パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

2015年10月の記事一覧

パテック フィリップが自動巻を搭載し始めたのは結構奥手だ。本格的な全回転ローター自動巻の業界最速が1931年のロレックス。
PATEK PHILIPPE GENEVE Wristwatches(M.Huber & A.Banbery)213・214ページを見る限り、1953年に特許取得した両方向巻上機構を備えた自社製自動巻Caliber12'''-600AT(1953-1960)を搭載した同年のRef.2526がパテックとしては初お目見えのようだ。
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この最初の自動巻ムーブの18金製フルローターが、現在のメインキャリバー324系の21金フルローターと形状的にほぼ同じなのは興味深い。面白いのはこのキャリバーが中三針(センターセコンド)では無くてスモールセコンド仕立な事で、逆に同時代の手巻きCaliber27SC(1949-1970)がセンターセコンド仕様・・・こりゃまた不思議な発見。

今回は既に紹介済の手巻5196、年次5396に連なるクンロク(96)シリーズの実用時計の最右翼である自動巻5296をクローズアップ。
50年代のモデルにはない便利なカレンダーを備えた現代の自動巻5296を、まず手巻5196との比較で見てゆくと・・・
秒針レイアウトとカレンダーの相違を除けば、両者の見た目は酷似している。ケース径でわずかに1mmフルローター付が大きく、一般的にはローターの分だけ増えるはずのケース厚が、たったの0.75mmしか太っていない。
手巻に関してはピアジェのように薄さの限界に挑戦するのではなく、むしろ必要な強度を持たせた上で現実的な厚みを考える。逆に自動巻といえどもケースデザインを考慮して必要な薄さを確保する。結果として両者の厚みはそう変わらない。これがキャリバー設計における厚さに対するパテック フィリップの哲学だと解釈している。
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興味深い相違点もある。横顔のシェイプはほぼ同じだが、手巻のサテン仕上げに対してより実用的な自動巻がポリッシュなのは少し意外だ。
また手巻がスナッチのノーマルケースバックで、フルローター自動巻の方がスケルトン。此処だけで較べると、これも絶対にアンバランスなのだが、手巻5196の項で裏蓋を敢えてノーマルにしている理由を想像で記述したように、これは血統書付クンロク御曹司である5196の方の特殊事情だろう。
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インデックスは同じに見えるが針は微妙に5296が太いようだ。文字盤のカラーは手巻がほぼシルバーでシャープな印象、自動巻もシルバーの表記だが黄味が少し入った優しいアイボリー調の暖色系の色目、画像には残念ながら微妙な色のニュアンスまで写し込めなかった。
ラグとバックルのサイズは同じだが、ストラップは多少違って5296は甲丸で中央部が肉厚になっていて、なぜかステッチのピッチが粗めだ。気になってカタログでストラップサイズが同じ時計のストラップ設定をチェックしてゆくと驚くほど使い廻しがない。他ブランドとは比較にならないパテックならではの細部への拘りなのだろうか。
不思議なのが仕様的に明らかにコストが異なっているストラップ価格が同素材なら差が無く、さらには結構リーズナブルな事だ。例えばポピュラーなアリゲーターで玉斑(タマフ)で税別27,000円、竹斑(タケフ)が40,000円。折角の世界最高峰パテックの粋な計らいと受け取ってストラップは常にピンピンでいきましょうネ・・・皆さん!
比較のまとめとして、手巻5196はオリジナルのクンロクに出来うる限りコミットメントされており、自動巻5296は実用性を高めつつもエレガントかつコンテンポラリーな現代版クンロクといえそうだ。

Ref.5296G-010
ケース径:38mm ケース厚:8.43mm ラグ×美錠幅:21×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:WG別ダイアル有)の他にRG別ダイアル有) 
文字盤:シルバーリィオパーリン ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックブラウンアリゲーター
価格:税別 3,040,000円(税込 3,283,200円)2015年7月現在

Caliber 324 S C/390

ムーブメントはパテックを代表する自動巻キャリバー324系のベースキャリバーだ。かつては315、330と同系列のキャリバーが搭載されていたモデルにも現在はこの最新型キャリバーが積まれている。汎用性が非常にあるようで、年次カレンダーとトラベルタイムの大半に加えて、グランドコンプリケーションでも日付がレトログレードするタイプの永久カレンダーはこの派生キャリバーを積んでいる。実用性重視のキャリバーなので頻繁に手が加えられ、その都度キャリバーナンバーが変わったものと思われる。
PATEK PHILIPPE GENEVE Wristwatches(M.Huber & A.Banbery)230ページのCaliber28-255(1970-1980)を両方向巻上タイプの最終機として、次世代新設計の片方向巻上のCaliber310(225・226ページ、1981年?~)が開発されている。どうやらこれが324系のルーツと思われ、瞬時日送りカレンダー機能も付加されている。実機への搭載はCal.335Cとして誕生5年目のノーチラスの2代目ムーブとして1981年に積まれたようだ。とすれば熟成期間すでに30年以上か・・・
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直径:27.0mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個 受け:6枚
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾
※・今回の画像、ダメなときは何度撮り直しても無駄なのは良くわかっているのだが・・・

2016年3月12日現在
5296G-010  店頭在庫有ります
5296R-010 お問い合わせください
(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)



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2007年にこの時計が発表された時の感動は忘れられない。バーゼルに同行していたK君とパテックブース1階外周にある展示回廊に飾られていた1920年代のYGオリジナルモデルを何度も何度も見に行き、新旧いづれも譲らぬギョーシェの美しさに魅了された。
この時パテックがまずプラチナケースで復刻させた事が印象深かった。個人的にはイエローがイメージで初見のプラチナは若干の違和感があったが、数年間は店頭に並ばぬ人気モデルとなった。その後ローズゴールドが追加され、2015年の今年プラチナは製造中止となったことで希少お宝コレクションの仲間入りをした。
良く紹介されるオリジナルモデルは1925年製のYGケースにシルバーカラーのギョーシェ細工がなされた文字盤に青焼きのスペード針のモデル。
block_10.gifところが手元のバイブル化しているPATEK PHILIPPE GENEVE Wristwatches(M.Huber & A.Banbery)になぜかズバリの掲載が無い。1920年の物が酷似するが針が金色のアルファシェイプとなっている。ムーブはルクルト製で丸型のCalber12となっている。復刻クロノメトロゴンドーロ5098用に開発された新キャリバー25-21RECのお手本とおぼしきレクタングラーシェイプのCaliber9-90(パテック自社製)が登場するのはゴンドーロ・ラブリオ社への納入終了(1927年)後の1934年である。忠実に復刻された文字盤と異なり搭載エンジンは裏スケルトンの見栄えを意図して別腹を参考にしたようだ。
5124Gの項にも書いたがパテックの現コレクション中で、モデル名が文字盤に書き込まれた唯一の時計がクロノメトロ・ゴンドーロ。たぶん当時のパテック社にとってゴンドーロ・ラブリオ社(ブラジル)が超優良顧客であったのだろう。ただ1900年代前半はロレックス等もダブルネームウオッチは結構製造していたので、今よりずっと小売店主導の(古き良き)時代だったのかも・・・複雑な心境・・・

詳細を見てゆこう。ケース形状は3次元の見事なトノーシェイプ(樽型)である。サファイアガラスが相当な削り込みによって大胆にラウンドしている。文字盤も12時・6時の両方が緩やかに反っている。インデックス内側のギョーシェ部分はほぼ平面のようで、さすがに針までは曲げられていない。
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裏蓋全体も緩やかにカーブしていて腕への座りは抜群だ。こちらのサファイアも丁寧に削って微妙なコンケーブ(内反り)に仕上げられている。ガラス右側に見えている観覧席のような銀色の重なりは、原因不明の虚像?でたぶんサファイアガラスの屈折かカメラの光学的要因の産物かと・・・(肉眼では見えない)
ストラップはいわゆるオフィサータイプに見られるラグ貫通の両ビス留め方式(店頭でのストラップ交換はご勘弁願いたいナァ)になるのでプラチナ製のノーマル型のバックルも両ビスタイプとなっている。
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復刻に当たって専用にムーブ開発されたのにケースとの大きさと形の親和性が今一つと以前にも書いたが、オリジナルに搭載されていたルクルト製ムーブが丸型だった事からすれば良く熟考された上での設計なのだろう。不思議なもので今回じっくりと見ていると、これはコレでアリかと・・・
それよりも4本のビスで留められた裏蓋の内側に興味は深々。専用ケースに専用エンジンなので改めてスペーサーを用意しているのかどうか?仮にそうだとすれば、異素材を使ってのコストダウン狙いしかない。しかし手に伝わってくる存在感からは恐らくプラチナの無垢の塊からムーブメント収納部分のみ切削されている様な気がする。疑問と宿題は増えるばかりである。でも人と同じでどこかにミステリアスな部分があってこそ興味は尽きないのだ。
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Ref.5098P-001
ケース径:32×42mm ケース厚:8.9mm ラグ×美錠幅:17×14mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:PT(製造中止)の他にRG 
文字盤:ギヨーシェ装飾18金製
ストラップ:マット(艶無)ブラックアリゲーター
価格:税別 5,530,000円(税込 5,972,400円)2015年7月現在
   税別 5,370,000円(税込 5,799,600円)2016年11月改定  

Caliber 25-21 REC(手巻き) ※コチラも参考ください。
サイズ:24.6×21.5mm 厚み:2.57mm
部品点数:142個 石数:18個 パワーリザーブ:最低44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製) 振動数:28,800振動
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2017年9月12日現在
5098P-001 完売いたしました
5098R-001 デッドストック店頭在庫あります

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カーン!乾いた音が店中に響く。7月末の閉店作業中の出来事。時計を扱い始めて20数年になるが、此処まで見事な落下はやらかした事はもとより見た事もない。パテック フィリップのショップ イン ショップの設計で最後の最後まで揉め続けたのが床の材質。万が一の事を考慮して当初はフローリングベースでスタートしたが、紆余曲折やどんでん返しで最終的にはパテック社の強い希望を飲みスペイン産の大理石全面敷き詰めとなった。

いかにサファイアガラスが硬いとはいえ最低でも欠けは覚悟。髭ゼンマイの変形、ケース交換を要する強度な打痕、もちろん分解掃除は必須・・・真っ白な頭で時計を見る。
ところが・・・ガラスには大きな割れも欠けすら無い。取り敢えず運針もしている。ケース部分とフォールディングバックル部分は保護フィルムでラッピングされているので剥がして点検。驚いたことに5時と11時のラグ裏側に若干の変形を伴う打痕のみ。外見上の損傷はそれだけだった。冷間鍛造のお陰か奇跡的な軽傷だが売り物にするにはポリッシュ(磨き上げ)だけでは無理、やはりケース交換が必須なのは明らかだった。
次いでビブロテスターでムーブメントを点検、これもまた信じられない程に全く正常値。変形を伴う過激な衝撃に耐えてしまったスピロマックス髭ゼンマイに妙に感心しつつ・・・・着用と使用には問題が無いが、このままでは売れないナァ・・・
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かくして5396は運命の我が愛機となり「パテックは高級時計だが結構壊れにくい!」なるやせ我慢のセールストークを生む事になった。
※今回の撮影は愛用機撮影の為、微細な傷・ホコリ等多々です。落下の損傷度合いは運が全てです。真似は厳禁!

さて1996年に特許取得を受けて発表されたその年次カレンダーの技術的な特徴を列記すると(すべて受け売り、まあ良く書かれている情報ですが・・)
1、他ブランドで従来から良く使われた永久カレンダーの閏年機構を外すのではなくて、全く新しい年次カレンダー専用モジュールを開発し特許化した。
2、文字盤レイアウトの自由度を損なう大ぶりなレバーやカムを極力使わず、または小型化して可能な限り歯車で構成。
3、2のデメリットとして構成パーツ(歯車類)の増加よる輪列の負荷増に対応する為に主に2つの工夫が施されている。
その1:そもそもトルクがしっかりしたベースムーブメントと組み合わせて安定した動作を確保
その2:他ブランドが追随出来ないパテックならではの仕上げ技術によって歯車を磨き上げて負荷そのものを低減。
ところで興味深いのは年次機構の開発以降、パテックはリピーターやクロノグラフに組込む永久カレンダーモジュールにもその長所を反映させている事である。ご興味ある方はクロノスの記事をご参考に。

それにしても発売20年弱で年次はバリエーションが凄い。2015カタログには12Refで36もの顔が掲載されており今やパテック フィリップを代表するモデルとなっている。
デザインは大きく3つあって、1996年のデビューモデルのデザインを受け継ぐ左右2つ目玉針表示の系統。曜日、日付、月の表示窓が文字盤上部に弓状に並ぶモダンな顔。さらに文字盤センター上部に曜日と月の表示窓が左右に寄り目のインライン配置で並ぶダブルギッシェのスタイルで愛機5396はこのタイプ。この顔は1960年代後半の閏年表示の無い永久カレンダーあたりがルーツと思われる。面白いのはこの3つは顔だけでなくケースの形状も異なっている為に三者三様の個性が有り、好き嫌いはあっても人気は甲乙つけがたい。

さて着用2か月の感想。見る度に美しいのは当たり前としてローズゴールドの色目が柔らかく嫌味が無い。ストラップ&バックルは長さ固定の6時側が少し長いようで時計が12時側に逃げ気味なので6時側と12時側をひっくり返して着用している。ベストは6時側のみ1cm短い寸短に交換する贅沢仕様が良いと思うがチョット踏み切れない。

Ref.5396R-011年次カレンダー
ケース径:38.5mm ケース厚:11.2mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RGの他にWG ※2016年発表の別ダイアル記事
文字盤:シルバーリィ オパーリン ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニィ(艶有)チョコレートアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:お問い合わせください

搭載キャリバーは21金フルローターを採用したパテックを代表する自動巻きCal324に年次カレンダーモジュールを組込んでいる。
カレンダー系の操作は禁止時間帯等あって気を使うが、パテックの場合は殆どの物が午前6時(例外あり)に時刻を合わせてプッシュ操作を行う。ムーンフェイズはいつもネット検索して確認していたが、パテックHP内にある確認ページが結構便利である。
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個人的にフルローター自動巻きの裏スケルトンには一抹の気色悪さをいつも感じてしまう。ただパテックの場合はローターの仕上げが尋常でなく美しい。接写しながら改めてそれを感じた。PCモニター画像ではそれを表現しきれていない。デジ一眼のモニター画面では惚れ惚れする輝きと色気があったのだが・・・

Caliber 324 S QA LU 24H/303

直径:33.3mm 厚み:5.78mm 部品点数:347個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2017年9月12日現在
5396R-011 お問い合わせください
5396G-011 店頭在庫有ります

*淡々と書いているけれど、この時の落ち込み様は半端じゃなかった。ショツクの余り、頭は垂れるばかりで食欲も無く、寝込むのではないか?が一週間続きましたね。
優柔不断な性格に、神様も呆れての事の流れ...めでたし、目出度し

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