パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

2016年4月の記事一覧

パテック フィリップのオーナーに年2回春と秋に届けられる"パテック フィリップ インターナショナルマガジン" 掲載記事はタイムピースに留まらずアート、建築、人物、旅、自然・・・と多岐に渡っている。「世界で最も美しいマガジン」というコンセプトで確か1996年の創刊だったと思う。早20周年!
そのコンテンツ中で唯一の連載コラムが本稿タイトルのオークションニュースである。その落札金額たるや数千万は当たり前、数億もゴロゴロあって腕時計での十億越えもそんなに遠くないかと思わせる程に相場は上昇一方である。
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豊富なアンティークピースの知識があれば何倍も楽しめるのだろうが、この手の物は商売と同じで売買に手を染めないと実力が絶対に身につかない。かなりの確率で儲かるだろうが最低でも10年は寝かす我慢が必要で、上場株式などのように短期決戦はありえないので相当な資産家でなければとても足を踏み入れる事は出来ない。
でも以前からお勉強がてら何か概略的なものでも書けないかと思っていた。ド素人ゆえ多分に間違いや勘違いでコレクターの方々には失笑ものだと思いつつ・・
まず手元に揃っているマガジンバックナンバーVol.ⅡNo.1(2003春)号~Vol.ⅢNo.12(2015秋)号まで24冊の各号オークションニュースを読み返しつつ落札1億円以上と記念碑的落札を独断と偏見で拾ってみた。結果として93点、総落札金額合計217億9千万円あまりで、1点平均は2億3千4百万円あまりとなった。すご過ぎて現実感がない気もするが・・
最高落札は1999年にサザビーズニューヨークで16,151,670スイスフラン(以下CHF)現在のレート(1CHF=114円)なら約18億4000万円となるYG製の複雑懐中時計(下画像)。通称スーパーコンプリケーションと呼ばれパテック著名コレクターのヘンリー・グレーブス・Jr(米:銀行家)の為に1933年製作された1点もの。24もの機能が盛り込まれ世界で最も複雑な時計として長らく君臨し続けたが、1989年にキャリバー89をパテックが開発し、複雑度ではチャンピオンの座を明け渡したが落札価格は破られていない。
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腕時計に限ればジュネーブのアンティコルムで2002年に6,603,500CHF(7億5千万円強)で落札された1946年製の一見何の変哲もないプラチナのワールドタイムRef.1415HUである。1950年に2,258CHF(約257,000円)で販売されたこのタイムピースがなぜ大化けしたのかは、正直なところ勉強不足で全く想像が出来ない。
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腕時計次点は2010年5月ジュネーブのクリスティーズで6,259,000CHF(約7億1,300万円)で落とされたYGの永久カレンダークロノグラフRef.1518。アンティーク素人としては、このわかり易いパテックを代表する顔が出てくると安心できる。現行モデルRef.5270の直系元祖となる。
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登場する時計は様々ながらも傾向があって、スモールセコンド+2針はそこそこあるが、中3針自動巻カレンダーのシンプルで典型的な腕時計は殆ど無い。実用的ゆえに着用頻度が多くて良いコンディションの個体がすくないからか。或いは単純に評価が低いのか。やはり何らかの複雑機能を備えた手巻のタイムピースが圧倒的に多い。無理やり分類すると

手巻クロノグラフ 16点(内スプリットセコンド3点)
永久カレンダークロノグラフ 15点
永久カレンダー 13点
シングルプッシュクロノグラフ 11点(内スプリットセコンド4点)
シンプルウオッチ 11点(2針スモセコ等)
ワールドタイム 10点(内クロワゾネ又は七宝7点、クロノグラフ1点)
ミニットリピーター 5点(内永久カレンダー3点)
懐中時計 7点(内クロック1点)
トリプルカレンダー 3点
その他 2点(スカイムーントゥールビヨンRef.5002、サイデロメーター:パイロットトラベルRef.5524の原型)

クロノグラフが合計43点と突出している。総てが100%自社製造以前のエボーシュ時代のものだが、非常に高評価で人気があるようだ。モデル的に一部重複するが永久関連28点は、やはりパテックの顔である事を再確認。

登場メンバー(品番)の常連を見てゆくと
永久カレンダークロノグラフRef.2499 10点
ワールドタイムRef.2523 HU 6点
手巻クロノグラフRef.130 6点
永久カレンダーRef.2497 5点
永久カレンダークロノグラフRef.1518 4点
手巻クロノグラフRef.1579 4点
この後は3モデルが3点で並ぶ
手巻クロノグラフRef.530、同Ref.1463 ワールドタイムRef.1415 HU

やはりクロノグラフ、永久カレンダー、ワールドタイムの御三家の人気が高い結果となっている。
舞台となるオークションハウスにも流行があるようで2000年代中頃まではアンティコルムが非常に多く登場する。それ以降はクリスティーズが増えてくる。次いでサザビーズ、ぐっと減ってフィリップスとなる。場所は圧倒的にジュネーブが多くて、ニューヨークが僅かに混ざる。

具体的に掘り下げて紹介したいタイムピースもあるのだが、久々にかなり長くなりそうなので後日の後編で・・

注:日本円への換算は直近のレート(1CHF=114円)を採用した。マガジンの記事中やWEB上の様々な過去記事は当時のレートが基準となっているので一致しない。また未蔵書のマガジンバックナンバーVol.Ⅰの掲載については検証外である。

文責:乾

Patek Philippe Internaional Magazine VolⅡ No.1~Vol.Ⅲ No.12
PATEK PHILIPPE GENEVE(M.HUBER & A. BANBERY)

『第一回パテック フィリップ展』のご案内
だいぶ先になりますが今夏のお盆真最中8月11日(木・山の日)~15日(月)に当店初の『パテック フィリップ展』を実施いたします。カサブランカ流の"何か"が違う展示会イベントに出来ないかと日々無い知恵をしぼっております。是非ご期待下さい。詳細等が詰まりましたら順次ご案内申し上げます。

永久カレンダーはパテック フィリップの定番商品である。まあ他にも定番は一杯有りすぎるが・・
昨今は年次カレンダーがその人気の高まりと共にカレンダー系看板商品の座を脅かそうとしている。そんな中で2016年の今年、永久カレンダーラインナップに大胆な見直しが行われた。
主力のラウンドケースRef.5140とクッションケースのRef.5940で5型整理、1型追加。日付がレトログラードするセンターセコンドタイプ6型の内、2型が文字盤変更や素材変更を受けた。ニューフェースとして少し大ぶりでモダンなラウンドケースのRef.5327が3色発表され、昨年14型あった永久カレンダー(他の複雑機構が無い)は、選手交代しながら今年度13モデルとなった。他の高級ブランドでは一番多いAPでも7モデル、バシュロンやブレゲ等それ以外では数モデルしか無い。パテックの充実ぶりは突出している。
バーゼル商談時のヒアリングでは欧米は新しい39mm径の新型5327が人気で、日本は逆に小ぶりな従来の37.2mmのRef.5140及び5940の大量ディスコンが惜しまれ、貴重なプラチナモデルの追加ダイアルが好評だったらしい。確かにチャコールグレーサンバーストと命名された新文字盤には得も言われぬ魅力を感じた。

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しかし、首の皮一枚で残留した上のRef.5140P-013エボニーブラックのダイヤモデルには捨てがたい魅力がある。まずパテックはレディスも含めてコレクション全体でダイヤインデックスが殆ど無い。メンズに限れば2型(52975298)あるがどちらもベゼルがダイヤであり、純粋なインデックスダイヤのみは、意外な事に2014年発表のこのモデルだけである。
で、この10個のプリンセスダイヤと12時位置のバゲットダイヤ2個のお値段がジェムセット代含めて、計算上でたったの税込216,000円なのである。パテックのダイヤモンドはクラリティーがIF(インターナリィフローレス:内部無傷)以上でカラーはG以上、カットもベリーグッド以上に厳選されているので、これはお買い得と言わざるを得ない。小ぶりなケース直径は女性の腕にも充分乗っかるだろう。

永久カレンダーに関しては既に一度Ref.5940で取り上げ、その輝かしい生い立ち始め一通り紹介済みであるので、本稿ではその際紹介が手薄であった1930年代から現代に至る中での記念碑的タイムピースに関して文字盤デザインを切り口として見てゆきたい。
まず最初が1937年発表のRef.96(No.860 182:下画像)は日付が一箇月でレトログラードする機構を備えており現行の永久ラインナップにも多数この顔があるが、クンロクの系譜に連なるRef.5496(2011年にプラチナで発表)がその遺伝子を最も強く受け継いでいる。
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そしてパテックの永久カレンダー腕時計史上の最も代表的な顔であるダブルギッシェスタイルの元祖が1941年誕生のRef.1526(下画像)である。このモデルはパテックで初めて"シリーズ生産"された永久カレンダーでもある。この顔は後述の1985年に永久カレンダーの新時代を切り開く事になるRef.3940が登場するまで、クォーツショックによるスイス機械式時計の暗黒時代をも乗り越えて40年以上も採用され続けるアイコニックフェースとなった。その貴重なデザイン遺伝子は実用カレンダーの大黒柱である年次カレンダーのRef.5396に脈々と息づいている。尚、初代Ref.1526はブレゲ数字ではない正対書体のアラビア数字インデックスが12,2,4,8,10時に植字されており、今年5396にブレゲインデックスで文字盤追加されたRGWGの原点とも取れるが、両者の印象はかなり異なる。
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スイスの高級機械式時計復活の狼煙とも言える極薄型自動巻き永久カレンダーが1985年発表のRef.3940である。搭載キャリバーは1977年にわずか6ヶ月で開発された22金偏心マイクロローター採用のベースムーブ厚2.53mmのCal.240。
ダイアルデザインはクラシックテイストながら意外にも過去のアーカイブに依らない全く新しいオリジナルフェースが与えられた。すなわち3時位置に同軸で月と閏年、9時に同軸の曜日と24時間表示、そして6時位置には日付に加えて月齢がまとめられた三つ目玉のレイアウト。キャリバーの特性上5時のオフセット位置にしか配置出来ない秒針は省略された。
ところでチューリッヒのブランドブティックが立ち並ぶショッピングストリート"バーンホーフシュトラーセ(駅前通り)"には1760年創業の老舗時計店の"BEYER"がある。同店は1985年に創業225年(実に中途半端なアニバーサリー)の記念限定としてRef.3940の初出荷分25ピースをダブルネームに加えてパテックでは極めて稀な限定シリアルが文字盤にプリントされたユニークピースを販売している(Mov.No.770001-770025)。ちなみにNo.1(下画像)はチューリッヒの同店地下にある時計博物館に展示されている。このミュージアムは時計好きとりわけパテック愛好家には実に楽しい施設である。またコンパクトなスペースに日時計や水時計といった原始的タイムピースから機械式時計はもちろん現代の電気的時計まで順を追って展示されており初心者も楽しめるので同地を訪れられる際には是非覗かれる事をお勧めする。
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脱線から話を戻す。20年の長きに渡って製造されたRef.3940も2006年に現行のRef.5140へと移行された。ケース径は37.2mmと1.2mm拡大されたがダイアルデザインはほぼ踏襲された。これ以降Cal.240+永久カレンダーの組み合わせで派生兄弟姉妹モデルとしてクルドパリRef.5139(2008年)、クッション5940とレディス7140(共に2012年)がラインナップされた。今やパテックを代表するこの顔は今年新たにRef.5327が発表されたことから見て、鉄板顔として永久?に継続されそうだ。
昨今、有名無名を問わずETA社のエボーシュ供給制限対策、或いはそれに乗じたかのドサクサ作戦感もある自称マニュファクチュールの乱立で、様々な新しいムーブメントの百出状況にある。そんな中パテックは手巻Cal.215と極薄自動巻Cal.240に1985年から40年以上の熟成を重ねており、ダイアルデザインも本当に長寿命である。保有コレクションを陳腐化させないこのポリシーが王道であるが、歴史と重厚すぎるブランドのアーカイブを有するパテックの様なメゾンでなければその実現は困難だ。
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パテックのプラチナモデルはWGや時にはSSと見分けがつくように通常ケースの6時位置に小粒なラウンドダイヤモンドが埋められている。6時側の理由は着用しているオーナーからは視認出来ても対面する相手には見せないという奥ゆかしい紳士的な配慮からだ。ところが上画像の様にこの永久プラチナでは6時位置にムーンフェイズ調整コレクターが有ってダイヤが見当たらない。
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お恥ずかしい事に撮影するまで気付かなかったが、ケース12時側のセンターにダイア、その左には日付、右には月の各調整コレクターが配置されている。まあ文字盤のダイアを隠せないのでどちら側でも良いのだろうが・・・
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そして薄さが際立つ9時側ケースサイドセンターには曜日調整コレクターが陣取っている。

Ref.5140Pー013 自動巻永久カレンダー
ケース径:37.2mm ケース厚:8.8mm ラグ×美錠幅:19×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:PTのみ(別文字盤有) 
文字盤: エボニー ブラック サンバースト 2個のバゲットカットと10個のプリンセスカットのダイヤモンドインデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
裏蓋:サファイアクリスタルバックにて出荷 ノーマルケースバック付属
価格:税別 12,100,000円(税込 13,068,000円)2015年7月現在

Caliber 240 Q 

直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:275個 石数:27個 受けの枚数:8枚
パワーリザーブ:最低38-最長48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから
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上が1985年製、下は41年後のCal.240。一見殆ど変化無し、原設計完成度の高さに脱帽!
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ビブロ実測値(精度・振り角・ビートエラー)
文字盤上:+6~+9 298°~305° 0.0
 3時下:-3~+1 252°~263° 0.1

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾

Patek Philippe Internaional Magazine VolⅢ No.1 及び12
PATEK PHILIPPE GENEVE(M.HUBER & A. BANBERY)P.281、283、292、294

『第一回パテック フィリップ展』のご案内
だいぶ先になりますが今夏のお盆真最中8月11日(木・山の日)~15日(月)に当店初の『パテック フィリップ展』を実施いたします。カサブランカ流の"何か"が違う展示会イベントに出来ないかと日々無い知恵をしぼっております。是非ご期待下さい。詳細等が詰まりましたら順次ご案内申し上げます。

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パテックフィリップは節目で必ずサプライズを用意する。今回紹介のRef.5960もパテックのクロノグラフ完全自社生産移行への第二弾として、2006年に発表された画期的な自動巻クロノグラフキャリバーCal.CH28-520のデビューを飾る為にそれまでのパテックには無かった恐ろしく斬新な装いを纏って登場した。同年のバーゼル会場の話題はコイツに完全にさらわれた感があった。
パテックが上手なのは当時競合各社もこぞって発表した垂直クラッチ(我が国が誇るセイコーが世界初の実用化に成功)方式を採用しただけでなくフライバックを備え時分双方の積算計を6時位置に同軸化してレイアウトした事だろう。此処まででも他社にアドバンテージだが、さらに突き放すのがパテック流でお得意の実用複雑機構である年次カレンダーモジュールを重ねてきた。
当初プラチナケースにアリゲーターストラップで発表され、様々な追加文字盤の変遷を経て、2014年に潔く全モデル生産中止が発表された。そして同年のバーゼルでまさかのサプライズ、さらに実用的なステンレスケース&ブレスで発表されたのが今回紹介のRef.5960/1A-001である。
この初代のプラチナモデルについてはフィリップ スターン会長が別素材での展開をしないと公言していた事もあってか、ともかく再三の価格改定にも関わらず2次マーケットで常にプレミアのつく大ヒットモデルとなった事は記憶に新しい。

この時計の最大の魅力である実用性を列挙すると
①最大55時間のパワリザ付き自動巻き
②垂直クラッチが実現したクロノ秒針の時計秒針使用
③フライバック機能の秒針ゼロリセットで毎分毎に秒レベル調整可能
④当たり前に年次カレンダーは便利
⑤SSモデルには初採用のドロップリンクのメタルブレスで恒常的連続着用実現
てなあたりでしょうか。
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シリーズ初となる淡色系ダイアルは指し色の黒と赤が効いていてこの上なくスポーティだ。文字盤上部に弓上に並ぶ曜日、日付、月の表示は革新系モデルでおなじみの形式でその窓枠ならびにアワーインデックスと時分針には18金素材に多面的なファセットが与えられ、さらに酸化処理でブラックに仕上げられている。この光沢たっぷりな表面感はポリッシュというよりもむしろセラミック系の艶っぽさがある。クロノ(通常秒針兼用)秒針とクロノ積算分針は真っ赤。毎月1日もレッドプリント("赤字"なんて指が裂けても書けません!)となっている凝りようだ。クロノ積算時針とスケルトン(見落としそう!)仕様になったパワーリザーブ表示針も通常時分針とほぼ同じブラックの仕様と思われる。
文字盤面は平滑なシルバーだが6時位置の大ぶりなクロノ積算インダイアル部は外周部の盛り上がりや、一段下がった内側のサークル状エングレーブ(写せておりません)、パテックにしては肉厚気味な転写プリント等の凝った作りである。
尚プラチナからSSへの移行の最大の改良点は時分積算カウンターの内外(時と分サークル)の入れ替えであるが、他にもインデックスや積算カウンターサークル、曜日と月の窓枠追加等々でプラチナより高級感が与えられる結果となってしまった。
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ケースサイドから望むとさすがにコンプリ✖コンプリはそれなりの厚みを感じる。ケース厚13.5mmは意外にもノーチラスシリーズで最厚のトラベルクロノRef.5990を0.57mm上回るが、個人的に腕時計は15mmまでは十分着用可能な厚みと考えている。
ちなみに愛機の中で最厚はボールウオッチの18.9mm。さすがにチタン製だが存在感はステン並みにある。そして最薄はゴールデン・エリプスRef.3738の5.8mmだろうか。ちなみにエリプスは手巻ではなく偏心ローター採用の自動巻極薄Cal.240を搭載し、パテックの現行全コレクション中でも最薄のはず。
良い機会なので2015総合カタログでケース厚13.5mm超を調べてみた。ダイヤベゼルの兄弟機Ref.5961は同じく13.5mm、意外に厚い手巻ラトラパンテRef.5370は13.56mm、逆に意外に薄いのがミニット、永久、トゥールビヨンRef.5207で13.81mm、同ベゼルダイヤRef.5307が13.96mm、少々厚い印象の永久ラトラパンテRef.5204は14.3mm、えっ!わざと厚くしたの?年次クロノRef.5905が14.3mm、そろそろ着用限界か?永久ミニットクロノRef.5208になると15.7mm、そして今年リニューアルされたレトグラ永久ミニット天体系のスカイムーントゥールビヨンRef.6002の17.35mmは彫り物もあってほぼ鑑賞用?
当然最厚は今年市販化モデルとして発表されたグランドマスターチャイムのはずが・・・どっこいまさかのRef.6300はなんと16.1mm。結果的に最厚となるRef.6002はスカイムーン機能が厚さの原因でもなさそうで、単純スカイのセレスティアルRef.6102はたったの10.58mm(薄さに唖然!)しかない。どうやら憶測ながらRef.6002は装飾を生かすために厚めに作られた気配が濃厚だ。いづれにせよ15mm越えがたったの3Ref.しかない複雑時計王国パテックはやはり薄さの追求で群を抜いている。
尚、ムーンフェイズ表示が無いのでカレンダー関連の調整プッシュ(CORRECTER)は3つ。左から月、日付、曜日の順番はダイアル上部の三つ窓レイアウト通りでとても解り良い。

ベゼルはこれまた革新系パテック意匠でおなじみのコンケーブ(逆ゾり)形状が採用されている。ブレスは従来から18金のコンプリケーションウオッチで多用されているドロップリンク5連のしなやかなタイプ。冒頭の全身画像でブレス部をじっくり見ると微妙なしなりが見て取れる。まるでキャタピラのようにしなやかなブレスは短めの弓管のすぐ外から真下にストンと曲がれる構造と相まって装着感が抜群によろしい。

Ref.5960/1A-001 年次カレンダー自動巻きクロノグラフ

ケース径:40.5mm ケース厚:13.5mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:SSのみ
文字盤:シルバリィ ホワイト ゴールド植字酸化黒色仕上げバーインデックス
ブレスレット:両観音クラスプ付きステンレス5連ブレス 抜き打ちピン調節タイプ 
尚、2014BASEL発表の商品リリースはコチラから
価格:お問い合わせください。

冒頭でも触れたキャリバーCal.CH28-520は、それまで頑なに手巻きの水平クラッチに拘っていたパテックのクロノグラフ史を2006年に塗り替えたエポックメイキングなエンジンである。前年発表の完全自社クロノキャリバーCal.CHR27-525は確かに最初の100%自社製造ではあったが、それまでの伝統的製造手法でコツコツと工房で少量生産される手作り的エンジンであり、搭載されるタイムピースも商品というより作品と呼ばれるのがふさわしいユニークピースばかりだ。対してCal.CH28-520は"シリーズ生産"と呼ばれる或る程度の工場量産をにらんだ商業的エンジンであり、パテックフィリップが新しいクロノグラフの歴史を刻み込むために満を持して誕生させた自信作なのだろう。
パテックの自社クロノキャリバー3兄弟の価格は、その搭載機能や構成部品点数に比例せず、どれだけの手仕事が盛り込まれているかで決定される。金銭感覚抜群で働き者の次男CH28-520 C(自動巻、垂直クラッチ、フライバック、部品点数327点)、次がクラシックだけどハイカラな3男坊のCH29-535 PS(手巻き、水平クラッチ、部品点数269点)、そして金に糸目をつけない同楽な長男CHR27-525 PS(手巻き、水平クラッチ、ラトラパンテ、部品点数252点)の順となる。
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上記画像でローターで隠された部分は3枚の受けがあるが、この部分はどの派生キャリバーもほぼ変化が無い。それに対してテンプ左のPPシールの有る受け、さらに左の複雑なレバー類がレイアウトされた空間は派生キャリバー毎にけっこう異なる。必要なミッションに応じて搭載モジュールがダイアル側で単純にチェンジされるだけでなく裏蓋側の基幹ムーブメントへもアレコレと手が入れられている。

Caliber CH 28-520 IRM QA 24H:年次カレンダー機構付きコラムホイール搭載フルローター自動巻フライバッククロノグラフムーブメント

直径:33mm 厚み:7.68mm 部品点数:456個 石数:40個 受け:14枚 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

ビブロ実測値(精度・振り角・ビートエラー)
文字盤上:+1~+2 320°~327° 0.1
 3時下:-3~-1 287°~292° 0.0
検品担当の岩田いわく「クロノ作動時でも精度はもちろん振り角、ビートエラー総てに殆ど変化がありません。他社の垂直クラッチとは別物です」

運針確認時間:58時間運針(クロノグラフ非作動)

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾
Patek Philippe Internaional Magazine VolⅡ No.8 VolⅢ No.6 及び11

『第一回パテック フィリップ展』のご案内
だいぶ先になりますが今夏のお盆真最中8月11日(木・山の日)~15日(月)に当店初の『パテック フィリップ展』を実施いたします。カサブランカ流の"何か"が違う展示会イベントに出来ないかと日々無い知恵をしぼっております。是非ご期待下さい。詳細等が詰まりましたら順次ご案内申し上げます。

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カサブランカ奈良

〒630-8013 奈良市三条大路1-1-90-101
営業時間 / AM11:00~PM7:00
定休日 / 水曜日・第一木曜日
TEL / 0742-32-5555
> ホームページ / http://www.tokeinara.com/

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