パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

6007A実機編、カメレオンブルー

決して前回記事の続編ではない。あまりにも蜘蛛の糸が短すぎたのか。一気に極楽浄土への扉の取っ手を掴んでしまった。6月20日にPPJに申請をして、七夕の7月7日に出荷された異例尽くしのカラトラバSS限定モデル。天国よりは近そうな天の川から来たにしても呆れるほど早い。モダンな顔した特別モデルにはワープ機能が備わっていた様だ。
当店に始めてやって来る時計は、検品前に先ず撮影をする。理由は汚れ(微細な埃)がほぼ無い最高のコンディションだからだ。前にも触れたが、PPJはかなり前から日本着荷時点の検品を取り止めている。理由は初期不良率が限りなくゼロであって、むしろ検品時にキズ等の瑕疵を発生させるリスクの方が優るからと聞いている。結果、スイスパテック社で出荷検品後に真空パックされたタイムピース達は国内30店舗の着荷時まで無菌?最低埃レベルが保たれている訳だ。
これは何を意味するかというと今回の様な限定モデルの場合、PPJのスタッフですらプロトサンプルではない最終形の販売用実機を生では見ていないと言う事になるはずだ。勿論、当店が国内第一号入荷では無いと思うので、もう既に何人かの正規販売員と強運のVIP顧客様がご覧になられている事はお断りしておく。
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前回のネット画像情報のみでの印象は、あくまでも個人的見解として少々懐疑的と表明した。しかし実機を前にしてこの予測は見事に裏切られてしまった。この時計の紹介はかなり難しい。その理由は後述してゆくが各部をパート毎に見てゆくと「はて?」と首を傾けざるを得ない思いが強い。ところが全体を総合的に見た時にバランスが取れていてデザインの完成度が高く感じさせられてしまう不可思議さが、パテックらしくないこの時計にはある。
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バックルは定番のピンバックルSSなので特に説明はない。文字盤やケース、ムーブメントを飛ばして脇役とも言えそうな画像を持ち出したのは、この限定モデルの最大の特徴と言えそうな風変わりなストラップを、ぐぐっと寄りで見て頂きたかったからだ。
textileとfabricという英語はいずれも繊維を意味するが、前者が加工前の素材を後者が加工後の製品状態を表わすと初めて知った。その伝でゆくとザックリと平織されたテキスタイルを加工してこのファブリック製のストラップは作られたとなる。誰もがそう思ってしまうだろう。でもこれは物凄く良く出来たgimmickだ。ギミックの日本語訳はしっくりする言葉があまり無く『仕掛け、トリック、からくり』等が検索されるが、個人的にもギミック以外に適当な表現が、エッシャーのだまし絵の様なこの型押しカーフストラップには見い出せない。カーフ表皮にアリゲーターの文様が型押しされたなんちゃってストラップは、とうの昔に市民権を得ているので、それはギミック(だまし)では無くフェイク(模倣、模造)と呼びたい。因みにRさんに多い(しょっちゅう見ている様な気がするが)決して見た事の無い時計はコピー(偽物)と言う。
言葉遊びはこの辺りで止して、画像上はまさかの型押し?(パテック的にはエンボス)と見える。実際に起稿しながら今一度金庫から現物を出して子細にキズミで再確認せざるを得なかった。画像より実機の方がだまされ感は若干弱いが、予備知識なしの初見では誰もが化かされてしまうくらい、このキツネは凄い。
しかしこの色目には既視感が有る。前世代のメモリーしか搭載されていないオツムゆえ引き出しの数も数える程しかないが、色目の既視感が直球過ぎて間髪置かずに、ブルージーン或いはヴェールボスフォールと呼ばれるエルメスがお得意にしている青系カーフレザーの近似色ではないかとの曲解に至る。さらに白く太目なステッチが1.5mm弱の巾で粗目に施されている為に、単純迷?解な頭の中はもうHERMÈS、HERMÈS・・となってしまった。_DSC00370.png

もうこうなると何でもかんでもブランディングせずに済まされなくなってしまう。まっ、チョッとブランディングの意味は取り違えているのだが・・で、これまた何処かで見た顔ではないか?いや、何処かで絶対見ているはずだ!となってしまう。どうです、見えてきましたか?そう、そうなんですよ、"L"で始まるブランドの"T"で始まるアレですョ。
ブランドとそのアイコン、パテックでは例えばノーチラス、ルイヴィトンだと例えばモノグラム、エルメスなら例えばバーキン、それらの事である。そしてそれらの所有スタイルは乱暴に言って、完全に2種族に分類される。実に判り易いメジャーなアイコン種族は、何を所有しており、その価値も出来るだけ沢山の人々に確実に認知される事を希望しているコスパ意識が高い方々で構成されている。数的には圧倒的にマイナーな少数民族であるアンチアイコン種族は真逆であって、非常にニッチな限られたごく少数の同類、極端な例では自分しかその価値が判らないという時計やカバンを好む複雑な思考回路を持っている方々と言えよう。筆者がいづれに属するかはご想像にお任せする。
閑話休題、文字盤の色についてもう少しだけ見てゆきたい。時計を横置きした画像と文字盤に迫った直上の画像で随分と色目の違いを感じる。これは完全にライティングの差でしか無い。このブルーカラーは一見爽やかで若々しさが強調された色目なのだが、快晴の太陽光や色温度の高い蛍光灯の下ではその本来持っている青色の特性をしっかり発揮する。ところが一方でホテルのロビーやレストラン等の色温度が低く低照度の下では少し妖しさを漂わせた艶っぽい藍色の顔がちらついてくる。お日様の似合う健康的な昼の顔だけでは無く、それなりに大人のお付き合いもさせて頂きますというから驚いた。個人的にはこの時計の最大の魅力ではないかと思う。まるでカメレオンの様な二面性を隠し持つ不思議なタイムピースだ。
話を少し脱線させるがこの限定モデル、そのままダウンサイジングしてレディスモデルに仕立てたら滅茶滅茶売れそうな気がする。ケース径35mmくらい、素材は18金WGでベゼルにダイアを纏わせてやる。物凄く良い感じに仕上がりそうだ。

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紛れもなく6000系のサイドビュー。厚さは9.07mm(サファイアクリスタル・ガラス~ケースバック)で2020春生産中止となった6006Gの8.86mmより僅か0.2mm程厚い。ところが搭載されるムーブメント厚は限定6007がセンターフルローターCal.324 S Cで3.3mm、6006GのマイクロローターCal.240 PS Cは3.43mmである。Cal.240は本来マイクロローターの恩恵でパテックを代表する極薄自動巻銘キャリバーで2針の素(す)の状態では2.53mmしか厚みが無いが、スモールセコンドやポインターデイト・カレンダー等の付加機能モジュールが盛り込むれて若干厚みが出ている。それにしても薄いムーブなのに、最終のケース厚が出る6007。理由として考えられるのは文字盤の違いか。6006はセンター3針✚オフセンターの小秒針の構成で、全くのフラットダイアルにインデックス等のディスプレイは全て薄く仕上がるシリコン転写プリント。対して限定6007はセンター3針ながら、ダイアルは再外周部に秒インデックス、その内側に厚みの出るアラビア数字アワーインデックスが植字され、さらに逆三角形のインデックスが細いレールに並べられたアワーサークルが来るダブルアワー表示が来て、さらにその内側文字盤センターにカーボン調の凸凹なテクスチャーが来る4つの同心円から構成されており、それぞれのサークルに微妙な高低差が見られる。この辺りに厚みの答えが有りそうだが、良くは判らない。
尚、時計本体重量は58gで標準的なピンバックル18金モデルよりも20~25gは軽い。昨年カラトラバ・ウィークリー・カレンダー5212AがSSの定番モデルでラインナップされてはいるが、パテックの非スポーツ系のSSモデルが稀な為、手に取った際に感じる驚かされる軽さのインパクトが、初見時に普通は優先する視覚を凌駕してしまう稀有なパテックだ。

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あちゃー!久々にやってしまいました。何とも締まりのない画像。原因はモチベーション不足。最近はおうちでしっかり寝るしかないので寝不足は関係ありません。
またぞろ個人の好悪を枕詞とお断りした上で、この後ろ姿は頂けません。まず裏スケじゃなくてノーマルバックにした方が好ましかった。この限定を手に出来る最上級顧客は誰もがCal.324のスケルトンバック仕様モデルを数本は持っているはずなので、白い特別装飾で中途半端に隠されてしまったムーブメントが可哀そうですらある。逆もまた真なりで21金製のフルローター始めムーブメント構成部品が、白い特別装飾を読み取り辛くしている。"一粒で二度美味しい"では無くて、二粒で互いの味を相殺してしまっている。私見ながらポリッシュ仕上げのSS製ノーマルケースバックを採用してもう少し控えめなサイズで梨地サテンフィニッシュによる刻印装飾あたりが妥当な選択だったように思える。さらに言えば顧客にとって普段それほどなじみの無い工場に起因した限定モデルなので、少々大振りなカラトラバ十字に変えて2006年のジュネーブ・サロン改装記念限定モデルのように建築物(PP6)をデフォルメしたイラストのエングレーブにしておいた方が良かったのではないか。
本日の重箱はスミがやたらと多い様で、さらに根掘り葉掘りは続く。一見この装飾は天地がキッチリ12時-6時に垂直を通してあるように見える。しかし6000系の裏蓋はスナッチ(スナップとも)では無くてスクリューバック方式の為に10角形は天地キッチリとはまずならない。それどころかメンテナンスで開閉を繰り返すたびに微妙にその位置はずれてしまう。実際この実機も特別装飾と10角形の垂線はシンクロしていない。さらに家政婦が見るが如く眼力を上げてゆくと、納品時点でほんの僅か時計回り方向に0.2度ほど装飾がずれている。この何ともイケてない装飾工程を想像するに
①一旦スクリューケースバック(裏蓋)をミドルケースに閉めてみる
②垂線を意識した何らかのマーキングを裏蓋に施してから一旦外す
③マーキングで位置決めした裏蓋の内側に装飾を転写?する
④再度、裏蓋を閉めて、マーキングを消して、終わり
ところが最後に閉め直す段で、微妙に増し締め気味になって時計回り側にズレが出たという想像だ。
パテックのスクリューケースバック構造は、ほぼ全てが日常生活防水に過ぎない。6000系リファレンスのケース構造に拘らなければ普通にスナッチ構造を採用していれば裏蓋装飾の垂直性は容易に達成できたはずだ。それともPP6繋がりで6000系採用だったのか?いづれにせよスクリューバックに拘るのであれば10角形と特別意匠の垂線の二者をキッチリ合わせて、敢えて45度位は斜めに閉められている方が私的にはスッキリする。
長くなるがもう一つ方法があって、王者パテック的にはどうかと思いつつも、ここはもうギミックついでに見た目スクリューバック裏蓋にして実は巧妙なスナッチにする手が有る。こうすれば意匠と10角形とミドルケースの全3者ての垂線がシンクロする。これなら時計通が初見して意表を突かれ、初心者には何の事やらさっぱり気付けない。究極のだまし絵タイムピースが完成していたはずだ。
attestation_c.gif"ATTESTATION"とは英語で『証書、証明‥』の意味。過去5年の当店パテック取扱いの中で唯一の限定モデルであったノーチラス発売40周年記念限定にも発行添付されてきた。でも書体が微妙に異なったり、ノーチの時は非常に特徴的で美しかったブルーダイアルに因んで、カラトラバ十字、品番やキャリバー名がシックでメタリックな濃青色で箔押しされていた。今回は全身が青を纏っているのに金色での箔押しとなっている。また前回は無かったジュネーブ・サロン(本店ブティック)イラストが薄く背景に敷かれている。なぜかここもPP6では無い。さらに今回はご購入者名前(画像はフェイク修正済)も印字されている。保証書のように連続画一的では無くて、不定期で間隔の開いてしまうアテステーションにはアレンジがなされるようである。

そろそろ、まとめにかかりたい。記事の大半が懐疑心と猜疑心のパレードようになってしまった。しかし、冒頭でも書いたように、この時計は部分で見てはいけない。さらに見方を誤ると超有名2大ブランドのハイブリッドウォッチの気配すら漂ってきてしまう。一度その先入観に捕らわれてしまうと拭い去る事が、困難かつ厄介で始末に悪い。ギミックフルでトレンドセッターブランドの既視感満載、パテックらしさほぼ皆無?作ちゃった感が凄すぎて、自分自身の持つパテックワールドの概念に収まらない、今日的で意欲的かつ挑戦的なヤバイ一本と言えそうだ。
撮影から起稿を通して、穴の開くほど実機を見倒した。「意外と思ったより良いじゃないか」「でもなんか違うナ」「コレクションとしては悪くないぞ、資産価値もタップリ有って」「でも、着用はこっぱずかしくて、チョッと・・」これだけ延々と自問自答を繰り返した時計も過去珍しい。やっぱりヤバイ一本だ。

Ref.6007A-001 ニュースリリース(日本語)
ケース径:40mm ケース厚:9.07mm(サファイアクリスタル・ガラス~ケースバック) 
※カラトラバ十字と《New Manufacture 2019》と装飾されたサファイアクリスタル・バック
ラグ巾:22mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:SSのみ 
文字盤:真鍮製 ブルーグレー 中央にカーボン模様の浮出し装飾 夜光塗料塗布の18金植字アラビアインデックス
針:夜光塗料塗布の18金バトン形状の白ラッカー着色時分針 白塗装ブロンズ製秒針
ストラップ:ブルーグレー 織物模様がエンボス加工された装飾ステッチ入りカーフスキン


Caliber 324 S C.
センターローター自動巻 センター3針(時分秒) 3時位置
窓表示カレンダー
直径:27.0mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個 受け:6枚

パワーリザーブ:最小35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製) 髭持ち:可動式
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
価格:お問い合わせください。

文責、撮影:乾 画像修正:藤本

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