パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

2022年5月の記事一覧

よくもまあ今年はカラーの切り口で、ここまで大胆に新製品を分類してきたものだ。本稿は今回が最終回で"青の時代"と予告していたけれど、パテック側からは特にブルーを強調した説明は無かった。でも個人的にはその青がもっとも今年の新作で際立った色目の括りでは無いかと思っている。この自己流区分けでは、ワールドタイムの前回紹介したご婦人は緑に、今回登場の男性お二人は青のメンバーになってもらった。そして4月6日に後出しの様に発表された10分の1秒クロノグラフも見事な"青の時代"の人だろう。

青という色は現代時計に於いて定番色である。パテックも非常に多くのモデルで採用している。ところで2000年前後以降はデイトナを筆頭にクロノグラフ人気が続いた。5年程前からはノーチラス&ロイヤルオークに代表されるラグジュアリースポーツの人気が現在進行形で過熱している。これら全部ひっくるめてスポーティーな時計達なので比率は知らぬが各ブランド共にブラックが一番多用されていると思う。しかしパテックにはシリーズを問わず黒が少なく、青がとても多い様に思う。思う・・ではあかんなァ・・最新カタログ2021-2022のウォッチをアナログ的に"正"の字を数えるハメに・・

予想通り青>黒(グレー系含む)だったが、思った以上にり黒が健闘していた。緑の10本は微妙な感じ、これ以上増やすのはどうかなあ。その他が半分以下も少し意外だった。結果的にパテックに於けるブルーが大勢力である事は間違いない。恐らくこの点は他ブランドと一線を画していると思うが、どなたかお時間があればロレックスやAPあたりを分析いただければ嬉しい。
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さて、本題の新作紹介は東南アジア・オセアニアという身近なエリアがくっきりと有線七宝で描かれたワールドタイム5231G(上画像左)からスタート。今春生産中止となったRGの素材コスメティックチェンジでWGになった事で、外装とシティーリングの色馴染みが良くなった。マットなアリゲーターストラップとクロワゾネ部分の大半を占める海洋のブルーも同色。結果、非常にスッキリと落ち着いた趣を得て、レアハンドの七宝部分が強調されている。日本がセンターの針軸に邪魔されずに主役位置の12時下に配されているのも立派なサムライ(ブルー)ウオッチの資格を満たしている。おじいさん(ひとごとでは無い)の天眼鏡の様なリンゴ針もワールドタイムのDNAを放っている。書き進める内に立場的には不可能ながら、この時計は欲しくなった。せめて指をくわえて撮影がしたい。どなたか運の良い方のご購入を祈るのみだ。
クロワゾネダイアルのワールドタイムはご購入ハードルが非常に高く、そのプロセスは少々ややこしいので店頭で応談してのご説明が必要だろう。これに対して通常品という表現が適切かどうかは解らないがワールドタイムは18金のRG・WG両素材ともに今春生産中止となった。この空席を埋める素材コスメティックチェンジが5230P(上画像右)プラチナ製ワールドタイムである。文字盤全体を好ましい青一色でまとめ昼夜表示リングの昼間12時間部分のみシルバー系でアクセントとした表現は、現行のレディスモデルRef.7130Gと同じであり、視認性ではディスコンになったダイアル2トーンタイプに劣るがスッキリ度は高い。現代ワールドタイムでは過去にも色んなモデルでスッキリ同色系ダイアルが採用されていた。ただ意外にもプラチナケースでこの単色的な文字盤の色使いは初出ではないか。個人的には青いストラップとのまとまりの良さで大変好ましい仕上がりだと思う。ただ昨今パテックが好んで採用するヌバック仕上げのカーフストラップに乱暴な表現ながらタコ糸でお母さんが縫いましたか?という極太白ハンドステッチ。この仕様はとてもカジュアルでエイジも下がるので個人的に着けるなら艶有りのネイビーアリゲーターに変更したい。尚、ダイアルセンター部のギョーシェ装飾は柔らかくマイルドなパターンで、2000年発表の先々代ワールドタイムRef.5110のプラチナバージョンのサーキュラーパターンがベースと思われる。またこの新作もブラック・グラデーション加工がなされ、シティリング最外周部に向かって視認性は増してゆく仕様だ。今年の新作がどれも個性が強く、いわゆる普通のパテックが無い印象の中で、本作は一番安心感がある一本では無いだろうか。クロワゾネ5231の入手はとても無理なのでコッチを検討したくなるが、今はどのモデルであっても当分の間、売って貰えない感じがする。齢も年だし、躰も体だし、時計道楽も終活間近か。

Ref.5231G-001
ケース径:38.5mm ケース厚:10.23mm 
ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:WGのみ
文字盤:18金文字盤、クロワゾネエナメル(中央にオセアニア、東南アジア)、4つのゴールド・パイヨン・インデックス(12,3,6,9時)
ストラップ:マット(艶無し)ネイビーブルー手縫いアリゲーター
バックル:18金WGフォールドオーバークラスプ
価格:お問い合わせください

Ref.5230P-001
ケース径:38.5mm ケース厚:10.23mm 
ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:PTのみ
文字盤:18金文字盤、ブルー、手仕上げギヨシェ装飾によるサーキュラー・パターン
ストラップ:ネイビーブルー手縫いカーフスキン
バックル:PTフォールドオーバークラスプ
価格:お問い合わせください

Caliber 240 HU:自動巻ワールドタイム (5231G,5230P共通)
直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:239個 石数:33個 
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

お次はダイヤを纏ったジュエリーウォッチのメンズとレディス。メンズRef.5374/300P(下画像左)は既存の永久カレンダー・ミニット・リピーターによくもまあ此処まで贅沢にジェムセッティングしますか、という逸品だ。これをコスメティックチェンジと言って良いのかは微妙な気がする。歴代既存モデルはエナメル文字盤だが、本作はラッカーのブルーにこれまたブラック・グラデーション。サンプルが無い為にモニター確認となるが、青と言うよりは紺色っぽく見える。グラデーションも確かに美しいけれど、こう多いと「グラデーションにあらずんば文字盤にあらず!」チト食傷気味になってしまう。超絶系のダブルコンプリケーションなので機械は説明しだすとキリがない。外観は見た目通りだ。文字盤最外周部の土手(フランジ)にもバゲットカット・ダイヤモンドが隙間なくセットされブルーサファイアのバゲットカット・インデックスが存在感タップリに配されている。リーフ形状の分針が、厚みのあるインデックスの上を通っているけれども既存モデルとたったの0.08mmしかケースが厚くない。さすがにパテックなのか。構造的に普通なのか。良く解らない。音響的には堅い音質になると言われているプラチナ製ケースに覆いつくすようなジェム・セッティング。でもレアなカセドラル・ゴングを搭載しているので、機会が有れば是非ともその深く余韻の有る音色を視聴してみたい。でも販売出来そうな気配すら感じる事が難しいトンデモ雲上コンプリケーションである。

Ref.5374/300P-001
ケース径:42mm ケース厚:12.28mm 
ラグ×美錠幅:22×16mm 防水:非防水(湿気・埃にのみ対処)
ジェム・セッティング:合計228個のバゲットカット・ダイヤモンド(11.62ct)13個のバゲットカット・サファイヤ(0.72ct)
ケースバリエーション:PT
※サファイヤクリスタル・バックと通常のケースバックが共に付属
文字盤:18金文字盤、カラーはブラック・グラデーションのラック・ブルー、サファイヤ・インデックス
ストラップ:ブリリアント・ダスクブルー手縫いアリゲーター
バックル:ダイヤモンド付PTフォールドオーバークラスプ
価格:お問い合わせください

Caliber R 27 Q::永久カレンダー・ミニット・リピーター
直径:28mm 厚み:6.9mm 部品点数:467個 石数:39個 
パワーリザーブ:最小38時間 最大48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
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お次のレディスモデルもコスメティックチェンジながら、見た事なさそうなムーンフェイズ搭載コンプリケーションのRef.7121/200G。同一品番としては2013年初出で今春生産中止発表の7121J(下中)、近似モデルでは2012年初出でやはり今春生産中止されたダイヤモンド・リボン4968R(下右)がある。これらの時計のルーツは今や知る人も少ないと思われるがムーンフェイズを4時位置に、スモールセコンドを8時位置に配されたアシンメトリー顔のRef.4858(1例、下左)等である。確か2000年代前半頃に購入し、今も手元に有って見直したがあらためて顔もサイズも素晴らしい。
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※上画像の4858Gは適当な画像が無くて撮影したが、非常につらい絵なので荒探しお断り!
当時は手巻きムーブメント搭載のレディスモデルが沢山あったが、今や絶滅危惧種となり今作7121/200Gは天然記念物ものの手巻きモデルだ。この手のノンカレンダーで非日常的なジュエリー盛りだくさんの時計は、自動巻でもクォーツでもなく手巻きが一番だと思っている。滅多に着けないだろうし、出番があっても数時間のパーティー等が想定されるので、使い勝手で自動巻との差が無い。手巻のシンプルな機構はトラブルも少ないし、薄くドレッシーな仕上がりになるし、何より購入や維持の費用的にも優る。クォーツも薄くて便利だが、いざ出陣!と言う時にバッテリー上がりを経験している方の何と多い事か。
パテックらしいなと思うのは、ベゼルに66個(約0.52ct)のダイヤを大人しく埋め込んでいた従来の7121Jとケース厚8.35mmが全く同寸な事だ。約2倍の132個(約1.09ct)のダイヤに《ダンテール》と呼ばれるレース状の華やかなセッティングを施しているにも関わらずだ。
文字盤はシンプルなブルー・ソレイユでブラック・グラデーションは無し。ホッと。ストラップも捻りは無く、明るめのブルーの艶有りアリゲーター。勿論ハンドステッチも同色。「安心できるパテックらしいココイチ用ドレスウオッチの完成です!(ん、何処かで聞いたような・・)」。若々しさ溢れる色目だけれど、思いきってシニアのご婦人にもぜひ挑戦して欲しい一本だ。

Ref.7121/200G-001
ケース径:33.mm ケース厚:8.35mm ラグ×美錠幅:16×14mm
防水:3気圧 132個のダイヤ付ベゼル(約1.09ct.)
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤:ブルー・ソレイユ 18金植字ブレゲ数字インデックス
ストラップ:ハンドステッチのブリリアント(艶有)ブルー・アリゲーター
バックル:18KWGピンバックル
価格:お問合せ下さい

Caliber:215 PS LU
直径:21.9mm 厚み:3.00mm 部品点数:157個 石数:18個 
パワーリザーブ:最小39時間-最大44時間 手巻き
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

WATCHES AND WONDERS GENEVA終了翌日の4月6日に、1点だけ発表されたスポーティーで見た事有りそうな普通の顔。しかし中身はとんでもないクロノグラフがRef.5470Pだ。ベースキャリバーは前回紹介した永久カレンダー・クロノグラフ5270Pと同じ手巻クロノグラフ・ムーブメントCH 29-535である。この名機を素のままナ~ンにも手を加えずに積んだシンプルクロノグラフRef.5170(生産終了)のオーナーとしては秘かに「どうだ!してやったり!」気分なのだ。品番2桁目だけアップしてるのも車格違いを同じ手法で表わす輸入車のようでこそばゆいナァ。しかし、この4番目の弟はとてもかなわないパフォーマンスを持っている。パテック フィリップ初の10振動ムーブメントが採用されて10分の1秒精度でのクロノグラフ計測が可能となったのだ。通常のセンタークロノ秒針(60秒で一周)に加えてセンター同軸で真っ赤な1/10秒針(12秒で一周)がセカセカと廻る。長男格の5170等は現代機械式時計の標準的振動数8振動である。長距離走でこっちがトラックを8回しか周っていない間に一番若い弟5470は10周も走っているわけだ。歩数にして28,800歩と36,000歩の差であり、もうこれは高校総体クラスとオリンピックぐらいの違いがあるという事になる。でもその調子で1日走ると691,200歩と864,000歩となり、その差は172,800歩。1年間ずっと運針すれば、その差は62,899,200となる。機械式時計の心臓である脱進機構(アンクル+ガンギ車)は常に摩擦との戦いに明け暮れている。1秒ではたった1往復2ビート差でも年数を重ねれば大変な負荷となる。プロ野球の先発が100球を目途に降板するのを無制限に投げさせるようなものなのだ。でも毎シーズンオフにトミージョーンズ手術を受けられないように、時計の分解掃除も毎年は現実的じゃないし、そもそもシーズンオフなど無い。
一般的にハイビート(高振動)と言われる機械式時計は、これまでにも沢山発表されてきた。10振動を超えるモデルもいくつかは有ったように思う。しかし、今現在市販可能な量産モデルを実現しているのはゼニスとセイコーしか知らない。前者のあまりにも著名なエンジンであるエルプリメロは1999年迄ロレックスのデイトナに搭載されていた。しかもロレックス社はわざわざ8振動にロービートチューンし、精度よりも耐久性を優先する同社のモノ創りに拘っていた。セイコーは現在グランドセイコーの機械式の大多数のモデルでハイビートを採用しているが、ノーマルの8振動機に較べて定期オーバーホール間隔は、我々の経験で確実に短い様に思う。
さて、パテックの挑戦的ハイビートマシンの耐久性はどうなのか。この答えは最低3年から5年を待たねばわからない。ただ今回の5470は多数の新規特許申請を含む新しいテクノロジーを満載しながらも、パテック独自の《アドバンストリサーチ(前衛的技術を市場で試験してチョーダイ!)》ではなく通常の新製品として発表されている。この同社技術陣の自信は、2011年に《アドバンストリサーチ》モデル年次カレンダーRef.5550P(限定300個)で検証済みの調速機構Oscillomax®(テンプ+脱進機+髭ゼンマイ全てをシリコン製材料でパッケージ)を搭載して、核心エリアの摩擦諸問題解決の目途をつけた事が大きそうだ。
ただ
通常の新製品とは言っても年産数はごく僅かだろう。もちろん価格も時価であり、その予価は片手を超えている。当然500万はあり得ないし、かといって5億は高すぎますので・・。でもこの価格は少々高い様に感じている。キャリバーの部品点数を見てみよう。シンプルクロノグラフ5170が270個、永久カレンダー・クロノグラフ5270はなんと驚きの456個、スプリットセコンド・クロノグラフ5370が意外と少な目312個、そして1/10秒シングルプッシュボタン・クロノグラフ5470が396個。この比較はあまり意味が無さそうだ。恐らく二度組をするグランド・コンプリケーションの中にも生産の難易度と年産数で大きな違いが有り、価格設定も様々なのだと無理やり納得しておこう。でも高い。個人的にはどんなに高くても4000万円ぐらいかと思っていた。甘かった。
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この顔は好みだ。自分で着用するにはいささか若々しすぎて恥ずかしいが、嫌みの全くないストレートなスポーティーウオッチだ。当然だろうがエナメルでもグラデーションでも無い単一色の濃いブルーのニス塗装に、パテックが定番に好んで多用する盛り上がって見えるけれどもダイアルを彫り込んでいるミニットインデックス(ゴールド・パール仕様)。同じくブレゲ数字アプライド仕様の18KWGアワーインデックス。スーパールミノバ塗布のリーフ時分針。スモールセコンド、クロノグラフ30分計と文字盤最外周部の1/10秒の各インデックスはレール(シュマン・ド・フェール)で白くシリコン転写されている。それら全てがオーソドックスでクラシックの極みだが全く古臭くなく何故かフレッシュ。そして白いレール上の時字12ヶ所の赤、超軽量のシリコン製1/10秒クロノグラフ針の赤、6時上の"1/10 SECOND"の赤。これらアクセント・レッドの控えめであるが故の効きの素晴らしさ。ストラップはパテック的最新トレンドのファブリック柄のエンボス加工カーフ。ダイアルと統一の濃い青に手縫いの赤いステッチが、単純だけれどこれまた好もしい組み合わせ。
ケースは一つ上の兄貴?であるスプリットセコンド・クロノグラフ5370Pと同じ形状だ。どちらかと言えばクラシックなスタイルだが、時計全体ではその気配はあまり感じられず10代後半の若者でも似合いそうなモデルだ。そう、そこなんです。この時計の唯一の弱点は見た目と価格のギャップが凄すぎるという事なのだ。
ところでPP公式HPに今年11月7日ジュネーブで開催予定のチャリティーオークション用ユニークピースとして永久カレンダー・クロノグラフRef.5270の初チタンバージョンが掲載発表されていた。文字盤カラーはエメラルドグリーンのソレイユでブラック・グラデーションは無し。これもまたとてつもないハンマープライスになるのだろう。
この伝で行くと今回の5470こそユニークピース向けの外観であり、チタンは勿論だがステンレスが最適素材ではないだろうか。色目は黒か黒に限りなく近いグレー。差し色は赤でもオレンジでもイエローでも・・グリーンだけは止めときましょう。
本題に戻してまとめ。このお気に入りクロノグラフだが、購入を許可されても価格的に買えないし、仮に宝くじが当たっても恐らく買いきれない代物だろう。実際に購入可能と思われる顧客様も価格で躊躇された。グランドマスター・チャイムRef.6300を本気で希望する方もである。現物を見た事が無いと断った上で、かなりの時計上級者でとてつもないパテックコレクターか、総資産額よくわかりませんという超絶セレブの出る物は取り敢えず全部買い。そのあたりしか想像できないが、既に日本でも結構な注文が入っているというから驚く。
取り敢えずカタログモデルなので来春スイス・ジュネーブ、もしくは同年6月東京でのグランド・エキジビションでガラス越しなら見られそうな気はする。出来れば1/10秒針の高速運針と併せて現物を是非一度見てみたいものだ。

Ref.5470P-001: 1/10秒シングルプッシュボタン・クロノグラフ
ケース径:41mm ケース厚:13.68mm ラグ×美錠幅:22×16mm
※サファイヤクリスタル・バックと通常のケースバックが共に付属
防水:3気圧
ケースバリエーション:PT
文字盤:ブルーのニス塗装、ゴールド植字ブレゲ数字インデックス
ストラップ:エンボス加工ファブリック柄のネイビーブルー手縫いカーフスキン 
バックル:PTフォールドオーバークラスプ(Fold-over-clasp)
価格:お問合せください

Caliber CH 29-535 PS 1/10:センター 1/10 秒計測モジュール搭載手巻クロノグラフ・ムーブメント
瞬時運針式30分計、コラムホイール搭載
直径:29.6mm 厚み:6.96mm 部品点数:396個 石数:38個 
パワーリザーブ:最小48時間(クロノグラフ非作動時)
テンプ:ジャイロマックス
振動数:36,000振動

しつこいが後書きを少し。文章を書き起こすのはいつも結構しんどいが、その時計を理解し自分なりの評価をするには一番だと思っている。でも今年の新作は発表時のモニターでの印象と四苦八苦して書き終えた現在の評価はあまり変わっていない。残念な事ながら自分好みの時計は無かった。まあ販売対象顧客層をかなり若く置いている様なのでこれは仕方ない。直感的に40~45歳以下と想像している。ちなみに自宅のタニタの体重計は、我が体内年齢を48歳と嬉しい表示をしてくれるがそれでも追い着かない。また特徴的で大胆な緑色もあくまで個人的には厳しい。しかし従来の長い目で次世代をも睨んでの時計選びだけでは無く、超高額ブランドであっても"旬"を纏うという今シーズン時計の提案もあるのだと思い知らされた。ただパテックの現状では将来の入荷を待っている間に旬が"瞬!"になって仕舞わないかが少々心配ではある。
今年も昨年同様、既にニューモデルの入荷は徐々に始まっている。いつものように撮影が出来れば、その都度実機紹介編を起稿してゆきたい。

文責:乾
画像:パテック フィリップ

※来る6月1日より本年2回目の価格改定が実施されます。急激な円安基調を受けて約10%の値上げとなります。悪しからずご理解・ご了承下さい。

このところ雨が多い。そしてその度に近隣の山々の新緑は濃さを増す。奈良はゆったりとした大きな盆地で低い標高の里山に囲まれているので、目に優しい緑が豊富だ。透過光による明るく若々しい黄緑から、水が滴り落ちるような分厚く光沢感のある艶っぽい深緑色まで、そのバリエーションは本当に豊かだ。そして呼応するようかの様に今年のパテックも昨年に引き続き緑軍団の大行進が続く。
パテックのグリーンカラー採用は、記憶の限りでは18年前の2004年のアクアノート・ルーチェのデビューに遡る。それまでには無かったストラップとダイアルカラーをマッチさせたカラフルな6色のレディス向けダイヤベゼルのステンレスウオッチの一色が少し暗めなオリーブっぽいグリーンカラー(アドベンチャラス・カーキ)だった。
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ベーシックカラーの白、黒、紺はともかく、緑を含めレンガ色と青色は衝撃的でコンサバな自分自身の抵抗感は大きかった。時は移って2019年にメンズ・アクアノートの3針モデルRef.5168にカーキグリーンが新色として追加された。コロナ禍時代に突入し1年経った昨年2021年には、様々な緑色モデル5型が投入されてグリーン王国化が鮮明になった様に思う。そして今年の3月末に追加されたのがメンズとレディスの各2モデル計4モデルだ。以下それらの印象を紹介してゆきたい。

正直なところ、このモデルへのお問い合わせが予想以上に多くて戸惑った。同日発表の12モデルの中でも超高額な2000万円を軽く超えているグランド・コンプリケーションの永久カレンダー・手巻クロノグラフRef.5270P-014。パテックお得意にして代表モデルであるこのダブルコンプリケーションのルーツは1940年代頭まで遡れる。ただエンジンを切り口に辿るとエボーシュ(ヌーベル・レマニア)の供給と決別し、2009年にRef.7071に搭載発表した初の自社開発設計の完全マニュファクチュールの手巻クロノグラフ・ムーブメントCal.CH 29-535系がルーツとなる。そして永久カレンダー機能を付加して初代Ref.5270が2011年に発表された。今年のコスメティックチェンジモデルは2018年に素材追加されたプラチナ製モデルのダイアルとストラップ変更だが、現物はフルモデルチェンジ?ぐらい見た目の印象が異なった。
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比較画像はインデックス形状がほぼ同じである現行のイエローゴールドモデル。最も判り易い新作の特徴はダイアルとストラップのカラーが統一されて見える事だ。実は現物を目の前にしても騙されてしまったが、ストラップは緑では無く黒で、太目の手縫いステッチだけが鮮やかなグリーンである。でも説明が無ければずっと緑色のストラップと思い続けていただろう。げに錯覚とは恐ろしい。実際に緑色に染めれば紫外線での退色などもあるので黒との組み合わせがずっと現実的だ。グリーントレンドは数年経つが、個人的に慣れた感じは無く今作もインパクトは強烈だ。そして文字盤のスポーティーさが新鮮だ。ポイントは3つあって、伝統的に採用されてきたタキメーターやパルスメーター表示を止めてレール状のシェマン・ド・フェールと呼ばれる分インデックスとシンプルな秒インデックスの2重サークルがダイアル最外周部にスッキリ表示された事。これによって3時から9時までのアワーインデックスが現行の極小タイプ(3・9時)やピラミダルな正方形(4・6・7・8時)から視認性が格段に向上した長短交じりのバーインデックスになった。二点目は3・6・9時のサブダイアルに採用されているアラビア数字の書体が少しクラシカルな筆記体からシャープで若々しいゴシック体に変更された点だ。最後は時分針の形状が落ち着いた細めのリーフ(葉)から、しっかりファセットを効かせたエッジィな太目のドフィーヌへと変更されてスポーティーな印象を高めている。繰り返しになるが同じ時計でありながら若々しくとてもスポーティーなニューフェイスと言って良いだろう。価格設定の有るシリーズ生産モデルながらプラチナ素材でもあり年産数はかなり少なそうだ。超高額だがご希望にお答えするのは相当時間が掛かりそうだ。

Ref.5270P-014:永久カレンダー搭載クロノグラフ
ケース径:41mm ケース厚:12.4mm ラグ×美錠幅:21×16mm
※サファイヤクリスタル・バックと通常のケースバックが共に付属
防水:3気圧
ケースバリエーション:PTYGRG
文字盤:ブラック・グラデーションのラック・グリーン、ゴールド植字バーインデックス
ストラップ:手縫いラージスクエア(竹斑)、ブリリアント(艶有)・ブラック・アリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:お問合せください

Caliber CH 29-535 PS Q:永久カレンダー搭載、手巻クロノグラフムーブメント
瞬時運針式30分計、昼夜表示、コラムホイール搭載
直径:32mm 厚み:7mm 部品点数:456個 石数:33個 
パワーリザーブ:最低65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動


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「WEBの画像ではサッパリ良し悪しが判らないので、現物を見たら印象を聞きたい」ご興味を持たれた方から出張前に要望が多かったのがダイアル&ストラップのコスメティックチェンジモデルの年次カレンダーRef.5205R。で、現物はどうか。えっ!ダークグレーですか。というのが第一印象。それくらいこの緑は深い色目。前述の永久クロノ5270もそうだが最近のパテックが多用しているブラック・グラデーションが、この時計には強烈に効いている。物凄く変な言い回しだが、モニター画像とは違う印象なのだけれどモニターで見た通りで間違いない。現物を見てからはそうとしか思えないような気がする。今までのパテックには全く無かった深い深いオリーブグリーン。好き嫌いはありそうで、お若い方には少々渋すぎるかもしれない。枯れ始めた自分には良さげだが、後述の理由で無理っぽい。尚ストラップもパティナ加工なる古色?仕上げにエイジングっぽいステッチが手縫いされており、この時計はかなり上級なコーデを要求されそうだ。チョイ悪のシニアおやじがお洒落な無精ひげを生やして、ダメージ加工のデニムにヨレが多少きた最高級の海島綿製オフホワイトシャツをパンツアウトでさりげなく着る。仕上げはペルソナ製グリーンのサングラスで決まり。間違ってもレイバンはやめた方が良さそうだ。車は縦目のヴィンテージ・メルセデスの出来ればホワイト系のコンバーチブルで・・

Ref.5205R-011:年次カレンダー
ケース径:40.0mm ケース厚:11.36mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RGWG
文字盤:外周に向かって濃くなるブラック・グラデーションのオリーブグリーン・ソレイユ、ファセット仕上げ植字インデックス
ストラップ:手縫いラージスクエア(竹斑)、手作業でパティナ加工を施した2トーン・オリーブグリーン・アリゲーター 
バックル:ピンバックル
価格:お問合せください

Caliber 324 S QA LU 24H/206:自動巻年次カレンダー
直径:32.6mm 厚み:5.78mm 部品点数:356個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)


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パテック的にはこのレディスモデルは、ワールドタイムの括りに分類されている。でも個人的には緑の仲間として今回の紹介としたい。2013年にそれまでのWGモデルへの素材追加として発表されたのがRef.7130R-001。上の画像とウリだがシティリングの都市名が確か2度ほど変更され、その都度枝番が新しくなって2019年の最終形の013番となり今春生産中止。RG素材はそのままにトレンドのグリーンを纏った後継機種が今回の発表モデルだ。青を基調にした既存継続のWG素材モデルRef.7130G-016と同様の色使いでダイアルとストラップがほぼ緑である。昼夜表示リング部のお昼間12時間の半円のみ差し色の白。しかし今作ではストラップにカーフが初採用され手縫いで太目の目立つ白いステッチングがなされている事と、グリーンのほぼ反対色っぽいRGケースでコントラストが効かされている事で、これ迄に見た事の無い全くの新製品の様に仕上がっている。物凄く個性の強さをこの時計に感じるのは、緑という色目のせいだろう。誤解無きように繰り返すが、緑は好きな色目である。でもコーディネートがとても難しいカラーだと思っている。我が親世代には国防色と言われ、世界中で陸軍御用達の定番ミリタリーカラーだ。ハンティング用サファリジャケットもゲームフィッシング用の防水加工オイルドジャケット(英国バーブァ社が代表)もみんな深いグリーンである。緑成す惑星のカモフラージュ用行動服がアースカラーの代表である緑色なのは至極当然だ。自然を想起する癒し系でもあるが、戦いや狩りという非日常的色合いでもあって、自身のワードローブにも登山用を除けばTシャツとネクタイぐらいしかグリーンは無い。時計はだいぶ前にイタリアのカジュアルウオッチ(I.T.A.)を持っていたが、誰かにあげてしまった。そもそも緑文字盤の高級時計の記憶はロレックス、ピアジェ等で半貴石マラカイト(孔雀石)を文字盤に使ったジュエリーウオッチぐらいしか知らず、一般的だという印象が無い。此処数年の緑の大行進はパテック社をはじめグリーンカラーの文字盤着色技術の飛躍によるらしい。いつの時代も目新しい物に人々は飛びつくが、アパレルと違って時計との付き合いは一生になる。次世代への継承も普通に有る。前回のピンクよりもずっと、そして次回紹介予定のブルーよりもはるかに個性際立つカラーとしてじっくり検討すべき色目だろう。

Ref.7130R-014
ケース径:36mm ケース厚:8.83mm
※62個のダイヤ付ベゼル(約0.85カラット) 
ラグ×美錠幅:18×14mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:RGWG
文字盤:18金文字盤、オリーブグリーン(中央部に手仕上げギヨシェ装飾)、ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント・オリーブグリーン手縫いカーフスキン
バックル:18金RGピンバックル ※27個のダイヤ付(約0.21カラット)
価格:お問い合わせください

Caliber 240 HU:自動巻ワールドタイム
直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:239個 石数:33個 
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

4910_1200a-011.png
緑の4本目、気分はもうほとんど青虫だ。レディスコレクションのエントリーモデルと言うべきSS+クォーツの傑作定番トゥエンティフォー第2世代のダイアルカラー追加モデルとなる。1999年に全くのニューモデルとして現代女性が24時間を共に過ごすデイリーウォッチをコンセプトに発表されたレディス市場への切込み隊長的存在だった。今日、その役目は自動巻でカレンダーを備えた視認性抜群のより実用的な新しいトゥエンティフォーRef.7300がになっている。それでも旬の緑色を追加展開するのは、より求めやすい価格帯に加えてリューズ操作を嫌う女性が少なからずいるからだろうか。
実機サンプルの印象だが、この時計もかなり文字盤の色目はダークだ。個人的には上で紹介済の年次カレンダーRef.5205R-011とペア?と思ったほど深いグリーン。この時計こそモニター画像との色の乖離がかなりある様におもう。妹分?の7300に咋春文字盤追加されたオリーブグリーンと同色で、モニターの比較でも当然同じ色に見えるが、現物は全く違う(ように見える)。"同床異夢"ならぬ"同色異見"なんて熟語は無いが、文字盤の形状・面積・インデックス等々が引き起こすいたずらが時としてある。素材が若々しさを感じさせるステンレスなので芽吹きを思わせるもう少し明るめの緑に見えた方が、このマンシェットスタイルの時計には似つかわしい気もするが、どうだろう。もちろん落ち着いた品格を求めるマネージメント職にあるキャリアウーマン(今時死語ですか?)には相性抜群かもしれない。

Ref.4910/1200A-011
ケース径:25.1×30mm ケース厚:6.8mm
※36個のダイヤ付ベゼル(約0.42カラット)防水:3気圧
ケースバリエーション:SS(別途001010)、RG
文字盤:オリーブグリーン・ソレイユ、夜光付ゴールド植字インデックス
価格:お問い合わせください

E 15:クォーツ
直径:15×13mm 厚み:1.8mm 部品点数:57個 石数:6個 
電池寿命:約3年

PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅳ No.4
文責:乾 画像:パテック フィリップ

追記:次回は、ピカソじゃないけど"青の時代"5作品で新作は最終回としたいナァ・・




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