日々、新型コロナウイルス関連のバッドニュースが相次いでいる中、4月30日から開催されるスイス時計最大の祭典"バーゼル・ワールド"と、それに先立つ4月下旬に開催予定だった"従来の通称ジュネーブ・サロン"の開催も早々と中止が決定された。来年はかつてない無いほど早い1月末の厳冬のバーゼルワールドとなる様だ。今年は久々に2大時計見本市が良い季節に連続開催される事になって、大きな盛り上がりを期待していただけに大変残念だ。新型コロナウイルスのリスク拡大の現状況では致し方ない。
ところで今安全な場所の一つとしてクリーンルームに近い時計のファクトリーが考えられる。白衣を着用し、エアーシャワーを浴びて入室する。高められた室内圧によって常時換気されている。そこそこ隣と距離も或る作業机で指サックを嵌めた手を黙々と動かす時計師達。会話もほぼ無いのでこれほど安全な環境は無さそうだ。ひょっとしたら今年は商品の入荷はスムーズかもしれない。
前回までの"パテック フィリップ正史"要約をモタモタと時間を掛け過ぎて、2019年の新製品紹介が今回からとなってしまった。
2017年に発表されたジャンボサイズのアクアノートの新色追加モデルRef.5168G-010。ケース素材はホワイトゴールドで変わらないが、何とも大胆なカーキグリーンなる緑色が採用されている。昨年の公式HP上でのモニター画面初見では「個人的にはこれは無い!」の印象だった。好き嫌いがはっきり分かれるモデルで初出のブラック・グラデーションがかかったブルー文字盤に比較してご希望者はかなり少ないだろうと思っていた。バーゼルで実物サンプルを見た印象もほぼ同じで、この色違い2モデルは同じ時計では無い感じがする。
勿論色が違うのだが、最大の違いは"艶"感の有無だ。ブルーはグラデーション効果も有ってダイアルの艶感がしっかりある。通称"トロピカル"と呼ばれ紫外線による劣化に強いコンポジット素材のパテック フィリップ独自の特殊なラバーストラップにも少し艶がある印象だ。対してグリーンの方は、「良くぞ此処まで」と言いたいほど艶が取り除かれている。ストラップの表面加工は同じだと思うが、色目のせいなのか艶っ気が全く感じられない。この緑色は和風では"国防色(古っ!)"、英語では"ミリタリー・グリーン"とも言えそうだが、個人的には或る顧客様がおっしゃった"抹茶色"が一番しっくりする。ただし、このトロピカルストラップは着用を重ねると、どの色でも表面が次第に磨かれ艶が出る。恐らく関心を持たれるのはアウトドア好きでミドルエイジ迄と予想していたが、見方によっては"枯れた"感を求めるご年配の方まで幅広い年齢層に受けが良い。
バックルは一昨年2018年にデビューしたジャンボサイズ仲間のクロノグラフモデルRef.5968A-001から新規採用が始まったニュータイプの両観音仕様。4か所に増えたキャッチで外れにくいが、両側2か所のプッシュボタンで外しやすい優れモノだ。ただ、やや大きめのボタンが、人によっては着用時に少し手首に不快に接触して着け心地を損ねると言う意見もある。特に旧タイプバックルのご愛用経験の有るオーナー様は気にされる方が多い。
見慣れてはいるけれど、撮影の度に惚れ直すムーブメントの後ろ姿。21金ローターも地板もやり過ぎていないけれど上質極まりない装飾(ペルラージュやコート・ド・ジュネーブ)が施されている。完全に熟成期を迎えたCal.324系は徐々に昨年発表されたニューキャリバーCal.26-330系に積み替えられると思われる。でも画期的なシステムを盛り込んだ新エンジンには無い信頼感が最終期のエンジンにはあって、これはこれで捨てがたい。
Ref.5168G-010
ケース径:42.2mm(10-4時方向)ケース厚:8.25mm ラグ×美錠幅:22×18mm
防水:120m ねじ込みリューズ仕様
ケースバリエーション:WG(カーキグリーン) WG(ブルー)
文字盤:カーキグリーンにエンボス加工 夜光塗料付ゴールド植字インデックス
ストラップ:カーキグリーンコンポジット《トロピカル》ラバーストラップ アクアノート フォールドオーバー クラスプ付き
価格:お問い合わせ下さい
Caliber 324 S C
直径:27mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、ムーブについての過去記事はコチラから
文責・撮影:乾