パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

2021新作 一覧

人生には"登り坂"もあれば"下り坂"もあるが、"まさか!"もあると言うのはよく知られた親父ギャグ。そしてあろう事か今現在、自分自身でその"まさか"をヨチヨチと這う様に登る日々を過ごしている。一方で浮世離れした時の流れに身を任せてもいるのでグズグズとブログ記事を書き連ねていたら、今年の新製品発表はマンスリー?『アクアノート、その復活とバリエーション』的な代物やら『超絶系ミニットリピーター&レアハンドクラフト』なんぞもダメ押し的にどんどん出て来て、いつもの様に"最新記事・・・"とドヤ顔での公開がはばかられる事態となってしまった。新型コロナ禍の影響は「いったい、何処まで、何すんねん!」とニューモデル発表までが全く予想不可能であって、もうコレは開き直って"なるようになれ、勝手にしやがれ、気分はLet it be!"と思うままに時系列を無視して書き連ねるしかあるまい。

我ら現存世代にとって初遭遇となったパンデミックイヤーの昨年2020年に於いても、パテックはレディスに限っては普通(変な表現だが)の新製品をリリースした。とは言ってもたったの3モデル。それもコスメティックチェンジ(ダイヤルや素材等の仕様変更)に過ぎず、とてもまともな新作発表とは言い難いが・・・そしてパンデミック2年目?の今年もレディスニューモデルのコスメティックチェンジ傾向は継続している。5月27日リリースされたニューアクアのクォーツ・トラベルタイムについては、その例外として改めて考察出来ればと思っている。しかしながら2018年秋にミラノでトゥエンティフォー・オートマチックRef.7300を華々しくデビューさせてから、パテックのレディス市場にかける意気込みにより一層のドライブがかかってきた様に思う。誤解を恐れずにあくまでも個人的な意見(偏見?)だが、女性はファッションやアクセサリー等の身の周りの装飾品(勿論、腕時計も)に関して男性に比べて、圧倒的にトレンドに敏感にして速攻で反応する。一方でブランドに対するロイヤリティや拘りも有りそうな顔して平気で浮気する。例えば新しい美容室を試す女性は意外に多いと聞いた事がある。男性は理容室(美容室派も含めて)をよほどのトラブルでも無い限り、まず変える事はない様に思う。何故か?の追求は面倒な事になりそうなので止めておくが、腕時計に当てはめるとトレンドよりも我が道の追求に重きを置くパテックはレディスに関して、自らハードルを高くしている感があるように思う。

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年次カレンダー4947/1Aは、既存の18金ストラップモデルをステンレス素材ブレスレット仕様へのコスメティックチェンジモデルと言うことになるが、デイリーユースな素材のステンレスブレス仕様に加えてダイヤが何処にも無いからか、予想外のご注文を発表直後から複数本頂戴した。コレが何と男性からなのである。考えてみればRef.7300/1200Aトゥエンティフォー・オートマチックのステンレスモデルも「ベゼルにダイヤが無ければ」と言う男性の引き合いは結構多かった。7300の36mmに対して年次カレンダー4947/1Aは38mm。先月発表されたニューアクアノート・ルーチェに至ってはリバイバルのサイズアップで何と3.2mmも大きい38.8mm径が採用された。そのニューアクアノート・ルーチェの実機を見る機会がまだ無いが、メンズのレギュラーサイズ40.5mmとその差はたった1.7mm。ちなみにそのレギュラーサイズには女性からのご注文も頂いている。
面白いのは男性のダイヤに対する視点で、簡潔に言えば(パテック限定かも知れぬが)バゲットサイズまで迫力が上がれば抵抗感が薄れる事である。現行ラインナップでベゼルダイヤ絡みのメンズモデル全8型その内6点がバゲットダイヤで、さらに今年ノーチラスSSが年度限定で追加され"そんなに来ますか?"レベルのご注文を頂いている。ちなみにラウンド形状のダイヤベゼルモデルはカラトラバRef.5297Gと年次カレンダーRef.5147Gの2モデルだが当店の販売実績はともかく結構なロングセラーなのでニッチな根強い人気モデルなのだろう。ちなみにR社ではメンズにも根強い人気のポイントダイヤインデックス的な仕様が現行品メンズパテックには無い。2000年以前には有った様な気もするが、今世紀は記憶に無い。しかし此れまたバゲットダイヤでのバーインデックスは僅かながら現行生産されている。思い出深いのは2016年のノーチラス発売40周年記念限定モデル2型(5976/1G,5711/1P)で採用されたWGの土台に埋め込まれたバゲットダイヤインデックス。間近で見れば見事なダイヤなのに遠目には普通のバーインデックスに見える抑制の効いたダンディズム仕様には、それまでのメンズダイヤの概念が撃ち下かれてしまった。ちなみにパテック社が使用するダイヤは全てデビアス社でピュア・トップウェッセルトンと格付けされた上質な物に限られている。

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この年次カレンダーSSブレスは既存モデルのバリエーションなので時計としての紹介は省くが、今春の生産中止でメンズ年次カレンダーの元祖系モデルRef.5146が、とうとう、ゴッソリ、一気に、パテックらしい潔ぎよさで、お蔵入りしたので1996年デビューの際に与えられた年次カレンダーオリジナルの顔が婦人用年次カレンダー4947の専用となった。いや、前述のダイヤベゼル仕様5147Gも辛うじてサバイブしているが、そのケース径39mmは4947に僅か+1mmでしかなく、メンズ専用と言うよりも大振りレディスとの兼用モデルと見るべきなのかもしれない。その段でゆくと自動巻カラトラバクンロクの唯一のサバイバーRef.5297Gもダイヤベゼル+ブラックダイヤルが5147Gと共通仕様、そしてケース径38mmは今回紹介のレディス4947と全く同じ・・・

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なんかもう、ケース径に関しては35mm〜39mm辺りのジェンダー属性がカオス状態になって来ている気がする。昨今の世界的なLGBTへの意識の高まりが高級時計の世界へも影響を与えたのか。その辺りのサイズレスパンデミック状況については38.8mm径のアクアノート・ルーチェ等を紹介予定の次回の投稿記事で掘り下げてゆきたい。

Ref.4947/1A-001
ケース径:38mm ケース厚:11mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:SS
文字盤:縦横サテン仕上げ(山東絹仕上げ)ブルー、ゴールド植字インデックス
裏蓋:サファイヤクリスタル・バック
ストラップ:ステンレススチール仕様
バックル:折り畳み式バックル
価格:お問い合わせください

Caliber 324 S QA LU
直径:30mm 厚み:5.32mm 部品点数:328個 石数:34個
パワーリザーブ:最小35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ゴールド中央ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

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もう一点のレディスニューモデルもアップサイジングされた超美形カラトラバ4997/200G-001。オリジナルモデル4896G-001は15年遡る2006年初出で、バーゼルのサンプル初見時にあまりの美しさにノックアウトされた記憶が今なお鮮明だ。当時は文字盤製造法の基礎知識なんぞもほとんど無く、ともかくその美し過ぎるギョーシェ装飾と長くて繊細だが厚みの有る銀色のインデックスの印象が凄かった。ただ問題はそのサイズ感で、当時はその33mm径が女性にはあまりに大きく思われ、ボーイズ的に小柄な日本人男性に薦められそうだと本気で考えていた。同モデルは2009年に見た目ほぼ変わらずの4897G-001へと引き継がれ、2020年までの長きに渡り生産された。RGの素材追加や様々なダイヤルカラーのバリエーションも加えられた。ストラップは一貫してラグジュアリー感溢れる文字盤同色のサテン調テキスタイル素材(表面)が採用された。ブラウン、シルバー・・どの色目も魅力的で使い勝手の多様性も増したが、デビューから君臨するギヨシェ・ナイトブルーダイヤルモデルの秀逸さが抜き出ていて、2016年には同色のバゲットダイヤバージョン4897/300Gも追加された。そして今春2年間のブランクを経て2mmのサイズアップと手巻から自動巻にエンジンを積み替えて4997/200Gとしてリバイバルデビューした。

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特筆すべきはサテン(シルク)の風合いを持つ合成繊維でシンセティックと呼ばれる表面素材で高級感を演出していたストラップが、高級な表面感はそのままに丈夫なカーフ(牛革)素材に置き替えられた事。相方が違うモデルでシンセティック素材ストラップを永らく愛用しているが、まあ"贅沢この上ない"。極端に言えば一回でも着用すれば"使用感"が出るし、デイリーに愛用すればほんの数ヶ月で"使えるけれども、見せられない"のでしょっちゅう交換となる。まあこの素材に限らず高級感の劣化と言う代物は、徐々にでは無く一気にみすぼらしくなり易い。ロールスロイスには擦り傷はおろか僅かな泥汚れすら受け入れ難いのと同じである。ところが最近はスタンダードな素材であるカーフのイミテーション化なるトレンド?が有って、昨年のカラトラバSS1,000本限定Ref.6007Aではザックリとした平織のコットンキャンバスにしか見えないエンボス(型押し)加工が施されたカーフ・ストラップが採用された。今回も平織テキスタイルは同じだがシルクサテンレベルの微細なテクスチャーと高級な光沢感(一体何をどうやったらこうなるの?)を見事に実現したカーフ・ストラップが採用されている。さてさて耐久性がどの程度なのか興味津々だ。
何度も書いているが、男女問わず美形過ぎるのは"人も時計も"実は考えもので、どちらも寄り添う際に"気合いと緊張"を求められ過ぎて、疲れ果ててしまうなんて事になりかねない。その点ではパテックの時計に超の付く美男と美女はほとんど無く、一生連れそうにピッタリな"女房と亭主"タイプが非常に多い。"パテックマジック"と勝手に呼んでいるが「初めはピンと来なかった」「どこが良いのかわからない」から気がつけばドップリと信者になっていたと言うパターンが結構多い。2年間のブランクなのかバケーションを経てカムバックした4997/200Gは、そのパテックマジックには当てはまら無い稀有な美人時計である。良くも悪くも愛用者が限られてしまうし、インパクト大な個性的なカラーリングはスタイリングの許容度も狭めだ。さらに言えばシチュエーション迄もが、夜間の室内こそ輝ける"最強の夜の蝶(昭和の死語)"とは全く勝手な個人的思い込み。けれども足掛け15年以上に渡り、恐らくこの先もずっと"チラ見"せずにはいられ無いパテック銀幕の超スターウォッチであり続けて欲しいのだ。

Ref.4997/200G-001
ケース径:35mm ケース厚:7.4mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:WG
文字盤:ギヨシェ装飾のラック塗装ミッドナイトブルー、パウダー仕上げのゴールド・インデックス
裏蓋:サファイヤクリスタル・バック
ストラップ:サテンの風合いを持つ、ブリリアント・ネイビーブルーの起毛仕上げカーフスキン・バンド
バックル:ピンバックル
価格:お問い合わせください

Caliber 240
直径:27.5mm 厚み:2.53mm 部品点数:161個 石数:27個
パワーリザーブ:最小48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動
ローター:21金ゴールド中央ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責:乾 画像:パテック フィリップ

"IN LINE"を辞書で引けば、一列とか一線となっている。さらに横一列等とは有っても"縦"的な表現は見当らない。2021新製品紹介第三弾は、パテックの腕時計としては初登場(他ブランドでも記憶に無いが・・)となるインライン永久カレンダーRef.5236P。見た目は渋くてコンサバ、地味と言う見方もあろう。しかし中身は非常に前衛的で革新的だ。

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新規で画期的な複雑機能を搭載するニューモデルは、昨今は過剰なまでにデコラティブな装飾表現でアピールするブランドが多い。3次元や複数のキャリッジを"これでもか!"と見せつけるトゥールビヨン等はその代表選手だ。保守派の代表格パテックと言えども、この手のトレンドに全く無縁では無く、"コソッと、シラッと"発表しているモデルもある。例えば2019年シンガポールでパテックが開催した"ウォッチアート・グランド・エグジビション"で現地VIP顧客向け限定モデルRef.5303R-010は、パテックらしからぬ"オープンアーキテクチャー(両面スケルトン仕様)にしてトゥールビヨン機構(裏面)とミニット・リピーターのハイライト部(ハンマー&ゴング)をこれでもか!と見せつけている。パテックにとって初めてでありながら一般的にはウルトラDとかE級の超大技を特別に協調してPRしなかった。尚、同モデルは購入不可能なシンガポール以外の顧客からの要望が強かったからか、昨年2021年夏にレギュラーモデル(と言っても購入ハードルは高いが)Ref.5303R-001が、コロナ禍もあってか粛々と発表された

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此処で話はさらに脱線して行くが、2019年のシンガポール限定モデルのリファレンス枝番が"010"で2020年の後追い定番のそれが"001"って・・・。後追い定番化が既定路線だったか否かは不明ながら、"001"が先行して開発され完成していた可能性を感じる。

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デジャヴ?この既視感?そうそうまだ有ったゾ!2017年秋にニューヨークで開催されたウォッチアート・グランド・エグジビションでは初出のグランド・コンプリケーション、ミニット・リピーター・ワールドタイムRef.5531Rが、マンハッタンの昼(010)夜(011)の顔をクロワゾネ(有線七宝)で文字盤装飾され現地向け限定モデル(たったの各5本)で発表された。そして翌年2018年春にバーゼルワールドでクロワゾネ・ダイヤル装飾部をレマン湖岸の風景に置き直した新製品Ref.5531R-001(文字盤表示改訂で現行012)が後追いリリースされた。それ以前の2014年のロンドンでは、その手の"最初はグー(001)では無くチョキ(010)"的なモデルなど無かった。毎回のように寄り道を書き連ね、アーカイブを遡り再確認し今頃やっと気付いた直近過去二回連続の超絶新機軸モデルの現地向け限定モデルの先出しリリース。こういう流れでいけば"THE WATCH ART GRAND EXHIBITION TOKYO 2022"の日本向け限定モデルに未知なる超複雑時計が、定番化(001)に先駆けてサプライズ提案(010・・)される可能性は大なのである。2022年東京のウォッチアート・グランド・エグジビションへの期待は高まるばかりなのである。

で、一体何の題材だったっけ?いや、何が書きたかったと言うと画期的なインラインでのカレンダー表示方式はオープンアーキテクチャーにしてインライン部分を横長長方形の窓枠で囲むと言う手もあったハズで、その手の表示方式なら嫌でも左右にメガネ状に分離された十位と一位の日付表示回転円盤のダイナミックな仕組みとパフォーマンスを愉しませる選択も有ったのになァ。

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もう一つの興味は、さてインライン形式の年次カレンダーを開発するのかどうか?コレはかなり否定的に見ている。そもそもパテックの年次カレンダーは、永久カレンダーモジュールの簡素化では無く、全く新規開発され1996年にデビューしている。そのデビュー時の顔は新機軸ムーブメントに呼応させて、それ以前のパテックアーカイブには全く見られない特徴的なV字型三つ目インダイヤルで新世代的パテックとしてデビューさせている。そして10年後の2006年に年次カレンダー第二世代の顔として採用されたのが、機械式時計全盛期の1900年台半ばに永久カレンダーと永久カレンダー・クロノグラフの殆どに用いられたダブルギッシェスタイルだ。文字盤中央の少し上に左右二つの窓を設け、左に曜日、右に月として日付は6時側にインダイヤル針表示と言うものである。かつてのブランドを代表するカレンダーフェイスを二の矢として投入された事は、当時パテックが如何に年次カレンダーに製品的にフォーカスしたかの証だと思う。背景には1980年代半ば以降のフィリップ・スターン現名誉会長が主導したパテックブランドの機械式複雑機能時計の復活活動の中で、恐らく偶然の結果として永久カレンダーにはダブルギッシェが採用されなかった。その事が年次カレンダー第二世代が由緒ある伝統のフェイスを纏えた理由ではなかろうか。それゆえ2017年新作としてダブルギッシェ・フェイスの永久カレンダーRef.5320発表には実は少なからずショックを受けた。このモデルは個人的にはコスパの良さを感じたし、実際販売面でも良いスタートを切ったモデルだった。以降、パテックは同じ顔を持つ年次と永久の両カレンダーモデルを併売してきた。

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実は此処んところがチョッピリ奥歯に何とか状態で引っ掛かり続けていた。現行の永久カレンダーのラインナップ(永久機能単一モデル)は極薄型自動巻Cal.240の長所を生かした針表示タイプ(Ref.532757407140)とフルローター自動巻Cal.324ベースではレトログラード日付表示タイプのRef.5160/500と前述のダブルギッシェRef.5320とあって、近年かなり整理されていた感があったところに、今回の見た目地味ながらも渋さ抜群のインライン永久カレンダー5236は投入された。大昔に大ヒットした国産スポーツ車の広告コピーに『羊の革を被った狼』と言うのが有ったが、外観は決して純正のスポーツカーでは無く、大半が4枚ドアのスポーティーな中型セダンに最新の脚と最強の心臓(エンジン)を搭載していた。但し、彼女の乗車拒否を防ぐ為?なのか、"赤頭巾ちゃん"の様な前述の"ドキッ!"とさせられたキャッチコピーとは裏腹にTVCMはいかつさとは無縁なほんわかロマンティック仕立てであったと記憶している。此処で「そう、そう、懐かしい・・」と頷いて頂けるご同輩年代層には、とあるパテック首脳陣いわく「一般的に視力の加齢からコンプリケーションはご卒業頂き、シンプルウォッチがベター・・」をアドバイスとしたい。勿論、発言者ご自身が同年代であるのは言うまでも無い。しかしながら今回のインライン形式のカレンダー表示なら我々世代でも、抜群の視認性で充分使えそうだ。話が二重に脱線してしまったが、個人的解釈としては今後パテックのダイヤルセンター窓表示系カレンダーモデルは、5320を除いて永久カレンダーはインライン、年次カレンダーは伝統のダブルギッシェと棲み分けるのでは無いだろうか。もしそうなれば5320の希少性がクローズアップされる可能性もある。

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さてプレスリリースによればこの新製品は、レギュレーター・レイアウトダイヤルの年次カレンダーRef.5235/50Rから幾つかの面でインスパイアされている。まず第一に全体的にエッジの効いた骨太かつシャープな男っぽいカラトラバシェイプのケース形状だ。これについては好き嫌い・・有るかもしれない。ダイヤルは此処ずっとパテックにお馴染みのブルーでセンターから外周に向けてブラックにグラデーションする人気の仕様ながら、凝っているのが5325/50同様に縦方向のサテン(筋目)仕上げを施してから塗装されている点で、記憶の限りではこの組合せ技は覚えが無い。シリコン転写プリントされた6時側スモールセコンド及びダイアル外周のレール状のミニットスケール(シュマン・ド・フェール)等も共通仕様。さらに大きな共通の遺伝子がムーブメント。元々5235/50Rのエンジンは個性的な専用設計で、極薄自動巻基幹ムーブメントCal.240以外で唯一マイクロローターを採用し、ムーブ心臓部のアンクルとガンギ車にはデビュー当時には試験的最先端素材であったシリコン素材を使用。さらに振動数が毎時23,040回(6.4振動、3.2Hz)という不可思議極まり無い挙動のテンプを与えられている。今回5236(やっとレファレンス番号に合点が・・)への搭載にあたっては、ベースムーブメントにも種々改造がなされ振動数は標準的なエイトビート(28,800振動)となっている。

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両者を並べて見比べるとブリッジ(受け)の数や形状が結構異なっている事が判る。最も注目すべきはマイクロローターの色目が永久カレンダーの5326Pは銀色で従来の22金ローターがアクセントカラーだったのが地板や受け同色で、これまた地味仕立て。22金より高比重のプラチナをローターに採用し、主ゼンマイの巻上げ効率を上げて複雑多様な新規カレンダー機構の駆動トルク向上を計ったのである。このプラチナ製と言うのもマイクロやフルのローター形状を問わず現行品ではパテック初(2017年ONLY WATCH 5208Tに搭載実績有)となる。ただ欲張りかも知れないが、新規改良ムーブメントのパワーリザーブが最大48時間とパテックの標準機より延ばせなかったのは、若干振動数を上げたにしても残念だ。さらに無茶な要求を言えば、カレンダーが漸次日送り式では無く小股の切れ上がった瞬時式になっていればインラインと言う表示の魅力は倍増していたであろう。そんな個人的な我が儘はともかく2019年に出願した3件のカレンダー関連の特許に加えて、同年から実機(Ref.5212ウィークリー・カレンダー等)搭載され始めた自動巻ムーブに於ける手動巻上げ時の負担を軽減する減速歯車も盛り込まれたCal.31-260 PS QLは凄く複雑なムーブである事は間違い無い。何しろ総部品点数503個というのはハンパでは無い。自動巻ベースキャリバー部分205個、インライン永久カレンダーモジュール部分が298個がその内訳だ。改良のベースエンジンとされたレギュレーター年次カレンダー5325のCal.31-260 REG QAの総点数が313個なのでザックリ年次カレンダー・モジュール部分は約100個で三分の一に過ぎない。先輩格であるマイクロローターの名キャリバー240に指針形式の永久モジュールを載せたパテックのド定番永久カレンダーRef.5327の部品総数はたった(それでも凄いが・・)275個。ダブルギッシェ永久カレンダー5320が367個。レトログラード日付表示の永久カレンダーRef.5160で361個・・・こう見てゆくと同一平面上にインラインで月と曜日に加えて日付を表示するのがどれだけ面倒くさい事かが良く解る。

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実は画像でインライン部を最初に見た時、少し残念な印象があった。それは日付の十の位と一の位の表示回転ディスクが左右に遠く離れた回転軸を持つ為に両者の間にわずかな逆エンタシス形状の隙間が妙に目立って気になってしまったのだ。画像で見る限り左側の曜日と日付及び右側の日付と月それぞれの隙間は構造上狭くて目立ち難い。さらにカレンダーと同色の白色系の隙間目隠しまで仕込まれて入る様に見える。ところが形状的により目立つ日付2桁を分ける隙間にはその手の目隠しは無さそうで、暗っぽく落ち込む為に妙に気になる印象だった。普通ならこの部分こそカモフラージュ優先度合いNo.1!のはずだし、技術的にも多分容易だろうに敢えて何もされていない。最初は不思議でしょうが無かったが、これはひょっとすると、押し付けがましく無くこの部分に無意識に視線を呼び寄せるパテックの高度な企みでは無いかと疑い始めた。そう考えると記事冒頭で触れたカレンダー各表示部に窓状の枠組み等を一切与えず、文字盤を直接土手状に面取り仕上するというシンプル極まり無い意匠を採用したのも意図的なものではないかと勝手に納得出来た。いわゆる"ビッグデイト(日付)"と呼ばれる時計が多くのブランドで造られているが、その殆どで十と一の位の表示部それぞれを囲う窓枠が設けられ仕切られている。その理由は両者の隙間を隠したい意図も有るが、両者を同一平面状にレイアウト出来るのが文字盤内で非常に限定的な位置しか無く、段差を付け部分的に重ねざるを得ない多くの場合では伊達メガネ的な窓枠が必然となる為だ。コレ、やっぱりパテックお得意のギミックなんだと思う。ただ後方二回転半ひねり・・レベルのウルトラQ技で、素人受けとは別次元で見た目とは裏腹にチョットやソッとでは模倣困難な孤高の技術的王者である事を再認識させてくれる恐るべきニューモデルのデビューだったようだ。

毎度の事ながら道草、寄り道激しく、遭難寸前の迷走となってしまった。今回は特に外ヅラからのネタが正直無さ過ぎて、来年夏(予定)に迫るTHE WATCH ART GRAND EXHIBITION TOKYO 2022と超絶系コンプリケーションの考察などして廻り道しているうちに"一見、変哲も無いモデルが実は・・"といういつもながらのパテックマジックの底無し沼に囚われてしまった。本稿はインラインカレンダー部以外を殆ど紹介していないが、そういう時計なのである。地味なインラインを主役にするという矛盾?から針もインデックス、ケース等のその他全てが主張しない脇役に徹しているので、敢えて何も書かなかった。只々、起稿前にはさほど無かった今の想いは「実機を手に取って、インラインに穴が開くまで見てみたい!」それだけで有る。

Ref.5236P-001
ケース径:41.3mm ケース厚:11.07mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:PT
文字盤:ブラック・グラデーションのブルー、縦サテン仕上げ、ゴールド植字インデックス
裏蓋:サファイヤクリスタル・バックと通常のソリッド・ケースバックが共に付属
ストラップ:ブリリアント(艶有)・ネイビーブルーハンドステッチ・アリゲーター
バックル:PTフォールディング(Fold-over-clasp)
価格:お問い合わせください

Caliber 31-260 PS QL
直径:34mm 厚み:5.8mm 部品点数:503個 石数:55個
パワーリザーブ:最小38時間~最大48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:PT製偏心マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責:乾 画像:パテック フィリップ

パテックはウォッチーズ&ワンダーズ終了前日の4月12日にカラトラバとコンプリケーション系でメンズとレディースの各1モデル計4型を発表した。先行発表されたノーチラス4モデルが生産量の大小はあれども、需要が供給を圧倒的に上回るのは誰の目にも明らかだろう。パテック社からは何ら発表は無いが、新型コロナ禍が時計市場に及ぼしている影響度合いは、世界各地で相当まだら模様の様で有る。想像するにスイスを含めてヨーロッパはかなり悪いのではないかと思われる。北米と中南米もかなり厳しいのでは無いだろうか。恐らく中国本土、日本、台湾、シンガポール等のアジア諸国とオーストラリアやニュージーランドなどのオセアニアは大半の販売拠点が何とか営業出来ているのではないか。正式なコメントは無いが、例年では考えられない客注商品の特別入荷が昨年秋頃から今なお続いている。今年初めにはいつまでもこんな(嬉しい)異常な状況が続く事は無いと覚悟していた。しかし変異によって繰り返し寄せ来る大波の様な新型コロナ禍は一向に改善される気配が無く、我が国も過去最悪の状況に追い込まれそうな第4波に襲われている。それでも何とか経済活動が制限されていないので、イレギュラーな入荷基調は今現在も続いている。そして有難い事にパテックに関しては、ご客注のキャンセルが殆ど無いので経営的には非常に貢献して貰っている。
しかしながら、パテックの様に新型コロナの影響を感じさせないブランドは少数派であり、ロレックスのスポーツモデル全般とオーデマ・ピゲのロイヤルオーク等がその筆頭である。特に1970年代に天才時計デザイナーのチャールズ・ジェラルド・ジェンタが考案した、ロイヤルオーク及びノーチラスとアクアノートを代表格とする全く新しい時計コンセプト、いわゆるラグジュアリースポーツカテゴリーに異様に人気が偏っている。1990年頃から始まった機械式時計の復活劇の中で、2000年頃以降はクロノグラフウォッチが人気牽引の先頭を走ってきた印象が強いが、2008年のリーマンショックを機に徐々に再販価格の価値が高級機械式腕時計の選択基準での最優先項目へと移行してきた様に思う。此処数年、"何で?"と聞きたい程にあらゆるブランドから類似するラグジュアリースポーツタイプの時計が雨後のタケノコの勢いで発表されているのは、これ如何に!
そんな状況下で特別感を持たせた2モデルを含むノーチラス4本のみ発表したパテックに、安心感と同時に"トキメキとワクワク感"皆無のフラストレーションにも揺れた5日後。4月12日に実にこれぞパテック フィリップという新製品が追加発表された。"Simple is the best"1932年に発表されパテックのみならず現代メンズウォッチデザイン原器とも評されるRef.96。只々時刻を知らせる表示機能に徹しきった"引き算の極地"カラトラバのメンズ1型2素材とレディース1型。そしてこれらとは対極に有りながらもパテックならではのお家芸としか言えない"足し算の極地"複雑時計もメンズとレディース各1モデル。

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Ref.6119は、縮少し続けていたカラトラバ・メンズコレクションへの待望のニューフェイス。品番的には2006年にマイナーチェンジデビューし2019年迄ベストセラーで有り続けたRef.5119のアップサイジングモデルと分かり易い。カラトラバを代表するモデルのひとつと言っても差し支え無い決め手の意匠は、古くは1934年のRef.96Dや、1985年のRef.3919などにも見られる特徴的なベゼルデザイン。

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"Clous de Paris"(クルドパリ 仏語 意:パリの爪または鋲釘)英語表現では"hobnail pattern(ホブネイルパターン)"で靴底用の鋲釘文様の意味なのでピラミッド状突起の連続パターンが二重円周状に装飾されている。奇をてらう事無くシンプルで派手過ぎない意匠ながら一目で、パテックお手製のタイムピースである事を証明してくれる。コピーやデフォルメを他ブランドに想起する事を考慮させ無いない程に、ブランドとして唯一無二のデザインとして確立しているのだ。歴代モデルとの外観の違いは、まずサイズで39mmは前作5119にプラス3mm、前々作3919からは5.5mmもデカい。1985年から36年でケース径で約16%だが、面積比では36%弱も巨大化している。この期間に人類の栄養事情が大きく改善し体格が、同様に向上したとも思えない。但しブランドを問わず価格だけは、間違いなく貨幣価値の変動を考慮しても大きく上回って高価格化している。ラグ形状はロー付けされた華奢なオフィサータイプからケース一体の鍛造削り上げ仕上げでシャープな形状(勿論カラトラバ普遍デザインの一つ)に変更された。

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またインデックスもシリコン転写プリントのローマンインデックスから現行手巻きカラトラバのRef.5196と同様の18金素材の四面ファセットの弾丸(オビュー)型形状のアップリケ(植字)仕様となり、針形状も呼応する様に3面のファセットから生まれるエッジの効いた尾根を持つドフィーヌ(語源はイルカDolphinでは無く、パリのシテ島内の地名)針が採用されている。文字盤の一番外側にはレール(仏:シュマン・ド・フェール)形状の分スケールがプリントされている。スモールセコンドもシンプルながらも存在感の強い新意匠でプリントされているが、何より後述する新型ムーブメントがケースのアップサイジングに追随するかの様に大型化された事での秒針(=四番車)の位置取りが良くなった要素が素晴らしい。そして目立ち難いが二重円周の"Clous de Paris"クルドパリの内側にフラットでスリムな円周縁がボックスタイプのサファイヤクリスタル・ガラスを取り巻く様に設けられている点も見逃せない。

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アリゲーターストラップとピンバックルは前モデル5119と同じ仕様だ。尚、この現行カラトラバに装着されているピンバックルが、アメリカ市場を開拓した故アンリ・スターン前々社長の同市場向け発案の賜物であった事を初めて知った。
軽く紹介のつもりが、初見の印象以上にアレもコレもと従来機に無い意匠が次々と攻め立てて来るので長文ダラダラになってしまった。サイズがデカい兄貴モデルの出現かと思ったら、クラシックなデザインの組合せではあっても実は似て非なるこれ迄に無かった時計に仕上げられていた訳だ。で、結局の処こやつのハンサム度合いを個人的にどう見るかだが、2006年に本気で購入する気だったRef.3919Gを買いそびれ生産中止に指を咥えていた身なのでオフィサーケース+プリントブラックローマンインデックスに大いに後ろ髪を惹かれっ放しだし、実機を手に取って見れていないので正直判らないが本音だ。でも画像を見れば見るほど既視感も覚える訳で、特にサイドビューは現行5196にそっくりだ。

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インデックスと時分針もほぼウリだ。しかしクルドパリ・ベゼルもしっかり主張してくる。乱暴に言えば廃番5119と現行5196を足してニで割ってサイズアップしたモデルと言えなくも無い。これは肯定的に受止めるべきで両モデルが並存していた2019年迄は、手巻きカラトラバの選択で誰もが多いに両者で悩み抜いたものだった。6119は両者の良いとこ取りでより今日的にアップデートされたクラシックなエレガンスウォッチだと思う。対して5196はカラトラバの原点Ref.96に何処までも忠実なマイルストーン的なオリジナル時計と呼びたい。今後はこの両者で悩まされる事は無さそうだ。

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尚、WG素材の6119Gの文字盤仕様はチャコールグレーの縦サテン仕上げにスモールセコンド部はブラックの微細な同心円ギョーシェ装飾の組合せで、2019年にいわゆるコスメティックチェンジでWGからRGに素材変更され発表されたレギュレーター・スタイルの年次カレンダーRef.5235/50Rの文字盤と酷似している。これは好き嫌いがはっきり出る様に思われる。

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サイズや外観の好き嫌いは別にして、手巻きのエンジンは全くの新設計だ。最近のパテックでは音鳴り系の超絶複雑時計用ムーブやクロノグラフムーブの新設計は有ったが、いわゆる汎用機に広く使い回しされるベーシックムーブメントの完全な新規開発は絶えて久しかった様に思う。2019年にウィークリーカレンダー用に開発された自動巻ムーブメントCal.26-330系も従来の主要機Cal.324系をベースに大改造が加えられたもので完全な新キャリバーとは言い難い。3919や5119に搭載されていた手巻Cal.215系も源流を遡れば1939年頃に登場したCal.10系をその遺伝子に持ち、1970年代後半に時代の要請から薄型化が計られ生み出された名機である。
ひょっとすると完全なベーシックムーブメントと言うのは、1970年代初期に短期間で開発されたマイクロローター搭載の超薄型自動巻キャリバーCal.240まで約50年程も遡るのではないか。何もパテックが開発をサボった訳ではなく、現代腕時計製作に必要な手巻きも自動巻も基幹ムーブメントをブランドとして早々と完成していたので、主ゼンマイ等の主要部品の素材見直しや部分的な設計修正で充分今日まで実用的対応が容易だったのだ。しかしながら此処10年くらいは多くの他ブランドのパワーリザーブの延長化トレンドに対して、パテックのシンプルなベーシックキャリバー群にあまりにもハンディを感じずにはいられなかった。この点は拙ブログでも個人的に何度も改善希望を訴えてきた。
但し、決してパテック社がロングパワーリザーブを敬遠していたのでは無く、ミレニアムイヤーの2000年にCal.28-20/220と言う当時最長レベルの10日間の超ロングパワーリザーブを持つ手巻きキャリバーを開発し、10-Days・Ref.5100として製品発表している。

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さらに2006年にはこのCal.28-20/220をベースに2日間のパワーリザーブをカレンダーの瞬時変更に転用し、傑作レクタングラー8-Days・Ref.5200をリリースしている。
もう一点の気掛かりが有って、現在の機械式時計でほぼ標準装備であるハック(時刻合わせ時の秒針停止)機能も"日差数秒レベルの機械式には不要"との思想がパテックには有り、未搭載での時計作りを継続して来た。だが今や業界標準に比べてあまりにも孤高に過ぎるし、自社基準精度の−3〜+2秒と言う業界最高レベルの歩度基準にこそハック機能搭載の価値があると思い続けてきた。
この二つの引っ掛かりの内、後者のハック機能は2019年新製品で大きな話題を呼んだウィークリーカレンダーRef.5212にフルローター旗艦Cal.324を徹底的に改良したCal.26-330系に搭載された。既に部分的には進行形であるが、今後は324搭載モデルにはランニングチェンジでこの新エンジンが積まれるのであろう。
今回紹介の6119に積まれる新キャリバーには、この二つの憂いが見事に解消されていてハックはテンプ(振り子)に直接ストッパーで停止・発進する非常に実用的なスタイルが採用され、ロングパワーリザーブは香箱を2個上下に重ねてひたすら駆動の長時間化を計るのでは無く、同一面上に横並びにして安定して高トルクを与えながら現代のライフスタイルに適用し週末乗り切り可能な65時間の絶妙なパワーリザーブの延長を実現した。必然的にムーブ径(ケーシング径)は30.4mmと大き目だが厚さは2.55mmと薄い。両者のサイズからムーブメント名称はCal.30-255 PSとされた。尚、3919や5119等を始めレディースモデルにも広範囲に積まれている従来の主力手巻きエンジンCal.215系もその名称はそのケーシング径21.5mmに由来する。ツインバレル化で新エンジンは直径で約9mmもサイズアップしたが、驚くべきはその厚み2.55mmが従来機と同一に抑えられている事だ。結果としてケース厚(上下サファイヤガラス部分)は8.08mmと5119の7.43mmに対して僅か0.65mmしか増していない。1900年代半ばから各ブランドのメンズの主要機械式ムーブメントの主要サイズの多くが30mmであった事からすれば、この新しいエンジンはメンズ専用と見れば大き過ぎるという事は無く、逆に今日的にはケース径30mm半ばの大振りレディースの出現も珍しく無い事からすれば、新エンジン搭載レディースの登場もあながち否定は出来ない。
しかし、この時計はRGとWGで別物に見えるくらい文字盤周りの化粧仕様が異なる。RGは何処までもコンサバでクラシック。対してWGはアバンギャルドでスポーティ、いわゆる"チョイ悪"風と言えば良いのか。個人的な空想レベルでは、来年に東京で開催予定のパテックが世界の主要都市をラウンドする"ウォッチアート・グランドエグジビジョン・東京"の日本限定モデルでステンレス素材にブルーからブラックにグラデーションするダイヤル"サムライブルー"なんぞが出たりせんかいなァ。

Ref.6119G-001
ケース径:39mm ケース厚:8.1mm 防水:3気圧
文字盤:縦サテン仕上げチャコールグレー ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有)ブラックの手縫い風アリゲーター
価格:お問い合わせください

Ref.6119R-001
ケース径:39mm ケース厚:8.1mm 防水:3気圧
文字盤:グレイン仕上げシルバー ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有)チョコレートブラウンの手縫い風アリゲーター
価格:お問い合わせください

Caliber 30-255 PS
直径:31mm 厚み:2.55mm 部品点数:164個 石数:27個
パワーリザーブ:最小65時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

文責:乾 画像:パテック フィリップ

毎春、時計に関わる全ての人々が心を弾ませる各ブランドの新製品発表。昨年は新型コロナのために未発表としたパテック フィリップ、とりあえずオンラインで発表したブランドなどバラバラな対応であった。ともかくリアルな実機を手に取れる展示会は全て蒸発してしまった。
その当時、翌年2021年の今春もリアル開催が不可能となると誰が想像していただろう。一向に衰えを見せない人類の脅威は、今年も我々の楽しみを早々と奪ってしまった。
ウォッチーズ&ワンダーズと言うジュネーブでのSIHHの発展系の展示会に、パテック フィリップやロレックス等のバーゼルワールドの中核ブランドが新規参加して開催される予定だったが、昨年秋頃にリアル開催不可能の決定がなされ、各ブランドともオンラインでの新製品発表を模索進化させる事となった。我が国の感染状況も予断を許さないが世界の現況からして、来年度も現地開催ができるのかどうか、誰にもわからないまさに非常事態な状況である。
パテックに関して言えば、昨年度はまさに手探りで夏ごろから小出しに何度か分けて新製品発表をした。ただ現実性のあったレディースモデルの新製品に対して、メンズは数千万円以上の非常に特殊な雲上モデルのみの発表であり、多くのパテックファンにとって事実上、新製品発表の無い欲求不満の溜まる一年であった。

今年はウォッチーズ&ワンダーズ初日の4月7日に同ブランドの最も人気のあるシリーズのノーチラスの4モデルを新製品として発表した。さらに4月12日にはカラトラバやコンプリケーションで5モデルを追加発表した。すべてオンラインであり実機を見られない状況でのインプレッションを今回は考察してみたい。尚、スペック等の商品詳細はリンクを貼った当店HPを参照願いたい。

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まず最初にノーチラス4モデルのうち超絶人気のステンレスモデル5711のシンプルな3針モデル5711/1A-014とステンレスながらバゲットダイヤをベゼルに敷き詰めると言うパテックでは"快挙?、壮挙?、暴挙?"と言うしかない特殊モデル5711/1300A-001の2型。採用されているオリーブグリーンの文字盤は、今年の時計業界の大トレンドだがおよそ一般的な色目とは言い難い。記憶の限りでパテックのグリーンダイヤルは、かなり前のレディース・アクアノート・ルーチェと一昨年ダイヤルカラーバリエーションが追加されたアクアノート《ジャンボ》WGカーキグリーンの2モデル。現行ラインナップでもある後者は、"抹茶"と言う表現がピッタリな艶感とは全く無縁なマットな文字盤とコンポジット(ラバー)ストラップの構成で初見時に、あまりの個性の強さに購買希望者が絞られる印象を受けたが、新作人気が落ち着いた2年後の今現在もコンスタントにご注文が有り、同モデル初出でより一般受けするブラック・グラデーションのブルー文字盤と受注数はほぼ変わらない。個人的予測が見事に裏切られている。
新作オリーブグリーンの色目はモニターで見る限り、濃淡のレベルと艶の有無が判然としない。ただアクアノート《ジャンボ》のカーキグリーンの様なアクの強さでは無くオールマイティに着用者を選ばない安心感を感じる。いつでもパテックは紙でもWEBでも現物が必ずあらゆる媒体表現を凌駕するので、モニターでさえ充分な魅力を発揮しているオリーブの現物は相当な美味しさを期待出来そうだ。

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ベゼル仕様違いの5711/1300A-001も時計としては素材も含め全く同じスペックながら異色度合いは過去記憶に無いレベルだ。SS素材にダイヤセットは永らく時計業界では御法度であった。その理由は素材特性的にジェムセッティングが困難とされてきた。しかし本音は素材的に低価格であるステンレスのジェムセットモデルの実現化が18金WGやプラチナ素材の同様モデルを駆逐するのではという恐れからであった。その禁を破って最初にパンドラの箱を開けたのは、確かショーメだった様に思うが、物凄くうろ覚えに過ぎない。その直後からメジャーなカルティエをはじめ様々なレディースウォッチではSSケースにダイヤセットが、瞬く間に当たり前の仕様となった。パテックもこの潮流で1999年にSSのレクタングラーケースの両サイドにダイヤを配したTwenty~4®︎を発表。昨年文字盤等のマイナーチェンジを受けたが今なお現行バリバリのロング&ベストセラーモデルに育っている。
だがメンズウォッチにおいて、インデックスはともかくベゼルにダイヤがセットされるステンレスモデルは作例は有るものの今日でもメジャーとは言えない。もちろんパテックとしてもブランド初の事であり、しかも存在感あり過ぎな大粒バゲットダイヤモンドをセットしてきたのは異例中の異例である。還暦も過ぎた個人的にはこの組み合わせに違和感がないわけではない。しかし時計業界の最高峰ブランドであるパテック フィリップにとっては成立してしまう組み合わせなのだろう。早々とお問い合わせが殺到している。仮に著名であってもミドルレンジブランドが近似モデルを発表しても全く市場の反応は見込めないであろう。
ちなみにこれらオリーブグリーン・ダイヤルの2モデルについては今年度のみの生産と発表されており、通常の新製品発表と言うより特殊な限定モデル的意味合いを持つように思う。発表直後から様々なお問い合わせやご注文が殺到しているが、入荷量が全く不明なのでどこまでご対応できるかは、例によって例のごとくご勘弁頂きたい。

5990/1R-001ノーチラス・トラベルタイム・フライバック・クロノグラフは、ステンレスバージョンで既に現行の人気モデルとしてラインナップされているが、今回素材追加としてローズゴールドバージョンが追加発表された。

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文字盤はブルー・ソレイユと呼ばれる青文字盤が採用されている。これまた個人的には赤味のあるローズの色目と青の組み合わせはかなり個性的であって、我々日本人にとってはちょっと勇気の要る選択と思われる。ところが現行ラインナップにある自動巻クロノグラフのノーチラスのSSとRGのコンビネーションモデル5980/1AR−001が近似のブルー文字盤でありながら一定の人気を保ち続けている事からすれば、生産量次第では人気の希少ノーチラスとなるのかもしれない。

レディース・ノーチラスからも1モデル7118/1450R-001が発表された。メンズに既に総ダイヤモデル5719/10G-001が用意されている事からすれば、もっと早くリリースされるべきモデルだと思う。

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価格的にもそれなりに凄いのだが、時計と言うよりもこの手のものはジュエリーに時計がついているものなので特に紹介のしようもない。ただ従来の7118モデルには6時位置にカレンダーが付くが、当然?のごとくこのハイジュエリー・モデルでは省略されている。ついでに秒針すら無くても良かった気がする。

続けて4月12日に発表されたニューモデルについても書き連ねようと思ったが、ノーチラスだけで想定以上の文章量となってしまったので、やっとこさ補強されたカラトラバや画期的な永久カレンダー等については、改めて後日の紹介にしたいと思う。

文責:乾 画像:パテック フィリップ

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