パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

2021年7月の記事一覧

前回記事で本年度新製品発表は月刊誌状態?とした。確かに毎月のお楽しみには違い無いが、発刊日が決まっている定期刊行物ではないのでもう頭の中は、もうゴチャゴチャのおもちゃ箱状態である。ともかく備忘録として時系列に発表モデル内容を確認・記録しておこう。

4月7日ウォッチーズ&ワンダーズ初日:ノーチラス4型 5711/1A-014 5711/1300A-001 5990/1R-001 7118/1450R-001

4月12日ウォッチーズ&ワンダーズ最終日:カラトラバ2型6119R-001 6119G-001、永久カレンダー1型5236P-001、年次カレンダー1型4947/1A-001

5月27日:アクアノート7型5968G-001,010 5267/200A-001,010,011 5268/200R-001 5269/200R-001

6月16日:ミニット・リピーター4型5304/301R-001 5374G-001 6002R-001 7040/250G-001、その他2型5738/51G-001 7118/1450G-001 2021年レアハンド・クラフト多品種かつ極少数

今回は発表から随分と日が経ってしまったアクアノートの新作を考察するつもりだが、その前に発表済みの新作モデルの内容を少し分析してみたい。上記の発表済新製品はレア・ハンドクラフトを除けば21型で、その内2型のノーチラスはほぼ限定なのでいわゆる定番ニューモデルは19型となる。内訳はメンズ9型でレディスは10型、分類ではグランドコンプリケーション5型にコンプリケーション1型、カラトラバ2型、エリプス1モデルでノーチラス3型のアクアノート7モデルとなる。今後の追加発表は不明ながら、昨年の少な過ぎる発表も考え合わせるとやはり少なめで、やや偏った構成に思える。でも何となく今年はこれで一旦おしまいの様な気がする。まあ新型コロナ・パンデミックの世界情勢と各エリアの景況の推移による特別な隠し玉は有っても、パテックに於いての普通?の時計はもう無さそうな気がする。まあ此処は、ゆっくりと腰を落ち着けてWEBによる情報だけでアクアノートの新作を見てゆこう。

2019年に一旦姿を消したアクアノート・ルーチェは絶対に復活すると信じていた。コレは見事な当たりくじかと思ったら、SSはまさかのクォーツ再登板と3.2mmもの大口径化での38.8mm径(10時-4時)と言うサイズアップは全くの予想外。おみくじで言えば吉は吉でも"末吉"レベルか。さてアクアノートは1997年にメンズモデルが僅か35.6mm径でデビューしている。翌1998年には裏スケやらクォーツやらレディスとか一気にバリエーションを増やした際に、当時としては大振りなラージサイズモデルで、今日で有れば"ジャンボ"と称されたであろうケース径が38.8mmのRef.5065Aがリリースされ、2007年迄アクアノートの最大モデルとして君臨した。正確には2009年迄は後継機種Ref.5165が同サイズで生産継続された。しかしメンズのメインモデルは2007年に第二世代へとフルモデルチェンジし現行のRef.5167(40.8mm径)へ移行した。

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上段メンズの5167のみホワイトでの展開が無いので黒いがダイヤルのエンボスパターンを比較されたし。画像が少々不鮮明なのはご容赦。エンボスの出っ張っている部分を畑の畝とすればその畝間の溝が狭いか広いか、下段3点のレディスは初代からの少し幅広ファニーな"おかめ顔"を受け継いでいるが、根強い人気が有って個人的にもいつの間にかふくよかな初代エンボス(そりゃ福娘ですから・・)にすっかりしてやられているわけですヨ!

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サイズやらメンズアクアの生い立ち、はたまた福娘の登場やらで脱線気味だが、この様な生い立ち故に個人的には38.8mmサイズのレディスは何とも衝撃的だった。さらに今回のニューアクアノート・ルーチェRef.5267は、品番的には先代の5067の後継機種なのだがサイズ以外にも違いが有る。それはケースとストラップの接合方式などが現行メンズ同様の第二世代仕様にアップデートされた事だ。これに伴ってストラップの格子状のエンボスパターンのデザインも世代交代されメンズとペアのスタリッシュな意匠に統一された。もうテーブルの上にペッタリと180°開脚してくれる床運動系アスリートでは無いのだ。少し粗削りなスポーティーさと引換にさらなるエレガンスさを獲得したとも言える。興味深いのは前述の様に文字盤の格子状エンボスパターンは第一世代のまま据え置かれた事だ。トータルの見た目では1.8世代あたりと呼ぶのが相応しいのか。さて新旧モデルの正面画像を見比べた相違点は、ストラップ周りを除けば思いの外少なく感じる。ケース形状は新旧違いがほぼ無さそうだが、ベゼル部分に占めるダイヤの存在感がニューモデルが若干勝っている様に見える。実際には個数で2個増えて48個、カラット合計で0.11増量の1.11ctとごく僅かながら数字以上に輝きが一段と増した気がする。文字盤も間違い探しの様に瓜二つだが、まず12時のバーインデックスが2本からスッキリと1本に変更され、ミニットマーカー共々に大径になったにも関わらず何故か短く切り詰められた。その結果として最も顕著な相違としてカレンダー窓の位置がそれらのインデックスとは干渉せずに内側のアラビアアワーインデックスの3時定位置にきっちり収まっていてレイアウトとデザインバランスが向上している。ダイヤル部分のみの新旧サイズ比べは実機を並べないと難しそうだが、ケースのサイズアップに伴い文字盤径もそれなりにアップしているはず、でもクォーツのエンジンは持ち越しなのでカレンダー位置変更には制約が有る中で間伸びさせずに良い顔に仕上げられたと思う。

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尚、枝番010のマット・ホワイトのみはカレンダーディスクを黒、日付を白文字という従来機とは逆配色となり、窓枠も白色塗装されていてチョッとした特別感が有る。他の文字盤(真上画像)は白ディスクに黒い日付文字で変更は無い。カラーバリエーションは人気の定番色の黒、白に加えて今年のトレンドカラー緑のカーキグリーンの3色展開と手堅い。旧モデルの拡張パターンを踏襲なら来年度以降は新色追加を楽しめそうだ。大いに期待しておきたい。

Ref.5267/200A-001
ケース径:38.8mm(10時−4時) ケース厚:7.9mm 防水:12気圧
ケースバリエーション:SS
文字盤:ブラック、アクアノート・エンボス・モチーフ、ゴールド植字数字
裏蓋:ソリッド・ケースバック
ストラップ:コンポジット素材、ブラック
バックル:アクアノート折り畳み式バックル
価格:お問い合わせください

Caliber E 23‑250 S C
直径:23.9mm 厚み:2.5mm
部品点数:80個 石数:8個
電池寿命:約3年

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尚、マット・ホワイトのみの一色展開ながら旧世代のルーチェ同様に18金ローズゴールド素材バージョンも用意されている。こちらはエンジンも旧世代同様の機械式で最新型の自動巻キャリバーに換装されている。クォーツキャリバーとはカレンダーディスクのレイアウトが異なる為に3時のアラビアインデックスは省略されずに若干文字盤センター寄りにシフトされた為に"2,3,4"のインデックスがほぼ縦一直線となり全体を俯瞰した時に気付けるか否かのアシンメトリーレイアウトが、なんと言うかその良い意味での引っ掛かりとなっている。これは好き嫌いの問題であろう。尚、そのミステリアスな3時インデックスの外側にはRG素材の窓枠を備えたスタンダードな白地に黒文字での日付けカレンダー表示が設置されSSとはあきらかに一線を画した表情となっている。このカレンダー周りのデザイン処理は旧世代と同じながらサイズアップが良い意味でゆとりのあるバランスを生んでいる様に見える。

Ref.5268/200R-001
ケース径:38.8mm(10時-4時) ケース厚:8.5mm 防水:12気圧
ケースバリエーション:RG
文字盤:マット・ホワイト、アクアノート・エンボス・モチーフ、ゴールド植字数字
裏蓋:サファイヤクリスタル・バック
ストラップ:コンポジット素材、マット・ホワイト
バックル:アクアノート折り畳み式バックル
価格:お問い合わせください

Caliber 26-330 S C
直径:27mm 厚み:3.30mm 部品点数:212個 石数:30個
パワーリザーブ:最小35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ゴールド中央ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

同じくRG素材のモデルバリエーションとして、新機軸であるクォーツのトラベルタイムという意表を突いたレディスモデルが、3針と同径サイズ38.8mmで同時発表されている。しかしながら従来の機械式トラベルタイムの最大の特徴であるケースサイド左側二箇所のプッシュボタンによるローカルタイム操作では無く、メインリューズの引出しセカンドポジションで調整する方式になっている。この操作性向上の為にパテックは敢えて手間取る捻じ込み式リューズを採用しなかった。その分防水性能は捻じ込み式である3針モデルの120mに対して半分の60mとなっている。2ヶ月ごとのカレンダー修正よりもローカルタイム操作が頻繁なオーナープロファイルが想定されているわけだろう。

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尚、プレスリリースには"globetorotting Aquanaute Luce" との表記が有る。自らも愛用する英国の著名旅行鞄ブランド名称の由来に無頓着でいたが、文字どおり"地球を駆け巡る"との語意で有り、どちらかと言えばあくせく駆け足のビジネストリップよりも純粋な物見遊山的な旅、観光寄りのニュアンスが"Globetrotting"には強いらしい。確かにカラー・素材・デザインと何処から見てもアクアノートは"OFF"限定だろう。
ところで少しまた道草をするが、トラベルタイムの源流は1950年代終盤なのだが、第二次世界大戦の戦後処理も一段落し、欧米各キャリアの旅客機による世界的な長距離移動競争が盛んになっていった時代だった。R社がパンアメリカン航空の要望でGMTマスターを開発したのもこの頃である。1999年迄超ロングセラーとなったGMTマスターⅠだが、構造的には非常に単純で時分針と連動した24時間GMT針と24時間インデックス表示の両方向回転可能ベゼルを組合わせると言うシンプル極まりないがゆえに、頑丈この上無いスポーツモデルだった。だが技術面に於いてはジュネーブの伝説的時計師ルイ・コティエ氏考案パテック特許申請のプッシュボタン方式の機械式トラベルタイムが圧倒していたと言って差し支え無いだろう。R社も1982年にようやくローカルタイム用12時間針を独立操作して時差修正出来るGMTマスターⅡを発表し現在に至っている。今やこちらはスイス時計を代表するロング&ベストセラーウオッチと呼ぶべきだし、GMT機能のスタンダード仕様としてミドルレンジ以上の各ブランドがこぞって採用しているGMTスタイルだ。リューズの回転方向で時差修正のプラスマイナスは勿論、日付けのバックデイトも可能な良く出来た完成度の高い仕組みで、自分自身もR社エクスプローラーⅡやO社デビル・クロノスコープGMT等で愛用し、その使い勝手の良さには感心している。ところで同格クラスの少なからぬブランドで価格戦略の為か、ETA社系の廉価モジュールを積んだGMTモデルが結構散見される。リューズ中間ポジションで片一方に回して時針単独の一方通行修正、逆方向に回すと何とカレンダー日付け早送りと言う代物だ。正直言ってこんなに使い辛いものは無く、使用方法の説明さえ鬱陶しい"なんちゃってGMT"と言うべきものである。本音では店頭に置きたくも、売りたくも無いのだが、様々な義理人情やしがらみも有って、デザイン優先で最小限のご提案はご容赦頂いている。
さて閑話休題、脱線から戻って主張すべきは二つ。パテックは機械式に於いてはトラベルタイムの名称で独自のGMT機能ウォッチを60年以上採用しており、全く古びていない事。さらに本年度クォーツでのトラベルタイム初搭載に際して、使い勝手の良さが広く認識されている操作スタイルをサックリと採用した事だ。但し、機械式同様にホームタイムの昼夜表示を6時位置に持つがカレンダー機能は無い。やはりビジネス寄りでは無い旅人"Globetrotter"の道連れに相応しい。

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もう少々トラベルタイムにお付き合い願いたいのが、ムーブメントの部品点数という些末で枝葉の話なのでスキップはご自由に。現行アクアノートの機械式トラベルタイムはフルローター自動巻主力機Cal.324 S C(部品点数217点)にトラベルタイムモジュールを載っけてCal.324 S C FUS(同294点)が搭載されている。両者を比較すると部品点数で35%アップ、価格はSS素材で約二倍であり、メカニカルはトラベルタイムを積むと「結構するなァ・・」と言う印象が強い。ところでレディス・アクアノートの3針クォーツ版ベースキャリバーE 23-250 S Cの部品点数は80点、初お目見えのトラベルタイム化されたCal.E 23-250 S C FUS 24Hは96点。たったの16点で出来てしまうクォーツのトラベルタイム。価格は同一素材の比較モデルが無いので何とも言えない。ただ正直言って18金アクアノートのクォーツ・コンプリケーションの市場性とは如何ほどか?と測りかねていた。ところがちゃんとご注文はやって来るのだ。素材に関わらずGMTニーズは有るのだと思っていたら、18金のレディスアクアノートは欲しいが、面倒な機械式はイヤというご要望が有った。恐らく金額と機能のバランスがどうのこうのよりもデザインさえ気に入ればという好例なのだろう。いやいや同一素材RGの3針メカニカルの約8掛けでGMT付きはお買い得とも思える。さらに言えば価格にシビアな女性のクォーツニーズの根強さを改めて確信した。レディスの自動巻メカニカル化を急速に推進してきたパテック社だが、昨年度に初代Twenty ~4®︎のレクタングルケースのクォーツモデルの復活があり、今年度まさかのアクアノート・ルーチェSS復活でのクォーツ再登板はその見直しの潮流を象徴していないか。その段でゆくと18金RGで僅か4品番となっているレディス・ノーチラスのクォーツモデルのディスコンも時間の問題と思っていたが、しばらく様子見もあるかもしれない。でもビッグサプライズとなるSS素材でのクォーツ・ノーチラスの復活劇は、残念ながら多分無さそうな気がする。以上でようやく豊作だったレディスのニューモデル紹介は終了。

Ref.5269/200R-001
ケース径:38.8mm(10時-4時) ケース厚:8.77mm 防水:6気圧
ケースバリエーション:RG
文字盤:マット・ホワイト、アクアノート・エンボス・モチーフ、ゴールド植字数字
裏蓋:ソリッド・ケースバック
ストラップ:コンポジット素材、マット・ホワイト
バックル:アクアノート折り畳み式バックル
価格:お問い合わせください

Caliber E 23-250 S FUS 24H
直径:23.9mm 厚み:2.95mm
部品点数:96個

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やっとこ唯一の貴重なメンズに到着。メンズ・アクアノートのニューモデルRef.5968Gフライバック・クロノグラフは品番的には人気SSモデルの素材バリエーションなのでコスメティックチェンジで間違いないのだが、受け止めるイメージとしては色遣いと18金WG素材が全く同じ3針の通称"ジャンボ"Ref.5168Gのクロノグラフ版と言われた方が納得しやすい。2018年発表の5968SSモデルは文字盤・針・コンポジットストラップ等の多色使いの競演が既存のメンズ・アクアノートには全く無かった断トツの若々しいスポーティモデルとして発表3年後の今も"超"の付く人気が続いている。しかし今年のWG素材追加二色と選択を悩ませるのは「ブルーにするか、それともグリーンか?そして目玉の必要は有りや無しや?」の4択であって「既存のSSか今年のWGどちらかにするか?」では無さそうに思われる。パテックはケース形状(厳密には冷間鍛造の金型か)が品番を決定するので、素材略称のAがGとなるだけだが、妙な違和感を感じてしまう。2006年初出のベストセラー年次カレンダークロノRef.5960Pと10年後に発表されたステンレスブレスモデル5960/1Aにも同じ様なくすぐったさを感じた。で、面白いのはご注文カラーの選択で3針とクロノの両方をたすき掛けという方が多い。今のところSSクロノに加えてWGクロノのマテリアル横断のご注文はまだ無いが、有っても全然不思議が無さそうなくらいに"似て非なる"では無く、真逆の"似ず同なる"異母兄弟?"なタイムピースと思っている。

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今回、上に掲載したアクアノートファミリーの文字盤画像を見続けていて、改めてパテックのダイヤルデザインに関するレベルの高さに感心させられた。もうすぐ時計業界に身を置いて30年にならんとする中で、上記下段右側の偏芯した日付カレンダーディスクのレイアウトパターンを恥ずかしながら初めて拝見した。このクロノグラフムーブの初出は2006年なので正確には今頃やっと気付いたと言うべきか。2006年はノーチラスシリーズ発売30周年であり、現行モデルの原点で有るフルモデルチェンジの特別な年だった。同時に同年はパテック社が全てのクロノグラフムーブメントをマニファクチュール・メゾンとして自社化を進めていた真最中であり、第二弾目のクロノムーブとして時代の最先端を行く垂直クラッチを搭載したフルローター自動巻フライバック・クロノグラフムーブCH 28-520系を二つのニューモデルに搭載させた年でもあった。その一つが年次カレンダーとのダブルコンプリケーションRef.5960Pであり、もう一つがそれまで本格的な複雑機構を積まなかったノーチラスシリーズに於けるフライバック・クロノグラフRef.5980/1A(上段画像左)だった。特殊なカレンダーレイアウトの前者5960と異なりシンプルなデイトカレンダーを王道の3時位置に持つ後者5980は、どう見ても理想的な位置に日付窓が陣取っている。決して大き過ぎるとは言えない40.5mmのノーチラスのケース。さらに特徴的なナマズの口の様な捉え所の無い撫で肩の8角形の幅広ベゼルに追い込まれたダイヤルエリアは実は少し小ぶりだ。さらに真円では無い為に12時-6時と3時-9時方向の縦横十文部分は10時-4時方向より僅かにコンパクトなのだ。一方で搭載エンジンCH 28-520 Cの直径30mmは自動巻コンプリケーション用としては標準だが、3針自動巻等に比べれば明らかに大きい。ここからは全く個人的な推測だが、オフセンターレイアウトのデイトカレンダーディスクは技術的には難易度は高くは無いと思われるが、普通はまずやらない。それを敢えて採用した理由は30周年を迎えた新生ノーチラスの象徴的モデル5980の顔を完璧なプロポーションにする為の秘策だったのでは無いだろうか。そして10数年後の大振りなケースモデルへの搭載に際して、上段画像右2点の文字盤デザインに悩ましい(苦し愉しい)様々な工夫が施される事態になった様な気がする。技術屋では無い我が身が思うに、カレンダーディスクなんぞチョチョイと設計変更して大振りモデル用の派生キャリバーを用意すれば良いような気がするのだが・・ボディや内装と比較して車体やエンジンの部分設計変更は格段にハードルが高いと言うことなのだろうか。それともどうせボディや内装は新たに設計するのだから、そこで視覚的工夫で乗り切ってこそプロたる矜持・・たぶんそっちなのかなァ、何年間も全く違和感を感じる事なく、疑う事すら無くジャンボ・クロノグラフ5980に見惚れてきた。"女"や"人"というのは"たらし"の接頭語としてスラングな日本語の代表格だが、パテックは稀代の"時計屋たらし"だったわけだ。お見事です!ヤラレましたヨ!

Ref.5968G-001
ケース径:42.2mm(10時-4時) ケース厚:11.9mm 防水:12気圧
ケースバリエーション:WG
文字盤:ブラック・グラデーションのミッドナイトブルー、アクアノート・エンボス・モチーフ、夜光付ゴールド植字数字とアワーマーカー
裏蓋:サファイヤクリスタル・バック
ストラップ:コンポジット素材、ミッドナイト・ブルー
バックル:アクアノート折り畳み式バックル
価格:お問い合わせください

Caliber CH 28-520 C/528
直径:30mm 厚み:6.63mm 部品点数:308個 石数:32個
パワーリザーブ:最小45時間~最大55時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ゴールド中央ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

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今回記事も長い。くそ暑い夏本番もまだまだ続くし、迷走気味の五輪も開幕してしまったし、もうええ加減にせなあかんなと思いつつも、伸ばし伸ばしにして、正直かなり勇気を振り絞ってどうしても書かざるを得ないのが、今回バリエーションも増えたアクアノート・フライバック・クロノグラフRef.5968のコンポジットストラップ用に2018年に新規開発採用され、それ以降の新製品に標準装備化されているバックルに関するの憂鬱だ。左側の5168Gのバックル画像でも想像がつくが、バックル開閉用の両側2箇所のよく目立つプッシュボタンに「装着中に当たるので痛くて不快」とのご指摘が絶えない。位置が下過ぎると言うか肌寄り過ぎるのかも知れない。チョッと大きい気もする。最近、レディスモデルを運良く入手し愛用を始めた相方も「ともかく痛い」「でも、カッコいいから我慢」"お洒落はがまんヨ!"は有名なおスギ(いや、ピーコだったか?)のセリフ。確かに正しく同感で有る。例えばスタイリッシュでコンシャスな立体裁断効きまくりのお洋服は、腕は挙らぬ、肩は周らぬ、パンツの上げ下げはひと汗かきそうだし、太れないので食べれない飲めない、ワークアウトは欠かせません。その点和服はかなり楽で制約は少ないが、袖口の引っ掻け常に注意、歩き方制約有り、走るなんてとんでも無い。其れはそれで見える以上に見え無い我慢も一杯ある。その理屈でゆけばバックルの着け心地など我慢!我慢!。そんなに嫌なら時計なんぞ最初から着けるな!とも言える。ただ問題だと思うのは一世代前のバックルの着け心地に劣っている様なのだ。現行モデルではアクアノート3針モデルRef.5167等が採用しているのが旧世代のバックル(画像右側)である。何がどう違うのか比較出来る画像が見当たらず、撮影も困難なので"百聞は一見に・・・"とはいかないが、新旧の両世代を併用されている顧客様の殆どから同様のご指摘を頂いている。たぶんプッシュボタンの厚みと出っ張り度合いの微妙な差異かと思われるので、出来れば自分自身でその装着感の違いを確かめたいが、販売困難度ずっと上昇中のモデルを購入出来るはずも無い。パテック社では新規のブレスレット等はティエリー社長がご自身で入念に着用テストする旨を以前に伺った記憶もあるのだが・・・。腕まわりの形状は千差万別ゆえに人によってはしっくりしないケースも有ろうが、個人差が多様で有ればあるほど着け心地の最大公約数が求められるべきかと思う。今後のどこかで両者の実機比較が出来るチャンスを待ちたい。

文責:乾 画像:パテック フィリップ

人生には"登り坂"もあれば"下り坂"もあるが、"まさか!"もあると言うのはよく知られた親父ギャグ。そしてあろう事か今現在、自分自身でその"まさか"をヨチヨチと這う様に登る日々を過ごしている。一方で浮世離れした時の流れに身を任せてもいるのでグズグズとブログ記事を書き連ねていたら、今年の新製品発表はマンスリー?『アクアノート、その復活とバリエーション』的な代物やら『超絶系ミニットリピーター&レアハンドクラフト』なんぞもダメ押し的にどんどん出て来て、いつもの様に"最新記事・・・"とドヤ顔での公開がはばかられる事態となってしまった。新型コロナ禍の影響は「いったい、何処まで、何すんねん!」とニューモデル発表までが全く予想不可能であって、もうコレは開き直って"なるようになれ、勝手にしやがれ、気分はLet it be!"と思うままに時系列を無視して書き連ねるしかあるまい。

我ら現存世代にとって初遭遇となったパンデミックイヤーの昨年2020年に於いても、パテックはレディスに限っては普通(変な表現だが)の新製品をリリースした。とは言ってもたったの3モデル。それもコスメティックチェンジ(ダイヤルや素材等の仕様変更)に過ぎず、とてもまともな新作発表とは言い難いが・・・そしてパンデミック2年目?の今年もレディスニューモデルのコスメティックチェンジ傾向は継続している。5月27日リリースされたニューアクアのクォーツ・トラベルタイムについては、その例外として改めて考察出来ればと思っている。しかしながら2018年秋にミラノでトゥエンティフォー・オートマチックRef.7300を華々しくデビューさせてから、パテックのレディス市場にかける意気込みにより一層のドライブがかかってきた様に思う。誤解を恐れずにあくまでも個人的な意見(偏見?)だが、女性はファッションやアクセサリー等の身の周りの装飾品(勿論、腕時計も)に関して男性に比べて、圧倒的にトレンドに敏感にして速攻で反応する。一方でブランドに対するロイヤリティや拘りも有りそうな顔して平気で浮気する。例えば新しい美容室を試す女性は意外に多いと聞いた事がある。男性は理容室(美容室派も含めて)をよほどのトラブルでも無い限り、まず変える事はない様に思う。何故か?の追求は面倒な事になりそうなので止めておくが、腕時計に当てはめるとトレンドよりも我が道の追求に重きを置くパテックはレディスに関して、自らハードルを高くしている感があるように思う。

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年次カレンダー4947/1Aは、既存の18金ストラップモデルをステンレス素材ブレスレット仕様へのコスメティックチェンジモデルと言うことになるが、デイリーユースな素材のステンレスブレス仕様に加えてダイヤが何処にも無いからか、予想外のご注文を発表直後から複数本頂戴した。コレが何と男性からなのである。考えてみればRef.7300/1200Aトゥエンティフォー・オートマチックのステンレスモデルも「ベゼルにダイヤが無ければ」と言う男性の引き合いは結構多かった。7300の36mmに対して年次カレンダー4947/1Aは38mm。先月発表されたニューアクアノート・ルーチェに至ってはリバイバルのサイズアップで何と3.2mmも大きい38.8mm径が採用された。そのニューアクアノート・ルーチェの実機を見る機会がまだ無いが、メンズのレギュラーサイズ40.5mmとその差はたった1.7mm。ちなみにそのレギュラーサイズには女性からのご注文も頂いている。
面白いのは男性のダイヤに対する視点で、簡潔に言えば(パテック限定かも知れぬが)バゲットサイズまで迫力が上がれば抵抗感が薄れる事である。現行ラインナップでベゼルダイヤ絡みのメンズモデル全8型その内6点がバゲットダイヤで、さらに今年ノーチラスSSが年度限定で追加され"そんなに来ますか?"レベルのご注文を頂いている。ちなみにラウンド形状のダイヤベゼルモデルはカラトラバRef.5297Gと年次カレンダーRef.5147Gの2モデルだが当店の販売実績はともかく結構なロングセラーなのでニッチな根強い人気モデルなのだろう。ちなみにR社ではメンズにも根強い人気のポイントダイヤインデックス的な仕様が現行品メンズパテックには無い。2000年以前には有った様な気もするが、今世紀は記憶に無い。しかし此れまたバゲットダイヤでのバーインデックスは僅かながら現行生産されている。思い出深いのは2016年のノーチラス発売40周年記念限定モデル2型(5976/1G,5711/1P)で採用されたWGの土台に埋め込まれたバゲットダイヤインデックス。間近で見れば見事なダイヤなのに遠目には普通のバーインデックスに見える抑制の効いたダンディズム仕様には、それまでのメンズダイヤの概念が撃ち下かれてしまった。ちなみにパテック社が使用するダイヤは全てデビアス社でピュア・トップウェッセルトンと格付けされた上質な物に限られている。

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この年次カレンダーSSブレスは既存モデルのバリエーションなので時計としての紹介は省くが、今春の生産中止でメンズ年次カレンダーの元祖系モデルRef.5146が、とうとう、ゴッソリ、一気に、パテックらしい潔ぎよさで、お蔵入りしたので1996年デビューの際に与えられた年次カレンダーオリジナルの顔が婦人用年次カレンダー4947の専用となった。いや、前述のダイヤベゼル仕様5147Gも辛うじてサバイブしているが、そのケース径39mmは4947に僅か+1mmでしかなく、メンズ専用と言うよりも大振りレディスとの兼用モデルと見るべきなのかもしれない。その段でゆくと自動巻カラトラバクンロクの唯一のサバイバーRef.5297Gもダイヤベゼル+ブラックダイヤルが5147Gと共通仕様、そしてケース径38mmは今回紹介のレディス4947と全く同じ・・・

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なんかもう、ケース径に関しては35mm〜39mm辺りのジェンダー属性がカオス状態になって来ている気がする。昨今の世界的なLGBTへの意識の高まりが高級時計の世界へも影響を与えたのか。その辺りのサイズレスパンデミック状況については38.8mm径のアクアノート・ルーチェ等を紹介予定の次回の投稿記事で掘り下げてゆきたい。

Ref.4947/1A-001
ケース径:38mm ケース厚:11mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:SS
文字盤:縦横サテン仕上げ(山東絹仕上げ)ブルー、ゴールド植字インデックス
裏蓋:サファイヤクリスタル・バック
ストラップ:ステンレススチール仕様
バックル:折り畳み式バックル
価格:お問い合わせください

Caliber 324 S QA LU
直径:30mm 厚み:5.32mm 部品点数:328個 石数:34個
パワーリザーブ:最小35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ゴールド中央ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

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もう一点のレディスニューモデルもアップサイジングされた超美形カラトラバ4997/200G-001。オリジナルモデル4896G-001は15年遡る2006年初出で、バーゼルのサンプル初見時にあまりの美しさにノックアウトされた記憶が今なお鮮明だ。当時は文字盤製造法の基礎知識なんぞもほとんど無く、ともかくその美し過ぎるギョーシェ装飾と長くて繊細だが厚みの有る銀色のインデックスの印象が凄かった。ただ問題はそのサイズ感で、当時はその33mm径が女性にはあまりに大きく思われ、ボーイズ的に小柄な日本人男性に薦められそうだと本気で考えていた。同モデルは2009年に見た目ほぼ変わらずの4897G-001へと引き継がれ、2020年までの長きに渡り生産された。RGの素材追加や様々なダイヤルカラーのバリエーションも加えられた。ストラップは一貫してラグジュアリー感溢れる文字盤同色のサテン調テキスタイル素材(表面)が採用された。ブラウン、シルバー・・どの色目も魅力的で使い勝手の多様性も増したが、デビューから君臨するギヨシェ・ナイトブルーダイヤルモデルの秀逸さが抜き出ていて、2016年には同色のバゲットダイヤバージョン4897/300Gも追加された。そして今春2年間のブランクを経て2mmのサイズアップと手巻から自動巻にエンジンを積み替えて4997/200Gとしてリバイバルデビューした。

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特筆すべきはサテン(シルク)の風合いを持つ合成繊維でシンセティックと呼ばれる表面素材で高級感を演出していたストラップが、高級な表面感はそのままに丈夫なカーフ(牛革)素材に置き替えられた事。相方が違うモデルでシンセティック素材ストラップを永らく愛用しているが、まあ"贅沢この上ない"。極端に言えば一回でも着用すれば"使用感"が出るし、デイリーに愛用すればほんの数ヶ月で"使えるけれども、見せられない"のでしょっちゅう交換となる。まあこの素材に限らず高級感の劣化と言う代物は、徐々にでは無く一気にみすぼらしくなり易い。ロールスロイスには擦り傷はおろか僅かな泥汚れすら受け入れ難いのと同じである。ところが最近はスタンダードな素材であるカーフのイミテーション化なるトレンド?が有って、昨年のカラトラバSS1,000本限定Ref.6007Aではザックリとした平織のコットンキャンバスにしか見えないエンボス(型押し)加工が施されたカーフ・ストラップが採用された。今回も平織テキスタイルは同じだがシルクサテンレベルの微細なテクスチャーと高級な光沢感(一体何をどうやったらこうなるの?)を見事に実現したカーフ・ストラップが採用されている。さてさて耐久性がどの程度なのか興味津々だ。
何度も書いているが、男女問わず美形過ぎるのは"人も時計も"実は考えもので、どちらも寄り添う際に"気合いと緊張"を求められ過ぎて、疲れ果ててしまうなんて事になりかねない。その点ではパテックの時計に超の付く美男と美女はほとんど無く、一生連れそうにピッタリな"女房と亭主"タイプが非常に多い。"パテックマジック"と勝手に呼んでいるが「初めはピンと来なかった」「どこが良いのかわからない」から気がつけばドップリと信者になっていたと言うパターンが結構多い。2年間のブランクなのかバケーションを経てカムバックした4997/200Gは、そのパテックマジックには当てはまら無い稀有な美人時計である。良くも悪くも愛用者が限られてしまうし、インパクト大な個性的なカラーリングはスタイリングの許容度も狭めだ。さらに言えばシチュエーション迄もが、夜間の室内こそ輝ける"最強の夜の蝶(昭和の死語)"とは全く勝手な個人的思い込み。けれども足掛け15年以上に渡り、恐らくこの先もずっと"チラ見"せずにはいられ無いパテック銀幕の超スターウォッチであり続けて欲しいのだ。

Ref.4997/200G-001
ケース径:35mm ケース厚:7.4mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:WG
文字盤:ギヨシェ装飾のラック塗装ミッドナイトブルー、パウダー仕上げのゴールド・インデックス
裏蓋:サファイヤクリスタル・バック
ストラップ:サテンの風合いを持つ、ブリリアント・ネイビーブルーの起毛仕上げカーフスキン・バンド
バックル:ピンバックル
価格:お問い合わせください

Caliber 240
直径:27.5mm 厚み:2.53mm 部品点数:161個 石数:27個
パワーリザーブ:最小48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動
ローター:21金ゴールド中央ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責:乾 画像:パテック フィリップ

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