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パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

5990/1人気モデルにRG素材追加

先頃生産中止が決定されたノーチラス・フライバック・クロノグラフ・トラベルタイムRef.5990のステンレスモデルは、2014年から長きに渡り生産されたロングセラーモデルだった。特に此処2年程前からは人気が急上昇して購入がドンドンと困難なモデルとなっていた。昨春にはローズゴールドの素材追加モデルが発表され、一年のランニングチェンジを経てバトンを譲った訳だ。
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この時計で印象的なのは何と言ってもグラマラスな厚みだ。ケース厚12.53mmはパテックの最厚モデルではないし、デカ厚トレンドがまだまだ巾を利かせている現時点で一般的に厚過ぎる時計とは言えないだろう。だが8mm台の薄いケースで装着感の良さをノーチラスに与えようとしたジェラルド・ジェンタの設計思想からすれば"結構厚いナァ"という話だ。パテックの時計作りは決して薄さ至上主義ではない。しかし装着感の良さを追求する点で、出来れば薄い方が望ましいと考えている。よってムーブメント設計も強度を保った上での薄さを求めている。厚さ話のついでに最新カタログ2020-2021で厚さランキング表(上位・下位の各5位)を作ってみた。全部をチェックした訳では無いので、たぶん?というええ加減な表ではある。そして実に見難く解り難い。
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切れ味の鈍い頭でアレコレと考えた結果、作った本人しかあまり利用価値の無さそうな表になった。品番の素材や枝番と基本キャリバーも後半部分をバッサリ省略した。自動巻Mとはマイクロローター搭載の略である。まあ折角作ったし、スタッフの協力も有ったので・・参考までに本稿末尾に全体の表も掲載しておく。因みに今回紹介の5990/1の12.53mmはケース厚14番目でコレクション全体では決して厚すぎる訳では無い。但し、ノーチラスの中では最厚である。上の表で意外なのは年次カレンダー・フライバック・クロノグラフRef.5905が第5位の厚みを持っている事で、多分にフルローター自動巻に垂直クラッチが組み合わさった構造の基本キャリバー CH 28-520の厚さ6.63mmに年次カレンダー・モジュールが乗っかるとこうなる訳だ。薄い方ではクオーツ搭載のレディスでは無く、機械式しかも自動巻を積んだメンズが薄さで1~3位を占めている事だ。さすがのキャリバー240、"極薄"と称されるだけの事は有る。
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上の画像で両者の厚みがデフォルメされている様に見えるが、比率は実寸比の3:1程度となっている。この両極の中に全コレクションの厚みが収まっている。今回の作表は素材違いや文字盤違い等のいわゆるコスメティックのチェンジモデルを無視した個人的基準でケース形状バリエーションを独断で84種とした。最新カタログ掲載モデル数が151点(懐中時計除く)なので、二つに一つは別のケースという事になって、パテックの多品種少量生産がうかがえる。生産効率は当然ながら非常に悪いだろう。そう考えればパテックの価格設定は決して高すぎるとは思えない。ただ、すみません。他ブランドを殆ど考察していません。手始めにAPの公式HPを見に行ったのですが、何と言うか疲れてしまいましたので・・
尚、個人的にケース厚9mm~12mm台は現代の時計として普通の厚みと考えていて、今回の考察の場合は84種中39種で約半分。薄さ際立つ8mm台以下が35種も有って、厚めな13mmアップがたった10種しかない。ちなみに世の中にはピアジェの様に3mm台と限界の薄さに挑戦するブランドもあるが、パテックは実用的な強度からか極端な薄型を作ってはいないけれど全般に薄く仕上げられている。ずっと気になって仕方ないのが電話での問い合わせや店頭商談の際に、皆さんケース径は気にされても、ケースの厚みを話題にする方が殆どおられない。でもサクッと見にいったロレックス・オメガ・リシャール等のHPで径は有るが、厚さ表示が見当たらない現状なら仕方の無いことかもしれない。ナンデヤネン?
ところで薄いケースは着け心地に貢献すると言われているが、必ずしもそうとは言えない気がする。幸運にも最薄ケースのゴールデン・エリプス(ディスコンの5.8mm厚Ref.3738)を愛用しているが、ケース径も小さめなので少しでも緩めに着用すると自由自在にスルスルとどこにでも、あっちこっちへと腕の廻りを散歩するのでしょっちゅう手首の上に戻してやる事になる。腕廻りの形状が特別仕様という事も無い。小型で薄型のエリプスに限らず腕時計はどれもこれも12時側に行きたがる。ブレス調整時に駒取りを工夫したり、皮ベルトの12時側と6時側を入れ替えたり、長さを別誂えしたりと様々に工夫する事二十数年になるが、納得できる回答は得られていない。個人的に言えば、トゥールビヨンやリピーターの様な超複雑機能よりも常に手首の上で理想のポジションを保ち続ける構造を開発して欲しいのだ。時計業界のノーベル賞ものだと思うのだが、どうだろうか。
この時計の強烈な印象はまだ他にもあって、「天地間違えてすみません!」という奴だ。本稿の5990は12時位置に6時側と同サイズのインダイアルが配されるのだが、恐らく3時位置に日付窓が無く6時側にブランドロゴが有る為なのか、天地がひっくり返っても違和感が無い。現実に何度かご納品時にうっかり逆向きで差し出す事が何度も有った。
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パテックには同様のダイアルレイアウトのモデルが現行でRef.6300グランドマスター・チャイムとRef.5235レギュレーター・タイプ年次カレンダーの2モデルある。どちらも同様に間違えそうな顔だが、ショーケース内の鎮座を拝むだけで触る機会さえ無いグランドマスター・チャイムへの心配は杞憂でしかない。年次カレンダーも危なそうだが、曜日と月(month)表示窓が10時と2時辺りに有るので大丈夫なのだ。文字盤デザインはかくもデリケートで難しいものである。その事を過去最高に強く教えてくれたのが5990だ。
そして多少ネガティブな事ながら、リセットプッシュボタンがチョッと曲者というのがある。このモデルのプッシュボタン形状が結構横長な為に引き起こされる現象で、ボタン中央をまっすぐ押さずに両側どちらかに片寄って押してしまうとクロノグラフ秒針が"バシッ!"と0位置にキッチリ戻らず、変な位置に"フワッ"とだらしなく止まる現象が稀に起きる。当店は仕入検品で何度か初期不良として返品をした苦い経験があるが、結局この現象はノーチラスのケースにCal.CH28-520系を搭載し、特徴的な長方形プッシュボタンを組み合わせた場合、少しだけデリケートに操作すべき注意事項であるが初期不良では無い事を学んだ。
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※上の画像で左二つがプッシュボタン押し方が多少デリケートなタイプ。
故にトラベルタイムを積まないシンプルクロノグラフバージョンのRef.5980でも注意すべき留意点となる。同じエンジンを積んでいるコンプリケーションカテゴリ―の年次カレンダー・クロノグラフRef.5961はプッシュボタン形状が大きく異なり、芯でしか押せないタイプなので全く心配なさそうだ。しかし派生モデルRef.5905のボタン形状は幅広なので注意が必要だ。ところがアクアノートのクロノグラフRef.5968も形状的にはいかにも危なそうで何度か試してみたが、ケースにプッシュボタンが少し埋もれる構造のお陰?なのか大丈夫そうだ。でも過去に販売したSSの5990でこの現象のご指摘を受けた事は皆無で、普通に使っていれば問題はないのでご心配なく、万が一遭遇しても決して慌てないで下さいというお話。

今回も時計そのものには殆ど触れず、結構ネガティブな辛口気味の紹介となった。でもラグジュアリースポーツジャンルを代表するノーチラスコレクションのダブルコンプリケーションがローズゴールドに滅茶苦茶映えるブルーカラーのダイアルでの登場は話題にならないはずがない。実に軽く1,000万円を超える価格にも関わらずこのモデルの人気は凄まじく中々新規のご納品が困難である。受注もどこまでお応え出来るのか・・まあ昨年後半からシリーズに関わらずパテックのメンズは品不足が激しい。入荷が決して悪いのではなく、ご購入希望が非常に増えている為だ。今年になってからはレディスモデルもかなり厳しくなっている。そんな状況下で世界を震撼させる紛争が勃発し"すわっ!入荷アブナイ"と心臓が止まりそうになったが、今のところパテックの日本向け物流は止まっていない。でもまたしても地震が東北を襲うし、ラグジュアリーブランドの異様とも言える好況感とは裏腹に世界も日本も実にきな臭い事になって来た。新製品発表直前の今は、どうかこれ以上何にも起こらない事を願うばかりである。


Ref.5990/1R-001
ノーチラス・トラベルタイム・クロノグラフ
ケース径:40.5mm(10-4時) ケース厚:12.53mm 防水:12気圧
ケースバリエーション:RGのみ
文字盤:ブルー・ソレイユ 夜行付ローズゴールド植字インデックス
ブレスレット:ノーチラス折畳み式バックル付きローズゴールド3連ブレス 
価格:お問い合わせください

Caliber CH 28-520 C FUS
トラベルタイム機構付きコラムホイール搭載フルローター自動巻フライバック・クロノグラフムーブメント
直径:31mm 厚み:6.95mm 部品点数:370個 石数:34個 
パワーリザーブ:最小45時間-最大55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

撮影、文責:乾

付表:品番別ケース厚一覧(非公式・我流) ※自動巻Mはマイクロローター搭載の意味case84.gif

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