パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

2017新作 一覧

やっとこの記事に着手出来る。たぶん一ヶ月位もたついてしまった。ノーチラスSSの価格改定騒ぎやら、生産中止情報等々を先んじてアップしたり。3月頭のパテック フィリップ展に加えて急遽同時開催する事になったプレステージウオッチフェアの仕込み作業。3週連ちゃんの東京出張・・
と、ここまで書いたら最近増えつつあるアジアのお客様が2階に上がる足音・・又しても時間を取られる訳で、ブログはサボログ化する。今日中に上げられれば、ぐらいのつもりで無いと駄目だ。そうそうインスタにも結構時間は取られている。時間を牛耳る時計なるものを取り扱っているのに、いつの間にやら時間を取られまくっている。
閑話休題、アクアノート販売20周年を記念して昨年のバーゼルワールドで発表されたRef.5168G-001。その遺伝子であるノーチラス兄貴に与えられた"ジャンボ"の称号を付けたアクア初(知りうる限りだが・・)のホワイトゴールド素材に絶妙な深みのあるブルーカラーの文字盤とコンポジットラバーストラップを纏いレギュラーサイズより1.4mm大きい42.2mmのケースはジャンボと呼ばれる程の大きさを感じる事は無く、どなたの腕にも乗っかるサイズ感である。中身はCal.324で従来機と変わらない。昨年9月にサンプルを撮影して既に一度紹介済みなので時計については実のところあまり書きようがない。

だが、今回関東方面からお問合せいただき、わざわざ日帰り購入でご来店いただいたお客様のご厚意でピンピンの実機撮影がかなった。

実機撮影の件、承知しました。
乾さんのブログに登場できることを、大変うれしく思います。
iphoneで時計の写真を撮っても綺麗に撮れず、いまから乾さんのブログが楽しみです!
ご遠慮なく、ご活用ください。(メール原文引用)

こんな嬉しいお言葉。時計屋冥利なのか?カメラマン冥利なのか? 俺は一体何者? でもプレッシャーでもあって、ご期待に添えたかどうかは疑わしい・・

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この画像秒針が少しブレている。オーナー様から「上手に撮ってください」的なお願いまでされたのにこの様だ。実はこの時初めての黒い牛革を背景と土台に使って撮影した。デジタル一眼レフのモニターというのは厄介で実に綺麗に見えてしまう。でもスマホよりも少し小さ目なのでPCに画像を取り込んでモニターで確認すると"アレッ"と言う事が多々ある。この時もベゼルの8時から10時あたりに掛けて牛革のシボ模様が映り込んでチョッと不気味な状態になっていた。
時すでに遅く時計は入荷検品に入っており、主ゼンマイは全巻きされ、ごく薄い保護フィルムでケース部分はラップされていた。撮影条件として、モデルの殆どにハック機能の無いパテックは、ゼンマイにほぼトルクの無い状態なら時刻合わせポジションで少しだけ逆転させると大抵は希望の位置で秒針を止められる。最初牛革ベース撮影時は、それでピッタリ針留めして撮ったのだが、全巻き状態になった時計のラップを剥がして、何をどうやっってもほんの少しのショックで秒針は動き出してしまう。さらに悪い事にはラバーストラップという素材は空気中を漂う微細な埃をどんどん吸着する性質がある。ジュネーブの(恐らく手術室の様なノンダスト設備下の)ファクトリーで出荷時に真空パックされた状態で手元に納品された時が、最も撮り易いのである。一回撮影して、検品して、ラップしているうちに手袋の埃が結構ついてしまっている2回目のが上の画像。埃の処理にフォトショップで20~30分は掛かってしまった。リューズに関しては画像処理で捻じ込んでいる。
ところでトルクフルな状況で逆回しをしっかりやると秒針は逆進する。これは実に気色悪い感覚だし、直感的だがきっと機械にも良くなさそうなので、良い子は絶対やってはいけません。

ちなみに画像の左右両側のコンポジットラバーストラップは端に行くと少々ボケ感が出ている。これは被写界深度をどちらかと言うと深めにセット(絞りを少し絞って)して、時計には出来るだけピントを合わせつつ背景はボケる様に狙ったからで、具体的な値は、絞りF13、シャッタースピード1/2.5秒である。このかなり遅めのスピードでは秒針がこんなにブレる。ISO(LO-0.3)を上げればいくらでもスピードは稼げるが画像が荒くなるのでこんな針ブレが起こった。実際には1/30秒位になるようにISOを上げても画質的には問題が無かったと思うが、これも撮像確認の甘さである。簡易スタジオは2階の事務所奥の倉庫の一角にあり、PCは一階事務所にあるためこんな事を時々やらかしてしまう。この針ブレ、流石にフォトショップでどうにか出来るものでは無い。
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撮影日はずいぶん前。画像処理に1日、時間にして4時間位。そして本稿を綴り始めて二日目の今日は2月25日。午前から同時に二組のご来店。昼から出社する姐がいないし、スタッフの I 君と二人なので後から来られた若い初来店様を対応する事に。聞けば名古屋市内からお車で遠路はるばるのご来店。お目当てはRef.5711/1A-011白ノーチ3針ステンレス。現在、白に関しては予約から登録に移行するか否か迷っている状態。5712/1A-001プチコンSSノーチもほぼ同じ状況。3針SS黒青は登録のみで予約はご遠慮いただいている。
当店での予約とは製品が製造され続け納品され続ける限り、順番に販売してゆくと言う事。登録はほぼご来店記念の記帳に近く、販売を約束するものでは無い。
国内30店のパテック フィリップ正規販売店でこれらやアクアノートSSのような異常人気モデルをどのように販売するかは店舗に委ねられている。しかし温度差は色々あっても結局は、常日頃から購買をいただきご愛顧頂ける大切なロイヤルカスタマー様を優先せざるを得ない。傲慢と言われようと「結局、長い目で見た抱き合わせ販売・・」と言われようが、売り手としては当たり前の事だと思っている。ロレックスのSSデイトナ等も一緒で正規店でそれらだけを購入しようされる方が大変多いが、現段階では奇跡に近いのでは無いかと思われる。
話を戻そう。結局じっくりと話し込ませて頂いた名古屋のお客様と入れ替わりに当店V.I.P.顧客様のご紹介の初来店様が入店されてご対応をする事に、姐が加わってもたった3名でそれなりにご来店が有れば一日は本当に"あっ!"という間に終わる。既に19時53分で残る2名は高額品を片付け始めている。そう、閉店時間なので今日もブログは完成しない。ちなみに上の画像はかなり触っております。じっくり見るとあり得ないはずと言う事に(拡大せずにですョ!)気づかれる方もいらっしゃるかも・・
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もはやお馴染みのスケルトナイズされたCal.324の後ろ姿。サテンフィニッシュされたサークルの外側の鏡面仕上げサークルの下の方に前述した牛革ベースが写り込んでいる。さすがにこの画像修正は諦めた。手間と時間がかかり過ぎる割に違和感を完全に無くす事はほぼ不可能。もちろんプロにギャラを払えば、いとも簡単なのだろうが・・
何か本稿はカメラ話に終始したが、書き始めてようやく三日目にして投稿できそうだ。Ref.5167Aや5167/1Aのステンレス素材と同様に、WGの5168Gもリリースからまだ一年なので商品調達は非常に難しい状況が続いている。当店も今年は既に難しい状況にある。でもどちら様にも関わりなく来年度分のご予約は店頭受付しております。詳細はお問合せ下さい。

Ref.5168G-001
ケース径:42.2mm(10-4時方向)ケース厚:8.25mm ラグ×美錠幅:22×18mm
防水:120m ねじ込みリューズ仕様
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤:ブルーエンボス ブラックグレデーテッド 蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
ストラップ:ミッドナイトブルーコンポジット《トロピカル》ストラップ(ラバー)アクアノート フォールドオーバー クラスプ付き 

Caliber 324 SC/393

直径:27mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、ムーブについての過去記事はコチラから

文責:乾

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いまやカラトラバの定番の顔として定着している6000番系。元々はRef.5000として1991年にスタートしたカラトラバファミリーの一員。
搭載キャリバーCal.240の構造上の要因でセンター秒針や6時側スモールセコンドではなく4時位置辺りに小秒針がオフセットしてレイアウトされたパテックのコレクションとしては数少ないアシンメトリー(左右非対称)なモデル。さらにそれまでのパテックには見られなかったスポーティなアラビアインデックスと言う事もあってデビュー当時は賛否両論があったように記憶している。
個人的には若干の違和感を感じていたのだが、最近のRef.5000の再販相場を見ていると結構なお値段になっている。どうも思っていた以上に流通量も少なく人気のカラトラバコレクションになっている。
寿命も非常に長くて初代のRef.5000は発売14年後の2005年に2代目Ref.6000に引き継がれた。新たにポインターデイトというこれまたパテックでは超レアなカレンダー機構を備えてより一層華やかな体育会系の顔になった。
そして12年を経て今年、搭載キャリバー240の40周年を記念して顔はほぼ同じで2mmサイズアップされてRef.6006が発表された。6000はグレーや青や茶と言うカラフルな文字盤が続いたが今回はWGケースに黒文字盤の採用で渋く仕上がっている。ポインターデイト針先の赤色も黒を背景によく効いている。

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ベゼル部は少しだけ盛り上がっているが、ケースサイドは武骨な印象でクンロク系のカラトラバ血流を感じさせる。ただ2mm大きくなった分、緩やかにカーブを描きながら下がってゆくラグ形状で腕なじみを良くしているようだ。
手巻きで薄いRef.5196などはほぼ横一直線(下画像)でラグ先端部分でチョコっと下げられているのと対照的だ。
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裏蓋はスクリューバックの捻じ込み式でサファイアクリスタルバックとなっている。フルローターと違って、沈胴式のマイクロローターはテンプのパフォーマンスを常に楽しませてくれる。
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ダイアルカラーがシックな無彩色のブラックになり色目を気にすることなくスーツはもちろん、スポーティーなインデックスデザインはカジュアルにも幅広くマッチする。使い回しが効くとても実用的なデイリーパテックが登場した。

Ref.6006G-001
ケース径:39.0mm ケース厚:8.86mm ラグ×美錠幅:22×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤:エボニーブラック サンバースト&しルバリィグレイ ホワイト&ブラックの転写
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター
価格:税別 3,340,000円(税込 3,607,200円)2017年8月現在

Caliber 240 PS C

直径:30mm 厚み:3.43mm 部品点数:191個 石数:27個
パワーリザーブ:最低38時間ー最長48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

2017年10月13日現在 ご予約可能、お問合せ下さい。

パテック フィリップの公式ホームページがリニューアルされた。ジャパンからの説明によれば1997年にスタートした公式ページは5回の更新がなされ今回がバージョン6。よりスマートフォン寄りで、製品をより魅力的に見せながらお気に入りモデルが検索しやすくなっている。でも残念なのは歴史が詳細な年表スタイルから非常に完結で解りやすい2本の動画(しかも英語字幕)になったことでブログ作成の参考にはしづらくなってしまった。こんな事なら全部ダウンロードしておくべきだった。幸いなことに個々の商品ページのアドレスは変更が無く過去記事のリンク切れにならなくて済んだ。でも技術解説などで一部リンクが当て外れにはなっているようだが全部は未チェック。確かに見やすくなり誰にでも取りつきやすくなった半面、突っ込んだコンテンツが少し整理されてカジュアルになった印象だ。
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さて本日のご紹介は本年新作の中でも人気急上昇の永久カレンダーRef.5320G-001。パテックのシンプル系永久カレンダー(クロノグラフ等の追加機能無し)の代表作は極薄自動巻キャリバー240ベースの三つ目タイプ。そしてフルローター自動巻キャリバー324にレトログレードデイトを組み合わせたタイプの二つ。5320Gはこのいづれでもない新規の顔ながらダブルギッシェの年次カレンダーRef.5396にはソックリ。でも年次カレンダーが無かった1960年までの機械式時計黄金時代におけるパテックの永久カレンダーと言えばこの顔に決まっていた(下画像Ref.1526)。だから凄く既視感があるしリリースにも″コンテンポラリー・ビンテージ・スタイル"と表現されている。ただ当時は無かった7時半にある昼夜表示窓や4時半のうるう年表示の便利機能が盛り込まれている。
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そしてこの新製品の特長的なラグは1945年製作のRef.2405(下画像)が参考にされた。
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ポリッシャー泣かせの3次元なラグ形状である。
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立体的なボックス型のサファイアクリスタルは文字盤周辺に全くひずみが見られない。現代ならではの高度な加工がなされたクリスタルを特殊な手法でケースにはめ込む事で完璧な視認性を確保したと聞いた。アラビアインデックスもいにしえのRef.1526同様に立体的かつ正対書体の植字タイプで蓄光塗料を塗り込んで実用性を高めている。暖か味のあるクリーム色文字盤はラッカー仕様ながら記憶にない新色で今年の新作ミニットリピーターRef.50785178のエナメル仕様のクリームと酷似している。インデックスを含めダイアルはビンテージ感を非常に意識したカラーリングとなっている。

さて、このモデルの最大の魅力はその価格設定ではないかと思う。税別902万円(税込9,741,600円)はパテック永久カレンダー中で最もこなれた価格である。現行モデルではRef.5139Gの税別926万円より20万以上お求めやすい。共通のCal.324ベースのレトログラード永久Ref.5496Rが約20万高の税別927万なのだけれどもオーソドックスなクンロクケース。それに対して5320の凝ったラグを持つケースは横から見ても充分に高級感があるし文字盤・サファイアクリスタルも完成度が高い。少々不思議なこの値付け、そりゃ人気モデルになりますよ!
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Ref.5320Gー001 自動巻永久カレンダー
ケース径:40mm ケース厚:11.13mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤: クリーム ラッカー 蓄光塗料塗布ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)チョコレートブラウンアリゲーター
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:税別 9,020,000円(税込 9,741,600円)2017年8月現在

Caliber 324 S Q

直径:32mm 厚み:4.97mm 部品点数:367個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

パテック社の製品リリース
PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾



永久カレンダークロノグラフRef.5270の記事でも触れたがパテック フィリップは100年以上にわたるクロノグラフタイムピースの輝かしい歴史を持っている。その一方で厳密に言えばこの分野ではマニュファクチュール(完全自社設計開発生産)のキャリバーを持たずについ最近(2004年)までエボーシュより専用のエンジン供給を受けてきた。1900年代前半にはジュ―渓谷ル・サンティエのヴィクトラン・ピゲ、1929年以降はバルジュー、1986年からはヌーベル・レマニアがサプライヤーの重責を果たしてきた。
しかし2000年代に入るとスオッチグループ傘下のレマニアからの安定供給に危険信号が燈るようになりクロノグラフキャリバーのマニュファクチュール化プロジェクトが進められた。で、最も難しそうな手巻スプリットセコンドクロノグラフを1920年代のエボーシュキャリバーを手本に開発し2005年にRef.5959を発表した。ただしこのキャリバーCal.CH27-525は昔ながらの工房内で限られた熟練職人の手作業によって全工程を2度組される伝統的な製作手法によるため極端に生産数が少なくかつ非常に高額なエンジンである。翌2006年には同じクロノグラフでも非常に現代的である程度の量産が可能ないわゆる″シリーズ生産"型の自動巻クロノグラフCal.CH28-520が開発された。さらに2009年に古典的な美観を備えた手巻シンプルクロノグラフCal.CH29-535が発表されパテックのクロノグラフ自社化は完結した。
今回紹介のRef.5960はこの2番目に開発発表されたCH28-520を始搭載したデビューモデル。発表年2006年のバーゼルはこの画期的なクロノグラフの話題で持ちきりだった。垂直クラッチを備えた自動巻きクロノというベースキャリバー開発だけでも話題性充分なのにパテックはいきなりパワーリザーブと年次カレンダーのモジュールを追加し、プラチナケースに搭載してきた。このモデルはケース形状やダイアルデザイン共にクラシックと対極の現代パテックのモダンテイストで仕上げられた。逆ぞりのベゼル、12時側に弓状に並ぶカレンダー表示窓、30分と12時間のクロノグラフ積算計の同軸表示。さらにはカラーリングもスポーティなレッドやブルーを差し色にする事でそれまでになかったパテックの新しいイメージが打ち出された。
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当初プラチナ以外の素材ではリリースしないと言われていた5960Pは2014年にベストセラーかつ希少モデルのまま生産が中止され、ドロップリンクブレスレットを備えたステンレスモデルの後継機Ref.5960/1Aにそのモテモテ人気も一緒に引き継がれた。そして今春のバーゼルでそのステンレス白文字盤は生産中止となり今回紹介の後継モデル2型がラインナップされた。
まずステンレス新ダイアルの黒文字盤Ref.5960/1A-010。赤針2本以外の針色、カレンダー窓枠、インデックス、文字盤ベース・・見事にまで反転液晶のごとく白が黒に、黒が白に逆転されている。傾向として従来の白が良いとの評価もあるが、個人的には好みの問題で優劣を感じてはいない。
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上画像では針やインデックス等の鏡面部がブラックアウトしているが、実際の色目は下のようになっている。
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で、さらに5960としては3番目の素材WGが追加された。色目はトレンドのブルー。色使いは上のステンレスの黒が青にこれまた忠実に置き換わっている。ただしメタルブレス仕様ではなくどこかで見た事のある明るめのブラウンカーフストラップに個性的なピンバックル(Clevis prong buckle)が装備されている。明らかに文字盤カラーも含めて2015年発表のカラトラバ パイロット トラベルタイムRef.5524Gの流れを汲んでいる。
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こちらもSS黒文字盤同様にインデックス等がブラックアウトしてるので現物と見た目感はかなり異なり視認性は充分にある。バーゼルでの初見の印象は正直「売れるのか?売れないのか?よくわからない」。この点でも5524パイロットトラベルと同類なのだった。価格差は税別717万円と約200万円パイロットより高額である。いづれにしても好き嫌いのハッキリ別れそうな個性的な意欲作だと思う。

Ref.5960/1A-010 年次カレンダー自動巻きクロノグラフ
ケース径:40.5mm ケース厚:13.53mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:SS
文字盤:エボニーブラックオパーリン ゴールド植字バーインデックス
ブレスレット:両観音クラスプ付きステンレス5連ブレス 抜き打ちピン調節タイプ 
尚、参考の商品リリースはコチラから
価格:税別 5,560,000円(税込 6,004,800円)2017年8月現在

Ref.5960/01G-001 年次カレンダー自動巻きクロノグラフ
ケース径:40.5mm ケース厚:13.53mm ラグ×美錠幅:21×16mm
防水:3気圧
ケースバリエーション:WG
文字盤:ブルーバーニッシュド ゴールド植字バーインデックス
ストラップ:ヴィンテージ ブラウン カーフレザー クレビスプロングバックル付きブレスレット 
尚、参考の商品リリースはコチラから
価格:税別 7,170,000円(税込 7,743,600円)2017年8月現在

※以下過去記事より転載
冒頭でも触れたキャリバーCal.CH28-520は、それまで頑なに手巻きの水平クラッチに拘っていたパテックのクロノグラフ史を2006年に塗り替えたエポックメイキングなエンジンである。前年発表の完全自社クロノキャリバーCal.CHR27-525は確かに最初の100%自社製造ではあったが、それまでの伝統的製造手法でコツコツと工房で少量生産される手作り的エンジンであり、搭載されるタイムピースも商品というより作品と呼ばれるのがふさわしいユニークピースばかりだ。対してCal.CH28-520は"シリーズ生産"と呼ばれる或る程度の工場量産をにらんだ商業的エンジンであり、パテックフィリップが新しいクロノグラフの歴史を刻み込むために満を持して誕生させた自信作なのだろう。
パテックの自社クロノキャリバー3兄弟の価格は、その搭載機能や構成部品点数に比例せず、どれだけの手仕事が盛り込まれているかで決定される。金銭感覚抜群で働き者の次男CH28-520 C(自動巻、垂直クラッチ、フライバック、部品点数327点)、次がクラシックだけどハイカラな3男坊のCH29-535 PS(手巻き、水平クラッチ、部品点数269点)、そして金に糸目をつけない同楽な長男CHR27-525 PS(手巻き、水平クラッチ、ラトラパンテ、部品点数252点)の順となる。
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上記画像でローターで隠された部分は3枚の受けがあるが、この部分はどの派生キャリバーもほぼ変化が無い。それに対してテンプ左のPPシールの有る受け、さらに左の複雑なレバー類がレイアウトされた空間は派生キャリバー毎にけっこう異なる。必要なミッションに応じて搭載モジュールがダイアル側で単純にチェンジされるだけでなく裏蓋側の基幹ムーブメントへもアレコレと手が入れられている。

Caliber CH 28-520 IRM QA 24H:年次カレンダー機構付きコラムホイール搭載フルローター自動巻フライバッククロノグラフムーブメント

直径:33mm 厚み:7.68mm 部品点数:456個 石数:40個 受け:14枚 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
又スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾

今年の新作にはどうも昨年のノーチラス発売40周年記念モデルからインスパイアされたものが多いように思う。先日紹介した手巻クロノグラフRef.5170Pの深い紺色の文字盤とバゲットダイアモンドインデックス。この組み合わせは年次カレンダーRef.5396Rの新色追加モデルにも採用されている。そして発売20周年を迎えたアクアノートの新作Ref.5168GにはWG+サイズアップ+ダークブルーダイアルというやはり40周年記念ノーチのフライバッククロノグラフモデルRef.5976Gの骨組みが与えられた気がする。
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パッと見て、今まで無かったという感じがしない。誤解を恐れず言えば目新しさは無い。それくらい濃紺(青?)の文字盤とトロピカルストラップがしっくりし過ぎている。単独で見れば大きさも全く違和感が無い。人気品薄のステンレス3針Ref.5167Aも手元にある訳がないので同じくサンプルで来ていたローズゴールドRef.5167Rと並べて撮ってみた。
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相当長く地方巡業をしてきたのだろう。ローズゴールドサンプルのトロピカルラバーには良い感じ?の半光沢が出て艶っぽくなっている点はご勘弁ください。一見するとそんなにケースと文字盤のサイズ感の違いを感じないかもしれないが、サテン仕上げされたベゼルのドーナツ部分の幅が両者で同じなのにWGがずいぶん細く感じるのがサイズ違いの証。プレスリリースではこの従来サイズを1.4mm大きくした42.2mmと言うサイズは"ジャンボ"と愛称がついた1976年初出の初代ノーチラスRef.3700へのオマージュとされている。
3月のバーゼルパテックブースで初見時の印象は「なんで今まで無かったの?」と言う既視感だった。それほどサイズアップに違和感が無かったし、色目もあって当然の定番かつトレンドカラー。ただ他ブランドなら18金ではなくステンレスで発表してイージーな売上貢献を狙うのだろうが、流石にゴールドスミスのパテックはどちらで出してもエンジンの配給的に生産数が同じようなものになるのだろう。実際結構なお値段(税込4,536,000円)にもかかわらず注文が殺到して店頭にはしばらく並ばない状態と聞いている。この飢餓感がさらに人気を生むというブランドにとっての"好循環?"・・
実際に腕に乗っけてみると、やはり大きさをしっかり感じる。下の画像の様に大きくなれどノーチ&アクア兄弟の真骨頂であるケースの薄さ(8.25mm)はほぼ保たれているので余計に裏蓋の面積を感じてしまう。自身の腕廻りは平均より太目なので問題無く乗っかったが、正直細めや丸い目の腕廻りの方には座りが悪いかもしれない。まあ最近のデカ厚時計をサイズ関係なしにガンガン着用される方には全然大丈夫で、むしろ着け心地の良いデカ薄時計?。
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Ref.5168G-001
ケース径:42.2mm(10-4時方向)ケース厚:8.25mm ラグ×美錠幅:22×18mm
防水:120m ねじ込みリューズ仕様
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤:ブルーエンボス ブラックグレデーテッド 蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
ストラップ:ミッドナイトブルーコンポジット《トロピカル》ストラップ(ラバー)アクアノート フォールドオーバー クラスプ付き 
価格:税別 4,200,000円(税込 4,536,000円)2017年8月現在

120m防水を生むスクリューバックの裏蓋のサファイアクリスタルバックからは入念に仕上げられたムーブメントを鑑賞する事が出来る。実用性最重視であってもゼンマイ心を忘れないパテック流のおもてなし。フルローター自動巻の裏スケルトンは半分しかムーブメントが可視できないので無理やり感があるのだがパテック フィリップは21金ローターそのものを主役にすべく見事な仕上げを施している。
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※上の画像は手抜きのトラベルタイムRef.5164Aを転用

Caliber 324 SC/393

直径:27mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、ムーブについての過去記事はコチラから
又スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2017年9月17日現在
Ref.5168G-001 ご予約いただけます

パテックよりイレギュラーなプチ製品追加情報が来た。こうゆう「突然お邪魔します!」的なモデル発表はいつも可哀そうだと思ってしまう。拙ブログで毎年一番アクセスが多いのがバーゼル訪問前後の新製品紹介編。2番目がそれに先立つ生産中止情報編。それほど時計ファンにとってお気に入りブランドの継続・廃番・新作は気になってしょうがないところ。昨年のノーチラス発売40周年記念限定モデルの様にストーリーが有ってそれだけで盛り上がれるタイムピースは良い。むしろブランドにとって貴重な別アカウントでの商戦作りも出来よう。だからこそ中々周知されにくいであろうプチ情報も丹念にお伝えしてゆきたい。けっして流行らない(流行り過ぎた?)寿司屋のようにネタが尽きたという訳では・・・

レディスの年次カレンダーは2005年にメンズ2代目Ref.5056と似た顔Ref.4936で発表された。女性向けにマザーオブパール(MOP)文字盤が採用され、WGにはタヒチ産黒蝶貝、YGとRGにはバリ産白蝶貝が使われていた。ベゼルには二重巻きでダイアモンドセットされていた。パワリザはゼンマイ臭いのが敬遠されてか省かれていた。翌年の2006年には豪華仕様のケースサイド及びラグにもダイアジェムセットがなされたRef.4937が追加されている。なぜかWG仕様はインデックスは斜体のかかったアラビアで転写となっていた。

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4936&4937のコンビは結構ロングセラーとなり2014年まで生産されたが、2015年発表の現行モデルRef.4947&4948に引き継がれた。二世代目の主な変更点はベゼルのみダイアの4947はダイアルがMOPからソリッド通常文字盤になり、ケースサイドとラグまでダイア装飾の入った4948のみがMOP文字盤とされて住み分けが図られた。インデックスは全て正体のアラビア植字となりケース径が1mmUPした。少し若返った印象だろうか。いづれにしても美人姉妹のような関係が続いている。
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で、いつもどおり前置きが終わって、今回の新色は豪華仕様の姉のWG素材の文字盤変更である。画像は質感が出ていないが資料には真珠母貝とある。我々もスイスパテック社のHP上の画像確認だけなので判然としないがアラビアインデックスのみが鏡面シルバー色(下画像とはかなり違うが?)でレールや曜日、月等のディスプレイはブラックのようだ。でもこの顔どっかで見た既視感があると思ったら、今年バーゼルでレディス永久カレンダーRef.7140に素材追加されたWGのスペアストラップ(シャイニーグリーンターコイズアリゲーター)仕様とか、妹分の年次Ref.4947Gに文字盤追加されたシルバリィ バーティカル アンド ホリゾンタル サテンフィニッシュド ダイアル(長っ!)とか。
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ともかく最近のパテックのトレンドなのだろうレディスはブルー系やグリーン、パープル、ピンクなど明るいビビッドカラーのアリゲーターストラップの採用がラッシュだ。

Ref.4948G-010 レディス年次カレンダー

ケース径:38.0mm ケース厚:11mm ラグ×美錠幅:19×14mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション: WG(別ダイアル有
文字盤:バリ産ホワイト マザー オブ パール、ゴールド植字インデックス
ストラップ: 青緑系アリゲーター ※カラー名称不明、パテックHP記載のブリリアント・ミンクグレーは誤植と思われる為
バックル:ピンバックル(Prong buckle)
ダイアモンド:ケース347個~2.65ct リューズ14個~0.06ct バックル27個~0.21ct 合計388個~2.92ct
価格:税別 7,670,000円(税込 8,283,600円)2017年9月現在
9月よりデリバリー予定

Caliber 324 S QA LU
直径:30mm 厚み:5.32mm 部品点数:328個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

気がつけばもう8月も後半。今夏は梅雨明け以降で湿気がひどく寝苦しい夜が続いた。ところが盆を過ぎてからは夜が急に涼しくなり早朝足が攣ったり鼻かぜ気味になったりと体調管理が難しく厳しい夏だ。このやけに過ごしにくい粘着質の暑さはまだまだ続きそうなのだが・・皆様いかがお過ごしでしょうか。
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本日紹介は今年の新製品として初紹介となるRef.5170P-001。2010年にパテック フィリップ完全自社開発製造となる初の手巻クロノグラフムーブメントCH29-535PSを搭載してイエローゴールドのメンズモデルとして発売以来ホワイトゴールド、ローズゴールドとバリエーションが発表され今年初のプラチナ素材でのローンチとなった。この顔には既視感をお持ちの方も多いと思う。ケース形状は全く違うが昨年秋に発表されたノーチラス40周年限定モデルとして発表されたWGクロノグラフモデルとプラチナ3針モデルで採用された濃青色にバゲットダイアインデックスのコンビネーション。
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ノーチラスの文字盤には特徴的な横縞ボーダー柄があり、微妙な光の当たり加減によって作り出される魅惑的で多彩な表情に悩殺されっぱなしのノーチラスファンが跡を絶たない。5170PのダイアルはBlue sunburst black gradated 放射状の微細な刷毛目紋様の上に文字盤中心の青から円周部の黒へとグラデーションしている。手法は微妙に違うのだが色目の印象が非常に近くて派生モデルっぽく見える。
一般的に言ってメンズウオッチへのダイアモンド装飾はギラギラ感が押し出され過ぎる事が多く、好きな方はそれが魅力で着けておられる。パテックにおいてもベゼルへのダイアセッティイングモデルは存在感タップリで何処にも誰にも負けない立派なものです。ただ一連のノーチラスと言い、5170Pにしてもじっくり見ないと綺麗なバーインデックスに見えてしまったりする。これが押し出しは要らないが自分で満足できる特別感は欲しい時計ファン、パテックファンの背中を押したようだ。個人的にもベゼルダイアは一生腕に巻く事は無さそうだが、この手のモデルは躊躇なく着用可能だ。
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ダイアインデックスを包み込みダイアルにセットしているWGのホルダー。ショーピースを慌てての撮影なのであまり鮮明ではない。万が一の脱落を防ぐためか天地の爪がガッシリしている。ファセット面が非常に少ないのもキラキラ感を抑えている要因であろう。
今年の新製品で一番気になったこのモデル。バーゼルで始めて見てその文字盤の美しさに吸い込まれそうになった。先日久々にサンプルを見直してもその思いは変わらない。漆黒の艶っぽいアリゲーターストラップもダイアとの相性がすこぶる宜しい。
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ケース厚は10.9mmは薄すぎず暑すぎずバランスが良く端正で完成されたカラトラバクンロクケースに仕上がっている。スクエアのプッシュボタンは安定感があり、リセットボタンの押し加減は風の様に軽やかで癖になりそうな独特のフィーリングを持っている。
パテック社の商品分類ではグランド(超複雑)ではなく普通のコンプリケーション(複雑)に分類されている手巻クロノグラフ。しかしその製造方法はいわゆる″二度組"と言われるグランドコンプリケーションレベルと同じであり、時としてパテック社の関係者もグラコンと勘違いをしていることすらあって、価格的にもCH29系クロノはグラコン扱いで良いように思う。巷ではヌーベル・レマニア社のパテック向け専用手巻きクロノグラフキャリバーCH27-70が搭載された自社製化直前のRef.5070、それもプラチナ(ダイアルは確か濃い目のブルー)の人気が今日でもまだまだ高いそうだ。今回の5170のプラチナも将来そんな伝説のモデルに化ける可能性が有るかもしれない。

Ref.5170P-001

ケース径:39.4mm ケース厚:10.9mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:PT、RG(ブラック010ホワイト001
文字盤:ブルー サンバースト ブラック グラデーテッド バゲットダイアモンドアワーマーカーインデックス(~0.23ct)
ストラップ:手縫いシャイニー(艶有)ブリリアントブラックアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格、在庫:お問い合わせください

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以下過去記事より転載
搭載キャリバーは何度見ても惚れ惚れする美人ムーブのCH 29-535 PS。古典的と言われる水平クラッチ(キャリングアーム方式)は美観に優れ、クロノ操作を見る楽しみを与えてくれる。ところがクロノグラフスタート時にドライビングホイール(A、クロノグラフ出車)と常に咬み合っているトランスミッションホイール(B、中間車)が、水平移動してクロノグラフホイール(C、クロノ秒針車)と噛み合う際に、タイミングによって歯先同士がぶつかるとクロノ秒針が針飛びや後退を起こす弱点がキャリングアームにはある。これを解消するためにパテック社ではクロノグラフ輪列(前述のA~C)に特許による新しい歯型曲線を採用している。その他にもコラムホイールカバー(D、偏心シャポー)やレバーやらハンマー等々あっちゃこっちゃに、これでもかと特許技術を投入することで、古典的美観はそのままに時代を先んずる革新的かつ独創的な手巻クロノグラフキャリバーを完成させている。
※パテック社によるCH29-535の解説は→コチラから
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Caliber CH 29-535 PS:コラムホイール搭載手巻クロノグラフムーブメント

直径:29.6mm 厚み:5.35mm 部品点数:269個 石数:33個 受け:11枚 
パワーリザーブ:最低65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾

3月26日、日曜日は会期一週間のバーゼルワールド期間中で最も込み合う日だ。時計好きのスイス人達が全国からモーターショーのノリでこの国境の地に今年の新製品をひやかしにやって来る。入場料は一日券で約5,000円と安くないが一般人も会場には入れる。もちろん各ブランドのブース内には入れないが特殊な商材を除いて各ブース外回りのショーウインドウでニューモデルや通常ラインナップがじっくり鑑賞可能だ。1月にジュネーブで開催されているSIHH(通称ジュネーブサロン)も今年から一般客の入場を認めるようになったそうでその分賑わいが増したそうだ。

本日は朝からびっしりのスケジュール。列車とトラムで会場入りし11時からブライトリングでスタート。各ブランドが新製品を絞っている中でブライトリングは1時間で見切れないニューモデルラッシュ。元気である。特に日本市場限定モデルのクロノマットJSP(ジャパンスペシャル)は一世代前の人気モデルだったクロノマットエボリューションを彷彿とさせるベゼルとバーインデックスダイアルに自社クロノムーブB01を搭載してオールステンレス製で税別83万円と見事に頑張ってきた。

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宣伝モデルの黒文字盤よりも個人的にはシルバーダイアルが秀逸か。興味深いのが新しくセラミックベゼル化されたスーパーオーシャンヘリテージⅡシリーズの42mmと46mmの3針モデル。同社のスーパーオーシャン発売60周年記念を祝してリリースされたものだ。
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税別予価40万円後半のコチラのエンジンはなんと大御所ロレックスのデフュージョンブランド日本未展開″チュードル"仕様。心臓部のテンプ等はブライトリング特製となるが門外不出だったロレックスグループのキャリバーが初めて社外のそれもスウオッチ傘下のムーブメントメーカーETA社と良好な関係にあると言われていたブライトリングに積まれるとは驚愕である。またバーター的にブライトリングのフラッグシップ自社クロノグラフキャリバーB01が今後チュードルのクロノに積まれるらしい。現在チュードルの既存クロノグラフモデルが邦貨換算で60万円程度。チュードルB01クロノが一体どのくらいの値付けをされるのか?興味津々である。

ブライトリングのお後はチョッと内緒のブランド2か所とセイコーとカシオの4ブースを視察し、いよいよ今年もバーゼル最終はパテックに乗り込む事に・・
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世界限定500本のパテック フィリップ アドバンスドリサーチモデルRef.5650G税別予価643万円。機能的にはこれまであったアクアノートSS及びRGのトラベルタイムと何ら変わりません。プッシュボタンの感触もほぼ同じらしい。ほぼパテック技術陣のマスターベーションとも言えるコチラ。パテック初?のコレでもか!の無理やりっぽいオープンワークから覗くトラベルタイム新モジュール。従来モジュールがレバーや爪類を含め37点の部品から構成されていた代物を特徴的な4つの十文字型に交差する板バネを新規採用することでわずか12点の部品で構成する事に成功した。上の画像で4か所の十文字板バネとそれに連なる大きな弓状のステンレスパーツは全部一体のもので1個のパーツとなっている。よくもこんなバカでかい部品を作ったものだ。もう一か所このアドバンスには秘密があって、調速パーツである髭ゼンマイが単なる従来型のシリコン製スピロマックス製ではなくゼンマイの内端側に膨らみを持たせる事で精度の重力姿勢差を画期的に緩和することに成功している。パテックの見解では少々大げさながら?トゥールビヨンの発明に匹敵する技術革新としており、従来のパテックの精度基準であった平均日差―3秒~+2秒(トゥールビヨン搭載機ではさらに日差3秒以内)を―1秒~+2秒以内への調整が可能としている。ただ4月14日現在このアドバンスドリサーチモデルの販売方法は未発表である。どなたが幸運にも手にされるかわからないが、全くの新機構ゆえ初期トラブルは覚悟と言う事で・・
そして今年の一押し新製品Ref.5170P。このモデルとしては初のプラチナ製であり昨年のノーチラス発売40周年記念限定で採用されたバゲットダイアインデックスが採用されている。ともかく美しいのは漆黒の外周部から中心に向かって実に良い具合に濃紺へとグラデーションしている文字盤だ。パテックの関係者も含め一押しの声が多い。ほぼ同じ文字盤装飾が施された年次カレンダーRef.5396R-015もカタログや画像では全く伝わって来ない色男顔である。そしてこの年次カレンダーモデルに採用されているダブルギッシェスタイルの永久カレンダーRef.5320も魅力的だ。元々この左右寄り目の顔は1950年代半ばに盛んに同社を代表する永久カレンダーに使用されていたので久しぶりの復活ダイアルモデルである。浮き上がったようなアラビアインデックスがユニーク。ブースで現物を目にしPPJのN氏から説明を受けるまで解らなかったのがボックス型のサファイアガラスのベゼルへのセッティング方式。通常はベゼル下側からセットされるが、特殊な方法でこの時計は上側から押し込むセット方式が取られておりダイアル外周部が非常に美しい仕上がりとなっている。言葉での説明が難しいので現物を見て頂くしかないのだが・・
冒頭で取り上げたアドバンスドリサーチモデルのアクアノートと共にアクアノート販売20周年記念モデルとしてラインナップされてきたRef.5168G。初のホワイトゴールド素材のアクアの3針モデルは、かつて大振りのノーチラスで命名された″ジャンボ"の呼称が与えられた42.2mmのサイズアップモデル。トロピカルラバーストラップとダイアルが共に深いブルーで統一されすっきりした印象の逸品。ただ筆者の若干太目の腕元に乗せると少しラグが浮いてしまうデカさがあり、アクア3針モデルの最大の魅力である着け心地の良さが少しスポイルされてしまう。かなり体格のある方向けには迫力があってピッタリかと思う。レディスにも20周年にふさわしいゴージャスなダイア使いが素晴らしい2型のローズゴールドのアクアノートが追加された。
今年は細かいアニバーサリーの年で1977年に搭載が始まったパテックの名キャリバーであるマイクロローター採用の極薄型自動巻Cal.240の40周年と言う事でローズゴールドのスケルトンモデルRef.5180/1Rに加えてカラトラバRef.6000の後継機で2mmサイズアップされたRef.6006も発表された。単なる大型化ではなくドーナツ状の同心円サークライン(ヘアライン仕上げ)が新たに加えられ格段に高級感が増している。
最後に生産中止ニュースを悲しんでいた年次カレンダーフライバッククロノグラフRef.5960はステンレスの後継機で色違いの黒文字盤Ref.5960/1A-010が出された。個人的にはディスコンとなった白に後ろ髪が引かれるナァ。併せて初のWG素材のカーフストラップモデルRef.5960Gも追加された。文字盤の少しマットな青に加えてパラシュートのバックルデザインからインスパイアされたクレビス プロング バックルにヴィンテージブラウンのカーフストラップの組み合わせは、人気品薄モデルのカラトラバパイロットトラベルタイムRef.5524の良いトコ取りなのだが、正直に言ってこの時計の評価は個人的には全く未知数だ。趣味ではないのだが売れそうな感触も充分あってバイヤーとしては悩みの一点である。まあ元祖のRef.5960Pが2006年に自社製ニューキャリバーを搭載して発表された時も、2014年にオールステンの5960(白文字盤)が出た時も個人的には?だったのに市場では直ぐに奪い合いになった経緯があったので今回もコイツだけは予測がつかない。
まとめると今年のパテックはアドバンスのアクアノートトラベルを除いて特別に飛び道具が用意されていないが、安定感のある品揃えをしてきた。素材的にはプラチナとローズが目立ちイエローは皆無だった。文字盤は青優勢で黒は控えめ。で、やっぱり個人的に欲しい一本は手巻クロノRef.5170Pなのである。

出展ブランド数は判然としないのだけれども今年のバーゼルワールドは、会場費の高さと昨今の世界景気の関係からか本年から出展を見合わせたブランドも結構あったそうで、ユリス・ナルダンやジラール・ペルゴ等がジュネーブサロンに移動した事などでブースのレイアウトが今年は少し変更されていた。結果カシオが良い場所に移りブースも格段に見やすくなった。またラジュー・ペレ(プロサーホールディングス)に加えフレデリック・コンスタントも買収したシチズンが傘下のスイスブランド(フレデリック、アーノルド・サン、ブローバ、もう一つ・・たしか自社のカンパノラだったか?)をまとめて1ブースにて出展するという荒技?に出た。シチズンと言う会社は本当に地味で目立たない。国内での製品販売もセイコーやカシオにやられっぱなし感が否めないが、どっこい財務体質は非常に良いようだ。ミヨタ等のクォーツムーブメント製造子会社などで海外へのムーブメント販売が大きく、また携帯電話向けの電子デバイス部品にも強いので資金は潤沢なのだろう。でも従来精力的な営業活動でエドックスとともにフレデリックの日本市場開拓を推し進めてきたGMインターナショナルからフレデリックのセールスを今夏引き継ぐらしいのだが、正直大丈夫なのかチョッと心配している。ともかく国内市場への製品広告が異常に少ない企業だし、セールスさんは生真面目一本でとてもファッションビジネスに向いているとは思えないしで・・

気になる懸念材料は明らかにバーゼルへの入場者数が減っている事だ。出展ブランドの減少に加えて数年前まで我が物顔で会場内を闊歩していた中国系のバイヤーやメディア達が激減していた。込み合う日曜日にメイン会場のホール1の中央通路を普通に行き来できるなんて隔世の感がある。日本の比ではないインバウンドが高級時計を買い漁っていたヨーロッパ時計市場の凋落は一昨年あたりから半端ではないらしい。でも出会うヨーロッパ人達の表情に暗さがあまり感じられないのが救いか。ともかく明らかにリーマンショック後それなりに活況を呈してきた世界の時計ビジネスは明らかに曲がり角に来ていると思う。今年の各社の新製品にも色濃くそれは反映されており、昔日の人気モデルへの回帰と抑制の効いた価格設定が目立った。しかしこの数年の時計価格の異常な高騰が見直されたとも言え本当の時計好きには歓迎すべき傾向なのかもしれない。そして我々時計屋ももうひたすらブランドを追い求め、寄らば大樹ブランドの言いなりになる時代が終わり、経営者の指向性をブランド選択に反映して、金太郎飴的な店づくりから脱却して個性的な品揃え提案で消費者に行きつけの住み分けをして貰う覚悟が求められる時代が来ているように思う。マスからニッチに、ラグジュアリーからオーセンティックに・・

文責:乾

今年も会場のブース内ではあまり積極的に写真は撮らなかった。どうしてもライティング環境が悪い上にコンデジで短時間となれば、画像に限界があってメモ代わりにはなっても製品の魅力の写し込みに満足が出来ないためだ。製品入荷時にしっかり頑張りたいと思っとります。ハイ!

昨年は3月21日の木曜に書いていた。加齢とともにCPUもメモリーも衰えまくりだ。一昨年までのバーゼル現地で実機サンプルを見るまで溢れる事前情報に振り回されない贅沢な日々は、今は昔なのである。
今年も不本意ながら、PP社公式HPの2017NEW MODELSから出発前の予習を兼ねてまとめてみた。今記事も加筆・修正だらけになりそうな・・

品番頭の●の色はザックリながら、完全な新商品、新素材投入、新文字盤追加 ※品番お尻には予価を税別1,000円単位をコッソリ記載。POR:時価対象モデル
メンズ
ミニットリピーター
5078G-001(POR)、5178G-001(カセドラルゴング、POR)、5316P-001(レトログラード永久カレンダー付、POR)
スプリットセコンドクロノグラフ
5372P-001(永久カレンダー付、POR)、5372-010(永久カレンダー付、POR)
永久カレンダー
5320G-001[9,020]、5940R-001[9,520]、
クロノグラフ
5170P-001[10,500]、or?5960/01G-001(フライバッククロノ年次カレンダー付)[7,170]、5960/1A-010(フライバッククロノ年次カレンダー付)[5,560]
スケルトン
5180/1R-001(自動巻です!)[10,750]
ワールドタイム
5131/1P-001[9,520]
年次カレンダー
5396R-014[5,230]、5396R-015[5,810]
カラトラバ
6006G-001[3,090]
アクアノート
5168G-001[4,200]、5650G-001[6,430]※限定モデルの為かカタログ画像未掲載の為、無理やりリリースにリンク
メンズは全17型。昨年の大量23型から絞られた印象だが、グラコン(昨年14型、今年5型)を除けば、昨年より3つ多い12型あって2017年は豊作である。またその内の完全新作が昨年度のたった3型から倍増の6モデルとなっており、明々後日の初対面が楽しみだ。
ミニットリピーターの3型は意外に少ないリリース。このところ年次カレンダーのみに採用されていた伝統のダブルギッシェの顔が永久カレンダーRef.5320に用意されたのはチョッとビックリ。さらに年次にもこの顔の追加文字盤が2つ発表され人気のほどがうかがえる。
発売20周年を迎えたアクアノートには記念碑として、現代解釈の名作"ジャンボRef.5168"と最先端技術開発を盛り込んだ限定500本のアドバンスドリサーチモデルRef.5650が用意されていた。チョッと地味だが機械式時計暗黒時代真っ最中の1977年にパテック社オーナーの大英断で開発製造された極薄型自動巻Cal.240も40周年を迎えておりスケルトンRef.5180、ワールドタイムRef.5131、カラトラバRef.6006の3モデルに搭載されアピールをしている。後述するレディスでもワールドタイムRef.7130とハイジュエリーRef.4899の2型がラインナップされている。
このところずっと気になっているSS年次クロノRef.5960はアッサリ黒文字盤が後継機種とされた。さらにカラトラバパイロットトラベルRef.5524にしか採用されていないカーフスキンストラップを装着した初のWG素材モデルRef.5650が新規投入された。この二つは実機を見ないと画像だけでは判然としない印象だ。

レディス
永久カレンダー
7140G-001[10,130]
ワールドタイム
7130G-014[5,560]
年次カレンダー
4947G-010[5,450]
カラトラバ ハイジュエリー
4899/900G-001(自動巻です!)[11,120]
ノーチラス
7118/1A-010[2,710]、7118/1A-011[2,710]
アクアノート
5062/450R-001(ダイア、ダイア、ダイアです!)[20,380]、5072R-001[9,520]
昨年の続きのようなジュエリー攻勢が健在で特にアクアノートのRef.5062の2000万円越えはあっぱれ!ノーチラスのSS3針Ref.7118は好調な様でベーシックな文字盤カラーが追加された。個人的にはグレー文字盤が早く見たい。しかし今年も昨年に続きTwenty-4追加一切無し。

面白いのは昨年あたりから品番中のスラッシュ/記号が必ずしもブレス仕様とされぬようになって少々混乱している。一昨日の予想記事でも"あれれっ!"を結構書いてしまった。尚、例年現地のパテックブース一階に展示されているレアハンドクラフトのユニークピースのクロワゾネモデルやドームクロックが今年は早くも動画で紹介されている。是非ご一読?を。
そんな事はさておき、やっぱり今年もパテックの見どころはタップリ用意されていた。明日から4年ぶりに珍道中する姐との無事では済まないはずの「時計と酒と喧嘩!!」の日々が綴れれば・・・

文責:乾

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