ社へのブランド譲渡。1986年には元サウジアラビア石油相アハマド・ザキ・ヤマニがヴァシュロン・コンスタンタンの全株式の取得を完了。1988年のカルティエによる家族企業ピアジェの買収・・等々の目や耳を塞ぎたくなる様な惨憺たる大嵐が吹き荒れる多難な時代が続いた。

そんな中、パテックの創業150周年である1989年が近づいてきた。フィリップは家族的でアットホームであるが、古風で古めかしい社内体制を、より現代的であったユニバーサル社出身のジェラルド・ブックスの助けを得て、コンピューター・システムの導入などを始めとして近代化する事に乗り出す。だが短期的な財政的ビジョンしか持たない投機的な株主に会社の方向性をゆだねるのは無責任だとして、あくまでも株式上場は望まなかった。これを実現するためは時計を増産して財務状況を盤石にする必要があったが、時代背景もあって、実にゆっくりとしかそれは進められなかった。しかしながらフィリップは経営方式は近代化しても、創業以来続くブランドのポリシーである技術的パフォーマンスと美的完成において世界最高とされる時計を少量製作し、独立を保持し高級な手づくり時計に集中するという意思を変えることは無かった。
時代の変化は顧客層の変化も伴っていた。ブランドに高い認知度を持っていた世襲の裕福層が衰退し、ブランドを知らないが高い購買力を持つ新興な裕福層が台頭してきた。この新しい顧客層に対して流行やトレンドを超えた工業製品ではない何ものかを、パテック フィリップが独自性溢れる時計製作を通じて体現している事を理解させる必要があった。その為にはブランドをより親しみやすくする必要性が有り、それまで品番のみで管理されていたコレクションが、大きく4つのファミリーに分類された。当時の名称とは少し異なるが、今日で言うカラトラバ、ゴールデン・エリプス、ノーチラス・・等々にそれは引き継がれている。アイデンティーを得た各ファミリーは、それぞれにふさわしい戦略的なマーケティング・プランが導入され、より時代に即したブランドへとブラッシュアップが進められた。
そのような施策が成果を上げ始める中、一方では複雑な機械式時計への需要に回復の兆しをフィリップ・スターンは先取りする。他の名門時計ブランドがブランドの売却や譲渡を余儀なくされる真最中にジュー渓谷に、小規模ではあったが新たな複雑機械式時計製作の為の工房を開いた。

1988年9月12日、パテック フィリップは、新作時計の発表では無く、反対に過去に製作した時計の購入についての記者発表をした。60年前に著名なアメリカ人時計コレクターであったジェームス・ウォード・パッカードから発注され16,000USドルで販売した天文表示懐中時計No.198 023を1,300,000USドルで買い戻すと言うとんでもない事がなされた。
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この事は自社の遺産に対して持つ誇りの大きさを示し、翌年の創業150周年の偉大な記念イベントや記念モデル発表に繋がるテーマでもあった。
1989年のパテック フィリップのブランド創業150周年は世界中の販売店がジュネーブに招待された。またキャリバー89を始め様々な記念限定モデルは熱狂的な祝福を受けた。
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キャリバー89(上画像)は5年に及ぶ研究開発期間を含めて完成まで9年の歳月を要した超複雑な傑作天文懐中時計である。裏面に9種類の天文表示を持つだけでなく、28世紀まで調整不要の世紀永久カレンダー、ムーンフェイズ、スプリットセコンドクロノグラフ、GMTを備え、さらには鳴り物系として5本のゴングでミニット・リピーターを始めグランドソヌリ、プティットソヌリ、アラームチャイムを鳴らすと言う化け物時計である。33種類の複雑機能を搭載し、合計1,726個の部品から構成され、4点の限定製作でプロトタイプをパテック フィリップ・ミュージアムで見学可能である。
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上画像左は同じく150周年記念モデルのRef.3969トノーケースのジャンピングアワーウォッチ。RG450個、PT50個の限定製作。製作後にムーブメント・エボーシュ(素材ムーブメント)とツールが破棄され、将来に於いて真の限定製作モデルで有り続ける事が保証された。パテックはこの後同様の手法を用うる記念的な限定モデルを製作する様になる。右画像は25年後の2014年に175周年記念限定モデルとして発表されたRef.5275。PT製175個限定製作はRef.3969の流れを汲んでいると推察される。
他にも150周年記念モデルは多々有るが、個人的に思い入れを持っているのが、腕時計黎明期に思いを馳せる事が出来る軍用オフィサータイプの手巻キャリバー215を搭載したRef.3960モデルである。
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当時は、実家の時計家業を継ぐ前の時代で実父が経営していた百貨店テナント数店舗でパテックを扱っており、このYGバージョンの限定モデルを5本仕入れ、4本を販売したが何故か1本が中々旅立てずにいた為に、めったに自分では時計を買わない親父が珍しく購入し、ずっと手元にあって使われていなかったもの(上画像)を、2000年頃に無理やり奪い取った経緯がある。購入当時の価格は語呂合わせもあったらしく、たった150万円(消費税導入前)だった。尚、箱は有るが時計に付属していたはずの小冊子の行方は不明である。実に惜しい!しかし、もし購入可能だったのなら限定数150本のWGか、50本のPTにしておいて欲しかった。YGは限定本数が2000本とパテックにしては多い為か、現在のプレミアはそれ程でも無い。

1989年は、ヴィンテージウォッチのオークション市場にも大きな変革がもたらされた。4月9日にジュネーブのホテル・デ・ベルグでオークショナ―のオズワルド・パトリッジが開催した『パテック フィリップの芸術(THE ART OF PATEK PHILIPPE Legendary Watches)』は初めて単一のブランドのオークションであった。300点以上の時計が出品され、合計落札額が驚異的な1,510万USドルとなった。最高落札価格をつけたモデルはキャリバー89で320万USドルで、合計落札価格の1/5以上を占めていた。尚、当時の日本は平成元年でバブルの最盛期であり、かなりの円高(1USドル120~140円)であった。仮に130円として試算すると当時の価格で総落札合計額は19億6,300万円となり、キャリバー89は4億1,600万円で落札された事に成る。
オズワルド・パトリッジ主催のオークションハウスは、後にアンティコルム(Antiquorum) としてよく知られるようになる。パテック フィリップの単一ブランドオークションの大成功を機に、1991年ブレゲ、1994年ヴァシュロン・コンスタンタンと単一ブランドのテーマ・オークションが開催される事となった。
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大きな関心を集めたイベントは、他にもあってパテック社自身が1989年4月から9月の半年の間にジュネーブ時計七宝博物館の2階フロアを借り切って、アラン・バンベリーの企画・運営によって開催された展示会である。会場が手狭だった為に収集品の約半分である433点の展示となったが、期間中6万人を動員する人気イベントとなった。これらのオークションや展示会がもたらした効果は絶大で、それまで販売店があまり積極的な興味を示さなかった150周年記念モデルの人気が高騰する事となった。またそれ以前には無かった"時計を収集品として購入する"という新しい概念を生んだのである。
後にニューヨークのヘンリー・スターン・ウォッチ・エージェンシー社長となるハンク・エーデルマンは「創業150周年はコンプリケーティッド・ウォッチの魅力を広げた」と語る。それは彼らのビジネスを前進させる明確な方向性であり、大量生産による販売拡大ではなく、製作が困難で高付加価値を持つ高価な時計を開発製作する事であった。言いかえれば複雑であっても消費者が高く評価する芸術的な時計作りが、パテック社の独立を維持しながらの発展に大きく寄与する道だと判明した事に他ならない。

1989年当時の同社の社員数は、まだ319名。しかし複雑な機械式時計の復活を確信したフィリップ・スターンは、偉大なる未来を予想していた。「私は可能性を感じる事ができました。1989年、パテック フィリップは真に生まれ変わったのです」

文責・撮影:乾
参考・引用:PATEK PHILIPPE THE AUTHORIZED BIOGRAPHY パテック フィリップ正史(Nicholas Foulkes ニコラス・フォークス)
PATEK PHILIPPE GENEVE Wristwatches (Martin Huber & Alan Banbery)
パテック フィリップ創業175周年記念(2014年)

どこの家業(ファミリービジネスはこう呼びたい)でも世代交代は難しく、悩ましく、複雑になりがちだ。パテック フィリップのスターンファミリーの場合も明確な時期や出来事と言う節目が判り辛い。一応アンリ・スターンの有終の美的な記述は下記である。
1980年:ル・サンティエの時計工房ヴィクトラン・ピゲ社(1880年創業)の創業100周年記念祝賀会にアンリ・スターン(当時69歳)が主賓で出席。
※アンリは相当なパイプ煙草愛好家であったらしいが、2002年で91歳で他界されるまで長生きをされた。好きなレマン湖の船遊び等で随分と充実した余生を過ごされたのであろう。当然ファミリー意識溢れるスターン家の遺伝子からして、フィリップ・スターン名誉会長も最低でも2027年迄は頑張れるという事で、正規販売店としてこんなに心強い事はない。

1969年:老舗ジラール・ぺルゴ社(1791年創業)がスイス時計業界で初の株式上場。クォーツ時計の量産にも成功。
1969年、機械式時計最後の開発競争であった自動巻クロノグラフが2社+1グループから発表される。セイコー、ゼニス、4社共同(ブライトリング、ホイヤー、ハミルトン、ビューレン)
1969年:クリスマスにセイコーウォッチ株式会社がクォーツ駆動腕時計初代「アストロン」を発売
1970年:家族企業ホイヤーを、創業者の曾孫であるジャック・ホイヤーが株式公開する。
1970年:フィリップ・スターンが経済金融誌へのインタビューで、業界で巨大化してゆくグループへの参加を、現在も将来も否定する見解を発表。

前回記事の最後の方で、セイコー発信のクォーツショック(クライシスと言う呼び方も有)、さらに家業の集合体であったスイス時計業界の法人化への移行の兆しに触れた。しかし良く理解できないのが、当時アストロンが発売されたと言っても1969年12月に200個生産し、100個程度を日本市場で売ったに過ぎない。45万円(当時の中型車価格)と当初は非常に高級時計であり、量産とコストダウンには数年は掛かっている。にもかかわらず、ほぼ時を同じくして1970年前後にスイス時計業界に一気に暗雲が立ち込んできたというのは少し解せない。
そこで巨大化してゆくグループなるものを自己考察してみた。まずは1930年発足SSIH(Société Suisse pour l'Industrie Horlogère、スイス時計工業株式会社:中核ブランドはオメガ)。それと1931年発足ASUAG(Allgemeine Schweizrische Uhrenindustrie AG、スイス時計総合株式会社:中核ブランドはロンジン)。この二つあたりの事だと思われる。元々これらのグループは第一次世界大戦時の不況対策でグループ化され、その後ライバルとして成長をして来た。ちなみに両グループは、クォーツショックにより経営危機に陥って合併し、紆余曲折を経て現在スウォッチグループとなっている。余談になるが、このグループ統合の立役者が、かの有名なスウォッチブランド(スイスウォッチ略がブランド名由来)の創業者ニコラス・G・ハイエックである。
さらに1970年当時スイス時計工業界には、比較的近代的な一貫メーカーもあったが、まだまだ家内的手工業に毛の生えたような工場も多数あった。その保守的な体質の改善、合理化や近代化を銀行が主導して大胆に推し進めていった過渡期でもあった様だ。
フィリップの父アンリも"独立と自由"の維持を強く望んでいたが、他グループの傘下に入らずに実現する為には、自らが家業を大きく成長させ、圧倒的に健全な財務状況を構築する事が必須だった。これを真剣に考えやり遂げたのが、ちょうどその時期に事実上は、経営トップを担うようになったフィリップだった。
1970年代初期の年産量は15,000個、社員数366名とある。明確な時期の記載は無いが、当時は借入金額が年間利益を上回っており、健全な企業体質への早急な改善もフィリップの課題であった。以下少々、前回の記述を繰り返す。

1970年:フィリップ・スターンに長男ティエリー・スターン(現パテック フィリップ社長)誕生
1970年:パテックがスイス時計会社21社で共同開発したクォーツムーブメント"ベータ21"を搭載したRef.3597/2や3603/2を発表。
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しかし、パテックはこの共同開発ムーブに満足できず、次のトレンドになりそうだったデジタル表示タイプの非採用をも決定し、自社のメカニカルムーブメントと同等の品質基準を満たすアナログ表示のクォーツムーブを独自で開発した。

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この際に開発された小型で樽型のE 15クォーツキャリバー、丸形のE 23は実は今も現役である。前者はレディスのベストセラーTwenty~4®Ref.4910系に、後者のE 23はレディスノーチラスRef.7010系に搭載されている。しばらくの間はメンズコレクションにクォーツモデルも生産・販売実績が有ったが、現在はラインナップされていない。パテックはムーブメントも経営者同様に長寿だが、クォーツに於いてはギネス級の長寿キャリバーだ。
以前は、個人的に何故にそんな古臭いムーブを使い続けるのか不思議だった。精度も現代の最先端クォーツは年差であり、今年のバーゼルワールドに於いて"最高傑作"ではないかと秘かに時計評論家達の注目を集めたのはシチズンの年差±1秒の(GPSや電波の助けを借りない)純粋クォーツムーブ搭載モデル0100(ゼロイチゼロゼロ)だった。
随分以前にフィリップ・スターン名誉会長に直接会話するチャンスが有って、メカニカルウオッチのハック機能(秒針停止)の必要性について尋ねた事が有った。
「日差数秒の機械式時計にその機能は必要だとは思いません」フィリップは返す刀のごとく回答した。しかし今年発表されたパテックの最新の基幹ムーブメントCal.26-330系は、群を抜く高精度ならではの長所を活かせるハックを、満を持して搭載してきた。それぐらいパテックのメカニカルの精度は向上をし続けたという事だ。逆に精度的に「ハック、本当に要りますか?」というレベルの機械式時計が、世の中にはたくさん有ると言うべきなのかもしれない。
そんなパテックにとってクォーツキャリバーの月差数秒の精度は、必要十分の実用性であり、むしろアンティークの様なオールドクォーツムーブを使い続けるメリットが彼らにとっては優っているのだと思う。それは"創業以来リリースした全てのタイムピースに対して修理・修復の確約"というブランドの根幹を成すとも言える重要な社是である。
もっと簡単に言えば「セイコーの初代アストロン(1969年)はとっくにムーブの交換をするような修理は出来ない」という事だ。ベータ21に早々に見切りをつけたのもその辺りの思惑が有ったからかもしれない。

1971年:アメリカがベトナム戦争に疲弊し、不況が鮮明になってきた。いわゆる8月のニクソン・ショック以降、金と米ドルの兌換が停止される。
米ドルも下落が鮮明になる。70年代半ば1USドル=4.33CHF、70年後半には約1.60CHFと̠マイナス63%もの大暴落となった。この結果米国市場でのスイス時計は3倍価格へと値上がりをした。いつの世も悪い事は重なる様で、スイス時計業界の金融団主導の構造改革の流れ、米景気の悪化と金融危機に加えて"クォーツショック"と言う三重苦に見舞われたのが1970年~1990年頃のスイス時計業界だった。
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上)1972年、世紀永久カレンダー搭載懐中時計を米工業家のコレクターに受注生産品として101,650CHFで販売。関連過去記事あり

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上)ル・サンティエ村とアンリ・ダニエル・ピゲ

この世紀永久カレンダーは超ベテランのパテック社の古参時計師数名が、ル・サンティエのアンリ・ダニエル・ピゲ工房(PPエボーシュ専用のパテックの子会社)にてオーソドックスな職人技によって製作された。尚、パテック フィリップ・ミュージアムにはこのプロトタイプが現在展示されている。

1973年:パテック フィリップ過去最高の売上5000万CHFを達成。
1973年:世界初のデジタル腕時計「パルサー」がハミルトンから登場。
1975年:シチズンが世界初、年差±3秒の高精度クォーツウォッチ「クリストロン・メガ1975」発表。
1976年:シチズンが世界初、太陽光を動力源とするアナログ式クォーツ腕時計「クリストロンソーラーセル」発表
1978年:シチズンが世界初、クォーツでムーブメント厚1mm未満を達成し、実機搭載に成功。
1980年:シチズンが世界最小の女性用アナログクォーツ腕時計を発表。

同時期にはウォルサムがワンクロン・エレクトロニック(時計の詳細不明)やエルジンがデジタル腕時計に進出。アメリカ発の大量生産のノンメカニカルウォッチの攻勢が始まる。
パテックを始めスイスの老舗時計メーカーが天文台コンクール競争に明け暮れていた1950年代後半には、もう既に「腕時計の電子化」の熾烈な開発競争が始まっていた。1957年には米国ハミルトンによる"テンプ駆動式電池腕時計"、1960年には同じくアメリカのブローバが、日差わずか2秒の音叉時計"アキュトロン"を発売している。調べ始めるとこれまた興味深く、時計屋のオヤジとしては捨て置けないが、本稿の主題と外れるのでまたの機会としたい。尚、ご興味が有れば各社HPをご覧ください。
https://museum.seiko.co.jp/knowledge/Quartz01/
https://www.citizen.co.jp/ir/investor/history.html

1973年:第一次石油危機発生
スイス時計の市場占有率は1977年の43%から1983年の6年間で15%まで下落した。製作拠点としての地位も日本、香港に次ぐ3位へと転落。スイス国内の業界労働者数は9万人から4万人と大量の失業者が溢れかえった。1974年に最高数量を記録した完成時計とムーブメント合計数8,440万個から、1983年には3,020万個へとマイナス64%減少した。
アジア(香港、シンガポール)での低賃金、長時間で過酷な労働環境での時計生産が急速に発達し、スイス時計に壊滅的な打撃が顕著になる。

1977年:そんな最悪状況の中で、パテック社はマイクロ・ローターを搭載した極薄型自動巻ムーブメントCal.240を開発・発表。
当時世界で絶好調のクォーツムーブが全盛期を迎え、さらに薄型化競争が進んだ結果、ケースデザインの自由度が増して、エレガントな時計作りが可能になっていった。
スターンファミリーは、これに対して敢えて機械式で対抗すべく実用性に優れる自動巻でありながら徹底した薄さを追求するムーブメント開発を設計陣に求めた。その答えがCal.240。
発表依頼40年以上が経過した今日も、Cal.240はパテックの基幹キャリバーであり続けている。40年もの長期間に渡って,このムーブメントを搭載して発表された傑作モデルは物凄く多い。
それまで手巻ムーブ(Cal.23-300)でしか薄さを確保しえなかったゴールデン・エリプスの後継エンジンとして、初搭載されデビューする事で、実用性と極薄エレガントケースを両立したタイムピースを、センセーショナルにアピールする事に成功した。
現行ラインナップではセレスティアル系、ワールドタイム、ノーチラスでは通称"プチコン"と呼ばれるRef.5712系がそうだし、ひょっとしたら当店では、生産中止までに納めきれないかもしれない"超"がつく人気のノーチラス永久カレンダーRef.5740/1もこの熟成エンジンを積んでいる。また様々な装飾が施される事で文字盤が厚く成りがちなレアハンドクラフトの多くのモデルも、この傑作極薄エンジンが積まれている。さらに言えば、このキャリバーの構造レイアウト上、4時半辺りにしかスモールセコンドを配置出来ないのがCal.240の特徴だが、装飾性を楽しむレアハンドクラフトに秒針は不要であり、デザイン的に全くハンディとはならない。


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元々、マイクロ・ローター式自動巻の特許はスイスの時計会社ビューレン(Buren Watch Company)が1954年に開発・所有をしたが、1955年にユニバーサルがその特許を買い取ったいきさつがある様だ。またアンリ・スターンがアメリカでユニバーサルの販売権を持っていた経緯からして両社は浅からぬ関係で有ったのかもしれない。
現役レジェンドとも呼べそうな偉大なムーブメントCal.240。当時パテックでその開発に当たったのが、ユニバーサル・ジュネーブでの在籍経験が有った1968年入社の技術部長(ベレ氏)であった事が、半年以内での試作品テストを可能にし、短期間での設計開発完成の要因であったのだろう。
少し不思議なのが、この逸品キャリバーがデビュー時のゴールデン・エリプス以降、1985年の永久カレンダーRef.3940発表まで、これと言った搭載モデルが無かった事だ。
全くの私見ながら、恐らく当時経営者として油が載りだしてきたフィリップ・スターンにとって、圧倒的な自信作でもって高級機械式時計の"復活の狼煙"とすべき作品を模索し、市場投入のタイミングを計ったが為の空白期間だったのではないかと推察している。来年のバーゼルなどでフィリップ・スターンご本人にお会い出来れば、是非自ら確認してみたい。
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上)パテック社と非常に長い信頼関係を持つ、チューリッヒの超老舗時計店"ベイヤー"の225周年(1985年)記念限定モデルのRef.3940。限定本数不明ながら画像の裏蓋刻印からNo.1である事が判る。→参考記事

誕生以来、今日に至るまでCal.240を搭載した名品は数えきれない程ある。ご興味のある方は拙ブログで過去紹介した記事を、ご笑読頂ければ幸いである。
Ref.5230ワールドタイム凛々しい三男2019番外編(希少な手仕事 レア・ハンドクラフト)5740/1G-001実機、やっと来たお宝!ノーチラス永久カレンダー5738R-001ゴールデンイリプス新作珍客!レギュレーター5235G5327G-001永久カレンダー極薄自動巻キャリバー40周年記念モデル-6006G-0015230R・G ワールドタイム第三世代5712/1A-001ノーチラス プチコン ステンレス

文責:乾
参考・引用:PATEK PHILIPPE THE AUTHORIZED BIOGRAPHY パテック フィリップ正史(Nicholas Foulkes ニコラス・フォークス)
PATEK PHILIPPE GENEVE Wristwataches (Martin Huber & Alan Banbery)
PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE Vol.Ⅳ 03 

スターン兄弟の両親(父アンリ・エドアール・スターン、母マリー・ルイーズ・スターン)は、ベルン州の古い家系の七宝細密画家で、いづれもベルンの近郊のグルツェレン(Gurzelen)村の出身であった。ブランドの現経営ファミリーの原点であるから、一体どんな場所なのかとググってみた。
スイスの首都ベルンは過去バーゼル出張の際に宿泊拠点にしていたお気に入りの古都。コンパクトな主要市街が世界遺産登録地であり、徒歩か自転車散策がシックリで、どことなく奈良に似た落ち着ける街である。スイスの観光ルートには入っていないが、個人旅行の際には是非訪問をお奨めしたい。
そのベルンの南方には名峰の誉れ高いユングフラウやアイガーで有名な観光基地インターラーケンやグリンデルワルドがある。この地方への入り口に位置する町がトゥーン(Thun)。 グルツェレン村はその北北西7~8km、ベルンから南南東に約20kmに或る。グーグルマップで見たが、本当に何にもないのどかそうな田舎の村である。良い機会なので、パテックにゆかりの場所をマッピングしてみた。
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ル・サンティエ
:古くからの時計作りで知られたジュー峡谷の村の一つ。1880年創業のヴィクトラン・ピゲ社が100年に渡ってパテック社にグランドコンプリケーション・クラスを含んだエボーシュを供給していた。
ラ・ショード・フォン:ジュラ地方のとても有名な時計産業の町。有名時計ブランドの近代的な工場が立ち並ぶ工業団地の様相を成している。パテックの他にもブライトリング、カルティエ、タグホイヤー等々の大手に加えて、ジラール・ペルゴ、グルーベル・フォーセイ、ジャケ・ドローの様な工房的規模のブランドも多数存在する。
サン・ティミエ:ラ・ショード・フォンの西隣の村?PP子会社のフルッキガー文字盤製作会社が現在パテックの文字盤の大部分を製造している。同社は1860年創業の伝統的な文字盤製作の老舗であったが、2004年にパテックが破綻を回避すべく救済的に買収しスターンファミリーのルーツであった文字盤事業を復活する形となった。

1898年、両親エドアールとルイーズが故郷グルツェレンから直線距離で120km南西のジュネーブに出て工房を開く。1900年頃には6名の職人を擁するようになる。父エドアールは20世紀初頭に病死するが、気丈な母親ルイーズとシャルル・アンリ・スターンとジャン・スターン兄弟によって継続された文字盤製作事業は成功を収めた。
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上、1912年のスターン兄弟文字盤製作所。10年あまりで6名からかなり大所帯になっている。1920年代には近代的な工場を設立している。急成長と言って良いだろう。

1932年、初のリファレンスモデルである96モデルを発表。
※買収の年に、現代に至るスターン時代の象徴と言っても良い"クンロク=96"を発表してきた事が凄いと思う。1926年初代"オイスター"をロレックスが発表したように当時各社がニックネームを採用し始めていた頃である。当初ルクルトムーブメントが積まれたクンロクは、2年後の1934年から初の腕時計用に開発された自社キャリバー12'''120に積み替えられた。

1933年、技術部長にジャン・フィスター(50代半ば)を迎える。1940年代半ばから取締役会会長(様々な年代の様々な肩書?の記述有り)
1934年、スイスで生産される腕時計が懐中時計の2倍となる。
※1930年にはその比率は50%であり、4年で完全に主客が入れ替わっている。パテックの経営刷新は本当に綱渡りだった事が伺える。
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上:クンロクの初出1932年の個体の画像を過去見たことが無い。左端のゴールドモデルはストラップをオフィサータイプのように貫通パイプをビス留しているようだ。真ん中のステンレスの96はセンターセコンド仕様の12'''120キャリバーを積み、スイス南部イタリア語圏ルガノの"SOMAZZI"という時計店とのダブルネーム。右のクロノグラフ130モデルもステンレス製、結構早くから加工の難しいSS素材も使われていたようだ。価格的メリットなのか実用性なのか・・

1934年、アルフレッド・G・シュタイン死去
1935年、アンリ・フェリックス・スターン(シャルル・アンリ・スターンの息子、彫金家1911-2002)が、スターン兄弟文字盤製作所勤務を経て、24歳で入社。
1936年、ヴァルジュ―ベースの自社クロノグラフキャリバー13'''製作。搭載モデルのRef.130の初出は1934年なので、恐らく当初はヴァルジュ―エボーシュでスタートしたものと思われる。
※その他にも1934年~1939年のたった5年間で10種類のニューキャリバーが矢継ぎ早に製作された。これは当時各時計会社が得意分野の時計に事業集中する傾向の中で、パテックは逆に幅広い商品群の生産を目指したからである。またかつて懐中時計で成功したのと同様に、腕時計でのコンプリケーション化を目標に据えていたからである。

1937年、アンリ・スターン26歳でアメリカに渡り、パテック フィリップ・アメリカ社長代理に任命される。以降20年以上アメリカ市場を統括する。
1937年~1939年、画期的な新素材を採用したニヴァロックス髭ゼンマイやベリリウム青銅テンプの搭載が進み、多湿なエリア(主にアメリカを想定)での調速装置の酸化や帯磁への対策が進む。
1937年、飛行機による新しい時代の到来を見越して初めてのワールドタイム発表
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上:最初のワールドタイム腕時計Ref.515 HUとマルチタイムゾーン機構の開発者である時計師ルイ・コティエ(どことなく英王室の誰かに似ているような・・)

1938年、アンリ・スターンの長男フィリップ・スターン(現パテック フィリップ名誉会長)誕生
1939年、創業100周年、社員数107名規模
1939年ー1945年、第二次世界大戦勃発。
※アンリ・スターンが渡米するまでの数年間、新生パテックは北米及び南米の市場が崩壊していた為、主戦場を仏・西・伊・英に戻して立て直しを試みた。経営状況は少しずつ好転しつつあったが、第二次世界大戦が始まると戦場となったヨーロッパ市場が未曽有の混乱に陥る。この状況をヨーロッパは戦後も何年も引きずった。パテックはアンリが精力的に営業活動を北米と南米で行い、戦後の好景気への備えを着実に行っていった。一方、スターン兄弟には文字盤以外の時計製作のノウハウが無かったにも関わらず、事業継承当初から上質な自社主導のエボーシュ開発を志向し、その実現策として経験豊かで優秀なマネージャーを技術部門のトップとして外部から招聘する。これらの市場の選球眼、人材登用と投入、そしてそのスピード感は素晴らしい経営センスだと思う。

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上:事業継承後、エボーシュの自社化を進めながらも外部エボーシュも活用して、腕時計に於ける複雑機構の先駆者となる事でブランドの地固めがなされた。

1941年、アンリ・スターン中南米を訪問。永久カレンダークロノグラフ1518モデル生産開始
1942年アメリカ参戦、アンリ・スターンがユニバーサル・ウォッチのアメリカ輸入代理店となる。永久カレンダー1526モデル生産開始
1944年、シャルル・アンリ・スターン永眠
1944年、天文台コンクールのカテゴリーに腕時計(ムーブメント直径30mm以下)が加えられる。
1946年、アンリ・スターン・ウォッチ・エージェンシー株式会社設立(パテックとユニバーサルの合衆国の独占的ディストリビューター)
1948年、アンリ・スターンが早くもクォーツの将来性を見越して電子部門を創設した。
1949年、1951年ジャイロマックス・テンプの特許取得。
※パテックの開発した独自技術は本当に寿命が長い。70年後の現行モデルの機械式腕時計の全てが、この画期的なテンプを採用している。

1953年、バーゼル産業見本市で自動巻機構搭載ニューキャリバー12'''600 ATを積んだ2526モデルを発表。
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上:パテックの自動巻導入は遅めで1953年4月のバーゼル産業見本市だった。特許取得した自動巻機構とジャイロマックス・テンプ、さらにソリッドゴールド・ローターを備えたニューキャリバー搭載のRef.2526として発表された。尚、この新しいパッケージが主力エンジンとして製品への搭載が盛んになるのは1960年開発のCal.27-460(1960年)からとなる。

1950年代後半、盛んに対磁時計が開発される
1950年代半ば、アルベール・ジルベール(1930年生まれ)が宝飾工房の責任者となる。
1958年、ニューヨークとヨーロッパ(ロンドン、パリ)を結ぶ大西洋横断のジェット旅客機による定期路線就航開始
1958年、電子部門が世界初のミニュチュア・クォーツ・クロノメーター(クロック)を完成。
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上:1958年撮影の47歳のアンリ・スターンと技術部長ジャン・フィスタ―

1959年、ジャン・フィスタ―社長(何時から社長なのか未記載)82歳で引退、アンリ・スターンが48歳で社長就任、当時の日産は23個(年産6,000個)
1959年、ジュネーブの時計師ルイ・コティエが発明したトラベルタイム機構をパテックが特許取得
1960年、ニューヨークでアルベール・ジルベールの功績により3年連続で「ダイヤモンド・インターナショナル・アワード」受賞
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上:電気の普及、ジェット旅客機の就航が新しい実用時計のニーズを生んだ時代。一方で独創的なデザインや宝飾性に富んだ時計作りも同時に進行した世界的好景気の時代。

1960年代、時計に於ける七宝装飾技法の衰退が顕著
1963年、西ベルリン(当時)市長が公式訪問をしたジョン・F・ケネディにパテック フィリップ製のピース・クロノトーム(クォーツクロック)を贈呈。
1964年、ラ・ジャンクション工場落成、創業125周年
1966年、パテックが天文台計時精度コンクールへの参加を打ち切る。精度コンクール自体も1968年に終了。
※PP正史には1900年代初頭から此処に至るまでの他の時計メーカーを全く寄せ付けない輝かしいコンクールでの成績が列挙されている。特に1944年~1966年迄は優秀な時計師(精密歩度調整師)のメンバー個別の成果を丁寧に紹介している。本稿では割愛するが、当時のパテックのアンティークピースの高騰理由の一つである事は間違いなさそうだ。

1967年、バチカン市国のローマ法王庁に日差1,000分の1秒の電子マスタークロックを納品する。
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上:1969年発表のセイコー初代アストロン成功の陰には他ブランドのクォーツや音叉時計等の開発ストーリーがあった。アメリカのブローバやスイスのロンジン、ジラール・ペルゴ、CEH( Centre Electronique Horloger/電気時計研究)が知られるが、パテックもクロックに関しては結構頑張っており、新時代到来を見越していた様だ。

1967年、女流七宝細密画家シュザンヌ・ロールがパテックで七宝細密画を描き始める。2002年迄在籍。
1968年、ゴールデン・エリプス発表。10年間ベストセラーとなる。
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上:1950年代後半以降、アンリ・スターンはデザインと美の境地を開いてゆく。それはデザイン性の高い宝飾や革新的で大胆なケース形状や文字盤の採用、または伝統的な七宝技法の継承努力など多岐に渡っていた。

1969年、老舗ジラール・ぺルゴ社(1791年創業)がスイス時計業界で初の株式上場。クォーツ時計の量産にも成功。
1969年、機械式時計最後の開発競争であった自動巻クロノグラフが各社から発表される。セイコー、ゼニス、4社共同(ブライトリング、ホイヤー、ハミルトン・ビューレン)
1969年セイコーウォッチ株式会社がクォーツ駆動腕時計初代「アストロン」を発売
1970年、家族企業ホイヤーを創業者の曾孫であるジャック・ホイヤーが株式公開する。
1970年、フィリップ・スターンに長男ティエリー・スターン(現パテック フィリップ社長)誕生

※「第二次世界大戦に続いた四半世紀は、パテック フィリップの黄金時代であった。」(PP正史203P)とあって、まずアメリカで好景気は始まり、次いでドイツ・フランス・イタリア等のヨーロッパでも経済が再生された。テレックス、ジェット旅客機、テレビなど画期的な文明の利器が誕生した。これらの副次的産物として耐磁性能や容易な時差表現(トラベルタイム)が、腕時計の新たな機能として開発されるようになった。しかしながらこの時代のパテックの最大の技術革新は1950年前後の特許ジャイロマックス・テンプの発明だろう。1960年代後半にマイクロステラナットを開発したロレックスを例外として、他の高級時計ブランドが、2000年代以降こぞって採用し始めたフリースプラング方式の圧倒的な先駆者であった。
PP正史195Pでは文献を引用して、第二次世界大戦直後の1947年・1948年の合衆国向けスイス時計輸出価値は開戦前年1938年の6倍に増加とある。また1940年~1960年代初めの間に生産されたパテックの約半分が、裕福なアメリカ人に国内外で購入され、1965年頃までドイツ・イタリア・イギリスでの販売は難しかったらしい。

今回の章は殆ど近代史のおさらいだった。スターンファミリーの時代はもっとまとめやすいと思っていたが、この時期は谷から始まって山が来て、また谷の予感が最後に来ている。その間、加速度的な文明と技術革新に呼応してパテックは躍進し、アンリ・スターンは実に多方面に経営手腕を発揮するので、幹と枝と葉っぱがコンガラガッテいて正直大変だった。

文責:乾
参考・引用:PATEK PHILIPPE THE AUTHORIZED BIOGRAPHY パテック フィリップ正史(Nicholas Foulkes ニコラス・フォークス)
PATEK PHILIPPE GENEVE Wristwataches (Martin Huber & Alan Banbery)

今回は二人の創業者没後(1894年)から、現在経営の舵取りをしているスターンファミリーが経営権を取得する1932年迄の40年間弱のストーリー。
1901年にパテック フィリップは株式会社へと法的な枠組みを変更する。一応、ジャン・アドリアン・フィリップの子孫が社長を歴任してゆくが、複数の役員による合議制スタイルが取られたようだ。世間一般的には個人商店から手堅い経営陣が円滑に運営をする企業として捉えられていたのかもしれない。

ところが、この時期は創業者の有形無形の財産を食い潰しながら表面的には栄光の時代を築きながら、リスクを取れるリーダーの不在から、時代の流れを直視せずに、新しい市場開拓や技術革新への挑戦も怠って、最終的にはアメリカ発の世界恐慌で止めを刺され、売却の危機に至る正にパテック フィリップ ブランドの栄光と挫折の時代である。

「パテック フィリップ正史(以下PP正史)」ではこの時期の栄光の側面を前編として、挫折の部分を後半に紹介している。何度も読み返すのだが、このジキルとハイドの様な両面性は交互では無く、同時進行しているので、本稿では明暗の側面にかまわず時系列で年表風に編集し直してみた。
1872年:ゴンドーロ&ラブリオ社との取引開始(※活発な取引は1900年以降だった様だ)
1882年:ジャン・アドリアン・フィリップの息子ジョセフ・エミール・フィリップ(体質虚弱な時計師であった)社長就任。
※当時ジャンは60代後半、ジョセフは20代前半。ジャンは娘婿を補佐役にしたようだが、ジェネレーションギャップが凄い!
1884年:ジュネーブ天文台の計時精度コンクールでパテック フィリップが首位から5位を独占。
1885年:アントワーヌ万国博覧会で選考審査員を務めたジャン・アドリアン・フィリップが出品された時計にパテック・ブランドの偽造品を発見。
1886年:ジュネーブ・シールの採用開始
1888年:低グレードの時計ブランド「ケタップ」の製造開始。
1892年:40年近く賃借していたグラン河岸ローヌ通り168番地を自社物件として購入し、当時の先進ビルへと大改装実施。
同年:ジョセフ・エミール・フィリップが米国の主要顧客ティファニー他を訪問。

下画像:ベルグ河岸から1853年に移転した賃借時代の工房。2フロアを使用し水力で工作機を稼働させた。隣のホテル「クロンヌ」は1871年の大火事で焼失したが工房は焼けなかった。グラン河岸ローヌ通り168番地(後に41番地に家屋番号変更)
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1892年にパテック、フィリップ社は、それまで40年近く賃借していた工房を自社物件として購入。著名建築家により内外装から電気による照明、セントラルヒーティングが導入されるなど最先端の設備とスタイルで見事な改装がなされた。
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上画像:1800年代末の自社物件となった新社屋。下写真とほぼ同時代の様なので完成予定イラストだったのかもしれない。屋上の時計周りの仕様が異なっている。
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1892年頃:米ウイスキー王ジャック・ダニエルがスプリット秒針搭載ミニット・リピーターNo.90 455所有(下画像)
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1893年:シカゴ万博博覧会に出展
1894年:創業者ジャン・アドリアン・フィリップが79歳で死去。
1895年:アルフレッド・G・シュタイン(ティファニーの元社員)を米国代理店とする契約調印、6年後の1901年には役員就任。

※1870年から1900年の30年間でアメリカ合衆国の国富は4倍になり、実業界に少数の絶大な富を手にする大立者が相次ぎ登場した。アンドリュー・カーネギー(鉄鋼)、ヘンリー・クレイ・フリック(カーネギー共同経営者)、ジョン・D・ロックフェラー(石油)、J・P・モルガン(証券)、ヘンリー・ゴールドマン(証券)、ヘンリー・フォード(自動車)、ジェームズ・ウォード・パッカード(自動車)、ジャック・ダニエル(ウイスキー)、ヘンリー・グレーブス・ジュニア(鉄道・御曹司)

1900年:パリ万国博覧会に出品された仏:パリのルロワの25種類の複雑機能付き懐中時計でグランプリ受賞(当時で世界最高の複雑時計)
1901年:パテック,フィリップ社(Patek, philippe & Cie)を資本金160万スイスフラン(CHF)で株式会社化し、社名を、伝統ある時計メーカー・パテック フィリップ株式会社(Ancienne Manufacture d'Horlogerie Patik Philippe & Cie,S.A.)に変更した。複数の古参社員が役員に就任。
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上:1895年から1934年迄アメリカ市場を統括したアルフレッド・G・シュタイン(左端)と役員達。当時社長をバトンタッチしていったジャン・アドリアン・フィリップの子孫はPP正史に名は有れど、どこにも写真が無い。何となく状況が読めてくる。

1903年:低グレードの時計ブランド「ケタップ」の製造中止
1904年:ルイジアナ万国博覧会へ出展
1907年:ジョセフ・エミール・フィリップ社長が40代半ばで永眠、その息子アドリアン・フィリップ(やはり時計師からスタート)が社長業を継ぐ。

※1900年頃から1920年代半ばにかけては二つの潮流が有った。一つ目は南米ブラジルのリオにあったゴンドーロ&ラブリオ社顧客向けの特注時計クロノメトロ・ゴンドーロと呼ばれる時計(懐中時計から徐々に後半は腕時計)の販売が盛況となる。
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上:1900年代初頭は懐中時計、1920年代はシンプルな腕時計がクロノメトロ・ゴンドーロとして製造販売された。
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上:ゴンドーロ&ラブリオ社はリオのブルジョア階級顧客を「パテック フィリップ・クラブ」として組織化し、巧みな販売戦略で当時790CHFのクロノメトロ・ゴンドーロ・ウォッチを拡販した。

しかし、第一次世界大戦(1914年-1918年)はブラジルにも市場の停滞をもたらしビジネスも急速に不調になっていった。もう一つは女性用で先行していた腕時計が男性にも普及していった時代で、カルティエが製作したアルベルト・サントス・デュモン(ブラジル)の飛行船乗船用腕時計や第一次世界大戦で将校が求めた懐中時計にラグを溶接したオフィサーと呼ばれた腕時計など即効性かつ実用性が追求された必然の結果であった。

1922年:1923年にかけてリオデジャネイロ万国博覧会に出展し、グランプリを受賞。

※時計業界に於ける腕時計(特に男性用)への舵の切り換えにパテックは乗り遅れてしまう。1914年の第一次世界大戦開戦時の同社の腕時計生産比率はたったの7%に過ぎず、その大半は婦人用であった。1920年以前に製造された男性用腕時計はほぼブラジルのゴンドーロ&ラブリオ社向けであった。1924年に於いても腕時計はパテックの生産量全体の28%でしかなかった。このころからポツポツと複雑機能付きの時計も作り始めるが、30年以上も前に作られた婦人用時計の改装版であったり、ヴィクトラン・ピゲ・キャリバーやルクルト等の外部サプライヤー製エボーシュに頼ったものであり、それは質・量ともに不十分なものでしかなかった。1920年代後半には時代遅れになりつつあった高級な懐中時計に注力し始める。そのことは米国の著名な時計コレクター向け複雑時計の開発と納入の事実から明らかである。1930年スイス時計産業全体で腕時計比率が50%に達していたが、パテックのそれは僅か13%でしかなかった。
さらにこの時期、最大市場のアメリカを長く担当していた役員のアルフレッド・G・シュタインは病身で高齢でもあり、新たな腕時計向けの市場開拓は困難であった。さらに彼は非常に頑固で短気であったらしく、スイス本社への忠誠も衰えてきており、後進への権限移譲にも消極的であった。
このように後々に客観的な視点から振り返れば、明らかな時代の変化や危機の芽は見えるが、オンタイムでマネージメントに携わる雇われ経営者達の場合、ある者は目を反らし、また別の者は目を塞いでしまうのが世の常なのかもしれない。

1923年:時計収集家ジェームズ・ウォード・パッカード(1863年-1928年)デスククロック(No.197 707永久カレンダー、ムーンフェイズ、8日巻)を購入。
1927年:ジェームズ・ウォード・パッカードが12,815CHFで懐中時計(No.198 023日昇・日没、均時差、ミニット・リピーター、ムーンフェイズ、永久カレンダー、PP初の星座表)を購入、。翌1928年にパッカード永眠。
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1927年:時計収集家ヘンリー・グレーブス・ジュニア(1868年-1953年)パッカード所有のデスククロックに外観が酷似する時計(No.197 707永久カレンダー、ムーンフェイズ、8日巻)を常に贔屓としたティファニーから購入。
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1929年10月ウォール街大暴落

※暴落後一週間で300億米ドル超の損失があり、諸説で「第一次世界大戦でのアメリカの損失額」に等しいとある。

1931年:給与削減開始。このころ在庫のゴールド・ケースを溶かして売却し給与に充てていた。ゴンドーロ&ラブリオ社の債務が65,000CHFを超加する。
1932年:遂に売り出されたパテック フィリップ株式会社を文字盤サプライヤーであったスターン兄弟文字盤製作所が同年6月14日に買収。
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※これに伴い社名は、現在のパテック フィリップ株式会社(Patek Philippe S.A.)とされた。この買収、当初は完成時計メーカーでは無くムーブメントのみを生産供給するエボーシュであったルクルトが有力であった。結果的にスターン兄弟の買収は、現代パテックのシンプルだけれど手抜きの無い美しく比類の無い文字盤作りに帰結している。

1933年:ヘンリー・グレーブス・ジュニアが1932年秋に完成した24個の複雑機能を備える超複雑な「グレーブス・ウォッチ」を6万CHFで購入。
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1933年:アドリアン・フィリップがスターン兄弟を筆頭とした株主により総会で社長を解任される。
1934年:ゴンドーロ&ラブリオ社の未払債権回収不能決定。

※会社の存亡の危機と、ブランド史上最高に複雑なコレクター向け超絶懐中時計の完成と納品が、ほぼ同時期と言うのは皮肉が効きすぎていて滑稽ですらある。5年の歳月とジュー渓谷に名を馳せた名工達を結集して作られた他力本願の結晶。勿論それはそれで(自社主導製作である限りは)素晴らしいマニュファクチュールの到達点ではあるが、現代に置き換えれば
「Ref.5175グランドマスター・チャイムの様なレア物は、天才的な独立時計師達に頼んででも一握りのマニア向けに作るけれど、市場性のあるラグジュアリー・スポーツのノーチラスやアクアノートは適当なレベルで作ったが為に、競合に勝てなかったので本気で作りません」
と言う状況で、手厳しく言えば「裸の王様」か「堕ちた偶像」と言うべきだろう。

本稿を書いていて印象的だったのが、"髭"。創業者2名も立派な髭を蓄えていたが、この複雑な中継の時代もほぼ髭自慢のオンパレードだ。ところが最後の方になるとパッカードやグレーブス、次代を担うスターン兄弟には髭が無い。リオのパテック フィリップ・クラブのピクニック風景も良く見ると、若手には髭無しがポツリぽつりと混じっている。これも時代の流れを表している様で興味深い。

文責:乾
参考・引用:PATEK PHILIPPE THE AUTHORIZED BIOGRAPHY パテック フィリップ正史(Nicholas Foulkes ニコラス フォークス)

例年の事ながら、この時期はブログ端境期でネタ不足に悩まされる。そろそろ入荷し始めるはずの新製品が次々来てくれれば、実機編として紹介できるのだけれど・・
そんな中でやってきたのが2年前にご紹介したPATEK PHILIPPE THE AUTHORIZED BIOGRAPHY」日本語タイトル「パテック フィリップ正史」の日本語翻訳版。 544ページに及ぶ長編なので、さすがに英語版は多数掲載されている写真等を眺めているしかなかった。日本語訳に関してはパテックオーナーの楽しみである「パテック フィリップ・インターナショナルマガジン」をずっと翻訳されているジュネーブ在住の小金井良夫氏の訳文をベースに、PPJ(パテック フィリップ ジャパン)のスタッフが1年以上かかって手を入れた力作と聞いた。原作はロンドン在住で芸術をテーマに幅広く執筆をされているニコラス・フォークス氏。インターナショナルマガジンの時計関連記事の常連執筆者でもある。2011年にスイス・パテック社から執筆打診を受け、5年の歳月を費やして2016年にイギリスで初版が発行された。
3日ほど掛けてザっと読破したが、とても一度では収められないメモリー&CPUの初老脳ミソなので、内容的にブログに向かないのを敢えて承知で何度かに分けてあらすじを紹介する事にした次第。ほぼ自分自身の為の備忘録用である。
尚、当店初め各正規店経由でのご購入も可能なので、ネタバレ御免の方は本稿は飛ばしていただきたい。2019年9月現在の書籍価格は税別24,200円、現在在庫切れ入荷待ち。
まず最初に創業年1839年から2015年10月までの約175年に及ぶブランドの歴史を、自分なりザックリと整理してみた。まずは現経営ファミリーのスターン家による1932年からの経営権移行を最大の節目としてその前と後に分けたい。そしてその前半期は創業者の一人であるジャン・アドリアン・フィリップの死亡した1894年以前の創業とブランド確立期とそれ以降に分けたい。後半期のスターンファミリー時代はその時々の経営状況や時計業界の推移で分けるよりも経営の主軸を担ってきたファミリーの4世代の主役時代で分割出来そうだ。

で、初回は1800年代初頭からの約100年弱を足早に辿ってみたい。創業期はとても大事なのだろうけれど、時代が古すぎるし、ほぼ馴染の無いナポレオン時代の東ヨーロッパが舞台であり、ほぼ懐中時計全盛期なので正直なところ半眼になってコックリする事、半端では無かった。
創業者の一人アントワーヌ・ノルベール・ド・パテック(1812年、ポーランドにて誕生、本名アントニ・パテック・プラヴヅツから1843年頃ジュネーブで改名)は、皇帝ナポレオン率いるフランスが攻め込んだ超大国ロシアに翻弄されたポーランドの独立の為に、若き日には革命に身を投じる軍人であった。しかし1831年にポーランド革命は頓挫し、祖国を追われるようにパテックは19歳で亡命を余儀なくされた。
一時期フランスで植字工を経験し、1835年にはスイス・ジュネーブ州レマン湖岸の村で絵画を学ぶ内に、近隣のジュネーブ市の中心商業である時計産業に興味を持つようになった。彼はジュネーブ市に於いてポーランド人社会での交友関係を通じて20個の時計を販売する事からビジネスをスタートさせた。1839年5月1日にやはり東欧からの移民であり時計の製作技能を持つフランソワ・チャペック(チェコ・ボヘミア生まれで後にポーランドに帰化)と共同で小さな時計事業をジュネーブ市内のベルグ河岸29番地(ローヌ河北岸)でパテック、チャペック社をスタートさせた。同年7月にはチャペックの紹介で伴侶を得たパテックは、ポーランド人社会を基盤に徐々にビジネスを発展させる。しかし時計製作を担当していたチャペックの浪費癖等の理由から両者の関係が悪化し、1845年には6年間の契約期間満了を持って二人は決別した。
相前後して、将来の市場拡大の為に1844年12月、パテックはパリの工業製品見本市であるパリ産業博覧会に出展した。この際に当時画期的な発明として産業博覧会の銅賞を受賞した「鍵なし巻上げ機構」を考案した時計師ジャン・アドリアン・フィリップの存在を知る。フィリップは1815年にフランス人時計製作者の息子として生まれ、父から時計製作の手ほどきを受けたのち単身ロンドンで修行を積んだ。帰国後は政府認可のマニュファクチュール工房を、ベルサイユに開設して時計製作をしていた。
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チャペックと決別した1845年、パテックはパリでフィリップと共同経営契約の交渉を開始し、ベルグ河岸15番地に新しいパテック社を設立した。同じ年にフィリップは「鍵なし、リューズ巻上げ・時刻合わせ機構の特許」を登録した。
尚、馬の合わなかった最初のパートナーのチャペックとジャン・アドリアン・フィリップは共に時計師であったが、両者には決定的な違いがあったようだ。チャペックは「ルパサージュ」と呼ばれる購入エボーシュ(ムーブメント)に仕上げと精度向上のみを施す職人的時計師であったのに対し、フィリップはムーブメントを設計し製作する創造的時計師であり、常に最新の技術動向を追い求め、技術革新への情熱を持っていた様である。1850年にパテック社は自社に工作機械を導入し、エボーシュの製作を開始している。
この1840年代後半の記述は、大層に難しく書き辛いのである。1848年にフランスで始まったヨーロッパで吹き荒れた革命の嵐、その経済的混乱に伴う創業間もないパテック社の経営危機、それでも革命の余波によるポーランド独立を願って止まないパテックの背反する想い。パテック氏の性格と言うのは中々興味深い。経営者に必須の先見の明はある。同時に自己顕示欲も強かったようで、新しいパートナーのフィリップ氏ともその点で結構ギクシャクしたところが有ったようだ。ともあれ1851年1月には社名が「パテック、フィリップ社」へと変更された。
1851年のロンドン・ハイドパークで開催された世界初の万博(6ヶ月、600万人集客)に出展したパテックは決定的大成功を収めた。その象徴はヴィクトリア女王と夫君で万国博覧会自体を発案したアルバート公によるパテック フィリップ製懐中時計購入であり、博覧会からパテックには金メダルが贈呈された。結果的に画期的なマーケティング手法となった博覧会事業への参加・出展は今現在でも継続されている経営方針となっている。
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ロンドン万博の成功からスタートした1850年代は、パテック フィリップにとって順調に事業が拡大した。1853年には8年で手狭になったベルグ河岸15番からローヌ河対岸南側のグラン河岸に位置するローヌ通り168番地(現在は本店ブティックであるジュネーブ・サロン)に工房を移転した。しかしパテック フィリップ社は好調であったが、1850年代もヨーロッパ自体の景気は安定せずスイス時計産業は順調では無かった様だ。
パテックは既にニューヨークのティファニー等の取引先が有り、1849年にカリフォルニアで始まったゴールドラッシュに湧くアメリカへの長期単身出張に1854年11月中旬に出発した。翌年の4月頭にロンドンに戻るまで、彼はニューヨークを皮切りに東海岸と中東部の主要都市を精力的に訪れている。マサチューセッツではウォルサムの近代的な蒸気機関を動力源とした安価かつ大量生産される時計製造工場を視察し、高品質で美的かつ独自性を有する高級時計メーカーとして生き残る経営方針を確信している。市場調査と営業を目的とした出張だったが、盗難や移動中の事故などで相当に肉体的にも精神的にも非情にタフな旅で疲労困憊に陥っている。それでもこの大国には将来性があり、限られたアメリカンドリーマーが有する巨万の富の存在を知り、非常に有望で大事な高額品マーケットである事に気づいていた。
この悲惨な旅の経験にもかかわらず1858年には、さらに広範なヨーロッパ各地への長期出張を敢行し営業活動を行っている。アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックは過酷なアメリカ出張で患ったひどいリウマチに悩まされながらも、常に新しいマーケットと顧客を渇望する熱心なビジネスマンだったようだ。

ビジネスパートナーのジャン・アドリアン・フィリップは、創造的時計師として様々な改良をアイデアし自身もしくは法人として数々の特許を登録した(1840年代後半~1880年代初頭)。
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また1860年代には永久カレンダー機構等を搭載したグランドコンプリケーションの生産も始まり、多くがアメリカ向けに出荷された。さらに1868年にハンガリーの貴族夫人の発注によってスイス製初の腕時計も作られている。
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そのころ事業は順調に伸びていたが、1872年にはアメリカの最重要顧客であったティファニーが、パテック社のお膝元であるジュネーブのコルナバン駅直近に米国流のハイテクな時計工場を建設した。しかし、この違和感のあると言わざるを得ない大胆な挑戦は4年で頓挫する。その跡片付けに関わったパテック フィリップ社には、その名残としてジュネーブ本店に当時の巨大な金庫が飾られている。そんな経緯が有りながらも両社のビジネス上の繋がりは強固で、特別なパートナーシップは今日も続いており、現在でも生産されているパテックとのダブルネームのタイムピースは、知る限りでティファニーだけしか無いはずだ。
自身の名前を冠したビジネスの名声を獲得する事に邁進した創業者アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックは1877年にこの世を去る。しかし彼の息子レオン・ド・パテックは、パテックと言う姓の使用料を年収として受け取るのみで、同社の経営を引き継ぐ事は無かった。さらに17年後の1894年には、もう一人の創業者ジャン・アドリアン・フィリップが穏やかに永眠した。
このフィリップの晩年20年間にもパテック フィリップ社は様々な博覧会や万博に驚異的なタイムピースを出展し、その地位を不動の物とした。その一方でウォルサムを代表としたアメリカの安価で大量に生産される時計への対抗手段として、ジュネーブ天文台の計時精度コンクールが1873年から開催され、パテックは精度における圧倒的優位性を発揮し続けた。
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当時のもう一つの厄介な問題は、パテック フィリップの偽造品の横行であった。この対策の一つが1880年代の終わりにカラトラバ十字を商標登録する事であった。またジュネーブ州としても州内で製造され、新たに発足された検査機関で良好な品質基準を満たした時計にのみ、州の紋章刻印を許可する制度を敷いた。いわゆる「ジュネーブ・シール」の始まりである。

書きはじめは、もっと凝縮するつもりだったが、あらためてエピソードの多さを思い知らされた。創業期の"生み"の苦しみや、戦乱による不況にも何度も経営は揺さぶられている。1830年代からはイギリス以外の国々で産業革命が始まった時代背景にあり、近代的な大量生産に成功するアメリカが重要な市場になると同時に、競合として台頭してきたジレンマもあったようだ。普通この手のブランドストーリーは好調時(山)が主で、不遇時(谷)を従として綴られる事が多いが、この"正史"は苦境を主体に書かれている気がする。共同経営者の有り方にも赤裸々で歯に衣着せぬ表現が多々されており興味深い。ともあれ二人の創業者時代の後半生は、確固たる高級時計ブランドが確立され、良好な経営状況であった様だ。

文責:乾
参考・引用:PATEK PHILIPPE THE AUTHORIZED BIOGRAPHY パテック フィリップ正史(Nicholas Foulkes ニコラス フォークス)

今年は7月が涼し目で8月はお盆迄が酷暑、盆明けはずっと雨ばかりで少し暑さもやわらぎ秋の風情。ところが9月に入って残暑?とは言えない猛暑に逆戻り。世界的にもハリケーンや台風が年々その猛威を増している様で、天候不順を通り越して徐々に住みにくい地球化が進んでいるような気がする。経済、政治、宗教、移民などに端を発する世界各地での諍いにもこの異常気象による人々のいらだちが拍車をかけているのかも知れない。
前回に引き続き紹介するワールドタイムには、そんな世界でのパワーバランスの変遷が反映されてきた歴史が詰まっている。タイムピースであると同時にタイムカプセルの一面を持っている。
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最新の文字盤を装備したRef.7130R-013レディス・ワールドタイム。判り易いターニングポイントはTOKYOとBANGKOKの間に存在する。パテック社が表示都市名の変更を決めたのは昨年度で、よもや変更前の都市が一年以内にアジア最大の政治問題を抱える事になろうとは想像も出来なかっただろう。前回紹介したメンズ同様にセンターギョーシェには透明なエナメル焼結処理の上からSWISS MADEとプリントされるが、なぜなのか文字間隔がかなり開いている(特にM A D E)。気になって他のレディスモデルの実機やカタログを見たが、どうもこのワールドタイムだけの特殊仕様のようだ。
下記画像はModèle 1415 HU(1939)、現在1時間の時差を持つLONDONとPARIS、古くは同じ時間帯を採用してきた。文字表記もLONDRESだったり、東京はTOKIOとなっていて興味深い。
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当時は一つのタイムゾーンに対して2~3都市の表示がざらにあって、デザイン的な座りの良さよりも主要な都市を出来るだけ盛り込む実用性が優先されていたようだ。アラスカとタヒチが同じ時間帯を共有しているという面白い発見も出来る。さしずめ東京と併記されそうなお友達は親日国のパラオだろうか。
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メンズの現代ワールドタイムは第3世代(2000年/第1世代Ref.5110、2006年/第2世代Ref.5130、2016年/第3世代Ref.5230)まで進化している中で、レディスは2011年に初出となっている。どのメンズともペア仕様ではなく、カラトラバの素直なクンロクケースにダイアルはメンズ初代Ref.5110に似た顔が与えられた。針の形状はほぼ同じだ。
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ワールドタイムのほぼ完全なペアモデルとしては2014年の175周年記念としてムーンフェイズ付きの限定モデルが発表されている。もちろん凄まじい争奪戦だった。(上の画像)
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メンズと全く同じ極薄自動巻キャリバー240 HUを搭載するがケースの厚みは8.83mmで紳士用(10.23mm)より1.4mm薄く仕上げてある。ベゼルへのダイヤセッティングは見るからに滑らかで衣類への引っ掛かりを防止するパテックらしい実用的な設計だ。
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ピンバックルにも27個のダイヤが同様にセットされている。ところでレディスにはいわゆるメンズのフォールディングバックル(二つ折りタイプ)が初期設定されているモデルが非常に少ない。ノーチラスやアクアノートのレディスには専用のメンズ同様の両観音バックルが初期設定されているのだが、今回のワールドタイムの様なクラシックなモデルではほぼ全てピンバックル仕様でリリースされている。別売アクセサリーとして11mmや14mmの各素材の二つ折りフォールディングバックルは用意されているし、2014年リリースの175周年記念限定レディスモデルにはフォールディングバックルが初期設定だった。対応は出来るにもかかわらずピンバックル主流はなぜか。
少し前までブライトリングのストラップモデルは男女ともピンバックルとフォールディングバックルを購入時に選択する事が出来た。男性は殆どが少し高くなるフォールディングタイプを選び、女性はほぼ全員がピンタイプを選択した。着脱時の万が一の落下を嫌がる男性、一方女性は見た目同じなら少しでも財布に優しい方が良いという意見だった。パテックの場合は18金素材が圧倒的に多いので両バックルの価格差は結構あるのだが、それがレディスをピン主流にしている理由かどうかは判然としない。個人的には女性は少しでも軽くて、細めの腕にはフォールディングタイプの曲線カーブの形状が個人個人にフィットし辛いからではないかと思っている。


Ref.7130R-013
ケース径:36mm ケース厚:8.83mm 
ラグ×美錠幅:18×14mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:RG,WG
ダイヤセッティング:ベゼル(62個 約0.85ct) ピンバックル(27個 約0.21ct)
文字盤:アイボリー・オパーリン、ハンドギョーシェ ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有り)・ダーク・チェスナット手縫いアリゲーター
価格:お問い合わせください
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ケース径36mmもメンズより2.5mm絞られている。手巻きクロノグラフなどもそうだが男女共通のエンジンを積むモデルでは、ケースとムーブのタイト感がレディスの方が勝るので後ろ姿に於いては見返り美人の婦人物に軍配を上げたい。

Caliber 240 HU

直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:239個 石数:33個 
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責、撮影:乾
参考:Wristwatches Martin Huber & Alan Banbery P.243
2014年刊行-パテック フィリップ創業175周年記念 P.28,29

PATEK PHILIPPE 公式ページ
PATEK PHILIPPE 公式インスタグラム
※毎月19日未明に新規投稿有り(スイス時間18日18:39ブランド創業年度由来)月一投稿なので作り込みスゴイです。
当店インスタグラムアカウントinstagram、投稿はかなりゆっくりですが・・

さすがに何度目かの紹介となると蘊蓄を書く事は難しい。だがインスタ用に取り直した下の画像が結構気に入ってしまって、無理やりしつこい紹介をそのイケメンな造形を切り口に挑戦する事にした。お暇な方はお付き合いください。
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個人的にはとても好印象な2016年デビューのハンサムウオッチ。ただ長男(Ref.5110、2000年発表)と次男(Ref.5130、2006年発表)に備わっていたチョッとボテッとした平たいお餅か饅頭を想像させる親しみやすいケース形状と比べると、凛々しさが災い?してか求める方が少しだけ厳選されている感じがする。このところビジネスシーンでのドレスコードのトレンドは、かなりカジュアルになって来ていてスーツよりジャケパンが主流になって来ている事なども影響しているのかもしれない。
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しかし、自分自信の本性が全く凛々しくなく軟弱なので個人的にはクンロクケースっぽい三男坊の折り目正しさに惹かれてしまう。真正面から見たサイドラインが、長男と次男は柔らかくまるで女性の姿態を思わせるシルエットをラグからリューズにかけての描き(リューズガードのお陰で)凸凹無く反対側のラグまで流れてゆく。対して末っ子はウイングレットラグでまずエッジを効かせリューズもしっかり露出させて、どこまでもメリハリがついている。本当にマッチョで端正なのである。まるで異母兄弟か種違い(下品な表現ですみません!)の様だが、搭載されるエンジンは全く同じであり血統は守られている。ちなみに年子?の2017年リリースのRef.5930ワールドタイムクロノグラフのケース形状も厚さが増すもののほとんど三男と同じである。

ところで不勉強の故、最近まで気付いていなかったのがギョーシェ装飾におけるフランケエナメルの存在。これはギョーシェの掘り込みが施された上に透明な釉薬(ブルーやグレー・ブルーの金釉)を焼成し、研磨を掛けてギョーシェの美しさを封じ込めると共に透明な平滑面を得る手法である。この手の文字盤をじっくり観察すれば宙に浮くシリコン転写プリント部分によって誰でも簡単にそれを確認できる。
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白色のSWISS MADEの転写プリントはどう見ても平滑面に乗っかっている。さらに文字の影がギョーシェ表面に写っている。もっとダイナミックな以前に紹介済みのレディスカラトラバRef.4897の参考画像をもう一枚。
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勿論パテック フィリップの専売特許では無くて、スイス時計ではよく知られた技法ではある。しかし良好なエナメル焼成を文字盤に施せるのは非常に限られたダイアルサプライヤーに限られており、文字盤に妥協の無いパテックならではと言える。現行ラインナップで同様のギョーシェ文字盤が採用されているモデルは限られておりメンズのワールドタイム系のメンズRef.5230、5930、レディスRef.7130と上記画像のRef.4897のみとなっている。ワールドタイムの歴史、機能や機械については繰り返しとなるので過去紹介記事をご参考されたい。
尚、都市表記が一か所(HONG KONG→BEIJING)に最近変更されている。


Ref.5230G
ケース径:38.5mm ケース厚:10.23mm 
ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:WG,RG,
文字盤:ラック・アントラサイト、ハンドギョーシェ ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有り)ブラック手縫いアリゲーター
価格:お問い合わせください


キャリバー名Cal.240 HU末尾のHUはHeures Universelles(仏:時間 世界)の頭文字だ。ちなみにパテック社のHP内には用語解説ページがあって時々御厄介になっている。1977年開発の極薄型自動巻キャリバー240(厚さ2.53mm)にワールドタイムモジュールを組み込んだ240 HUは3.88mm。これは厚み的には永久カレンダーキャリバーの240 Qと全く同寸である。たった1.35mmの各モジュールに地球やら100年やらが封じ込められている。
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Caliber 240 HU

直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:239個 石数:33個 
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ
PATEK PHILIPPE 公式インスタグラム
※毎月19日未明に新規投稿有り(スイス時間18日18:39ブランド創業年度由来)月一投稿なので作り込みスゴイです。
当店インスタグラムアカウントinstagram、投稿はかなりゆっくりですが・・

【2019パテック フィリップ展のご案内】
とき:2019年8月31日(土)・9月1日(日)11:00-19:00
ところ:カサブランカ奈良 2階パテック フィリップ・コーナー

文責、撮影:乾

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パテック フィリップ展を開催いたします。今回はコレクションの中核であるコンプリケーションを代表する年次カレンダー、ワールドタイム、トラベルタイム等を中心に展示いたします。レディスも最新作であるTwenty~4 Automaticを始め普段はご覧いただけない品揃えで皆様をお待ちいたします。

とき:2019年8月31日(土)・9月1日(日)11:00-19:00
ところ:カサブランカ奈良 2階パテック フィリップ・コーナー

出品予定モデルをピックアップでご紹介(都合により変更になる事が有ります。予めご了承ください)

Ref.5320Gー001 自動巻永久カレンダー

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一昨年発表の永久カレンダー。凝ったラグ形状やヴィンテージ感漂う立体的なボックスサファイアクリスタルなのにお得感の有る嬉しい価格設定。此処の所ずっと年次カレンダー専用の顔だったダブルギッシェスタイルが採用された古くて新しい永久カレンダー。
ケース径:40mm ケース厚:11.13mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤: クリーム 色ラック 夜光塗料塗布ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有)・チョコレートブラウン アリゲーター
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:お問い合わせください。
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Ref.5205G-013 自動巻年次カレンダー_DSC9474.png

この時計については、2017年春の初見前の期待感の大きさが災いして、現物の印象を随分低く見てきた時期が有った。しかし今現在は素直に美しく深みのある文字盤カラーは、パテックの現行ラインナップに増えている青色系のダイアルの中で個人的には、一、二を争う出来だと思っている。
ケース径:40.0mm ケース厚:11.36mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGRG別ダイアル有
文字盤:ブルー ・ブラック・グラデーション、ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有)・ブラック アリゲーター 
バックル:フォールディング(Fold-over-clasp)
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Ref.5230G-001 自動巻ワールドタイム
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近代ワールドタイムとしては第三世代(2016年発表)となるこの時計は、初代(2000年、Ref.5110)や二代目(2006年、Ref.5130)と比較して最も筋肉質で引き締まった印象を持っている。エッジの効いたケース形状、微妙なダウンサイジング、絞り切った針の形状、複雑で凝った今迄にないセンターギョーシェパターン、と全方位から隙の無いイケメンウオッチに仕立てられた。歴代で最もビジネススーツに合わせたいのがこの三男坊。
ケース径:38.5mm ケース厚:10.23mm 
ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:WG,RG,
文字盤:ラック・アントラサイト、ハンドギョーシェ ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有)・ブラック アリゲーター
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新製品 Twenty~4 Automatic Ref.7300/1200R-010
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新製品 Twenty~4 Automatic Ref.7300/1200A-001
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女性だけのシリーズであるTwenty~4Ⓡ。デビューから約20年を迎え新たにラウンドシェイプ(丸形)にしてカレンダー搭載の自動巻のTwenty~4 Automaticが新たにラインナップ。アラビア数字のインデックスや針等も全てが視認性向上を最優先したデザイン。大人の女性の為に誕生した究極の実用レディスウオッチ。
ケース径:36mm ケース厚:10.05mm 防水:30m
ダイヤ付ベゼル(160個 約0.77カラット)     
ケースバリエーション:RG(別文字盤有)、SS(別文字盤有) 
文字盤:ブラウン・ソレイユ 夜光塗料付ゴールド植字アラビアインデックス
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イベント・特典

1、特別イベント:ポルシェ試乗会
多くのパテックオーナーにも愛されている高級スポーツカー"ポルシェ"。最新ラインナップの試乗車を当店駐車場にご用意します。真のスポーツカーの走りをお試しください。

13:00~18:00 カサブランカ奈良駐車場にて受付
ご協力店:奈良県ポルシェ正規販売店 PORCHE Center Nara ㈱タジマモーターコーポレーション

2、ご成約特典:カサブランカ奈良 ミシュラン
期間中、ご成約で、当店お勧めの注目レストランでご利用いただけるぺアお食事券をプレゼントいたします。
ご協力店:懐石/奈良而今(ナラニコン)、フレンチ/la forme d' eternite(ラ フォルム ド エテルニテ)、イタリアン/banchetti(バンケッティ)

文責:乾

メンズブランドの印象が強いパテック フィリップだが、近年はレディスウオッチの存在感が徐々に増している。昨年度のスイスの出荷本数の男女比率が約70対30%と聞いた記憶が有る。最新の2019カタログへの掲載モデル数(時計のみ)では97対66本で約40%がレディスだ。グランドコンプリケーションには2モデルしかレディスが無いので、グラコンを除いたラインナップでの男女比率は65対64本となって半々になっている。
昨年、パテックの現行ラインナップには存在しなかったペアウオッチが新規に提案された。カラトラバ ・パイロット・トラベルタイムのローズゴールドモデル(5524R7234R)である。2015年度迄はクルドパリベゼル装飾が特徴的な7119と言うカラトラバのレディスモデルがあった。このモデルには全く同デザインのメンズで5119(2019年2月生産中止発表)が有り、シンプルかつベーシックな非常に好ましいペアウオッチがあったが残念な事に消滅してしまった。
何となくペアになりそうな時計はノーチラスやアクアノートに存在するが文字盤が異なったり、ケースやストラップが異なったりで"なんちゃってペア"と呼んだ方が良さそうだ。どうもパテックはメンズとレディスに求められる時計デザインは異なるという考えを持っている様だ。ただサイズの大小だけで対応するという考え方を避けている様に思う。
その最たる現象がレディスだけのシリーズが存在している事だ。1999年に登場した『Twenty~4』は一見全く新しいデザインに見えるが、明らかにレクタングラ―(縦長長方形)ウオッチであるゴンドーロの遺伝子を引いている。これはケースのみならずブレスレットにもその特徴が取り込まれている。同シリーズはデビュー以来ハイジュエリーを含む様々なモデルが生産されてきた。その殆どがクォーツムーブを搭載したが、一部手巻きの機械式モデルも存在した。現在は随分整理されステンレスとローズゴールド各4型がラインナップされている。ステンレスモデルはクォーツゆえの魅力的な価格と安定的な供給が相まってロングセラーかつベストセラーモデルである。
誕生から20周年を迎えたTwenty~4に自動巻の基幹エンジンCal.324 S Cを搭載したラウンドシェイプのニューモデルが加わった。昨年秋にミラノで大々的に発表され、一部の店舗で先行販売されていたが先日から当店でも取り扱いがスタートしている。_DSC9627.png

ケース径36mmは最新のサイズトレンドを反映し実に見やすい。ダイアルデザインは従来の長方形の第一世代とは大きく異なる。視認性抜群のアラビアインデックスは前述の唯一のぺアウオッチであるパイロット・トラベルタイムの字体から想起されている。縁取りされた見やすいカレンダーもこれまでは備わっていなかった。従来は良くも悪くもアバウトだった分(ミニット)の読み取りも分専用インデックスによって容易になった。何よりメカニカルな秒針の動きがこの時計の実用性を決定づけている。此処まで視認性を高めた女性専用時計はブランドを問わず大変珍しい。
第一世代のTwenty~4の広告は少しセクシーなイメージで女性特有の魅力を打ち出していたように思う。新しいTwenty~4 Automaticの訴求ではそんなテイストは微塵も無く、キャリアや完全に自立した大人の女性としての打ち出し方になっている。日本でも徐々に企業での女性管理職や役員が増えつつあるが、欧米ではこの20年間でそこが激変したのだろうなと思わせられる。第一世代のTwenty~4はプレゼントされるケースも多い時計だけれど、新しいTwenty~4 Automaticはステンレスモデルでも結構な価格ながら女性が自分自身で購入する時計なのだろう。
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バックル部分は少し改良されて完全な左右対称の両観音方式となり、リリースも両側から同時にプッシュ(青い保護シール部分)する最新方式に改められた。ティエリー・スターン社長が従来のデザイン継続に強く拘ったブレスレットは、この時計で一番美しい部分かもしれない。※左側の赤い部分は保護シール
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後ろ姿からは太いラグが特徴的な頑丈そうなケース構造が見て取れる。日常生活防水の時計には見えない安心感が漂う。画像下部でケースが少し段付きで凹んでいる部分が有る。どうやらスナップ形式の裏蓋を開封する為のスリットの様だ。これは中々見た事の無い珍しい細工である。個人的にはいっそのこと裏蓋は捻じ込みにして防水性能を高めてより実用性を獲得しても良かったのではないかと思う。この時計はベゼルのダイア装飾が無ければ本当にジェンダーレスだと思う。事実、数日前に来られた新規の男性のお客様は、最初は真剣に自分用として見ておられた。
恐らくパテック フィリップの中でメンズも含めて、最高に読み取りに優れる最強装備品的なレディスウォッチであろう。素材違いのステンレスタイプや、ラグやブレスレットにもダイア装飾されたモデル、フルパヴェと呼ばれるダイアモンドテンコ盛りのゴージャスな物まで多様なラインナップがいきなり揃って居る。詳しくはHP等でご覧頂きたい。

Ref.7300/1200R-001
ケース径:36mm ケース厚:10.05mm 防水:30m
ダイヤ付ベゼル(160個 約0.77カラット)     
ケースバリエーション:RG(別文字盤有)、SS(別文字盤有) 
文字盤:ブラウン・ソレイユ 蓄光塗料付ゴールド植字アラビアインデックス 
価格:お問い合わせ下さい

Caliber 324 S C
直径:27mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax(Silinvar製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、ムーブについての過去記事はコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

参考資料:PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE Vol.Ⅳ No.7
文責 撮影:乾

例年、今時分は湿気と暑さで閉口するのだけれど、今年は網戸越しの心地良い涼風で、寝心地が良い日々が続く奈良。ついつい寝すごして早朝トレーニングをサボってしまうのが、頭の痛いところだ。
記録的に梅雨入りが遅れていた西日本。先日出張した愛媛では、主要河川が既に干上がって十数年ぶりの水不足が心配されている。本格的な給水制限が始まると、街にゴーストタウンの時間帯がやってきて商売どころでは無くなってしまう。自然の気まぐれもお国が変われば、悲喜こもごもである。

さて、少し前に取り上げたストラップ仕様のノーチラスのクロノグラフには同じローズゴールド素材でメタルブレスレット仕様も用意されている。どちらも入荷数が非常に少ないので目にする機会に中々恵まれない。一番大きな違いは勿論ストラップとブレスレットながら、文字盤のベースカラーと6時側のクロノグラフ積算計のインダイアルの色使いと60分積算針が赤では無く12時間積算針と同色の白系となる。
文字盤ベースカラーは、カタログや公式HPカタログでは両者で異なる。ストラップ仕様がブラック・ブラウン、ブレス仕様はブラック・グラデ―ションとなっていて印刷でもモニターでも黒っぽく表現されている。ところが入荷時のブレス仕様の現物は結構ブラウン系の色目に見える。バキュームパックから出して剥き出しにすればダークグレーっぽく見えてくる。両者を並べて見比べる事はまず不可能なので記憶だよりになるが、個人的には少し似た色目に思える。フランジ(文字盤廻りの土手部分)に結構な高さが有って、ローズゴールドの赤目の色味がダイアルに写り込んで茶系統の色目に錯覚させられている可能性がある。
ちなみにプチコンのRGストラップ仕様5712Rもブラック・ブラウンでクロノのストラップと同色である。でも同じブラウン系でもRG3針ブレスモデル5711/1Rはブラウン・ブラック・グラデーションで違う色目となる。
いづれにせよメンズ・ノーチラスの横ボーダーの濃色ダイアルはややこしくて、怪しくて、不可思議でミステリアス。皆さんコイツにノックアウトされてしまう。いつの日かベゼルダイア仕様のプチコン5724Rも含め、夢の競演ノーチラスRG5兄弟全員集合!で胸のつかえを落としてみたいものだ。
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※画像にすると結構グレーに写り、ストラップモデルとの文字盤カラーの違いに気づかされる。
積算計廻りの色使いの違いは好みが別れるが、個人的には同色でまとめられたブレス仕様により高級感を感じる。このクロノグラフモデルの草分けは2006年秋のノーチラス発売30周年で発表された5980/1A-001に遡る。その際に採用された積算計インダイアルの色遣いがスポーティーな2色コンビネーション。2010年にはローズゴールド仕様の現行5980Rのストラップモデルがデビュー。初めて同色のインダイアルが採用されたのは2012年に追加されたステンレス素材のシルバー・ホワイト文字盤5980/1A-019からだ。2013年にはSSとRGコンビネーション5980/1ARとRGブレスタイプの5980/1Rが同色インダイアルで発表され現行ラインナップとなっている。
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搭載されるベースキャリバーCH 28-520系を積むノーチラス以外のモデル(例:5960等、全て59始まり)に関しても2011~2012年頃から積算計インダイアルのモノトーンへの移行がなされている。どうやらその時期を境にパテックの自動巻クロノグラフの顔は第一世代と第二世代に分けられそうだ。

ところで、この時計は相当に重い。手元の量りでは254g。これは大人気のSS3針5711/1Aの123gの約2倍である。これまで触れてきたパテックの時計の中では二番目の重さだ。一番は40周年記念限定のWGクロノグラフノーチラス5976/1Gで312gの超ヘビー級だった。一般的な現行コレクションに於いて、5980/1Rが最も重いモデルと思われる。
そしてお値段も結構ヘビー級なのだが、此処のところ人気上昇中で購入希望登録は増えつつある。
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ケースの厚みは12.2mm。ピン穴が見えているバックル周辺のサイズ調整用駒部分の厚みはメンズ・ノーチラス全てが共通(ピン仕様の場合)で非常に薄い。ケース厚さ8mm台の3針モデル5711やプチコン5712の場合は、同じ薄さの駒が時計部分まで連続している。しかしご覧のように複雑機能を搭載する厚めのモデルでは徐々に駒が厚くなって、ラグ厚と調和するようになっている。
ステンレスの5711/1A等は上の画像の状態にセットしても自立するが、トップが重すぎる5980/1Rは左右どちらかに倒れ込んでしまうので撮影時には少し工夫をして画像にはかなり加工を加えてある。お暇な方は違和感をヒントに間違い探しをお楽しみください。
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18金RG素材の色目は結構赤く見える。21金のセンターローターとの違いがはっきり出ている。正面と側面の画像ではそこまで赤味を感じない。恐らく光の当たり方に加えて、異なるポリッシング手法によって仕上げられた表面状態の違いも大きく影響しているのだろう。実際ノーチラスのポリッシングの多様性は凄い。
シリーズ発売40周年の2016年秋に刊行されたパテック フィリップ インターナショナルマガジン VOL.Ⅳ 2の記事では聞きなれない手法、サティナージュ、ポリサージュ、シュタージュ、アングラージュ、アヴィヴァージュ、サブラージュ、フートラ―ジュ、エムリサージュ、ラヴァージュ、ラピタージュ等の記載がある。全部フランス語だろうけれど、最初の2つがサテン仕上、ポリッシュ仕上ぐらいしか見当もつかないが、ノーチラスの魅力的なナイスバディの完成には飛んでもない手間暇と情熱が注がれているのは間違いなさそうだ。

Ref.5980/1R-001
ケース径:40.5mm(10時ー4時方向)
ケース厚:12.2mm 防水:12気圧 ねじ込み式リュウズ
ケースバリエーション:RGのみ 他にRGストラップSS/RGブレス仕様有 
文字盤:ブラック・グラデーション、蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
価格:お問い合わせください

Caliber CH 28-520 C/522 フルローター自動巻フライバック・クロノグラフムーブメント コラムホイール、垂直クラッチ採用

直径:30mm 厚み:6.63mm(ベースキャリバー5.2mm、カレンダーモジュール1.43mm)
部品点数:327個 石数:35個 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責、撮影:乾

此処1年ぐらいでノーチラスとアクアノートの人気がさらに過熱して来た様に思う。それまでは限られたSS(ステンレススチール)モデルだけに集中していたが、そこが無理なら別のSSモデル、それも無理なら18金モデルとまるで連鎖し伝染するかのように人気と飢餓感が、縦に横に広がってきた。さらには女性モデルへもじわじわと影響が出て来ている。恐らく当店だけでなく他の正規店にも同じか、それ以上に希望者が殺到していると思われる。
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これに伴って毎日のようにお電話やメールで国内外からノーチラスを中心に在庫確認と予約の可否へのお問い合わせを頂いている。3年ほど前に『あぁノーチラス、されどノーチラス』とのタイトルで一番人気のRef.5711/1A-010(ブラック・ブルー文字盤)の紹介と予約に関する方針めいたものを書かせて頂いた。実は今現在でもこの記事へのアクセスは非常に多い。トータルページビューでは断トツぶっちぎり状態である。この時計への皆さんの情熱が想像以上に熱いのだろう。

あまりにもお問い合わせが多いので改めて当店の方針を説明させて頂きます。まずシリーズ等に無関係で全てのパテック フィリップのモデルに関して順番をお約束する予約はお受けしておりません。ただいつでも、どなたでも店頭に限ってお名前、ご住所とお電話番号等を頂戴するご購入希望の登録は、基本的にご本人様からは受け付けております。ただ販売の優先順位は、過去及び将来の当店でのパテック フィリップご購入実績(本数・金額等)から判断させて頂いております。
年間の入荷本数はモデル毎にほぼ決まっており、実績顧客様からの新たなご希望数が入荷数を上回っているモデルは、実績顧客様であっても全ての方には販売出来ないかも知れません。必然的にご登録だけのお客様への販売はさらに難しくなってしまいます。
この説明で再検討される方も、取り合えず来店され登録される方もおられます。誤解をされては困りますが、たまたま登録のための来店時に店頭で出会った別のモデルを購入されて実績顧客としてウエイティングされ、その後に登録モデルも購入と言う様なケースも無いわけではありません。ただし、決して無理にお奨めする気はありませんし、また時計は無理やり購入するものでもないでしょう。時計や車は"出会いと縁"が大切だと思います。
ご注意頂きたいのは他の正規店様とのダブルブッキング。パテック フィリップ ジャパンと我々正規店との受発注の詳細は控えますが、複数の店舗から同時期に同じ希望者名でのオーダーは受け付けられずキャンセルとなる事があります。明らかにあの店の方が早いと確信めいたものを持てない限り、安易なオーダー店舗の乗り換えにはリスクが伴いかねません。
全てのノーチラスやアクアノートとは言いませんが、今現在の状況が続く限りは全国のどの正規販売店であっても希望モデルのみをピンポイントで購入相談に行かれても難しいのかもしれません。
非常に辛口のお話しが続きました。ところでノーチラスとアクアノート以外のモデルではだいぶ状況が異なります。例えば立て続けに生産中止発表されたカラトラバシリーズも、コレクションの減少からなのか非常に人気が高まっています。しかし現時点なら登録だけでも、ご購入はある程度見込めると思います。ただ今後の生産の縮小や中止等もありますので100%のお約束は出来ませんが・・


ロレックスのスポーツモデルも良く似た状況と聞く。フェラーリ、ランボルギーニやポルシェなどの限定車などの特殊車両も中々簡単には買えないらしい。片方で数年前まで結構売れていたミドルレンジと言われる時計ブランドが全般的にやや苦戦気味である。車も日常の足としての軽はそれなりに売れているらしいが国産普通車はずっと厳しい状況だ。
平成の約30年は日本の社会構造を大きく変えた。一億総中流はとっくに夢まぼろしとなり、貧富まで行かぬとも格差は確実に広がった。国際情勢もゆっくり確実にきな臭くなって来た。当然世界経済も無関係ではない。
高級時計、高級車と言った贅沢品を購入する多数の方が企業経営に携わり今現在資産をお持ちの方が多い。弱いデフレがずっと続いてきたが、もし世界レベルに緊張が走る様な事態になれば一気にインフレに振れる事だって有るから、全額現金での資産保有が必ずしも安心とは言えない。見通しのきかない不透明な近い将来に備える為にも確実に価値を維持し続けそうな投資先を選びたい。あまり大きくなく持ち運びが容易で多少使用しても価値を減じず、ライフが長くて維持費もそこそこで簡単に子孫その他に手渡せて、当局の把握もしづらいパテック フィリップやロレックスの人気高級腕時計がその対象になるのも当然の流れかもしれない。そしてこの傾向はしばらくは続きそうな気がしてならない。
でも投資対象とは全く無縁にパテックを求められる本当の時計好きは確実におられる。その手の方々はカラトラバもグランド・コンプリケーションも気に入ったパテックを購入されスポーツ系に偏り過ぎることが無い。また価格帯に関わらずSEIKOやG-SHOOKの限定モデルも嬉々として購入するし、手に入らないと本気で悔しがる。何時でも愛用の時計や気になっている次のターゲットウオッチについて何でも知りたいと思っている。素晴らしい名経営者も大先生と呼ばれる医療関係者でも、皆さん時計選びを始めると完全に少年の目になっている。そして実際に日常的に使う事が前提なので、装着感、サイズバランスや自分のライフスタイルとの相性をとても大事に考えている。そんな彼らも勿論ノーチラスが大好きだ。ただそれは後付けの資産価値に惹かれているのでは無く、純粋に時計としての魅力にぞっこんなのだと思う。
個人的にはどちらの価値観もありだと思っている。両者のバランスが重要で、あまりにも資産価値ありきになり過ぎると殺伐として『売っても、買っても楽しくない』そんな不幸な展開だけは避けたいものだ。

文責 撮影:乾
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ノーチラスシリーズを除くとメタルブレスレットのモデルが非常に少ないパテック フィリップのラインナップ。その中で唯一メタルブレスとラバーストラップに互換性があって、どちらの設定で購入しても、別売でもう片方を手に入れれば両方をチェンジャブルに楽しめるお得感の有る唯一のモデルがRef.5167/1Aだ。この事は意外に知られていないような気がする。
逆に現在ラバーストラップしか設定の無いアクアノートのトラベルタイムRef.5164のステンレスやローズゴールドモデルに「別途でメタルブレスの調達が出来ないか?」というご相談を受けたりもする。
同様にメタルブレスレットタイプが今年生産中止となったが、両方の設定が有った年次カレンダー等は見た目いかにも互換性があるように受け止められていた。現実は全く互換性が無く"一粒で二度おいしい"と言うわけにはいかなかったのだ。
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このモデルは既にブログ記事にしていると思い込んでいた。ラバー製のコンポジットストラップモデルRef.5167Aをずっと前に紹介済みなので、勘違いしていた様だ。元々あまり記憶には自信が無いところに加齢を言い訳にしながら物忘れが酷くなる一方だ。逆に記事にしたモデルを再度撮影するような事もある。ところが不思議なもので2度目もほぼ同じライティング、アングルでボケ加減まで酷似した絵を撮っている。記憶力と違って創造力はそんなに落ちて逝かないのかもしれない。
捉えどころのない8角形のサテン仕上げベゼルからは、この時計デザインが明らかにノーチラス由来の物であることが解る。但し、裏蓋とミドルケースを一体としてベゼル下にパッキンを挟み耳で両者を固定するジェンタ考案の特殊な2ピース構造であったノーチラスと異なり、アクアノートは逆にベゼルとミドルケースを一体化して裏蓋をスクリューバックで捻じ込み固定する一般的なケーシングとメンテナンス性に優れた構造を与えられた。防水性は両者ともに120mでスタートしている。
ノーチラスのデビュー1976年から21年後の1997年にスポーツエレガンスをテーマにケース径35.6mmのRef.5060Aでアクアノートはデビュー。翌1998年には裏スケルトンへ仕様変更されたRef.5066とクォーツのRef.5064A、同時にケース径の小さい婦人用のRef.4960A、さらに38.8mmの当時としては大ぶりなRef.5065Aが一斉にリリースされた。そのブレスタイプRef5065/1Aが下右端で今回紹介の5167/1Aの原型と言える。この他にもイエローゴールドのRef.5066Jなんかもこの年生まれだ。この年のアクアノートは本当に多産だった。しかし今日からすると本当にどれも可愛いらしいサイズだったわけだ。
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A、1998年/4960A  29.5mm レディス クォーツ
B、1998年/5064A 35.2mm メンズ クォーツ
C、1997年/5060A 35.2mm メンズ 自動巻 ノーマルケースバック
1998年/5066A、5066/1A(SSブレス)、5066J(YG) 自動巻 裏スケルトン 
D、1998年/5065/1A、5065A、 メンズ 自動巻 38.8mm
当時の事をよく覚えていないが人気が有りすぎて一杯バリエーションを増やしたというよりは、市場でのサイズや駆動系統の要望を計る為にテスト的に投入された感が有る。ともあれ人気シリーズとしてのロングセラーを誇り、2007年には現行の第二世代Ref.5167系(ケース径40.8mm)にフルモデルチェンジ。SSブレスレットの5167/1Aは翌2008年に追加設定された。
※正確には5065と同じケースサイズ38.8mmを受け継ぐRef.5165も第二世代仕様で2007年にリリースされたが、2009年には製造が中止されている。
この第二世代へのモデルチェンジの変更点は多々あって、文字盤のエンボス形状とそれに呼応したコンポジットストラップのデザイン、ストラップとケースのアタッチメントスタイル、直線的だったメタルブレスの曲線化、視認性が向上したインデックスサイズ、等々多岐にわたる。変更後の第二世代は明らかにエレガントさが増した。ところがレディスは現在まで世代交代が無い。2004年にベゼルにダイアモンドをセットし、カラフルな文字盤と同色のコンポジットストラップの多色展開でデビューした"アクアノート・ルーチェ(伊:光、輝き)"。ケースは35.6mmへとサイズアップされたが、その基本的なデザイン仕様は20年以上に渡り今も不変である。

個人的な好みで言うとノーチラスもアクアノートも最初はあまり好きでは無かった。巷で大騒ぎされるのが少々不思議で一生腕にする事は無いだろうと思っていた。車も時計も基本的に"トラッドかつ美形でコンシャス"が好きなので、捉えどころが無く、なで肩過ぎる八角形の幅広なベゼルや、有っても無くても落ち着きが悪い印象だった両サイドの"耳"にずっと馴染めないでいた。これは奈良でパテックブランドをスタートさせた4年前でも感じていた事だった。しかし現場で販売を重ね、頻繁に実機を見て触り試着するうちに、そのお多福のような愛想笑いの絶えない顔に惹かれるようになった。さらに顧客様の着用シーンを何度も見ていて、敷居は低いが使い勝手は素晴らしい五つ星ホテルの様な物かもしれない。最高のラグジュアリーを軽やかにカジュアルに楽しめる。それがノーチラスとアクアノートという兄弟時計が持つ最大の魅力だろう。
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ノーチラスのブレスレットと異なり結構な大駒かつフレキシブルなので、時計全体をサイドビューで撮るとこうゆう情けないカットになった。ケースについて目視の感じではノーチラス3針5711/1(8.3mm)の方が薄く感じてしまうのだが、実際はほんの少しアクアノート(8.1mm)が薄い。ブレスの厚さは公表値が無いし、手元に実機が無いので比べられないが、これまた感覚的にはアクアノートが少し厚いように思う。尚、ご愛用者様のお話ではメタルブレスとコンポジットのラバーストラップでは重さが相当違うので良し悪しで無く着用感が全く違う様だ。
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入荷時の梱包状態。だいぶ前からパテック フィリップ ジャパンでは入荷検品をしていない。理由はあまりにも初期不良が無くて、むしろバキュームパックを開封して検品する事での埃の付着や微細なキズ発生等のデメリットが勝るとの判断による。結果的にスイスの工場で検品後は、仕入れた正規店が最初の開封検品者となる。4年前からの仕入れの中で、微妙なケースを除いて明らかな初期不良は今のところまだ無い。絶対的な検品数が違うので断定的には言えないが、かつて扱っていた優等生なロレックスを今のところ凌駕していると思う。
この時計の最大の欠点は、入手がかなり困難になっている事だろう。しかし当店では一年位前まで、ブレスレット仕様に関してはそこまで注文が殺到していた感じは無かった。今でもノーチラスに較べれば半分以下の問合せ件数だが、全体の底上げ感があって、日々状況はシリアスになっている。近々、そのあたりの現状を整理してご案内出来ればと思っている。

Ref.5167/1A-001
ケース径:40.8mm(10-4時方向)ケース厚:8.1mm ラグ×美錠幅:21×18mm
防水:120m ねじ込みリューズ仕様
ケースバリエーション:SSSSストラップ(ラバー)仕様RGストラップ(ラバー)仕様 
文字盤:ブラック・エンボス 蓄光塗料付ゴールド植字インデックス 
価格:お問い合わせ下さい

Caliber 324 S C
直径:27mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、ムーブについての過去記事はコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

参考資料:PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE Vol.Ⅳ No.4
文責 撮影:乾

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この時計のレア感が個人的には凄い。当店の歴史は20年弱あるが、パテック フィリップを取り扱ってはほぼ4年。その間にこのリファレンスが入ってきた実績が殆ど無い。共通のエンジンCH 28-520系のノーチラスとしては3年前のノーチラス発売40周年記念限定モデルのRef.5976/1Gと定番ラインナップのトラベルタイム・クロノグラフのRef.5990/1Aがある。前者は僅か2本の入荷で勿論顧客様の予約販売、後者も片手ほどに過ぎないし、最近は客注でしか入ってこない感じだ。
搭載キャリバーのCH 28-520系は2006年にクロノグラフムーブメントの自社設計開発製造計画(いわゆるマニュファクチュール化)の第2弾として発表された。その当時各ブランドが自社クロノグラフムーブメントに競って採用した垂直クラッチを備え、リセットとリスタートを容易に行えるフライバック機能が盛り込まれた超が付くアバンギャルドなキャリバーの誕生だった。
初搭載モデルは2006年1月発表の年次カレンダーモジュールを組み込んだプラチナ製の年次カレンダー搭載クロノグラフRef.5960P。同年10月にはノーチラス発売30周年を記念してフルモデルチェンジした新生ノーチラスシリーズの一つがステンレスケースを纏ったRef.5980/1Aだった。いづれもが爆発的人気のスタートを切り、様々なダイアルチェンジや素材追加をしながらロングセラーモデルとして現行ラインナップにしっかり踏みとどまっている。
現在ノーチラスシリーズ以外で同系列のエンジンを積むのは、年次カレンダー搭載フライバック・クロノグラフRef.5960及びその派生モデルと言えるRef.5905と、ワールドタイムをモジュールで組み込んだRef.5930、昨年度の話題作アクアノート・クロノグラフRef.5968の4品番になる。今回気づいたが全品番が例外なく59で始まっている。

他の手巻クロノグラフキャリバー2種と異なり、この現代的設計の自動巻クロノグラフエンジンは、いわゆる"シリーズ生産"と呼ばれ、工場のラインである程度量産が可能なムーブメントとしてデビューした。それなりの数量が生産されていると思われるが、どの搭載モデルもそんなに入荷が良いわけではない。特にノーチラスに関しては、スポーティーな外見とクロノグラフ機能のマッチングが良いために人気が有りすぎるのか、お客様注文でないと入荷が見込めない状況が続いている。
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天才時計デザイナー、チャールズ・ジェラルド・ジェンタによる防水性能を考え抜いたユニークなケース構造に加えて、表面仕上げの切りかえによる光と影の演出。優美でエレガントなポリッシュ仕上げ、武骨で粗野なサテン仕上げ。両者がダイナミックに絡むケースの造形には色気が漂い、多くのノーチラスファンを悩殺してきた。
先にも触れたように、この時計の初出はノーチラス発売30周年である2006年に遡る。現行のノーチラス各メンズモデルはこの時のフルモデルチェンジにより始まった5000番代の系譜となる。それまでの3000番代系でのコンプリケーション搭載モデルは、テストマーケティング的だと個人的に思っている2005年度一年限りで終わったプチコンRef.3712/1Aを除けば、30年間パワーリザーブしかなかった。大半の方が一本入手すれば満足できたノーチラスシリーズが、このフルモデルチェンジを境に最初のノーチラスを何にするのか。その次はプチコンなのか年次カレンダーなのか、その次はクロノグラフ系にするのか、はたまた永久カレンダー・・と選択枝が次から次へと増えて来た。
2006年以前の第一世代も需給バランスは崩れ気味で人気は高かったが、第二世代になってモデルバリエーション増加に伴い、シリーズ全体での生産個数も増えているはずなのに需給バランスの崩れは年々酷くなっている気がする。
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ケースの厚さは12.2mmある(画像は上が裏蓋側)。ノーチラスは特殊なジェムセットタイプを除いて3針(8.3mm)、プチコン(8.52mm)、永久カレンダー(8.42mm)のケース厚8mm台の薄型グループと、11mm超の年次カレンダー(11.3mm)、クロノグラフ(12.2mm)、トラベルタイム・クロノグラフ(12.53mm)のグループとに個人的に分けている。
ジェンタが追求した着け心地の良さを実現するデザイン。すなわちケースとブレスの薄さと防水性・堅牢性の両立を手首で体感できるのは8mm台の薄型グループに軍配が上がる。他方は見るからにメカメカしく引き付けられる顔と存在感があるが、それと引き換えにする代償も或る。
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12時側と6時側が非対称な両観音バックルの接写は、ため息が出るほどセクシーな絵になる。バックルへのエングレーブを有するモデルは少ないが殆どが"PATEK PHILIPPE"であり、シリーズ名を採用しているのはノーチラスだけだ。何だかとても依怙贔屓のように感じてしまうのだが・・
尚、画像中ほどの赤い半月形のものはキズ防止用の保護シールである。
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付属品はこちら、ケースサイド8時位置辺りにある日付調整コレクター(プッシュボタン)の調整用ピンとノーチラス用コンポジットストラップとその収納ケース。ストラップの付け替えは、よほど腕に自慢の方以外は正規販売店にお持ち込みください。

Ref.5980R-001
ケース径:40.5mm(10時ー4時方向)
ケース厚:12.2mm 防水:12気圧
ケースバリエーション:RGのみ 他にRGブレスSS/RGブレス仕様有 
文字盤:ブラック・ブラウン、蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
ストラップ:マット(艶無) ・ダークブラウン アリゲーター
価格:お問い合わせください

尚、このクロノグラフには主時計の秒針が無い。非常に優れた垂直クラッチ方式でクロノグラフ作動時に殆どトルクロスが無い為に、文字盤センターのクロノグラフ秒針を作動させ秒針と兼用する事が可能とされている。個人的には6時側のクロノグラフの30分と12時間の同軸積算計が連動するので少し引っ掛かりがある。
下のムーブメント画像撮影時に今まで気付かなかったパーツを見つけた。11時半頃のセンターとサファイアガラス外周部の真ん中辺りに特徴的な歯数の少ないウルフティース(狼歯車)状の車だ。手巻きクロノグラフムーブだとシンプルな丸形がお決まりのパテックお得意のコラムホイールカバー(通称"シャポー"と呼ばれている物)にしては変な形状。スタート・ストップのプッシャー操作時には、連動して動くのだが回転をしている様には見えない。確認してみたら、むき出し状態のコラムホイールとの事だった。前衛的なムーブメントに合わせて斬新な形状が採用にされたのかもしれない。
※6/3加筆、別個体のCH 28-520で再確認したところ普通に回転する様が見られた。やはり個体差が有るのだナァ。
知る限りコラムホイール(ピラーホイールとも)は文字盤側にウルフトゥースが有って、その歯車に乗っかる形で裏蓋側にピラーが円状に立ち並び、ピラーとレバーの挙動を裏スケルトンから見る楽しみがある。このムーブメントではどうも天地が逆にセットされている様だ。

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Caliber CH 28-520 C/552 フルローター自動巻フライバック・クロノグラフムーブメント コラムホイール、垂直クラッチ採用

直径:30mm 厚み:6.63mm(ベースキャリバー5.2mm、カレンダーモジュール1.43mm)
部品点数:327個 石数:35個 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責、撮影:乾



何度か取り上げているブレスレットサイズ微調整用の1.5駒。英語では"エクステンションリンク"なので文字通りは"延伸駒"とでも言うべきか。画像はメンズ・ノーチラスの1.5駒の2種。同じもの2個ではありません。さあ問題!この2つの違いは何でしょう?
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因みにサイズは全く同じです。また右側表面に極細の筋目が有るように見えますが実際には差がありません。まずは当店スタッフに回答を求めたら、意外に殆どゼンマイ知識のない事務系も含めた女性陣は的確に違いを指摘。ウンチクたっぷりで時計大好きメンズは頭を抱えて「微妙にサイズが違う」とか「なんちゃら、かんちゃら」・・・変な先入観無しに物だけを素直に観察した『無心の勝利』。それとも『女性の直感は鋭い!』と言う事か。怖い怖い。
ではヒントです。パーツ品番は"H994.A384E.A0B"と"H994.A384D.G0B"。
ヒントその2、税抜き価格は23,000円と102,000円。
ヒントその3、重さ(パッケージ込)は5グラムと7グラム。手元のはかりがショボ過ぎて小数点以下が量れません。
ファイナルヒント、よーく色目を見比べてください。
もうお判りですね。左はステンレススチールSS、右が18金ホワイトゴールドWGという素材違いでした。自然光に近い光源で見ると明らかに色目に違いがある。WGは少しだけ柔らかい黄味が入っている。
24金はゴールド(元素記号Au)100%、18は24の75%なので18金WGもAuが主成分であり様々な白色金属(銀、パラジウム等)を25%混ぜても完全な銀色には成らない。そこで古くから白色金属のロジウムを分厚くメッキする事で銀色の表面を得ていた。詳しいレシピや製法はどのブランドも企業秘密なので良く解らないが、近年パテックでは18金WG素材自体を実に良好な銀色に仕上げる事に成功している。その結果、現在は一部のジュエリーウオッチを例外として、殆どのWGモデルにロジウムメッキはされていない。
1.5駒はSSなら東京のパテック フィリップ ジャパンに在庫がある事が多い。しかし客注だったWGは、ほぼ3ヶ月の納期が必要だった。ただしRef.5740/1Gノーチラス永久カレンダー用で従来定番モデルに無かった新たな素材設定だった為にスイスのパテック社でも新規製作とストックが必要なパーツだった事が、少し長かった納期の理由かもしれない。
ストラップやバックル等のスイスオーダーの納期は、意外にも思っているより短い傾向がある。特にスイスに在庫がある場合は、タイミング次第で翌々週着荷なんて事もあったりした。
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中駒をサイドから見るとSSの無垢に対して、WGは中空になっている。一見コストダウン?を考えるが、恐らく軽量化が主な目的だと思われる。肉抜きで得られる金のリストラ費用なんて知れているだろうし、切削加工の際に出てくるオイルまみれの削り屑から油を落として炉で溶かして・・というコストは結構なものだろう。このWGの駒が取り付けられるノーチラス永久カレンダーは205グラム、その遺伝子とも言うべきノーチラス発売40周年記念限定のジャンボサイズWGクロノグラフRef.5976/1Gが312グラムもあった。この辺りまでヘビー級になれば面倒な肉抜き工程も必要なのだろう。
ただ画像で解るように肉抜き量はそんなに多くない気がする。折角の軽量化ならばもう少し削っても良さそうだが、実用性を重んじ堅実なパテックならではの強度絶対主義なのだろう。
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これは全くの私見になるが、ノーチラス永久カレンダーは全23駒を無垢駒仕様に変更しても300グラム以下には余裕で収まると思う。紳士用メタルブレスで300グラム以下は重過ぎるという事は無い。もしコスト的にもあまり変わらないのであれば無垢駒仕様の方が多少重くても購入者に対して受けが良さそうな気がする。しかしながらパテックは時として面倒かつ嫌われる道をも選ぶ孤高のブランドなのだろう。
あくまで個人的な感覚でのサイズ調整用1.5駒の必要性だが、ノーチラスご購入者では三人に一人はお奨めしている気がする。1駒のサイズが更に大きいアクアノートSSのRef.5167/1Aでは二人に一人だろうか。ノーチラスもその弟分アクアノートもケースとブレスの薄さが生み出す装着感の心地良さが最大の魅力だと思っているので、サイズ調整には出来うる限りの事をさせて頂きたい。その為に当店ではノーチラスSSメンズ1.5駒に限って常時在庫を心がけている。それ以外は時計そのものの年間入荷数が僅かなので必要に応じて取り寄せ対応としている。

注:駒や時計の重量は全て当店への納品実機測定値であり、パテック フィリップ社からの提供値ではありません。

文責、撮影、計量:乾


長かった10連休も終わり、初夏を思わせる日々が続いている。毎年この時期になると早朝の東大寺二月堂参りは沢蟹探しが楽しみとなる。今年も先日から元気な姿を見せてくれている。彼らも右利きが多いのか?右手が大きい個体が殆どだ。
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昨年夏まではずっと車と徒歩だったが、咋秋から思うところあってクロスバイク(自転車)で自宅から約2.5Kmの大仏殿裏を通り通称二月堂裏参道をのぼって、最後は徒歩で階段を上がり絶景の二月堂回廊へ。今が一年で最高に気持ちが良いシーズンながら、もう一か月もすれば早朝でも汗だくの修行になる。

今年は随分早く日本語翻訳版カタログが納品されたのでご案内しておきたい。
ここ数年は多めの生産中止と寡作のニューモデル発表が続いた結果、コレクション全体のスリム化が進んだ。ところが何故か今年スイスのバーゼル会場で調達した英文のカタログは例年より厚みを増していた。表紙等の外回りは例年と変わりないが、中の製品ページの紙質が従来の光沢の有るコート紙系から艶なしの落ち着いたマット紙系に変更された。また新製品を中心に主要な製品掲載ページにはカラトラバ・クロスの地模様が細かく薄めに敷かれている。かなりゆったりと製品がレイアウトされておりキーになるモデルは実物大ではなく大きく拡大されて1ページに1点の贅沢な割り振りとなっている。このレイアウト方針変更によってカタログのページ数が昨年の84ページから108ページに増量された。掲載モデル数は189点から164点に25点も絞られている。ムーブメント紹介数はほぼ変わらないので、本当に贅沢なレイアウトが採用されている。しかし一部モデルの実物大でない拡大サイズ掲載で、これまで可能であった大きさの目途がつき辛くなっている。またお目当てのモデルを探す際のスピーディーさに少々欠ける。
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マットな紙質はインクが沈みやすいので従来より若干色目が濃くなる傾向にあるが、そのことでより現物に近づく事も、そうでない場合もあるので一概に良し悪しは言えない。最近になって気が付いたが昨年までは各モデルのスペックとして駆動方式(手巻き、自動巻、クォーツ)の表示がキッチリされていたが、今年はクォーツ以外の駆動表示が無くなっている。その代わりなのか簡単な機能表示が付加されている。例えば"レトログラード日付表示針付永久カレンダー"とかなのだが、誰が見ても解る"日付"や"ムーンフェイズ"等の表示は不要だと思う。むしろ我々でも普段あまりなじみの無いモデルだと手巻・自動巻の判断が出来ない事もあるし、巻末にはある程度のスペックが記載されているので、個人的には昨年までのスタイルの方が良かったのではないかと思っている。
例年は5月中旬頃に航空便で輸入される最速少量ロットから各正規販売店に取り合えずの部数が配布される。今年は4月の中頃だったので一か月くらい早い到着だった。ただこの早期ロット分は配布数の関係上、場合によっては品切れすることが有る。店頭で常時確実にお渡しできる日本語版のカタログ到着は、船便の為に例年通りであれば夏の初め頃か。
尚、過去にご来店頂いてご住所お名前を頂戴しているお客様にも是非ご来店を頂きたいが、メールや電話でもカタログ請求には対応致します。但し前述の理由で少し日数を頂く事があります。これから新たにご来店を頂くお客様には店頭でお名前・ご住所を頂戴してお渡し、または後日郵送させて頂きます。ただ現在お渡ししている早期到着カタログのプライスリストには2019ニューモデルの価格が未掲載であり、後述の価格調整も有る為に新価格表は現在制作中と思われる。あらかじめご了承頂きたい。当面我々の為にもエクセルでオリジナルの価格表を手作りする必要がありそうだ。

来る2019年6月1日に日本標準小売価格が改定される。パテック フィリップは印象として他ブランドに比較して価格をいじらない気がする。前回は2016年11月1日だったので、なんと2年半ぶりという事になる。これは時計に限らず現在の高級ブランドビジネスに於いて異様に長い据置期間と言える。ただこの間にノーチラス3針SSブレス5711/1Aと同プチコン5712/1Aだけは、あまりにも高騰する2次マーケットの相場を鑑みてブランドとしては異例の価格調整(値上げ)がなされたが、予想に違わず『焼け石に水(露ぐらいか?)』にしかならなかった。今回の改定でもこの2品番は調整的と思われる値上げがなされ2016年改定時を基準にすれば2回の調整で20%ほど高くなるのだが、恐らく2次マーケットも連動して相場が変動するだけで人気度合いや市場での渇望感の変化は今回も無いだろう。
ただ、強調しておきたいのは今回の改定は全般的な数%アップという単純な値上げではなく、かなりの品番で税別1万円(0.数%)の値下げになっている。また変更なしで据え置きも相当にある。値上げに関しては今年の新製品でコスチュームチェンジモデルが発表された現行モデルが、現在のコストを反映をしたニューモデルの価格設定に合わせる形で値上げされているケースが目立つ。例えばアクアノート・ジャンボRef.5168Gの010(新製品カーキグリーン)001(現行品ブラック・グラデーションのブルー)。レディス・ノーチラスのローズゴールドRef.7118/1200Rなどもそうだ。手元の新価格表には大量の生産中止品番も含んでいる為にカタログ掲載数とは合致しない約345点程がリストアップされている。その中の時価(Price on request)モデル約50点を除いた内訳は値上げが20点、値下げ125点、据置変更無し約150点となっている。値上げ幅で最大は11%強だが殆どが5%迄である。値下げはとても不思議で価格帯に関係なく押しなべて税別1万円下げられている。なるほどフムフムという価格調整ではなく、過去どのブランドでも経験のない個人的には少々理解不可能な今回の価格調整である。ただハッキリ言えるのは少数の値上げも含めて、パテックブランドの我々の商売への影響は殆ど無いだろうという事である。まあ冒頭でも触れたがパテック フィリップは出来うる限り価格変更をせずに済ませたい方針なのだと思う。勿論この調整は日本だけではなく全世界的な調整になっているはずだ。
尚、リングやカフス等の時計以外のジュエリーは全て据え置かれ今回の変更はない。ストラップ、駒、バックル等のパーツも修理料金も同じく一切変更無し。

文責 撮影:乾



元号改正に伴う10日間連続の特別なGWは、予想通り眠たくなるくらいの集客状況。そこで、毎年会場で一瞥するだけで二度と再会することのないユニークピース集団を番外編としてご紹介したい。
昨年ぐらいからパテック フィリップでは新製品とともに、これらのレア・ハンドクラフトも動画でバーゼルワールドのスタート頃から公式HP内で配信している。ただ厄介なのは全モデルでなく或る程度抜粋されたモデル紹介であり、すべてを知るためにはバーゼルのパテックブース1階の展示を見るしかない。しかも展示は他のニューモデルのように一般入場者でも眺められるブース外回りのショーウィンドウではなく、ブース内に入場可能な人間しか見る事が出来ない環境に展示されている。その為に顧客様が現物を直接に見た上でオーダーする事は困難である。
では一体どうやって購入するのか?まず購入に当たっては、質と量においてかなり分厚いパテック フィリップの正規購入履歴が必要である。この履歴を重ねる段階で正規販売店とその顧客の間で相互の信頼関係が築かれるだろうし、そのロイヤルカスタマーの好みも熟知する事になるはずである。その前提を元に正規店バイヤーが、ブースを訪れて顧客に成り代わって見込み的な発注をする事になる。まあ画像を撮って送信してと言う方法もあるが時間と時差の関係からあまり現実的では無い。また画像は画像なのでバイヤーの肉眼を信頼してもらうほうが間違いがないだろう。
まあ、そのくらいの信頼関係が築けていなければ、購入は難しいという事だ。かなり理不尽な話に聞こえると思うが、1モデルについて多くても6点程度しか製作されないし、勿論文字通りのユニークピースとして1点のみ製作だってざらにある中で、それぐらいハードルを上げておかなければ製作数と注文数とのバランスがおかしくなってしまうのだろう。
ちなみに過去、日本への入荷実績は勿論あるが、昨年度などは入荷実績が非常に少なかった様だ。また昨年度までは帰国後も注文を出せたが、本年からはバーゼル期間中に受注そのものを締め切る様になってしまった。
本稿は提供画像が全く無いため、すべてiphone7、もしくはSONYα5100(ミラーレス一眼)でのノーフラッシュでの撮影画像で構成した。様々な色温度、光量等々で画質的には厳しいものが多いが我慢して頂くしかない。

5738/50G ゴールデン・エリプス JAPANESE PRINTS (和鳥)のクロワゾネ4部作
最初に動画を見た時に"JAPANESE PRINT"とは一体何なのか。という素朴な疑問を持ったが、文字通り"日本画"の事で、モチーフにはすべて原画がある。明治から昭和にかけて活躍した浮世絵師・木版画絵師"小原古邨(おはら・こそん)"(1877年ー1945年)は明治から昭和にかけて活躍した版画絵師。花鳥をテーマしたものが多く、特に海外で人気を博した。それゆえに日本国内に作品が少なく"知られざる絵師"と称されている。
今年はこれ以外にも"和"のモチーフが多々採用されているのだが、たいてい毎年数点は必ず"和"がテーマになったドームクロック、腕時計や懐中時計が製作されている。本国スイスの題材は当然として、それ以外の国やエリアが毎年常連のように作品化されている感じは無い。フランスをルーツとするカルティエに顕著な中国(シノワ)趣味があるけれども、パテック フィリップには日本への強い指向性があるように思う。ただ、作品によっては我々日本人から見て少し解釈が違うのでは無いか?と思われるビジュアルやネーミングがあって、戸惑いを覚える時もある。

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撮像に自信が無いので勢い絵が小さめになるがお許しいただきたい。4パターン全て和鳥である。原作者名で画像検索頂ければいくつかはヒットする。原画は言われなければ版画(浮世絵的手法らしい)とは思えないほど繊細で多彩だ。花、鳥の顔、腹部等に微妙なグラデーションが掛かっている。文字盤を装飾するクロワゾネ(有線七宝)は、金線で囲われた1つのエリアに単色の釉薬が焼き込まれる事が多い。微妙な焼ムラで部分的に色の諧調が変化したりグラデーションっぽくなることもあるだろう。しかしパテック フィリップへ文字盤装飾を提供しているアーティスト(職人:アルチザンとどちらが相応しいのか悩むが・・)達は完全に狙ってこのグラデーション状に複数の釉薬を流し込み焼き上げている。その点では原作の絵師とシンクロしている感じが面白い。本当にチャンスがあれば彼らの工房見学をしてみたい。まあ、門外不出で師弟関係に継承が限られた技の核心部分は見せて貰えないと思うが・・
複雑時計のムーブメント組立、エングレーブ(彫金)、ミニアチュール(細密画)等は様々なブランドのイベントで神技実演を見てきたし、エンドユーザーにもその機会が与えらる事もある。しかし釉薬の着色と焼成の現場を見たと言う話は聞いた事が無い。
尚、ホワイトゴールドケースは現行のゴールデン・エリプスの定番には設定が無い。機械はレア・ハンドクラフトだからという事ではなくゴールデン・エリプスにデフォルトで積まれる極薄自動巻Cal.240。ところで4本とも時間がバラバラである。必ずしも絵の魅力が一番引き出される針ポジションとも言えなさそうだ。一番左の時計のリューズは引き出されているようにも見える。恐らく全部実機で針止めはされておらず輸送時には運針した可能性もある。どうしても展示時に支障のある場合のみ、針ポジションを変えているのかもしれない。美しい野鳥は嫌いじゃないが、全く知識がありませんので鳥名は不明です。どなたか詳しい方がおられましたら是非コメント下さい。

5538G、5539G ミニット・リピーター ブルーアズレージョ OLD VIEWS OF GENEVA (ジュネーブの昔の風景)5部作
例年発行されているRARE HANDCRAFTS ブックによればブルーアズレージョ(BLUE AZULEJO)は16世紀にスペインとポルトガルで始まった青と白の釉薬を用いた磁器タイル装飾技法。アズレージョと言う聞きなれない言葉はポルトガル語ながらその語源はアラビア語にあり、イスラム文化圏にそのルーツがある。ただ青色に特化しているわけではなく、様々な色彩が用いられている。言われてみれば、以前モロッコのカサブランカ空港のモスク風天井にびっしりと極彩色な細かいタイルで描かれた幾何学文様に感動した事があった。確かに高温で乾燥した気候下では単純な壁画ではたちまち劣化するだろうが、高温焼結で彩色された磁器タイルは半永久的な耐久性があると思われる。
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しかし普通に考えれば、時計の文字盤の場合は何もタイルに書き割しなくてもエナメルで下焼した文字盤に細密画手法(Miniature:ミニアチュール)で彩色して高温で焼き上げる通常のグランフー(Grand Feu)で良いはずだ。私的には見た目に劣る格子状の構造にこだわったのは、建築物等で日常にアズレージョが存在する南欧とイスラム圏のマーケットが、意識されての事なのかもしれない。ミニット・リピーターと見た目にはわからないトゥールビヨンが全て組み込まれていて、時計一個で一戸建てが楽に建ってしまうお値段。説明プレートの冒頭にはセットと書いてありバラ売り御免とも受け取れる。各1個しか製造されない文字通りのユニークピース。
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7000/50R、G レディス ミニット・リピーター Swallow in Flight (燕の飛翔)
日本同様に欧州でも燕は縁起の良い鳥なのだろうか。レディス唯一の定番ミニット・リピーターがラインナップから外されたのが昨年だった。当社の百貨店部門のV.I.P.女性顧客様がジュネーブまで行って発注された思い出深いRef.7000。レア・ハンドクラフトに於いては以前から様々な手法で装飾され、この品番は度々ラインナップされてきた。今年モチーフが昨年とほぼ同じスタイル(ハンドエングレービングによるギョーシェ装飾✚クロワゾネ)とバードモチーフで出品された。しかし鳥と花がパテックのモチーフには非常に多い。
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5077/100R、G カラトラバ Hummingbirds(ハチドリ)
こちらも例年何かしら出品されるレア・ハンドクラフトの定番?ベゼルとラグにダイヤモンドのジェム・セッティングがなされ、有線七宝(クロワゾネ)でモチーフが表現される。またしても花と鳥だ。そして機械は秒針を省けて高さを取らない極薄自動巻キャリバーのCal.240である。
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20082M ドームクロック Japanese Cranes (日本の鶴) 995/112J ポケットウオッチ Stag in a Forest(森の雄
赤鹿) 
とても全部は紹介しきれないので、これを最後としたい。左のドームクロックは、これまた日本がモチーフで画像では見えない部分に富士山が描かれている。ずっと鶴の英語訳を知らずにいたがクレーン(CRANE)と言う表現は、言われてみれば解り良いネーミングである。装飾技法としては、あまり聞きなれないLongwy enamel(ロンウィーエナメル)。ググってみればフランスロレーヌ地方のロンウィと言うところで1800年頃から作られている焼き物。特徴が絵柄の背景部分の不規則なクラック。焼成したエナメルをわざと急冷することでクラックさせているという。ちなみにドームクロックは機械式だが巻上げは手巻きではなく、電気モーターでの巻上げ式となっている。個人的には普通に手動巻き上げで良いと思うのだけれど・・

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右の懐中時計はミニュアチュール(細密七宝)、有線に対して無線七宝と呼ばれている。さらに大胆な彫金(ハンド・エングレービング)が施されている。モチーフの鹿は我々奈良市民にとっては大変お馴染みである。描かれている鹿は、日本には生息していない大型のアカシカである。
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冒頭で少し触れたように、バーゼル会場以外でこれらの特別な作品を見る事は出来ないが、その年のコレクションを網羅した図書"RARE HANDCRAFTS"が刊行されている。その年の作品からインスパイアされた表紙そのものが、レア・ハンドクラフトを意識した凝りまくった装丁で例年楽しみにしている。性質上、ご販売は出来ないが当店パテック フィリップ・コーナーの本棚には数年分を並べておりいつでもご覧いただけます。どうぞお気軽にお越しください。

文責、撮影:乾

人生で改元は2度目だ。当時官房長官だった小渕元首相が"平成"の色紙(だったと思う)を掲げていたのをTVで見たのが昨日のような31年前。今年還暦を迎える身なれば30年周期で元直しをしている事になる。
前回は昭和天皇の崩御、続く大喪の礼で全メディアをはじめエンタテーメントは言うに及ばず、大規模小売業等も軒並み喪に服した後、平成は厳かに始まったように思う。当時は11年少し経験したサラリーマン生活に終止符を打ち、稼業を継ぐために時計業のイロハを勉強し始めた頃で、改元をめぐっての景気の浮き沈みを肌で感じることはなかった。でも、恐らくシビアな景況感だっただろうと思われる。
今回も予想はつかないが当店に限って言えば、今月の店頭状況が非常に悪いのは10連休のGWを乗り切るための節約志向が一つ。もう一つは新元号下での記念的な初買いに備えての買い控えは無いだろうか。特に日常の必需品でもなく趣味性が高い高級腕時計は、その対象になりやすい気がする。
いづれにせよ平成から令和への切替の中には、どこにも自粛ムードは無くどちらかと言えば歓迎のムードであり前回とは大いに異なる。生前のバトンタッチを促された平成天皇は聡明で経済感覚のあるお方だと思う。
さて、2019ニューモデルの最終稿はレディス。ほぼすべてがコスメティックチェンジであり、完全なニューモデルは無かった。

レディス 8型

4899/901G-001 カラトラバ・ハイジュエリー レア・ハンドクラフト
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今年2月に生産中止になったピンクサファイアとダイヤモンドで構成されたピンクトーンのモデルがブルーサファイアで置き換えられたブルートーンモデルがデビュー。ケース、ダイアルとバックルにはダイヤモンド348個とブルーサファイアが354個セットされている。さらに大胆な手彫り(ハンド エングレービング)装飾がなされた真珠母貝(マザーオブパール)で文字盤の約7割近くが構成される贅沢なお仕立て。
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以前にも書いたがパテック フィリップのジェムセッティングは、実用性を重んじる観点からきらめきを引き出す以上に、セット用の爪が衣類等に引っかからない様にスムーズさを優先したセットになっている。またダイヤはデビアス社から調達したトップウェッセルトン・ダイヤモンド(クラリティIF及びFLのみ)が両眼顕微鏡を使用して手作業でセットされる。その際隣り合うジェムのテーブル面の高さと上から見た軸方向を揃えてゆかねばならない大変骨の折れる根気のいる職人技である。
機械はレア・ハンドクラフトモデルの定番エンジンCal.240が素で積まれている。この極薄の自動巻は様々な装飾によって文字盤に厚みの出やすいレア・ハンドクラフトと、とても相性が良い。また鑑賞と言う観点からもセンターローターより美しいと思う。
かなりデコラティブなルックスなので好き嫌いはあると思う。ただ此処まで手作業をして素材にもコストをかけているのにプライシングは魅力的だ。詳しくはお問い合わせください。

4899/901G-001
ケース径:35.8mm ケース厚:7.8mm ラグ×美錠幅:17×14mm 防水:3気圧
      348個のダイヤモンド(1.66カラット)ケース、文字盤、バックルの合計
      354個のブルーサファイア(2.69カラット)ケース、文字盤、バックルの合計
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤:真珠母貝(マザーオブパール)、ダイヤモンドとブルーサファイア付エングレービング入り、18金製文字盤プレー卜
ストラップ:マット・ブルーラベンダー、ラージスクエアのアリゲーター
バックル:ダイヤモンドとブルーサファイア付ピン
価格:お問い合わせください。

Caliber 240
直径:27.5mm 厚み:2.53mm 部品点数:161個 石数:27個
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)


4978/400G-001 ダイヤモンド・リボン・ジュエリー

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こちらもローズゴールド4968/400R-001の生産中止に伴うホワイトゴールド版の生まれ変わりと思いきや、微妙に品番が変わっている。よく見るとムーンフェイズとスモールセコンドが省かれている。それに伴ってだろうか通常エンジンである手巻きのCal.215系からスモセコ位置に癖のある極薄自動巻Cal.240にサクッと積み替えられている。それゆえかケース径が3mm強サイズアップしている。ちなみに2つの機能省略に伴ってカタログ上の分類はコンプリケーションでは無くてカラトラバに組み込まれている。顔はローズゴールドバージョンよりオリジナルの4968に近く感じるのはアラビアインデックス仕様だからか。
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ベゼルからケースサイドにかけては9種類のサイズの異なるダイヤがセットされて美しいスパイラルが描かれている。
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バックル部は従来のものとは異なってつく棒を受ける部分にもブランドロゴのエングレービングでは無くてダイヤがセットされるようになった。積まれたエンジンと言い全体で800個近いダイヤモンドが手作業でセットされている事も考え合わせると、殆どレア・ハンドクラフトと言ってもいいような時計だ。昨年度までのローズゴールドバージョンに較べてケースサイズアップもあってかダイヤの数で約15%、カラットでは28%近く増量されている。にもかかわらず価格は約8%アップに抑えられている。エンジンのスペックアップも考慮すれば、この時計もプライシングが素晴らしい。

Ref.4978/400G-001
ケース径:36.5mm ケース厚:8.23mm 防水:3気圧
      679個のグラデーションサイズのダイヤを渦巻状にセッティング(ケースとダイアル約3.99カラット)
      48個のダイヤ付ラグ(約0.17カラット)
      16個のダイヤ付リューズ(約0.03カラット)
      27個のダイヤ付ピンバックル(約0.21カラット)
      合計770個(約4.4カラット)のダイヤモンド
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤:18金文字盤プレート、全面にダイヤをパヴェ・セッティング、ブルー仕上げの18金植字アラビアインデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有り)ダスクブルー 、ラージスクエアのハンドステッチ・アリゲーター
バックル:ダイヤ付ピンバックル
価格:お問い合わせください。

Caliber 240
直径:27.5mm 厚み:2.53mm 部品点数:161個 石数:27個
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)


7118/1200A-001、010、011 レディス ・オートマチック・ノーチラス

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既存ステンレスコレクションのベゼルダイヤバージョン。文字盤カラーの3色展開もその枝番号もすべて同じ。ただノーマルベゼルモデル7118/1Aに較べて、その価格はかなり高目の設定になっている。
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Ref.7118/1200A-001(ブルー)、010(シルバー)、011(グレー)
ケース径:35.2mm(10時ー4時方向) ケース厚:8.62mm 防水:6気圧
ジェムセッティング:ベゼルに56個のダイヤモンド約0.67カラット
ケースバリエーション:SS(ブルーシルバーグレー)の他にRG(別文字盤有) 
文字盤:ブルー・オパーリン シルバー・オパーリン グレー・オパーリン、夜光付ゴールド植字インデックス
価格:お問い合わせください。

Caliber 324 S C
直径:27.0mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個 受け:6枚
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

Ref.7118/1R-001、010 レディス・オートマチック・ノーチラス
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ステンレスのベゼルダイヤバージョン追加と逆パターンで、ローズゴールドでは従来は設定が無かったソリッドなジェムセッティングの無いケースバリエーションが追加された。個人的にはメンズはともかくレディスで18金無垢ブレスレットモデルに全くの石無し設定が必要なのか少々疑問。それよりも興味深いのはその価格設定。詳細はここでは避けるが、或る思いに現地で至りメンズの新製品(特にコスメティックチェンジ)の中にも不思議なプライシングが多々あり、或る思いに確信を持つに至った。まあ現地に行くまで気づかなかった自分自身がおバカでした。

Ref.7118/1R-001(シルバー)、010(ゴールド)
ケース径:35.2mm(10時ー4時方向) ケース厚:8.62mm 防水:6気圧
ケースバリエーション:RG(別文字盤有)の他にSS(ブルーシルバーグレー) 
文字盤:シルバー・オパーリン ゴールド・オパーリン 夜光付ゴールド植字インデックス
価格:お問い合わせください。

Caliber 324 S C
直径:27.0mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個 受け:6枚
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)


7300/1450R-001 トゥエンティフォー オートマチック ハイジュエリー

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総ダイヤと言うのはフルパヴェなどとも呼ばれるコテコテのラグジュアリーウオッチ。此処までくるともう受け入れられる人もかなり限られてくる。普通はこの手の時計に視認性はあまり求められ無いのだが,ソリッドなアラビアインデックスとノーマルな針で実用性は高そうだ。
キャリアウーマンに向けて実用性を追い求めて誕生したトゥエンティフォー。シンメトリーなラウンドウオッチにしてメタルブレスレット仕様。シリーズの生い立ちとコンセプトから見て、個人的にはこのタイムピースも少々首を傾けざるを得ない。しかしながら自動巻メカニカル、ラウンドケース、アラビアインデックス、18金、フルパヴェダイヤと並べれば、この時計の目指すマーケットがかなり限定されているという想像に至った。

7300/1450R-001
ケース径:36mm ケース厚:10.05mm 防水:3気圧
ジェム・セッティング:ダイヤモンドをランダム パヴェ・セッティング総計3,238個約17.21カラット     
ケースバリエーション:RGのみ 
文字盤:ゴールド植字アラビアインデックス 18金文字盤プレート
価格:定価設定はございません。お問い合わせください。

Caliber 324 S
直径:27mm 厚み:3.3mm 部品点数:182 石数:29個 受け:6枚
パワーリザーブ:最低45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

レディスで顕著なのは、非クォーツ化とサイズアップの流れだ。ノーチラスでは随分と整理されたクォーツモデルに取って代わるように、少し大振りな自動巻モデルの充実が図られた。毎年恒例だったアクアノート ルーチェの新色発表が無かった為に、今年のレディスはメカニカルのみとなった。
バーゼル会場で調達してきた英語版の2019年カタログに掲載されているクォーツモデルは、たったの18型しかない。ちなみに2015年には34型もがラインナップされていた。発表される機械式レディスモデルの大半が自動巻(Cal.324系 ケース径27mm、Cal.240系 ケース径27.5mm)なので、いきおい婦人物コレクションの大型化が進む傾向にある。
体格が良くなったと言っても我が国の大和撫子達には小柄な方も多く、出来ればリューズ操作はご勘弁というご意見もあるので、まだまだ小ぶりなクォーツモデルの必要性は有るように思う。少し残念なトレンドだ。
何とかバーゼルからほぼ1か月で新作の全モデルを紹介できた。寡作な今年でこんなに時間がかかるのだから、頼むから来年以降も大量発表は避けて頂きたい。

文責:乾 画像提供:PATEK PHILIPPE SA



さて、やっとメンズ紹介が本稿で終了する。PATEK PHILIPPE SA 提供画像は確かに美しいが、手撮りのリアル感がやっぱり良いのではというのが相方のご意見。恐らく来年は3年ぶりに同伴でのバーゼル詣でになりそうだが、この口うるさい相方は、ひたすら時計を眺めて「ああだ!こうだ!」と批評ではなく単なる好悪をのたまうだけだ。決してメモ取りする訳でもなく、ましてや撮影やその補助なんてとんでもない。むしろ気になるサンプルを独り占めしてジャマされる事すらある。結局一人で撮って、説明はボイスレコーダーで録って、後で聞いてノートに書き下ろす"お一人様状態"は何も変わりそうにない。
さて、今年のメンズ パテック フィリップの一押しはどれだろう。色んなご意見があるだろうが、あくまで個人的には見た目ではノーチラス年次カレンダーのコスメティックチェンジRef.5726/1A-014。機械的にはアラーム・トラベルタイムRef.5520Pと迷うところながら、私的には本稿最後にご紹介するカラトラバ・ウイークリー・カレンダーRef.5212Aを押したい。

5726/1A-014 ノーチラス年次カレンダー
だいぶ前から噂では聞かされていたステンレスブレスレットモデルの従来カラー2色のディスコン、それと置き換えるかのような超人気色ブルー、ブラック・グラデーション文字盤のデビュー。元々それなりの人気モデルではあったが、パテック フィリップ公式HPで公開されるや翌日には朝から電話とメールの対応に追われまくった。結局バーゼル出発前で既に片手で足りないご登録が入り、帰国前には両手を超えてしまった。ブラックブルーマジックが此処までとは予想できなかった。
※提供画像には全体が写っているものが無く、下の横位置画像が文字盤をほぼ取り込んでいる
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で、現物はどうかと言うと"滅茶苦茶に良い!"。正直なところ個人的にコレクションしたいレベルで良い顔をしている。時計とは面白いもので全く同じ文字盤カラーでもケース素材や文字盤内の構成要素(インデックス、針、カレンダーやクロノグラフ等の付加機能の表示)で微妙に違う色に見える事が多々ある。SSノーチラスでは3針の5711/1A、プチコンプリケーション5712/1Aそして新製品年次カレンダー5726/1Aの各ダイアルは全く同じ色で塗装されているが、個人的には少しづつ異なって見えてしまう。
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年次カレンダーのシンメトリックなレイアウトと適度な表示量が相まって何とも言えぬええ感じのお色目がたまりません。

Ref.5726/1A-014
ケース径:40.5mm(10時ー4時方向) ケース厚:11.3mm 
防水:12気圧
バリエーション:SS SS(ブラック・グラデーション文字盤 ストラップ仕様)
文字盤:ブルー、ブラック・グラデーション 蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
ブレスレット:両観音クラスプ付きステンレス3連ブレス 抜き打ちピン調節タイプ
価格:お問合せ下さい

Caliber 324 S QA LU 24H/303
自動巻ムーブメント センターセコンド、日付、曜日、月、24時間表示 ムーンフェイズ
直径:33.3mm 厚み:5.78mm 部品点数:347個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

5168G-010 アクアノート・ジャンボ3針カレンダー
何とも言えないこの色目。好き嫌いがハッキリ別れるモノほど、のめり込む人のはまり込み度合いも強くなる。時計に限らず嗜好品的なモノに対する感情とはそんなものではないだろうか。
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このカーキグリーンと言う色目は2年前に発表され大きな話題を呼んだデビューモデルのブラック・グラデーションのブルーダイアルとは大いに異なる点が二つある。まず全くグラデーションが無いモノトーンカラーである。もう一点は完全なマット(艶無し)仕上げである事。
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個人的にはステンレス素材でこの文字盤設定であれば、それはえらい争奪戦になっていただろうと思う。一般的にはこのミリタリーイメージ全開の色目は実用性の高いステンレスにこそふさわしいと思うが、プレシャスな18金素材と組み合わせてしまうのがパテック フィリップ流。両素材の価格差がどうこうという問題ではなく、敢えてやってしまうところが凄い。誤解を恐れずに言えば、パテック フィリップだから変な意味で上から目線にはならずに、これもまた一興と受け止めて頂ける顧客層が存在するという事なのだろう。確かにこのモデルに魅せられた或る顧客様が表現された「抹茶色」という和の表現は実に言い得て妙で、酸いも甘いも知り尽くした良い意味で少しだけ"枯れ"感を備えた方にピッタリなのかもしれない。
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ストラップは熱帯地方でも劣化しにくい意味から《トロピカル》の名称で親しまれるラバーを主体としたコンポジット素材。カラーはカーキグリーンでこちらも文字盤同様に完全マット仕上げに徹している。但し、従来の経験から愛用の程にストラップには徐々に艶が出てくると思われる。と此処まで書いて、このストラップカラーに既視感が或る事に気づいた。 顧客様のお一人がアクアノート3針5167A(もちろん黒文字盤)用の付け替えストラップとしてこの色でご購入頂いていた事があった。何故か2018年度のストラップカタログにはメンズでの設定が無くなっていて、レディスのクォーツ3針アクアノート・ルーチェのみ注文可能とされている。さらに記憶を辿れば、確かにルーチェにはこのカーキという文字盤が過去にあったハズだ。うかつにも同系色の既存ストラップがあった事に此処でやっと気づかされた。そしてどちらかと言えばメンズ向けの色目ではないかという事にも。
バックルはアクアノート・ジャンボ・フライバック・クロノグラフやノーチラス永久カレンダー等の最近のモデルに採用されている新しい両観音クラスプが採用され、脱着の安全性と操作感が向上している。

Ref.5168G-001
ケース径:42.2mm(10-4時方向)ケース厚:8.25mm ラグ×美錠幅:22×18mm
防水:120m ねじ込み式リューズ仕様
バリエーション:WGWG(別文字盤有) 
文字盤:カーキグリーン 蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
ストラップ:カーキグリーン・コンポジット《トロピカル》ストラップ(ラバー)
クラスプ:アクアノート フォールドオーバー 

Caliber 324 S C
自動巻ムーブメント センターセコンド、日付表示
直径:27mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、ムーブについての過去記事はコチラから

5212A-001 カラトラバ・ウイークリー・カレンダー
この時計の評価は分かれそうである。顔(文字盤)は表示がテンコ盛りで好き嫌いが出そうだし、年間の第何週目という表示に世界中でなじみのある文化圏がどの程度或るのか良くわからないからだ。
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日本には明確な四季がある。落ち葉が寒風に舞って、居酒屋に"おでん、鍋もの始めました"等の品書きが出始めると嫌でも、新年までの短くなった日数を思い煩う日々がやってくる。でも、赤道直下の雨期乾季しかないところなら確かにこの手の時計は実用的かもしれない。特に一周360度で一年の針表示は、直感的に一年間の消化度合いがつかみ易いだろう。55秒辺りを針が指せば、これはこれで気忙しい日々の到来を嫌でも実感させられるだろう。
それで個人的にはどうかと聞かれれば、エンジンを大いに評価したい。ウイークリーカレンダーのモジュール部分では無くて、センターローター自動巻のベースムーブメントCal.324系に多大なる改良が加えられて誕生した新キャリバーCal.26-330系が素晴らしいと思う。
ポイントは3つあって、まずハック(時刻合わせ時の秒針停止機能)を備えた事。従来、日差の出る機械式時計に秒まで合わせる為のハック機能の必要性を疑問視していたパテック フィリップ。しかしシリコン系素材のスピロマックス製髭ゼンマイが殆どのムーブに搭載された今日では、元々優秀な精度を誇ったパテック フィリップのムーブメントは、衝撃や帯磁といったトラブルから来る精度不良とどんどん無縁になって来ている。実際に愛用のCal.324ベースの年次カレンダーは、悪夢の様な落下事件後も日差2秒以内と抜群の精度を保っている。此処まで高精度を保てればハックの意味は充分にあるだろう。
2番目はカレンダー調整の禁止時間帯を無くして24時間いつでもカレンダー変更を可能にした事。この部分はロレックスやブライトリングの自社ムーブメントが先行していたのでキッチリとキャッチアップしてきた感じだ。
最後は使用するオーナー様側には解り難いがメンテナンス性の向上に繋がるテコ入れが多々ムーブメントに加えられた事。中でも特徴的なのがサファイアケースバックからもしっかり視認出来る3番車の形状。従来は歯車に必要不可欠なアガキが引き起こしてしまう秒針のバックラッシュを防ぐ為に4番車のステンレススティール製の秒カナにベリリウム製の摩擦バネを押し付けるスタイルを採用していた。そのためにメンテナンス時には両者の耐久性度合いの優劣から摩耗しやすいベリリウム製押えバネの交換が頻繁に発生していた。

Cal.26_330_th_image_b.png
新キャリバーではLIGAプロセス(X線を用いて微細な部品を形成加工する手法、詳しくは難解すぎて理解に至らず)で作られた全く新しい歯を持つ3番車を採用。従来の一つの歯を二つに分離することで従来のアガキと言う概念がこの歯には無い。また分離された片方の歯がバネの役割を果たすため噛み合う秒カナ(4番車)との摩擦を大きく低減させつつ秒針のバックラッシュを完全になくしている。上のイメージ図(左側)からは何となく歯医者さんを想像させる感じで機能美的なものは無いが、実際に目視可能な右画像の歯車はユニークで機能美もしっかりある。その他にも改良は多々あって主ゼンマイの手動巻き上げ時のムーブメントへのセーフティ機構が随分とスペックアップされている。個人的には一旦アドバンストリサーチで出して話題性を盛り上げれば良いくらい先進的な技術革新テンコ盛りだと思うのですが・・
それにつけても思うのは、セイコーがアンクル・ガンギ製作に採用しているMEMS(メムス)の技術もLIGAプロセスに似ており、従来の微細で高精度な部品作りが工作機械による型抜きや、優秀な職人による手作業と言う物理的かつアナログ的だったものに対して、様々なブランドが化学的などちらかと言うとデジタル的な新手法を駆使して、アナログの権化のような機械式腕時計作りを競っている状況は、アイロニーと言うかユーモアが効いている感じだし、とても素敵なことだと思う。
因みにこのムーブメントは既存の超人気モデルノーチラス3針Ref.5711にもベースキャリバーCal.26-330 S Cとして搭載され始めている。
両機の主要部を上下に並べて比較してみよう。
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上は従来機Cal.324 S C系 、下が新しいCal.26-330系。ローター軸左の下層部に覗く特徴的な3番車の違い以外もじっくり見てゆくと面白い。ローターの固定方法が全く違う、その固定部分の下側の切替車の形状とその固定方法は逆に今までのローター固定仕様と入替った様に見える。
尚、新型機では一般的な自動巻時計が苦手としてきたリューズの手動ゼンマイ高速巻上げ時の高トルクによる巻上げ機構への負荷から来るトラブルをクラッチ形式の見直しや減速歯車を投入することで大きく改善している。

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今後はノーチラスRef.5711のみならず色んなリファレンスでCal.324からCal.26-330への置換えがなされるのだろう。性能は確かに進化形のCal.26-330がよさそうだが、Cal.324には2004年の初出からセンターローター自動巻基幹キャリバーを担ってきた実績と言うアドバンテージがある。車で言えば「新しいエンジンの搭載車は一年間様子を見てから・・」という格言がある。
ただ先に触れたように本当に市場でのテストが必要であればアドバンストリサーチと言う引き出しが有るのだから、パテック フィリップの技術陣はこの新しいキャリバーに相当の自信を持っているのだろう。
そして324の進化としながらも1970年のCal.350に遡る300番代の三桁のキャリバー名称ではなく、同社の自動巻初号機1953年初出Cal.12-600ATの2桁ハイフン3桁スタイルへとまるで先祖帰りしたような名付けをしてきた事は実に興味深い。
やはり300系列のマイナーチェンジではなくて完全なフルモデルチェンジとの意気込みが感じられる。ちなみに26はキャリバーのケーシング径26.6mmから、330は厚さである3.3mmに由来する。但し総径は27mmなので従来機Cal.324と変わらない。
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左がCal.324、右がCal.26-330。画像が小さく見づらいが、TWENTY・NINE 29 で始まる石数の表示が新エンジンでは30石に変更されている。また"高低温下6姿勢での歩度調整済み"の文字刻印のレイアウトも微妙に変わっている。ちなみ基幹ベースキャリバーの総部品数は新しいCal.26-330が212個と1つ少なくなった。
飛躍を遂げた新キャリバーも、熟成を重ねた従来機も、それぞれに素晴らしいのだが、そのパワーリザーブが最長で45時間に留まっている事には少し改善を希望したい。多くの時計愛好家にとって全てのコレクションを日々順繰りに愛用してゆくというよりは、メインの実用モデル数個をその日の気分、服装、場面や会う人などを想定して着替えるというのが現実ではなかろうか。その際に昨今増えてきた自動巻キャリバーの70時間前後のパワーリザーブと言うのは凄く実用性が高い。個人的にはたった1日分程度の延長が凄く便利だと思う。ワインダーの弊害が色々なブランドで指摘されるようになった最近は、なおさらそれが望まれる。

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カレンダー部分のメカニカルなうんちくは有るがパテック フィリップの技術力からしてこの部品数92個からなるウイークリーカレンダーモジュールの設計・製造はそんなに困難だったとは思えない。それよりも機械の事ばかりになったので独特な文字盤について見てゆきたい。
面白いのは暖かみのあるクリーム色っぽい文字盤上に転写された手書き風の文字達だ。実際にパテック フィリップの社内デザイナーが手書きで書き起こし、ティエリー・スターン社長自らが採用を決めたという肝入りの書体である。曜日も月もその天地左右のスペースは同じなのだが描かれる文字数は異なる。そのために同じ文字、例えば"Y"でも様々な横幅の"Y"が出て来て実に面白い。一般に目にする外国の方々の手書き文字と言うのは癖が非常に強くて読みづらく感じる。でもこの書体は習字の楷書レベルに感じるし、何より読みやすく親しみを持てる。そして数字の"7"のお腹に横バーが入っているのも何とも微笑ましい。
書き込むほどに自分自身が、このニューモデルのファンになって来ている。初見でピンと来ずとも、やがて徐々に気になって声を掛けて・・いや、違う。そうではなくて、このモデルもまぎれもなくそんな"パテック マジック"を持ち合わせていると言う事だ。いつしか気に入ってしまう顔や姿かたちは、飽きの来ない恋女房になってしまうと言う訳だ。

Ref.5212A-001
ケース径:40mm ケース厚:10.79mm ラグ幅:20mm
防水:30m サファイアクリスタル・バック
ケースバリエーション:SSのみ 
文字盤:シルバー・オパーリン文字盤、転写によるブラック手書き書体
インデックス:酸化ブラック仕上18金WGインデックス
時分針:酸化ブラック仕上18金WGドフィーヌハンド
ストラップ:ハンドステッチ・ライトブラウン・カーフスキン
クラスプ:ピンバックル 

Caliber 26-330 S C J SE
自動巻ムーブメント センターセコンド、日付、曜日、週番号表示
直径:27mm 厚み:4.82mm 部品点数:304個 石数:50個
※ケーシング径:26.6mm
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責・撮影:乾 画像提供:PATEK PHILIPPE SA 





今年の桜もそろそろ見納め。中々に続編が書けない。ネタはたっぷりあり、店もそんなに多忙でないが何かしら時間が無い。いや、時間の作り方が加齢に従って下手くそになってくるのだろうか。わずかな空き時間を利用して、細切れでもともかく書き進めよう。
尚、本稿の使用画像は全てパテック フィリップ社からの提供画像である。今年は商談室に持ち込んだミラーレスデジタル一眼のホワイトバランス調整に失敗し、ロクな絵が撮れなかった。従来から供給されてきた公式カタログ等に掲載されている時計正面画像は修正されまくりでシズル感がほぼ無く全く好みでは無いのだが、今回入手した画像は修正がなされているものの非常にクオリティが高くバリエーションも結構あって、来年からはサンプル撮影は不要じゃないかと思っている。

Ref.5235/50R-001 レギュレーター・タイプ年次カレンダー
昨年度からパテック フィリップはバーゼルの数日前に新作のチョイ出し(昨年はカラトラバ トラベルタイム ローズゴールド ペアモデル)をやるようになった。今年も3月19日にインスタグラムで今年2月にディスコンになったRef.5235Gレギュレータースタイル年次カレンダーの後継モデルとしてローズゴールド仕立てのRef.5235を、それは心憎いほどに、魅力的に思わせぶりタップリに露出させてきた。画像と動画を見た限りでは、えらく艶っぽい色気のある印象を受けていた。
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現物はかなりギャップがあって、極端に言うと文字盤はほぼダークグレー(グラファイト)とブラックのツートンながら色差があまり無い印象で、黒文字盤と言えなくもない。画像では違いが際立っているが、実際には12時と6時側のインダイアルと文字盤ベースカラーとの色差が非常に少なく(下図:乾撮影、質感ボロボロ)感じる。
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また生産中止になったホワイトゴールドのシルバー系ダイアル同様に3時位置にPATEK PHILIPPE GENEVEロゴが無着色でエングレーブされているが、これまた本当に目立たない。新作ローズはなおさらその感が強いように思う。大半のパテックコレクションで文字盤センター上に位置されるブランドロゴが、右側にオフセットされている事で左右非対称になるパテック フィリップでは珍しいモデルなのだが、目立たぬロゴでほぼシンメトリーウオッチに仕立直しされているようにも思えた。

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最近、腕時計専門誌のクロノスを読んでいて初めて知ったが、時計自体変更が無くて素材やダイアルの変更だけの場合を"コスメティックチェンジ"と言うらしい。言いえて妙な気もするが、個人的にはこの"cosmetic"という言い回しには少し違和感があるものの他にピッタリくる言い方も思い浮かばないので、当分はこの表現を使わせて頂きます。まさしく今年追加のローズゴールドバージョンがコスメティックチェンジ(お化粧直し版)である。
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Ref.5235/50R-001
ケース径:40.5mm ケース厚:10mm ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:RGWG
文字盤:グラファイト/エボニーブラックのツートーン バーティカル サテンフィニッシュド ホワイト転写インデックス
ストラップ:ハンドステッチ ラージスクエア マット(艶無)ブラックアリゲーター
バックル:PATEK PHILIPPEの刻印付ピン(穴止め式)
価格:お問い合わせください

尚、この時計は少し特殊な専用エンジンを積んでいる。その詳細については過去記事をご参考頂きたい。

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Caliber 31-260 REG QA
年次カレンダー機構搭載マイクロローター自動巻ムーブメント
直径:33mm 厚み:5.08mm 部品点数:313個 石数:31個 受け:10枚
パワーリザーブ:最低38時間~最大48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
脱進機:パルソマックスPalsomax® アンクル、ガンギ車共にSilinvar®製
振動数:3.2Hz 23,040振動
ローター:22金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)


Ref.5231Jー001 ワールドタイム クロワゾネダイアル レアハンドクラフト
2016年にフルモデルチェンジしたワールドタイム。現代ワールドの2代目Ref.5130の円みを帯びたチョッと丸餅が押しつぶされた様なケース形状から1mmケース径をシェイプアップし、クンロクに似たエッジの効いたケースにトラディッショナルなウイングレット(翼状)ラグを持つRef.5230に移行がなされた。
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両者は針もセンターギョーシェ紋様も全く違うし、その他にも細かい差異は多々あるがここでは省く。詳細は過去記事をご覧頂きたい。これらワールドタイムにはセンターギョーシェ部分にグローバルな地図を有線七宝(クロワゾネ)で描かれた特別バージョンの設定があり、代々4桁リファレンス末尾が0でなく1とされてきた。現行では第2世代のままでRef.5131/1P-001のプラチナブレスモデルがあるが、本年は現行の第3世代バージョンにもレザーストラップ仕様でイエローゴールドケースが新たに設定された。センターに描かれる地図モチーフはモデルごとに違っており、今回は大西洋をセンターにヨーロッパ、アフリカそして南北両アメリカがチョイスされている。

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ところでこのモデル初見時に最新世代の5230感がなぜか無かった。帰国後に顧客様と資料をじっくり見ていてご指摘を受けたのが針形状。ありゃりゃ第二世代で採用されていた非常に特徴的な通称アップルハンドではないか。そりゃ古い既視感を覚えたはずだ。
さらに細かい変更点はダイアル外周のシティディスクの都市名で、従来はTokyoと1時間時差のHongkongがBeijingに変更されている。この変更はニューモデルに限らず現行3モデル5230G、5230R、5131/1P-001全てに加えてRef.5930Gワールドタイムクロノグラフも対象で、ランニングチェンジ期間は両方のダイアルが市場に混在することになる。変更理由の詮索は物議を醸しそうなので控えたい。
ところで文字盤の仕様がギョーシェ装飾とは思いっきり異なるがこのモデルもまたコスメティックチェンジと呼んで良いのだろうか。
閑話休題、それでですね皆さんご想像がつくと思われますが、こちらの特別モデルはRef.5131のプラチナブレス同様に買ったり注文したりが中々に困難で、なじみの店を作って相談をするところから始めることになります。目的を果たすために困難を乗り越える過程にこそ楽しみがあるのかも・・・

Ref.5231J-001
ケース径:38.5mm ケース厚:10.23mm 
ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:YG,
文字盤:センターにクロワゾネ(有線七宝)装飾
ストラップ:ハンドステッチ ラージスクエア(竹符) ブリリアント(艶有) チョコレート・ブラウンアリゲーター
バックル:フォールドオーバー(折畳み式)
価格:お問い合わせください

Caliber 240 HU
ワールドタイム機構搭載マイクロローター自動巻ムーブメント
直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:239個 石数:33個 受け:8枚 
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)


Ref.5905R-001 年次カレンダー搭載クロノグラフ

コスメティックチェンジバージョンを続ける。これまでプラチナのみで展開していた年次カレンダー・フライバック・クロノグラフ。新たにローズゴールドが加わった。ダイアルは濃いめのブラウン。昨年のペアトラベルタイムもそうだが、どうも素材とダイアルカラーにこの組み合わせが増えてきた。
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この時計のルーツは2006年初出のRef.5960Pにまで遡る。パテック フィリップ独自設計開発製造のクロノグラフムーブメント第2弾CH 28-520系の初搭載モデルとしてセンセーショナルなデビューをした初代は数年間は異常な人気が続いた。そして8年が経過した2014年にプラチナ素材モデルがディスコンとなった代わりにステンレスブレスモデルにリプレースされるという大胆なマイナーチェンジがなされた。
翌年の2015年には素材としてプラチナが復活したが、パワーリザーブ、昼夜表示そして12時間計が省かれたスッキリしたニューフェースのRef.5905Pとして登場した。そのデビュー当時はあまりにも文字盤が"シュッと(関西弁:スッキリしたとかコンシャスなの意味)"としすぎてあまり好みでは無かった。だが良いお値段なのに当社の百貨店部門で、この時計はポツポツと嫁いでゆく。今回のローズは18金で多少お財布的にも優しいし、何より色使いがヤバい。暖か味のあるローズの色味と表面が艶っぽい仕上がりのこげ茶ってのは何とも言えぬ色気があって個人的には秘かに好ましい新作だ。

Ref.5905R-001
ケース径:42mm ケース厚:14.3mm ラグ×美錠幅:22×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:RGPT別ダイアル有
文字盤:ブラウン・ソレイユ、ブラック・グラデーション
ゴールド植字バーインデックス
ストラップ:ハンドステッチ ラージスクエア(竹符) ブリリアント(艶有)ブラック アリゲーター
バックル:ピン(穴止め) 
価格:お問い合わせください。

Caliber CH 28-520 QA 24H 
年次カレンダー機構 コラムホイール 垂直クラッチ搭載
フルローター自動巻フライバック・クロノグラフムーブメント
直径:33mm 厚み:7.68mm 部品点数:402個 石数:37個 受け:14枚 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

Ref.5172G-001 手巻クロノグラフ
今年廃番になったプラチナ素材の手巻きクロノグラフRef.5170から品番的に連想されうるバリエーションモデル。エンジンは完全自社設計開発製造(いわゆるマニュファクチュール)の手巻クロノグラフCH 29-535 PS。そして特徴的なラグ形状を持つケースと一段盛り上がったサファイアガラスは一昨年発表され一気に人気永久カレンダーモデルになったRef.5320Gとそっくり。ついでに言うならアラビアインデックスの書体と非常にとんがったペンシルハンド(針)。それらに塗布されている蓄光塗料スーパールミノバの加減もウリふたつだ。
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そして好みが分れるかもなのが、クロノグラフのプッシュボタンの形状。ヌーベルレマニア最終搭載のRef.5070から自社エンジンに積み替えられたRef.5170に至るパテックの手巻きクロノグラフのアイコンとも言えたスクエア形状に上下両面サテンフィニッシュ。ところがニューフェイス5172では小ぶりな丸いプッシュボタンが採用されている。プッシュ面には放射状のギョーシェ装飾がなされてアクセントになっている。
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現行のクロノグラフラインナップではRef5960/01Gや5961系の自動巻フライバッククロノグラフもこの形状のプッシュボタンを持つ。しかし前述もした派生モデルと言えるRef.5905系はケース形状は5960に酷似するがプッシュボタンはスクエアシェイプが採用されているので厳密なルールがあるわけではなさそうだ。さらにもう一つ大事な永久カレンダー5320との共通点が割安に感じる価格設定。詳細はお問い合わせ頂きたいが、なぜかこのケース形状が採用されると同じエンジンを搭載する兄弟モデルより結構お得感があるプライシングとなっている。ストラップはカラトラバ・パイロット・トラベルタイムから採用され始めたカーフスキンの濃紺にかなり太めの白糸がラフな感じでステッチされており、全体の印象はかなりカジュアルな仕上がりとなっている。
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当店でもパテック フィリップの顧客にかなりお若い方が増えてきている状況を考えると、これまでの手巻きクロノモデルは少し古典的な印象があって、50歳半ば以上がターゲットだったのかもしれない。尚、文字盤はニス塗装ブルーとマットな表面感でカラトラバ・パイロット・トラベルのホワイトゴールドと同色の青、ストラップは文字盤に近似な青色で表面感もマットな仕上がりとなっている。しかし、最近のパテックは青が多いなァ~

Ref.5172G-001
ケース径:41mm ケース厚:11.45mm 3気圧防水
ケースバリエーション:WGのみ
裏蓋:サファイアクリスタル・バック
文字盤:ニス塗装ブルー文字盤 タキメーター目盛
蓄光塗料(スーパールミノバ)付きゴールド植字アラビアインデックス
ストラップ:ネイビーブルー・ハンドステッチ・カーフスキン
バックル:フォールドオーバー(折畳み式)
価格:お問い合わせ下さい。

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Caliber CH 29-535 PS:コラムホイール搭載手巻クロノグラフムーブメント
直径:29.6mm 厚み:5.35mm 部品点数:270個 石数:33個 受け:11枚 
パワーリザーブ:最低65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

この調子だと4月中に新製品全部を紹介できるのだろうか。たぶんあと2回は必要で、次回はメンズの完結編を予定。まあ気長によろしくお付き合い下さい。

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾 画像:PATEK PHILIPPE SA提供(※一部加工有)

バーゼルからは3月26日の火曜日に帰国した。現地3泊4日だが実際には3泊2日?とした方が正しい弾丸ツアー。使い慣れたキャリアKLMでアムステルダム経由バーゼル空港への往路は、オンラインチェックイン時にわずか5万数千円でビジネスにアップグレードで楽々だった。復路も大いに期待したが、これが叶わず昨年末に予約済みのEXIT ROW SHEET(非常口横の離着陸時に客室常務員とお見合いする特別席)。関空からの帰りは、数年前から恒例にしている帰国報告を兼ねた墓参りで大阪市内の菩提寺にワンバウンド。さらに帰路途中の「うなぎの豊川(東花園駅近の本店の方)」で特上うな重を頂き思いっきり″和"モードに切り替えて店に戻った。

予想はしていたが留守中にあっちコッチから、メールや電話で「あのモデルは予約できるか?」「こっちはどうやねん?」かしましくも嬉しいお声がかりを多数頂戴していた。帰国当日は時差ボケひど過ぎで返信しきれず、翌日は定休日ながら出社する羽目になった。ここの処のパテック人気は本当に"うなぎ登り!!"有難いかぎりだ。
長すぎる前置きはこの程度にして、バーゼル訪問記も後日として、とにかくニューモデルをご紹介。

メンズ:時計10型+カフリンクス1型

グランドコンプリケーション

Ref.6300G-010 グランドマスター・チャイム  レア ハンドクラフト


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今年2月に生産中止発表された(黒文字盤)のニューカラーの青文字盤仕様。この手の超絶系やレアハンドクラフトは展示はされているが我々もガラス越しに鑑賞するだけで商談室で手にする事は無い。帰国後6300G新色の画像を取っていない事に気付いたがもう遅いのでPPの提供画像。サボっとるナァ!
ところで下のスペックを書くために調べていたら意外にもこの腕時計がコレクション最厚ではなかった。Ref.6002Gスカイムーン・トゥールビヨンが17.35mmでチャンピンだった。

Ref.6300G-010
ケース径:47.7mm ケース厚:16.07mm 反転機構搭載(リバーシブルウオッチ) 非防水
ケースバリエーション:WGのみ
時刻側文字盤:ブルー・オパーリン ゴールド植字ブレゲ数字インデックス
センターに手仕上げのギヨシェ装飾(クルー・ド・パリ) 
カレンダー側文字盤:ブルー・オパーリン
両面共に18金製文字盤
ストラップ:ブリリアント・ネイビーブルー・アリゲーター
バックル:フォールドオーバー
価格:定価設定はありませんので少しお時間を頂きますが、目安についてはお問い合わせください

Caliber 300 GS AL 36-750 QIS FUS IRM
直径:37mm 厚み:10.7mm 部品点数:1366個 石数:108個
パワーリザーブ:時計機構72時間 チャイム機構30時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:25,200振動 手巻きさらに詳細なスペックについては公式HPにて

Ref.5078G-010 ミニットリピーター レアハンドクラフト

5078G_010_600.png※画像はパテックブースのウインドウディスプレイをガラス越しにiPhone7で撮影。撮影環境としては厳しい!
2005年からのロングセラーミニットに新顔が追加された。文字盤は黒本七宝(エナメル加工)をした上からレーザー加工で紋様が浅く刻まれている。過去にこの手法は記憶に無い。あくまで個人的にはあまり好きではないが、簡単には発注のできない激レアモデルである事には間違いない。

なぜか昨年までは無かったRare Handcraftsの表記がカタログに記載されるようになったが、上記2点は人の手でギョーシェマシンやレーザー加工具を操っているとはいえ、純粋な手彫りでは無いし、見た目もレアハンドと言うには個人的に多少違和感が有る。本来のレアハンドは全てがユニークピースのはずで、焼きムラや色ムラ、そして彫りムラ・・とムラッ気が有ってこそな気がする。それぐらいクロワゾネやハンドエングレーブには人の手によるぬくもりが宿っていて、ガラス越しであってもビンビンとそれが伝わって来る。至福のひと時を年に一度味わえる幸せがバーゼル詣の楽しみの一つだ。

Ref.5078G-010
ケース径:38mm ケース厚:110.18mm 非防水
ケースバリエーション:WGのみ
裏蓋:サファイアクリスタルバック ※ノーマルケースバック付属
文字盤:マット仕上げと光沢仕上げの本黒七宝 ゴールド植字 18金製文字盤
ストラップ:ブリリアント・ブラック・アリゲーター
バックル:フォールドオーバー
価格:定価設定はありませんが、少しお時間を頂き目安については問い合わせいたします

Caliber R 27 PS
直径:28mm 厚み:5.05mm 部品点数:342個 石数:39個
パワーリザーブ:最低43-最長48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)


Ref.5520P-010 アラーム・トラベルタイム
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現行モデルでアラームウオッチは今回黒から青に文字盤チェンジしたグランドマスター・チャイムRef.6300だけである。ここに2番目のアラームウオッチとしてトラベルタイム機構とドッキングさせた非常に実用性の高いタイムピースが完成した。近い将来に実機を撮影したり、記事を作成する可能性が無いとは言わないが簡単では無い気がする。その点では昨年のノーチラス永久カレンダーとは人気の質は異なるだろう。今、書いておかねば・・
この時計で最も感心したのがセーフティ機構と言うか、取扱いでそんなにデリケートにならなくても良い点だ。超絶グランドコンプリのグランドマスター・チャイムは操作上で13のしてはいけないお約束があって、説明する側も聞く側も結構大変らしい。アラームのセットだって15分後とかは無理で最短でも30分以上はあとの時間しかセット不可能だ。まあサイズからしても実際に使用するというよりコレクションして愛でるお宝であろう。それに対してGMT機能+アラームというのは旅のお供としては相性抜群の組合せだ。
言わずもがなデザインは2015年ホワイトゴールドで初出し、昨年ローズゴールドが追加された人気モデルRef.5524に瓜二つだが、ニューモデルに特徴的な4本の角?を説明しよう。時計に向かって左側2本は従来のトラベルタイム操作用プッシュボタン。右側の上はアラームONとOFFをプッシュの度に切り替えて、ON時には12時下の小さ目のベルマーク窓が白くなる。OFFは黒でベルは見えない。このプッシュボタンにもトラベルプッシュ同様に誤作動防止の為に90度回転ロックシステムが採用されている。
文字盤上部にあるチョッと小ぶりなダブルギッシェ窓には特許申請中のアラームセット時間がデジタル表示される。4時位置のリュウズは時計回りでアラーム用ゼンマイを反時計回りで時計本体用のゼンマイを巻き上げる。さらに一段引きでアラームを15分刻みでセットするが、昼夜の判断はダブルギッシェ直下のこれまた小ぶりな●窓が白で昼、夜間はトラベルタイム丸窓同色の紺色となる。尚昼夜は朝と夕いづれも6時で切り替わる。驚く事にこのアラームセットは、例えば1時14分に一分後の1時15分のセットが可能。実際にはセットにもたつくだろうから数分前のセットが現実的だろう。時刻変更と組み合わせて使えばグランドマスター・チャイムには出来ないカップヌードルの3分待ちにだって使える優れものである。防水性もパテックの鳴り物系時計としてはパテック初の3気圧を獲得している。
この鳴り物アラームには時計ケース内側を一周するクラッシックゴングが通常のリピーターの様にムーブ側では無く、ケース側に取り付けられる事で、密閉度の高い防水ケースよる音質の劣化が防がれている。音質はミニットリピーターの2種類の音源の高音側のハンマーがセットされていて35秒から最大40秒間(個体差が有る)でほぼ2秒当たり5回の割でチャイムを打つ。音はゼンマイのトルク変化にかかわらず等間隔で鳴らされる。これはパテックがミニットリピーターで磨き上げてきた遠心ガバナー(フィギュアスケートのスピンで両手を体に密着させるほどに高回転になるのと同原理)技術によるものだ。加えて言えば、高回転するガバナーはどうしても空気摩擦で雑音を発するが、パテックはこれを独自の技術で究極に排除する事で澄み渡ったリピート音を獲得している。この点において他ブランドを圧倒的に凌駕している。と、個人的に思っている。
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※上下画像はいづれもパテックブース外周りの全ムーブメント(圧巻)展示コーナーで搭載するキャリバーNo.をセレクトすると10秒程度流れるデモ動画(下参照)から


通常のシンプルなミニット リピーター ムーブメントの構成部品が大体300個強に対して、Ref.5520のそれは574個というとんでもない構成部品で作り上げられている。それでいて兄弟モデルとも言えるアビエーションスタイルのRef.5524カラトラバ・トラベルタイム(42mm径、10.78mm厚、部品総数294個)とに比較してわずかに大きく収めてきたパテックの技術陣は凄い。採用ケース素材がプラチナでありながらミニットリピーターのエントリーモデルを結構下回る価格がPOR(Price on request)ではなく定価設定されている事も驚異的で、「いつかはパテックの鳴り物を」という方は是非とも検討に値するであろう今年の絶品モデル。

Ref.5520P-010
ケース径:42.2mm ケース厚:11.6mm 防水性:3気圧
ケースバリエーション:PTのみ
裏蓋:サファイアクリスタル・バック ※ノーマルケースバック付属
文字盤:エボニーブラック・ソレイユ 蓄光塗料塗布ゴールド植字アラビアインデックス
ストラップ:マット・ブラック・カーフスキン
バックル:クレヴィス・プロング・ピンバックル
価格:お問い合わせください

Caliber AL 30-660 S C FUS
直径:31mm 厚み:6.6mm 部品点数:574個 石数:52個
パワーリザーブ:最少42時間 最大52時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金センターローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

最初は一回で新作をすべて紹介と思っていたが、グランドコンプリケーションだけでふらふらになっとりますので、次回はコンプリケーションからとしたいが、さて一体何回で終われるのやら・・

撮影、文責:乾













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バーゼルワールドまで一週間を切った。例年のことながらソワソワと落ち着かない今日この頃。毎年バーゼル開催初日(本年は3月21日木曜日)にはパテック社の公式HPにて発表されるニューモデルについて即日ブログ記事を書いてきた。実機サンプルの初見前なので過剰な期待モデルがあれば、秀作モデルを見落したりもする。
本当は出発前のPCモニター画像ではなく、現地でいきなりご対面が先入観なしに評価でき、それが一番と思っている。でも、どうしても我慢できずに見てしまうのが人情であり、パテックラバーの性ではある。
しかしながら本年は出来るだけ初見での素直な評価を大事にして変な先入観を排除すべく、敢えて出発前に速報をブログアップしない事にした。
寡作傾向は今年も継続されるのか、大量の生産中止が発表されたカラトラバの再構築はどうなるのか。昨年、久々に新作がリリースされたノーチラスとアクアノートは、また数年間の新作ブランクとなるのか、アニバーサリーとしての創業180周年、トラベルタイム(1959年初出)の60周年はチョッと弱い気がするし昨年パテック唯一のローズゴールドのペアモデルが発表されているし・・・興味の種は尽きないのだ。
でも今年は帰国後に現地での撮影画像も添えて、念入りに新作紹介ブログとバーゼル訪問記を書きたいと思っている。年間のブログ記事で最もアクセスも多いニューモデル紹介、鮮度も大事だが、実機を拝見しながら説明も聞くことで充実した実のある記事にできれば・・と思っております。

前回記事のノーチラス永久カレンダーと同様に2018新作で納期が遅れ気味で入荷が悪かった年次カレンダーの新色文字盤モデルRef.5205G。文字盤上半分に円弧形で3個の窓表示(aperture:アパーチャー)のカレンダーディスプレイがレイアウトされた独特な年次カレンダースタイルの初出は2010年。
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1996年に年次カレンダーファーストモデルが永久カレンダーの省略版ではなく、全く新しい歯車で構成する設計で開発された経緯は何度も紹介してきた。その進化系として針表示からよりトルクの必要なディスク表示によるダブルギッシェ(文字盤センター直上に左右隣接窓)スタイルのRef.5396が2006年に年次カレンダーの次男として追加リリースされた。ダブルギッシェレイアウトは1940年代から約40年間に渡って、永久カレンダーの代表的な顔として採用され続けたパテックの看板スターのマスクだ。その偉大なレジェンドを現代パテックの実用時計最前線に投入してきた事にパテック社の年次カレンダーに掛ける本気度合いを思い知らされた。

第3世代の5205のダイアルレイアウトでは、大きな窓枠が用いられる事で視認性がさらに高められた。またケース形状も大胆なコンケーブ(逆ぞり)ベゼルが表裏とも採用され、4本のラグには大胆な貫通穴が穿たれており、すこぶるモダンでスタイリッシュな3男が登場したわけだ。この斬新なケースデザインは、2006年の自社開発クロノグラフムーブメント第2弾CH 28-520 IRM QA 24Hを搭載して登場し、一躍人気モデルになったRef.5960Pにそのルーツを持つ。以降パテックコレクションの革新的なモデルに次々と採用され続けているアバンギャルドなフォルムだ。
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画像は2015年撮影分(5205G-010)流用。
実はこのブルー・ブラック・グラデーションという文字盤カラーに極めて近いダイアルカラーを持つモデルがある。残念ながら今年生産中止発表されたプラチナ製手巻クロノグラフRef.5170P。2017年に発表され個人的に大好きなこのモデルの文字盤色(日本語表記:ブラック・グラデーションのブルー・ソレイユ、英語表記では同一)と同じだろうという事で、昨年の発表時には大きすぎる期待を持ってバーゼルでの出会いを楽しみにしていた。履歴書や釣書(今や死語か)の写真でもよくある事ながら期待過剰で現物と対面すると今一つピンと来ない事が多い。この5205Gも同様で、実は対面後の個人的評価はあまり芳しい物ではなかった。恐らくバーインデックス内側の極細に抉られた円周サークルで内と外が分断される事で、面積的に5170Pのように濃青から黒色へのグラデーションがリニアに感じられないからだと思う。

この事は昨年夏の当店展示会で再開した展示サンプルでも、ほぼ同様の感触を得ていた。ところが改めて実機を撮影するために、じっくり眺めなおしてみると結構いい色なのである。一枚目の画像は結構にグラデーションが出た写り方なのだが、むしろグラデをさほど意識せずに単純なモノトーンカラーとして見た時に実に秀逸で高貴な濃紺の文字盤である事に改めて気づかされた。
従来機の文字盤チェンジモデルなのに入荷スピードが今一芳しく無かった要因は、文字盤供給だとしか思えない。たしかグラデーションを表現する吹付塗装はすこぶる微妙な手作業と聞いた。歩留まりも非常に悪いのだろう。


この時計敢えて欠点を言えば、少しスタイリッシュに過ぎる文字盤が、結構ファッションスタイルを絞り込んでしまう事かもしれない。フォーマル過ぎず、カジュアル過ぎずのスーツスタイルが基本。でも白シャツに濃紺スーツというビジネスシーンでの普遍にして王道に、これ以上心強い相棒はいないだろう。

Ref.5205G-013 年次カレンダー
ケース径:40.0mm ケース厚:11.36mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGRG別ダイアル有
文字盤:ブルー ・ブラック・グラデーション、ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有)・ブラック アリゲーター 
バックル:フォールディング(Fold-over-clasp)
価格、在庫:お問い合わせください


搭載キャリバーは21金フルローターを採用したパテックを代表する自動巻きCal.324に年次カレンダーモジュールを組込んでいる。
カレンダー系の操作は禁止時間帯等あって気を使うが、パテックの場合は殆どの物が午前6時(例外あり)に時刻を合わせてプッシュ操作を行う。ムーンフェイズはいつもネット検索して確認していたが、パテックHP内にある確認ページが結構便利である。
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Caliber 324 S QA LU 24H/206

直径:32.6mm 厚み:5.78mm 部品点数:356個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
PATEK PHILIPPE 公式ページ

撮影、文責:乾

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ノーチラスの撮影はいつも簡単。ほんとに早い。ケースとブレスにサテン仕上げが多くて映り込みが非常に少ない。文字盤も微妙にマット調の仕上がりなので何も工夫せずともしっとりと美しく写ってくれる。上の画像も下の少し寄り気味にしてダイアルのグラデーションを少し表現したカットも埃の除去以外は、全く画像修正をしていない。もちろん時計そのものが抜群に美しく、素晴らしいブルーカラーがあってこそなのは言うまでもない。ちなみに画像中央下部の青い奇妙な映り込みはバックルの保護シール。

パテック社の期初は2月からなので今期の初荷が、待ちに待ったノーチラスの永久カレンダーだったのは何とも喜ばしい。本来は昨年のニューモデルなので、前期末の1月末までに入荷予定だった。しかし入荷状況が非常に悪いとはPPJからは聞いていたので、ご注文者様にもしばしのご辛抱をお願いしていた。結果的には10日程度の納期遅れでの入荷となった。
ところが残り物には副が有るようで、このたったの数日の遅れには小さなサプライズが付いてきた。チョッと此処には書けないが、店頭でならお相手次第ではお話出来るかも。
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このモデルの遺伝子は3年前のノーチラス発売40周年に当たる2016年に記念限定でリリースされた2モデル。すなわちWG素材でジャンボサイズが採用されたフライバッククロノグラフRef5976Gとノーマルサイズでプラチナ素材の3針モデルRef.5711/1Pの両モデルと全く同一な文字盤色となっている。上の画像では人気のSSノーチラス5711と5712のブラックブルーダイアル程ではないがブルーの濃淡がハイライトとシャドウに浮いて出ており魅惑的な表情を見せている。
さて複雑機能を備えている事とWGでの同一素材という点で今回の永久カレンダーモデルは、3年前の限定クロノグラフモデルにより近しいと言える。しかしながら決定的に違うのはそのケースサイズである。クロノグラフはセンターローター自動巻機構と垂直クラッチ方式でクロノグラフへトルクを伝達するスタイルが採用された厚み(6.63mm)のあるCal.CH28-520が搭載された。結果ケースの厚みも12.16mmとノーチラスでは最厚に近い厚みが有った。さらに定番のクロノグラフ5980系が機能付きノーチラスの主要サイズである40.5mmに収まっているのに、敢えて44mmというジャンボサイズにアップサイジングされた。かくして312グラムという筋トレにも使えそうなヘビー級の時計が出来上がった。これに対して5740はグランドコンプリケーションにもかかわらず40mm径というシンプル系ノーチラスと同サイズが採用された。さらに驚くのはその厚みで、シリーズ最薄モデルの3針5711にたった0.12mm加えただけの8.42mmに仕上げられている。これは従来の永久カレンダーモデルにも多用されている極薄ベースキャリバーCal.240の貢献が大きい。この22金のマイクロローター方式の名キャリバーの設計は1977年にまで遡り、40年以上もパテックコレクションの主要エンジンとして現役バリバリである。パテックムーブメントには本当に長寿命のものが多い。

このCal.240ベースの永久カレンダームーブは通常ケースサイドにあるコレクターと呼ばれるプッシュボタンで各カレンダーの調整を行う。下図の左が従来のラウンドケースの永久カレンダー。四か所にプッシュボタンA~Dがあるが、C,Dのボタンは曜日と日付ディスクの直近にあってアクセスが非常に良さそうだ。A,Bは対応する日付と月・閏年ディスクから離れてはいるがプッシュボタンを押す方向はムーブメント内側に向かっている。
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右のノーチラスケースではその独特なケース形状から9時位置の曜日調整のCボタン以外の三つのボタンは、ブレスレットの付け根付近にリプレースされている。さらにBボタンの矢印のようにあくまでプッシュ方向はケース面に垂直にせざるを得ないのでムーブメントの外縁辺りしかアクセスしえない。パテックはこれを解決するために直線的にディスクへ直接アクセスするのではなく、途中で方向転換する為の特殊な伝達機構を設けてこの問題を解決したようだ。恐らくこのニューモデルの納期が、遅れ気味になったのはこの調整部分の作りこみに手間と時間を取られたのではないかと思っている。
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左が9時側、右がリューズ側のケースサイドビュー。コレクタープッシュボタン位置とケースとブレスレットの薄さに注目。3針モデルの5711/1Aと見た目に違いが無い。ちなみに同じベースキャリバーCal.240にパワーリザーブとムーンフェイズを乗せた人気モデルの"5712通称プチコン"のケース厚は8.52mm。カムやらレバーやらメカメカしい大道具が詰め込まれたモジュールが組み込まれた永久カレンダーの方が僅かながら0.1mmケース上で薄く仕上がっているのが凄い。さらに言えば現行のパテックフィリップ永久カレンダーラインナップで最薄モデルである。今年生産中止が発表されたクッションケースのRef.5940の8.48mmがそれまでのチャンピオンだったが、僅かながらそれを凌いでいる。スポーティなスタイリングや防水仕様から何となく骨太で厚みもありそうな印象をノーチラスは漂わせているが、ジェンタ考案の耳付き構造ケースは薄いムーブを究極に追い込んで包み込んでしまうようだ。
さて、一昨年(たぶん)迄はパテックの永久カレンダーには通常モデルのコレクションボックスではない少し大きめのワインダー内蔵タイプのボックスが用意されていた。昨年度からはこのボックス型ではない専用の独立したワインダー(SELF-WINDER CYLINDER)が用意されるようになった。
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交流電源ではなく単4リチウム/アルカリ電池を4本内蔵しておりその寿命は2500時間。フルローター自動巻キャリバー324ベースの永久カレンダーでは一日当たり960回転でおよそ2年で電池交換。巻き上げ効率で多少劣るマイクロローターのCal.240とR27ベースの場合は1日に1440回転となっているので、記載は無いが一年半という事になるのか。尚、出荷段階のデフォルト設定は1440回転で、本体のスイッチはスタートのオンオフだけしかできない。324ベースキャリバー用の960回転への設定変更は、スマートフォンにAPPまたはグーグルプレイから"PP Cilinder"のアプリをダウンロードし、ブルートゥースを介して操作することになる。個人的には何で此処だけ急にデジタルチックにするのかが不可解である。単純に切り替えスイッチ一個で済ませば良いのに・・まあ個人所有のスマホには既にアプリはダウンロード済みではあります。いやいや、永久カレンダーは持っていません。あくまでお客様サポート用です。

今回はご購入のお客様のご了解を得て、実機撮影が叶い記事も書けた。本当に感謝しております。ありがとうございました。
尚、かなりの高額商品にも関わらず顧客様のウエイティングがそこそこ有って、ご新規様の新たなご予約は困難な状況です。ご販売を必ずしもお約束出来ないご登録は店頭でのみ受けております。悪しからずご了承ください。

Ref.5740/1Gー001 自動巻永久カレンダー
ケース径:40mm ケース厚:8.42mm(永久カレンダーラインナップ中最薄、2019年2月時点) 
防水:60m 重量:205g
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤: ブルー サンバースト 蓄光塗料塗布のゴールド植字インデックス
バックル:ニュータイプ両観音クラスプ
裏蓋:サファイアクリスタルバック ※ノーマルケースバックは付属しません。
付属:セルフ-ワインダー シリンダ―(自動巻き上げ機)
価格:お問い合わせください

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肉眼だと
並べなければステンレスとの色目の違いが解りづらいが、画像撮影すると結構な黄味を帯びていることがわかる。個人的にはステンレスやプラチナのピュアな銀色と違って温かみがある色だと思っている。永久カレンダー機構は総て文字盤側に組まれているので、スケルトンバックから望むのはCal.240の見慣れた後ろ姿だ。

Caliber 240 Q 

直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:275個 石数:27個 受けの枚数:8枚
パワーリザーブ:最低38-最長48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

撮影、文責:乾

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今年は少し早かった。昨日、次の記事が生産中止だろうと書いたが、翌日(2/2)に早くも通達がやってきたわけだ。皆さんご興味のある所なので、例年のごとく後日加筆覚悟でさっそくご紹介。

斜体文字のRef.は今日現在で当店在庫有り。尚、生産中止発表後にひょっこりと対照モデルが入荷することがある。客注の場合も、そうでない場合もある。あくまで2019年のどこかで生産を打ち切る予定リストなので、現在仕掛かっている製品もあるだろうし、これから仕掛かり年度内に出荷もあるかもしれない。希望的とは言えないが本発表が、即絶望とも言い切れない。一生懸命探しますので、ダメもとのお覚悟ならお声がけください。よろしくお願いします。(2/3加筆)


メンズ31型


超絶系?
6300G-001グランドマスターチャイム
ミニットリピーター
5539G-0105304R-001
※3モデル全て時価(Price on riquest)
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スプリットセコンドクロノグラフ
5204P-0115950R-001 ※2モデル共に時価(Price on riquest)
永久カレンダー
5940R-001
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年次カレンダー
5146P-0015146/1J-0015146/1R-0015146/1G-0015146/1G-010
5235G-0015396R-0125396G-0145396R-014
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クロノグラフ
5170P-001
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カラトラバ
5119J-0015119G-0015119R-001
5296G-0015296R-0015296G-0105296R-010
5227G-0015153J-0015153G-0105153R-001
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5296G_001_R001.png
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ゴンドーロ
5124J-0015124G-011
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ノーチラス
5726/1A-0015726/1A-010
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2017年度27型、昨年2018年度が20型、そして今年が31型。今年は大量ディスコンの年だ。永久カレンダーまでのグランドコンプリケーション6型はこんなもんでしょう。6300グランドマスターチャイムは恐らく世界中で現実的にオーナーになりたい方(なれる方)の受注が一通り終わったのか。通称TVスクリーンと呼ばれる個性的かつ人気の永久カレンダー5940はリファレンスそのものが姿を消すことになった。ラトラパンテの5950も無くなってクッションケースがラインナップからグッバイする事態になった。
年次カレンダーはややマニアックなモデルとそんなにご要望のなかったメタルブレスがごっそりと鬼籍に入った。ノーチラスを除きメタルブレスは、ほぼ絶滅危惧種になりつつある。
個人的にお気に入りの手巻きクロノ5170Pは2年で姿を消す。結構将来の資産価値が期待できるレアモデルだったりして。
そして衝撃のカラトラバ。11型のドロップが今年の大量ディスコンの根幹だ。昨年の5116Rに続いてクルドパリベゼルの名作5119が全モデル生産中止。同じくド定番のクンロク自動巻5296も4型全廃となった。あまりにお気の毒で掛ける言葉もありません。ハンターケース系はオフィサータイプの5153が全部サヨウナラ。
ゴンドーロはメンズで唯一残留していたレクタンギュラーケースの5124が消えてレディスオンリーのシリーズとなってしまった。ああバッサリ!(2/3加筆)
さらに衝撃はノーチラスにも、しぶとい人気の年次カレンダーステンレスブレス2色が鬼籍に入ってストラップモデルのみ徳俵で残った。

レディス12型

コンプリケーション(ムーンフェイズ)
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カラトラバ
4899/900G-0017122/200G-0017122/200R-001
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ノーチラス
7018/1A-0017018/1A-0107018/1A-011
7014/1G-0017014/1R-0017021/1G-0017021/1R-001

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レディスの12型も、2017年度10型、昨年2018年の6型から見て結構な見直しとなった。ただその内半分はかなりな宝飾モデルで目垢も付きやすく、買うべき方が一巡すればあまり長く継続すべきではないだろう。個人的にはステンレスノーチラス自動巻で33.6mmと小ぶりで日本人にグッドサイズだった7018全廃は残念だ。

数年に渡る大胆なラインナップ見直しの一方で、昨年の新製品はメンズ12型、レディスはたった3型。一昨年2017年はそれぞれ17型と8型なので近年は寡作化が進行している。結果コレクション全体がシェイプアップされ続けている事になる。かといって生産能力はリストラされている訳ではなく、新工場を現本社工場に隣接して建設中であり、二年ほど前のスイス時計産業不振時期には他の時計コングロマリットが放出した技術者達を積極的に雇用したパテック社の生産余力はむしろ充実傾向にある。
理由として考えられるのは、P社自身も唱えているさらなるクオリティアップ。そしてアフターサービスの充実あたりだろう。決して1モデル当たりの生産本数を全体に底上げするような事はして欲しくないと願っている。
しかし毎年感心するのは、どこの誰がリーク元か知らないが、年末あたりから真しやかに流れている根も葉もない(と言い切れるのか?)生産中止の怪情報がほぼ十中八九的中している事である。そして僅かながら2019新製品の怪情報も添えられているのだが、さすがに現段階では立場上言及できない。ただし本当ならとっても嬉しい内容なのだが・・
今年のバーゼルは3月21日(木)から開催される。例年通りであれば9時間時差のある現地21日午前0時(たぶん)、日本時間午前9時にはP社公式HPで新製品の全貌が発表されるはずだ。個人的には大きなまとまりを欠いたカラトラバシリーズのラインナップ再構築が最も気になるところである。(2/3加筆)

今年はカタログへのリンクだけではなく、判りやすく商品画像も貼る予定。考察ももう少し書き足したい。でもこの手の情報は鮮度が命なので取り急ぎひとまずアップ致します。明日以降加筆予定。速記記事ゆえ多少の誤字・リンク誤りはご容赦ください。

文責:乾

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ついこの間、雑煮とおせちを頂いたばかりなのに目も前に鰯と恵方巻がちらついている。なんという時の流れの早いこと。一か月は1時間で言えば5分に値するが、この間何をしたと言う訳でもないが、店は結構賑わいもあってお陰様な結果が残せそうである。感謝!感謝!
一月末はパテックフィリップにとっては節目で会計年度の年度末に当たる。ロレックスなどは年度末(12月末)が近づくと入荷が少なくなる傾向があったが、パテックはこの12月から1月にかけて入荷がすこぶる良かった。多くが客注分とイレギュラーの店頭分の入荷。パテックの売上げというのは客注商品の入荷次第というところがあるので全国的にここ数ヶ月は相当な売上げに成っているはずだ。

今回はそんな状況で入荷してきた年次カレンダー2本を紹介したい。まずは1996年の年次カレンダーデビューモデルRef.5035のダイアルレイアウトを引き継ぐ血族直系であるRef.5146。ローズゴールドケースにクリーム色のラッカーで仕上げられた文字盤がセットされた何とも優し気なカラーリングの一本。
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このモデル自体は既に紹介済みなので細かくはそちらを見ていただくとして今回は文字盤のデザインについて少々掘り下げてみたい。
文字盤中心から少し上に左右に並ぶ"曜日"と"月"の指針表示は古くからパテックが永久カレンダーで採用してきたレイアウトパターンなのだが年次カレンダーのそれは、両サークルがかなり寄り目でかつセンター指針と一直線では無く上側にシフトされている点で、似て非なる印象を受ける。
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1996年にファーストモデルとして発表されたRef.5035からこの部分は変更がなく、このモデル系列の決定的な遺伝子的要素と言える。6時位置のディスクスタイルの日付表示も同様である。進化した点は1998年に業界に先駆けて初採用された12時直下のパワーリザーブ機構である。パテックにはともかく"時計業界初"が多い。同時にムーンフェイズも追加されて、それまでの24時間表示位置に取って代わって備えられるようになった。その結果パワーリザーブ表示に追いやられたブランドロゴが行き場を失ってダイアル下部の6時位置に配された為に24時間表示が、そのとばっちりで消去されてしまった。
しかし、中央より下側にブランドロゴがレイアウトされるのはかなりレアケース。現行モデルではセレスティアルシリーズとノーチラスのトラベルタイムクロノグラフRef.5990のみだ。ダイアルセンターの右側にエングレーブでロゴ配置されるのが、12時側にも6時側にもスペースが全くない年次カレンダーレギュレーターのRef.5235G。また超絶系のリバーシブルウオッチのグランドマスターチャイムRef.6300はカレンダー側(裏側?)にはスペースが全く無く、時間表示サイド(表側?)のセンター指針の両側に振り分けてかろうじてロゴを表示している。極めつけは文字盤に全くスペースが無いためにベゼルに無理やりっぽく刻印されるプラチナのワールドタイムRef.5131P。多軸やディスプレイが多すぎるのも悩みのタネのようでデザイナーの苦労もさぞやと思う。
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最後にこのモデルのセールストークを少し。現在年次の定番は3型あるが、パワーリザーブ付きの5146が価格的には一番お買い得である。他の2モデルは同素材なら価格も同じでケースが凝っているRef.5205が通常尾錠、ごくノーマルなクンロクケースを纏うRef.5396(後述)が折畳み式バックルの違いがある。折畳みバックル付きの5146はRG・WG素材なら両者に比べ税別約70万円以上お安い価格設定。この価格差は魅力だ。


Ref.5146R-001 年次カレンダー

ケース径:39.0mm ケース厚:11.23mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RG WG(別ダイアル有YG(別ダイアル有) PT ※別途ブレスレットモデル有り
文字盤:クリームラッカー、ゴールド植字インデックス
ストラップ:マット(艶無)チョコレートブラウンアリゲーター
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:お問い合わせください。
在庫:2019年2月1日現在有ります。

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Caliber 324 S IRM QA LU

直径:30mm 厚み:5.32mm 部品点数:355個 石数:36個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)


さて、今回は二番煎じで中身が薄い分、もう一服としてさらに年次カレンダー入荷モデルを追加紹介。
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2006年に年次カレンダーの2番目のシリーズとして発表されたRef.5396。通称ダブルギッシェ(二つの小窓)と言われるセンター指針の直上に左右に狭い間隔で"曜日"と"月"が並ぶレイアウト。もともとは1900年代半ばから1980年代までもっぱらパテックの永久カレンダーのド定番顔として採用され続けていた由緒正しいマスクである。その特徴的なレイアウトはそのままに6時側インダイアルで針表示していた日付をより実用的な小窓のディスク表示にし、インダイアル指針は24時間表示として時刻合わせをすこしでも容易にする機能を持たせた。この伝統的なレイアウトはクロノグラフと組み合わされる永久カレンダーではずっと採用され続けている。しかしシンプル永久カレンダーとしては2017年発表のRef.5320で久々にリバイバルされたのが記憶に新しい。
さて、しばしば触れているがわが愛機はこのモデルのローズゴールド版である。早いもので愛用歴は3年半になる。精度も調子もすこぶる良いのだが、少し小言もあって、まず搭載キャリバーののCal.324は現在パテックの主流のフルローター自動巻ベースムーブメント。だがパワーリザーブが最大で45時間しかない。10年前なら常識的な長さだが今日に於いては少々短い気がする。72時間駆動するグランドセイコーの愛機と交互に着用することが多いが、たった28時間の差が実用度合いに大きく影響する。
2番目には時間合わせ運針がローギヤで辛気臭い。輪列保護の為にはこのローギヤードが良いのだろうけれど高級実用ブランドであるロレックスやグランドセイコーと比べ非常に遅い。車で言うと2速と4速くらいの違いを感じる。特に年次カレンダーの場合パワリザ不足からの止まった場合は1~2日の遅れであれば一々小さなコレクターを何か所も調整するよりも時刻を手動で進めた方が楽なのだが、忙しい出勤前などはこれが何ともまどろっこしい。近い将来の改良を願う。
そして自分の不注意から一か所不調を抱えている。月齢の調整コレクターがサクサクと押せないのだ。おそらく原因は安価な爪楊枝でコレクターを押した際に先端が微細に砕けてコレクター内に粉末として混入したのだろう。パテックフィリップの取扱説明書には必ず付属の調整ピン(金属製)の使用を限定している。しかし現実的にはコレクターとその周辺のケースにも傷がつきそうな付属ピンはチョッと使う気になれない。当店では原理原則をご説明した上で、自身の失敗から考察して現在は女性がネイルケアの際に使用する木製のスティックを個人責任で使っていただくようにお渡ししている。だがさらに良いものがないか常に日ごろから目を凝らしている。多分非常に硬い竹製で先端がごくわずかに丸められていて軸にはそれなりの太さと長さのある様なものがほしいと思っている。どなたかおすすめのツールがあれば是非コメントください。
閑話休題、現在5396のバリエーションは6型。その内4型は2016年以降の発表なのでバリエーションが増えているモデルである。それと対照的にアバンギャルドなデザインのRef.5205は昨年発表のWG素材のブルーブラック文字盤を入れて僅か3型に集約されてしまっている。個人的にはいづれも甲乙つけがたい素敵な年次カレンダーだと思っているのだが・・

何とか本稿は1月中に今年2本目として掲載したかったのだが、月末に"どうしても源泉かけ流しに行きたい病"を発症して臨時休業をいただき本日のアップとなった。そして例年通りであれば、次の記事は生産中止モデルの発表という事になる。これも例年のことながら年末くらいからディスコンにまつわる色々な詮索話をお客様から伺うことがあった。さすがに此処には書かないが興味深いお噂もあって、あと数日を心待ちにしている。

Ref.5396G-011年次カレンダー
ケース径:38.5mm ケース厚:11.2mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WG別ダイアル有)、RG別ダイアル1

文字盤:シルバーオパーリン ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:お問い合わせください。
在庫:2019年2月1日現在有ります。

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Caliber 324 S QA LU 24H/303

直径:33.3mm 厚み:5.78mm 部品点数:347個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責、撮影、修正:乾

インスタグラムアカウントinstagram作成しました。

新年あけましておめでとうございます。元旦恒例の二月堂初詣、今年の御籤は"吉"。亥年は人生6回目、そう年男の今年は還暦を12月に控えて、一杯良い事が起きそうな予感が有りながらも過去かなり裏切られてきたこの身は、今のところは身構えとくしかない。とりあえず奈良の三が日は日本晴れで、二日からの初売りもそこそこ好調なスタート。晴れ男効果があったようで気分は悪くない。本年もどうぞ宜しくお付き合いください。月2回で年24本の投稿を目指して・・
結局、昨年12月はたったの1回しか記事投稿出来なかった。一年間では23本でまあまあながら、生産終了とバーゼルでの新作発表へと話題が連続する2月~4月に大半が偏っている。例年5月以降がネタもスタミナも切れてきて失速してしまう。新作の入荷は早くて8月後半からなので、初夏から秋口まで紹介済みの定番モデルを再度、別の切り口で取り上げる事とでもしようか。まあ「美味しい二番煎じ茶をどうぞ」てなもんです。

で、平成31年の書初めネタは手前味噌なストラップ話。愛用機Ref.5396R-011年次カレンダーのストラップは、折畳み式のフォールドオーバークラスプ(以後:FD)にシャイニー(艶有り)のチョコレートブラウンがデフォルト。実は見た目はそのままでいじっておりまして、まず寸短ストラップを調達し6時側のみ1cm短くしてケース本体が手首内側(親指側)に来るようにいじってみた。ところがクラスプの曲がり形状のせいか思ったように手前にケースが寄ってくれない。仕方がないので逆に12時側を短くし直した上で12時側と6時側を逆に着けてみた。脱着時に違和感があるが、かなり装着感は改善した。
しかしひょっとしたらピンバックル(通常尾錠、以後:BD)の方が、きっと着け心地が良いのではないか?という疑問がムクムク湧いてきた。ローズゴールドの16mm巾ピンバックル(税別82,000円)とチョコレートブラウンの21-16mm巾ピンバックル用ラージスクエア(竹符)アリゲーターストラップ(税別47,000円)を調達した。因みにマシンステッチタイプで、ハンドステッチ手縫いタイプは税別4,000円高くなる。見分け方は簡単で、ストラップの裏地に"Cousu main"とあれば手縫い(ハンドステッチ)という事になる。Cousuは仏語で"縫う"、mainは"手"の意味。
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ところで価格表には記載のある玉符(ラウンドスケール)だがデフォルト(初期設定)で装備されているモデルは無い。パテックフィリップジャパンにも在庫が全く無い。ストラップカタログには画像付きでそれなりのページが割かれているのだから、スイスオーダーをすれば忘れた頃に入荷はするのだろうけれど・・要は実体が備わっていない幻のラインナップのようで、これはこれで気になる。竹符に較べて高級感に欠けると言われている玉符、殆どのブランドで使われている感じが無いが、メリットとしては竹符のように符の部分での割れトラブルが少なく、しなやかで丈夫だとも聞く。いつか試してみたい素材ではある。
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そして価格面もメリットがあった(過去形)。今回調達のストラップなら税別34,000円と3割近くお安かったのだ。ところが話はコレで終わらない。昨年の後半から初期設定の無いストラップは完全な1本づくりのスペシャルオーダー料金税別13,000円が加算されるので、結局税別47,000円と同額になるようになってしまった。これで益々玉符のオーダーは、限りなく非現実的になった。まるで日陰者が奈落に突き落とされて、もう二度と日の目を見ることが出来なくなった様な印象だ。
ついでにシャイニーブラックのFD用ハンドステッチアリゲーターが、訳あって手元に余っていたのでブラックのビジネスシューズに併せられるようにFDに装着してセカンドストラップとする事にした。パテックフィリップの殆どのレザーストラップ仕様は、いわゆるイージークリック方式が採用されており、誰でも爪を使って簡単に脱着が可能だ。只し外したストラップから専用のバネ棒を一旦抜いて、新たに着替えるストラップに差し替えてやらないといけない。大して面倒ではないが、何となく貧乏くさいのと毎回抜き差ししていると傷みが進行しそうな気がしたので思い切って18金ローズのバネ棒2本(1本が税別1万円)を追加調達。これでトータルの調達コストは税抜149,000円。
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左がブラウンBD、右がブラックFDを装着した5396R-011。
で、肝心の着け心地だが思い通りピンバックルのBD仕様が一番しっくりしている。ブラックのFDもブラウン時代よりフィットする感覚がある。天然素材なので硬さは個体差があるし、竹符の場合は符と符の境界線で曲がりやすいので、着け心地は個体ごとに微妙に変わる。厚みも重要で、薄いケースに厚みのあるストラップは合わないし、その逆もまたしかりである。厚さはパテックの初期設定を絶対に守るべきである。最初は見慣れないブラックと5396Rの組み合わせに違和感を覚えるスタッフもいたが、これは慣れの問題で、ムーンフェイズディスクが黒ベースなので合わないわけがない。大変気に入っている。所有する紳士靴ラインナップは黒:茶:その他=5:3:2なので出勤の最大8割での出番が可能となった。因みにストラップ交換に要する時間は私で約30~40秒程度。慣れない人でも1分もあれば十分だろう。

年の初めに細かい小ネタですみませんが、折角の愛用機の出番を増やしてやりませんかというご提案でした。

文責、撮影:乾

今年も残りわずか。一体いくつ記事が書けるのか?いつもは枯渇気味のネタが珍しくある。11月に客注品がまとめて入ってきたお陰で新製品で2本は書けるし、些末な事ながら自身の5396R年次カレンダーのストラップ&バックル交換という小ネタもある。無いのは気力と時間。手つかずの年賀状も気が重いけどお歳暮は済ませた事だし、まあやれるとこまでやりますか。
今年は新作が寡作でメンズ8型、レディス3型。そのメンズもゴールデンイリプスのプラチナはたった100本限定の激レアだったのでレギュラー的なニューモデルはわずか7型しかなかった。ところがどっこい、寡作にして珠玉品度合いが高くその密度は大層に濃厚であった。特にノーチラス初の永久カレンダーとアクアノート初のクロノグラフには本当に多くの方からお声を掛けていただいた。
このうちノーチラス永久は相当に入荷状況が悪いらしく既に日本入荷の実績はあるもののコンスタントとは言えないらしい。今期末の来年1月末が迫る中、かなりのバックオーダーを残しつつもスイスパテック社から次年度への明確なキャリーオーバー(持ち越し)宣言は未だ無いとの事なので、ここは残り僅かの日々を気短に待つしかない。

と言う訳で、今回ご紹介は先に入荷してきた人気のニューモデル5968A-001アクアノート ジャンボ フライバッククロノグラフ。
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サイズは大きく通称"JUMBO"と言われるジャンボサイズの42.2mmである。これは昨年発表されて話題の人気モデルRef.5168G-001と同サイズなのだが、各ブランドのケース径拡大化戦略によって、今日ではメンズの普通サイズである。逆に言えば従来のアクアノートレギュラーサイズ40.8mmがスポーツラグジュアリーウオッチのジャンルにおいてはやや小ぶりと捉えたほうがコンテンポラリーな認識と言えよう。
男女関係同様に顔の好き嫌いはしっかりあるフェイスだろう。いわゆる灰汁のの強い顔立ちで「一目惚れ系」のご尊顔(おっと!殺しちゃいけない・・けど、悩殺される色気が漂うのだナァ~)ダークグレーにフラッシュオレンジの差し色は、漆黒のチャイナドレスのスリットからチラリと覗くセクシーダイナマイト(古っ!)な怪しい蝋蜜の太腿のようである。まだトロピカルラバーが出荷設定の黒はチラリズムの世界に収まっているが、付属のオレンジはいけない。危ない。やばい。やりすぎやでお嬢ちゃん!ナイスバディのくびれ全開のビキニ状態やん。
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今回お買い上げのお客様のご希望でオレンジストラップにチェンジして納品をさせて頂いたが、このストラップチェンジはバネ棒位置が結構深めで、それなりの工具と経験が必要である。全国の正規販売店にはパテック社からは必要工具セット(多分自費購入すれば数十万円はしそう)が貸与されているのだが、不思議なことにこの作業用の工具が含まれていない。当店ではブライトリングから購入した専用工具(ベルジョン製でブランド名入り)で対応した。お客様の撮影許可も頂けたので黒とオレンジ両色での撮像が可能となった。
このモデルはパテックには珍しく個性がバリバリに強く押し出されている。好き嫌いがはっきり別れる時計であろう。でも、惚れた人にはたまらんのやろなァ~
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尚、スペアストラップ入れは従来通りのものが付属されている。

バックルは新型である。従来はS字というかZ字状のスタイルであったが左右対称のカラトラバ十字がデザインされたニュータイプが採用されている。
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バックルセンターのPATEK PHILIPPEロゴマークの左右上下に4か所の短い凸状の突起があって、ここが両サイドの両観音バックル部の凹部(下画像の青丸部)に噛み合って閉まる構造である。外す際はPPロゴ上下の長方形ボタン?を両側から抓むことでリリースされる。
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ストラップ繋がりでバックル解説へと枝葉末節気味の紹介となってしまった。心臓部分のムーブメント紹介へと話を本筋に戻したい。と言ってもこのキャリバーは初出ではなく2006年1月にクロノグラフキャリバー自社一貫設計開発製造計画の一環としてフライバッククロノグラフ年次カレンダーRef.5960Pに積まれたのが源流である。同年の10月にはノーチラス初のクロノグラフモデルRef.5980/1Aに年次カレンダーモジュールとパワーリザーブを盛り込まないシンプルなフライバッククロノキャリバーCal.CH28-520 C系として初搭載されたエンジンが、12年の実績を経て今回のモデルにも採用されている。キャリバーの詳細はコチラの過去記事よりご覧いただきたい。

Ref.5968A-001
ケース径:42.2mm(10-4時方向)ケース厚:11.9mm ラグ×美錠幅:22×18mm
防水:120m ねじ込みリューズ仕様
ケースバリエーション:SSのみ 
文字盤:ブラックエンボス 蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
針:時分針18金WG製、クロノグラフ秒針及び60分針はいづれも真鍮製
ストラップ:ブラックコンポジット《トロピカル》ストラップ(ラバー)
オレンジコンポジット《トロピカル》ストラップ(ラバー)が付属
アクアノート フォールドオーバー クラスプ付き
コレクタープッシュピン:黒檀と18金WG製

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Caliber CH 28-520 C/528 フルローター自動巻フライバッククロノグラフムーブメント
コラムホイール、垂直クラッチ採用
直径:30mm 厚み:6.63mm(ベースキャリバー5.2mm、カレンダーモジュール1.43mm)
部品点数:308個 石数:32個 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)DRIE製法による

」」\\
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
価格:お問い合わせください。

PATEK PHILIPPE 公式ページ
 

文責、撮影、画像レタッチ:乾

在庫状況:お問い合わせ下さい。かなり・・・ですが




To write or not to write,That is the question?
書くべきか、書かぬべきか?文豪並みに悩む文才の無い乾です。何故か偶然に重なったご客注品の入荷。納品は保証書同時納品ルールによって定休前の火曜日以降。でも2点は新作で撮影もしたい。12月と新年1月の販促の仕込みもあるし、先日のお痛のせいで両手の親指と人差し指が突き指でネクタイも結びにくいという状態で、受注も販売も出来ない決定品を並べても他ブランドを含めてご購入希望やメンテナンスでご来店されるお客様とのバッディングも怖いし・・あァ、もうェェ、いてまぇ、いざという時は相方や、姐や、姐のケセラセラや

Ref.5968A-001 アクアノート フライバッククロノグラフ ステンレススチール 2018NEW
※バーゼル以来、改めて見た付属のオレンジラバーストラップ、まるでフラッシュカラー。衝撃的インパクト!
Ref.5524R-001 カラトラバ パイロットトラベルタイム ローズゴールド 2018NEW
※WGの文字盤は青のマット調の単色で男っぽい。対してRGの艶感ありのブラウングラデーションは色気ありまくり。
Ref.5170P-001 グランドコンプリケーション 手巻きクログラフ プラチナ 2017
※二年前のノーチラス40周年限定2型で初出だったバゲットダイアのバーインデックスの好評さから採用されたと思われるパッと見はダイアに見えない奥ゆかしいラグジュアリー仕立てと脳天からコテンと悩殺されるブルグラ・・ホ、ホッ、欲し~い、心から想う久々の一本。気持ちは一杯いっぱいでもなんせお財布が・・・
Ref.5712/1A-001 ノーチラス プチコンプリケーション ステンレススチール 2006
Ref.5711/1A-010 説明不要
Ref.5167A-001 説明不要

誤解無きように書き添えますが、ほぼ全員に展示了解を得ていますし、許して下さる方の分しか展示しません。もちろんご了解を得られない方の納品待商品を並べるつもりもございません。
ご来店いただきケース内のみでのご対応で、手に取って頂いたり、ご着用はご遠慮いただきますのであらかじめご了解の程、お願いいたします。
受注可能なものもありますが、実績顧客様優先モデルが殆どです。
また、スタッフも少量限定?で充分なご対応がかなわない場合もございます。ご容赦下さい。

文責:乾

気がつけば平成で始まる最後の新年がもうそこまで・・例年の事と言いながら本当に年々過ぎ去る速度が速くなる。時の流れに携わる生業でありながら逃げるものを追い駆けているような気分に捉われる事しばしばである。そんなことだからブログもインスタも頻繁に空転期間が空いてしまう。
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さて、相変わらず人気の続くノーチラスシリーズ。最近はステンレスだけではなく素材や機能を問わずに人気が拡大しアクアノートも含めて不人気モデルが探せない状態である。正直言って加熱し過ぎ感が強い。
当店にはレアな旅行者のお客様も国籍を問わず全く同じ傾向にある。中国本土を例とすると現在2店舗(上海、北京)が正規店舗だが、非正規も含めてもう本当に手配が絶望的らしい。人口に対しての供給量のバランスが悪いのかもしれない。
さて、今回紹介はそんなレアノーチラスの中でもレア素材であるステンレス製年次カレンダーのブレスレットモデルRef.5726/1Aで文字盤は白(シルバリィホワイト)。強いて言えば人気はグレー(ブラックグラデーテッド)の方が高いのだが3針の5711同様に若々しさや清潔感が強く別モデルに見えてしまう。
グレーに設定があるレザーストラップモデルが白文字盤には無くステンレットブレスレットのみ用意されている。またメンズではステンレス素材のみの展開はこの年次カレンダーとトラベルタイムフライバッククロノグラフRef.5990の2モデルのみとなっているのも興味深い。
ちなみに当店では少し値の張る5990の方がチョッと人気が高い。ただカラトラバケースに収まったダブルギッシェ(12時下方に左右横並びに曜日と月がレイアウト)スタイルの年次カレンダーモデルRef.5396を愛用する我が身としては親しみを感じざるを得ない可愛いノーチラスである。
でもノーチのアイコンともいえる横ボーダーと角の取れ切ったひょうひょうとした八角形の緩いケース形状(個人的には"ナマズ顔"と密かに思っチョります)に収まりますと同じ時計が此処まで違う表情になってしまう面白さ。「似て非なるもの」では無く「似ずして同じもの」と言えばよいのだろうか。
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くどい程語ってきたノーチラスの魅力"薄さが実現する装着感"、流石にフルローター自動巻きCal.324ベース(厚さ3.3mm)に年次カレンダーモジュールを積み重ねて仕上がりムーブ厚5.78m、ケース厚11.3mmは3針の5711より3mm厚くなっている。ピンが覗く調整駒の厚みは全てのノーチラス(5990でさえも)で共通であり、シリーズ最薄の3針5711は見た目(実寸は?未検証の為)ケース側まで全駒が同厚であるのだが、5726ではケース側から5コマ目あたりはテーパーしながら厚みを減じているように見える。
「たかが3mm、されど3mm・・」両者の装着感は明らかに異なる。異なるが個人的には許せると言うかノーチラスの装着感自慢を実感できるレベルに充分収まっていると思う。明らかにシリーズ最厚のRef.5990の12.53mmケース厚とは着けた感は別物になっている。
フルローター自動巻をベースとしながら、ただでさえ厚みを食う垂直クラッチのフライバッククロノグラフとトラベルタイムと言うダブルファンクションを重ねれば当たり前の事で、むしろ良くこの厚さにまとめたパテックの技術力に脱帽かと思う。勿論この事は若干薄い年次カレンダー5726ではより顕著となる事は言うまでもない。
横顔の比較写真はRef.5990の過去記事よりどうぞ。

Ref.5726/1A-010

ケース径:40.5mm(10時ー4時方向) ケース厚:11.3mm 
防水:12気圧
ケースバリエーション:SS(白文字盤) SS(グレー文字盤) SS(グレー文字盤ストラップタイプ) 
文字盤:シルバリィホワイト 夜光付ゴールド植字インデックス
ブレスレット:両観音クラスプ付きステンレス3連ブレス 抜き打ちピン調節タイプ
価格:お問合せ下さい

Caliber 324 S QA LU 24H/303

直径:33.3mm 厚み:5.78mm 部品点数:347個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

在庫状況:11月20日時点あり




一年おきに開催されるオンリーウオッチのオークションはパテックファンにはお馴染みで過去にもご紹介してきた。難病(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)の研究費捻出のためにパテックフィリップを始めとする著名ブランドが特別なユニークピース(一点もの)を製作しチャリティーオークションで競られた売上が寄付されるというものだ。
欧州には古くからノブレス・オブリージュなる言葉もあり、富める者は社会貢献の義務を・・と言う土壌がある。アメリカにもドリームを成し遂げた大富豪の莫大な寄付活動は一般的である。我が国にも立派な篤志家もいらっしゃるが金額の桁が比較にならないし、時々有言不実行?の方もいらっしゃる。むしろ災害時に駆け付ける一般庶民のボランティア精神の方が世界に誇れそうである。
オンリーウオッチ以外にもパテックフィリップは1994年からジュネーブに本拠としてChildren Actionなる世界7か国で医療・教育面等での支援活動を支えるために2005年から2年または3年おきにユニークピースを作っていたようだ。公式HPを見ていて最近初めて気がついた。勉強不足甚だしい。今年度の作品は先日紹介したカラトラバパイロットトラベルタイムRef.5524ベースのチタニウム素材モデル。英文のリリースが既に6月に発表されており、5月以降ジュネーブ・香港・ニューヨークで展示下見がなされつい先日ジュネーブのオークションハウス「クリスティーズ」監修で競られ230万スイスフラン(近日レートで約2億5800万円)で落札されている。仮に定番として市販されれば4~500万円?と推測するのでまあ凄まじい。
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公式に詳細説明があるが、過去に5モデル製作実績があり、2009年のRGトゥエンティフォー4920が18万CHF(約2千万円)、2012年のYGワールドタイムクロワゾネ5131が100万CHF、2015年年次カレンダーチタニウム5396Tが100万USDと共に1億円越えでエスカレートの一途だ。
このスペシャルピース、文字盤が変わっていて真鍮に黒色のニッケル仕上げに加えて縦に極細の筋目加工が手仕事でなされている。インデックスは18金WG植字アラビアでスーパールミノバがしっかり塗布されている。時分針は酸化処理で黒くされた鉄針。その(ローカル)時針に
隠されているホーム時針はスケルトンスタイルのスティール製、秒針はアルミニウム製で白黒ラッカー仕上げとある。
ストラップはVintage black calfskinとあって、知る限りパテックのコレクションでは初めてのエイジングトレンドが採用されている。サファイアの裏スケルトンクリスタルにはチャリティーの特別モデルである刻印「Children Action 2018」がエングレーブされている。

比売品なので商品スペック等は割愛いたします。

文責:乾



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パテック フィリップは同一デザインのペアウオッチと言うのが非常に少ないブランドだ。2015年度まではカラトラバのクルドパリベゼルが特徴的な手巻メンズRef.5119をダウンサイジングしたレディスRef.7119というズバリのペアモデルが存在した。そしてここ2年はカップルモデル根絶状態だったが、今年想像もしなかったペアウオッチの提案がなされた。
2015年に発表され、良くも悪くもパテックらしからぬ風貌でバーゼルワールドで最も話題を振りまいたWGのカラトラバ・パイロット・トラベルタイムRef.5524。賛否両論があったこのモデルは結局大人気となり今現在も品不足が続いている。このユニークなコンプリケーションにRGケースが追加素材として今年のバーゼルで発表された。特筆すべきは4.5mmサイズダウンされたパートナーとなるレディスモデルを伴っていたことだ。厳密に言えばローズゴールドの色目がレディスの方が微妙に赤く仕上げられているのだが見た目殆ど判らない。
さて、コンプリケーションとしてのトラベルタイムの歴史は既に60年近く有り、初出は1959年でジュネーブの天才時計師ルイ・コティエ氏が考案しパテックが特許取得した画期的でシンプルで操作性に優れたGMT機構。当時は1950年代に実用化が進んだジェット旅客機が一般化していった時代であり、裕福層旅行者に各ブランドからトラベル用腕時計の提案がなされていた。1957年ロレックスGMTマスター、1958年ブライトリングトランスオーシャン等が有名だが、単純な回転ベゼル機能やデザイン上でのイメージ訴求に過ぎなかった。その点においてパテックのトラベルタイム機構は画期的であったと思われる。1960年代後半から1990年代半ばまではトラベルタイムは殆ど生産されなかったようだが、スイス機械式時計の復活と共に再生産されるようになった。驚くのは初出の頃のシステムを殆どいじる事なしに現代に充分通用している事だ。
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5524カラトラバ・パイロット・トラベルタイムの詳細はホワイトゴールド5524Gの過去記事をご覧頂くとして、従来のトラベルタイムから工夫されているのがローカルタイムを1時間ずつ進みまたは遅らせるプッシュボタンのロック機構である。従来機のアクアノート・トラベルタイム等はこのプッシャー部が大振りである事もあって、時計の脱着時に意図せず押されてしまった結果の時間ずれトラブルがあった。5524ではねじ込みではないが90度回転のロック機構が備わりこのトラブルが解消されている。
顔はパイロット(アビエーション)と言うよりもミリタリー調で、スーパールミノバ(夜光塗料)がタップリと盛られた個性的なアラビアインデックスと太く武骨な時分針が抜群の視認性を生んでいる。6時側サークルの指針制カレンダーも大きくて読み取り易い。日付の調整はリューズでは無くケース外周の6時半辺りにあるコレクター(プッシュボタン)でおこなう。3時9時に振り分けられたホームとローカルタイムの表示窓はさりげない大きさながら文字盤色とのカラーコントラストで判別は容易だ。パテックのコレクションには珍しいカーフ素材のストラップは武骨すぎる事がない絶妙な太さの白いステッチが粗野にならない程度に適度なミリタリー感を醸している。文字盤はホワイトゴールド版の艶消しの均一な仕上げの濃い青とは対照的にセンターからダイアル外周に向かって濃茶にグラデーションする艶有の仕上げでローズゴールドケースの赤味と合わさってしっかり色気がある。両者の価格は同じながら好き嫌いは別にして明らかに高級感はローズにあるように思う。
尚、サイズ違いのペアになるレディースモデルに分類される7234Rは、ケースサイズは異なれども機械は全く同じCal.324が搭載されて約10%もお買い得である。外径37.5mmは小ぶり好みの日本人男性なら充分検討の余地があるサイスだと思う。

Ref.5524R-001 カラトラバ パイロット トラベルタイム
ケース径:42mm(10-4時方向)ケース厚:10.78mm ラグ×美錠幅:21×18mm 防水:30m 
ケースバリエーション:RG, WG 
文字盤:ブラウン サンバースト、ブラックグラデーテッド 夜光塗料付ゴールド植字インデックス
ストラップ:ヴィンテージ ブラウン カーフレザー クレビスプロングバックル付き 
価格:お問合せ下さい

Caliber 324 SC FUS

直径:31.0mm 厚み:4.9mm 部品点数:294個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 拘束角51°
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

在庫:お問合せ下さい




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ご無沙汰ブログとなってしまった。先日入荷した本年新作の色気ムンムンのローズゴールドケースのゴールデンイリプス。古くから建築物等に採用されてきた完成されたプロポーションである黄金比率に則ってケースデザインがなされたオリジナルイリプスRef.3546は1968年の発表。天地32mm✖左右27mmのかなり小ぶりなケースは当時としてはごく普通だった。ちなみに現行モデルは39.5mm✖34.5mmと20%以上大きくなっている。今春生産中止となったやや小ぶりなRef.3738ですら約10%大きかった。手巻ムーブCal.23-300が積まれたファーストイリプスのケース厚は判然としないがムーブメント厚たった3mmからして薄型であったことは間違いないと思う。現行モデルのRef.5738は極薄自動巻Cal.240搭載でパテックの現行ラインナップ中最薄ケース厚5.9mmを誇っている。さすがにこの薄さで裏スケルトンは厳しいのか希少なノーマルケースバックが採用されている。
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※画像はシールが貼られたサンプルを撮影
ちなみに現行モデル(レディスクォーツモデル除く)でノーマルケースバックはイリプス5738と手巻カラトラバ5196のたった2型のみである。そしてこの両者の金属製裏蓋は見事なまでそっけない。イリプスが縦筋目サテン、5196が鏡面で表面仕上されているのみで文字や数字、紋章等の意匠などが全く無い。知る限りではあるがグランドコンプリケーションの裏スケルトン仕様の永久カレンダー等に付属するノーマルケースバックもそっけない縦目サテンで無装飾。婦人クォーツの裏蓋も同様である。普通現代時計でノーマルな裏蓋にはどちらのブランドも何らかの装飾を施す事が殆どである。むしろエングレーブが深すぎたり、でっぱりが有って着用時に腕廻りに跡形がついてしまうような物も結構ある。装着感上は無装飾な方が良いので、この点でもパテックは実用性を優先しているのかもしれない。その点では実用性を最優先させているロレックスの裏蓋も手首に触れる部分が円形の筋目サテンのみになっている。
尚、これまでコバルト照射に由来するブルー サンバースト カラー文字盤のみに採用されていた18金素材のダイアルがこの黒文字盤には使用されている。現行のプラチナも含めイリプスは全てゴールドダイアルとされた。
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冒頭でも触れた薄いケースサイドの画像。このニューモデルで従来のイリプスには無かった新たな仕様が加わった。リューズの頭にカボションのブラックオニキスがジェムセットされている。今年イリプスで唯一の継続モデルとなったプラチナの5738も含め見られなかった仕様。カタログを繰る限りではメンズコレクションでリューズジェムセットはこのモデルのみとなっている。たったこれだけの装飾ながらこの時計の色気度合いをグッと引き上げている。さらに同時発表された別売のカフリンクスを併せれば完璧なフォーマルが決められるだろう。
この時計はパテックには珍しくチョッとつける人を選んでしまう大人の男専科だと思う。

Ref.5738R-001
ケースサイズ:横34.5mm✖縦39.5mm ケース厚:5.9mm ラグ×美錠幅:21×15mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RGの他、PT有り 
文字盤:エボニー ブラック サンバースト 18金植字インデックス 18金製文字盤
ストラップ:シャイニー(艶有) ブラック アリゲーター

Caliber 240

直径:27.5mm 厚み:2.53mm 部品点数:161個 石数:27個
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

2018年9月27日現在 在庫についてはお問合せ下さい。

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来る9月頭にパテックフィリップ展を開催します。今年度の新作も含め約70点以上をご用意し、50点程度を展示致します。人気モデルの素材違いや文字盤違いを一度に見較べられるまたと無いチャンスであり、普段はあまりご紹介出来ないレディスモデルやカフス等も沢山ご覧いただけます。是非この機会をお見逃しなくご来店下さいますようお願い申し上げます。

日時:2018年9月1日(土)・2日(日) 11:00-19:00
場所:カサブランカ奈良 2階パテック フィリップコーナー

※ご覧になりたい気になるモデルの出品の有無についてはお気軽にお問合せ下さい。

出品モデルをピックアップでご紹介 

ゴールデンイリプス Ref.5738R-001 2018新製品
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1968年デビューするや一躍当時のパテック フィリップを代表するアイコンウオッチとなったゴールデンイリプス。今年は50周年のアニバーサリーイヤーでレギュラーサイズのRef.3738が全て生産中止となり、40周年の2008年にプラチナ素材でデビューした大振りなRef.5738サイズのローズゴールドがラインナップされた。自動巻ムーブメント搭載ながら厚さ5.9mmは現行全ラインナップで最薄となる。少しマット調のブラック文字盤とローズの組み合わせはとてもシックで大人の色気が漂う逸品だ。→PP公式詳細ページ 関連記事(3738/100J-012

年次カレンダー Ref.5205G-013 2018新製品
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モダンな顔の年次カレンダーRef.5205のホワイトゴールドケースは今年人気のグレー系ダイアル2モデルが生産中止となり、根強いトレンドカラーとなったブルー系の濃紺文字盤が新たにラインナップされた。今年スイス・バーゼルで初対面を最も期待したモデル。文字盤の内側サークル部はネイビーカラーがグラデーションしているように画像では見えるがソリッドな一色である。深みの在る青から濃紺のダイアルは従来プラチナモデルへの採用が多かったが、今年はこのモデルを含めホワイトゴールド素材でグランドコンプリケーションやノーチラスにも新製品投入がなされた。まさに旬なトレンドモデルである。→PP公式詳細ページ 関連記事(5205G-0105205R-010

年次カレンダーレギュレーター Ref.5235G-001
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こちらは殆ど入荷のないとてもレアなモデル。 センターに分針を置き、オフセンターに時針と秒針を別々に配置する特殊な針使いでレギュレーター(標準時計)タイプと呼ばれている。他の時計の時間合わせの際に基準とされる時計で、非常に正確無比で調整が良くされたムーブメントが搭載されなければいけない。昔の時計屋さんには必ずあったものだ。当店一階エントランス脇にも非常に正確で一ヶ月巻きにして月差数秒精度の機械式掛け時計(独アーウィン・サトラ―社製メタリカ1735)があって、その顔もレギュレーター仕様でシルバー文字盤なのでどこどことなく5235Gに似ている。ただ実際の時刻合わせの為の標準時計には国産の電波時計を使っている。尚パテックのコレクションでレギュレーター仕様と言うのはこの5235Gが唯一であり、パテックコレクターには必須所有のモデルである。→PP公式詳細ページ 紹介記事

カラトラバクンロク 5196P-001
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当店スタッフのI君が2015年6月のパテック取扱い開始以来ずっと個人的に渇望し続けているモデル。こちらも相当にレアな時計でご注文以外の店頭仕入は困難なモデル。そもそもプラチナ素材モデルの生産数そのものがとても少ない。解り易い飛び道具(複雑機構)が顔を飾っている訳でもなく、ダイア等の石付宝飾系でも無い。行儀の良いアラビックなアワーマーカーと同色系シルバーのツートーンでシンプルにまとめられた文字盤からは貴金属よりもむしろステンレスケースが似合うのではとさえ思ってしまう。現行パテックには珍しいソリッドメタルのノーマルケースバックの装飾の無いツルンとした仕上げも素朴で控えめな印象を受ける。わかる人だけに向けたさりげない超高級なシンプル時計が5196P。→PP公式詳細ページ紹介記事

レディスムーンフェイズ Ref.7121J-001
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先日ご紹介したばかりの夏向けレディスコンプリケーションウオッチ7121J。今や18金と言えばローズやピンク、そしてレッドゴールド等様々な名称で呼ばれる赤味の強いものが圧倒的。従来からのイエローゴールドはまるで絶滅危惧種のような扱いだけれどもパテックはメンズもレディスも正統でクラシカルなモデルにはYGの品揃えが残されている。何代にも引き継がれるタイムレスな時計ブランドは一時の流行り廃りに振り回されず一線を画すと言う事だろう。→PP公式詳細ページ 紹介記事

この他にも魅力的なパテック フィリップ コレクションを多数ご用意してお待ちしております。尚、出品内容は都合により変更する事が有ります。

文責:乾


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今夏の異常気象は本当に厄介だ。予想外地域への地震、記録破りの大雨に一転しての酷暑、そして逆走台風。被災された方々は本当にお気の毒。心よりお見舞いとお悔やみを申し上げます。
相方の出が広島県。しばらく断水で難儀を強いられた血縁もいた。また百貨店部門は愛媛の松山市にあって直接被害等は無かったが県南部(南予)は報道が少ないものの結構な被災をされており、地縁と血縁強固な地方特有の事情もあって経済的影響も色々出ている。
そんな過酷な日々ながら奈良県北部の大和盆地は本当に災害が少ないエリア。日本最初の都に定められた天命を災害の報を聞くたびに強く思う。

さて、この時期は少しでも凉を感じられるモデルを紹介したい。それでいて夏色感もあるレディスコンプリケーションがRef.7121J-001。コンプリと言っても本当にプティ(小さい)コンプリでムーンフェイズ(月相)しか付いていない。実用面から言えばカレンダーの方が必要なはずだが、月の満ち欠けなどと言うロマンティックな表示が優先されているのはいかにも乙女時計らしい。
ちなみにメンズには全くラインナップされていないムーンフェイズのみという乙女時計仕様はレディスでもう一型Ref.4968があり素材やブレス違いを含めると2型で5つもバリエーションがある。
現在でこそ永久カレンダーを始め手巻きクロノグラフ、年次カレンダー、ワールドタイム、トラベルタイム等でパテックに於けるご婦人用のコンプリケーションウオッチは百花繚乱と言えるが、それはここ10年位の話でそれ以前から長きに渡って作られて来たレディス用のコンプリケーションはシンプルムーンフェイズモデルだった。
スイスでは永久カレンダー(1800年頃)よりも古くから搭載された機能で、当時は航海や狩猟、漁猟に欠かせないものだった。月齢の周期は29日12時間44分。これを29.5日として59日で2個の月が描かれたムーンフェイズディスクを一周させている。0.5歯という歯車を刻めないので倍数処理されたわけだ。
ただ、その周期だと数年で調整が必要な誤差が出てしまう。パテック フィリップを始め現代の高級時計の標準的なムーンフェイズは、複雑な歯車機構により構成されており122.6年掛けてたった1日分の誤差が蓄積して要修正となっている。前言撤回でPetitとは言えない立派なコンプリケーションだった。
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針の形状はユニークだ。ちゃんと名前が有って"スペード針"と言われている。分針が途中でくびれていて女性のセクシーなボディーラインの様に見えなくもないが、スペードの形状を限りなく伸ばした形でメンズウオッチにもこの針はそこそこ採用されている。ブレゲ数字インデックスとの相性がとても良い。
女性向けムーンフェイズの特徴の一つはムーンフェイズディスクだけでなくスモールセコンドと供用されているサークルの未開口部分にもお星さまが装飾としてプリントされている事だ。これもメンズでは見られない乙女仕様か。
ケースは腕時計黎明期を思わせるオフィサー(将校)スタイルのユニークなラグ形状。女仕立てにすると結構可愛らしい。ベゼルには0.52カラットになる66個のダイアモンドが輝いている。あまり知られていないがパテックのタイムピースにはデビアス社のトップウェッセルトン・ダイヤモンド(クラリティIF及びFLのみ)が使用されていて極めて質が高い。そしてジェムセッティングは実用性を重んじるパテックらしく滑らかな表面を意識し、衣類の袖口の繊維が引っかかったりしない手法が採用されている。
ストラップはMatte pearly beige alligator。パーリィとあるように車のパール塗装の様に光沢があってとても上品。暖色系の色目ではあるが、薄めのサンドカラーに光沢感が効いて涼しさを感じさせる夏時計に仕上げられている。

Ref.7121J-001 レディス コンプリケーション ムーンフェイズ

ケース径:33.mm ケース厚:8.35mm ラグ×美錠幅:16×14mm
防水:3気圧 66個のダイア付ベゼル(約0.52ct.)
ケースバリエーション:YGのみ 
文字盤:シルバリィ グレインド 18金植字ブレゲ数字インデックス
ストラップ:ハンドステッチのマット(艶無)パーリィベージュアリゲーター
      18KYGブレスレットのバリエーション有り
価格:お問合せ下さい
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少しでも涼し気な印象に出来ないかとフォトショップでチョッと悪戯。ムーブメントNoもあり得ないくらいラッキーな・・・不変の長命ムーブメントCal.215。人生もこうであって欲しいナァ!

Caliber:215 PS LU

ムーブメントはパテックを代表する手巻キャリバー215にスモールセコンドとムーンフェイズを組込んでいる。2006年に発表されたシリコン系素材Silinvar®「シリンバー」採用の革新的なSpiromax®スピロマックスひげゼンマイが搭載されたことで耐磁性と耐衝撃性が格段に向上している。まさにパテック フィリップの哲学"伝統と革新"を体現した頼もしいエンジンが搭載されている。

直径:21.9mm 厚み:3.00mm 部品点数:157個 石数:18個 
パワーリザーブ:最短39時間-最長44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2018年7月31日現在
7121J-001   店頭在庫有ります
関連ブログ:着物でパテックフィリップ、ショパール(2017/8/29記事)





2018年のパテック フィリップカタログに掲載されるモデル数は181本。これを無理やり主観的に機能別で分類すると下記の様になっている。
20180629_4.jpg複数の機能を併せ持つモデルがあるため181モデルが216に膨れている。パーセントはあくまで181モデルを分母としてある。"コンプリにあらねばパテックにあらず"の様に捉われがちだが半分弱はシンプルな2・3針モデルで構成されている。そしてコンプリでは永久と年次のカレンダー系とクロノグラフの比率が高く合計で50%を超えている。ただクロノグラフには一般的ではないスプリットセコンドのモデルが7型含まれるので、年次カレンダーこそが現在のパテックを代表するシリーズと言えそうだ。
当店の店頭在庫においてはカラトラバやゴンドーロのシンプル系が大変充実すると共に年次カレンダーとワールド/トラベルタイムも良く揃っている。特に年次カレンダーは代表3Ref.の5146、5205、5396に加えて、滅多に入荷しないレギュレーター仕様のRef.5235Gや生産中止ながら希少なステンレスブレスのフライバッククロノ搭載のRef.5960/1A黒文字盤等の6モデルが横一列に並んでいるのは中々圧巻。
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Ref.5205G-010年次カレンダー
詳細は過去記事からご覧頂くとして今年度ディスコン発表がなされた一本。インデックスも針も12時の窓も凄くエッジが効いていてツートンの文字盤カラーも実に渋い色目で都会的な風貌。アバンギャルドと言うフレーズがこれほど似合う時計も珍しいのではないかと思う。

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Ref.5960/1A-010 フライバッククロノグラフ年次カレンダー
詳細は6月の記事及び文字盤色違いモデル紹介過去記事からご覧頂くとして。スポーツシリーズ(ノーチラス&アクアノート)以外で唯一だったメンズステンレスモデル。たった一年でディスコンになった希少デッドストック。正直なところ白文字盤のデビューが印象的過ぎたからかブラックダイアルの人気は今一つだった。短命に終わった理由かもしれないが、スポーティな時計の顔は基本的に黒なので先に黒が出ていれば全く人気度合いは異なっていたかもしれない。結果的黒文字盤の個体数は相当少ないのではないだろうか。

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Ref.5205R-010 年次カレンダー
過去記事より詳細は見て頂くとして・・現行パテックで一番色気が際立っているモデルだと思う。良く似たモデルに超絶系の5208Rやダイア付の5961Rがあるが色々と凄い物を着込んでいるのでセクシーではなくてどこまでもゴージャスな世界。5205Rはストイックに引き締められた体躯と健康的に色づいた肌でこそ存在感が際立つ色男時計。

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Ref.5235G-001 年次カレンダー・レギュレーター
展示会用貸出サンプルとして来たことが無いので、PPJにサンプルがあるのか無いのか?すら分からないモデルの一つがこちらレギュレータータイプの年次カレンダー5235G。つい先日の記事から詳細はどうぞ。
今年発表のニューモデルで断トツ人気の一番がノーチラスの永久カレンダーWG、二番目がアクアノートジャンボのフライバッククロノグラフSSだと思われる。この2点のサンプルも恐らくどの正規店の展示会場にも並ばないと思われる。あまりにもご注文が多い人気モデルは熱が冷めて落ち着くまで追加オーダーを出来るだけ避けるために未出品となる。数年後にこの新作2モデルがどうなっているかは予想がつかないが、定番でもずっと展示会を欠席し続けているノーチラスやアクアノートのSS系はそれなりの数が製造されている。にもかかわらず熱が冷めるどころか益々加熱しているので永久欠番になりそうだ。
パテックコレクション唯一のレギュレーター5235Gにそこまでの人気は無い。どちらかと言えば通好みであり、個性的な顔は好き嫌いもあろう。もちろんネットで騒がれる事もお問合せを始終頂くわけでもない。しかし展示会を毎回欠席するのは生産が非常に少なく供給が不安定な為である。理由は恐らくアドバンストリサーチがらみの前衛的な素材を心臓部である脱進機廻りに採用しているためだろう。直ぐにブランドがわからない方が良い方や人と被るのが嫌な方にお勧めの一本。

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Ref.5396R-011 年次カレンダー
運命のいたずらで我が愛機となった5396R。たぶんあの事件が無ければ未だにこの価格線のパテックを手にしていたか怪しい。はぼ3年愛用しての感想は本当に飽きの来ない顔だなと・・4つのプッシュコレクターによるカレンダー合わせは好き嫌いが有りそうだ。自分自身でもムーンフェイズは合わせず着用も多い。ご面倒な方にはクロノグラフ搭載の5960系やレギュレーターの5235等のお月様無しの方が使い勝手が良いかもしれない。まあ正装における蝶ネクタイのようなものなので・・

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Ref.5146G-010 年次カレンダー
今は無き大原麗子さんがサントリーCMのセリフに「少し愛して、長~く愛して!」と言うのが有ったが、この時計を見る度にこのセリフを思い出してしまう。
パテックの年次カレンダーは1996年にRef.5035でデビューした。ダイアルレイアウトはそれまでに在りそうで無かった3カウンターで、あまり押し出しの無い地味な印象だった。正直なところまさかこの顔がマイナーチェンジを受けつつ現行のRef.5146に脈々と受け継がれながら超ロングセラーになろうとは思いもしなかった。年次機能が時代にマッチしていた事がロングライフの最大の理由だろうが、パテックらしいある意味そっけないが厭きない顔つきが良いのだとしか思えない。まああと2つの顔がクラッシックな5396、アヴァンギャルドな5205なので年次専用でルーツでもあるこの顔は今後も無くせないような気がする。

まさか大阪での地震に続いての未曽有の豪雨災害。どうも東日本大震災頃から日本列島はあまりにも頻繁に災害に見舞われている気がする。そんな中でも当店の有る奈良県北部は地震も噴火も洪水も・・本当に災害が少ない。さすが1300年前にこの国で初の都と定められただけの事はある。ただたった70数年でその座を京都に譲り渡してからは、ほぼ時間の流れが止まったかのようで住処とするには安全で良いのだが商売っけが無いと言うか、危機感が欠如していると言うか、いらちな大阪生まれ育ちの我が身も此処数十年でそんなリズムに染まってしまった。思いっきりユッタリのんびりと時計を見て楽しんで頂ける空間である事は間違いございません。

文責:乾

腕時計の商品寿命は比較的長い。使われ方次第ではあるが半永久的とも言える(オーナーの元で愛用される)製品としての寿命では無く、我々流通業者が販売をする期間であるデビューから生産中止(ディスコン)までの店頭での販売期間の方の寿命である。時計ビジネスに携わり始めた30年程前より今の方がどのブランドも少し短めになった気はするけれども・・
もちろんパテック フィリップのタイムピースにもこの寿命はあって感覚的ながら長い物は十数年、平均は5年から7年くらいか。短いものはたった一年という短命モデルもある。パテックでは同一モデルの年間生産数はある程度決まっているので寿命が短ければ短いほど市場投入された個体数が限られる。オークションにおけるアンティークウオッチの落札価格がその希少性によるところが最も大きいのは明らかなので、将来のお宝度合いは数量限定モデルの次に来るのが短命モデルと言う考え方も出来る。
本日ご紹介は既に文字盤違いや素材違いで取り上げ済みながらもそんなお宝2点。共通点は今年生産中止発表後に入荷してきた事と短命モデルだった事だ。
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Ref.5710R-001は2016年デビューから2年しか生産されなかった手巻きクロノグラフ。商品詳細は紹介済みの5170G-001(廃番)及び5170P-001(唯一の現行)をご覧いただきたい。ローズゴールドの優し気な色合いに暖か味の有るクリーム系の文字盤上に2カウンターの目玉、このクロノグラフ実にあっさりスッキリしている。ブレゲ数字がカジュアルさを演出するので、さりげなく普段使いという究極に贅沢な一本だと思う。

Ref.5170R-001
ケース径:39.4mm ケース厚:10.9mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RG、PT
文字盤:シルバリィ オパーリン ゴールド植字ブレゲ数字インデックス
ストラップ:手縫いシャイニー(艶有)チョコレートブラウンアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
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Caliber CH 29-535 PS:コラムホイール搭載手巻クロノグラフムーブメント
直径:29.6mm 厚み:5.35mm 部品点数:269個 石数:33個 受け:11枚 
パワーリザーブ:最低65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

2018年6月18日現在 店頭在庫あります。価格はお問合せ下さい。

もう一点はわずか一年で今年ディスコンとなったRef.5960/1A-010年次カレンダー搭載フライバッククロノグラフ。昨年まで人気を博した白文字盤5960/1A-001と入れ替わりでデビューしたばかりの黒文字盤。いづれもがスポーツ系のノーチラスとアクアノート以外ではパテック フィリップ唯一のメンズステンレスモデルだった。昨今ノーチラスとアクアノートのスポーツ系の人気が凄すぎて、我々も含めてパテックのステンレスモデルは当たり前の様な錯覚をしているがスポーツシリーズ以外にステンレスモデルは現行でラインナップが無くなってしまった。逆にRef.5960のステンレスバージョン誕生が例外的だったと言うべきで、限定などを除いてステンレスは殆ど作らないブランドがパテックである。その意味でこのディスコンモデルの希少性はとても高い。
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センターローターに垂直クラッチ、さらに年次カレンダーモジュールを組み込めば流石に厚みはそれなりとなる。画像は使い回しですみません。
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Ref.5960/1A-010 年次カレンダー自動巻きクロノグラフ

ケース径:40.5mm ケース厚:13.5mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:SS、WG
文字盤:エボニーブラックオパーリン ゴールド植字バーインデックス
ブレスレット:両観音クラスプ付きステンレス5連ブレス 抜き打ちピン調節タイプ 

ムーブ画像も使い回しです。
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Caliber CH 28-520 IRM QA 24H:年次カレンダー機構付きコラムホイール搭載フルローター自動巻フライバッククロノグラフムーブメント

直径:33mm 厚み:7.68mm 部品点数:456個 石数:40個 受け:14枚 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

2018年6月18日現在 店頭在庫あります。価格はお問合せ下さい。


文責:乾

カラトラバ5196P

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今月はユニークなレアモデルが連続で入荷してくる。前回の年次カレンダーレギュレーターRef.5235と同様に展示会サンプルが無い(来た事が無い)手巻きカラトラバのクンロクケースのRef.5196P。モデル的にはパテックを代表するシンプルウオッチの極みでどちらの正規店でも最低一本は何色かの18金モデルが並んでいるド定番。ところがプラチナは製造数が極めて少ないらしく入荷予定が全く読めないレアモデルとなっている。
上の画像でリーフ針とブレゲスタイルのアラビアインデックス、さらにベゼルもほぼ黒に見合える。だが、ラグを見るとケースはポリッシュ仕上げされており撮影時にブラックアウトしたものと判る。
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角度を変えて実機に迫って撮るとブラックアウトするもののだいぶ印象は変わる。ともかくこの仕様は撮影が困難なので実機を見るに限るが、殆ど並ばないので今は"チャンス!"
6時の真下にはケースにラウンドダイアモンドがプラチナ製である証として埋め込まれている。これは現会長のフィリップ・スターン氏が1970年代にご自分のプラチナウオッチにカスタムで埋め込んだものが社内で評判になり標準仕様となったものである。
さて、この少しノスタルジックな文字盤は完全な復刻デザインである。カラトラバ初号機Ref.96がリリースされた1932年のわずか6年後の1938年から1960年代にかけて長く製造されたRef.570の40年代の代表的な文字盤だったようだ。
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右のプラチナ製は1992年にパテック社によって文字盤交換されているミュージアムピースで、針もインデックスも18金製で極めて現行の5196に近い。それもそのはずで注釈に2004年バーゼルでのRef.5196デビューの際の原型と説明されている。機械は当時の手巻きCal.12'''-120。厚さ4mm、直径26.75mm。現行のCal.215と比べると1.45mm厚く、4.85mmも大きいがケース径は35~36mmとわずかに小さい。厚みは現代の方が若干薄い。まあ当時は薄く小さくを心掛けたムーブを素直に頃合いのケースで包み込んでいた時代だったと思われる。今気づいたが1940年代初頭と言うのは第二次世界大戦の戦時下である。アラビアインデックスの採用には影響が有ったのかもしれない。
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久々に撮るソリッドな裏蓋。現行のほぼすべての機械式モデルが裏スケルトン仕様であるパテックコレクションの中で、正に希少なノーマルケースバックモデル。今年40周年のアニバーサリーイヤーを迎えたゴールデンエリプスの定番2型(RGとPT)とこちらの5196のみの特別仕様?になっている。
僅かに空気が入ったかのような保護シールもスケルトンモデルには無い特別感?が・・・
ラグの裏4か所には、下のピンバックル裏側と共にPT950のホールマーク等がしっかり刻印されている。
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イエローゴールドモデル紹介時にも撮ったサイドビューを再撮影。個人的には最もパテックを代表する優美なフォルムだと思っている。リューズ左下側の不自然な修正はフォトショギブアップしました。修行の一環と言う事で・・
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18金モデルのバーインデックスに較べてアラビアインデックス+2トーンカラーダイアルの組合せは上品やエレガントと言うよりも遊び心が有って個性的である。それを敢えてプラチナケースでやると言うのがパテックの余裕。決して万人受けするモデルでは無いと思うが、一目惚れの人には堪らない魅力を感じさせる一本に違いない。

Ref.5196P-001

ケース径:37mm ケース厚:7.68mm ラグ×美錠幅:21×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:PTの他にYG,WG,RG,
文字盤:ツートーンシルバリィグレイ ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター
価格:お問い合わせください

Caliber:215 PS

ムーブメントはパテックを代表する手巻キャリバー215PS。構成部品たった130個の完全熟成の名機に2006年に発表されたシリコン系素材Silinvar®「シリンバー」採用の革新的なSpiromax®スピロマックスひげゼンマイが搭載されたことで耐磁性と耐衝撃性が格段に向上している。まさにパテック フィリップの哲学"伝統と革新"を体現した頼もしいエンジンである。

直径:21.9mm 厚み:2.55mm 部品点数:130個 石数:18個 パワーリザーブ:44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2018年5月20日現在
YG 5196J-001 店頭在庫有ります
WG 5196G-001 お問い合わせください
RG 5196R-001 お問い合わせください
PT 5196P-001 店頭在庫有ります

全国のパテック フィリップ正規店で開催されている年数回の展示会。皆様も足を運ばれている事と思う。いつもはどの店頭にも20~30点程度の在庫陳列が、この時はパテック フィリップ ジャパン(PPJ)からの貸出サンプルで、多ければ時計だけで70点以上の展示にもなる。
ところが絶対に並ばないモデルがあって、いわゆるP.O.R.(Price on riquest:価格はお問い合わせください)要するに"時価"モデルは並ばない。そもそもPPJにもサンプルそのものが無い。たぶんスイスパテック社には何セットか知らないが用意されていて普段はジュネーブのローヌ通りの本店サロンでなら場合(人?)によっては見られるのだろう。
一般的に展示会で見られないモデルと言うのは簡単に買えない。少し嫌な言い方をすれば、誰にでも売ってくれない特殊な時計と言える。縁が無いので良くは知らないが、車ではロールスロイス、ブガッティ、マクラーレン、ランボルギーニ、フェラーリ、ポルシェ等でも一部の特殊なモデルはいきなりは買えないと聞く。
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ところでパテック以外にこのような販売制限をしている時計ブランドは他にあるだろうか。
普通にカタログに載っていて、数量限定でもなく買えない時計・・需給バランスの崩れからグレーマーケットでプレミアがつくノーチラスSSやデイトナの様な代物という訳でもなく・・在りそうで思い当たらない。
2018年の新製品記事でも紹介したレアハンドクラフト(希少な手仕事作品)群も普通には買えないのだが、これらは元々カタログアップされないし、通称ワンショット(超少数の生産数を作り切って、また翌年新たに提案)なので、少し性格が異なる。
さて、それではカタログに掲載されていて価格が明記されているモデルなら誰にでも買えるか?ごく一部の例外を除けば買える。今現在の例外とはRef.5131/1P-001ワールドタイムプラチナブレス・クロワゾネで購入は相当難しい。それ以外は人気度合いでいきなりだと厳しかったり、各販売店がVIP顧客のご要望を消化し切れずに結果として一見のお客様にはハードルが高くなっているモデルもある。でも、たったの数点にすぎないと思う。

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今日はずいぶんと前置きが長くなってしまった。今回ご紹介のRef.5235G-001は上記のような各諸事情により買いにくいのではなくて、単純に入荷が極端に少ないモデルだ。当店でもPPコーナーオープンから3年弱で初入荷した。もちろん計画的な入荷予定として案内されたものでは無く、突如打診があってのイレギュラーな仕入だった。
冒頭で触れた展示会用サンプルとして、このモデルは過去一度もやって来た事が無い。PPJスタッフ曰く「あまりにも入荷が少なく不規則なので、下手にご注文をお受け出来ない」
なぜそんな事になるのか?その辺りをつらつらと考えながら本稿を進めたい。

この時計、実に不思議な顔をしている。レギュレーターウオッチと言うのは普通カレンダーが付いている印象が無い。改めて画像検索すると日付カレンダー付と言うのはそこそこあるが、月、曜日を含むトリプルカレンダーと言うのはまず見当たらない。
パテックのこの時計の場合は年次カレンダーをレギュレーター仕様のダイアルレイアウトにしているのでトリカレと言う事になるが、Ref.5205の様に12時側弓状に三つ窓にせずに真反対の6時位置に日付窓としている。時間表示インダイアルのスタート位置に大きな窓を開けたくなかった気分はよくわかる。そしてミニット用の外周レールもユニークで、6時側インダイアルがスモセコ表示なので、似た感じのカラトラバオートマRef.5296のトリプルサークルの様に秒刻みがレールに無く分刻みだけのスッキリ仕様となっている。
そもそもレギュレーターとは日本では"標準時計"と訳される置・掛時計の事であった。祖父の代から時計を商う当家にも機械式の掛け時計で振り子が見えるガラス窓部分には縦書き金文字で"標準時計"と書かれたクロックが実家の居間にはあった。
1969年にセイコーが水晶振動子による正確無比なクォーツ時計を販売するまでの機械式時計主役時代には、時計店は最も正確な掛け時計を標準時計に定め、時計が売れた際にはその時計で時刻合わせをして納品をしていたと聞かされた。現代では電波ソーラーの目覚ましなどがその役を担っている。ちなみに百貨店は電波受信器を持ち込んでいない限り電波は受信できない。GPSはもっと入らない。WiFi接続中のスマホが多分一番正確だろう。

尚、当店一階入り口脇には非常に正確な標準時計仕様のエルウィン・サトラ―社(独:ERWIN SATTLER)製の機械式掛け時計を掛けてある。一ヶ月と言う超ロングパワーリザーブで月差数秒という優れもの、気圧変化による振り子の空気抵抗の影響を補正する装置が付いていて本当に正確極まりない。ご来店の際には是非自慢話を聞いてくださいナ。
クロノスイスなどの様にレギュレーターと言う3針(時、分、秒)独立表示を好んで作るブランドもあるが、普通はあまり作られる事は無い。パテックもこの1モデルのみであり、知る限りオークションニュースでも見た記憶は無い。さらにこのモデル変わり者づくめで、まず文字盤のロゴ表示がただ彫っただけで無着色である。上の画像は何気なく撮って、それなりにロゴが読めるが光線の具合によっては殆ど読めない。
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横着して上画像を拡大加工してみた。文字盤表面の天地方向の筋目装飾に対して、単純に彫られただけのロゴマーク底部分の表面感の違いで何とか読み取れるが、光の具合次第で本当に見づらい。入荷時にはひょっとしたら着色忘れの世界に一点のユニークピースが点検漏れで着荷したのかと喜んだが、これが純正仕様だった。おそらくこの不思議な仕様も時刻の読み取りを最優先するのがレギュレーターの使命と考えたパテック流の解釈だろう。個人的にはレール同色の紺色シリコン転写が無難かと・・
カタログ等ではこのロゴはブラックにしか見えない。またサーキュレート(同心円筋目彫り)されたインダイアルと縦筋目彫りされた文字盤とはかなりコントラストが実物にはあるがカタログでは微妙な色差しかなく、この時計は絶対に生で見ないと駄目だ。但しこの顔の好き嫌いはハッキリあるだろう。どちらかと言えば日常用と言うよりはコレクション向きかと・・でも見どころと語りどころはまだある。

不可思議は裏側にも存在する。マイクロローター自動巻きなのでCal.240?と思うが、少し見慣れた方なら妙な違和感を感じるハズだ。そう受けの形状がかなり違うのだ。その前にムーブメントそのものが240より大きい。下に画像(12時上)を加工して並べてみたら他にも相違点は沢山あって22金ローター自体のサイズは同じようだが輪列、テンプ、ローターと全てレイアウトが違っていて当然受けもかなり異なっている。まあCal.240は構造的に小秒針が5時位置にしか付けられないので正統なレギュレーター仕様である6時スモセコにはならない。さらに通常センターに置かれる時針を12時側にインダイアル表示させる必要もあってパテックの開発陣はCal.240の良さを残しつつ完全にニューキャリバーを数年かけて開発した。

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この新規ムーブメントの最大の注目点は前衛的なPalsomax®脱進機の搭載である。パテック社の技術革新のフィールドテストモデルであるアドバンストリサーチプロジェクト3部作(2005~2008年)で完成された髭ゼンマイ、アンクルとガンギ車の全てにシリコン素材のSilinvar®が採用されている事だ。そして3.2Hz(23,040振動)という実にけったいな振動数は、理屈は解らないがこれら新素材によってもたらされたものだ。またマイクロローターのベアリング素材も微小なジルコン・ボールに変更されている。さらに輪列のエネルギー伝達での摩擦ロスをたったの3%に抑えるため歯車には全く新しい歯型曲線が開発採用されている。これらの相乗効果がこのムーブの耐久性を高め、結果的にはメンテナンス期間の長期化をもたらしている。さらに通常パテックが盛り込まないハック(秒針停止)機能が、レギュレーターならではの必要性から搭載されている。
尚、上のムーブメント画像でそれぞれの厚みは年次カレンダーと永久カレンダーのモジュールを含めての厚みである。実際のベースキャリバー厚はそれぞれ2.6mmと2.53mmでたったの0.07mmの違いしか無く、この厚みもローターを若干厚くした事に由来するので新規開発のCal31-260は充分に極薄自動巻キャリバーでありながら非常に先進的で意欲的なエンジンであると言える。恐らくこの特殊で唯一無二のムーブメントの製造が小ロットで気まぐれ?な為に入荷がイレギュラーで滅多にお目にかかれない原因だと思っている。
hallclock_600.pngレギュレーターが必要とされたのは18世紀初めに遡る。当時は大航海時代で安全な航海には高精度な航海用時計(マリンクロノメーター)が欠かせなかった。この時計つくりには当時イギリスがリードしていたが、その製造やメンテナンスの為に非常に正確で安定した精度を出せる基準時計=レギュレーターが必須であったのだ。かつて1900年代前半にはパテックでもレギュレータ―の懐中時計が存在したが、腕時計としては2011年のこのRef.5235Gまでアーカイブが無い。ただホールクロック(床置き時計)タイプはパテック社内で普通に利用されていたようであり、実際名誉会長フィリップ・スターン氏の執務室に置かれていたレギュレーターホールクロック(左)から今回のタイムピース5235はインスパイアされている。ただクロックタイプの標準時計は秒針が12時側にあって、時針インダイアルは6時側にレイアウトされているものが大半である。腕時計ではRef.5235を含めブランドを問わずレイアウトが逆転し秒針は6時側となっている。ちなみに左のクロック文字盤には PATEK PHILIPPE & Cie. GENÈVE とあるが、どこかのクロック専業メーカーにオーダーしたものか自社製なのかは記載がなく不明である。
ケースサイドは文字盤同様のヘアラインのサテン仕上げで時計そのものを渋くクールな印象にしている。厚みはマイクロローターのおかげで通常の年次カレンダーより若干薄い10mmとなっている。
レギュレーター表示を邪魔するだけなので他の年次カレンダーモデルには標準仕様の月齢カレンダーが、このモデルには無い。結果的にカレンダー調整用のプッシュボタンは一つ減って3個である。その為に一般的な年次カレンダーでは4個のボタンをケース両サイドに2個ずつ振り分けているが、Ref.5235では9時側サイドに3個まとめて収められている。下画像で一番左の"月"は良いとして真ん中が"日付け"で右が"曜日"が紛らわしい。人間工学的には文字盤のディスプレイ通りに真ん中が曜日で右が日付だととても使い勝手が良いのだが・・さすがに メイド イン ヨーロッパ ですナァ
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最後にバックルも普通ではなく、特別なエングレーブ仕様になっている。レディスの装飾性の強いモデル等でPP銘入りバックルはたまにあるが、シンプルなカラトラバケース仕立てのメンズモデルでは極めて異例である。
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個性的ではあっても正統で奇をてらわないデザインでありつつ人と違ってかぶらないパテックを望まれる方にはピッタリな1本だと思う。

Ref.5235G-001年次カレンダー(レギュレーター)
ケース径:40.5mm ケース厚:10mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGのみ
文字盤:ツートーン シルバリィ バーティカル サテンフィニッシュド、青転写インディケーション
ストラップ:シャイニー(艶有)ネイビーブルーアリゲーター 
バックル:PP エングレーブド ピンバックル

Caliber 31-260 REG QA
直径:33mm 厚み:5.08mm 部品点数:313個 石数:31個 受け:10枚
パワーリザーブ:最低38時間~最大48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
脱進機:パルソマックスPalsomax® アンクル、ガンギ車共にSilinvar®製
振動数:3.2Hz 23,040振動
ローター:22金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

在庫:4月24日現在 店頭在庫あります。

参考:Patek Philippe Internaional Magazine Vol Ⅲ No.4 P.18-23

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今春から始めたインスタグラム。これも忙しさにかまけていると投稿が滞りすぐ忘却されそうになる。人材募集に応募してくれる若い人が勤務初日からみんな結構いい感じで記事をUPしてくれるのだが中々長続きせず寸暇を惜しんでやる羽目になっている。
それでもノイズレベルに過ぎないヨチヨチインスタを見て大阪からわざわざ近鉄電車と徒歩でやってきた中国と韓国の国際結婚カップルが当店初のパテックのインバウンド販売となったのだから馬鹿に出来ない。ちなみにインバウンドは英語らしいが彼らには全く通じなかった。

さて、前回に引き続き新製品ネタながら一般にはあまり取り上げられないレアハンドクラフトという手作業による伝統的な装飾が施された時計達を紹介したい。
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この4点は全てミニットリピーターでオフィシャルページ上の動画にも全く登場しない為に現場に足を運ばないと絶対に見られない代物。左2点はクロワゾネ(有線七宝)、右2点は手動の機械を用いて彫られた規則性のある同心円状のエングレーブの上から釉薬を掛けたフランケと呼ばれる技法。さらに花と枝の部分は木象嵌も使われているようだ。素材確認は失念したが時価価格は恐らく5000万円以上はするだろう。右2点はもっとする。
今画像を見直して興味深いのは針のポジション。普通パテックのサンプルピースは、10時10分に針止めがお約束なのに見事にバラバラである。右2枚を見れば描かれたモチーフに合わせているという訳でもなさそうだ。ひょっとしたら針止めをしていない実機なのかもしれない。
下の左2枚は動画でも紹介されているクロワゾネのポンテベッキオ橋(レディスとメンズモデル)。右は木象嵌のゴールドフィンチ(ごしきひわ)。右端はその象嵌に使用される着色木片の微細なパーツ。
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ポンテベッキオ橋の2枚はアルノの川面の色とブランドロゴカラーが決定的に替えてあるが、その他はほぼ同じ色目で仕上げてある。これらも針のポジションの統一感は無い。木象嵌は右の破片をジグソーパズルのようにはめ込んでゆくのだろうが、あまりにも細かすぎて工程が想像できない。
全て視認性を上げるために、ムーブメントは秒針省略の二針仕様がお得意なマイクロローター採用の極薄自動巻Cal.240が積まれる。価格は採用技法で異なるだろうが、この木象嵌で1200~1400万円程度らしい。同じムーブを積むシンプルカラトラバのRef.6006Gが税別334万円なのでハンドクラフトだけで1000万円前後と言う事になる。かなり高い気がするが、パテック社の内製ではなく今や本当に少なくなった個人職人への外注なので致し方無いのだろう。ちなみにこの辺りの作品の製造個数は数点から数十点のユニークピース。注文を出しても来ることもあれば来ない事もあるらしい。購入する店を絞って、ストーリー性に富んだ購入実績を相当重ねて、初めて購買の可能性が出てくるらしい。正直明確な基準が良く分からない。

これらのユニークで工芸色豊かな特殊時計がすべてのパテックファンに人気があるわけではない。正直なところ機械式時計に加えて絵画や陶芸方面に趣味の有る方でないと飛びつかれると言う事は無い。実際腕にするというよりは鑑賞用であり、ずっと将来にその希少性ゆえ資産価値を生む可能性はありそうだ。
お好きな方どうですか?とお勧めしたくとも分厚いご購入実績という高いハードルがあるので、今の所は当店が販売する可能性は限りなく薄い。でも、いつかは売りたいなァ・・

文責:乾

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スイスからは火曜日27日に帰国した。興奮冷めやらぬと言うほど豊作では無かったが、各ブランド共手堅く冒険はあまりせずという2018だった。出発前にインプレッションを書いたパテック フィリップニューモデル。実機を初見して、想像通りも多かったが意外なりも結構あった。年々物忘れが酷くなる一方なのでとっとと書き上げてしまおう。
個人的に好きでコレクションしたい(金額は無視)のがプラチナケースの永久カレンダークロノグラフRef.5270P。今年の一押しモデルだ。あくまで個人的にデス。
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2017年時点でローズゴールドのストラップのみになっていた5270。2016年まではWG(白と青の2文字盤)があったので一年ぶりに銀色のケースが復活したのだけど、いかにもパテックなヴィンテージローズカラーに正体ゴシック文字のアラビアインデックス(恐らくWG?)と針が酸化処理のマットブラックへと化粧仕上げされており、ため息が出るくらい美しい。実を言うとこれまでの5270はWGもRGもあまり個人的には趣味で無かった。今年黒文字盤のメタルブレス仕様でリリースされた新しいRGもその意味では同じだ。でもプラチナは何故か全く新しいリファレンスの印象が強い。
今年の撮影は悩みに悩んだが、結局新規購入したミラーレス一眼SONY α5100に単焦点マクロレンズ(E3.5/30)をミニ三脚を使わず手持ちでサンプル実機撮影とした。ズームレンズなら三脚を使って絞り込んでスローシャッターにするがズーム無しの単焦点レンズなので手でカメラをズーミングするしかなかった。ただ単焦点は描写力がズームをかなり上回る・・と思う。具体的な撮影条件はシャッタースピード優先モード1/80秒 絞りオート ISO/5000 ホワイトバランスは各ブランドの商談テーブル上でマニュアルセットした。
難儀なのはブース廻りやショーケース内に展示されている時計や、バーゼル会場のイメージカットを撮るときに、その都度レンズ交換なんてしてられないので、全てフルオートのiPhone7に任せた。
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コチラがiPhone7画像。敢えて生画像で一切お触りなしとした。ガラス越しの実機まで30cm以上はあるので、かなりアップして撮っている。よくもあんな、けな気なレンズでここまで撮れるとは凄いノゥ。
次に各バイヤーから人気が高かったモデルとしてアクアノートの初クロノ、それもフライバッククロノグラフムーブCH28-520Cを搭載したRef.5968A-001。ステンレスアクアのコンプリ系には既にトラベルタイムRef.5164Aあるが、フライバッククロノにエンジンを積み替えたスポーツウオッチが誕生した。色んなインスタ等でオレンジカラーのラバーストラップバージョンが時折出ており、セットなのか、別売なのか、今まで無かった提案で現場に行くまで把握できなかった。この時計の工場出荷時のストラップはブラックでオレンジは付属セットとなっている。但し、注文でスイス入荷待ちの場合にオレンジが希望であれば、黒が予備となって入荷するらしい。確かに売れそうな顔をしております。現物が想像以上に良かった。
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賛否両論がありそうなノーチラス初の永久カレンダーRef.5740/1G-001。そもそもノーチのホワイトゴールドブレスは珍しい。現行モデルでは5719/1Gという全身にダイアを纏った特殊モデルのみである。一昨年にはシリーズ発売40周年記念として1300本の限定モデルとしてWGブレスの大振りサイズでフライバッククロノRef.5976/1Gが出たのみだ。
ノーチのグランドコンプリケーション(永久カレンダー以上の複雑時計)というのも多分初めてのはず。この時計相当に薄い。ケース厚たったの8.42mmしかない。比較されそうなモデルでは、アクア3針が8.1mm、ノーチ3針が8.3mm。同じマイクロローター搭載Cal.240Qを積んだ永久3モデルでは、Ref.5139(生産中止)が8.7mm、Ref.5140(生産中止)が8.8mmで唯一の現行モデルRef.5327は9.71mmもある。全ての永久カレンダーコレクションの中で最も薄いのは新参のノーチラスであり、極上のフィット感を誇る3針モデル5711の厚みをたったの0.12mmしか上回らない。防水性能は6気圧で同じくCal.240搭載のプチコンRef.5712に並んでいる。参考までにAPのロイヤルオーク永久カレンダーをネット検索すると厚さは9.5mmで2気圧防水である。但し、今年の新作であるエクストラシンの永久カレンダーはセンターローター採用で6.3mmケース厚と驚異的である。ただ耐久性については今後のフィールドテストを待たなければ何とも言えないだろう。

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文字盤の青の色目は現物を見るまで少し心配をしていたが、紺では決してない凄く良い青である。この青は大変評判の良かった40周年記念限定の前述したWGクロノグラフ及びプラチナ3針と全く同じ青である。今回この青のカフスも新規リリースされた。12時側にプリントされる PATEK PHILIPPE GENEVE のロゴ部の仕様も従来の横縞ボーダーの凸部にではなくロゴスペース全体を凸状態にした40周年と全く同じ仕様にされている。細かく見てゆくと40周年を買いそびれた方にも是非ご検討を頂きたいモデルでもある。上の画像で4時40分あたりの延長線上に月齢表示の調整コレクターボタンがある。通常は6時位置に配置されるが、ケースの構造上無理なので特殊な伝達方式で此処にレイアウトされた。同様に日付及び月のコレクターも大きく配置換えがなされている。
さて、前述のアクアノートステンレスクロノグラフもこのノーチラス永久カレンダーにも共通して取り入れられたのが新方式を採用したフォールディングバックルである。
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上図でバックル中央のPPロゴの下の横面に2か所の四角の薄い突起が見える。この部分が折り込まれてくる両側のクラスプとかみ合って固定される。従来のバックルが下の画像(懐かしの2年前撮影)である。同じように片側2か所、合計4か所で止める発想は同じだが新方式はより長期間にわたって緩るむ事無く使い続けられるらしい。個人的にはZ型を思わせるスケルトンチックで何処か色気を感じる従来のスタイルが好みではあるが・・
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さて、実際に手に取って見れたモデルが少ないので、その中から印象に特に残った3点を駆け足でご紹介した。少々長くなったので第一弾として一旦休憩。次回はバーゼルの会場でしか見る事の出来ない、いわゆるレアハンドクラフトと呼ばれるユニークピースの一団などをご紹介したいと思う。

文責:乾

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昨日の画像アップ不調は当店HPはレンタルしているサーバートラブルが原因だった。まだ今も回復していないので画像が貼れない。例年は今日(バーゼル一般公開初日、8時間時差)の朝からだったのだが、既に昨夜中にスマホで確認したらしっかり2018ニューモデルが掲載されていた。リンクは貼れるのだろうか?
例年同様に品番頭の●の色はザックリながら、完全な新商品、新素材投入、新文字盤追加 その他 [POR]:時価対象モデル

メンズ
ミニットリピーター
5207G-001(永久カレンダートゥールビヨン)[POR] 5208R-001(永久カレンダーモノプッシャークロノグラフ)[POR]
5531R-001(ワールドタイム・クロワゾネダイアル)[POR]
永久カレンダー
5270/1R-001(手巻きクロノグラフ) 5270P-001(手巻きクロノグラフ)
年次カレンダー
5205G-013
カラトラバ
5524R-001(パイロットトラベル)
ゴールデンエリプス
5738/50P-001 5738R-001 205.9102R5-010(カフリンクス)
ノーチラス
5740/1G-001(永久カレンダー) 205.9057G-013(カフリンクス)
アクアノート
5968A-001(フライバッククロノグラフ)
スプリットセコンドクロノグラフ、クロノグラフ、ワールドタイム無し

メンズは全12型。昨年の17型からさらに絞られた印象。グラコンは昨年5型なので同数。通常なら50周年のハーフクォーターアニバーサリーイヤーを迎えたゴールデンイリプスが、どちらも好印象ながらたったの2モデルしかない。
個人的にはやはり売りずらくてもイエローゴールド+パテックブルーと呼ばれるコバルト照射由来のブルーサンレイダイアルモデルのJUMBOがラインナップされてほしかった。
ローズの黒文字盤は素敵なんだけどチョッと色気あり過ぎかも・・プラチナは限定たった100本で同様な意匠を施されたホワイトゴールドのカフリンクスとのセット販売の様だ。さて、日本に何本来るのか来ないのか。ちなみにこの特殊なハンドクラフト文字盤は18金製で本黒七宝とハンドエングレーブの組み合わせの様だ。様だ、様だは現地で確認致します。工程の順序が良くわからないんですよ。2017年カラトラバで発表されたRef.5088/100P-001とほぼ同じ技法で作られたのは間違いなさそう。でもこの手の限定はバーゼルのPPブースに飾られていてショーケースのガラス越しに見る事が殆どで商談テーブルで直に手に取れる事が無いので、あまり思い入れが入らない。
さて寡作の2018の各モデルを予見してゆこう。グラコンはミニットと永久カレンダークロノに新素材投入が4型。秀逸なのはレギュラーライン初のミニット+ワールドタイムのクロワゾネダイアルバージョンRef.5531R-001。レギュラーライン初と書いたのはリリースのどこかにもあったが、記憶に新しい昨年のニューヨークでのグランド・エキジビションの為にエリア限定で確か作られているからである。手元のスイス・ジュネーブで発行されているeuropa star誌の40PにずばりRef.5531で掲載されている。違いはクロワゾネのモチーフが摩天楼かレマン湖の帆船かだけの様である。となれば今回の5531が枝番001とされているのは少し微妙かもしれない。

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年次カレンダーはRef.5205のWGが全廃されたので何か出るとの予想、恐らく紺や青系と持っていたらドンピシャだった。しかも始めて文字盤内側をグラデーションさせているようで、明らかに昨年の5170Pの人気に気を良くした誰かが画策したのだろう。今一番見たいモデルはコレ。
パイロットトラベルは昨日書いたので、2年ぶりにメンズの新作が投入されたノーチラスについて。これまた予想通りの永久カレンダー。しかもCal.324ではなく偏心マイクロローターのCal.240を積んでノーチの最大の強みである薄さ8.42mmに仕上げたのはあっぱれ。ただモニターで見る青の色目がチョッと薄いようで現物が早う見たいノウ。
さてアクアノートは昨年超ヒットのRef.5168Gに引き続いて新作一点。予想ではRef.5960/1A(年次カレンダー+フライバッククロノグラフSS)が今年全廃されたのでソックリそのままステンアクアに積むのかと予想していたらシンプルなフライバックのみ積んで登場。漆黒の文字盤にアクセントでオレンジを効かせたお決まりのレーシー仕様なのだけれど好き嫌いが出そうな気がする。まあ現物、現物・・ってのが無ければ明日からの5日間が空しくなってしまう。

レディス
クロノグラフ
7150/250R-001
カラトラバ
7234R-001(パイロットトラベルタイム)
アクアノート
5067A-025

昨年も結構な寡作(それでも8点)だったけれど、一体どうしたの状態の僅か3点とは。これは寂しい。やはりヨーロッパ市場が良くないのだろうか。特にこの2年ほどダイア・ダイアとほぼプリンセス プリンセス♪状態(古いですヨ!真正のオヤジですから)だったのに見る影もない。レディスは少なくとも日本ではゆっくりながら伸びているように思えるのだが・・
例年のお約束であるアクアルーチェの新色。これまた青かよ。昨日も書いた意表を突くレディスパイロットトラベルなのだが、これこそ現物を手にしてのサイズ感とボリューミー感を確かめない限り解りません。正直言って。
手巻きクロノキャリバーCal.CH29-535を積んでの新作Ref.7150ですが2016年にディスコンになったRef.7071の後継ですがね・・・好き好きですね、世の中は!。蓼だって無ければより美味しく鮎の塩焼きが戴けない訳ですから。あらゆるモデルには必ずそれを必要とする人が何処かに居るわけデス。山口百恵さん調♪ですかね。
しかし、今年も昨年、一昨年に続きTwenty-4追加一切無し。なんで??

尚、例年現地のパテックブース一階に展示されているレアハンドクラフトのユニークピースのクロワゾネモデルやドームクロックが今年も既に動画で紹介されている。様々なモチーフが紹介されているが個人的には今年何点か登山をイメージしたモデルがあるのとトスカーナとポンテベッキオ橋が描かれた2点が好ましい。是非、皆様もご一読?を。
それでは、例年段々準備がええ加減でまだ一切支度をしていない。夕方に切れかけている花粉症の薬をもらいに行って晩飯をどこぞで頂戴して、しこたま飲んでそれからゆっくり支度。朝は8時にレンジで出発。10時までには関空に着いて11時のフライトはKLMでアムス経由バーゼル空港へは現地夕方5時45分着予定。バスで15分で投宿。ドアドアで17時間強は例年よりずっと楽ちんだ。では次回の投稿は帰国後。画像も全部帰国後。では行ってきます。
もし早めに起きられてお天気よければボクスターで花粉浴びまくりも良いかな・・

文責:乾

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気付いている方が圧倒的に多いと思われる新しいパテックフィリップの公式インスタグラム
明日は朝から公式HPを見て新作のブログを書く予定だった。ひょっとして何か欠片くらい新作について載って無いか公式HPを訪問すれば、なんと新しくインスタが始まり、つい先日の18日に2018ニューモデル2型をリヴェール(ご紹介)するとあるではないか。
で、早速インスタでPP検索したらメッチャ凝った投稿がアップされていた。従来からあったメンズのカラトラバパイロットトラベルタイムRef.5524G(WG)のローズゴールドバージョン。文字盤カラーはWGの青ではなく茶色。何となく昨今他ブランドで流行っているブロンズっぽい。ただし凄く綺麗でエイジングとは無縁、でもカッコいいRef.5524R-001。
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でもってビックリしまくったのがまんまサイズダウン(37.5mm)したレディスのパイロットトラベルRef.7234R-001。色使いもメンズと全く同じ、センターフルローター自動巻きCal.324(直径27mm)がベースキャリバーなので結構な大きさになってしまう。既に生産中止された品番が近いRef.7134Gは手巻きCal.215(直径21.9mm)にトラベルモジュールを積んで35mmで、WGケースのベゼルはダイア巻き。当時の価格は税別451万円だった。あっ、当店にデッドストック一本有りです。
となると新しいレディスパイロットトラベルの価格が気になる。たぶんメンズは現行のWGモデルと同価格のはず、とすればあんまり変わらないのだろうか。明々後日には彼女に会える。

Ref.7134Gは確か画像は撮ってたはず。記事にする前にディスコンになったのでお蔵入りさせたのをやっと探してアップしようとしたら何故かサーバートラブルのような表示が出て全く貼り付けられない。でも今晩しか価値の無い本稿なので画像無しで投稿。

文責:乾

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「もう駄目なんやろうね」
「う~ん。もう年が明けましたからね。厳しいかもしれません」
年頭にこんな会話をした覚えがある。なんせ世界限定500本。当店のナンバーワンV.I.P.顧客様であっても2年半の購入実績しかない訳で、他店様で長期間ずっとパテックを買い続けてきた顧客様達に割り込めるかどうか?正直なところ昨年初夏の申し込み時点から一抹の不安は二人で共有していた。
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そんなRef.5650G-001アクアノート・アドバンストリサーチが一月下旬に急遽入荷してくることになった。実はタイミングがチョッと悪かった。顧客様は某ブランドブティックのご招待で初めてのSIHHや工場見学からお帰りになられたばかり。当然のことながら、そのブランドへのお付き合いのお買い物をおざなりにされるような方ではない。でも当然この特別なアクアノートの特別感がどの程度のものであるかを十分に理解されていた。お陰様で、無事ご納品がかなった。
「リサーチせなあかんと言う事は、不都合が出るかどうかどんどんプッシュボタンも押しまくった方が良いね?」
本当に嬉しいお言葉を頂いた。その通りである。ややもするとこの手のお宝モデルは手にされることなく未使用保管される事がしばしばである。パテック フィリップ社の狙いはそうではなく、正に使いまくって欲しい訳である。是非、今後もこの顧客様にアドバンストを宜しく・・・

昨年のナショナル・ジオグラフィックのバーゼルワールド取材時にスイス・パテックフィリップ本社のティアリー・スターン社長が次の様に述べている。
「父であるフィリップ・スターン会長から与えられた命題の一つが、トゥールビヨン機構を使わずにそれに匹敵する精度を実現すべし」
これを本当にやってしまったのがこのモデルの1つ目の特長。これまでにも特許取得して採用されてきた髭ゼンマイ外周部の厚みをました《パテック フィリップ・エンドカーブ》に加えて内側の髭玉に近い部分も厚く形成して、ムーブの垂直姿勢時の等時性をさらに向上させることで同社のトゥールビヨン搭載ムーブに匹敵する-1~+2秒というとんでもない精度を実現してしまった。
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2番目の技術革新はトラベルタイム機構を構成するパーツのダイナミックな統合である。上の画像で左右の✖状にクロスしスプリング機能を有するパーツは実は繋がっている。これまでトラベルタイム機構を構成していた内の何と25個のパーツをたった一つに統合してしまっている。下図の従来機構のイラストと見較べて頂きたい。
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具体的にどんな風に作られているかは知らないが、コンピューターで制御される高度な加工能力を有する工作機械が無ければ出来ない部品なのだろう。しかし、この9時位置のオープンワークは現物が凄まじく美しい。先日開催したパテック フィリップ展では顧客様のご厚意で特別出品頂いた。理想的な照明に照らされたショーケース内の5650Gには改めてその美しさを思い知らされた。
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スケルトンバックを通してみるお馴染みのセンターローターCal.324のバックシャン。今回は少しクローズアップ気味に編集してみた。ここまで肉薄してもブルーに着色されたスピロマックス髭ゼンマイは髭持ちの左上にほんの少しだけ見えているだけで、残念ながら外周幾何学形状も確認は出来ない。表のオープンワークが見事なまでに御開帳しているのと対照的である。
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横顔。トラベルタイムモジュール+センターローターの組み合わせでそれなりの厚み(11mm)は有る。ただムーブメント厚はたった4.82mm(リリースより、薄い・・)しかない。従来機はムーブメント厚4.9mm、ケース厚10.2mmなのでケースにわざとボリュームを持たせたのかもしれない。この理由はよく解らない。6時位置のプッシュボタンはカレンダー調整用である。リューズのカラトラバ十字の下側の突起が消えているのは見逃してくだされ。お触りし過ぎるとこんな羽目になる。リューズ上のベゼルサイドの黒い影も消そうと思ったが、あまりにも虚構になるのでノータッチ。

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一昨年のノーチラス40周年記念限定と言い、この限定アクアノートと言いボックスが何故か小ぶりだ。管理し易くて助かるとのお声もある。鑑賞目的の為のオープンワークを楽しんで頂けるようにケース部分もオープンワークのスケルトン仕様になっているのはご愛敬。確かにこのモデルには似つかわしい特別製化粧箱である。


この時計は先週アップしたやはりアクアノート20周年記念レギュラーモデルのRef.5168G-001アクアノート・ジャンボとほぼ同時に入荷し、同時に撮影をして同じフォルダで管理した。どちらもアクアノートなので画像編集時にどっちがどっちか一瞬こんがらがる事もあって少し難儀した。ジャンボ同様に撮影からアップまで一月以上掛かったが、この辺で投稿しないと多分日を置かずに2018年の新作情報が来るはずだ。これをもとに3月22日にはアップされるであろうPP社の公式HPの新作情報を基にスイス訪問前の予習も兼ねてバタバタと記事を書く事になるだろう。まあ例年の事なのだが、さあ出発まであと2週間・・

《Patek Philippe・Advanced Reserch》Aquanaute Travel Time Ref.5650G-001 20th Anniversary Limited Edition
世界限定500個

ケース径:40.8mm(10時ー4時方向)※リューズを含む3時ー9時方向で45.24mm
ケース厚:11mm 
防水:12気圧
ケースバリエーション:WG 
文字盤:真鍮、中央から外周に向かい明暗のグラデーション スーパールミノヴァ蓄光付18金WG植字アラビア数字インデックス
針:バトン型スーパールミノヴァ蓄光付18金WG時(ホーム及びローカル)分針、パーフィル型ホワイト塗装ブロンズ製カウンターウェイト付秒針、バトン型ホワイト塗装18金WG日付針
ストラップ:ナイトブルー・コンポジットバンド バックル:18金WGフォールドオーバークラスプ

Caliber 324 S C FUS
トラベルタイム機能付自動巻ムーブメント
直径:31.0mm 厚み:4.82mm
部品点数:269個(フレキシブル機構により従来機より25個減) 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間 テンプ:ジャイロマックス
髭ゼンマイ:外周と内端にふくらみを持つSpiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

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やっとこの記事に着手出来る。たぶん一ヶ月位もたついてしまった。ノーチラスSSの価格改定騒ぎやら、生産中止情報等々を先んじてアップしたり。3月頭のパテック フィリップ展に加えて急遽同時開催する事になったプレステージウオッチフェアの仕込み作業。3週連ちゃんの東京出張・・
と、ここまで書いたら最近増えつつあるアジアのお客様が2階に上がる足音・・又しても時間を取られる訳で、ブログはサボログ化する。今日中に上げられれば、ぐらいのつもりで無いと駄目だ。そうそうインスタにも結構時間は取られている。時間を牛耳る時計なるものを取り扱っているのに、いつの間にやら時間を取られまくっている。
閑話休題、アクアノート販売20周年を記念して昨年のバーゼルワールドで発表されたRef.5168G-001。その遺伝子であるノーチラス兄貴に与えられた"ジャンボ"の称号を付けたアクア初(知りうる限りだが・・)のホワイトゴールド素材に絶妙な深みのあるブルーカラーの文字盤とコンポジットラバーストラップを纏いレギュラーサイズより1.4mm大きい42.2mmのケースはジャンボと呼ばれる程の大きさを感じる事は無く、どなたの腕にも乗っかるサイズ感である。中身はCal.324で従来機と変わらない。昨年9月にサンプルを撮影して既に一度紹介済みなので時計については実のところあまり書きようがない。

だが、今回関東方面からお問合せいただき、わざわざ日帰り購入でご来店いただいたお客様のご厚意でピンピンの実機撮影がかなった。

実機撮影の件、承知しました。
乾さんのブログに登場できることを、大変うれしく思います。
iphoneで時計の写真を撮っても綺麗に撮れず、いまから乾さんのブログが楽しみです!
ご遠慮なく、ご活用ください。(メール原文引用)

こんな嬉しいお言葉。時計屋冥利なのか?カメラマン冥利なのか? 俺は一体何者? でもプレッシャーでもあって、ご期待に添えたかどうかは疑わしい・・

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この画像秒針が少しブレている。オーナー様から「上手に撮ってください」的なお願いまでされたのにこの様だ。実はこの時初めての黒い牛革を背景と土台に使って撮影した。デジタル一眼レフのモニターというのは厄介で実に綺麗に見えてしまう。でもスマホよりも少し小さ目なのでPCに画像を取り込んでモニターで確認すると"アレッ"と言う事が多々ある。この時もベゼルの8時から10時あたりに掛けて牛革のシボ模様が映り込んでチョッと不気味な状態になっていた。
時すでに遅く時計は入荷検品に入っており、主ゼンマイは全巻きされ、ごく薄い保護フィルムでケース部分はラップされていた。撮影条件として、モデルの殆どにハック機能の無いパテックは、ゼンマイにほぼトルクの無い状態なら時刻合わせポジションで少しだけ逆転させると大抵は希望の位置で秒針を止められる。最初牛革ベース撮影時は、それでピッタリ針留めして撮ったのだが、全巻き状態になった時計のラップを剥がして、何をどうやっってもほんの少しのショックで秒針は動き出してしまう。さらに悪い事にはラバーストラップという素材は空気中を漂う微細な埃をどんどん吸着する性質がある。ジュネーブの(恐らく手術室の様なノンダスト設備下の)ファクトリーで出荷時に真空パックされた状態で手元に納品された時が、最も撮り易いのである。一回撮影して、検品して、ラップしているうちに手袋の埃が結構ついてしまっている2回目のが上の画像。埃の処理にフォトショップで20~30分は掛かってしまった。リューズに関しては画像処理で捻じ込んでいる。
ところでトルクフルな状況で逆回しをしっかりやると秒針は逆進する。これは実に気色悪い感覚だし、直感的だがきっと機械にも良くなさそうなので、良い子は絶対やってはいけません。

ちなみに画像の左右両側のコンポジットラバーストラップは端に行くと少々ボケ感が出ている。これは被写界深度をどちらかと言うと深めにセット(絞りを少し絞って)して、時計には出来るだけピントを合わせつつ背景はボケる様に狙ったからで、具体的な値は、絞りF13、シャッタースピード1/2.5秒である。このかなり遅めのスピードでは秒針がこんなにブレる。ISO(LO-0.3)を上げればいくらでもスピードは稼げるが画像が荒くなるのでこんな針ブレが起こった。実際には1/30秒位になるようにISOを上げても画質的には問題が無かったと思うが、これも撮像確認の甘さである。簡易スタジオは2階の事務所奥の倉庫の一角にあり、PCは一階事務所にあるためこんな事を時々やらかしてしまう。この針ブレ、流石にフォトショップでどうにか出来るものでは無い。
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撮影日はずいぶん前。画像処理に1日、時間にして4時間位。そして本稿を綴り始めて二日目の今日は2月25日。午前から同時に二組のご来店。昼から出社する姐がいないし、スタッフの I 君と二人なので後から来られた若い初来店様を対応する事に。聞けば名古屋市内からお車で遠路はるばるのご来店。お目当てはRef.5711/1A-011白ノーチ3針ステンレス。現在、白に関しては予約から登録に移行するか否か迷っている状態。5712/1A-001プチコンSSノーチもほぼ同じ状況。3針SS黒青は登録のみで予約はご遠慮いただいている。
当店での予約とは製品が製造され続け納品され続ける限り、順番に販売してゆくと言う事。登録はほぼご来店記念の記帳に近く、販売を約束するものでは無い。
国内30店のパテック フィリップ正規販売店でこれらやアクアノートSSのような異常人気モデルをどのように販売するかは店舗に委ねられている。しかし温度差は色々あっても結局は、常日頃から購買をいただきご愛顧頂ける大切なロイヤルカスタマー様を優先せざるを得ない。傲慢と言われようと「結局、長い目で見た抱き合わせ販売・・」と言われようが、売り手としては当たり前の事だと思っている。ロレックスのSSデイトナ等も一緒で正規店でそれらだけを購入しようされる方が大変多いが、現段階では奇跡に近いのでは無いかと思われる。
話を戻そう。結局じっくりと話し込ませて頂いた名古屋のお客様と入れ替わりに当店V.I.P.顧客様のご紹介の初来店様が入店されてご対応をする事に、姐が加わってもたった3名でそれなりにご来店が有れば一日は本当に"あっ!"という間に終わる。既に19時53分で残る2名は高額品を片付け始めている。そう、閉店時間なので今日もブログは完成しない。ちなみに上の画像はかなり触っております。じっくり見るとあり得ないはずと言う事に(拡大せずにですョ!)気づかれる方もいらっしゃるかも・・
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もはやお馴染みのスケルトナイズされたCal.324の後ろ姿。サテンフィニッシュされたサークルの外側の鏡面仕上げサークルの下の方に前述した牛革ベースが写り込んでいる。さすがにこの画像修正は諦めた。手間と時間がかかり過ぎる割に違和感を完全に無くす事はほぼ不可能。もちろんプロにギャラを払えば、いとも簡単なのだろうが・・
何か本稿はカメラ話に終始したが、書き始めてようやく三日目にして投稿できそうだ。Ref.5167Aや5167/1Aのステンレス素材と同様に、WGの5168Gもリリースからまだ一年なので商品調達は非常に難しい状況が続いている。当店も今年は既に難しい状況にある。でもどちら様にも関わりなく来年度分のご予約は店頭受付しております。詳細はお問合せ下さい。

Ref.5168G-001
ケース径:42.2mm(10-4時方向)ケース厚:8.25mm ラグ×美錠幅:22×18mm
防水:120m ねじ込みリューズ仕様
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤:ブルーエンボス ブラックグレデーテッド 蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
ストラップ:ミッドナイトブルーコンポジット《トロピカル》ストラップ(ラバー)アクアノート フォールドオーバー クラスプ付き 

Caliber 324 SC/393

直径:27mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、ムーブについての過去記事はコチラから

文責:乾

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ここ2年ほど当店では真夏のお盆にパテックフィリップ展を開催してきた。お盆は意外にも皆さん自宅に居て、近場をうろうろするだけだ。とか、ゴルフも暑すぎて行かない。とか、東名名神のような大動脈は混んでるが、阪神高速などはガラガラだ。とかいう諸々の理由付けでそんな時期に開催してきた。実際のところパテック正規販売店としては後発の当店がサンプルを4日間も抑えるのはお盆しかなかったという理由も大きい。
ただ難儀なのはお盆の一週間後の東京都内某有名百貨店のワールドウオッチが毎年新作の一般公開スタートと決まっている。その為に、お盆には会場に新作は飾れないし、事前にモデル指定でキッチリ申し込んで頂かないと新作はご紹介出来ない。実際にはよほどのご常連様以外にお目に掛ける事はなかった。
で、今の時期はどうかというと今年の2018新作が皆さん気になり出す頃なので、全ラインナップがもちろん見れてもナぁ。ということになる。ただパテックフィリップの年度初め(2/1~)なので今年の仕入れ枠がまっさら状態な為、お品物を決めて頂ければ、早目の納品が可能なモデルが多いというメリットはある。さらにパテック フィリップ展(通称PP展)での決定品は通常営業時での客注品よりも早く優先的に納品される傾向がありそうだ。これは経験的にたぶんと言う事である。

2018 CASABLANCA PATEK PHILLIPE EXHIBITION
日時:2018年3月3日(土)・4日(日)の2日間 11:00~19:00
会場:カサブランカ奈良2階パテック フィリップ ショップ イン ショップ コーナー
※この時期の奈良は東大寺修二会のお水取りお松明の行(3/1-14)なので当店行き帰りは時間帯によって混雑が予想されます。
※画像は2017新製品Ref.6006G
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ただ単に展示会をするだけでは無く、当店流の何か"らしさ"を出せないものかと知恵を絞った。
CASABLANCA PRESTAGE WATCH FAIR:昨年以来ずっと導入を検討してきたジャーマンウオッチ"Moritz Grossmann"。実は一本愛用もしている。ただその価格帯的な敷居の高さゆえ最後の一歩の勇気が出ず、悶々とした一年だった。今回パテックと同時ならという無理やりの口実もあって、特別に期間中展示する事になった。どなたかがご成約という事になれば常時取扱いという羽目(では無くて"契約"か)になるだろう。この特別出品は個人的に今回の目玉。スイス時計の至高であるパテック フィリップを志向される方々に、このニッチながらジャーマンの正統性半端ではないドイツ時計は支持されるのであろうか?
そこまでやるなら一階の取扱いブランドにも声掛けして普段目にする事のない、当然在庫にするわけない高級ゾーンの貸し出しをお願いした。結果プレステージフェアと括らせて頂く事になった。クレドール、モンブラン、クエルボイソブリノス、ブライトリング等が対象である。これについてはフェアWEBページを今後作る予定なのでそちらで内容確認ください。
※画像は"アトゥム・エナメル ジャパンリミテッド"WG(税別440万円)、RG(410万円)各7本限定


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カサブランカ奈良ミシュラン:期間中ブランドを問わず税抜き100万円以上ご成約で、当店(乾?)推薦の夜な夜な徘徊店舗のお食事をお楽しみ頂こうという企画。ペアお食事券(3か月間有効)をお渡ししますので、ご都合の宜しいスケジュール(昼夜いずれも可)にてご予約いただきお楽しみいただきます。ただしお飲み物は各自ご負担いただきます。

ご協力店:奈良而今(ナラニコン・茶懐石)、La forme d` eternite(ラ フォルム ド エテルニテ・フレンチ)、Banchetti(バンケッティ・イタリアン)の3店にお願いしております。すべてこの2年以内にオープンしたお店ですが、既に結構予約必須の人気店になっています。


ポルシェの試乗体験:昨年春、近隣のPORSHE CENTER NARA様の試乗イベントにコラボレーションしてパテック フィリップの特別展示を行った。それの逆張りで展示会期間の2日間(12:00~17:00程度?)、当店駐車場に2~3台の試乗車と先方のスタッフが常駐し、試乗体験をしていただこうというコラボレーションイベントである。恐らくマカン、パナメーラ等の4座以上モデルが置かれてそうで、ボクスター、ケイマン等の2座モデルのご希望があれば、ポルシェセンター迄試乗車に同乗頂いてポルシェスタッフが送迎という形を取ります。
※現在ポルシェ本体のイベント承認待ち。時計業界以上にレギュレーションが厳しい輸入車業界デス。

皆様のご来場を心よりお待ちいたしております。予約なんぞは要らない気楽な展示会です。ただどうしても時間限定や見たいモデルに限定が有れば事前にご連絡ください。(ただしノーチラス・アクアノートのステンレスモデルはご勘弁ください)

文責:乾

例年の事である。今年は6日に生産中止予定モデルの追加・変更の通達が来たらしい。"らしい"とはまたええ加減な表現だが、2月は例年恒例の毎週東京詣でなので今朝見た。スタッフの教育できとりまへん。要は社長が甘くてボンクラ。大小問わず、こういう一見些細なことがいずれ致命傷となり企業はご臨終となる。しっかりせんかい!(千回)と自分自身に"活!"を入れる乾です。
変更は、ポケットウオッチRef.972/1J-001の生産中止追加。中止予定だったスプリットセコンドクロノRef.5950R-001の生産継続にての復活。以上2点で大勢に影響はない。何故か懐中時計の画像は既に公式HPには無い。2017ゼネラルカタログには掲載されている。HPに今時点で生産中止発表され未掲載のモデルはこの一点だけ、何ゆえか?実は心当たりがある。でも、チョッと書けないんだナぁ。(以上2/8加筆)

昨日、数時間を掛けてふうふう言いながら書き込みまくった記事が何故か今朝消えていた。
そして実に億劫な書き直しをする前に雑事にかまけている最中に価格改定の続報が来て、そっちが優先となった。アップしたらインスタにも反映し、FBにもついでにとやってるうちに、来客もあってこんな時間になってしまった。ところが書き直し作業を始める段になって昨年の2017生産中止記事をコピーの上で修正作業していた事に気づき・・・ひょっとして、やはり昨年の記事の直上に昨年日付のまま保存されていた。横着は自滅の元になる。いわゆる自業自得(この言葉はおかしい、自分が得して無い)・・自業地獄の方が今の気分。
閑話休題、ともかく助かった。正月二月堂のみくじは"末吉"、氏神様の漢国神社(かんごうじんじゃ)で掟破りの再挑戦も"小吉"。凶が出なかったのでお見捨てだけは免れたようだ。以下、書き直しせずに原文ママアップしますので文脈少し相前後等をご容赦願います。

昨日、異常人気モデルのノーチラスの特別価格改定をお知らせしたばかりの本日、ようやく熱っぽさも取れ始め風邪退治モードに入っていたらまたも熱のぶり返しそうな入荷と通達がパテックフィリップから同時にやって来た!
書きかけの記事やらお触りしかけたイケメン画像なども中途半端にあって、なんせ最近納品した実機撮影をご承諾頂いたモデルなだけに気が急いて・・・

本日入荷品は昨年白文字盤が生産中止になってブラックダイアルとして新たにリリースされた年次カレンダーフライバッククロノグラフRef.5960/1A-010。で、ですよ。やってきた通達が2018生産中止(通称RUNOUT)モデルのご案内で、この着荷ホヤホヤも入っており非常に複雑な心境にならざるを得ない訳です。たった1年でのディスコン決定した新規在庫品の販売に吉と出るか凶と出るか・・・

前年に引き続き、本日は取り合えず画像又は過去記事リンク付きリストのみ。明日以降に徐々に肉付けするかも・・

※当然現在製造仕掛かりの物もあるだろうし、2018年度(2月~2019年1月)中に生産が中止になるリストなので、たちまち全てが一切手配不可という事もないのは昨年同様。時々アレッ!というディスコンモデルの入荷案内というサプライズ仕入というのもパテックにはあるので、皆様のご希望品は精一杯探したい。簡単ではないけれど、あきらめませんの精神で・・・
と書き込んでいる間にいきなり5200-010の入荷案内が飛び込んできて、全く油断も隙も無い。もちろんお宝は即仕入!

斜体太字のRefは今日現在で当店在庫あり。
メンズ

ミニットリピーター
5207/700P-001 5208P-001
スプリットセコンドクロノグラフ
5950R-001 5959R-001
※上記4モデル全て時価(Price on riquest)この辺りのモデルを過去記事リンクできない悲しさをバネにひたすら書き続けるとするか。
永久カレンダー
5139G-010, 5140P-017, 5270R-001, 5940G-010
年次カレンダー
5960/1A-010, 5205G-001, 5205G-010,
クロノグラフ
5170R-001, 5170R-010,
ワールドタイム
5131R-011,
カラトラバ
5116R-001,
ゴンドーロ
5200G-001, 5200G-010,
ゴールデンイリプス
3738/100G-012, 3738/100J-012, 3738/100R-001,

ミニットリピーターに関しては昨年に11Ref.ゴッソリディスコン(生産中止)が今年はわずかに2モデル。しかしこの2モデルは只のグラコンならず究極雲上スーパーグランドコンプリケーションである。もちろんそのまま空席はあり得ない予想をしている。
スプリットは自社クロノキャリバー初出のCH27-525搭載モデル全般にありがちな短期生産中止の流れに乗るもので流通個体を抑える事で将来の希少価値(資産価値とは書きません。いや、書けません!)を狙っているのだろう。
永久カレンダーは個人的に悲しい結果に、好みのワンツーモデル(5139G,5140P)が揃って鬼籍に入ってしまった。さらにクロノを搭載したダブルコンプリの5270Rは昨年のバーゼルワールドでのスイスパテック社のガラディナーパーティーの際、ティエリー・スターン社長自らがご着用されていたモデル。何ぞ狙いが或るのやら無いのやら・・
普通?に販売できないクロワゾネワールドタイム5131Rは、例年なら今年度もダイアルデザイン違いのクロワゾネ仕様で枝番替わりの2018バージョンが出そうなもの。しかしながら昨年プラチナブレス仕様が登場したのでこれは何とも予測付き難し。
カラトラバ5116Rは正直5119Rとの違いが我々プロでも並べぬ限り見分けが付かない。ただ個人的にはこの100人に一人しかわからん様な"実はね"モデルが大好きだ。様は只の時計フェチです。
ゴンドーロの人気モデル8デイズ両落ちには少しビックリ。専用ムーブだけに今後の動向が予測不能ながら何か出てきて欲しい!
イリプスの18金3素材全落ちは予想通りで発売50周年を記念して私見ながら継続となったプラチナ5738P-001と同サイズ34.5×39.5mmで3素材出揃うのではなかろうか。時代はサイズアップトレンドながらも近年はサイズダウンへの見直しもある。でも現行の18金イリプスはあまりにも小さ過ぎた。実を言うと"小ぶりフェチ"でもある自分自身の愛機は最近ブログアップもしたYGのイリプス。まず洋装の時には巻かないが大島紬との相性の良さは抜群だ。
閑話休題、イリプスに関してこのサイズリプレースのみで終わるのか否や?アチラの世界はクォーター(25年)が重視される。となれば50年はもう少しサプライズがあるかもしれない。しかしノーチラスとはベーシックに人気度合いが違うので意外に現実的かも?のティエリー社長はどこまでやるのかやらないのか・・・


レディス
ミニットリピーター
7000R-001(時価Price on riquest)
年次カレンダー
4948G-001
カラトラバ
4895G-001, 4895R-001, 7200/1R-001
ゴンドーロ
4973G-001
昨年同様に豪華なジェムセッティング3型に加えてレディス唯一のグラコンミニットとお別れする事になった。

メンズ、レディスとも今年は少なめの生産中止。メンズスーパーグランドコンプリとレディスの高額ラインについては見直しなのかお見送りなのか。昨年までの世界的腕時計不景気は多少解消しつつあり、特に超の付く高額腕時計は絶好調(日本だけ?)と言われる状況の中なので正直真意は読めません。今年はこの辺りぐらいしかバーゼル詣(3/22-27)の目的が無くなった。確か1300社程度あった出展社が今年は700とも900とも言われているし、会期も2日ほど減るBASELWORLD。ROLEX&OMEGAとバイバイし、毎年ワクワクだったブライトリングも来年からは1月のジュネーブSIHHに移行する。かといって航空券は最低現地滞在5日未満は急に高額になるのでとんぼ返りも出来ない。と言う事はスタッフ不足に早く何とか目途付けて来年のバーゼルはパテック+気が向いたトコだけ挨拶廻りを一日で済ませて、市場調査と称してイギリスのアイラ・ロー&ハイランド等々のディスティラリー巡りでも計画するしかバーゼルに行く理由がなくなりそうだ。とてもこのシーズンにマッターホルン再登を狙える実力は無いし・・

ちなみに今年は年々口煩さがエスカレートしている姐を同行せず、一人気楽な道中の予定。

文責:乾

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ここのところ毎日のようにPPJから通達が来る。日によっては山のように来る。しかも部署が違えば別便で来る。たまに同じ部署でも通達封筒の準備時間のズレなのか?別便で来たりする。恐らく少数精鋭過ぎて梱包しなおしたり、正規店30ドアのトレイをオフィス内の何処かに作り、各部署がほり込んで、集荷30分前にその日の専任担当が一気に梱包するなんて事やってられないのだろう。
お客様を今か?今か?と待ち続けている当店なら三日分位まとめて別店やお取引先に送らないと、ヤマトさんも郵便局さんも値上げラッシュの昨今、私の飲み代が出ません。

で、昨日は久々にたまった実機ブログネタを後回しせざるを得ない、例年恒例の通達をネタに3時間かけて書き上げたものが、ケアレスミス?で跡形も無く消え失せ、今朝から超ブルーな乾です。テンション上げてもう一回書きなおそうかと思っていた矢先、来ました又してもの嫌な予感の宅急便。
中身はたった2日前にFAXで今月26日頃決定通達となっていたノーチラス2モデルの超特急価格決定のご通達。

ノーチラスSS3針モデル
Ref.5711/1A-010&011 3針ブラックブルー及びシルバリィホワイト
ノーチラスSSプチコンプリケーションモデル
Ref.5712/1A-001
※具体的な詳細価格はお問合せ下さい。
値上り率で言えばどちらも約13%程度で一昨日の20%とは大きく乖離している。これは何ゆえか?2月中旬に東京で毎年恒例の正規店の連絡会があるので、その際に理由がわかると予想している。個人的には各国や各エリアで上げ幅の調整があったのではないかと思う。何故かというと日本ほど正規販売店が、お行儀良く売っている国は無いと聞く。とても詳細は書けないが少数のお客様から他国の正規店での信じ難いご体験談を聞く事も有りますので・・

まあバーゼルに行けば少なくともスイスの価格は分かるが、設定価格を本当に知りたい国はアソコやアッコだったりなので・・・


まあ、後半は全くの私見による与太話です。今回は画像も無しの無味乾燥で失礼。

文責:乾

追記、さてこれで我々正規店と本当に所有・愛用を切望しておられる時計愛好者(特にパテックファンで既愛用者)の需給バランスがどれ位改善されるか?完全予測ながら3針は両色とも何ら変わらないと思う。プチコンは多少玄人筋の方々の動きが鈍る程度かと・・

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更新が中々進まない中、他の記事を準備中にエライNEWSがパテックからFAX。
超売れ筋の2モデルノーチラスSS3針Ref.5711/1A-010ブラックブルーダイアル、011シルバリィホワイトダイアル、及びプチコンSSRef.5712/1A-001が3月1日より約20%アップとなる。これはあまりにも加熱し異常化するこれらのモデルを適正な需給バランスに近づけるための世界規模の特別措置。
具体的なプライスは2月26日頃決定される予定。これで需給がそんなに解消されるのか個人的には疑問である。
プチコン5712/1Aについてはある程度は需給解消しるかもしれない。
取り合えずの速報です。文章だけじゃ寂しいので既存画像を一応貼っときます。超人気3兄弟揃って格上げ!!
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文責:乾

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新年明けましておめでとうございます。今年も宜しくお付き合いの程お願い致します。
数年前までは大晦日から正月三が日と休んでいたが、たった一日で一年の埃を落として新年を迎える準備が中途半端な上に、新年の三日間は飲み食いに明け暮れる不健康極まりない生活だった。
ここ数年は年末2日間を掃除(レンジと風呂係)と準備(棒鱈と田作り担当)にあて、元日は東大寺(二月堂、手向け山八幡宮、外から大仏殿)に初詣、昼前から至近に住む親父を交え新年を祝う。屠蘇とお節の後は何故かすき焼きで〆るここ数年。今年はこのワンパターンにて無事に過ごせた事がいつに無くとても嬉しかった。
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2日からの仕事始めは昨年から和服でスタートしている。仕事の邪魔にならないように袖を少し短めに仕立てた大島紬を羽織りとのアンサンブルで着用。時計はまるでこのスタイルに誂えたかのようなゴールデン・エリプスYGのブルーゴールドのサンバーストダイアルモデル。横巾31.1mm✖縦35.6mmは今や化石のようなコンパクトサイズながら和装には抜群のバランス。深いネイビーブルーのストラップも大島にしっくりと馴染む。愛用実機なので撮影すると小傷だらけはご容赦下さい。
厚み5.8mmは現行全コレクション中で最薄モデルとなる。手巻きカラトラバレディスのRef.4897が6.6mmで二番目となるので本当に薄いが寸胴のようなケースサイドなので存在感はあってそこまで薄さを感じない。
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シンプル極まりないバトンハンドの時分針とバーインデックスの組み合わせは実用性が高く日常使いできるドレスウオッチである。尚、ゴールデン・エリプスの楕円形状は古代ギリシャ・ローマの数学者たちが研究した縦横の完璧な黄金比率(1:1.6181)から決定されており、建築や芸術分野に於いて古くから応用されてきた「神聖な比率」がルーツとなっている。
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またパテック フィリップの歴史に於いては1932年発表のカラトラバ以来36年ぶりに発表されたクラシックなシリーズでもある。そしてその後10年間くらいはその青い色目がパテックというブランドそのものを象徴していた時代が確実にあった。
また現行パテックコレクションでは標準仕様となっている裏スケルトンを採用していない希少なモデルでもある。笑ってしまうぐらいシンプルで何にもないサテン筋目仕上げ。この例外的仕様は手巻きカラトラバメンズRef.5196(ポリッシュ仕上げ)と2機種のみしかない。ストラップの装着方法も実にシンプルなピン留めでセンターのスリットに摩擦留め用のリングが入っている。
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バックルもケース形状に合わせた楕円形状の専用ピンバックルが採用されている。
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縁あって愛用している個体は2002年に仕入れており今現在生産されているものと文字盤の仕様が若干異なる。6時のバーインデックス下の白色転写プリントが"σ SWISS σ"となっている。現在生産の個体は"SWISS"のみである。この前後についている"σ"マークはシグママークと言われるものだそうで(ググってみました)文字盤やインデックスに貴金属(金やプラチナ)を使用した証で一種のホールマーク。確かにゴールデンイリプス全4モデルの中で通称パテックブルーともいわれるブルーソレイユカラー文字盤採用のイエローゴールド(3738J)及びプラチナ(5738P)のみが該当する。
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尚3738G、Rのホワイトゴールドとローズゴールドは真鍮製文字盤である。またカタログ表記の文字盤カラー"ブルーゴールド"が商標登録されている事も極めて珍しい。このブルーゴールドはデビュー当時は18金文字盤に放射性物質のコバルトを照射する事で作られていたが、現在は社外秘の安全な手法で作られていて真鍮素材でも発色は可能らしいのだがオリジナルへの拘りから金文字盤が採用され続けている。WG、RGに較べて約20万円安いイエローはお買い得感がある。
さて正月、和服、コーディネイトでエリプスととても無理やり感がありそうだが、実は今年がゴールデン・エリプスのアニバーサリーイヤーとなっている。1968年発表のRef.3548(横巾27mm✖32mm)がエリプスの初出となるが現行よりまだ一回り小さかった。サイズ的には現行の丸形レディスコレクション最小33mm径よりも小さかったのだ。もちろん極薄自動巻きキャリバー240(1977年)以前なので手巻きCal.23-300を搭載していた。
10年前の40周年だった2008年にはサイズアップしたプラチナモデルRef.5738P(現行)が出た。今年は50周年ともっと切りが良いアニバーサリーなので期待は高まる。もしかしてのフルモデルチェンジとか・・
年末にエアとホテル予約を済ませた3月のバーゼル。今年もやはりスイスの春が待ち遠しい。

Ref.3738/100J-012
ケースサイズ:横31.1mm✖縦35.6mm ケース厚:5.8mm ラグ×美錠幅:19×14mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:YGの他、WGRG有り 
文字盤:ブルーゴールド サンバースト 18金植字インデックス 18金製文字盤
ストラップ:シャイニー(艶有)ネイビーブルーアリゲーター

Caliber 240

直径:27.5mm 厚み:2.53mm 部品点数:161個 石数:27個
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

2018年1月7日現在 在庫についてはお問合せ下さい。

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今年最後の入荷は年次カレンダー。2010年に年次カレンダーの第3番目の顔としてデビューしたモデル。この斬新なダイアルレイアウト自体は2006年に新規自社開発されたマニュファクチュールキャリバーを搭載して発表された垂直クラッチ方式のフライバッククロノグラフRef.5960にルーツがある。ちなみにこの顔は2011年に超のつくグランドコンプリケーションであるRef.5208Pにも採用されており古典や伝統とは真逆の最先端デザインとして扱われている。ダイアル上部の三つのカレンダー窓、逆ぞりした幅広のベゼル、横から抉り込み又は肉抜き貫通されたラグ、これら3点がデザイン的に共通している。

Ref.5205の顔としてはホワイトゴールドとローズゴールド各2色の計4モデル。WGにはロジウム&シルバリーと称されるライトグレータイプもあって甲乙つけがたい。個人的には今回入荷の濃い目マットブラック&スレートグレーがよりスポーティーでアダンギャルドなこの年次モデルには似つかわしいと思っている。

Ref.5205G-010年次カレンダー
ケース径:40.0mm ケース厚:11.36mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WG(別ダイアル有)の他にRG別ダイアル有
文字盤:マットブラックとスレートグレーの2トーン ゴールド植字インデックス
ストラップ:マット(艶無)ブラックアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:税別 5,230,000円(税込 5,648,400円)2017年8月現在

搭載キャリバーは21金フルローターを採用したパテックを代表する自動巻きCal324に年次カレンダーモジュールを組込んでいる。
カレンダー系の操作は禁止時間帯等あって気を使うが、パテックの場合は殆どの物が午前6時(例外あり)に時刻を合わせてプッシュ操作を行う。ムーンフェイズはいつもネット検索して確認していたが、パテックHP内にある確認ページが結構便利である。
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Caliber 324 S QA LU 24H/206

直径:32.6mm 厚み:5.78mm 部品点数:356個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
PATEK PHILIPPE 公式ページ

2017年12月25日現在
5205G-010 店頭在庫あります
5205G-001 お問い合わせください
以前の同モデル紹介ページ→コチラ(価格・リンク切れ等ご容赦ください。

年末のバタバタ。今年は特に酷い気がしますが、今回は既に紹介済みモデルと言う事もあって、ほぼ入荷案内ブログになってしまいました。
恐らく今年最後の記事かと・・本年もお付き合いありがとうございました。
どうぞ皆さま良き年をお迎えください。

文責:乾

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ノーチラスシリーズのステンレスモデル人気が相変わらず続いている。3針ステンレスRef.5711のブラックブルーを筆頭にホワイトダイアルもプチコンRef.5712/1Aも需給バランスが全く合わない。今回紹介の年次カレンダーモデルRef.5726Aもブレスレットタイプ共々、少しだけ店頭に並んでは嫁いでゆく人気モデルである。
機械的にはカラトラバケースに身を包むクンロクファミリーRef.5396と全く同じ3針自動巻きCal.324に年次モジュール組み込んだキャリバーが搭載されている。ダイアルレイアウトも同じなのだがラグジュアリースポーツの元祖ともいうべきノーチラスケースに積まれて横ボーダーのノーチラスダイアル仕様になると全く違う時計に見えてしまう。
流石にケース厚は3針の8.3mmに対して11.3mmと厚くなるのだが昨今流行りの大型ラグスポに較べればフィット感を損なう厚みではない。斜めから見ればベゼルの厚みが結構あって機械部分はたったの5.78mmしかないのでボリューム感を出す為のデザイン的な宿命と言える。
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天才時計デザイナーのチャールズ・ジェラルド・ジェンタが3針のノーチラスをデザインし発表したのが1976年、その後パワーリザーブ機能付きになったりサイズが色々と変更されたりバリエーションは多々あったが基本的には3針モデルであり続けた。初めての複雑機能が付加されたのが2005年のRef.3712。マイクロローター搭載の極薄自動巻Cal.240にパワーリザーブ・ムーンフェイズ・カレンダー・スモールセコンドを組み込んだ通称プチコンのステンレスブレスモデル。以前にも書いたが、このモデルたった一年しか生産されなかった希少モデルになってしまった。
2006年に発売30周年を迎えたノーチラスは記念的なフルモデルチェンジを受け一気にファミリーも増えた。その際にプチコンも新たにRef.5712に変更され、クロノグラフも始めてラインナップされる事となった。そして4年後の2010年に今回紹介の年次カレンダー5726のストラップモデルが発表された。ついでに言うとさらに4年後の2014年にはRef.5990トラベルタイム付きクロノグラフがリリースされている。
特に人気のあるステンレスノーチラス(メンズ)に限って言えば、現在のラインナップは3針ブレスが2色、年次カレンダーがストラップで1色ブレスで2色、プチコン1モデル、トラベルタイムクロノ1モデルの7モデル。価格は税抜271万円(3針)~582万円(トラベルクロノ)となっている。ストラップ仕様の5726Aは431万円でちょうど真ん中あたりに位置する。
ちなみにジェラルド・ジェンタはラグスポ系の人気モデルを本当に沢山デザインしているがノーチラスが大のお気に入りだったそうで、亡くなる2年前の2009年に初のレディスノーチラスにもデザイン協力で関わっていたそうである。
年次カレンダーについては過去何度も書いているが、初出は1996年でそれまでの永久カレンダームーブをベースに簡素化するのではなく完全なる新規設計がなされた。当時は徐々にクオーツショックからスイス機械式時計産業が立ち直り始めた頃で超の付く複雑時計(永久カレンダー等)はごく一部のコレクター向けとなっていた。そこでパテックは製造の手間やコストがかかり調整も大変なレバー主体ではなく、実用性が高く信頼性や耐久性も高い歯車を主体に機構を考案し特許を得た。それにしても結構なお値段ではありますが・・
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元々1976年に薄さと当時としては画期的な120mの防水性(=堅牢性)を両立するために考案された特殊な2ピース構造の為に考え出されたケース両サイドの"耳"。当時リーダーシップを受け継ぎつつあったフィリップ・スターン氏(現会長)も厚みとその形状には確信を持てなかったとの記述がある。個人的にも20数年前の初見時のノーチは正直好みとは言えなかった。
美人は3日見れば・・・と同じで超ロングセラーモデルは案外とっつきが大した事が無いのかもしれない。逆に短期的なベストセラーは誰もが一目惚れだったりして。
発売当時は上下の2ピースを微妙な調整しながらセット(すり合わせ)していたのでピース毎の互換性が無かった。40年間の様々な技術革新によって現行モデルでは互換可能な3ピース構造となり裏スケルトン仕様にすらなっている。
尚、ステンレスモデルノーチでストラップ仕様は現在このモデルのみであり、ラバー調のスペアストラップが付属されている。
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Ref.5726A-001

ケース径:40.5mm(10時ー4時方向) ケース厚:11.3mm ラグ×美錠幅:25×18mm 
防水:12気圧
ケースバリエーション:SSのみ 
文字盤:ブラックグラデーテッド 夜光付ゴールド植字インデックス
ストラップ:マット(艶無)ブラックアリゲーター 他にブラックラバー付属
価格:お問い合わせください

Caliber 324 S QA LU 24H/303

直径:33.3mm 厚み:5.78mm 部品点数:347個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

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Georgia on my mind(我が心のジョージア)が下手なカラオケの十八番。絶唱タイプの英語の歌なので聞かされる方はかなり心地悪いだろうなと思いつつ酔いが進むと、ついリクエストしてしてしまう。気分は完全にレイ・チャールズ・・
このジョージア州の州歌にもなっているこの名曲を、個人的にはずっとレイ・チャールズのオリジナルナンバーだと思っていた。だがウイキペディアによれば彼の生まれた1930年に作詞作曲され多くのミュージシャンにカバーされたジャズのスタンダードナンバーとある。レイ・チャールズ自身のカバーは1960年でミリオンセラーの人気を博し、1979年に州歌となり1996年の州都アトランタでのオリンピック開会式では彼が歌唱している。

最新のパテックフィリップマガジンⅣ04号巻末の連載「時計のある人生」には6~7歳の頃に緑内障で全盲になったレイ・チャールズが名声の頂点にいた1963年に時計愛好家のプロデューサーからユニークな時計をプレゼントされた逸話が取り上げられている。パテック フィリップが初めて特別製作したプラチナ製点字腕時計Ref.3482は強力なぜんまいを備える懐中時計用のムーブメントが積まれた。点字時計は時分針を指で触れるために強力なトルクパワーが必要とあり、指での判読を容易にすべくダイアルは当時としては大きな37mm直径であった。掲載イラストでは詳細は不明ながら指先で触るダイヤモンドインデックスが採用され、むき出しの文字盤を守るヒンジ付きのカバーにもダイヤモンドがセッティングされていたラグジュアリーウオッチだったようである。オリジナルのレザーストラップ仕様は彼の常時着用で後にプラチナのメタルブレスに交換されたとある。
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記事を書いているジョン・リアドン氏はレイ・チャールズの息子であるレイ・ジュニア氏に取材の機会を得て、この時計に関する様々なエピソードを文中で紹介している。一文を引用すると
「父親にとって時刻は重要でした。盲目なので、昼夜が分からなかったからです。少なくとも一時間に1回は、軽く時計を叩いてカバーを開き、文字盤の上を優しくなぞり、時計を耳に当てて、リズミカルな音を聞いて微笑みました。その音だけで父は幸せだったのです。(原文のまま)」
調べてみると今は流行りのスマートウオッチタイプの点字腕時計も作られているし、安価なクオーツの物もたくさん作られている。しかしクオーツ以前の1960年代前半にこんな贅沢でしかも実用性もある盲人用時計を常用出来た人は世界中にどれだけいたのだろう。またそのリクエストに答えたパテック社も凄いと思わざるを得ない。勝手な憶測だが恐らくパテックにとってアメリカが特別に重要なマーケットであったかの証ではないかとも思われる。
その関りはブランド創業間もない1854年のアントワーヌ・ノルベール・ド・パテック自らの初訪米にはじまる。1895年にはアメリカに代理店を設立。1900年前半にはよく知られたヘンリー・グレーブス・ジュニア氏とジェームス・ウォード・パッカード氏の超複雑系時計コレクション競争。1940年から1960年代初めにかけては生産本数の約半分がアメリカ人に販売されていた事実(PPマガジンⅣ03)。そしてパテック社による世界初のアンティーク時計展示会を1969年テキサス州ダラスで開催している。新しいところでは今夏ニューヨークで「ウオッチアート・グランド・エキジビション」の一大イベントを開催・・・
あらら、話がずいぶん脱線しましたが、今回はファンのレイ・チャールズがパテックの特殊時計を愛用していたとは、目からうろこの乾でした。

文責:乾

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昨年の2016年にパテックは永久カレンダーの代表的モデルを大胆にチェンジした。37.2mm径のRef.5140(上画像)の18金モデル(プラチナ除く)を全て生産終了し、その後継機として1.8mmサイズアップさせたRef.5327(下画像)を発表。スッキリでシンプルな印象の前作に対して、時分針は武骨目なドーフィンから少し色気を感じるリーフハンドになり、アワーインデックスはバーからブレゲアラビックに変更され、ミニットインデックスも少し大振りになって受けるイメージはかなり変わった。特にホワイトゴールドバージョンは前作のあっさりしたシルバーから昨今流行りの青文字盤と同色の青ストラップの採用で完全に別物の新しい時計になっている。
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ケースサイドは現代パテックの最先端デザインが採用されている。すなわちラグにかけての横っ面の大きなえぐり込みとベゼルの逆ぞりである。このデザイン特徴がこの時計の方向性を示しており、パテックを代表する顔でもある永久カレンダーにも現代流の新しい解釈がなされたように思う。サイズの微妙なアップについてはトレンド的に少し遅い気がする方もいらっしゃるかもしれないが、元の37.2mmが充分に小さいので39mmに大き過ぎ感は全くない。厚みもバランスを取るためか約1mm弱厚くなった。
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搭載エンジンは極薄自動巻きマイクロローターのCal.240に永久モジュールを組み込んだ前作Ref.5410と全く同じである。今年40周年を迎えたこの偉大なムーブメントは、ワールドタイムや超絶クラスのセレスティアルにまで本当に幅広く長きに渡って使われている。例年バーゼルのパテックブースで展示される希少なハンドクラフトとして展示されているクロワゾネなどの装飾文字盤モデル(2針カラトラバクンロクタイプ)もほぼ全てこの極薄キャリバーが積まれている。恐らく様々な装飾による文字盤の厚みがクリア出来て秒針も不要なので最適なエンジンなのだろう。

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Ref.5140Gー001 自動巻永久カレンダー
ケース径:39.0mm ケース厚:9.71mm ラグ×美錠幅:19×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGRGYG 
文字盤: ロイヤルブルー サンバースト ゴールド植字ブレゲ数字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)ネイビーブルーアリゲーター
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:税別 9,520,000円(税込 10,281,600円)2017年8月現在

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Caliber 240 Q 

直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:275個 石数:27個 受けの枚数:8枚
パワーリザーブ:最低38-最長48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

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文責:乾

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昨年のバーゼルはこのモデルの話題で随分盛り上がった。音系とカレンダーを除いた2大コンプルケーションともいえるワールドタイムとクロノグラフとの夢の組み合わせ。今まで無かったのが不思議だなと発表時には思ったものだが、実は毎日のようにその原型となった時計を見ていたのだった。本ブログのテキスト的存在の「PATEK PHILIPPE GENEVE」HUBER & BANBERY著のブックカバー掲載のRef.1415HUがそれ。手巻きクロノグラフに初期型のワールドタイムを組み合わせたスペシャルオーダーのユニークピース(製造No862 442)。一番外側のシティディスクは手動で、インナーの24時間リングはリューズの時刻調整と連動して操作する形。現代では別々のLONDRES(LONDON)とパリが同じタイムゾーン。東京はTOKIOとされ隔世の感がある。
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ところでこの時計の解説文には30分計クロノグラフとの記載があるが、どう見てもそれらしき機能は見られない。ただこの時計にはパルスメーター(脈拍計)が2系統も用意されている。外側の220-20目盛が15回の脈を数えて1分間の脈泊数を知るレールで24時間計の内側60-10目盛のレールは5回の脈で1分脈拍を読むチョッとずぼらな脈拍計。他ブランド等の手巻きクロノグラフでパルスメーター付を見てみると30回脈で測定するタイプが多い。想像するにこの時計はタイムゾーン移動の多い医療関係者が積算目的ではなく脈拍測定を主な用途としてクロノグラフ機能を特注で附加したのかもしれない。
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翻って現代版にはやや小ぶりな30分積算計が付きパルスメーターは無い。タイムゾーン移動はリューズではなく10時位置のプッシュボタン一つで短針とシティディスク&24時間ディスクを連動して1時間単位で同時に変更できる。これは1959年にジュネーブの時計師ルイ・コティエ氏が開発・特許化した技術。実に60年近くにわたって使われ続ける実用的な仕組み・・誠に機械式時計の世界は息が長いと言うか何というのか・・
ダイアルセンターは定番ワールドタイムに倣ってギョーシェ装飾が施されている。紋様はシンプルかつ力強くモダンテイスト。ちなみにクロノグラフはパテック最先端の垂直クラッチ搭載のフライバック付き。キャリバーで言えば自動巻CH28-520系なのだが、初見では一瞬手巻きではないかと思ってしまった。それは各プッシュボタンの形状がスクエアかつ上下面がサテン仕上げになっているためだ。この組み合わせは現行ラインナップでは初めてのハズ。まあ30分計が6時位置なのでキャリバーは限られるのだけれど・・
ラグの形状もワールドタイム繋がりでか段差付きのウイングレットラグ。
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尚、クロノ秒針がこの時計では通常秒針として使用可能である。これはパテック開発の優れた垂直クラッチの賜物である。また24時間ディスクとシティディスクの間にある秒スケールは28800振動(4Hz)に合わせて4分の1秒で刻まれている。どうもこの時計、ケース形状はクラシカルながら顔は結構モダンである。
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フルローター自動巻きに垂直クラッチという厚みが出る組合せにワールドタイムモジュールを組み込んでいる。それでもムーブ厚を7.79mmに抑えている。構成部品数343個もあるというのに流石です。実はスペースの都合で30分計の位置がオリジナルから微妙に変更されているらしい。ケース厚さ12.86mmもスクリューバックケースに両面スケルトンなら妥当な厚みか。

Ref.5930G-001 ワールドタイム自動巻フライバッククロノグラフ
ケース径:39.5mm ケース厚:12.86mm ラグ×美錠幅:21×16mm
防水:3気圧
ケースバリエーション:WG
文字盤:ブルーオパーリン ハンドギョーシェ 蓄光塗料付きゴールド植字バーインデックス
ストラップ:マット(艶無し)ネイビーブルーアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:税別 8,040,000円(税込 8,683,200円)2017年8月現在

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チョッと飛び気味になってしまった後ろ姿。

Caliber CH 28-520 HU:ワールドタイム機構付コラムホイール搭載フルローター自動巻フライバッククロノグラフムーブメント

直径:33mm 厚み:7.97mm 部品点数:343個 石数:38個 
パワーリザーブ:最低50時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾
参考:Patek Philippe Internaional Magazine Vol Ⅳ No.2
Wristwataches Martin Huber & Alan Banbery P.270




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いまやカラトラバの定番の顔として定着している6000番系。元々はRef.5000として1991年にスタートしたカラトラバファミリーの一員。
搭載キャリバーCal.240の構造上の要因でセンター秒針や6時側スモールセコンドではなく4時位置辺りに小秒針がオフセットしてレイアウトされたパテックのコレクションとしては数少ないアシンメトリー(左右非対称)なモデル。さらにそれまでのパテックには見られなかったスポーティなアラビアインデックスと言う事もあってデビュー当時は賛否両論があったように記憶している。
個人的には若干の違和感を感じていたのだが、最近のRef.5000の再販相場を見ていると結構なお値段になっている。どうも思っていた以上に流通量も少なく人気のカラトラバコレクションになっている。
寿命も非常に長くて初代のRef.5000は発売14年後の2005年に2代目Ref.6000に引き継がれた。新たにポインターデイトというこれまたパテックでは超レアなカレンダー機構を備えてより一層華やかな体育会系の顔になった。
そして12年を経て今年、搭載キャリバー240の40周年を記念して顔はほぼ同じで2mmサイズアップされてRef.6006が発表された。6000はグレーや青や茶と言うカラフルな文字盤が続いたが今回はWGケースに黒文字盤の採用で渋く仕上がっている。ポインターデイト針先の赤色も黒を背景によく効いている。

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ベゼル部は少しだけ盛り上がっているが、ケースサイドは武骨な印象でクンロク系のカラトラバ血流を感じさせる。ただ2mm大きくなった分、緩やかにカーブを描きながら下がってゆくラグ形状で腕なじみを良くしているようだ。
手巻きで薄いRef.5196などはほぼ横一直線(下画像)でラグ先端部分でチョコっと下げられているのと対照的だ。
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裏蓋はスクリューバックの捻じ込み式でサファイアクリスタルバックとなっている。フルローターと違って、沈胴式のマイクロローターはテンプのパフォーマンスを常に楽しませてくれる。
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ダイアルカラーがシックな無彩色のブラックになり色目を気にすることなくスーツはもちろん、スポーティーなインデックスデザインはカジュアルにも幅広くマッチする。使い回しが効くとても実用的なデイリーパテックが登場した。

Ref.6006G-001
ケース径:39.0mm ケース厚:8.86mm ラグ×美錠幅:22×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤:エボニーブラック サンバースト&しルバリィグレイ ホワイト&ブラックの転写
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター
価格:税別 3,340,000円(税込 3,607,200円)2017年8月現在

Caliber 240 PS C

直径:30mm 厚み:3.43mm 部品点数:191個 石数:27個
パワーリザーブ:最低38時間ー最長48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

2017年10月13日現在 ご予約可能、お問合せ下さい。

パテック フィリップの公式ホームページがリニューアルされた。ジャパンからの説明によれば1997年にスタートした公式ページは5回の更新がなされ今回がバージョン6。よりスマートフォン寄りで、製品をより魅力的に見せながらお気に入りモデルが検索しやすくなっている。でも残念なのは歴史が詳細な年表スタイルから非常に完結で解りやすい2本の動画(しかも英語字幕)になったことでブログ作成の参考にはしづらくなってしまった。こんな事なら全部ダウンロードしておくべきだった。幸いなことに個々の商品ページのアドレスは変更が無く過去記事のリンク切れにならなくて済んだ。でも技術解説などで一部リンクが当て外れにはなっているようだが全部は未チェック。確かに見やすくなり誰にでも取りつきやすくなった半面、突っ込んだコンテンツが少し整理されてカジュアルになった印象だ。
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さて本日のご紹介は本年新作の中でも人気急上昇の永久カレンダーRef.5320G-001。パテックのシンプル系永久カレンダー(クロノグラフ等の追加機能無し)の代表作は極薄自動巻キャリバー240ベースの三つ目タイプ。そしてフルローター自動巻キャリバー324にレトログレードデイトを組み合わせたタイプの二つ。5320Gはこのいづれでもない新規の顔ながらダブルギッシェの年次カレンダーRef.5396にはソックリ。でも年次カレンダーが無かった1960年までの機械式時計黄金時代におけるパテックの永久カレンダーと言えばこの顔に決まっていた(下画像Ref.1526)。だから凄く既視感があるしリリースにも″コンテンポラリー・ビンテージ・スタイル"と表現されている。ただ当時は無かった7時半にある昼夜表示窓や4時半のうるう年表示の便利機能が盛り込まれている。
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そしてこの新製品の特長的なラグは1945年製作のRef.2405(下画像)が参考にされた。
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ポリッシャー泣かせの3次元なラグ形状である。
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立体的なボックス型のサファイアクリスタルは文字盤周辺に全くひずみが見られない。現代ならではの高度な加工がなされたクリスタルを特殊な手法でケースにはめ込む事で完璧な視認性を確保したと聞いた。アラビアインデックスもいにしえのRef.1526同様に立体的かつ正対書体の植字タイプで蓄光塗料を塗り込んで実用性を高めている。暖か味のあるクリーム色文字盤はラッカー仕様ながら記憶にない新色で今年の新作ミニットリピーターRef.50785178のエナメル仕様のクリームと酷似している。インデックスを含めダイアルはビンテージ感を非常に意識したカラーリングとなっている。

さて、このモデルの最大の魅力はその価格設定ではないかと思う。税別902万円(税込9,741,600円)はパテック永久カレンダー中で最もこなれた価格である。現行モデルではRef.5139Gの税別926万円より20万以上お求めやすい。共通のCal.324ベースのレトログラード永久Ref.5496Rが約20万高の税別927万なのだけれどもオーソドックスなクンロクケース。それに対して5320の凝ったラグを持つケースは横から見ても充分に高級感があるし文字盤・サファイアクリスタルも完成度が高い。少々不思議なこの値付け、そりゃ人気モデルになりますよ!
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Ref.5320Gー001 自動巻永久カレンダー
ケース径:40mm ケース厚:11.13mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤: クリーム ラッカー 蓄光塗料塗布ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)チョコレートブラウンアリゲーター
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:税別 9,020,000円(税込 9,741,600円)2017年8月現在

Caliber 324 S Q

直径:32mm 厚み:4.97mm 部品点数:367個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

パテック社の製品リリース
PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾



永久カレンダークロノグラフRef.5270の記事でも触れたがパテック フィリップは100年以上にわたるクロノグラフタイムピースの輝かしい歴史を持っている。その一方で厳密に言えばこの分野ではマニュファクチュール(完全自社設計開発生産)のキャリバーを持たずについ最近(2004年)までエボーシュより専用のエンジン供給を受けてきた。1900年代前半にはジュ―渓谷ル・サンティエのヴィクトラン・ピゲ、1929年以降はバルジュー、1986年からはヌーベル・レマニアがサプライヤーの重責を果たしてきた。
しかし2000年代に入るとスオッチグループ傘下のレマニアからの安定供給に危険信号が燈るようになりクロノグラフキャリバーのマニュファクチュール化プロジェクトが進められた。で、最も難しそうな手巻スプリットセコンドクロノグラフを1920年代のエボーシュキャリバーを手本に開発し2005年にRef.5959を発表した。ただしこのキャリバーCal.CH27-525は昔ながらの工房内で限られた熟練職人の手作業によって全工程を2度組される伝統的な製作手法によるため極端に生産数が少なくかつ非常に高額なエンジンである。翌2006年には同じクロノグラフでも非常に現代的である程度の量産が可能ないわゆる″シリーズ生産"型の自動巻クロノグラフCal.CH28-520が開発された。さらに2009年に古典的な美観を備えた手巻シンプルクロノグラフCal.CH29-535が発表されパテックのクロノグラフ自社化は完結した。
今回紹介のRef.5960はこの2番目に開発発表されたCH28-520を始搭載したデビューモデル。発表年2006年のバーゼルはこの画期的なクロノグラフの話題で持ちきりだった。垂直クラッチを備えた自動巻きクロノというベースキャリバー開発だけでも話題性充分なのにパテックはいきなりパワーリザーブと年次カレンダーのモジュールを追加し、プラチナケースに搭載してきた。このモデルはケース形状やダイアルデザイン共にクラシックと対極の現代パテックのモダンテイストで仕上げられた。逆ぞりのベゼル、12時側に弓状に並ぶカレンダー表示窓、30分と12時間のクロノグラフ積算計の同軸表示。さらにはカラーリングもスポーティなレッドやブルーを差し色にする事でそれまでになかったパテックの新しいイメージが打ち出された。
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当初プラチナ以外の素材ではリリースしないと言われていた5960Pは2014年にベストセラーかつ希少モデルのまま生産が中止され、ドロップリンクブレスレットを備えたステンレスモデルの後継機Ref.5960/1Aにそのモテモテ人気も一緒に引き継がれた。そして今春のバーゼルでそのステンレス白文字盤は生産中止となり今回紹介の後継モデル2型がラインナップされた。
まずステンレス新ダイアルの黒文字盤Ref.5960/1A-010。赤針2本以外の針色、カレンダー窓枠、インデックス、文字盤ベース・・見事にまで反転液晶のごとく白が黒に、黒が白に逆転されている。傾向として従来の白が良いとの評価もあるが、個人的には好みの問題で優劣を感じてはいない。
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上画像では針やインデックス等の鏡面部がブラックアウトしているが、実際の色目は下のようになっている。
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で、さらに5960としては3番目の素材WGが追加された。色目はトレンドのブルー。色使いは上のステンレスの黒が青にこれまた忠実に置き換わっている。ただしメタルブレス仕様ではなくどこかで見た事のある明るめのブラウンカーフストラップに個性的なピンバックル(Clevis prong buckle)が装備されている。明らかに文字盤カラーも含めて2015年発表のカラトラバ パイロット トラベルタイムRef.5524Gの流れを汲んでいる。
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こちらもSS黒文字盤同様にインデックス等がブラックアウトしてるので現物と見た目感はかなり異なり視認性は充分にある。バーゼルでの初見の印象は正直「売れるのか?売れないのか?よくわからない」。この点でも5524パイロットトラベルと同類なのだった。価格差は税別717万円と約200万円パイロットより高額である。いづれにしても好き嫌いのハッキリ別れそうな個性的な意欲作だと思う。

Ref.5960/1A-010 年次カレンダー自動巻きクロノグラフ
ケース径:40.5mm ケース厚:13.53mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:SS
文字盤:エボニーブラックオパーリン ゴールド植字バーインデックス
ブレスレット:両観音クラスプ付きステンレス5連ブレス 抜き打ちピン調節タイプ 
尚、参考の商品リリースはコチラから
価格:税別 5,560,000円(税込 6,004,800円)2017年8月現在

Ref.5960/01G-001 年次カレンダー自動巻きクロノグラフ
ケース径:40.5mm ケース厚:13.53mm ラグ×美錠幅:21×16mm
防水:3気圧
ケースバリエーション:WG
文字盤:ブルーバーニッシュド ゴールド植字バーインデックス
ストラップ:ヴィンテージ ブラウン カーフレザー クレビスプロングバックル付きブレスレット 
尚、参考の商品リリースはコチラから
価格:税別 7,170,000円(税込 7,743,600円)2017年8月現在

※以下過去記事より転載
冒頭でも触れたキャリバーCal.CH28-520は、それまで頑なに手巻きの水平クラッチに拘っていたパテックのクロノグラフ史を2006年に塗り替えたエポックメイキングなエンジンである。前年発表の完全自社クロノキャリバーCal.CHR27-525は確かに最初の100%自社製造ではあったが、それまでの伝統的製造手法でコツコツと工房で少量生産される手作り的エンジンであり、搭載されるタイムピースも商品というより作品と呼ばれるのがふさわしいユニークピースばかりだ。対してCal.CH28-520は"シリーズ生産"と呼ばれる或る程度の工場量産をにらんだ商業的エンジンであり、パテックフィリップが新しいクロノグラフの歴史を刻み込むために満を持して誕生させた自信作なのだろう。
パテックの自社クロノキャリバー3兄弟の価格は、その搭載機能や構成部品点数に比例せず、どれだけの手仕事が盛り込まれているかで決定される。金銭感覚抜群で働き者の次男CH28-520 C(自動巻、垂直クラッチ、フライバック、部品点数327点)、次がクラシックだけどハイカラな3男坊のCH29-535 PS(手巻き、水平クラッチ、部品点数269点)、そして金に糸目をつけない同楽な長男CHR27-525 PS(手巻き、水平クラッチ、ラトラパンテ、部品点数252点)の順となる。
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上記画像でローターで隠された部分は3枚の受けがあるが、この部分はどの派生キャリバーもほぼ変化が無い。それに対してテンプ左のPPシールの有る受け、さらに左の複雑なレバー類がレイアウトされた空間は派生キャリバー毎にけっこう異なる。必要なミッションに応じて搭載モジュールがダイアル側で単純にチェンジされるだけでなく裏蓋側の基幹ムーブメントへもアレコレと手が入れられている。

Caliber CH 28-520 IRM QA 24H:年次カレンダー機構付きコラムホイール搭載フルローター自動巻フライバッククロノグラフムーブメント

直径:33mm 厚み:7.68mm 部品点数:456個 石数:40個 受け:14枚 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
又スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾

今年の新作にはどうも昨年のノーチラス発売40周年記念モデルからインスパイアされたものが多いように思う。先日紹介した手巻クロノグラフRef.5170Pの深い紺色の文字盤とバゲットダイアモンドインデックス。この組み合わせは年次カレンダーRef.5396Rの新色追加モデルにも採用されている。そして発売20周年を迎えたアクアノートの新作Ref.5168GにはWG+サイズアップ+ダークブルーダイアルというやはり40周年記念ノーチのフライバッククロノグラフモデルRef.5976Gの骨組みが与えられた気がする。
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パッと見て、今まで無かったという感じがしない。誤解を恐れず言えば目新しさは無い。それくらい濃紺(青?)の文字盤とトロピカルストラップがしっくりし過ぎている。単独で見れば大きさも全く違和感が無い。人気品薄のステンレス3針Ref.5167Aも手元にある訳がないので同じくサンプルで来ていたローズゴールドRef.5167Rと並べて撮ってみた。
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相当長く地方巡業をしてきたのだろう。ローズゴールドサンプルのトロピカルラバーには良い感じ?の半光沢が出て艶っぽくなっている点はご勘弁ください。一見するとそんなにケースと文字盤のサイズ感の違いを感じないかもしれないが、サテン仕上げされたベゼルのドーナツ部分の幅が両者で同じなのにWGがずいぶん細く感じるのがサイズ違いの証。プレスリリースではこの従来サイズを1.4mm大きくした42.2mmと言うサイズは"ジャンボ"と愛称がついた1976年初出の初代ノーチラスRef.3700へのオマージュとされている。
3月のバーゼルパテックブースで初見時の印象は「なんで今まで無かったの?」と言う既視感だった。それほどサイズアップに違和感が無かったし、色目もあって当然の定番かつトレンドカラー。ただ他ブランドなら18金ではなくステンレスで発表してイージーな売上貢献を狙うのだろうが、流石にゴールドスミスのパテックはどちらで出してもエンジンの配給的に生産数が同じようなものになるのだろう。実際結構なお値段(税込4,536,000円)にもかかわらず注文が殺到して店頭にはしばらく並ばない状態と聞いている。この飢餓感がさらに人気を生むというブランドにとっての"好循環?"・・
実際に腕に乗っけてみると、やはり大きさをしっかり感じる。下の画像の様に大きくなれどノーチ&アクア兄弟の真骨頂であるケースの薄さ(8.25mm)はほぼ保たれているので余計に裏蓋の面積を感じてしまう。自身の腕廻りは平均より太目なので問題無く乗っかったが、正直細めや丸い目の腕廻りの方には座りが悪いかもしれない。まあ最近のデカ厚時計をサイズ関係なしにガンガン着用される方には全然大丈夫で、むしろ着け心地の良いデカ薄時計?。
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Ref.5168G-001
ケース径:42.2mm(10-4時方向)ケース厚:8.25mm ラグ×美錠幅:22×18mm
防水:120m ねじ込みリューズ仕様
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤:ブルーエンボス ブラックグレデーテッド 蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
ストラップ:ミッドナイトブルーコンポジット《トロピカル》ストラップ(ラバー)アクアノート フォールドオーバー クラスプ付き 
価格:税別 4,200,000円(税込 4,536,000円)2017年8月現在

120m防水を生むスクリューバックの裏蓋のサファイアクリスタルバックからは入念に仕上げられたムーブメントを鑑賞する事が出来る。実用性最重視であってもゼンマイ心を忘れないパテック流のおもてなし。フルローター自動巻の裏スケルトンは半分しかムーブメントが可視できないので無理やり感があるのだがパテック フィリップは21金ローターそのものを主役にすべく見事な仕上げを施している。
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※上の画像は手抜きのトラベルタイムRef.5164Aを転用

Caliber 324 SC/393

直径:27mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、ムーブについての過去記事はコチラから
又スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2017年9月17日現在
Ref.5168G-001 ご予約いただけます

店頭に中々在庫が持てないグランドコンプリケーションクラス。皆さんご存知だとは思うけれど時価(価格表でPrice on request表示のもの)となっているモデルは100%客注対応でほぼ受注生産に近く、サンプルすら日本には常備されていない。価格設定されているモデルでも生産数が極端に少なくて人気の高い数モデルについては、ある程度の購買実績を積み上げて、手続きを経ないと購入できない。例えばワールドタイムクロワゾネモデルRef.5131や永久カレンダースプリットセコンドクロノグラフRef.5204などがそれにあたり、もちろん在庫することは不可能だ。これら特別なタイムピースは撮影のチャンスもまず無いし、手に取ってじっくり見る事すら叶わないので、掘り下げたご紹介も難しい。このように閉鎖的とも見える現在の販売手法には批判的なご意見もあるが、あくまで個人的とお断りして色んな意味で″仕方がない"と思う部分と下駄履き絶対お断りというメゾン系ブランドが時計業界に一つ位はあっても良いように思っている。
結局グラコンで在庫したり紹介出来たりするのは永久カレンダーか今回紹介の永久カレンダークロノグラフあたりに限られてしまう。それでも前者が1,000万円前後、後者は約1800万円なので気軽にストックは出来る代物ではない。今回も展示会にやってきたサンプルをドタバタと撮影した。
以前にも書いたがパテックを代表する顔はたくさんあるが、手巻きの永久カレンダークロノグラフもその一つだと思う。パテック フィリップ マガジン各号のオークションニュースでは常連のように出品が多い。

まずシリーズ生産された最初の永久カレンダークロノグラフモデルは1941年~1951年(たぶん?)に281個製作されたRef.1518。画像は1943年製作のタイムピースで極めて希少性が高くイエローゴールドの時計としてのオークションレコードCHF6,259,000(=約7億千3百万円余り)で2010年にジュネーブで落札されている。
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ちなみに昨年11月に腕時計の世界最高落札価格は更新されている。これまたRef.1518(下)で、わずか4個体しか確認されていないステンレススチール製である。価格はCHF11,002,000(約12億5400万円余り)ヴィンテージウオッチの価値においては、希少性が材質や機能性をしばしば凌駕するようだ。尚、それまでのレコードホルダーはやはりパテック。ただしヴィンテージではなく2015年にオンリーウォッチ・チャリティー・オークションの為に1点製作されたやはりステンレス仕様のRef.5016Aだった。パテックだけがパテックを超えてゆく状態はいつまで続くのやら・・
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1951年以降は1518と同じレマニアのキャリバー13'''を搭載したRef.2499が登場した。インデックスはアラビア数字からバーになり、6時のカレンダーサークルが力強く大き目になった。2499は85年まで34年間の長きにわたって製作された。生産終了時には記念のプラチナ仕様が2個だけ1987年に製作され、1989年にパテック フィリップ創業150周年にオークション出品された。当時の落札価格がCHF24万(=約2,736万円)だったが2012年に14倍の価格CHF344万(=3億9千万円強)で落札されたのは著名なロックギタリストのエリック・クラプトンが長期間所有していたからである。尚、残るもう一つのプラチナモデルはパテック社のミュージアムピースとして収蔵されている。

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1986年からはレマニアの新しいクロノグラフキャリバーCH27-70系を採用したRef.3970がスタートした。それまでのCal.13'''と異なりうるう年表示と24時間表示がインダイアルに追加された。そんなに古いものではないのに画像が荒くて恐縮です。
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Ref.3970は18年間のロングセラーの後、2004年に後継機種Ref.5970にバトンを渡す。キャリバーCH27-70Qはヌーベルレマニアエボーシュの最後のエンジンとしてそのまま引き継がれたが、ケース形状についてはクラシカルとモダンの融合への挑戦がなされた。まずウイングレットと呼ばれる翼を模した段差付きのラグ形状は1942年発表のRef.1561からインスパイアされたとある。またクロノグラフプッシャー形状も華奢なラウンドから1518時代に採用が多かった少し武骨で大振りなスクエアボタンとなった。ボタン上下面のサテン仕上げが実に渋い。それらとは裏腹に内反りしたベゼルは知る限り2000年代になってからチャレンジングなモデルに共通して採用されている現代パテックの特徴的なデザインである。
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そして2011年、今回紹介のRef. 5270がようやく登場となる。このモデルチェンジではウイングレットラグやコンケーブベゼル等のケースデザインが5970からほぼ継承されたが、エンジンはパテック初の完全自社設計製造のマニュファクチュール度100%の新開発手巻きクロノグラフCal.CH29-535をベースとして永久カレンダーモジュールが組み込まれて搭載された。新キャリバーはポストレマニア時代を背負う自社開発クロノキャリバー3部作の最終発表の集大成キャリバーとして高い完成度を有していると思われる。エンジン変更に伴って文字盤には若干の変更が加えらている。3時と9時のインダイアルがセンター針と横一線ではなくて少し6時側方向に下がった事で、4時のインデックスが歴代モデルで採用されていた短めのバーからピラミッドになった。うるう年が3時の指針から4時半の小窓の数字表示となり、24時間表示も9時の指針表示では無く単純な昼夜表示として7時半の小ぶりな窓表示に置き換えられた。結果的にインダイアルがすっきりし、視認性が格段に向上した。
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現行のRef.5270の詳細。まずウイングレットラグ。サンプルなので小キズや埃はご勘弁と言う事で・・
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サイドは当然それなりの貫禄。と言っても12.4mmはマザーキャリバーCH29-535PSを積んだRef. 5170(10.9mm厚)に加えること1.5mmで、ムーブメントの厚さ比較でも1.65mm差となっている。ただラグも含めてグラマラスなケースデザインからは数字以上の存在感を受ける。
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スクリュー(捻じ込み)構造のトランスペアレンシイのケースバックからは機械式時計一番の男前?正統派手巻きクロノグラフが堪能できる。各プッシャーと連動して正確無比に動作するレバー類のパフォーマンスは見飽きる事が無い。
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ご多聞に漏れずRef. 2499時代に迎えたスイス機械式時計暗黒時代1960年~80年代前半にはかなり生産数が絞られたようだが、1941年以来絶えることなく生産され続けているパテックの永久カレンダークロノグラフ。日常的に愛用されるシンプルな時刻表示機能に特化した腕時計がその時々の時代背景で様々な表情の流行り廃りを経験するのとは対照的に、贅沢かつ趣味性が強く蒐集指向もある為なのか殆ど顔が変わらずに脈々と作り続けられている永久カレンダークロノはやっぱり安心してお勧めできるパテック フィリップの代表格だと思う。

Ref.5270R-001

ケース径:41mm ケース厚:12.4mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RGのみ
文字盤:シルバーリィ オパーリン、ゴールド植字バーインデックス
ストラップ:手縫いマット(艶無)・ダークブラウン・アリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:税別 17,920,000円(税込 19,353,600円)2017年8月現在

Caliber CH 29-535 PS Q:手巻クロノグラフ永久カレンダームーブメント
瞬時運針式30分計、昼夜表示、コラムホイール搭載
直径:32mm 厚み:7mm 部品点数:456個 石数:33個 
パワーリザーブ:最低65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

2017年9月12日現在 ご予約対応となります。

文責:乾

Patek Philippe Internaional Magazine Vol.Ⅱ No.5 P.66 VolⅢ No.3 P.68 No.8 P.70 Vol.Ⅳ No.3 P.68
Wristwataches Martin Huber & Alan Banbery P.305

パテックよりイレギュラーなプチ製品追加情報が来た。こうゆう「突然お邪魔します!」的なモデル発表はいつも可哀そうだと思ってしまう。拙ブログで毎年一番アクセスが多いのがバーゼル訪問前後の新製品紹介編。2番目がそれに先立つ生産中止情報編。それほど時計ファンにとってお気に入りブランドの継続・廃番・新作は気になってしょうがないところ。昨年のノーチラス発売40周年記念限定モデルの様にストーリーが有ってそれだけで盛り上がれるタイムピースは良い。むしろブランドにとって貴重な別アカウントでの商戦作りも出来よう。だからこそ中々周知されにくいであろうプチ情報も丹念にお伝えしてゆきたい。けっして流行らない(流行り過ぎた?)寿司屋のようにネタが尽きたという訳では・・・

レディスの年次カレンダーは2005年にメンズ2代目Ref.5056と似た顔Ref.4936で発表された。女性向けにマザーオブパール(MOP)文字盤が採用され、WGにはタヒチ産黒蝶貝、YGとRGにはバリ産白蝶貝が使われていた。ベゼルには二重巻きでダイアモンドセットされていた。パワリザはゼンマイ臭いのが敬遠されてか省かれていた。翌年の2006年には豪華仕様のケースサイド及びラグにもダイアジェムセットがなされたRef.4937が追加されている。なぜかWG仕様はインデックスは斜体のかかったアラビアで転写となっていた。

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4936&4937のコンビは結構ロングセラーとなり2014年まで生産されたが、2015年発表の現行モデルRef.4947&4948に引き継がれた。二世代目の主な変更点はベゼルのみダイアの4947はダイアルがMOPからソリッド通常文字盤になり、ケースサイドとラグまでダイア装飾の入った4948のみがMOP文字盤とされて住み分けが図られた。インデックスは全て正体のアラビア植字となりケース径が1mmUPした。少し若返った印象だろうか。いづれにしても美人姉妹のような関係が続いている。
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で、いつもどおり前置きが終わって、今回の新色は豪華仕様の姉のWG素材の文字盤変更である。画像は質感が出ていないが資料には真珠母貝とある。我々もスイスパテック社のHP上の画像確認だけなので判然としないがアラビアインデックスのみが鏡面シルバー色(下画像とはかなり違うが?)でレールや曜日、月等のディスプレイはブラックのようだ。でもこの顔どっかで見た既視感があると思ったら、今年バーゼルでレディス永久カレンダーRef.7140に素材追加されたWGのスペアストラップ(シャイニーグリーンターコイズアリゲーター)仕様とか、妹分の年次Ref.4947Gに文字盤追加されたシルバリィ バーティカル アンド ホリゾンタル サテンフィニッシュド ダイアル(長っ!)とか。
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ともかく最近のパテックのトレンドなのだろうレディスはブルー系やグリーン、パープル、ピンクなど明るいビビッドカラーのアリゲーターストラップの採用がラッシュだ。

Ref.4948G-010 レディス年次カレンダー

ケース径:38.0mm ケース厚:11mm ラグ×美錠幅:19×14mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション: WG(別ダイアル有
文字盤:バリ産ホワイト マザー オブ パール、ゴールド植字インデックス
ストラップ: 青緑系アリゲーター ※カラー名称不明、パテックHP記載のブリリアント・ミンクグレーは誤植と思われる為
バックル:ピンバックル(Prong buckle)
ダイアモンド:ケース347個~2.65ct リューズ14個~0.06ct バックル27個~0.21ct 合計388個~2.92ct
価格:税別 7,670,000円(税込 8,283,600円)2017年9月現在
9月よりデリバリー予定

Caliber 324 S QA LU
直径:30mm 厚み:5.32mm 部品点数:328個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

パテック フィリップのブランドの歴史を集大成した豪華な書籍「PATEK PHILIPPE THE AUTHORIZED BIOGRAPHY」が届いた。
相当な重量物なので梱包も頑丈。捨てるのが惜しい立派な輸送用梱包箱
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まるで上質なチョコか菓子折りの様に金色のカラトラバ十字がモノグラム紋様に刷り込まれた薄紙で丁寧に包み込まれている本体
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ついにご本尊を拝むことが・・
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数か月前に前もって届けられた専用のブックスタンドに乗っけてみた。スタンドがあまりにも早く来ていたので、自分を含めて誰かが到着した本尊を間違って紛失したのではないかと一時は疑心暗鬼に駆られることも・・ご尊顔を拝見できてホッ!
中身は全て英語なので画像を眺めてどうしても気になる部分は妖しいリーディングをするしかない。パテックは書籍を結構発行していて中身的には過去に使われた画像が大半であり、アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックとフランソワ・チャペックそしてジャンーアドリアン・フィリップ各氏のブランド黎明期から始まるストーリーも従来の物がなぞられている。当然いまさらの新事実が出てくる方がおかしい。ただ全25章からなるストーリーは、これまで色々な書籍で取り上げられてきたエピソードやエポックメイキングな時計紹介を時間軸で追いかけ順序だてて構成しなおされた初めての文献だと思う。特に1932年以降の経営権を受け継いだスターンファミリー4世代(現代パテックと呼びたい)の我々にとってなじみ深い8章以降のストーリーが全体の7割程度なので親しみやすい。

P128-129 左が1900年代前半にアメリカで大成功した高級自動車パッカード社の創業者ジェームズ・ウォード・パッカード(James Ward Packard )氏の為に1923年に、右は同時期に活躍した銀行家ヘンリー・グレーブス・ジュニア (Henry Graves Jr. ) 氏用に1927年に製作された永久カレンダー付テーブルクロック。
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P326-327 スターンファミリー2代目アンリ氏夫妻の日本初訪問は1963年。クォーツショック真っ最中!背景はどうやら金閣寺?この訪問時に日本で初の展示会(左下)が東京で開催された。カラー写真は1967年に3代目フィリップ氏(初来日)と父親のアンリ氏。宴席を設けたのは日本にパテックブランド導入をされた一新時計創業者の西村隆之氏(故人、後列右から二人目)のようだ。告別式に会葬した記憶が・・DSC_8827[1].jpg
P.304-305 1976年に始まるノーチラスヒストリー。初代Ref.3700/1Aから2016年の発売40周年記念限定モデルまで主要モデル全30型が掲載されている。面白いのは30周年の2006年までが11モデルでその後の10年間で19モデル掲載というバランスの悪さだ。これはノーチラスの薄さと強靭な防水性能を両立させていた特徴的な2ピース構造が、2006年にフルモデルチェンジと言える3ピース構造に変更された事によって搭載可能なムーブメントのバリエーションが増え、一気にノーチラスコレクションが多彩になった事を示している。
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554ページの極厚本でズシリと存在感のある豪華本。店頭でいつでもご覧いただけます。ご希望の方には販売も可能です。税別定価24,200円は立派な装丁とボリュームからしてかなりパテック社が持ち出しをした特別価格と思われますナァ。

文責:乾

気がつけばもう8月も後半。今夏は梅雨明け以降で湿気がひどく寝苦しい夜が続いた。ところが盆を過ぎてからは夜が急に涼しくなり早朝足が攣ったり鼻かぜ気味になったりと体調管理が難しく厳しい夏だ。このやけに過ごしにくい粘着質の暑さはまだまだ続きそうなのだが・・皆様いかがお過ごしでしょうか。
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本日紹介は今年の新製品として初紹介となるRef.5170P-001。2010年にパテック フィリップ完全自社開発製造となる初の手巻クロノグラフムーブメントCH29-535PSを搭載してイエローゴールドのメンズモデルとして発売以来ホワイトゴールド、ローズゴールドとバリエーションが発表され今年初のプラチナ素材でのローンチとなった。この顔には既視感をお持ちの方も多いと思う。ケース形状は全く違うが昨年秋に発表されたノーチラス40周年限定モデルとして発表されたWGクロノグラフモデルとプラチナ3針モデルで採用された濃青色にバゲットダイアインデックスのコンビネーション。
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ノーチラスの文字盤には特徴的な横縞ボーダー柄があり、微妙な光の当たり加減によって作り出される魅惑的で多彩な表情に悩殺されっぱなしのノーチラスファンが跡を絶たない。5170PのダイアルはBlue sunburst black gradated 放射状の微細な刷毛目紋様の上に文字盤中心の青から円周部の黒へとグラデーションしている。手法は微妙に違うのだが色目の印象が非常に近くて派生モデルっぽく見える。
一般的に言ってメンズウオッチへのダイアモンド装飾はギラギラ感が押し出され過ぎる事が多く、好きな方はそれが魅力で着けておられる。パテックにおいてもベゼルへのダイアセッティイングモデルは存在感タップリで何処にも誰にも負けない立派なものです。ただ一連のノーチラスと言い、5170Pにしてもじっくり見ないと綺麗なバーインデックスに見えてしまったりする。これが押し出しは要らないが自分で満足できる特別感は欲しい時計ファン、パテックファンの背中を押したようだ。個人的にもベゼルダイアは一生腕に巻く事は無さそうだが、この手のモデルは躊躇なく着用可能だ。
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ダイアインデックスを包み込みダイアルにセットしているWGのホルダー。ショーピースを慌てての撮影なのであまり鮮明ではない。万が一の脱落を防ぐためか天地の爪がガッシリしている。ファセット面が非常に少ないのもキラキラ感を抑えている要因であろう。
今年の新製品で一番気になったこのモデル。バーゼルで始めて見てその文字盤の美しさに吸い込まれそうになった。先日久々にサンプルを見直してもその思いは変わらない。漆黒の艶っぽいアリゲーターストラップもダイアとの相性がすこぶる宜しい。
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ケース厚は10.9mmは薄すぎず暑すぎずバランスが良く端正で完成されたカラトラバクンロクケースに仕上がっている。スクエアのプッシュボタンは安定感があり、リセットボタンの押し加減は風の様に軽やかで癖になりそうな独特のフィーリングを持っている。
パテック社の商品分類ではグランド(超複雑)ではなく普通のコンプリケーション(複雑)に分類されている手巻クロノグラフ。しかしその製造方法はいわゆる″二度組"と言われるグランドコンプリケーションレベルと同じであり、時としてパテック社の関係者もグラコンと勘違いをしていることすらあって、価格的にもCH29系クロノはグラコン扱いで良いように思う。巷ではヌーベル・レマニア社のパテック向け専用手巻きクロノグラフキャリバーCH27-70が搭載された自社製化直前のRef.5070、それもプラチナ(ダイアルは確か濃い目のブルー)の人気が今日でもまだまだ高いそうだ。今回の5170のプラチナも将来そんな伝説のモデルに化ける可能性が有るかもしれない。

Ref.5170P-001

ケース径:39.4mm ケース厚:10.9mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:PT、RG(ブラック010ホワイト001
文字盤:ブルー サンバースト ブラック グラデーテッド バゲットダイアモンドアワーマーカーインデックス(~0.23ct)
ストラップ:手縫いシャイニー(艶有)ブリリアントブラックアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格、在庫:お問い合わせください

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以下過去記事より転載
搭載キャリバーは何度見ても惚れ惚れする美人ムーブのCH 29-535 PS。古典的と言われる水平クラッチ(キャリングアーム方式)は美観に優れ、クロノ操作を見る楽しみを与えてくれる。ところがクロノグラフスタート時にドライビングホイール(A、クロノグラフ出車)と常に咬み合っているトランスミッションホイール(B、中間車)が、水平移動してクロノグラフホイール(C、クロノ秒針車)と噛み合う際に、タイミングによって歯先同士がぶつかるとクロノ秒針が針飛びや後退を起こす弱点がキャリングアームにはある。これを解消するためにパテック社ではクロノグラフ輪列(前述のA~C)に特許による新しい歯型曲線を採用している。その他にもコラムホイールカバー(D、偏心シャポー)やレバーやらハンマー等々あっちゃこっちゃに、これでもかと特許技術を投入することで、古典的美観はそのままに時代を先んずる革新的かつ独創的な手巻クロノグラフキャリバーを完成させている。
※パテック社によるCH29-535の解説は→コチラから
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Caliber CH 29-535 PS:コラムホイール搭載手巻クロノグラフムーブメント

直径:29.6mm 厚み:5.35mm 部品点数:269個 石数:33個 受け:11枚 
パワーリザーブ:最低65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾

このモデル(リファレンス)を取り上げるのは実に4回目である。なにせこのモデルとの付き合い初めが個人的にあまりにも大事件だったのでどうしても思い入れてしまう。機械的な紹介はほぼダブってしまうのだが・・
永久カレンダーを複雑機構の看板にし続けてきたパテック フィリップが現代的で実用性の高い年次カレンダーを開発し特許を得たのが1996年。その際に永久カレンダーの簡素化で対応するのではなく、全く一から設計開発し極力レバーやカムなどの大振りなパーツを採用せず、出来る限り歯車輪列にて対応する事で文字盤レイアウトに自由度が与えられた。ただこの方式は輪列の増加による負荷の増大というデメリットがあった。これに対応するためパテックは徹底した歯車の設計の見直しと他ブランドでは真似のできない歯車の研磨仕上げでエネルギーロスをともかく低減させた。さらにトルクがしっかりしたベースムーブCal.324を搭載する事で安定した駆動を実現したとしている。
おさらいをさっと済ませて実機を撮影。
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パテックフィリップのリファレンス番号の後ろに付く枝番は知る限り001がニューモデルの初出の文字盤。元々2006年にカラトラバケースに年次カレンダーを搭載したRef.5396の枝番001はトリプルサークルと言われる個性的な文字盤仕様。パテックではよくある常套手段でお初ものには歌舞伎の隈取りよろしくファンの耳目を集めるべく厚化粧気味のニューフェースでスタートされる事が多い。
そして4年後の2010年にトリプルサークルは生産中止となり、今回紹介のソリッドな文字盤の枝番011が発表された。文字盤モチーフとしてのトリプルサークルそのものは年次カレンダーRef.5396に一年先立つ前年の2005年に発表された自動巻き3針カレンダーのカラトラバRef.5296G-001で採用されている。そしてこの自動巻クンロクでもソリッドなノーマルダイアルが010枝番で発表されている。
この年次カレンダーモデルは既に何度も紹介しているローズゴールドと常にセットで文字盤の発表や廃番がなされている。これは昨年の新作アラビアインデックス文字盤でも同様である。ただ今年はローズのみに新たなブルーダイアルがインデックス違いで2モデル追加された。ソリッドゴールドのバーインデックス5396R-014とバゲットダイアのバーインデックス5396R-015である。イエローゴールドはデビュー時から設定が無い。
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鏡面仕上げの横顔がカラトラバのクンロク(96)ケースの遺伝子を最も印象づけている。ケース厚さ11.2mmはフルローター自動巻きベースムーブメントに年次カレンダーモジュールを積み込んでなので充分に厚みは抑えられている。
パテックを代表する顔であるダブルギッシェ年次カレンダーRef.5396全6リファレンスで最もおとなしく上品な顔が今回紹介のモデル。個人的には機械式時計黄金期1920年頃~1960年頃の雰囲気が良く出ている一本かと・・

Ref.5396G-011年次カレンダー
ケース径:38.5mm ケース厚:11.2mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WG別ダイアル有)、RG別ダイアル1

文字盤:シルバーオパーリン ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
在庫、価格:お問い合わせください

以下過去記事より転載
搭載キャリバーは21金フルローターを採用したパテックを代表する自動巻きCal324に年次カレンダーモジュールを組込んでいる。
カレンダー系の操作は禁止時間帯等あって気を使うが、パテックの場合は殆どの物が午前6時(例外あり)に時刻を合わせてプッシュ操作を行う。ムーンフェイズはいつもネット検索して確認していたが、パテックHP内にある確認ページが結構便利である。
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個人的にフルローター自動巻きの裏スケルトンには一抹の気色悪さをいつも感じてしまう。ただパテックの場合はローターの仕上げが尋常でなく美しい。撮影の度に改めてそれを感じる。PCモニター画像ではそれを表現しきれていない。連日の猛暑で目も腕もなまくらになった事にしておこう。

Caliber 324 S QA LU 24H/303

直径:33.3mm 厚み:5.78mm 部品点数:347個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

昨年度に引き続き今年もお盆に「パテック フィリップ展」を開催いたします。
カサブランカ奈良『2017パテック フィリップ展』
日時:8月11日(金・祝)~13日(日) 3日間 11002000
場所:当店2階パテック フィリップ・コーナーにて

普段店頭ではご覧いただけないグランドコンプリケーションを始め、通常はショーケースに並ばない希少なモデルやレディスコレクションまでほぼ現行モデルのフルラインナップをご覧いただけます。同一モデルの素材違いや文字盤違い、またご興味のある複数のモデルを同時に並べて見較べられる事もパテック フィリップ展の魅力です。またカフリンクス等のアクセサリーについても多数展示致します。
世界最高峰の時計ブランド"パテック フィリップ"の様々なモデルが一堂に集う特別な3日間。ぜひこの機会にご来場いただけますようスタッフ一同心よりお待ちしております。

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昨年度に引き続き今年もお盆に「パテック フィリップ展」を開催いたします。

カサブランカ奈良『2017パテック フィリップ展』
日時:8月11日(金・祝)~13日(日) 3日間 11002000
場所:当店2階パテック フィリップ・コーナーにて

普段店頭ではご覧いただけないグランドコンプリケーションを始め、通常はショーケースに並ばない希少なモデルやレディスコレクションまでほぼ現行モデルのフルラインナップをご覧いただけます。同一モデルの素材違いや文字盤違い、またご興味のある複数のモデルを同時に並べて見較べられる事もパテック フィリップ展の魅力です。またカフリンクス等のアクセサリーについても多数展示致します。
世界最高峰の時計ブランド"パテック フィリップ"の様々なモデルが一堂に集う特別な3日間。ぜひこの機会にご来場いただけますようスタッフ一同心よりお待ちしております。



パテック フィリップのメタルブレスの種類はあまり多くない。そもそもメタルブレスモデルラインナップ自体が少ない。2017カタログ掲載モデル数195本の内47本が金属ブレスモデル。その内26本は人気シリーズのノーチラス(全32本)で、大半を占めている。ノーチラスシリーズだけはブレスレットウオッチのイメージが先行している。今回はこの印象的なブレスレットネタで・・
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ノーチラスのブレスレットはサテン(艶無し)で中央リンクがポリッシュ(艶)のコンビネーション。面積比では地味なサテンが大半だがイメージは大変艶っぽい。あまりにも特徴的で一目でノーチと判る。このブレスはともかく薄い。特に3針は時計そのものが薄い(8.3mm)ので時計側からクラスプ側までずっと薄さ一定のままだ。現行モデルの一つ前のRef.5711旧バージョンでは実は微妙にブレスの厚さを確保してネジ留形式が採用されていたのだが、着け心地を最優先して現在はピン留めに戻されて薄いブレスが復活している。
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前置きは此処までで、この着け心地が命のノーチラスの着用にあたってとても大切なサイズ調整の裏技をご紹介したい。一見、何駒取るかだけの単純な調整しかないようだけれど実は半駒単位の調整が可能である。この話、もちろん知ってる人は知ってるが、実はあまり知られていない気がして取り上げてみた次第。一般的な時計ブレスレットでは製品出荷状態で通常の駒と少数ながらその半分程度の半駒と呼ばれる短い駒で構成される事が多く、どちらの駒をどれだけ取るかの組み合わせで微妙な調整が可能だ。もちろんノーチラスの様に通常駒のみで構成されるブレスも多々見られる。代表的なのはロレックス。ただし一駒が長いスポーツタイプのオイスターブレス採用モデルはクラスプで微調整が出来るようになっている。ノーチラスの両観音クラスプにその機能は無い。着用感を高めるため極めて単純でこれまた薄く作られている。
ではどうするか?パテックは実にユニークな発想で1.5駒と言う長駒を別売で用意している。
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先日、実際に装着させて頂いた顧客様のお許しを得て画像取り。6時と12時側双方から各1駒で2つ取って、12時側に1.5駒を着けさせて頂いた。結果6時側は1駒分短くなり、12時側は半駒分長くなっている。かなり6時側を短めに調整させて頂いた。もちろん単純に6時側を2駒外して1.5駒に変える調整も可能で、オーナー様のリストを拝見してお好みも伺ってその都度やり方を決める事になる。
でもなぜ半駒対応にしなかったのか?パテックの回答は「1.5駒の方が半駒よりも通常駒との違いが目立ちにくいから・・」との事だった。ただノーチラスブレスの場合、センターリンクのピッチを変えでもしないと半駒は作れそうな気がしない。結果1.5駒にするしかなかったのではないだろうか。
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気になるお値段ですがステンレスで1.5駒は税別23,000円。結構リーズナブルではなかろうか。ちなみに通常駒1駒が税別20,000円とあまり変わらない。
アクアノートやトゥエンティ―4などの他の形状のブレスレットはどうか?やはり同じように1.5駒が用意されている。例外はコレクターズアイテムで入手困難なスケルトンウオッチのRef.5180の1モデルのみが半駒対応となっていた。但し価格は通常駒と同額である。link-price2.gif
面白いのは他ブランドだとブレスレットタイプが異なれば駒価格も異なる事が殆どなのにパテックはどのブレスレットも同価格と言うのがアバウトなのか?太っ腹なのか?
ともかくメタルブレスモデルの着け心地がしっくり来ない方は是非ご相談ください。

文責:乾

前回に続いてディスコン(生産中止)の銘品紹介シリーズ。レディスコンプリケーションのトラベルタイムRef.7134G。天才時計師ルイ・コティエ氏によって考案されたトラベルタイム機構の特許をパテックが取り製造を始めたのは50年以上も前の1959年。その後クォーツ全盛期時代に製造は一旦途切れている。スイスの機械式時計がようやく復活した1990年代後半になって現代のトラベルタイムの製造が再開した。
今回紹介のRef.7134Gは2013年に発表され2016年にディスコンされた少し短命なモデル。或る意味製造個数も少ないはずで希少性は高い。
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実はこのモデルの生産中止で現在レディスのトラベルタイムコレクションのラインナップが無くなっている。個人的には1997年から再開された現代トラベルタイムのレディスでは一番お洒落で良い顔をしていると思う。何が良いって文字盤の色目が表現の仕様が無い微妙な薄めのブラウン。同色のアリゲーターストラップのカラー名称がシャイニー トープ(Shiny taupe)。そう、某有名ブランドE社の中々買えない超人気レディースバッグにも採用されている有名な色目。いわゆる旬のお色。
全ての針と6時側のスモールセコンドインダイアルと12時側のホームタイムと連動した24時間インダイアル、パテック フィリップのロゴ等の情報一切が白色でまとめられておりスッキリと締まった表情になっている。18金製のアラビアインデックスはポリッシュされており少々視認性に難がありそうだが、オフィスや屋外など光量がしっかりある環境なら充分見易い。逆に少しトーンダウンしたレストランのディナー席などではインデックスが変に悪目立ちしないのでラグジュアリーなドレスウオッチとなる。ベゼルにはトップウェルセットンのダイアモンド112個(~0.59ct)が丁寧にセッティングされている。パテックのダイアセットはその時計作りのポリシー同様に実用性を高めるため衣類の袖口が引っかかったりしないよう滑らかさを最優先した手法を採用している。海外を舞台に働くキャリアウーマンにはうってつけの一本と言えそうだ。

Ref.7134G-001
ケース径:35mm ケース厚:9.2mm ラグ×美錠幅:18×14mm 防水:3気圧
112個のダイヤ付ベゼル(~0.59カラット)
ケースバリエーション:WG 
文字盤:ブラウン サンバースト 18金植字アラビアインデックス
ストラップ:シャイニー トープ アリゲーターストラップ
価格:税別 4,510,000円(税込 4,870,800円)2016年11月現在
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Caliber:215 PS FUS 24H
この時計手巻きである。実用性からすれば極薄自動巻きCal.240にトラベルタイムモジュールを積めば良さそうだが、たぶん文字盤レイアウトに無理があって手巻きの名キャリバー215が採用されている。ビックリするのはトラベルタイムモジュールの薄さだ。ベースキャリバー215の素の厚みが2.55mmで部品点数130個なのでモジュールは厚さ0.8mmに48点のパーツで構成されている事になる。他のメンズのトラベルタイムと違ってホームとローカルタイムの昼夜表示が無いにしても凄い部品密度である。ケースの厚みは9.2mmと意外にある。たぶんトラベルタイム操作プッシャーを組み込む為にある程度の厚みが必要なのだろう。

直径:21.9mm 厚み:3.35mm 部品点数:178個 石数:18個
パワーリザーブ:最短44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2017年6月9日現在 店頭在庫有ります

気付けば2月以来商品紹介が出来ていない。この時期はバーゼルワールドを始めとして生産中止情報や2017新作ダイジェストなど話題はそこそこにある。反面、例年2月から夏場にかけては本年の新作入荷がまずないので商品情報はどうしても少な目である。しばらくは緩やかな更新でご容赦下さい。
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パテック フィリップの七不思議に生産終了品のヒョッコリ入荷というものがある。最終生産ロット品がゆっくり出荷されたのか。最近何かの理由で再生産されたのか。パテックからの明確な答えは無い。今回は今年生産中止発表されたクロノメトロゴンドーロの多分最終生産ロットだと思われるローズゴールドモデルRef.5098Rのご紹介。
1920年代頃にブラジルの高級時計宝飾品店のゴンドーロ・ラブリオ社の求めに応じて納入されていたのはイエローゴールド製。(下画像:良く紹介されている1925年製イエローゴールドモデル)
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色目的にはローズは大変近い。ただ文字盤上に特徴的な楕円形のインデックス表示部分とPATEK PHILLIPE GENEVEやCHRONOMETRO GONDOLO、SWISS MADEの文字表記部分については金色(PP社表現はハニーブラウン)の平滑面になっていてギョーシェ装飾が施されたシルバーカラー部とくっきりとしたツートンカラー仕様になっている。2007年にローズに先駆けて復刻発表されたプラチナモデルRef.5098Pも1920年代のオリジナル同様に全体がシルバーで統一されていた。ツートン仕様は2009年発表の現代復刻モデルのローズバージョンでの新規採用となる。これは好みの別れるところで個人的には甲乙付け難い。
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何といってもこのモデルの魅力の第一は18金素材の文字盤にビッシリと施された手作業によるギョーシェ(波状の微細な彫装飾)だ。調べればこれまた18世紀の天才時計師アブラアン・ルイ・ブレゲ考案らしい。手作業とは言ってもギョーシェ専用のマシンに文字盤をセットして人の手で操作しながら複雑なパターンを掘り出すスタイル。バイトと呼ばれる鏨(のみ)を使ってムーブメント構成パーツである地板や受けにフリーハンドで施されるエングレーブ(彫金)とは異なる。またモノトーンのプラチナモデルと異なり装飾後の色付け工程も一手間増えていそうだ。
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誠に優美かつ正当なトノーシェイプのケース形状も魅力的だ。全体が曲線で構成されており色気漂う女性のグラマラスな姿態を想像させられる。表裏両面のサファイアクリスタルもケース同様緩やかにカーブしている。普通此処まで曲面だと鏡代わりに顔をうつすと歪んだりするのだが、パテックレベルになると冷間鍛造とポリッシュの技術が凄い為一切ゆがまない。ラグは紳士用腕時計黎明期に採用された貫通ピンをねじ止めしたオフィサー(将校)タイプ。画像は無いがもちろんピンタイプのバックルもオフィサー仕様となっている。
2月に紹介したRef.5205R-010を現代セクシー系とするとRef.5098Rはクラシカルな色香が漂うどこかアンティークっぽいモデル。昨今あまりにもハイテク化が進む現代車の反動なのか、アナログなヴィンテージカ―の静かなブームが起きそうな気配がある。そんなクラシックな出で立ちにこそ着けてみたい魅力的タイムピースだ。

Ref.5098R-001

ケース径:32×42mm ケース厚:8.9mm ラグ×美錠幅:17×14mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RGの他にPT いづれも製造中止
文字盤:ギヨーシェ装飾18金製 ツートーン
ストラップ:マット(艶無)ダークブラウンアリゲーター
価格:税別3,930,000円(税込 4,244,400円)2016年11月現在 


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1900年代のオリジナルクロノメトロゴンドーロのムーブメントは当時パテック社の主要エボーシュであったルクルト社製の丸型キャリバー12"'が搭載されていた。2007年のモデル復刻にあたってパテックはケース形状にふさわしい角型の専用新キャリバー25-21RECを開発した。同社にとって1934年に開発した名キャリバーCal.9"'-90(上)以来の73年ぶりの自社角形ムーブメントと言われており、明らかに意識したレイアウトが採用されている。往年の名キャリバーへの強烈なオマージュと言えそうだ。
尚、Ref.5098が全て生産中止になった今、同じくゴンドーロシリーズのレクタングラーシェイプのRef.5124のWGYGにのみこのキャリバーが搭載されている。
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Caliber 25-21 REC(手巻き)
サイズ:24.6×21.5mm 厚み:2.57mm
部品点数:142個 石数:18個 パワーリザーブ:最低44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製) 振動数:28,800振動
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

文責:乾

2017年6月2日現在
5098R-001 店頭在庫有ります
(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)

ARCHIVEを英和辞書で引くとアーカイブ(英:古文書、古文書、保管所・・)等と出てくる。実は自身でも概念を把握せぬまま日常茶飯時に気がつくと使っている事が多い。年甲斐もない知ったかぶりほどぶざま極まりないと自覚しているのだが・・
しかし、日本の辞書を引くと(重要記録を保存・活用し、未来に伝達することをいう。日本では一般的に書庫保存記録と訳されることが多い)とある。
さてパテック フィリップにおけるアーカイブも後者の意味合いが強いように思う。他ブランドでは対応している例を聞かないが、過去の販売履歴をジュネーブで一元管理しているパテック フィリップでは有料でこの台帳(Archive)の抄本?(Extract)を発行している。何らかの理由で手元にやってきた個体の品番、キャリバー、ケースNo.とムーブNo. 製造年度と販売の年度と月、さらにケースとストラップ(ブレスレット)の素材を確認する事が出来る。まずまず本物か否かの証明にはなるが、さすがに今現在の時計のコンディションや構成部品、素材の信憑性までは責任の範疇ではない。
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画像は昨年秋に当店に発行依頼のあったお父様から譲り受けられた時計のアーカイブ。ご了解を得てスキャンさせて頂いたが固有番号はダミーである。1969年製の手巻きカラトラバで18金イエローゴールド製ケースとブレス。
発行手数料は税別13,000円で9月頭に預かって2か月弱期間を要した。この個体はスイスまで行かずに東京のパテックのオフィスで申請用の画像撮影等がなされている。このシステムどこまで知られているのか良くわからないのでご紹介をした。ご希望が有ればどうぞお持ち込み下さい。
2019/6/17追記:2018年11月から価格改定され、税別19,000円となった。約1.5倍はパテックには珍しい大幅値上げだ。

チョッとこっぱずかしいのだが″JAPANESE KIMONO COUPLE"のお披露目!4年前にパテックのガラパーティにて着物で大ブレークした姐。フランス語発音で″ダンシング ケモノガール"と一躍注目の人となり、その後毎年のように「今年は彼女は来ないのか?」と言われ続け、それならばと今年は″つがい"の着物で乗り込んだ次第。早速、パーティ会場エントランスでの恒例行事であるスターンファミリー出迎えコーナーで歓迎を受け、いきなり記念撮影を請われたワンショット。
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今年で御年79歳のはずのフィリップ スターン名誉会長はしっかり健在。今も週に一回ペースで出社され、それ以外はべったりとミュージアムに入り浸りで、コレクションのケアにいそしんで居られるとか。ともかく時計が好きでしょうが無いらしい。現社長ティエリーはこの日グランドコンプリケーションの手巻永久カレンダークロノグラフRef.5270Rを巻いていた。聞けば自身で初めてデザインを手がけ、思い入れがある一本との事。小生は長い事当社で行かず後家(在庫期間最長パテック)になっていたゴールデンイリプスYGにカミーユ特注のネイビーストラップを合わせ、紺大島のアンサンブルに祖父譲りの50年物の各帯を締めてみた。姐は今回新調した合わせで地模様にはカラトラバ十字と見まがう紋様があしらってある。しかしまあなんともヨーロッパドイツ語圏の背景色ではある。
さて今回着物でバーゼルを一日過ごして実感したのが、今のヨーロッパがえらい日本ブームと言う事だった。二十年ほど前に初めて訪れた頃とは雲泥の感がある。5年ほど前からその感触はあったのだが、女性以上に珍しい男性の着物姿は強烈だったようで街中を含め先々で賛辞があり、撮影を求められた。ガラパーティでは姐ともども同性異性を問わずお声が掛かり、写真とダンスを請われっぱなしだった。もちろんカップルで出席というのも彼の地ではとても重要。世界で最も素晴らしい民族衣装と言われる日本の着物は我々大和民族の最終兵器と心得るべし。

翌日はスイス4番目の人口約14万人の首都であるベルンの休日。オオトシヘッピリバ~ンと国会議事堂隣のホテル ベルビューパレスから徒歩で美しい川岸まで坂を下る。
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古都を取り囲むように屈曲してゆったり流れるアーレ川はアイガー山麓から流れ出してベルンを経由しロレックスやオメガの本拠地ビエンヌが湖畔にあるビール湖に流れ注ぐ結構な大河である。スイス晴れの元、血流障害児のヘッピリバ~ンも体調が良さそうでニコニコと川岸の遊歩道を満喫している。平日昼前と言うのに次々とジョガーが色とりどりのランニングウェアに身を包んで追い越してゆく。
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河畔には老若男女がそこ此処でくつろぎ水鳥と交流したりなんかしている。実にのどかで平和な風景である。
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ベルン州紋章のキャラクターである熊が愛嬌を振りまく熊公園たもとのニーデック橋界隈には中世の家並みがそのまま残存している。世界遺産らしい風景を眺めながら庭園が美しいバラ公園へ坂を上ってゆく。
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日本から寄贈されたソメイヨシノが植樹されたバラ公園は、桜はまだ早かったが既にもう春の装い。テラスで生ビールを頂きながら紫煙をくゆらしまったりと・・流石にバーゼル会場やホテル、レストランは禁煙なのだが、スイスの煙草事情は実に緩やかで基本まだ街中は全て喫煙OKだ。興味深いのは日本で大流行の加熱式煙草アイコスをデザインした国なのに見事に誰も使っていないようだ。バーゼル会場でもパテックのパーティ会場の喫煙所でも日本人利用者しか見かけなかった。テラスからはベルンの主要部が一望にする事が出来る。春霞で残念ながらヨーロッパアルプスは楽しめなかった。
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あてもなく住宅街をうろつく。日本よりやや大振りのレンギョウ、紫モクレン、割と控えめな桜が満開見頃だった。どうもスイスの方が今年は春が早かったようだ。
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一旦ホテルに戻り、今度は買い物ツアーへ。近場におしゃれな煙草屋を見つけパイプを物色。トラムで数駅の登山用品店でマムートのクライミングパンツ(一体いつ穿くねん?)と姐のこれまたいつ担ぐねん?のザックを購入。で、いきなり購入物をザックに詰めて中心街に戻って姐御用達ストッキングのフォーガルのブティックに向かうが、どこをどう探しても見つからない。スマホでググってみると既に閉店しており近隣の百貨店内でのコーナー展開に変わっていた。8年前にマッターホルン登攀用のアイゼンやウェアーを購入した超専門店的な山屋も無くなったようだしスイスの古都でも拘りの店舗が生き残っていけないようで寂しい限りだ。
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5階のジュニアスイートのからの眺め、眼下のアーレ川が美しい。滞在中とうとうアルプスが見えなかったのがとても残念。でもこのホテル ベルビュー パレスは各国の要人が泊まるからかヨーロッパでは考えられないくらいスタッフが優秀だ。ルームサービスも″廊下で待ってたんかい!"という素早さ。朝食もおいしいしサイドディッシュに頼む卵料理や野菜サラダもスピーディこの上ない。料金もそれなりにするがバーゼルはもちろんチューリッヒよりは少しお得感がある。入出国日のチューリッヒ空港までのアクセス時間と費用がチョッとネックだけれども・・
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こちらはレセプション横に掛けられているパテックのワールドタイム。下のプレート内容が読み取れなかったので貸し出されたものなのか寄贈なのか判然としないがスイスのホテルで初めて見た。2世代前のRef.5110J(2000-2006)の顔なので10年以上前の代物のはずだ。
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この他にもロビーにはスイスの5つ星ホテルによく見られる近隣時計宝飾店のプロモーションディスプレイが常設されている。出来れば2020年に当店一軒隣に開業するJ.W.マリオットにも置けないものかしらん。こりゃ政治力が問われるなァ~

文責:乾

3月26日、日曜日は会期一週間のバーゼルワールド期間中で最も込み合う日だ。時計好きのスイス人達が全国からモーターショーのノリでこの国境の地に今年の新製品をひやかしにやって来る。入場料は一日券で約5,000円と安くないが一般人も会場には入れる。もちろん各ブランドのブース内には入れないが特殊な商材を除いて各ブース外回りのショーウインドウでニューモデルや通常ラインナップがじっくり鑑賞可能だ。1月にジュネーブで開催されているSIHH(通称ジュネーブサロン)も今年から一般客の入場を認めるようになったそうでその分賑わいが増したそうだ。

本日は朝からびっしりのスケジュール。列車とトラムで会場入りし11時からブライトリングでスタート。各ブランドが新製品を絞っている中でブライトリングは1時間で見切れないニューモデルラッシュ。元気である。特に日本市場限定モデルのクロノマットJSP(ジャパンスペシャル)は一世代前の人気モデルだったクロノマットエボリューションを彷彿とさせるベゼルとバーインデックスダイアルに自社クロノムーブB01を搭載してオールステンレス製で税別83万円と見事に頑張ってきた。

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宣伝モデルの黒文字盤よりも個人的にはシルバーダイアルが秀逸か。興味深いのが新しくセラミックベゼル化されたスーパーオーシャンヘリテージⅡシリーズの42mmと46mmの3針モデル。同社のスーパーオーシャン発売60周年記念を祝してリリースされたものだ。
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税別予価40万円後半のコチラのエンジンはなんと大御所ロレックスのデフュージョンブランド日本未展開″チュードル"仕様。心臓部のテンプ等はブライトリング特製となるが門外不出だったロレックスグループのキャリバーが初めて社外のそれもスウオッチ傘下のムーブメントメーカーETA社と良好な関係にあると言われていたブライトリングに積まれるとは驚愕である。またバーター的にブライトリングのフラッグシップ自社クロノグラフキャリバーB01が今後チュードルのクロノに積まれるらしい。現在チュードルの既存クロノグラフモデルが邦貨換算で60万円程度。チュードルB01クロノが一体どのくらいの値付けをされるのか?興味津々である。

ブライトリングのお後はチョッと内緒のブランド2か所とセイコーとカシオの4ブースを視察し、いよいよ今年もバーゼル最終はパテックに乗り込む事に・・
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世界限定500本のパテック フィリップ アドバンスドリサーチモデルRef.5650G税別予価643万円。機能的にはこれまであったアクアノートSS及びRGのトラベルタイムと何ら変わりません。プッシュボタンの感触もほぼ同じらしい。ほぼパテック技術陣のマスターベーションとも言えるコチラ。パテック初?のコレでもか!の無理やりっぽいオープンワークから覗くトラベルタイム新モジュール。従来モジュールがレバーや爪類を含め37点の部品から構成されていた代物を特徴的な4つの十文字型に交差する板バネを新規採用することでわずか12点の部品で構成する事に成功した。上の画像で4か所の十文字板バネとそれに連なる大きな弓状のステンレスパーツは全部一体のもので1個のパーツとなっている。よくもこんなバカでかい部品を作ったものだ。もう一か所このアドバンスには秘密があって、調速パーツである髭ゼンマイが単なる従来型のシリコン製スピロマックス製ではなくゼンマイの内端側に膨らみを持たせる事で精度の重力姿勢差を画期的に緩和することに成功している。パテックの見解では少々大げさながら?トゥールビヨンの発明に匹敵する技術革新としており、従来のパテックの精度基準であった平均日差―3秒~+2秒(トゥールビヨン搭載機ではさらに日差3秒以内)を―1秒~+2秒以内への調整が可能としている。ただ4月14日現在このアドバンスドリサーチモデルの販売方法は未発表である。どなたが幸運にも手にされるかわからないが、全くの新機構ゆえ初期トラブルは覚悟と言う事で・・
そして今年の一押し新製品Ref.5170P。このモデルとしては初のプラチナ製であり昨年のノーチラス発売40周年記念限定で採用されたバゲットダイアインデックスが採用されている。ともかく美しいのは漆黒の外周部から中心に向かって実に良い具合に濃紺へとグラデーションしている文字盤だ。パテックの関係者も含め一押しの声が多い。ほぼ同じ文字盤装飾が施された年次カレンダーRef.5396R-015もカタログや画像では全く伝わって来ない色男顔である。そしてこの年次カレンダーモデルに採用されているダブルギッシェスタイルの永久カレンダーRef.5320も魅力的だ。元々この左右寄り目の顔は1950年代半ばに盛んに同社を代表する永久カレンダーに使用されていたので久しぶりの復活ダイアルモデルである。浮き上がったようなアラビアインデックスがユニーク。ブースで現物を目にしPPJのN氏から説明を受けるまで解らなかったのがボックス型のサファイアガラスのベゼルへのセッティング方式。通常はベゼル下側からセットされるが、特殊な方法でこの時計は上側から押し込むセット方式が取られておりダイアル外周部が非常に美しい仕上がりとなっている。言葉での説明が難しいので現物を見て頂くしかないのだが・・
冒頭で取り上げたアドバンスドリサーチモデルのアクアノートと共にアクアノート販売20周年記念モデルとしてラインナップされてきたRef.5168G。初のホワイトゴールド素材のアクアの3針モデルは、かつて大振りのノーチラスで命名された″ジャンボ"の呼称が与えられた42.2mmのサイズアップモデル。トロピカルラバーストラップとダイアルが共に深いブルーで統一されすっきりした印象の逸品。ただ筆者の若干太目の腕元に乗せると少しラグが浮いてしまうデカさがあり、アクア3針モデルの最大の魅力である着け心地の良さが少しスポイルされてしまう。かなり体格のある方向けには迫力があってピッタリかと思う。レディスにも20周年にふさわしいゴージャスなダイア使いが素晴らしい2型のローズゴールドのアクアノートが追加された。
今年は細かいアニバーサリーの年で1977年に搭載が始まったパテックの名キャリバーであるマイクロローター採用の極薄型自動巻Cal.240の40周年と言う事でローズゴールドのスケルトンモデルRef.5180/1Rに加えてカラトラバRef.6000の後継機で2mmサイズアップされたRef.6006も発表された。単なる大型化ではなくドーナツ状の同心円サークライン(ヘアライン仕上げ)が新たに加えられ格段に高級感が増している。
最後に生産中止ニュースを悲しんでいた年次カレンダーフライバッククロノグラフRef.5960はステンレスの後継機で色違いの黒文字盤Ref.5960/1A-010が出された。個人的にはディスコンとなった白に後ろ髪が引かれるナァ。併せて初のWG素材のカーフストラップモデルRef.5960Gも追加された。文字盤の少しマットな青に加えてパラシュートのバックルデザインからインスパイアされたクレビス プロング バックルにヴィンテージブラウンのカーフストラップの組み合わせは、人気品薄モデルのカラトラバパイロットトラベルタイムRef.5524の良いトコ取りなのだが、正直に言ってこの時計の評価は個人的には全く未知数だ。趣味ではないのだが売れそうな感触も充分あってバイヤーとしては悩みの一点である。まあ元祖のRef.5960Pが2006年に自社製ニューキャリバーを搭載して発表された時も、2014年にオールステンの5960(白文字盤)が出た時も個人的には?だったのに市場では直ぐに奪い合いになった経緯があったので今回もコイツだけは予測がつかない。
まとめると今年のパテックはアドバンスのアクアノートトラベルを除いて特別に飛び道具が用意されていないが、安定感のある品揃えをしてきた。素材的にはプラチナとローズが目立ちイエローは皆無だった。文字盤は青優勢で黒は控えめ。で、やっぱり個人的に欲しい一本は手巻クロノRef.5170Pなのである。

出展ブランド数は判然としないのだけれども今年のバーゼルワールドは、会場費の高さと昨今の世界景気の関係からか本年から出展を見合わせたブランドも結構あったそうで、ユリス・ナルダンやジラール・ペルゴ等がジュネーブサロンに移動した事などでブースのレイアウトが今年は少し変更されていた。結果カシオが良い場所に移りブースも格段に見やすくなった。またラジュー・ペレ(プロサーホールディングス)に加えフレデリック・コンスタントも買収したシチズンが傘下のスイスブランド(フレデリック、アーノルド・サン、ブローバ、もう一つ・・たしか自社のカンパノラだったか?)をまとめて1ブースにて出展するという荒技?に出た。シチズンと言う会社は本当に地味で目立たない。国内での製品販売もセイコーやカシオにやられっぱなし感が否めないが、どっこい財務体質は非常に良いようだ。ミヨタ等のクォーツムーブメント製造子会社などで海外へのムーブメント販売が大きく、また携帯電話向けの電子デバイス部品にも強いので資金は潤沢なのだろう。でも従来精力的な営業活動でエドックスとともにフレデリックの日本市場開拓を推し進めてきたGMインターナショナルからフレデリックのセールスを今夏引き継ぐらしいのだが、正直大丈夫なのかチョッと心配している。ともかく国内市場への製品広告が異常に少ない企業だし、セールスさんは生真面目一本でとてもファッションビジネスに向いているとは思えないしで・・

気になる懸念材料は明らかにバーゼルへの入場者数が減っている事だ。出展ブランドの減少に加えて数年前まで我が物顔で会場内を闊歩していた中国系のバイヤーやメディア達が激減していた。込み合う日曜日にメイン会場のホール1の中央通路を普通に行き来できるなんて隔世の感がある。日本の比ではないインバウンドが高級時計を買い漁っていたヨーロッパ時計市場の凋落は一昨年あたりから半端ではないらしい。でも出会うヨーロッパ人達の表情に暗さがあまり感じられないのが救いか。ともかく明らかにリーマンショック後それなりに活況を呈してきた世界の時計ビジネスは明らかに曲がり角に来ていると思う。今年の各社の新製品にも色濃くそれは反映されており、昔日の人気モデルへの回帰と抑制の効いた価格設定が目立った。しかしこの数年の時計価格の異常な高騰が見直されたとも言え本当の時計好きには歓迎すべき傾向なのかもしれない。そして我々時計屋ももうひたすらブランドを追い求め、寄らば大樹ブランドの言いなりになる時代が終わり、経営者の指向性をブランド選択に反映して、金太郎飴的な店づくりから脱却して個性的な品揃え提案で消費者に行きつけの住み分けをして貰う覚悟が求められる時代が来ているように思う。マスからニッチに、ラグジュアリーからオーセンティックに・・

文責:乾

今年も会場のブース内ではあまり積極的に写真は撮らなかった。どうしてもライティング環境が悪い上にコンデジで短時間となれば、画像に限界があってメモ代わりにはなっても製品の魅力の写し込みに満足が出来ないためだ。製品入荷時にしっかり頑張りたいと思っとります。ハイ!

今年もやってきた。横に常に口うるさい相棒が一緒と言うのが厄介なのだが・・
雨女の面目躍如なのか、奈良から関空は小雨交じりの微妙な空模様。KLMカウンターでビジネスへのアップグレードを申し出るも満席で、予約済みのエコノミーEIXT ROW席(非常口横の足元楽ちん、離着時に正面に美人?アテンダント鑑賞可能席)にてアムステルダム経由チューリッヒ。国鉄で約1時間強でベルン到着。午前8時に自宅を出て、宿到着が現地同日午後9時頃なので、時差8時間を加えて19時間の旅程である。
今年の宿は、姐ともどもお気に入りのスイス首都ベルンのBELLEVUE PALACE BERN。国会議事堂横の各国要人も利用する憧れの宿だった。姐の着物姿か、はたまた超特大のグローブトロッターが効いたのかは定かで無いが、予約のデラックスダブルが最上階のスイスアルプスビューサイドのジュニアスイートに無言でアップグレードされており幸先良し。ただ自宅マンションの倍以上の専有面積にはちと面食らったが、滞在中部屋にいる時間だけで結構脚力が鍛えられた。

翌日は出来ればのんびりベルン滞在希望だったのだが、某ブランド日本法人トップとの夕食が入り、商談時間調整が困難だった2ブランド視察を夕刻に盛り込んで3時ごろバーゼルまで列車1時間移動。トラム(路面電車)で通いなれたMESSE PLATSに。まずは毎年恒例のロレックスブースのショーウインドウで新作をチェック。シードウェラーのセラクロムベゼルモデル、レディースオイスターパーペチュアルの小ぶりサイズ復活モデルなど地味な印象。他ブランドもチラチラ眺めつつ最初の商談はHALL 2のクエルボ イ ソブリノス。
今年135周年を迎えた同ブランド。例年何か面白い新機軸を出して来るのだが、今年はかなり抑えた印象で、お値段も昨年までと比べれば実にリーズナブル。個人的には135周年関連モデルよりも1940年代復刻デザインのトラディッション自動巻限定882本(創業年1882年から)税別予価39万円也(画像下)が良い感じだった。
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お次は、会場エントランス直近のラマダホテル内にブースを設けたセンチュリーに向かう。このホテル、バーゼル期間中はバカ高くなるのだが毎年お昼ご飯を頂いている。なんせ野菜不足のスイス飯なので山盛りのサラダでビタミン補給が恒例行事なのだが今年はブースに直行。
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上のような新製品をチョコっとだけ拝見して、今年初企画の硬度8のサファイヤガラスのファセット面カッティング体験コーナーに座り、硬度10のダイヤモンドダスト付きバフでおっかなビックリ取り合えず面取りしてみる。
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荒砥してからさらに細かいバフで仕上げる。一見簡単そうなのだが実際には下のような超細密な多面ファセットを指定の角度を守りながら絶対に削り過ぎ禁止で仕上げてゆく実に集中力と根気のいる地味な作業なのだ。全て手仕事と言う事を考えればセンチュリーの値付けは高くない。
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7時の待ち合わせ前にパテックブースを外からガラス越しに新製品チェック。この初見というのが一番大事で手巻クロノグラフRef.5170の新素材プラチナモデルが絶妙な仕上がり。話題をさらいそうなアドバンスドリサーチモデルのアクアノートトラベルタイムRef.5650Gもしっかりチェック。パテック初ではないかのオープンワークは何とも微妙な窓で、初見では無理やり感が否めなかった。まあ世界限定500本なので顔の好き嫌いに関係なく完売は間違い無いのだろうが・・
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夕食はバーゼル東方郊外のシャトーフレンチレストランで絶品シャンパンなどいただきタクシーでベルンのホテルまで約50分。たまたまメルセデスSで快適な100kmなのだがお代は約460Sfr(5万円強)といまさらながらスイスの物価高を再確認。でもこの時間帯(午後10時以降)電車はあるがバーゼル駅まで行ってベルン駅からまたタクシーとなると2時間半、一等利用ならたぶん250~300Sfrなのでどっちもどっちなのである。
姐とナイトキャップをしっかり頂いて爆睡zzzzzzz

翌日その2に続く

文責:今年は時差緩めの乾



昨年は3月21日の木曜に書いていた。加齢とともにCPUもメモリーも衰えまくりだ。一昨年までのバーゼル現地で実機サンプルを見るまで溢れる事前情報に振り回されない贅沢な日々は、今は昔なのである。
今年も不本意ながら、PP社公式HPの2017NEW MODELSから出発前の予習を兼ねてまとめてみた。今記事も加筆・修正だらけになりそうな・・

品番頭の●の色はザックリながら、完全な新商品、新素材投入、新文字盤追加 ※品番お尻には予価を税別1,000円単位をコッソリ記載。POR:時価対象モデル
メンズ
ミニットリピーター
5078G-001(POR)、5178G-001(カセドラルゴング、POR)、5316P-001(レトログラード永久カレンダー付、POR)
スプリットセコンドクロノグラフ
5372P-001(永久カレンダー付、POR)、5372-010(永久カレンダー付、POR)
永久カレンダー
5320G-001[9,020]、5940R-001[9,520]、
クロノグラフ
5170P-001[10,500]、or?5960/01G-001(フライバッククロノ年次カレンダー付)[7,170]、5960/1A-010(フライバッククロノ年次カレンダー付)[5,560]
スケルトン
5180/1R-001(自動巻です!)[10,750]
ワールドタイム
5131/1P-001[9,520]
年次カレンダー
5396R-014[5,230]、5396R-015[5,810]
カラトラバ
6006G-001[3,090]
アクアノート
5168G-001[4,200]、5650G-001[6,430]※限定モデルの為かカタログ画像未掲載の為、無理やりリリースにリンク
メンズは全17型。昨年の大量23型から絞られた印象だが、グラコン(昨年14型、今年5型)を除けば、昨年より3つ多い12型あって2017年は豊作である。またその内の完全新作が昨年度のたった3型から倍増の6モデルとなっており、明々後日の初対面が楽しみだ。
ミニットリピーターの3型は意外に少ないリリース。このところ年次カレンダーのみに採用されていた伝統のダブルギッシェの顔が永久カレンダーRef.5320に用意されたのはチョッとビックリ。さらに年次にもこの顔の追加文字盤が2つ発表され人気のほどがうかがえる。
発売20周年を迎えたアクアノートには記念碑として、現代解釈の名作"ジャンボRef.5168"と最先端技術開発を盛り込んだ限定500本のアドバンスドリサーチモデルRef.5650が用意されていた。チョッと地味だが機械式時計暗黒時代真っ最中の1977年にパテック社オーナーの大英断で開発製造された極薄型自動巻Cal.240も40周年を迎えておりスケルトンRef.5180、ワールドタイムRef.5131、カラトラバRef.6006の3モデルに搭載されアピールをしている。後述するレディスでもワールドタイムRef.7130とハイジュエリーRef.4899の2型がラインナップされている。
このところずっと気になっているSS年次クロノRef.5960はアッサリ黒文字盤が後継機種とされた。さらにカラトラバパイロットトラベルRef.5524にしか採用されていないカーフスキンストラップを装着した初のWG素材モデルRef.5650が新規投入された。この二つは実機を見ないと画像だけでは判然としない印象だ。

レディス
永久カレンダー
7140G-001[10,130]
ワールドタイム
7130G-014[5,560]
年次カレンダー
4947G-010[5,450]
カラトラバ ハイジュエリー
4899/900G-001(自動巻です!)[11,120]
ノーチラス
7118/1A-010[2,710]、7118/1A-011[2,710]
アクアノート
5062/450R-001(ダイア、ダイア、ダイアです!)[20,380]、5072R-001[9,520]
昨年の続きのようなジュエリー攻勢が健在で特にアクアノートのRef.5062の2000万円越えはあっぱれ!ノーチラスのSS3針Ref.7118は好調な様でベーシックな文字盤カラーが追加された。個人的にはグレー文字盤が早く見たい。しかし今年も昨年に続きTwenty-4追加一切無し。

面白いのは昨年あたりから品番中のスラッシュ/記号が必ずしもブレス仕様とされぬようになって少々混乱している。一昨日の予想記事でも"あれれっ!"を結構書いてしまった。尚、例年現地のパテックブース一階に展示されているレアハンドクラフトのユニークピースのクロワゾネモデルやドームクロックが今年は早くも動画で紹介されている。是非ご一読?を。
そんな事はさておき、やっぱり今年もパテックの見どころはタップリ用意されていた。明日から4年ぶりに珍道中する姐との無事では済まないはずの「時計と酒と喧嘩!!」の日々が綴れれば・・・

文責:乾

3月18日加筆です。やはり5960/1A-001は生産中止の決定連絡が来ました。そしてダイアル違いのニューモデルが来週のバーゼルワールドで発表されます。001の今年度最終入荷はご予約いただければ可能性があります。そして気になる新文字盤!気になる方は是非来週後半パテックの公式サイトでニューフェースをご確認の上、旧文字盤を狙うな否やのご決断をいただく事になります。各正規店最終入荷分がすぐに予約で埋まる事もありますので綱渡りでお願いします。
レディスワールドタイム7130Rは未だ最終結論が来ておりません。時間切れバーゼル突入でしょうか?

先日の記事でSS年次カレンダークロノグラフRef.5960/1A-001が追加でコッソリ生産中止になる旨をご紹介した。PPJの確認済みでのUPだったのだが、正式なレターがスイスサイドから未着との事で情報ペンディングの依頼が来た。
微妙な事になってしまった。継続とも言えず、RUNOUTともはっきり言えないのである。
いづれにしても来週木曜からのスイスの2017バーゼルワールドで、はっきり決着がつくだろう。それまでしばしお待ちいただきたい。
ちなみに同時紹介のレディスワールドタイムRef.7130Rも同じ扱いとなります。ご承知おきください。

文責:乾

特別コラボレーションイベントのお知らせ
≪ポルシェ試乗会&パテック フィリップ展示試着会≫
日時:3月18日・19日・20日(土日月)10時~19時
場所:ポルシェセンター奈良 奈良市三条大路3-1-51 TEL:0742-32-0911(番号が!)
   ※当店より一直線、お車で約3分。歩きは15分か?

当日は時計以上(異常?)に車にうるさい当店スタッフ岩田が会場に常駐予定です。乾は店と会場を行ったり来たりでしょうか?
どちら狙いでも、もちろん両方狙いでも大歓迎です。チョイ乗せ(時計)は当然、たぶんチョイ乗りも大丈夫かと・・おあとは知りませんが・・
ご来場とご来店を心よりお待ちしております。

昭和7年生まれ、当年満で84歳となる親父。年々弱くなる聴力に加え昨年は加齢黄斑変性を両目に患い右は絶望的、左はかろうじて小康状態にある。恐ろしい事に白眼部分に注射する事、両目で8回ほどか?好きなゴルフTV観戦も相撲の取り組みも勝敗判れどもプレーヤーと力士の見極めは出来ない。そのくせ週に何度かの外食晩餐時には、さほどこぼす事もなくスピーディに完食しつつ、ワインも負けそうなくらいの鯨飲ぶりだ。どうなっとんねんこのジジイ??
先日のポルシェコラボイベント告知記事内で触れたフレンチブルCITOROEN 2CV(ドゥセーヴェー、ドゥセーヴォーとも)車格は最上位のチャールストン。姐が10年間恋い焦がれたこのフランスの貴婦人が3月1日についに納車された。
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敢えて新ナンバーとせず1983年初年度登録のまま今は無き″奈"に続き2桁を引き継がせていただいた。そう!この宝物は買いきった物でもなく、所有も出来得ない引き継ぎ物なのだ。大事に大事に預かって、やがてふさわしき時期が来れば次代に引き継いでいただくまで、手を掛け目を掛けつづける。まさにそれはパテック社が標榜とするジェネレーションの精神で・・
前オーナーは学園前在住のお方、なんと御年84歳は親父と同年のお生まれ。奇遇はさらに続き、この個体は奈良の正規シトロエンディーラー庄田自動車の本拠地大和高田のショールームで約一年強おねんねしていた。彼の地はおふくろのお里、今もご先祖様の菩提が曽我川の土手墓地に祭られている超個人的な聖地なのだ。ここまで役者が揃えばお預かりするしかないと無理くり自分で自分の背中を押してみた次第。

さて、この1980年代というのはパテック フィリップにとってどのような時代であったのか。無理やりブログアップするに際しては、考察をせねばなるまい。言うまでもなくスイス時計産業にとって、我が国の最高峰マニュファクチュールSEIKOが1969年に市販化を実現したクォーツに席捲され続けていた暗黒時代でしかなかった。時のパテック社オーナーはスターンファミリー2代目アンリ・スターン氏。3代目フィリップは同社のアメリカ地区子会社での修行を終えて、1977年には専務となり徐々に経営中枢に参画し始めた頃であった。1968年ゴールデンエリプス、1976年にはノーチラスが発表されて、新たなパテックブランドの中興の祖として育った事により80年代中頃から一旦瀕死状態にあった機械式複雑時計復活作戦が展開された。
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その象徴が1989年の同社創業150周年記念として開発発表された世界一複雑な携帯時計キャリバー89であり、同じく最も複雑な腕時計で永久カレンダー・ミニットリピーターCal.R27Q搭載のRef.3974であった。この両者は現代パテックの真のマイルスト―ンであり、現在のパテック フィリップ機械式時計王国のルーツである事は論を待たない。
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それゆえに乗車時には親父から略奪した150周年記念モデルRef.3960YGのオフィサーケースを着用し両手にパテックの白手袋、ギャザータック付き白シャツに黒蝶タイを締めてジレ(仏:チョッキ)には銀色のカラトラバピンバッジを刺し、決め手は運転手キャップか?はたまたブラックシルクハットか?そうなれば助手席にはプラチナブロンドのカンカン娘に真っ赤なビスチエとレースたっぷりのショーツを穿かせて、黒いガーター&ストッキングで決めてもらう事になるな。なぜか現実はジャパニーズケモノガールの指定席なのだが・・

文責:いささか暴走気味の乾でした

特別コラボレーションイベントのお知らせ
≪ポルシェ試乗会&パテック フィリップ展示試着会≫
日時:3月18日・19日・20日(土日月)10時~19時
場所:ポルシェセンター奈良 奈良市三条大路3-1-51 TEL:0742-32-0911(番号が!)
   ※当店より一直線、お車で約3分。歩きは15分か?

当日は時計以上(異常?)に車にうるさい当店スタッフ岩田が会場に常駐予定です。乾は店と会場を行ったり来たりでしょうか?
どちら狙いでも、もちろん両方狙いでも大歓迎です。チョイ乗せ(時計)は当然、たぶんチョイ乗りも大丈夫かと・・おあとは知りませんが・・
ご来場とご来店を心よりお待ちしております。



来る3月18日・19日(土日)の2日間、当店西側大阪寄りのポルシェセンター奈良にて、パテック フィリップとポルシェのコラボレーションイベントの開催が決まりました。

ポルシェセンター奈良では、これに先立つ一週前の土日にフルモデルチェンジを受けた新型パナメーラの展示発表会が開催され、18日と19日は試乗会で実際にそのパフォーマンスを体感いただくという趣向。かねてからパテックの繋がりでご縁を頂いたポルシェセンター奈良所長M氏と一方的に意気投合した不肖″乾"が出張ってしまったというわけです。
何度か打ち合わせや現地視察でお邪魔すれば、嫌でもお車も拝見することになる。911カレラ4Sのリアビューからの姿態には、この前取り上げた年次カレンダーRef.5205のボディラインに通じるエロスを感じるし、ブレーキキャリパーのアクセントレッドは年次クロノグラフRef.5960/1Aのクロノ秒針を彷彿とさせるしで、メロメロとボディーブローをくらってしまう。姐が10年間恋い焦がれて買ったシトロエン2CVチャ―ルストン(近日画像掲載予定)が納車間近だというのに・・やばい、やばい・・ミイラ取りがミイラになってゆきそうで・・怖い!

個人的には、またも買っときゃ良かったシリーズのフルモデルチェンジ前の自然吸気ボクスターのマニュアル。カラーはシルバーに近いグレーと言うかポルシェによくある定番ボディカラーにパテックブラウンと見まがう焦げ茶のキャンバストップを組み合わせたい。
しかし、兄弟車であるケイマンも捨てがたい。同じなのに全く別のイメージで、ボクスターのオーセンティック&クラッシックほんのりお色気に対して、ケイマンはアバンギャルドで都会的で超セクシーだ。
とっても911には手が出ないけれど旧タイプのマニュアルボクスターでカラーと程度が良ければマジやばい。現行に関しては小排気量×ターボ×多段PDKが時代遅れの親父を踏みとどまらせている今日この頃なんですよ。これはイベントが終わるまで治らない″はしか"のようですョ。

特別コラボレーションイベントのお知らせ
≪ポルシェ試乗会&パテック フィリップ展示試着会≫
日時:3月18日・19日・20日(土日月)10時~19時
場所:ポルシェセンター奈良 奈良市三条大路3-1-51 TEL:0742-32-0911(番号が!)
   ※当店より一直線、お車で約3分。歩きは15分か?

当日は時計以上(異常?)に車にうるさい当店スタッフ岩田が会場に常駐予定です。乾は店と会場を行ったり来たりでしょうか?
どちら狙いでも、もちろん両方狙いでも大歓迎です。チョイ乗せ(時計)は当然、たぶんチョイ乗りも大丈夫かと・・おあとは知りませんが・・
ご来場とご来店を心よりお待ちしております。

文責:最近やんちゃな乾

明日ブログアップ予定の3月中旬のパテックイベントの仕込み中にPPJから来たサンプル貸出しリストを見て、かなりビックリ!衝撃的な生産中止モデルが追加されていた。
Ref.5960/1A-001、2014年に発表されたステンレスケース&ブレスレット年次カレンダーフライバッククロノグラフ。それまでのプラチナケースを全廃し、鳴り物入り(ミニットでは無いが・・)で投入されるや一気に人気希少モデルとなり、最近でこそ多少落ち着いてきたがステンゆえの価格のこなれが手の届く限りなくグラコンに近いコンプリケーションだった。パテック新参の当店でもパテック通の方が2本目や3本目パテックとしてさりげなくゲットされる人気アイテムだったのに・・
恐らく、今後の入荷はほぼ絶望的で可能性はご決定客注で申請してどうなるかレベルである。個人的には今年のRUNOUTS達の中で一番寂しいニュースである。
もう一点はレディスコンプリのワールドタイムで、昨年2016年の発表からたった一年で追加ディスコンとされたRef.7130R-010(リンクいつ切れるやら?)である。これは同じく2016年のメンズの第3世代ワールドタイムRef.5230発表時にシティディスクの都市名が一転二転したどさくさで、とばっちりを受けた格好でプチマイナーチェンジを受けたモデル。WGは先日公式発表リストにUPされていたので正に片手落ちだろう。ただ、現時点で一旦レディスのワールドタイムはラインナップ上から完全に姿をくらませる事になる。これはひょっとすると目前に迫った2017バーゼルワールド(3/23-3/30スイス)でフルモデルチェンジのレディスワールドタイムRef.7230??のWGとRGが出て来そうな気配ありありだ。楽しみっ!
以上、2月28日加筆


前年に引き続き今年の生産中止情報が本日届きましたので取り急ぎご紹介・・・本日は取り合えず画像リンク付きリストのみ。明日以降に徐々に肉付け?予定

斜体太字のRefは今日現在で当店在庫あり。
※当然現在製造仕掛かりの物もあるだろうし、2017年度(2月~2018年1月)中に生産が中止になるリストなので、たちまち全てが一切手配不可という事もないのは昨年同様。ご希望品は前回以上に精一杯探したい。やっぱり簡単ではないけれど・・・
※急ぎやっつけ仕事なのでケアレスミスの可能性も有りアリです。

メンズ
ミニットリピーター
5078P-001 5078P-010 5078R-001 5539G-001 5073R-001 5073P-001
5073P-010 5213G-010 5216R-001 5216P-001 5307P-001
スプリットセコンドクロノグラフ
5950R-010
セレスティアル
6104G-001
永久カレンダー
5140P-013 5270G-019 5270G-018
年次カレンダー
5396/1R-010 5396/1G-010
クロノグラフ
5170G-010
スケルトン
5180/1G-010
カラトラバ
5120J-001 5120G-001 6000G-012 6000R-001 5298P-012
ゴンドーロ
5098R-001
ノーチラス
5719/1G-001

2016年度に全19モデルで構成されていたパテックのミニット・リピーター王国の11Ref.ゴッソリディスコン(生産中止)にビックリ!2014年のブランド創立175周年の各種イベント以来このジャンルに力を入れてきた様に思える中での大量廃番は、2017BASELで新たなミニット旋風が巻き起こるのか?
2016新製品のスプリットセコンドクロノRef.5950R-010、クロノグラフRef.5170R-010は1年の短命、一体何本の個体数なのか?パテックお得意の超レア作戦。
永久カレンダークロノグラフRef.5270G2色廃番は新文字盤ではなくマイナーチェンジ新モデル登場を期待出来そうだ。
スケルトンは昨年のレディスに続きメンズも無くなりラインナップされなくなった。新らしい企画が進行中なのか、否か?
カラトラバベーシックモデルの小ぶりな自動巻きRef.5120JとGのディスコンはモデルそのものが生産中止。ニューフェースを考えるのが難しいシンプル顔なのでお蔵入りの可能性大。当店店頭の希少なWGの最終在庫品はいつ頃にどなたに嫁ぐことやら・・
同じくCal.240を積むRef.6000の2色もモデル廃番。チョッとアバンギャルドなこちらのお顔、何となくもうお目にかかれない気が・・
大好きなクロノメトロ ゴンドーロがついに完全鬼籍、さみしい限りで今年度の入荷を心待ちにしていたのに・・でも、ひょっとして・・

レディス
ワールドタイム
7130G-013(リンクページ危うし!)
クロノグラフ
7071G-001 7071G-011 7071G-010 7071R-001 7071R-010
アクアノートルーチェ
5069G-001 5069G-011 5069R-001 5072G-001
2010年にブランド初の完全自社設計開発製造されたCal.29-535を積んでメンズに先駆けて発表されたレディス ファースト クロノグラフRef.7071が品番完全廃番になった。7年間の貴重なお勤めご苦労様でした。

メンズのセレスティアル、カラトラバ、レディスのアクアノート等のゴテゴテのダイア仕様ゴージャスラインに大ナタが振るわれたのは、昨今の世界的不景気の影響と思われる。
昨年の大量60Ref.に対して今年は32Ref.のディスコン。ほぼ半減の例年並みとなった。改めて2017BASEL発表モデルを考察するにミニット・リピーターの新機軸は必ずありそうだが、世界の景気状況からして例年よりも今年は静かなのかもしれない。健闘組のパテックですらこうなのだから、他ブランドは押して知るべしという気がしている。まあ久々に口うるさい姐と珍道中予定の今年スイスはゆっくり、じっくり少数の逸品を拝みに行く事になりそうだ。さてさて・・

文責:乾

近々、恐らく2月中に現在公開中の当店HP内のパテック フィリップ製品カタログページを一旦閉鎖致します。
これはスイス パテック社の方針に従うもので、今後は同社の用意したI-FLAMEという世界共通カタログページが当店HPパテックページに埋め込まれます。
厳選された全25点を静止画で紙芝居的にご紹介する新カタログは冒頭2モデルが同社の指名打者とご指名の人気嬢。残り23モデルが当店一押しの強力打線となっており4名の厳選ウグイス嬢を含みます。各モデルの詳細はPP社公式HP内のカタログページにリンクされている。

これ悪い事ばかりでもないけれど、公式HPの最大の不満は生産中止モデルが掲載されていない事。正規店の各店頭にはまだまだお宝のBOODBYE BOYS & GIRLSが多々残っているし、先日に一本そしてこれからも入荷してきたりするわけで、何しろ拙ブログにはセピアを一杯ちりばめて紹介しているだけに大変困る。

取り合えずブログ内紹介の現行モデルリンクは公式HPカタログに地道に少しずつリンクさせるしかないわけですョ!鬼籍入りのご先祖様方は画像とスペックをいちいち貼るしかないのかなぁ・・・とほほ

皆様には大変お見苦しくご不便をおかけいたしますが、ブランドビジネスのさがに苦しむカサブランカ奈良を優しく見守ってやってください。
以上、緊急(いつもながら大げさなやっちゃナぁ~)報告でした。

文責:乾

ともかく例年2月は異常に忙しい。ともかく出張が多すぎる。商売はニッパチと言うぐらいで奈良も松山の百貨店も暇だ。全国的にどの時計家業の親方(社長)連中も本業は暇なはず。そこを狙って各ブランドのビジネスミーティングやら展示会、受注ミーティングが目白押しでやってくる。それも決まって各店舗の定休日が多い水曜日指定が圧倒的だ。正直今月はパーソナルな休みは全滅状態である。
超個人的(正確には法人的?)に奈良・松山とも人事面で減員があり、その後始末も重なって精神はともかく肉体的にはトータル2000キロ以上の移動をこなして限界に近い。とうとうパテックのブログの更新も″奈良で見つける・・"同様にサボログとなり果てている。

意を決して、本日(既に書き始めから13日経過してるが・・)は久しぶりに一度WGでご紹介済みの年次カレンダーで最もLEONっぽい?Ref.5205のローズゴールド素材に漆黒DIALのセクシーモデルを撮り書き下ろす事に・・
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昨年末で敏腕レタッチャーだったスタッフが退職したので画像一枚仕上げるのに数時間かかる。あっ!あんまり見つめないで、ボロが至る所に・・
これはもうセクシーダイナマイトとしか言いようのない色気ぷんぷんな時計。パテック随一ではないか?艶、艶、艶、でお汁溢れそうですナァ。
正面も良いが色男は横顔にさらにゾクッとするものがあったりする。
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えぐれ、くびれ、のたうつボディラインが堪りません。※リューズ押し込み処理省略は、ご勘弁ください。
この時計に余計な講釈や解説は不要。どうしても必要なお方は拙ブログ過去記事Ref.5205G-010をご覧ください。
一応、粋な背中も撮ってみた。
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こちら実はトリミングのみの久々の完全無修正画像。もちろんリューズも出ベソそのままで、少しだけ明るくしてコントラストも上げようかと一瞬迷ったが、たまには写虚ならぬ写真が良かろうと致した次第。

ここまで書いて本日これまで、そろそろ悪い友達が飲みに行こうと誘いに来る時間。続きは後日でご容赦願います。

文責:乾

遅ればせ過ぎながら、1月末と言うのに・・・謹賀新年、本年も超しつこい瞑想(迷走?)ブログよろしくお願いします。
年始からバタバタ、バタバタと超多忙で昨年中に書き溜めていた下書きが月末までアップできない忙しさのカサブランカ年初でした。目の回る忙しさの割に金額はさほどでも無い。何とも不思議、不思議・・そりゃそうや!今年は酉年、バタバタ貧乏なる言葉有りますがなぁ!

現在、年次カレンダーの顔は3つ。すなわち初代の流れを汲むRef.5146系の2つ目サブダイアル針表示タイプ。前回記事紹介の12時側に弧を描く3つ窓表示のRef.5205の弓窓タイプ。1940年~50年代に盛んに永久カレンダーに採用されたインライン2つ窓表示のRef.5396系のダブルギッシェタイプである。
年次カレンダー発売20周年を迎えた2016年に記念モデルとして発表されたのが、唯一過去の偉大なレジェンドからインスパイアされたRef.5396であったのはごく自然な流れだったのかもしれない。
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従来のバーからブレゲアラビア数字にインデックスの変更だけながら、WGケースだけは文字盤ベースカラーが従来無かったダークなチャコールグレイに変更されている。改めてこの顔とブレゲ数字の組み合わせアーカイブを探すもコレと言うのが見当たらず、偶数時間(12,2,4,8,10)のみ正体ゴシックアラビアタイプ(下画像:1941年Model1526)が幾つか見つかった。もちろんシンプルウオッチならカラトラバRef.96ケースにブレゲ書体のフルアラビアインデックスは珍しい事も無く様々な年代で使われているのだが・・

1526.jpg
PATEK PHILIPPE GENEVE(M.HUBER & A. BANBERY) P.282
どうも2016年の新製品にはブレゲアラビア数字のインデックスが多用された気がする。永久カレンダーRef.5327、永久カレンダーミニットリピーターRef.5374R等々・・
たぶんこの流れで記念モデルのRef.5396もブレゲアラビアのインデックス採用となったのだろうか。部分変更ながら受ける印象は全く違う。凛としたクールな印象のバーに対して何となく優し気で暖かいイメージがある。好き嫌いはハッキリと別れそうだ。下衆ながらコスト面では時間毎に異なるアラビア植字が絶対に高いハズだ。個人的には斬新なイメージのニューカラーダイアルのWGの渋さにヤラれた。
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正面からは膨らんだドットにしか見えない秒インデックス。実は真逆に彫り込まれて凹んでいる。完全な目の錯覚なのだが、この手法かなりの割合で現行パテックコレクションで採用されている。印刷物や普通のモニター画像ではまず解らないので愛機や店頭の実機をルーペでご覧になってください。初めて見ると目からウロコですので是非おススメ致します。
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もっと鮮明に撮りたかったがこれが限界。微妙な曜日(SAT)と月(MAR)の段差。いわゆるダブルギッシェの2枚のディスクは少し重なってしまうため月が曜日ディスクの下側にセットされている。所有機(Ref.5396R-011)を1年半愛用していてもマクロレンズから覗いて初めて気付かされたミクロ決死圏(古っつ!)だった。

Ref.5396G-014年次カレンダー
ケース径:38.5mm ケース厚:11.2mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WG別ダイアル有)、RG別ダイアル有
文字盤:チャコールグレイサンバースト ゴールド植字インデックス ブレゲ数字インデックス
ストラップ:マット(艶無)ブラックアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:税別 5,230,000円(税込 5,648,400円)2016年11月現在

以下過去記事より転載
搭載キャリバーは21金フルローターを採用したパテックを代表する自動巻きCal324に年次カレンダーモジュールを組込んでいる。
カレンダー系の操作は禁止時間帯等あって気を使うが、パテックの場合は殆どの物が午前6時(例外あり)に時刻を合わせてプッシュ操作を行う。ムーンフェイズはいつもネット検索して確認していたが、パテックHP内にある確認ページが結構便利である。
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個人的にフルローター自動巻きの裏スケルトンには一抹の気色悪さをいつも感じてしまう。ただパテックの場合はローターの仕上げが尋常でなく美しい。接写しながら改めてそれを感じた。PCモニター画像ではそれを表現しきれていない。デジ一眼のモニター画面では惚れ惚れする輝きと色気があったのだが・・・
上が1年以上前掲載の愛機の背中、下が昨年に展示会サンプルを急ぎ取りした裏スケなのだが少々愛情不足なのは否めないかナァ~

Caliber 324 S QA LU 24H/303

直径:33.3mm 厚み:5.78mm 部品点数:347個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2017年1月31日現在
5396G-014 お問い合わせください
5396R-012 お問い合わせください
5396G-011 店頭在庫有ります
5396R-011 お問い合わせください
(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)

※年末年始にスタッフが新天地に旅立ちましたので当分の間、かなり不定期な更新になりそうです。只今、時計屋希望者募っております。安月給で良ければパテックと至福の日々が過ごせます。

≪イベントのお知らせ≫
新年早々、1月末に下記展示会の開催をいたします。皆様お気軽にお越しください。
『パテック フィリップ年次カレンダー展示会』
日時:2017年1月20日(金)21日(土)22日(日) 11:00~20:00
会場:店舗2階パテック フィリップ コーナー
詳細はコチラからどうぞ

今回紹介のRef.5905Pは2015年に超人気モデルRef.5960Pの後継機として発表された。
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2006年はパテックにとって話題がてんこ盛りだった。まずノーチラス発売30周年でのシリーズフルモデルチェンジ。そしてパテック フィリップ ブランド史上初めての完全自社開発製造の自動巻クロノグラフムーブメント搭載モデルの発表。フライバック機能を備えクロノグラフ駆動時のトルクロスを押さえ込んだ画期的な垂直クラッチを採用したCal.28-520には最初から2つの派生ムーブメントが用意された。

シンプルなクロノグラフムーブは新生ノーチラスRef.5280に搭載され外装マテリアルを変更しながら現行のRef.5980/1R等で継続している。今秋話題のノーチラス40周年記念限定のWGクロノグラフも同キャリバーが積まれている。
もう一つが年次カレンダーモジュールを積んで非常に先鋭的な顔で発表されたRef.5960Pである。
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この時計も当時まだ奈良の店舗でパテックを触っておらず不勉強だった事もあり、直感的に"好きにはなれない"デザインだった。それまでのパテックにはないスポーティなレイアウトと色遣いの文字盤。恐らくティアリー現社長の好みが相当盛り込まれたと想像できた。プラチナケースだけでも高いのにクロノを積んで900万円近い価格。なんぼパテックでも遊びすぎのダイアルはオイタが過ぎてはしないかと密かに思ったものだ。
ところがいざ市場投入されるや瞬く間に超の付く人気希少モデルになった。その状態が5年は続き、高額商品にもかかわらず2次マーケットではプレミアがつき投資目的買いが正規市場では問題視された。
そして2014年に突然プラチナ製のRef.5960は全て生産中止となり、意表を突く同リファレンスのステンレスモデルがブレス仕様で発表された。このRef.5960/1Aも大変スポーティな文字盤ながら、個人的にはSS素材ならでは生きる元気一杯のダイアルデザインが好印象なモデルだ。
一年ブランクを経て2015年、装いを改め復活したプラチナ製後継機が今回のRef.5905P。デザイン的には2010年に年次カレンダーの新しい顔として登場したRef.5205との共通点が多く、明らかに発展デザインである。具体的には長目のバーインデックスに外周円と内周円で描く古典的なセクター(Section)ダイアルやケースサイドの長細い抉り込み等である。ただRef.5205自体が12時側に弓状に弧を描く″曜日"、″日付"、″月"を表示するRef.5960Pの分家デザインでもあるが・・
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その他初代のRef.5960Pとの違いはPPロゴ直上のパワーリザーブの不採用。6時側の同軸積算計の12時間計を省き単純な60分計のみにする事で視認性が高まりクールでエレガントな二枚目に仕上がっている。クロノグラフのプッシュボタン形状がクラッシックなスクエアに変更され珍しく上下面がポリッシュ仕様となっている。時分針もリーフから少し太目のドーフィンになった。全般としてアバンギャルドなイメージが払拭されてオーソドックスで落ち着いた印象に衣替えされた。その分厚み0.53mm、ケース径で1.5mmサイズアップして押し出しを増しバランスを取っている。どちらが良いかは個人の好みだろう。ただ2011年発表のベゼルダイア仕様の派生モデルRef.5961の文字盤が単色使いなった事から初代の奇抜さは少々やり過ぎとの反省があったと推測している。
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ベゼルの逆ぞり(コンケーブ)とケース横っ面の抉り(手作業と聞いた記憶が・・なぜ機械で出来ないのかずっと疑問。機会が有ればぜひ確認)が現代パテックの最先端モデルである事の証・・・ではあるのだが複雑な曲面がケース全体を覆ってくれて本当にカメラマン泣かせだ。画像ではなく絶対に実機をご覧にいれたい。

Ref.5905P-001 年次カレンダークロノグラフ

ケース径:42mm ケース厚:14.03mm ラグ×美錠幅:22×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:PT(別ダイアル有)
文字盤:ブルーサンバースト ゴールド植字バーインデックス
ストラップ:マット(艶無)ネイビーブルー アリゲーター 
価格:税別 85,300,000円(税込 9,212,400円)2016年11月現在


冒頭でも触れたキャリバーCal.CH28-520は、それまで頑なに手巻きの水平クラッチに拘っていたパテックのクロノグラフ史を2006年に塗り替えたエポックメイキングなエンジンである。前年発表の完全自社クロノキャリバーCal.CHR27-525は確かに最初の100%自社製造ではあったが、それまでの伝統的製造手法でコツコツと工房で少量生産される手作り的エンジンであり、搭載されるタイムピースも商品というより作品と呼ばれるのがふさわしいユニークピースばかりだ。対してCal.CH28-520は"シリーズ生産"と呼ばれる或る程度の工場量産をにらんだ商業的エンジンであり、パテックフィリップが新しいクロノグラフの歴史を刻み込むために満を持して誕生させた自信作なのだろう。
パテックの自社クロノキャリバー3兄弟の価格は、その搭載機能や構成部品点数に比例せず、どれだけの手仕事が盛り込まれているかで決定される。金銭感覚抜群で働き者の次男CH28-520 C(自動巻、垂直クラッチ、フライバック、部品点数327点)、次がクラシックだけどハイカラな3男坊のCH29-535 PS(手巻き、水平クラッチ、部品点数269点)、そして金に糸目をつけない同楽な長男CHR27-525 PS(手巻き、水平クラッチ、ラトラパンテ、部品点数252点)の順にお勘定は大変な事になってゆく。
_DSC8380-5905.jpg
上記画像でローターで隠された部分は3枚の受けがあるが、この部分はどの派生キャリバーもほぼ変化が無い。それに対してテンプ左のPPシールの有る受け、さらに左の複雑なレバー類がレイアウトされた空間は派生キャリバー毎にけっこう異なる。必要なミッションに応じて搭載モジュールがダイアル側で単純にチェンジされるだけでなく裏蓋側の基幹ムーブメントへもアレコレと手が入れられている。(ほぼ全て過去記事から転載・画像再撮影だが・・ぜんぜんあきまへんナァ~)

Caliber CH 28-520 QA 24H:年次カレンダー機構付きコラムホイール搭載フルローター自動巻フライバッククロノグラフムーブメント

直径:33mm 厚み:7.68mm 部品点数:402個 石数:37個 受け:14枚 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
又スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾
参考:Patek Philippe Internaional Magazine VolⅡ No.7

≪イベントのお知らせ≫
新年早々、1月末に下記展示会の開催が決まりました。皆様お気軽にお越しください。
『パテック フィリップ年次カレンダー展示会』
日時:2017年1月20日(金)21日(土)22日(日) 11:00~20:00
会場:店舗2階パテック フィリップ コーナー
詳細はコチラからどうぞ

ということで数回にわたって年次カレンダーモデルを集中的に掘り下げます。
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年次カレンダーダーの元祖は1996年発表のRef.5035である。この全く新しいパテックのカレンダーの発表までは機械式腕時計のカレンダー機構は大小の月さえ乗り越えられぬシンプルカレンダーか、いきなり2100年までノータッチで突き進む永久カレンダーかの両極端しか無かった。前者は実用性に難があり、後者は機構の複雑さから高額で顧客が限られ一般的ではなかった。そのためか特許を取得した革新的かつ有用な年次カレンダーはデビュー年のスイス時計専門誌モルトン・パッション誌の「ウォッチ・オブ・ザ・イヤー」に審査員全員一致で選ばれている。

5035.jpg
このほとんど"発明"とも言えそうな快挙は1991年、パテックが創造的な産学協同の一環としてジュネーブ州立技師学校の或る学生に卒業研究課題を提示した事に始まったそうだ。この研究に携わった学生さんはその後パテック社に入社し現在も在籍中との事である。
開発の方向性は、カム、ラック、コハゼ、ジャンパー等で構成される既存の永久カレンダーの簡素化ではなく、シンプルカレンダーからスタートした洗練かつ独創的な輪列が採用された。主要な歯車には新たに設計された高精度の歯形曲線が採用されてエネルギーロスが低減した。その結果カレンダーディスクはほとんど機械的抵抗なしに回転出来るようになったらしい。年次の開発=歯車の進化というようなことらしい。
年次に関して調べるとあくまで永久の簡素版でなく、"新規開発のなめらか歯車輪列機構である"との上述のようなくだりにいつも出くわす。ではなぜ永久の簡素版では駄目だったのか。それは永久カレンダーで採用されている大型レバー等は組立時にデリケートかつ高コストの調整手作業が必須となり、一人の職人が全工程を組み上げるグランドコンプリケーションスタイルなら可能だが、或る程度の量産を行う"シリーズ生産"モデルにはなじまないと言う理由があったようだ。調整が容易で信頼性と耐久性を上げつつコストを下げるには白紙からの新規開発しか無かったのだろう。この難問をパテックの開発陣は5年かけて解決した。
デビュー2年後の1998年にはムーンフェイズとパテックが業界で初装備をしたパワーリザーブ表示をそれぞれ独立輪列で追加搭載したRef.5036/1が出る。顔的に今回紹介のRef.5146のルーツと言えるモデルで専用に新規設計され現在ドロップ・リンク・ブレスレットと呼ばれるメタルブレス仕様で発表された。さらに1999年には5036/1の姉妹モデルで現社長ティアリー・スターン氏が創作したプラチナケース+ストラップ仕様のRef.5056が追加発表される。ここまでは全て21600振動の48時間駆動のCal.315 Sをベースムーブとして搭載した37mm径ケースの仕様であった。5036-5056.jpg

大ベストセラーとなったRef.50系年次カレンダーは2005年にRef.5146にフルモデルチェンジされる。ケース径が2mmアップされ39mmとなり文字盤レイアウトはRef.5036そのままとされたがインデックスはそれまでのローマンから12・3・9アラビア+バーの組合せになった。ムーブメントもCal.315から高振動の28800振動・45時間駆動で4本アームに4個の慣性ウェイトからなる新設計のジャイロマックス・テンプを組み込んだCal.324に積み替えられた。
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画像は素材違いのYGモデルである。これは実機サンプルで最上段画像も昨夏の展示会に借用したサンプルを撮っている。その為カレンダーが3月18日土曜日になっている。時計の各ブランドは何故かサンプルの日付を統一する傾向が有る。皆それぞれが一番バランスが良い見た目を選んでいるらしい。で、各ブランドほぼ全部バラバラなのはなんで?・・
ちなみにRef.5146は実はYGのグレーダイアルがとても良い。カタログから想像がつかないくらいケースと文字盤の相性がよろしい。是非現物を見る価値がある。ただ上の撮影画像は時間の制約もあって・・・
Ref.5146のメタルブレスの採用時期は調べきれなかったが取り合えずサンプルがあったので一応撮影し画像アップした。このブレス装着感の良さも是非機会があればお試し価値は絶対にあり。

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さて2005年には合わせて初代Ref.5035のイメージが色濃く残された37mmサイズ・パワーリザーブ表示無し・フルローマンインデックスのRef.4936がレディース初の年次カレンダーモデルとして発表された。
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この年には先端テクノロジーを追求する「パテック フィリップ アドバンストリサーチ」第一弾の年次カレンダーモデルRef.5250Gが限定100個で発表された、Ref.5146と外見は同じながら従来型のCal.315ベースの年次キャリバーにシリコン系素材であるSilinvar®製ガンギ車を搭載していた。さらに翌2006年にアドバンストリサーチ第2弾としてローズゴールド仕様の年次Ref.5350Rが300個限定で発表されている。エンジンはCal.324に変更され、ガンギ車に加えてSilinvar®製のSpiromax®髭ゼンマイが採用された。2008年にはアドバンストリサーチの完結編として年次Ref.5450Pがプラチナ限定300個で製作された。このモデルの脱進機はPulsomax®脱進機と呼ばれアンクル素材もSilinvar®製となった。

ところでアドバンストリサーチそのものは機械式時計の心臓部である調速機構の最重要パーツである髭ゼンマイ及び脱進機を構成するガンギ車とアンクルのシリコン化プロジェクトである。必ずしも時計は年次カレンダーである必然性はなかったはずだ。それを敢えてフルモデルチェンジをした第二世代年次カレンダーRef.5146のデビューに花を添えるという演出をしたパテック フィリップは中々の役者である。

5250_5350_5450.png

実を言うと個人的にこの第2世代の年次カレンダーはノーチラスと同様で最初あまり印象が良くなかった。もっと正確に言えばRef.5146の顔が何とも緩くてもっちゃりした印象しかなかったからだ。きっとバーゼルでも悪態をつき、短寿命モデルと予想した記憶がある。ところが今年で満12歳もの長寿モデルとなってしまった。初代Ref.5035(10年)より長期政権でロングかつベストセラーなのだ。そして兄弟姉妹的モデルが15型もある大家族構成でもある。時々パテックにはこうゆう大穴というか裏をかかれるモデルが出てくる。気張らずに普段感覚で着けられる気楽さ、それでいて世界最高峰の満足感が同居するのが人気の秘密なのか。さらに言えばパワリザーブ機能無しの分家モデルのRef.53965205と比較して求めやすい価格もRef.5146の魅力なのだろう。

厚みは11.23mmでクラシカルデザインRef.5396の11.2mm、前衛デザインRef.5205の11.36mmとほぼ同じで決して装着感を損なう厚みではなくええ感じの存在感だ。
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今回撮影中にRef.5146のムーンフェイズのプリント仕様が他のモデルと微妙に異なっている事に初めて気付いた。普通は月も星も単純な塗装と思われるのだが、Ref.5146の星は周囲が盛り上がった凝った仕上げがなされている。他モデルにもあるかもなので今後注意を払いたい。尚、RGの文字盤はYGのラッカー塗装と異なりSlate gray sunburstで全く印象別物なのだが・・個人的には実に実に美しい。1月の年次展示会にはWG素材サンプルのSlate gray sunburstとの見比べも楽しみだ。
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下はRG素材のクリームのラッカー塗装の月齢表示部
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Ref.5146R-001 年次カレンダー

ケース径:39.0mm ケース厚:11.23mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RG WG(別ダイアル有YG(別ダイアル有) PT ※別途ブレスレットモデル有り
文字盤:クリームラッカー、ゴールド植字インデックス
ストラップ:マット(艶無)チョコレートブラウンアリゲーター
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:税別 4,520,000円(税込 4,881,600円)2016年11月現在
※WGは同額、YG、PT及びブレスレットタイプの価格はお問い合わせください。


搭載キャリバーは21金フルローターを採用したパテックを代表する自動巻きCal324に年次カレンダーモジュールを組込んでいる。
カレンダー系の操作は禁止時間帯等あって気を使うが、パテックの場合は殆どの物が午前6時(例外あり)に時刻を合わせてプッシュ操作を行う。ムーンフェイズはいつもネット検索して確認していたが、パテックHP内にある確認ページが結構便利である。
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画像は都合でYGを撮影。裏蓋はスケルトンでスクリューバック仕様。これも少し不思議でほぼ同じ厚みの年次兄弟モデルのRef.5396と5205はスナッチ(抉じ開け)が採用されているのだ。ところで撮影時に惚れ込んだYGモデルはサンプルとして余程人気があるのかお勤めがずいぶん長いようで懐かしいホールマークを久々に見つけてしまった。

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Caliber 324 S IRM QA LU

直径:30mm 厚み:5.32mm 部品点数:355個 石数:36個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから
PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2017年12月20日現在
5146J-001 お問い合わせください。その他はご予約対応となります。

(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)


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今年も秒読み態勢、"夢中で"駆け抜けた一年、お付き合いありがとうございました。
さて新年早々、1月末に下記展示会の開催が決まりました。皆様お気軽にお越しください。
※ご予約等不要です。

『パテック フィリップ年次カレンダー展示会』
日時:2017年1月20日(金)21日(土)22日(日) 11:00~20:00
会場:店舗2階パテック フィリップ コーナー
出品内容:年次カレンダー現行モデルのほぼフルラインナップ27点 

出展予定モデル(12月13日現在 ※変更もあります) 
年次一覧_01_追加分.jpg
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※あくまで現時点の予定で変更もあります。開催直前に確定のリストアップが出来ればと思っております。
※ほとんどがサンプル出品です。ご成約時は一部を除いて入荷をお待ちいただく事になります。
※年次カレンダー以外でご覧になりたいモデルがございましたらお早めにお問い合わせください。

2016年はパテック フィリップにとって幾つものアニバーサリーイヤーだった。まずはノーチラス発売40周年。そして年次カレンダーの発売、プラン レ ワットの新工場への移転、パテック フィリップ インターナショナル マガジンの創刊年が全て1996年だったのでそろって20周年を迎えた。
1985年から始まる複雑機械式時計復活の狼煙。1989年のブランド創立150周年を重要な通過点とし、機械式時計の新時代がスタートしたのが1996年ではないか。そしてその象徴的タイムピースが年次カレンダーであり、20年後のラインナップの充実ぶりは見事にその役割を果たしたと言える。
2016年現在の年次カレンダーコレクションは全部で34点なのでカタログ掲載モデル全209点からシンプルウオッチ(2針、3針)91点を除いた何らかの機能が付いたタイムピース118点の内29%となり、3本強に1本は年次カレンダーとなる。ちなみに永久カレンダーは2016年度にゴッソリ13点も製造中止になったが、それでも33点(ビックリ・・)もある。パテックは正にカレンダー時計王国だ。


年次カレンダ―モデルの紹介記事はコチラから




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257グラム!そうか、プラチナが軽いのか。312gもあった紹介済みのWGクロノの82%である。幸運にも日を置かず疑問が解け、プラチナも実機撮影の機会を得た。しかし比重に優るプラチナは素直にポーズを取らせてくれず撮影には難儀をした。
当店の商いは貴金属地金に縁がなく全くのド素人。ちょうど良い?機会なので金とプラチナの相場というものを調べてみてビックリした。12月6日付け田中貴金属の1グラムの税抜小売価格は金4,668円、に対してプラチナが何と3,812円で断然安い。気色悪いので過去15年間の年間平均値(税抜小売価格/グラム)を比べてみた。
AuPt15.gif2007年ぐらいまではプラチナが金のほぼ2倍だが徐々にその差が詰まって2012年に逆転している。その後2年は再逆転するも2015年からまたも金が逆転している。金・プラチナいづれも需給バランスの崩れが原因で金はずっと高騰し続けており、プラチナはここ数年下落気味で逆転されている。それにしても15年でプラチナは2倍に、金は4倍にもなっている。そりゃ高級時計も高くなるハズである。
まあ時計の金は18金なので現在の相場4,668円に75%を掛ければ3,501円となるが25%混ぜる銀や銅だってコストは掛かる訳でノーチラスの40周年モデルに関して言えば重量差からしてWGクロノの方が素材コストは少し高いかもしれない。ムーブメントはどう考えてもプラチナ用の部品点数213点のシンプル3針自動巻よりも327点のパーツで組まれるフライバック垂直クラッチクロノグラフが高コストだろう。ただしダイヤモンドはベゼル6時下にプラチナモデルアイコンのラウンドダイアが埋め込まれ、3時以外全てバゲットダイアインデックスのプラチナモデルの合計0.36ct.に対して、WGクロノモデルは一部ラウンドダイアインデックス等になり合計0.29ct.と若干少ない。
またWGクロノグラフは過去に全くなかった最大サイズのノーチラスなので冷間鍛造用の金型も一から新規設計製造しているはず。片やプラチナ3針は過去何度か特殊なユニークピースとして販売実績があり、金型もステンレスや18金モデルと基本同じ5711型である。製造本数はプラチナがほぼ半分で割高となる。
このように見てゆくとWGクロノが何となく割安に思えてくるが、何度も繰り返してきたがプラチナ特有の粘りっこい素材特性は鍛造・切削・研磨のどれを取っても18金の何倍ものコストがかかるらしい。特にノーチラスブレスはリンクの細かさが着用感を高めているが、当然パーツ数が増えるためにそれだけ製造には手間が係るはずだ。
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6時側に2段組みされた1976-40-2016のアニバーサリーエンボスは12時側にレイアウトされたWGクロノグラフ同様に目立たない。画像ではライティングの微妙な差で異なって見える文字盤のブルーの色目は全く同じである。ただインデックスのバゲットダイアのサイズは同じだと思われるのだが文字盤面積の違いからかWGクロノの方が微妙に幅広に見える気がするのは目の錯覚か、それとも単なる老眼の進行か?
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左のステンレスモデルRef.5711/1Aと並べてじっくり視ると微妙な違いがある。まず6時位置の生産国表示がSSはSWISSと40th記念のSWISS MADE。ただこれは現行モデルでもバラバラで無表記のものも存在する。カレンダーについてはWGクロノRef.5976Gの記事で18K窓枠以外の違いは解らないとしたが、数字のフォントが異なっており少し太字にもなっている。恐らくカレンダーディスクそのものはPTとWG共通部品と思われる。
12時側のブランドロゴがSSではエンボスの上から4番目の凸部にPATEK PHILIPPE、5番目にGENEVEと転写されている。ところがPTでは転写部分全体を凸部にしてスペースを作りロゴ位置も少し下側にずれてレイアウトされている。これは6時側に配置された三角形の40・1976-2016の記念エンボス位置とのシンメトリーを意識して微妙なデザインワークがなされたようだ。
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プラチナモデルお約束のベゼル6時への隠しダイアモンドは天地巾の制約からか0.02ctとかなり小さい。プラチナケースと言えどもしっかり見えている無愛想でぶ厚い真っ黒けの防水パッキンのすぐ上にセットされるプレシャスなダイアモンド。う~ん!洒落が効いてますナァ。
元々は現会長フィリップ・スターン氏が自分のコレクションに入れてみたところスタッフに好評だった事から採用された仕様だと聞いた記憶がある。そして2000年のミレニアムを記念して限定生産された10日巻きのRef.5100のWGとPT(下画像)を区別するためにスターン氏の指示でセットされたのが始まりとなり現在に続く慣行となった。それにしても最初のダイアはチョッと大振りだったような・・・PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE No.7 P.32
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Nautilus Ref.5711/1P-001 40th Anniversary Limited Edition 世界700本限定
ケース径:40.0mm(10時ー4時方向) ケース厚:8.3mm 防水:12気圧
ケースバリエーション:PT950 
文字盤:サンバースト加工にブルーPVD加工 バゲットダイア付ゴールド植字インデックス
価格:税別 12,360,000円(税込 13,348,800円) 
2016年11月1日現在

SSと全く同じになるのでキャリバー撮影は悩んだが敢えて上下に並べてみた。下のプラチナにはラグ部4か所に貴金属ホールマークが有り、画像右端中央にA384で始まる良く似たじブレスレット品番刻印がある以外は、表面が少しクリームっぽい仕上がりのWGと違ってPTは完璧な銀色なのでSSと完全に見た目は同じである。
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Caliber 324 S C/386)
直径:27.0mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個 受け:6枚
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾
PATEK PHILIPPE GENEVE(M.HUBER & A. BANBERY) P.231

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今年の新作で最も期待値が大きかったのがワールドタイム。今春早々に超希少品で少々特殊なクロワゾネ(有線七宝)文字盤のローズゴールドケース1品番を除き全てが生産中止発表になった人気のRef.5130。当然後継モデルが出て当然なのだがローズとホワイトのレザーストラップタイプのみの2本限りは個人的には肩透かしされた感じ。
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恐らくプラチナはそのうち追加されるのではないか。ただイエローゴールドはどうなのか?今年の新作でイエロー素材は新しい永久カレンダーRef.5327Jの一点きりである。ちなみにローズは12点もあって、あまりにも差が激しい。
ここで少し脱線して、いくつかの時計ブランドを調べると、はたしてイエローゴールドケースは絶滅危惧種状態である。そんな中で今年APのロイヤルオークが新たにYGをラインナップし直してきたのはニュースですらある。パテックも随分と偏ってきているが、ド定番モデルにはほぼイエローが踏みとどまってる。2016カタログを素材別に追っかけたのが下表。
注:ノーチラスクロノRG/SSコンビ1点はSSとした。
素材分析表.gifプラチナがグラコンで最多の素材であり、全体でもステンレスと同数なのは流石にパテックならではだが、ここまでRGが多いとは正直ビックリ。特にレディースでYG貧弱化が顕著で、YG全14Ref.中でRef.7121Jのブレスストラップの2型のみしかない。断捨離好きなのに妙に物持ちが良い姐がたまたま取っていた今や貴重な2000年のカタログを開く。
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いやぁ~まあイエローだらけ真っ黄色だ。掲載モデルの7割弱がYG。右端には今回紹介の現代ワールドタイムの初代Ref.5110のプラチナとローズが居るがYG・WGが見当たらないので全モデルは掲載されていない。カタログと言っても縦30横70cmの薄手のコート紙の裏表という実に簡便な印刷物で現行カタログとは隔世の感がある。ネプチューンなど今はもう無いシリーズもあったりするので取り合えず別刷りのプライスリストから素材別に拾って見たのが下表。
注:ゴンドーロガブリオレRG/WG1型はWG、ノーチラスとネプチューンのYG/SS2型はSSとした。
素材分析表2000修正.gif
全リファレンス数はほぼ同じ。圧倒的なYGにRGを加えて金色系115Ref.(55%)と半分を超えている。この16年で激減したYGの大半はRGとなり一部PT、SSにもシェアを明け渡し、2016年現在はプラチナ・ステンレスが共に約1割でWGと合わせれば銀色系が115Ref(56%)と逆転している。

本題に戻って、ワールドタイム。2016年に生産中止発表となったRef.5130の紹介と多少重複するがおさらいをする。1930年代後半からジュネーブの時計師ルイ・コティエ氏により製作が始まったワールドタイムは前期型として時分針リューズと24時間ディスクの連動操作システムを搭載してスタート。シティディスクは今日の回転ベゼルの様に手動で回していた。その11時ごろに現在時差ありのLONDRES(ロンドン)とPARISがあって当時は同一時間帯に属していた。3時半ごろにはTOKIOとあって中々面白い。下画像:Modèle1415HU(1939)
1415HU.jpg
1950年台に入っても基本は同じでシティディスクを9時位置に設けた第2リューズで回すように若干進化した後期型(1953年~)が作られるようになった。東京はTOKYOとなり、ロンドンもLONDONとなっているがパリとはまだお友達だ。下画像のModèle2523(1955)は今回紹介するRef.5230のデザインソースとされている。
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しかしワールドタイムは50年代中頃に生産が終了される。理由は調べたが判然としない。1950年代というのはそれまでのプロペラ機に代わってジェット旅客機が登場し、飛行機輸送が飛躍的に進化していった時代である。ブライトリングナビタイマーが1952年、ロレックスGMTマスターは1957年に登場している。そんな中で1959年にパテック フィリップはルイ・コティエ氏が開発した現在トラベルタイムと呼んでいる画期的な2ボタンによるローカル時針のアップダウンシステムを備えたモデルを発表している。下画像:Réf.2597(左1959,右1962)
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個人的想像だがジェット旅客機による航空新時代の到来にふさわしい全く新しいトラベルウオッチを模索していたのがパテックの1950年代後半だったのではないだろうか。そして1969年初代セイコーアストロンで始まるクォーツショックによる約20年間のスイス機械式時計暗黒時代。ようやく1990年頃からの機械式復活期を経て40数年ぶりに2000年にワールドタイム現代版は復刻される。ロンドンとパリには温度差!ではなくて1時間の時差が生じている。画像が荒くてつぶれているが文字盤センターには複雑で美しい格子状のギョーシェが刻まれている。デザイン的には1900年代半ばのオールドワールドタイムに似るがトラベルタイム機構を転用した短針、シティディスクと24時間リングの3者を10時位置のプッシュボタンで連動操作する画期的なシステムを備えるように進化している。詳しくは過去記事を参照。
※画像はPATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE Vol.Ⅲ No.01よりRef.5110 PT,YG
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人気を博したRef.5110は2006年にエンジンはそのままに時代の要請?から2.5mmのサイズアップを受けRef.5130へとマイナーチェンジされる。外観上の違いはダイアルのギョーシェが放射状の力強いものになり、時針はアップルハンドに分針はドーフィンハンドになった。サイズが大きくなってシティデスクの表示にはユッタリ感が出た。※下画像
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そして今年、現代版ワールドタイムとしては第3世代となるRef.5230が発表された。ムーブメントは初代からずっと同じCal.240 HUである。ケースデザインは大きく変更され1940年~50年代に流行したウイングレット(小翼)ラグ(前述の左右にリューズのあるModèle2523参照)を控えめに備え、ベゼルはそれまでの丸味を帯びたものから平面的でエッジの効いた形状となった。さらに好みの分かれるところだがリューズガードが廃止された。ケース径とラグ巾ともに1mm絞られ厚みは逆に0.63mm増して筋肉質で引き締まった印象になった。
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ダイアルセンターの手作業のギョーシェはパテック フィリップ ミュージアムの資料を参考に一新され同心円状に様々なサイズのリップ(波状)が大小交互に刻まれており複雑さでは過去一番である。
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下画像ではWGが少し白っぽく写ってしまったが、どう見てもWGとRGでセンターギョーシェも含めてインデックスを除く文字盤ベースは全く共通だ。その為にWGモデルはグレイッシュなギョーシェ部に針とインデックスの色目が同化しやすく視認性に少し難がある。時針は非常に特殊な形状だがパテック特有の穴開き針(Pierced hour hand:ピアス針)と紹介されている。分針は第1世代Ref.5110の物にほぼ先祖返りした印象だ。
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Ref.5230G-001、5230R-001
ケース径:38.5mm ケース厚:10.23mm 
ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:WG,RG,

文字盤:チャコールグレーラッカー、ハンドギョーシェ ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有り)アリゲーター ブラック(WG)/チョコレートブラウン(RG)
価格:税別 5,190,000円(税込 5,605,200円)2016年11月現在

キャリバー名Cal.240 HU末尾のHUはHeures Universelles(仏:時間 世界)の頭文字だ。ちなみにパテック社のHP内には用語解説ページがあって時々御厄介になっている。1977年開発の極薄型自動巻キャリバー240(厚さ2.53mm)にワールドタイムモジュールを組み込んだ240 HUは3.88mm。これは厚み的には永久カレンダーキャリバーの240 Qと全く同寸である。たった1.35mmの各モジュールに地球やら100年やらが封じ込められている。
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Caliber 240 HU

直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:239個 石数:33個 
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE GENEVE(M.HUBER & A. BANBERY)P.238、242、243

PATEK PHILIPPE 公式ページ

2016年11月29日現在
5230G-001 ご予約対応となっております。
5230R-001 ご予約対応となっております。

(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)

パテック フィリップには馴染まない印象があるような分割支払。ところがどっこい!ご提案をすると結構なニーズがある。どうも正規販売店に百貨店が多いせいか支払方法の選択岐としてあまり市民権を得ていないようだ。
ご利用いただく方はほぼ二手に分かれる。まずパテックともなると数百万決済なので手元に一括資金が無いけれども、レアモデルと出会って、今!何とかしたいというお客様。当然というかお若い方が大半。
そして意外に高級時計を既に多数コレクションされ手元資金も豊富なご様子ながら「時計以外にも色々あって・・」と何かと物入りなご様子の方のご利用も結構多い。
ただ他の取り扱いブランドと異なり分割手数料(いわゆる金利)はお客様にご負担いただいている。この金利はクレジット会社の資金調達金利と連動したり、クレジット各社が競り合ったりで結構頻繁に変わる。ただ当店はエリア的な要因なのか、かなり美味しい条件とのコメントをいただくことが多い。
ご利用が未経験の方は是非一度ご検討いただきたい。手続きは簡単で大体ひと月当たりのお引き落とし額を決めていただければご負担金利が決まり、各月支払額が計算される。あとはショッピングクレジット申込書に必要事項をご記入いただき、身分証明書(大半が免許証)とともにクレジット会社にFAXで申請。20分~30分程度の審査の後、不都合が無ければ電話でご本人様の確認を取って手続き終了。
引き落とし口座情報と銀行印も必要だが、用紙お持ち帰りの上で後日郵送が可能。ともかく免許証等の身分証明書だけあれば手続き可能である。
で、気になる分割金利だが、前述のように変動もするしクレジット各社の思惑もあって、具体的に書けないのが残念。でもたぶん皆様のご想像以上にお得感ありかと・・・

仮に支払総額500万円だとして単純に84回で分割すればひと月あたり59,500円と数%(10%未満と書くのが限界?)の金利となる。もちろんもっと短くても可能だし、逆に最長100回まで分割可能。8年4カ月は長いようだが時計の寿命は車と違って非常に長い。実際当店の一階では100万円前後のブライトリングで84回分割(こちらは無金利)は日常茶飯事である。またお手元に頭金があれば負担金利は当然減るし、ボーナス時増額なども可能で、様々な設計が可能である。
どうです意外に使い勝手良くありませんか?是非お気軽にご相談下さい。 
 

5月に腕時計最高額を塗り替えて落札されたパテックフィリップのオークション記事を紹介したが、早くもこのハンマープライスが11月12日ジュネーブのオークションで塗り替えられた。1943年製造ステンレスの永久カレンダークロノグラフRef.1518が12億円。
ひょっとしたらのこんなサプライズもパテックならではのオーナーのお楽しみ。今回紹介はそんな可能性を秘めた最新のお宝限定モデル。先日の速報記事でも予想はしていたがまさかこんなに早い入荷とは・・・
パテック フィリップの取り扱い期間が浅い当店にとってめったに発表されないお宝限定は実はハードルがとても高い。実績顧客に限るという販売条件でお客さんまで限定扱いとなる事が多いからだ。でも今回は大変ありがたい事に速やかにご注文を頂き先日入荷。
心待ちにされていたオーナー様にご来店いただき検品前に真空パッケージを開封いただいた。さらにご了解を得て納品前に実機撮影の機会を得た。あぁもう少し立派な鋏を用意しておくべきだった・・
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オーナー様、当店スタッフを含めての第一印象は"重い!"そして期待たがわずカッコよろしい。発注時に現物が見られない不安感を一掃する好印象で正直「ホッ」とした。
まずブルーの色が良い。PP社のHPでの印象はかなり明るめで若々しい印象があったが、落ち着いた深みのある色目。もちろんRef.5711/1A-010ブラック・ブルーほど渋く色気が漂うわけではなく上品な青色だ。
次に賛否両論あった文字盤センター上部の40thアニバーサリーの刻印(エンボス)。これもHPではやたら目立つイメージがあったが、凝視しない限り何となくの模様であって主張は全くしてこない。プレスリリースではカレンダーが少し大ぶりになるとあったが、それの違いはよく分からない。新たに18KWGで用意されたカレンダー窓枠は高級感があって特別なモデルにふさわしい。6時側の同軸クロノグラフ積算計ももちろんダイアルのサイズアップに合わせてリサイズされているが微妙なデザインマジックで間延びが無く落ち着いた仕上がりとなっている。18KWGに縁どられたダイアインデックスも良い意味で主張しすぎず日常での着用をためらわせるものではない。特にバゲットダイアからなる9個のバーインデックスは、既存モデルRef.5724Gのそれよりも長めでバランスが良く好印象である。
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サイズはさすがノーチラス史上最大ケース径44mmなので確かに大きい。ただ並べてみればの話で単独で見ていれば抑えの効いたパテックらしいデカ厚かと・・
横に並べるとトラベルタイムクロノRef.5990/1Aケース径40.5、厚さ12.53mm)が小さく見えてくるのはご愛嬌か。5976の厚さ12.16mmは5990より僅かに薄いのだが、ケース径では3.5mm大きいのでむしろバランスが良く着用感は上回るかもしれない。面白いのは大きくなってもベゼル巾が従来モデルと同寸(約5mm)の為にこの特別なノーチラス号の窓枠は凄くスマートに見える。
しかし重量級だ。プラチナではないかと思うほどヘビーである。全駒状態でなんと312gもある。参考までにノーチラスの主要なブレスモデルを量ってみた。

7118/1A SSレディスノーチラス3針 106g
5711/1A SSメンズノーチラス3針 123g
5990/1A SSトラベルタイムクロノグラフ 162g
5711/1R RGメンズノーチラス3針 191g

残念ながら紹介モデルに最も近似のRef.5980/1Rは手元になく重量不明。尚パテックは各モデルの重量をプレスリリースやカタログ等で明らかにしていないが実は厳重に管理されており、製造工程最終段階では総重量が必ず計量され、ケースやパーツ等に誤素材の混入が無いかチェックしている。さて未入荷の3針プラチナ限定モデルはどのくらい重いのだろうか。素材の比重からすればPTがWGクロノより重そうだが、ケース厚で3.86mm薄いしブレス厚もかなり違うので結構良い勝負?するかも・・
厚み比較画像:左5976WG、右5711SSう~んやっぱり重いのはプラチナか
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1976年オリジナルノーチラス発売時に採用されたコルク製の特別ボックスが忠実に復刻されている。ビックリしたのは現行モデルの通常コレクションボックスよりかなり小ぶり(巾15cm奥行15cm高さ8.2cm)かつ軽量でずいぶんカジュアルな印象。但しヒンジで連結された上下部とも厚さ4.1cm以上のコルク無垢材から削り出された贅沢仕様だ。
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特に通しの限定シリアルは付けられておらず通常通りムーブメントNo.とケースNo.で管理されている。ただ1300本限定の1本である事を保証する限定証明書が発行添付されている。画像では解りにくいがRef.NoやCal.Noなど主要部分はダイアルカラーに通じるメタリックブルー箔押しの難い演出がされている。
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今回ご発注を頂いた顧客様より1976年と2016年が御家族(お二人)それぞれのアニバーサリーイヤーである事を伺った。感慨深いストーリーに浸りながら撮影をさせていただいた。

Nautilus Chronograph Ref.5976/1G-001 40th Anniversary Limited Edition
世界限定1300本

ケース径:44mm(10時ー4時方向)※リューズを含む3時ー9時方向で49.25mm
ケース厚:12.16mm 
防水:12気圧
ケースバリエーション:WG 
文字盤:サンバースト加工にブルーPVD加工 バゲット及びプリンセスダイア付ゴールド植字インデックス
価格:税別 10,510,000円(税込11,350,800円) 2016年11月1日時点

キャリバーは2006年にノーチラス発売30周年を記念して発表されたシリーズ初のクロノグラフモデルRef.5980/1Aに初搭載されたCal.28-520Cを積んでいる。同キャリバーはパテック社初の完全自社開発製造の自動巻きクロノグラフキャリバーで垂直クラッチを採用し、フライバック機能を備えた前衛的なムーブメントである。主時計の秒針は敢えて備えずに駆動時に殆ど主ゼンマイのトルクをロスしないパテックご自慢の垂直クラッチ方式によりクロノ秒針が主秒針として転用可能である。
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Caliber CH 28-520 C フルローター自動巻フライバッククロノグラフムーブメント コラムホイール、垂直クラッチ採用
直径:30mm 厚み:6.63mm(ベースキャリバー5.2mm、カレンダーモジュール1.43mm)
部品点数:327個 石数:35個 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
又スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾

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2013年バーゼルワールドのパテック フィリップ最大の話題作エイトデイズRef.5200G。画像では時分針をお約束の10時10分ではなく、8時20分としてブランドロゴを見せるようにした。さてスイスの時計業界には数年から10年くらいの期間で何かしらテーマというか流行があって、ロングパワーリザーブは2010年頃から現在も続くロングなトレンドである。どちらかというと保守的なデザイン性からパテック フィリップは何事も奥手のように思われるが、実際には新進気鋭の先物取りが多い。このロングパワーリザーブもミレニアムイヤーの2000年に3000個限定で発表された10-Day Ref.5100モデルにその遺伝子は遡る。もちろん当時腕時計では最もロングパワーリザーブで主ゼンマイを収めた香箱を2個積んだCal.28-20/220を搭載していた。このキャリバーはパテック社のR&D(研究開発)スタッフ35名をして開発に3年を要した大プロジェクトだったようだ。
※画像はPATEK PHILIPPE INTERNATINAL MAGAZINE No.7より
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ちなみにチョッとビックリしたのだがパワーリザーブ表示機構というのもクロノスさんの記事によれば20年ほど前にパテックが初めて装備したらしい。時期からして1998年のノーチラスRef.3710が最初らしいのだが調べきれなかった。
※下画像はWRISTREVIEWさんより借用
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勉強不足だったがこのパワリザ機構というのは結構複雑でリスクもあるようで歯車の設計と磨き上げに絶対の自信を持つパテックならではの開発だったような。
もう少し前置きを書くと2003年にはこのCal.28-20/220にトゥールビヨンキャリッジを組み込んだCal.28-20/222が開発されて10 Day Tourbilon Ref.5101がプラチナケース(2012年YGケースで再発表)で発表されている。
※画像はPATEK PHILIPPE INTERNATINAL MAGAZINE Vol.Ⅱ No.1より、ムーブメントイラストの余計な線は元原稿の解説用の引き込み線。

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今回本題のRef5200Gと長ったらしい前置きの2モデルとの大きな違いはデイデイトカレンダーの搭載である。しかも瞬時日送り式というのがポイントで、真夜中の0時(あたり)に0.003秒で変更される。パテック社のリリース特集記事によればこの画期的なカレンダー機構搭載はゼンマイのトルクをかなり消費するために10デイズの2日間分のパワーリザーブを献上?することで実現されている。さらに2005年~2008年にPP社アドバンスドリサーチ部門により開発された最新鋭のPulsomax®脱進機とSpiromax®髭ぜんまいが積まれたことによる時計精度の向上と持続時間の延長がはかられた事も大きく寄与している。しかし発売当初は異常に入荷が少なく安定供給まで1年以上掛かった記憶があり、製造技術的にはハードルが高かったようである。
デザイン的には10 Day Tourbilon Ref.5101とシンプルなレクタンゴンドーロのRef.5124をミックスした印象。よく天地の長さ(46.9mm)による腕への座りを心配される方が多いが、緩やかなカーブでなじみは非常に良い。またラグを除いた時計部の天地は35mm以下でけっして大振りな時計ではない。
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ケースのフォルムはRef.5124Gに似るがケース巾とラグ巾は8DAYSが狭いので、天地左右のバランスは10Day Tourbilon Ref.5101に近い。両者の良い所取りとなっている。撮影時に気が付いたのだがこの文字盤はスノーマンダイアルと名付けたらどうだろうか。そのひょうきんさは本来上下にくっついているPATEK PHILIPPEとGENEVEの文字が大きく上下に離れている事も一因している。そして10時10分になると雪ダルマは完璧な両腕を持つ。顔の真ん中には8日分のパワーリザーブインジケーターがありガス欠状態の真っ赤な9日目も一応は正常に動くはずとなっている。実際に巻き上げるとさすがにロングで135回で全巻きを示すが巻き止まりが無いままずっと巻ける。取説では″20回余分に巻いて終わり"となっているのでどうも巻き止まりがない設計のようだ。さすがにそれ以上は怖くて巻き続ける気になれなかった。お腹の同軸内側が秒針、外が日付。真上の窓に曜日ディスク。取説には瞬時日送りが深夜0時とあるが実機の手動運針では0時数分過ぎだったので結構巾がありそうだ。ピカピカの鏡面仕上げの18金ドーフィンハンド(時分)とエッジの効いたバーインデックスはパテックお得意の組み合わせ。

ケースの厚みは11.63mmとけっこうあるが優美なカーブにより1cmを超えている印象は無い。リューズに並ぶコレクター(プッシュボタン)は左が曜日、右が日付調整用である。
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Ref.5200G-001
ケース径:32.4×46.9mm ケース厚:11.63mm
ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧

ケースバリエーション:WG別ダイアル有のみ 
文字盤:マットブルーサンバースト ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)ネイビーブルーアリゲーター
価格:税別 6,030,000円(税込 6,512,400円)2016年11月現在

長ったらしいキャリバー名Caliber 28-20 REC 8J PS IRM C Jは、天地ー左右サイズが28✖20mmでRectangular(仏英:長方形)・8Jour(仏:日)=8日巻き・Petit Seconde(仏:小さい秒)=小秒針(英:Small Second=通称スモセコ)さらにIndicateur de réserve de marche(仏:パワーリザーブ表示)最後のC JはCalendrier Jour(仏:カレンダー 日、英:Date Day)の頭文字の短縮表現。仏語Calibreの意味は″口径"なので従来多くのムーブメントは、その直径(mm、古くはリーニュ)で簡潔に命名されていたものが、2000年以降のどこかから覚え難いが解りやすい名称になってきた。冒頭のおさらいになるが原点と言える2000年の10DAYSのCal.28-20/220は移行途上の名付けだろうか。2003年の10Day Tourbilon Ref.5101搭載の派生キャリバーCal.28-20/222(プレスリリース記載並びに地板刻印)はバーゼルより数か月後発行のゼネラルカタログではCal.TO 28-20 REC 10J PS IRMと記載されており、正にこの年辺りで移行されたと推測している。出来れば3つのムーブを並べ比較したかったが適当な画像が無かった。どれもが美しいが個人的には最新の8DAYSのキャリバーの装飾性が最も高いと思う。一見3本の別れた地板のように見える部分は実は剛性の高い一枚物に凝った化粧が施されている。
注:Ref.5101のCaliber名称については最初どちらの表現が正しいのか判然としなかったが最近入手したパテックマガジンのバックナンバーと2012ゼネラルカタログから混在していたことが解った。(11/17追記)
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Ref.5124の記事でも触れたが8DAYSでもケースとキャリバー双方の形とサイズに親和性が高くて完全な専用ムーブである事の特別感を感じさせてくれる。ビスポークエンジンゆえにコストに反映されるのだが、その割には結構頑張った価格設定ではないか。
最新鋭のPulsomax®脱進機とSpiromax®髭ぜんまいに迫ってみた下の画像。一番左の穴石(赤い人口ルビー)の下方に見える黒っぽい(実際は青っぽい)歯車がシリコン素材をベースとしたSilinver®製のガンギ車。同素材のアンクルは他のパーツに隠され見えない。パテックはこれら脱進機2パーツをディープ反応性イオンエッチング(DRIE)製法と呼ばれる技術で従来の機械的製法の最大10倍の精度で作り上げている。難解すぎて良く理解はできないがセイコーが採用しているメムス(MEMS)に似た化学的な手法で写真の現像焼き付けのイメージで非常に高精度なパーツが製作されているようだ。テンプの上側に黒くグルグルっと巻かれているのが同じ素材のSpiromax®髭ぜんまい。ピンぼけご容赦!_DSC8176.jpg

Caliber 28-20 REC 8J PS IRM C J
デイデイトカレンダー、パワーリザーブインジケーター搭載8日巻き手巻ムーブメント
サイズ:28×20mm 厚み:5.05mm 部品点数:235個 石数:28個
パワーリザーブ:最大192時間(8日間) 
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2016年11月12日 現在
5200G-001 ご相談ください
5200G-010 ご予約対応となります
(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)



2016年新作レディスモデルのテーマの一つが"ダイア"。既存モデルをベースにしたダイアモンドデコレーションバージョンの追加であった。圧巻はダイアモンドリボンのメレダイア文字盤敷き詰め+ラグダイアモデルRef.4968/400R-001。全くの新作としか思えないほど原型を留めていない。その一方で一体何が変わったの?間違い探しですか。というモデルがRef.4897/300G-001。その原型が下のロングセラーRef.4897G-001。
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現物ではその違いがはっきりするのだけれどもモニター画像の比較では実に解りにくい。従来72個のラウンドブリリアントカット(約0.47カラット)のダイアモンドで飾られていたベゼル。これがバージョンアップされて48個のバゲットダイア(約1.21カラット)がセットされ、さらに美錠(ストラップバックル)にも6個のこれまたバゲットダイア(約0.19カラット)が埋め込まれた。で、気になるこれらダイアモンドのお値段比較ですが、従来品Ref.4897G-001が税別314万円に対して、結構瓜二つのラグジュアリー版のRef.4897/300G-001はほぼ50%UPの同470万円ナリ。特別にモデル名も"LADIES CALATORAVA JOAILLERIE"と与えられた。
この価格差と見た目差をどう捉えるか。枕で紹介したホントに姉妹?のダイアモンドリボンでは(姉に較べれば)清楚な妹が税別594万円に対して、ゴージャス極まりない姉(但しバゲットは一切無し)が同742万円で約25%UP。こちらにもモデル名に″JOAILLERIE"の名が追加されている。種明かしすればバゲットダイアはとても高価なものなんです「チャンチャン!」と言う事なのだけれども・・・
個人的には今回紹介するRef.4897G-001はかなりお買い得ではないかと思う。ダイアのあしらわれ方もむしろラウンドの方が清楚で好感が持てるという意見もある。特に日本人女性にはこちらの方がバランスが良さそうである。

このモデルは2009年に見た目を変えずに微妙なモデルチェンジを受けているが、初代は女性用ウルトラシン(極薄)のメカニカルとして2006年にデビューしたRef.4896Gである。
今この時計をボーイズ扱いで小柄な男性にお薦めしようとは思わないが、2006年の初見時は真剣にそれを考えたし、実際に百貨店部門で男性向けの販売実績もあった。逆に言えばデビュー時には日本の女性市場では少々大振り感があった。たったの10年で我々プロのサイズ感も大きく変わっている事に我ながら愕然とする。しかしいつもながらのパテック フィリップのケースの薄さ(たった6.6mm裏スケ、初代は6.35mmでノーマルケースバック)で装着感は実に良さそうだ。
さて、この時計の最大の魅力は文字盤。妖しいまでのミステリアスなサンレイパターンを表現するギョーシェ(細かい連続パターンの筋目彫り)加工を施し、ミッドナイトブルーラッカーを塗って焼いて磨いての12工程で大層な手間をかけて仕上げている。その上から転写プリント手法で最終銀粉をまぶしたアローシェイプインデックスとブランドロゴの化粧。ルーペで見ると下地ギョーシェの影響を全く受けていないブランドロゴと楔上のアワーマーカーが少し浮き上がって見える。実は2012年の秋にスイスのダイアル工場で実際にこの転写プリントの現場を見ているのでこの時計は個人的にとても思い入れが深い。是非店頭でその吸い込まれそうな文字盤をご覧いただきたい。
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さらにロゴ廻りに肉薄すると・・ なぜか浮いているように見えるのは私だけでしょうか?
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この時計はいわゆるココイチ時計でデイリーユースにはあまりにシックで色の個性も強い。ではいわゆるパーティーウオッチかというとインデックス及び18金のドーフィンハンドの片面がサテン調(ロジウムメッキ仕上げ)なので視認性がとっても良く実用性は高いのでバリキャリ向け・・・少しオーナーとTPOを選んでしまう上級?な一本。ただ色目の違いによって印象が大きく異なるモデルでもあり、素材違いのローズゴールドを含めてカラーバリエーションが全4色用意されており、薄色2色はデイリーユースにも向いている。まあ妖艶な美人は懐もずいぶん深いと言う事なのか。

Ref.4897G-001
ケース径:33mm ケース厚:6.6mm ラグ×美錠幅:17×14mm 防水:3気圧
72個のダイヤ付ベゼル(約0.47カラット)
ケースバリエーション:WG(別ダイアル有)の他にRG(別ダイアル有) 
文字盤:ギョーシェ彫装飾のナイトブルー、18金パウダー転写インデックス
ストラップ:ミッドナイトブルーサテンストラップ
価格:税別 3,140,000円(税込 3,391,200円)2016年11月現在
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Caliber:215

ムーブメントはパテックを代表する手巻キャリバー215。シンプル極まりない2針なので超薄仕様だ。2006年に発表されたシリコン系素材Silinvar®「シリンバー」採用の革新的なSpiromax®スピロマックスひげゼンマイが搭載されたことで耐磁性と耐衝撃性が格段に向上している。まさにパテック フィリップの哲学"伝統と革新"を体現した頼もしいエンジンが搭載されている。

直径:21.9mm 厚み:2.55mm 部品点数:130個 石数:18個 
パワーリザーブ:最短44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2016年11月3日現在
4897G-001   店頭在庫有ります
色違い、素材違いはご予約対応となります。
(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)
関連ブログ:着物でパテックフィリップ、ショパール(2016/4/30記事)

10月21日(金)午後4時ごろか。ちょうど四国(愛媛県松山市の百貨店部門の催事)への出張にまさに出発するタイミングで来たFAX。まさか(やっぱり?)の価格改定案内と新プライスリスト。
2か月前のお盆に実施した奈良のパテックフィリップ展でPPJトップから
「各ブランドでの価格改定(値下げ)が相次ぐが、出来る限りやりたくない」と聞かされていたのだが、さすがにここまで円高基調が続いての苦渋の決断だったのだろうか・・・

値下げは販売にフォローなようだが弊害もある。まず第一に直近でご購入いただいたお客様の気分が良かろうはずがない。また販売店にとっては在庫資産の目減りになりかねない。では値上げはどうかというと駆け込み購入があるが、改定後の反動があり販売不振となる。本音で言えば価格改定は無いほうが良い。しかしグローバルな商材は為替変動と無縁では要られないのも現実。
それでも競合ブランドが少ないパテックの場合、為替変動で相対的に小売価格が安くなった国だけを値上げする事で出来るだけ対処してきた様に思う。しかし記憶に新しい昨年1月15日のスイスフランショック(スイス中央銀行の市場介入中止による急激(15%)なスイスフラン高)の際、ティエリー・スターン社長は(恐らく)熟慮の上で世界の各エリア毎に値上げ(日本、ユーロ圏・・)と値下げ(スイス、アジア、アメリカ・・)、据え置き(イギリス)という大胆な荒療治?を2月11日付けで実施した。さらに為替の経過を5か月間観察して、7月1日に再度価格の見直しがなされた。日本に於いては2月、7月のダブル改定となった。
この間の為替変動と価格改定は、2015年1月20日終値超円安の 1CHF=¥136。ドタバタの2月10日に約5%値上。そこから一旦円高で3月16日 ¥120となるも反転し、6月8日には¥134まで円安に戻った。やむ終えず7月再値上げ6%。 ところがこの直後より再度反転しズルズルと円高基調となり今年2016年の年明けには¥120を割り込み本日10月20日にはついに¥105台まで円高が進んだ。これを受けての11月1日より約3%弱の値下げ実施が発表された。
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今回の価格改定は日本以外ではイギリスのみが超の付くポンド安を受けて8月からたったの2か月なのに再値上げとなる様だ。ブレグジットに揺れる英国は仕方が無いとして、我が国の円高も世界的には無視できないのだろう。
でも昨年度2回合計の値上げ幅が11%程度。そこからの為替推移からすれば今回の値下げ幅はずいぶん小さい気がする。今夏に値下げラッシュだったリシュモン系ブランドの約10%(一部25%なんてのもある)と較べてあまりにも格差がある。
ここで冒頭に話は戻る。パテックには1,000万円クラスやそれ以上のモデルが多々ある。10%下げれば100万も下がってしまう。在庫を抱える我々は冷や汗が出る。さらに直前に購入された顧客はブランドに対しての不信感を持ってしまうかもしれない。逆に下がれば新規販売が増えるかというと短期間に繰り返されたりすると様子見が増えたりで、これまた不信感。そう、値下げの弊害はけっこう大きいのである。
今回、意外だったのはつい先日発表されたノーチラス発売40周年記念限定モデルも価格改定対象だった事だ。10月5日の価格発表時点では価格改定は想定外だったのではないか。本当に急遽ドタバタ、そして不本意?な改定だったように思われてしょうがない。

いい機会なので少し長いスパンでスイスフランを見てみよう。ミレニアムイヤーだった2000年の秋に60円というハイパー円高時代があった。取引先百貨店が夏に破綻した年で毎日走り回っていた記憶がある。当然輸出産業大不振の日本丸は大波に揺られており沈没船に乗り合わせていたようなものか。それでも翌年のバーゼルには出張し確か1CHFが70円くらいだったはずで、結構な額を両替した記憶もある。
2008年までは緩やかに円安が進み景気も徐々に回復したが、2009年のリーマンで急激な円高になる。この年も呑気に秋のスペインに新規導入ブランドの絡みで物見遊山。自前旅行じゃなかったので為替メリットの実感なし。東日本大震災を挟み3年間ほど高止まりしていた円が、アベノミクスが始まった2012年から再度円安に景気回復に向かう。そして3年目の2015年夏から反転して今回の円高が始まった。この辺りで安定するのか?まだ上昇か?こればっかりは誰にもわかりません。ただ、円高=値下げ=微妙な景気 だけは避けてほしいナぁ。
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ところで新価格については個々お問い合わせいただくとして数モデルだけその変遷をご紹介。
Ref.5196J 2,120,000円(2015/2/10~) 2,260,000円(2015/7/1~) 2,200,000円(2016/11/1~2.65%↓)
Ref.5396R 5,070,000円(2015/2/10~) 5,390,000円(2015/7/1~) 5,230,000円(2016/11/1~2.97%↓) 
全て税別、まあ実に可愛いものです。

文責:乾

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前々からチョッと気にはなっていたのだが改めて2016カタログを見直して本稿のタイトルに・・種を明かせば同一リファレンスなのに素材が違う事で針やインデックス等が異なり別の顔のモデル。これが在りそうで中々ない。
レクタングラー(長方形)で2針+スモールセコンドのシンプルウオッチは現行ラインナップ中でこのゴンドーロのRef.5124が唯一。2008年のデビュー時からのロングセラーが今回取り上げるシルバリィオパーリン文字盤(銀と言うよりその色目は微妙にアイボリーがかった白?)にトライアングルインデックスを持つイエローゴールドYGタイプ(下右)。その枝番001はデビューモデルである事を示している。
同時に発表されたWGのヴィンテージローズ文字盤に黒色アラビア(算用数字)インデックスRef.5124G-010(下左)が7年を経て昨年ディスコンとなり、入れ替わりに若々しいブルーサンバースト文字盤にエッジの効いたバーインデックスのRef .5214G-011(下中)にモデルチェンジされた。
いつもながら長々と回りくどいが18金の素材違いで全部異なる文字盤デザインがラインナップされてきた変わり種。詳細に言えばWGのヴィンテージローズ文字盤は植字ではなく転写の黒色インデックスであり、時分針2本の形状も現行2モデルのドルフィンに対してリーフハンドだった。そして小秒針(スモールセコンド)デザインについても素材によって異なっている。
※尚、下の画像は当店スタッフ竹山のマジックハンドによるもので、WGアラビア文字盤のデッドストックはありません。
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しかし本当に″ジキル&ハイド"はこのモデルだけなのか?カラトラバのRef.5296のRG、WGにあるトリプルサークルダイアルとノーマルのバーインデックスはどうなる。さらに従来のバーインデックスに今年アップライドアラビア文字盤が追加された年次カレンダーRef.5396のRG、WGはいったいどうなのか。これらはそれぞれの素材に両方のダイアルがあるので双子の兄弟(たとえに無理があるナァ)みたいなものだろうか。
しかしながらRef.5296P-001のプラチナは同一リファレンス中で唯一のアップライドアラビアインデックスかつリーフハンド、さらにスモセコデザインも異なっている見事なジキル氏であった。しかしこの変人ジキル氏は嫌われるどころか結構なお宝。店頭にまず並ばない希少モデルである。結局これら2品番3点しか現行には無いはずなのでやっぱりパテックの″ジキル&ハイド"はレアだ。グランドコンプリケーションなんかはもっと素材違いによる奇人変人がいて良さそうだが中々にコンサバティブである。

この時計、針と時字(アワーマーカー)及び時分針がシャープ極まりない楔形状なのでブラウン及びネイビー系のビジネススーツとの相性は抜群である。イージークリックを活用してストラップを黒にすればグレーからブラック系スーツにももちろんOKである。さらに12時が植字のアラビアインデックスであり、ストラップ(初期設定)が艶無しの少し明るめの茶色。文字盤色も暖か味のある白なので秋から春まではカジュアルシックに合わせたい。個人的にはザックリとした太畝のコーデュロイパンツにバルキーなシェトランドセーター辺りが気分かと・・

Ref.5124J-001
ケース径:33.4×43mm ケース厚:7.38mm ラグ×美錠幅:22×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:YGの他にWG 
文字盤:シルバリィオパーリン ゴールド植字インデックス
ストラップ:マット(艶無)チョコレートブラウンアリゲーター
価格:税別 2,670,000円(税込 2,883,600円)2016年10月現在

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Caliber 25-21 REC PS

ムー ブメントは、2007年復刻モデルとして発表されたトノー型の傑作モデル"クロノメトロゴンドーロ"の為に専用開発された角型手巻の新キャリバー25-21 REC のスモールセコンドバージョンである。さらに遡れば1934年から1967年まで製造されたCal.9-90(下:1951年製)に酷似している。元々の画像は天地が逆、文字が倒立するが上との比較でくるりと回した。でもなぜか最下辺の9-90は上を向いている。(2016/11/13加筆と画像追加)
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面白いのは御本家クロノメトロゴンドーロのキャリバー鑑賞用裏スケルトン窓とトノー形状の裏蓋とのサイズバランスには少し戸惑いを覚えるが、5214ではケースとキャリバー双方の
形とサイズに親和性が高い為に、むしろ専用ムーブ感を強く感じる事である。 いづれにせよ2モデル限定の少量生産希少エンジンゆえに時計のお値段は当然それなりとなります。(転載)

サイズ:24.6×21.5mm 厚み:2.57mm
部品点数:142個 石数:18個 パワーリザーブ:44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製) 振動数:28,800振動
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾 Wristwataches Martin Huber & Alan Banbery P.129(2016/11/13加筆)

2017年10月21日 現在
5124J-001 店頭在庫あります
5124G-011 予約対応となっています

(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)

ついに発表。今春のバーゼルワールドでティエリー・スターン社長がコメントしていたノーチラスの限定モデル2型が本日?パテックのオフィシャルHPで公開された。PPJからはまだ正式インフォメーションが無いので価格・入荷状況等は不明。詳細判明次第追記予定です。

昨日10月5日に価格の連絡が来ましたので英文のオフィシャルHPから抜粋し、怪しい翻訳でなぞってみます。
Nautilus Ref.5711/1P-001 40th Anniversary Limited Edition 世界700本限定
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品番の"A"が"P"に変わるだけでえらい事に。プラチナのケースもブレスもサイズに関してはSSと全く同じようだ。唯一ベゼルの6時位置にはプラチナ印のダイア0.02ct.が埋め込まれる事を除いては・・
文字盤は18金イエローゴールド、時分針は18金ホワイトゴールド、秒針はロジュウムメッキされたブロンズ(青銅:銅と錫の合金)とケース素材にあわせてバージョンアップされている。インデックスはホワイトゴールドのカップにバゲットダイア(合計0.34ct.)を埋めて植字されているが、ここは好き嫌いが別れそうな気がする。カレンダー窓はわずかに大きくなりホワイトゴールドの窓枠を備えている。6時の上部には文字盤への過剰装飾を嫌うパテックにしては珍しく大胆にも40周年記念のエンボスが結構大きく記されている。
40周年記念モデルがプラチナらしい噂はあったが、ダイアがらみとは全く予想していなかった。ただモニターで見る限りは現行ステンレスモデルにほぼウリなのでこれはこれで・・お値段もそれなりなのだがプラチナは原材料費が高いだけでなく、その粘りっこい素材特性から鍛造・切削・研磨等の加工全般が物凄く大変な素材らしく、ケースのみならずブレスとバックル全てを作ればどうしてもコストがかさむようだ。

ケース径:40.0mm(10時ー4時方向)ケース厚:8.3mm
防水:12気圧
ケースバリエーション:PT950 
文字盤:サンバースト加工にブルーPVD加工 バゲットダイア付ゴールド植字インデックス
搭載キャリバー:324SC→詳細は過去記事
価格:税別 12,740,000円(税込 13,759,200円)

11月7日追記:海外サイト「MONOCHROME」中に1981年に1点限定で生産されたユニークピースRef.3700/1P(控えめなポイントダイアインデックス付き)の2013年オークション情報が掲載されていた。そのハンマープライスは783,750スイスフラン!11/7のレートが1Sfr=107円なので・・
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Nautilus Chronograph Ref.5976/1G
-001 40th Anniversary Limited Edition
世界限定1300本
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バーゼルの段階で2モデル出るらしいと言われていた。3針モデルは妥当としてあと一型は、ミニットかトゥールビヨンあたり・・はたまたクロノならCHR29系のスプリットでいづれも極少量生産かと思っていたら大外れで量産型のクロノグラフムーブCH28-520を積むことで意外に量産?1300本での発表となった。品番はノーチラスデビューの1976年にちなんでの5976。2年前のブランド175周年の限定各モデルの品番(末尾175や75)と発想が似ている。
ノーチラス最大サイズとなる44mmはレギュラーモデルより3.5~4.0mm大きい。厚さ12.16mmは同一ムーブ搭載のRef.5980よりも0.84mm薄いので腕なじみは案外良いかもしれない。大型化に伴って6時側の積算計サークルも大きくレイアウトしなおされている。
こちらの文字盤素材は真鍮。インデックスは3針モデル同様WGでダイアを包んでいるが3か所はプリンセスカットになって総カラットは3針モデルより少ない0.29ct.。時分針はWGにスーパールミノバと3針同様ながら、クロノ秒針はロジウムメッキの鉄針。クロノグラフ積算の60分と12時間計の時分針はホワイトラッカー仕上げの真鍮製。カレンダー窓も3針と同様にWGの窓枠付きで視認性に優れた大き目のレイアウト。40周年記念エンボスはスペースに余裕がある12時側に横長に配置されている。
現行モデルにプラチナブレスタイプが無いので価格の情報を貰う前は、3針プラチナとクロノグラフWGのいづれが高いのかよくわからなかった。ノーチラスにはローズゴールドのブレス仕様で3針(税別5,730,000円)とクロノグラフ(同9,550,000円)がある。単純比較はできないが3針のプラチナのケース&ブレスの製造コストが相当に高いと想像される。

ケース径:44mm(10時ー4時方向)※リューズを含む3時ー9時方向で49.25mm
ケース厚:12.16mm 
防水:12気圧
ケースバリエーション:WG 
文字盤:サンバースト加工にブルーPVD加工 バゲット及びプリンセスダイア付ゴールド植字インデックス
搭載キャリバー:CH28-520 C 自動巻フライバッククロノグラフムーブメント コラムホイール 垂直クラッチ採用
価格:税別 10,830,000円(税込11,696,400円)

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いづれのモデルもブラウンナチュラルコルク製の記念ボックスに収められる。コルクの質感は一見奇抜な印象を受けるが、リリースの説明では1976年のデビュー時のボックスをかなり忠実に復刻したレプリカボックスとしている。
11月7日追記:海外サイト「MONOCHROME」さんよりオリジナルRef.3700の箱画像拝借。サイズバランスは異なる様だがディティールまでほぼウリ。
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納期はまだはっきりしないが、そんなに先にはならないような気がする。とにもかくにも早く現物を見たい。

10月25日追記
10月14日に販売ルールの案内があった。ご購入実績店舗のみで12月末までに購入予約可能となっており、仮に予約が無ければ我々も実物を見る事すら出来ない。また受注可能本数も店舗ごとに決められているので本当に限られた方のみが購入可能となっている。


文責:乾

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さて、ほぼ全モデルがいつでも人気品薄のノーチラスは発売30周年を迎えた2006年にフルモデルチェンジがなされている。この再デビュー時ラインナップは3針、プチコン、クロノグラフの3種類が用意された。2010年に年次カレンダーが追加され、2014年発表の5990トラベルタイム クロノグラフがモデル的にも機能的にも最新の製品となる。偶然なのか4年毎に新機軸が発表されている。

ノーチラスは見た目より相当薄く感じる時計であると以前に書いた。確かにフルローター自動巻Cal.324(3.3mm厚)の3針モデルRef.5117やマイクロローター自動巻Cal.240(3.98mm厚)をベースキャリバーとするプチコンRef.5712は本当に薄くて手首へのフィット感の良さは無類と言える。ただフルローターに加えて垂直クラッチを採用したクロノグラフCal.28-520にトラベルタイムのモジュール積むとムーブ厚で7mm近くなりケーシングされればそれなりの厚みが出て来る。ケース厚12.53mmはノーチラス最厚モデルである。
顔はどこまでもモノクロームの世界である。トラベルタイムの昼夜表示2箇所の窓に夜間わずかに濃紺が出て来るのみである。同じようなグレーベース文字盤のプチコンWGや年次カレンダーには月齢ディスクのネイビーやカレンダー等に部分的刺し色として赤が使われているのに対して、あまりにもメカメカしい。ノーチラスの中で最も質実剛健な印象である。
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文字盤上部のサークルは針表示のカレンダー。下部のサークルはクロノグラフ連動の60分積算計。8時位置のスケルトン針がホームタイムを指す。4時位置のHOME窓の紺色夜表示とあわせて午後8時を示している。通常時針は8時のLOCAL窓と合わせ午前10時と読む。このローカル用時針は9時位置のヒンジ(耳)形状の上下に分割されたボタンで1時間単位での前進と後退が可能である。リューズガードを兼ねた3時のヒンジ部分の上側ボタンがクロノグラフのスタート&ストップ。下がリセットボタンだが、クロノグラフ運針中に押せば瞬時に帰零(リセット)し、放せば(リリース)即時再スタートさせられるフライバック機能の制御ボタンでもある。
このフライバックは元々軍用目的に開発された。例えば戦闘チームが分かれて多方面から戦闘任務を遂行する際に、フライバックを利用して簡単に共通の経過時間を共有する為に使われたのである。
では平時の現代においてどう使うかであるが、この時計に関しては極めて正確な秒針として利用する事が可能である。大抵のクロノグラフにはスモールセコンド形式で時計秒針が備えられている。しかしこのRef.5990には時計秒針は見当たらない。パテックが誇る最先端クロノグラフキャリバーCal.CH28-520の垂直クラッチが優れもので、クロノグラフ作動時のエネルギーロスがほとんど無い為に、クロノグラフ秒針を回しっ放しにして通常秒針として使用する事が出来るからだ。その秒針運針時にフライバックを使って秒針をゼロリセットさせれば簡単に秒単位での時刻合わせが可能となる。

細かいことながらRef.5990は他のノーチラスとケース構造が決定的に異なっている。3針のシンプルなRef.5711を始め普通は捻じ込み式の裏スケルトン仕様の裏蓋、本体を構成するミドルケース、このミドルケースとヒンジ(耳)部分で噛み合ってビス留めされるベゼルの3ピース構造となっている。Ref.5990とほぼ同じ12mm強のケース厚が有って同系列のクロノキャリバーCal.CH28-520 Cを積むRef.5980ですらこのスタイルは変わらない。そしてベゼルとミドルケースの隙間には黒くて分厚い防水パッキンがしっかり確認できる。ジェラルド・ジェンタ考案のユニークだがシンプルな構造だ。下画像はRef.5711/1A
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ところがトラベルタイムの2つのボタンを9時側のヒンジ(耳)部にレイアウトする大胆な発想でスタイリッシュなデザインに仕上げられたRef.5990では必然的にヒンジ(耳)を利用したミドルケースとベゼルの固定が不可能となった。そこで3時のリューズ側のヒンジ(耳)部分はベゼルではなくミドルケース側に成形される複雑な構造になっている。2つのクロノグラフプッシュボタンもビスが無いのに便乗して?ヒンジ(耳)寄りに配置されておりシンプルクロノグラフのRef.5980よりも操作性が向上している。通常可視できる前述のパッキンも見えずよりエレガンスな新種のノーチラスと言えそうだ。
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ついでながらノーチラスで最薄のRef.5711と最厚のRef.5990の断面画像を比較。5711ではブレスレットの各駒の厚みがすべて均一だが、5990はケースの厚みとのバランスを取るためにケース本体に向かって段階的に駒が厚くなっている。
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この微妙な駒の厚みでケース寄りのブレス部分は良い意味で若干バングルっぽい剛性感があり、5990の大き目で重たいケース本体をしっかりホールドしている。
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店頭のトラベルタイムのラインナップが充実してゆく。アクアノート トラベルタイムRef.5164がステンレスと今年素材追加されたローズゴールドの2本。2015バーゼルワールドで話題をさらった5524G-001カラトラバ パイロット トラベル タイム。そして今回ご紹介のトラベルタイムクロノのノーチラス。レディス唯一のトラベルタイムRef.7134G(未紹介・2016生産中止)のお宝在庫とあわせるとパテックのトラベルタイムコレクション全7モデルの内5モデルが揃った事になる。在庫切れはRef.5175グランドマスターチャイム(175周年記念限定品・下画像)と2016新作のRef.6300Gだが、これらは残念ながら永久に在庫にならないので暫定でフルラインナップという事になる。
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この原稿は2月の初旬の初入荷時に書き始めたのだが、8ヶ月間アップすることが出来なかった。実は入荷検品で機能的に初期不良を疑わせる症状が見られたために何度かのやり取りを経て、最終的にはスイスパテック社の見解付きで今回の入荷となった。誤解を避けるためにそのいわくつきの詳細は店頭でご説明させていただきたい。

Ref.5990/1A-001 ノーチラストラベルタイムクロノグラフ
ケース径:40.5mm(10-4時) ケース厚:12.53mm 防水:12気圧
ケースバリエーション:SSのみ
文字盤:ブラックグラデーテッド 夜行付ゴールド植字インデックス
ブレスレット:両観音クラスプ付きステンレス3連ブレス 抜き打ちピン調節タイプ 
尚、2014BASEL発表の商品リリースはコチラから
価格:税別 5,990,000円(税込 6,469,200円)2016年7月現在


搭載されるムーブのベースキャリバーCal.CH28-520は、それまで頑なに手巻きの水平クラッチに拘っていたパテックのクロノグラフ史を2006年に塗り替えたエポックメイキングなエンジンである。前年発表の完全自社クロノキャリバーCal.CHR27-525は確かに最初の100%自社製造ではあったが、それまでの伝統的製造手法でコツコツと工房で少量生産される手作り的エンジンであり、搭載されるタイムピースも商品というより作品と呼ばれるのがふさわしいユニークピースばかりだ。対してCal.CH28-520は"シリーズ生産"と呼ばれる或る程度の工場量産をにらんだ商業的エンジンであり、パテックフィリップが新しいクロノグラフの歴史を刻み込むために満を持して誕生させた自信作なのだろう。
パテックの自社クロノキャリバー3兄弟の価格は、その搭載機能や構成部品点数に比例せず、どれだけの手仕事が盛り込まれているかで決定される。金銭感覚抜群で働き者の次男CH28-520 C(自動巻、垂直クラッチ、フライバック、部品点数327点)、次がクラシックだけどハイカラな3男坊のCH29-535 PS(手巻き、水平クラッチ、部品点数269点)、そして金に糸目をつけない同楽な長男CHR27-525 PS(手巻き、水平クラッチ、ラトラパンテ、部品点数252点)の順となる。(5960/1A-001記事より転載)

下画像:本機に積まれるトラベルタイム搭載のCal.CH28-520 C FUS
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下画像:従来型の年次カレンダー搭載Cal.CH28-520 IRM QA 24H

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上記2枚の画像でローターで隠された部分は3枚の受けがあるが、この部分はどの派生キャリバーもほぼ変化が無い。それに対してテンプ左のPPシールの有る受け、さらに左の複雑なレバー類がレイアウトされた空間は派生キャリバー毎にけっこう異なる。必要なミッションに応じて搭載モジュールがダイアル側で単純にチェンジされるだけでなく裏蓋側の基幹ムーブメントへもアレコレと手が入れられている