最近、シンプルなメンズカラトラバが店頭に並ぶ事が無くなった。数年前までは考えられなかった現象だ。原因は幾つかある。まずシンプルカラトラバの"顔"と言うべき代表モデルRef.5119、5153、5296が2019年にごっそり生産中止になり、その後継モデルが発表されていない事で現在のカラトラバの選択肢は、同シリーズのマイルストーン的な手巻スモールセコンドの通称"クンロク"Ref.5196、または自動巻センターセコンド・カレンダーを裏蓋ハンターケースに搭載したRef.5227のたったの2モデル7本しかなく、ほぼ絶滅危惧種の感すらある。
ノーチラスとアクアノートの需給バランスの崩れ方も加速度的に酷くなっているが、呼応するようにパテック フィリップのブランド全体の価値そのものが上がってきている様に思われる。新型コロナ禍の様な社会不安が安全でしっかりした価値の裏付けを有す高級な時計や車に投資先を見失った手元資金が集中的に向かっているような気がする。パテックやロレックスのスポーツ系のモデル、フェラーリやポルシェの特に"役モノ"と言われる特別な車がその具体的な受け皿の様だ。
そして、最近増えて来たのが将来のノーチラスやアクアノート購入の為にパテックの購入実績が有った方が望ましいとの想定で、その取っ掛かりモデルとしてシンプルなカラトラバを希望される方が徐々に増えているのも店頭在庫を幻にしてゆく原因の一つだ。
個人的には2020年の新製品にはきっとシンプルな自動巻の3針カレンダーモデルRef.5296の後継機が用意されていたのではと予想していたが、新型コロナに水を差されて今春へと答え合わせは持ち越しとなってしまった。
そんなこんなで今やノーチ&アクアに次ぐレアシリーズとなったメンズカラトラバ。で本日のご紹介は過去にもローズゴールドでは紹介済みながら素材と文字盤の違いで"此処まで違うモデルに見えるんかい!"というパテックには時々見られる同床異夢?モデルのRef.5227G-010。

画像ではこの時計文字盤の放つ艶っぽさは、残念ながら殆ど感じられない。それでも画像修正は相当やっていて単純な撮影だけではこの画像にはならない。この経験をすると雑誌やWEBでプロカメラマンが提供している画像が、どれほど工夫されて撮られて、いかほどに執念深い修正がなされているかが伺い知れる。
このダイアルは一般的なラッカー仕上げなのだけれどひょっとすると最近のパテックの本黒七宝文字盤よりツルピカ度合いは強いかもしれない。実物はそれほど魅力的なオーラを放っている。
実は5227のファーストインプレッションはあまり良いものでは無く、凝ったケースの形状と仕組みで積み上がった価格に割高感を感じていた。2013年初出の5227は現在も継続しているYG、RGに加えてシルバー系のダイアルのWGの3モデルでスタートした。2年後の2015年にWGに今回紹介の黒文字盤タイプが追加され、2019年のカラトラバ大量ディスコン発表時にシルバー系ダイアルWGも鬼籍に入ってしまった。
2015年の夏に当店で開催した『パテック フィリップ展』でその年にデビューしたWG黒文字盤の展示サンプルを見ていて、何とも言えない大人の色気の漂いにすっかり悩殺され、それまでの5227感が激変されてしまった。

ケース形状は特徴的だ。逆ぞりのベゼルにケースサイドからラグにかけての大胆な掘り込み。これらはグランド・コンプリケーションやコンプリケーションのどちらかと言うと前衛的なモデルに好んで採用されるデザインで、見た目がこれほどシンプルな時計に施される事は珍しい。ただ見た目は"シュと!"していても実に巧妙なハンター構造が仕込まれていてダイアル正面からでは全くその存在が判らない。9時側ケースサイド(上画像)からは小さいインビジブル(見えない)ヒンジ(蝶番)を確認する事が出来る。尚、この時計は現社長のティエリー・スターンが開発を主導し、実父の現名誉会長のフィリップ・スターンが初めて見た時に"すぐにはハンター構造に気づけなかった"と言う逸話がある。

見た目涼やかで、押出しも強くないが手間暇とコストがコッソリ、ゴッソリ掛かっていて、前衛的と言うよりも挑戦的でギミックが効いたいぶし銀の様な趣を持つ5227。現在のメンズパテックのカタログモデルは一部の例外を除いて殆どが裏スケルトン仕様となっている。それをわざわざ手を掛けてハンター仕様にするのは趣味性以外の何ものでもないが、高級機械式腕時計が今や趣味趣向、拘りに裏打ちされたステータスなアイテムなのだからこの遊び心はアリなのだ。しかし、カラトラバ同様にハンターケースモデルも激減していて今や永久カレンダーRef.5160/500との2モデルになってしまった。こちらも絶滅危惧種と言える。

上の画像でリューズのすぐ右にハンターケースの裏蓋を開ける為の出っ張りがある。裏蓋の仕上げは数少ないノーマルケースバック仕様を採用するゴールデン・エリプスと同様に縦方向の筋目仕上げが施されている。逆に開いたケースバックの内側は刻印一つない完璧な鏡面仕上げでバニティミラーとして充分使用可能なクオリティーだ。
個人所有の愛用時計の素材バリエーションはPT、RG、YG、SS、チタンそして樹脂(カシオ)も・・何故かWGだけ欠けている。リシャールやウブロのサファイアクリスタルケースなんてのはとても手が届きませんが、WGなら5227Gが有力候補である事は間違いない。
Ref.5227G-010
ケース径:39mm ケース厚:9.24mm ラグ×美錠幅:19×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:、WGの他にRG、YG
文字盤:ラック・ブラック ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有)ブラックのハンドステッチ・アリゲーター
価格:お問い合わせください
Caliber 324 S C
直径:27.0mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個 受け:6枚
パワーリザーブ:最小35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、ムーブについての過去記事はコチラから
文責 撮影:乾 画像修正:藤本
決して前回記事の続編ではない。あまりにも蜘蛛の糸が短すぎたのか。一気に極楽浄土への扉の取っ手を掴んでしまった。6月20日にPPJに申請をして、七夕の7月7日に出荷された異例尽くしのカラトラバSS限定モデル。天国よりは近そうな天の川から来たにしても呆れるほど早い。モダンな顔した特別モデルにはワープ機能が備わっていた様だ。
当店に始めてやって来る時計は、検品前に先ず撮影をする。理由は汚れ(微細な埃)がほぼ無い最高のコンディションだからだ。前にも触れたが、PPJはかなり前から日本着荷時点の検品を取り止めている。理由は初期不良率が限りなくゼロであって、むしろ検品時にキズ等の瑕疵を発生させるリスクの方が優るからと聞いている。結果、スイスパテック社で出荷検品後に真空パックされたタイムピース達は国内30店舗の着荷時まで無菌?最低埃レベルが保たれている訳だ。
これは何を意味するかというと今回の様な限定モデルの場合、PPJのスタッフですらプロトサンプルではない最終形の販売用実機を生では見ていないと言う事になるはずだ。勿論、当店が国内第一号入荷では無いと思うので、もう既に何人かの正規販売員と強運のVIP顧客様がご覧になられている事はお断りしておく。

前回のネット画像情報のみでの印象は、あくまでも個人的見解として少々懐疑的と表明した。しかし実機を前にしてこの予測は見事に裏切られてしまった。この時計の紹介はかなり難しい。その理由は後述してゆくが各部をパート毎に見てゆくと「はて?」と首を傾けざるを得ない思いが強い。ところが全体を総合的に見た時にバランスが取れていてデザインの完成度が高く感じさせられてしまう不可思議さが、パテックらしくないこの時計にはある。

バックルは定番のピンバックルSSなので特に説明はない。文字盤やケース、ムーブメントを飛ばして脇役とも言えそうな画像を持ち出したのは、この限定モデルの最大の特徴と言えそうな風変わりなストラップを、ぐぐっと寄りで見て頂きたかったからだ。
textileとfabricという英語はいずれも繊維を意味するが、前者が加工前の素材を後者が加工後の製品状態を表わすと初めて知った。その伝でゆくとザックリと平織されたテキスタイルを加工してこのファブリック製のストラップは作られたとなる。誰もがそう思ってしまうだろう。でもこれは物凄く良く出来たgimmickだ。ギミックの日本語訳はしっくりする言葉があまり無く『仕掛け、トリック、からくり』等が検索されるが、個人的にもギミック以外に適当な表現が、エッシャーのだまし絵の様なこの型押しカーフストラップには見い出せない。カーフ表皮にアリゲーターの文様が型押しされたなんちゃってストラップは、とうの昔に市民権を得ているので、それはギミック(だまし)では無くフェイク(模倣、模造)と呼びたい。因みにRさんに多い(しょっちゅう見ている様な気がするが)決して見た事の無い時計はコピー(偽物)と言う。
言葉遊びはこの辺りで止して、画像上はまさかの型押し?(パテック的にはエンボス)と見える。実際に起稿しながら今一度金庫から現物を出して子細にキズミで再確認せざるを得なかった。画像より実機の方がだまされ感は若干弱いが、予備知識なしの初見では誰もが化かされてしまうくらい、このキツネは凄い。
しかしこの色目には既視感が有る。前世代のメモリーしか搭載されていないオツムゆえ引き出しの数も数える程しかないが、色目の既視感が直球過ぎて間髪置かずに、ブルージーン或いはヴェールボスフォールと呼ばれるエルメスがお得意にしている青系カーフレザーの近似色ではないかとの曲解に至る。さらに白く太目なステッチが1.5mm弱の巾で粗目に施されている為に、単純迷?解な頭の中はもうHERMÈS、HERMÈS・・となってしまった。
もうこうなると何でもかんでもブランディングせずに済まされなくなってしまう。まっ、チョッとブランディングの意味は取り違えているのだが・・で、これまた何処かで見た顔ではないか?いや、何処かで絶対見ているはずだ!となってしまう。どうです、見えてきましたか?そう、そうなんですよ、"L"で始まるブランドの"T"で始まるアレですョ。
ブランドとそのアイコン、パテックでは例えばノーチラス、ルイヴィトンだと例えばモノグラム、エルメスなら例えばバーキン、それらの事である。そしてそれらの所有スタイルは乱暴に言って、完全に2種族に分類される。実に判り易いメジャーなアイコン種族は、何を所有しており、その価値も出来るだけ沢山の人々に確実に認知される事を希望しているコスパ意識が高い方々で構成されている。数的には圧倒的にマイナーな少数民族であるアンチアイコン種族は真逆であって、非常にニッチな限られたごく少数の同類、極端な例では自分しかその価値が判らないという時計やカバンを好む複雑な思考回路を持っている方々と言えよう。筆者がいづれに属するかはご想像にお任せする。
閑話休題、文字盤の色についてもう少しだけ見てゆきたい。時計を横置きした画像と文字盤に迫った直上の画像で随分と色目の違いを感じる。これは完全にライティングの差でしか無い。このブルーカラーは一見爽やかで若々しさが強調された色目なのだが、快晴の太陽光や色温度の高い蛍光灯の下ではその本来持っている青色の特性をしっかり発揮する。ところが一方でホテルのロビーやレストラン等の色温度が低く低照度の下では少し妖しさを漂わせた艶っぽい藍色の顔がちらついてくる。お日様の似合う健康的な昼の顔だけでは無く、それなりに大人のお付き合いもさせて頂きますというから驚いた。個人的にはこの時計の最大の魅力ではないかと思う。まるでカメレオンの様な二面性を隠し持つ不思議なタイムピースだ。
話を少し脱線させるがこの限定モデル、そのままダウンサイジングしてレディスモデルに仕立てたら滅茶滅茶売れそうな気がする。ケース径35mmくらい、素材は18金WGでベゼルにダイアを纏わせてやる。物凄く良い感じに仕上がりそうだ。

紛れもなく6000系のサイドビュー。厚さは9.07mm(サファイアクリスタル・ガラス~ケースバック)で2020春生産中止となった6006Gの8.86mmより僅か0.2mm程厚い。ところが搭載されるムーブメント厚は限定6007がセンターフルローターCal.324 S Cで3.3mm、6006GのマイクロローターCal.240 PS Cは3.43mmである。Cal.240は本来マイクロローターの恩恵でパテックを代表する極薄自動巻銘キャリバーで2針の素(す)の状態では2.53mmしか厚みが無いが、スモールセコンドやポインターデイト・カレンダー等の付加機能モジュールが盛り込むれて若干厚みが出ている。それにしても薄いムーブなのに、最終のケース厚が出る6007。理由として考えられるのは文字盤の違いか。6006はセンター3針✚オフセンターの小秒針の構成で、全くのフラットダイアルにインデックス等のディスプレイは全て薄く仕上がるシリコン転写プリント。対して限定6007はセンター3針ながら、ダイアルは再外周部に秒インデックス、その内側に厚みの出るアラビア数字アワーインデックスが植字され、さらに逆三角形のインデックスが細いレールに並べられたアワーサークルが来るダブルアワー表示が来て、さらにその内側文字盤センターにカーボン調の凸凹なテクスチャーが来る4つの同心円から構成されており、それぞれのサークルに微妙な高低差が見られる。この辺りに厚みの答えが有りそうだが、良くは判らない。
尚、時計本体重量は58gで標準的なピンバックル18金モデルよりも20~25gは軽い。昨年カラトラバ・ウィークリー・カレンダー5212AがSSの定番モデルでラインナップされてはいるが、パテックの非スポーツ系のSSモデルが稀な為、手に取った際に感じる驚かされる軽さのインパクトが、初見時に普通は優先する視覚を凌駕してしまう稀有なパテックだ。

あちゃー!久々にやってしまいました。何とも締まりのない画像。原因はモチベーション不足。最近はおうちでしっかり寝るしかないので寝不足は関係ありません。
またぞろ個人の好悪を枕詞とお断りした上で、この後ろ姿は頂けません。まず裏スケじゃなくてノーマルバックにした方が好ましかった。この限定を手に出来る最上級顧客は誰もがCal.324のスケルトンバック仕様モデルを数本は持っているはずなので、白い特別装飾で中途半端に隠されてしまったムーブメントが可哀そうですらある。逆もまた真なりで21金製のフルローター始めムーブメント構成部品が、白い特別装飾を読み取り辛くしている。"一粒で二度美味しい"では無くて、二粒で互いの味を相殺してしまっている。私見ながらポリッシュ仕上げのSS製ノーマルケースバックを採用してもう少し控えめなサイズで梨地サテンフィニッシュによる刻印装飾あたりが妥当な選択だったように思える。さらに言えば顧客にとって普段それほどなじみの無い工場に起因した限定モデルなので、少々大振りなカラトラバ十字に変えて2006年のジュネーブ・サロン改装記念限定モデルのように建築物(PP6)をデフォルメしたイラストのエングレーブにしておいた方が良かったのではないか。
本日の重箱はスミがやたらと多い様で、さらに根掘り葉掘りは続く。一見この装飾は天地がキッチリ12時-6時に垂直を通してあるように見える。しかし6000系の裏蓋はスナッチ(スナップとも)では無くてスクリューバック方式の為に10角形は天地キッチリとはまずならない。それどころかメンテナンスで開閉を繰り返すたびに微妙にその位置はずれてしまう。実際この実機も特別装飾と10角形の垂線はシンクロしていない。さらに家政婦が見るが如く眼力を上げてゆくと、納品時点でほんの僅か時計回り方向に0.2度ほど装飾がずれている。この何ともイケてない装飾工程を想像するに
①一旦スクリューケースバック(裏蓋)をミドルケースに閉めてみる
②垂線を意識した何らかのマーキングを裏蓋に施してから一旦外す
③マーキングで位置決めした裏蓋の内側に装飾を転写?する
④再度、裏蓋を閉めて、マーキングを消して、終わり
ところが最後に閉め直す段で、微妙に増し締め気味になって時計回り側にズレが出たという想像だ。
パテックのスクリューケースバック構造は、ほぼ全てが日常生活防水に過ぎない。6000系リファレンスのケース構造に拘らなければ普通にスナッチ構造を採用していれば裏蓋装飾の垂直性は容易に達成できたはずだ。それともPP6繋がりで6000系採用だったのか?いづれにせよスクリューバックに拘るのであれば10角形と特別意匠の垂線の二者をキッチリ合わせて、敢えて45度位は斜めに閉められている方が私的にはスッキリする。
長くなるがもう一つ方法があって、王者パテック的にはどうかと思いつつも、ここはもうギミックついでに見た目スクリューバック裏蓋にして実は巧妙なスナッチにする手が有る。こうすれば意匠と10角形とミドルケースの全3者ての垂線がシンクロする。これなら時計通が初見して意表を突かれ、初心者には何の事やらさっぱり気付けない。究極のだまし絵タイムピースが完成していたはずだ。
"ATTESTATION"とは英語で『証書、証明‥』の意味。過去5年の当店パテック取扱いの中で唯一の限定モデルであったノーチラス発売40周年記念限定にも発行添付されてきた。でも書体が微妙に異なったり、ノーチの時は非常に特徴的で美しかったブルーダイアルに因んで、カラトラバ十字、品番やキャリバー名がシックでメタリックな濃青色で箔押しされていた。今回は全身が青を纏っているのに金色での箔押しとなっている。また前回は無かったジュネーブ・サロン(本店ブティック)イラストが薄く背景に敷かれている。なぜかここもPP6では無い。さらに今回はご購入者名前(画像はフェイク修正済)も印字されている。保証書のように連続画一的では無くて、不定期で間隔の開いてしまうアテステーションにはアレンジがなされるようである。
そろそろ、まとめにかかりたい。記事の大半が懐疑心と猜疑心のパレードようになってしまった。しかし、冒頭でも書いたように、この時計は部分で見てはいけない。さらに見方を誤ると超有名2大ブランドのハイブリッドウォッチの気配すら漂ってきてしまう。一度その先入観に捕らわれてしまうと拭い去る事が、困難かつ厄介で始末に悪い。ギミックフルでトレンドセッターブランドの既視感満載、パテックらしさほぼ皆無?作ちゃった感が凄すぎて、自分自身の持つパテックワールドの概念に収まらない、今日的で意欲的かつ挑戦的なヤバイ一本と言えそうだ。
撮影から起稿を通して、穴の開くほど実機を見倒した。「意外と思ったより良いじゃないか」「でもなんか違うナ」「コレクションとしては悪くないぞ、資産価値もタップリ有って」「でも、着用はこっぱずかしくて、チョッと・・」これだけ延々と自問自答を繰り返した時計も過去珍しい。やっぱりヤバイ一本だ。
Ref.6007A-001 ニュースリリース(日本語)
ケース径:40mm ケース厚:9.07mm(サファイアクリスタル・ガラス~ケースバック)
※カラトラバ十字と《New Manufacture 2019》と装飾されたサファイアクリスタル・バック
ラグ巾:22mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:SSのみ
文字盤:真鍮製 ブルーグレー 中央にカーボン模様の浮出し装飾 夜光塗料塗布の18金植字アラビアインデックス
針:夜光塗料塗布の18金バトン形状の白ラッカー着色時分針 白塗装ブロンズ製秒針
ストラップ:ブルーグレー 織物模様がエンボス加工された装飾ステッチ入りカーフスキン
Caliber 324 S C.
センターローター自動巻 センター3針(時分秒) 3時位置窓表示カレンダー
直径:27.0mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個 受け:6枚
パワーリザーブ:最小35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製) 髭持ち:可動式
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
価格:お問い合わせください。
文責、撮影:乾 画像修正:藤本
今年は何もかも異例尽くしだ。見送られていた2020NEW MODELが6月18日にPPJからファックスでやってきて、詳細は公式HPを参考とあって、その結果"来た!見た!驚いた!"と腰を抜かしそうになった。それでなくとも"だまし、だまし"の腰痛爆弾を抱える老体なれば、心尽くしとは言わぬが心配りぐらいの発表プロローグは欲しかった。

※他の商品画像はPP公式HPでご覧ください
何となく想像していたのは、今春に一旦自粛されたスイス・パテック社発信の公式インスタの公開再開タイミングでのニューモデル発表。実際6月19日(ブランド創業1839年に因み毎月18日スイス時間の18:39にUP)には6007Aをトピックスにしてインスタアップされていたので、これは予想通りではあった。もしかするとこの段取りで毎月同じタイミングでチョットづつ小出しに新製品発表をするのだろうか。それはそれでエキサイティングで楽しみではある。
そして、予想通りお問い合わせの嵐が怒涛のようにやってきて、今度は足をすくわれて溺れそうになる。現在の世界に於ける日本のマーケットシェアは5~10%と想像されるが、その割に今回のカラトラバSS限定Ref.6007A-001の日本入荷予定本数は非常に厳しく、その理由も不明らしい。結果として各正規店の最重要顧客(ベスト ロイヤル カスタマーとでも言えようか)のご要望が優先されそうだが、どの辺りがカットラインになるかは視界不良にして五里霧中という状況の様だ。実機撮影のチャンスも犍陀多(かんだた)になったつもりで蜘蛛の糸を登るが如しである。
一見、限定数1,000本はパテックとしては少なすぎるという事は無さそうだが、記事を書き進める中でまたしても、ああでもない、こうでもない、ひょっとして・・などど千路に乱れる妄想が湧き上がってくるので少しお付き合い願いたい。そもそもこの限定モデルは、2015年から建築が進められていた6番目の生産拠点となる最新工場"PP6"の完成竣工を祝って発表されたものである。サファイアクリスタルのケースバックにある2019は昨年中に既に一部の部署が移転し業務を開始していた為である。勿論コロナ禍が無ければ、4月には新工場のお披露目イベントが開催予定だったので、その際に発表されていた事は想像に難くない。ところでパテックはフィリップ・スターン時代に2度同様のストーリーを持った限定モデルを発表している。

まず最初が1997年にジュネーブ郊外のプラン・レ・ワット村に社運を掛けて竣工させた新本社工場の落成記念モデル3部作だった。上画像のパゴダ(男女各1モデル)とミニット・リピーターである。これらの紹介は過去記事よりご覧下さい。此処で興味深いのはステンレスモデルが全く無い事である。逆に今回はステンレスしかない。パゴダは上の画像以外にも素材のバリエーション等が有って、全てを合計すれば2750本という事になって今回の3倍弱という随分大盤振る舞いがなされた。当時のフィリップ・スターンが新工場構想にかけた想いの強さがうかがえる。当時と現在を比較すれば、年産数もかなり増えているが、パテックの顧客の増え方はその比ではない。そう考えれば今日の1000本限定数は相対比較をすれば凄く稀少と言える。一方、プラチナ製リピーター5029のたった10本(YGとPGも各10本)なんて直営ブティックでファミリーにごく近い雲上顧客に配給販売されたのだろう。でも、今回はそんな特殊なモデルも無い。異例尽くしと言わずしてなんと表現したら良いのか。
2番目の記念モデルは、1953年から様々な運用をし続けてきたジュネーブ・ローヌ通りのブランドの本丸とも言えるサロン(直営ブティック)を2年の歳月を掛けて2006年に全面改築がなされた際に発表された下の2モデルである。

記憶違いでなければ合計400本のこれらの限定モデルは、その出自からしてパテック直営のジュネーブサロンのみでの販売であったように思う。ただ(ご本人曰く)ブランドへの貢献度合いの高かったごく一部のパテック社スタッフにも授与では無いが購入が許可されたので、5565Aは時々間近で拝見している。今現在ならいざ知らず、当時に於いて、これは役得だったのか、拒絶不可能な義務だったのかは判断に苦しむところである。
今回の6007Aは過去のコレクションにデザインアーカイブが有るわけではなく、見た事もなく、馴染もなく、個人的にはおよそパテックらしからぬ顔と受け止めていたが、上画像左の5565Aと現行ラインナップからドロップ中のカラトラバ6000系を足して2で割って、さらにこれまで全く採用されてこなかった最近のスイス時計トレンドである"テキスタイル"の切り口をパテック風に解釈しました。ということかもしれない。ただある顧客様曰く
「カーフストラップにテキスタイルパターンを型押しする手法は、既にIWCが実装済みであり、見た目は織物にしか見えないが実際の触感は紛れもなく"皮革"だった」というご意見が有った。
ダイアルセンターのカーボン・パターン装飾もパターンに過ぎず、ギミックが詰め込まれているという点は、知りうる限りパテックの全く新しいアプローチとなる。ただ資産価値を無視して単純かつ純粋に時計として見た場合、かなり評価や好き嫌いは分かれる時計だろう。精神的にはともかくも年齢的に還暦を迎えた自分自身的にはこの時計を腕に巻きたい誘惑は全く無い。IWC云々の顧客様も含め相当数のブランドに渡って、幅広く時計収集されている方にこの傾向は強い。
また自身の計算違いか誤解であってほしいのだが価格設定が微妙なのである。比較すべきモデルは、昨年ディスコンになったカラトラバRef.5296。全く同じエンジンを積む3針センターセコンド・シンプルカレンダー自動巻でピンバックル仕様の18金素材モデル。ところがステンレスの限定6007Aの方が少し高いのである。またエンジンは異なるがデザインソースらしい今年のディスコンモデルRef.6006Gとの比較では、6007Aが10%ほど安いのだが、アリゲーターストラップ+WG製フォールディングバックル仕様の6006Gに対して、カーフストラップ+SS製ピンバックルの6007A。これらを足したり引いたりするとSSの6007A限定モデルはやはりチョッと割高になってしまう。限定だから大目に見て、目くじら立てずにマスクで隠して!と言われても1ロット1000本というのは、パテックの各リファレンスに於いて年産本数のマキシマムに近似と思われ、特別に小ロットとも思い難い。資料を見る限り、この限定モデルにはいわゆる限定シリアルナンバーの刻印が無い事もケースの加工・管理という点でコストが省かれており少し気になる。
重箱と老婆心はさておいて、パテック フィリップの顧客層はこの10数年で非常に若くなったと言われている。実際、当店でも30代前半のカスタマーもニューゲストも増えてきている。この方達には今回の6007Aは直球ド真ん中でノックアウトだろう。この若く新しいニューカマーに対して「しっかり頑張ってパテックを収集する事で、いつかこんな特別モデルを手にしてください」というメッセージがこの特殊なカラトラバには込められているのではないか。勿論、既にコレクションを充実させている若きロイヤルカスタマーにとっては、目の前にある、手を伸ばせば届く現実的な"夢"である。
今は、どうか蜘蛛の糸が切れずに「酒が旨くて♪、ネーちゃんが綺麗な♪♪」天国の撮影スタジオまで登り切れる事を願うばかりである。
Ref.6007A-001 ニュースリリース(日本語)
ケース径:40mm ケース厚:9.07mm(サファイアクリスタル・ガラス~ケースバック)
※カラトラバ十字と《New Manufacture 2019》と装飾されたサファイアクリスタル・バック
ラグ巾:22mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:SSのみ
文字盤:真鍮製 ブルーグレー 中央にカーボン模様の浮出し装飾 夜光塗料塗布の18金植字アラビアインデックス
針:夜光塗料塗布の18金バトン形状の白ラッカー着色時分針 白塗装ブロンズ製秒針
ストラップ:ブルーグレー 織物模様がエンボス加工された装飾ステッチ入りカーフスキン
Caliber 324 S C.
センターローター自動巻 センター3針(時分秒) 3時位置窓表示カレンダー
直径:27.0mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個 受け:6枚
パワーリザーブ:最小35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製) 髭持ち:可動式
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
価格:お問い合わせください。
PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅰ No.2
文責:乾

今月はユニークなレアモデルが連続で入荷してくる。前回の年次カレンダーレギュレーターRef.5235と同様に展示会サンプルが無い(来た事が無い)手巻きカラトラバのクンロクケースのRef.5196P。モデル的にはパテックを代表するシンプルウオッチの極みでどちらの正規店でも最低一本は何色かの18金モデルが並んでいるド定番。ところがプラチナは製造数が極めて少ないらしく入荷予定が全く読めないレアモデルとなっている。
上の画像でリーフ針とブレゲスタイルのアラビアインデックス、さらにベゼルもほぼ黒に見合える。だが、ラグを見るとケースはポリッシュ仕上げされており撮影時にブラックアウトしたものと判る。

角度を変えて実機に迫って撮るとブラックアウトするもののだいぶ印象は変わる。ともかくこの仕様は撮影が困難なので実機を見るに限るが、殆ど並ばないので今は"チャンス!"
6時の真下にはケースにラウンドダイアモンドがプラチナ製である証として埋め込まれている。これは現会長のフィリップ・スターン氏が1970年代にご自分のプラチナウオッチにカスタムで埋め込んだものが社内で評判になり標準仕様となったものである。
さて、この少しノスタルジックな文字盤は完全な復刻デザインである。カラトラバ初号機Ref.96がリリースされた1932年のわずか6年後の1938年から1960年代にかけて長く製造されたRef.570の40年代の代表的な文字盤だったようだ。

右のプラチナ製は1992年にパテック社によって文字盤交換されているミュージアムピースで、針もインデックスも18金製で極めて現行の5196に近い。それもそのはずで注釈に2004年バーゼルでのRef.5196デビューの際の原型と説明されている。機械は当時の手巻きCal.12'''-120。厚さ4mm、直径26.75mm。現行のCal.215と比べると1.45mm厚く、4.85mmも大きいがケース径は35~36mmとわずかに小さい。厚みは現代の方が若干薄い。まあ当時は薄く小さくを心掛けたムーブを素直に頃合いのケースで包み込んでいた時代だったと思われる。今気づいたが1940年代初頭と言うのは第二次世界大戦の戦時下である。アラビアインデックスの採用には影響が有ったのかもしれない。

久々に撮るソリッドな裏蓋。現行のほぼすべての機械式モデルが裏スケルトン仕様であるパテックコレクションの中で、正に希少なノーマルケースバックモデル。今年40周年のアニバーサリーイヤーを迎えたゴールデンエリプスの定番2型(RGとPT)とこちらの5196のみの特別仕様?になっている。
僅かに空気が入ったかのような保護シールもスケルトンモデルには無い特別感?が・・・
ラグの裏4か所には、下のピンバックル裏側と共にPT950のホールマーク等がしっかり刻印されている。

イエローゴールドモデル紹介時にも撮ったサイドビューを再撮影。個人的には最もパテックを代表する優美なフォルムだと思っている。リューズ左下側の不自然な修正はフォトショギブアップしました。修行の一環と言う事で・・

18金モデルのバーインデックスに較べてアラビアインデックス+2トーンカラーダイアルの組合せは上品やエレガントと言うよりも遊び心が有って個性的である。それを敢えてプラチナケースでやると言うのがパテックの余裕。決して万人受けするモデルでは無いと思うが、一目惚れの人には堪らない魅力を感じさせる一本に違いない。
Ref.5196P-001
ケース径:37mm ケース厚:7.68mm ラグ×美錠幅:21×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:PTの他にYG,WG,RG,
文字盤:ツートーンシルバリィグレイ ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター
価格:お問い合わせください
Caliber:215 PS
ムーブメントはパテックを代表する手巻キャリバー215PS。構成部品たった130個の完全熟成の名機に2006年に発表されたシリコン系素材Silinvar®「シリンバー」採用の革新的なSpiromax®スピロマックスひげゼンマイが搭載されたことで耐磁性と耐衝撃性が格段に向上している。まさにパテック フィリップの哲学"伝統と革新"を体現した頼もしいエンジンである。
直径:21.9mm 厚み:2.55mm 部品点数:130個 石数:18個 パワーリザーブ:44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
PATEK PHILIPPE 公式ページ
文責:乾
2018年5月20日現在
YG 5196J-001 店頭在庫有ります
WG 5196G-001 お問い合わせください
RG 5196R-001 お問い合わせください
PT 5196P-001 店頭在庫有ります
全国のパテック フィリップ正規店で開催されている年数回の展示会。皆様も足を運ばれている事と思う。いつもはどの店頭にも20~30点程度の在庫陳列が、この時はパテック フィリップ ジャパン(PPJ)からの貸出サンプルで、多ければ時計だけで70点以上の展示にもなる。
ところが絶対に並ばないモデルがあって、いわゆるP.O.R.(Price on riquest:価格はお問い合わせください)要するに"時価"モデルは並ばない。そもそもPPJにもサンプルそのものが無い。たぶんスイスパテック社には何セットか知らないが用意されていて普段はジュネーブのローヌ通りの本店サロンでなら場合(人?)によっては見られるのだろう。
一般的に展示会で見られないモデルと言うのは簡単に買えない。少し嫌な言い方をすれば、誰にでも売ってくれない特殊な時計と言える。縁が無いので良くは知らないが、車ではロールスロイス、ブガッティ、マクラーレン、ランボルギーニ、フェラーリ、ポルシェ等でも一部の特殊なモデルはいきなりは買えないと聞く。

ところでパテック以外にこのような販売制限をしている時計ブランドは他にあるだろうか。
普通にカタログに載っていて、数量限定でもなく買えない時計・・需給バランスの崩れからグレーマーケットでプレミアがつくノーチラスSSやデイトナの様な代物という訳でもなく・・在りそうで思い当たらない。
2018年の新製品記事でも紹介したレアハンドクラフト(希少な手仕事作品)群も普通には買えないのだが、これらは元々カタログアップされないし、通称ワンショット(超少数の生産数を作り切って、また翌年新たに提案)なので、少し性格が異なる。
さて、それではカタログに掲載されていて価格が明記されているモデルなら誰にでも買えるか?ごく一部の例外を除けば買える。今現在の例外とはRef.5131/1P-001ワールドタイムプラチナブレス・クロワゾネで購入は相当難しい。それ以外は人気度合いでいきなりだと厳しかったり、各販売店がVIP顧客のご要望を消化し切れずに結果として一見のお客様にはハードルが高くなっているモデルもある。でも、たったの数点にすぎないと思う。

今日はずいぶんと前置きが長くなってしまった。今回ご紹介のRef.5235G-001は上記のような各諸事情により買いにくいのではなくて、単純に入荷が極端に少ないモデルだ。当店でもPPコーナーオープンから3年弱で初入荷した。もちろん計画的な入荷予定として案内されたものでは無く、突如打診があってのイレギュラーな仕入だった。
冒頭で触れた展示会用サンプルとして、このモデルは過去一度もやって来た事が無い。PPJスタッフ曰く「あまりにも入荷が少なく不規則なので、下手にご注文をお受け出来ない」
なぜそんな事になるのか?その辺りをつらつらと考えながら本稿を進めたい。
この時計、実に不思議な顔をしている。レギュレーターウオッチと言うのは普通カレンダーが付いている印象が無い。改めて画像検索すると日付カレンダー付と言うのはそこそこあるが、月、曜日を含むトリプルカレンダーと言うのはまず見当たらない。
パテックのこの時計の場合は年次カレンダーをレギュレーター仕様のダイアルレイアウトにしているのでトリカレと言う事になるが、Ref.5205の様に12時側弓状に三つ窓にせずに真反対の6時位置に日付窓としている。時間表示インダイアルのスタート位置に大きな窓を開けたくなかった気分はよくわかる。そしてミニット用の外周レールもユニークで、6時側インダイアルがスモセコ表示なので、似た感じのカラトラバオートマRef.5296のトリプルサークルの様に秒刻みがレールに無く分刻みだけのスッキリ仕様となっている。
そもそもレギュレーターとは日本では"標準時計"と訳される置・掛時計の事であった。祖父の代から時計を商う当家にも機械式の掛け時計で振り子が見えるガラス窓部分には縦書き金文字で"標準時計"と書かれたクロックが実家の居間にはあった。
1969年にセイコーが水晶振動子による正確無比なクォーツ時計を販売するまでの機械式時計主役時代には、時計店は最も正確な掛け時計を標準時計に定め、時計が売れた際にはその時計で時刻合わせをして納品をしていたと聞かされた。現代では電波ソーラーの目覚ましなどがその役を担っている。ちなみに百貨店は電波受信器を持ち込んでいない限り電波は受信できない。GPSはもっと入らない。WiFi接続中のスマホが多分一番正確だろう。
尚、当店一階入り口脇には非常に正確な標準時計仕様のエルウィン・サトラ―社(独:ERWIN SATTLER)製の機械式掛け時計を掛けてある。一ヶ月と言う超ロングパワーリザーブで月差数秒という優れもの、気圧変化による振り子の空気抵抗の影響を補正する装置が付いていて本当に正確極まりない。ご来店の際には是非自慢話を聞いてくださいナ。
クロノスイスなどの様にレギュレーターと言う3針(時、分、秒)独立表示を好んで作るブランドもあるが、普通はあまり作られる事は無い。パテックもこの1モデルのみであり、知る限りオークションニュースでも見た記憶は無い。さらにこのモデル変わり者づくめで、まず文字盤のロゴ表示がただ彫っただけで無着色である。上の画像は何気なく撮って、それなりにロゴが読めるが光線の具合によっては殆ど読めない。

横着して上画像を拡大加工してみた。文字盤表面の天地方向の筋目装飾に対して、単純に彫られただけのロゴマーク底部分の表面感の違いで何とか読み取れるが、光の具合次第で本当に見づらい。入荷時にはひょっとしたら着色忘れの世界に一点のユニークピースが点検漏れで着荷したのかと喜んだが、これが純正仕様だった。おそらくこの不思議な仕様も時刻の読み取りを最優先するのがレギュレーターの使命と考えたパテック流の解釈だろう。個人的にはレール同色の紺色シリコン転写が無難かと・・
カタログ等ではこのロゴはブラックにしか見えない。またサーキュレート(同心円筋目彫り)されたインダイアルと縦筋目彫りされた文字盤とはかなりコントラストが実物にはあるがカタログでは微妙な色差しかなく、この時計は絶対に生で見ないと駄目だ。但しこの顔の好き嫌いはハッキリあるだろう。どちらかと言えば日常用と言うよりはコレクション向きかと・・でも見どころと語りどころはまだある。
不可思議は裏側にも存在する。マイクロローター自動巻きなのでCal.240?と思うが、少し見慣れた方なら妙な違和感を感じるハズだ。そう受けの形状がかなり違うのだ。その前にムーブメントそのものが240より大きい。下に画像(12時上)を加工して並べてみたら他にも相違点は沢山あって22金ローター自体のサイズは同じようだが輪列、テンプ、ローターと全てレイアウトが違っていて当然受けもかなり異なっている。まあCal.240は構造的に小秒針が5時位置にしか付けられないので正統なレギュレーター仕様である6時スモセコにはならない。さらに通常センターに置かれる時針を12時側にインダイアル表示させる必要もあってパテックの開発陣はCal.240の良さを残しつつ完全にニューキャリバーを数年かけて開発した。

この新規ムーブメントの最大の注目点は前衛的なPalsomax®脱進機の搭載である。パテック社の技術革新のフィールドテストモデルであるアドバンストリサーチプロジェクト3部作(2005~2008年)で完成された髭ゼンマイ、アンクルとガンギ車の全てにシリコン素材のSilinvar®が採用されている事だ。そして3.2Hz(23,040振動)という実にけったいな振動数は、理屈は解らないがこれら新素材によってもたらされたものだ。またマイクロローターのベアリング素材も微小なジルコン・ボールに変更されている。さらに輪列のエネルギー伝達での摩擦ロスをたったの3%に抑えるため歯車には全く新しい歯型曲線が開発採用されている。これらの相乗効果がこのムーブの耐久性を高め、結果的にはメンテナンス期間の長期化をもたらしている。さらに通常パテックが盛り込まないハック(秒針停止)機能が、レギュレーターならではの必要性から搭載されている。
尚、上のムーブメント画像でそれぞれの厚みは年次カレンダーと永久カレンダーのモジュールを含めての厚みである。実際のベースキャリバー厚はそれぞれ2.6mmと2.53mmでたったの0.07mmの違いしか無く、この厚みもローターを若干厚くした事に由来するので新規開発のCal31-260は充分に極薄自動巻キャリバーでありながら非常に先進的で意欲的なエンジンであると言える。恐らくこの特殊で唯一無二のムーブメントの製造が小ロットで気まぐれ?な為に入荷がイレギュラーで滅多にお目にかかれない原因だと思っている。
レギュレーターが必要とされたのは18世紀初めに遡る。当時は大航海時代で安全な航海には高精度な航海用時計(マリンクロノメーター)が欠かせなかった。この時計つくりには当時イギリスがリードしていたが、その製造やメンテナンスの為に非常に正確で安定した精度を出せる基準時計=レギュレーターが必須であったのだ。かつて1900年代前半にはパテックでもレギュレータ―の懐中時計が存在したが、腕時計としては2011年のこのRef.5235Gまでアーカイブが無い。ただホールクロック(床置き時計)タイプはパテック社内で普通に利用されていたようであり、実際名誉会長フィリップ・スターン氏の執務室に置かれていたレギュレーターホールクロック(左)から今回のタイムピース5235はインスパイアされている。ただクロックタイプの標準時計は秒針が12時側にあって、時針インダイアルは6時側にレイアウトされているものが大半である。腕時計ではRef.5235を含めブランドを問わずレイアウトが逆転し秒針は6時側となっている。ちなみに左のクロック文字盤には PATEK PHILIPPE & Cie. GENÈVE とあるが、どこかのクロック専業メーカーにオーダーしたものか自社製なのかは記載がなく不明である。
ケースサイドは文字盤同様のヘアラインのサテン仕上げで時計そのものを渋くクールな印象にしている。厚みはマイクロローターのおかげで通常の年次カレンダーより若干薄い10mmとなっている。
レギュレーター表示を邪魔するだけなので他の年次カレンダーモデルには標準仕様の月齢カレンダーが、このモデルには無い。結果的にカレンダー調整用のプッシュボタンは一つ減って3個である。その為に一般的な年次カレンダーでは4個のボタンをケース両サイドに2個ずつ振り分けているが、Ref.5235では9時側サイドに3個まとめて収められている。下画像で一番左の"月"は良いとして真ん中が"日付け"で右が"曜日"が紛らわしい。人間工学的には文字盤のディスプレイ通りに真ん中が曜日で右が日付だととても使い勝手が良いのだが・・さすがに メイド イン ヨーロッパ ですナァ

最後にバックルも普通ではなく、特別なエングレーブ仕様になっている。レディスの装飾性の強いモデル等でPP銘入りバックルはたまにあるが、シンプルなカラトラバケース仕立てのメンズモデルでは極めて異例である。

個性的ではあっても正統で奇をてらわないデザインでありつつ人と違ってかぶらないパテックを望まれる方にはピッタリな1本だと思う。
Ref.5235G-001年次カレンダー(レギュレーター)
ケース径:40.5mm ケース厚:10mm ラグ×美錠幅:20×16mm
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGのみ
文字盤:ツートーン シルバリィ バーティカル サテンフィニッシュド、青転写インディケーション
ストラップ:シャイニー(艶有)ネイビーブルーアリゲーター
バックル:PP エングレーブド ピンバックル
Caliber 31-260 REG QA
直径:33mm 厚み:5.08mm 部品点数:313個 石数:31個 受け:10枚
パワーリザーブ:最低38時間~最大48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
脱進機:パルソマックスPalsomax® アンクル、ガンギ車共にSilinvar®製
振動数:3.2Hz 23,040振動
ローター:22金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
PATEK PHILIPPE 公式ページ
文責:乾
在庫:4月24日現在 店頭在庫あります。
参考:Patek Philippe Internaional Magazine Vol Ⅲ No.4 P.18-23
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気付いている方が圧倒的に多いと思われる新しいパテックフィリップの公式インスタグラム。
明日は朝から公式HPを見て新作のブログを書く予定だった。ひょっとして何か欠片くらい新作について載って無いか公式HPを訪問すれば、なんと新しくインスタが始まり、つい先日の18日に2018ニューモデル2型をリヴェール(ご紹介)するとあるではないか。
で、早速インスタでPP検索したらメッチャ凝った投稿がアップされていた。従来からあったメンズのカラトラバパイロットトラベルタイムRef.5524G(WG)のローズゴールドバージョン。文字盤カラーはWGの青ではなく茶色。何となく昨今他ブランドで流行っているブロンズっぽい。ただし凄く綺麗でエイジングとは無縁、でもカッコいいRef.5524R-001。

でもってビックリしまくったのがまんまサイズダウン(37.5mm)したレディスのパイロットトラベルRef.7234R-001。色使いもメンズと全く同じ、センターフルローター自動巻きCal.324(直径27mm)がベースキャリバーなので結構な大きさになってしまう。既に生産中止された品番が近いRef.7134Gは手巻きCal.215(直径21.9mm)にトラベルモジュールを積んで35mmで、WGケースのベゼルはダイア巻き。当時の価格は税別451万円だった。あっ、当店にデッドストック一本有りです。
となると新しいレディスパイロットトラベルの価格が気になる。たぶんメンズは現行のWGモデルと同価格のはず、とすればあんまり変わらないのだろうか。明々後日には彼女に会える。
Ref.7134Gは確か画像は撮ってたはず。記事にする前にディスコンになったのでお蔵入りさせたのをやっと探してアップしようとしたら何故かサーバートラブルのような表示が出て全く貼り付けられない。でも今晩しか価値の無い本稿なので画像無しで投稿。
文責:乾
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いまやカラトラバの定番の顔として定着している6000番系。元々はRef.5000として1991年にスタートしたカラトラバファミリーの一員。
搭載キャリバーCal.240の構造上の要因でセンター秒針や6時側スモールセコンドではなく4時位置辺りに小秒針がオフセットしてレイアウトされたパテックのコレクションとしては数少ないアシンメトリー(左右非対称)なモデル。さらにそれまでのパテックには見られなかったスポーティなアラビアインデックスと言う事もあってデビュー当時は賛否両論があったように記憶している。
個人的には若干の違和感を感じていたのだが、最近のRef.5000の再販相場を見ていると結構なお値段になっている。どうも思っていた以上に流通量も少なく人気のカラトラバコレクションになっている。
寿命も非常に長くて初代のRef.5000は発売14年後の2005年に2代目Ref.6000に引き継がれた。新たにポインターデイトというこれまたパテックでは超レアなカレンダー機構を備えてより一層華やかな体育会系の顔になった。
そして12年を経て今年、搭載キャリバー240の40周年を記念して顔はほぼ同じで2mmサイズアップされてRef.6006が発表された。6000はグレーや青や茶と言うカラフルな文字盤が続いたが今回はWGケースに黒文字盤の採用で渋く仕上がっている。ポインターデイト針先の赤色も黒を背景によく効いている。

ベゼル部は少しだけ盛り上がっているが、ケースサイドは武骨な印象でクンロク系のカラトラバ血流を感じさせる。ただ2mm大きくなった分、緩やかにカーブを描きながら下がってゆくラグ形状で腕なじみを良くしているようだ。
手巻きで薄いRef.5196などはほぼ横一直線(下画像)でラグ先端部分でチョコっと下げられているのと対照的だ。

裏蓋はスクリューバックの捻じ込み式でサファイアクリスタルバックとなっている。フルローターと違って、沈胴式のマイクロローターはテンプのパフォーマンスを常に楽しませてくれる。

ダイアルカラーがシックな無彩色のブラックになり色目を気にすることなくスーツはもちろん、スポーティーなインデックスデザインはカジュアルにも幅広くマッチする。使い回しが効くとても実用的なデイリーパテックが登場した。
Ref.6006G-001
ケース径:39.0mm ケース厚:8.86mm ラグ×美錠幅:22×16mm
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGのみ
文字盤:エボニーブラック サンバースト&しルバリィグレイ ホワイト&ブラックの転写
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター
価格:税別 3,340,000円(税込 3,607,200円)2017年8月現在
Caliber 240 PS C
直径:30mm 厚み:3.43mm 部品点数:191個 石数:27個
パワーリザーブ:最低38時間ー最長48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
PATEK PHILIPPE 公式ページ
乾
2017年10月13日現在 ご予約可能、お問合せ下さい。
このモデル(リファレンス)を取り上げるのは実に4回目である。なにせこのモデルとの付き合い初めが個人的にあまりにも大事件だったのでどうしても思い入れてしまう。機械的な紹介はほぼダブってしまうのだが・・
永久カレンダーを複雑機構の看板にし続けてきたパテック フィリップが現代的で実用性の高い年次カレンダーを開発し特許を得たのが1996年。その際に永久カレンダーの簡素化で対応するのではなく、全く一から設計開発し極力レバーやカムなどの大振りなパーツを採用せず、出来る限り歯車輪列にて対応する事で文字盤レイアウトに自由度が与えられた。ただこの方式は輪列の増加による負荷の増大というデメリットがあった。これに対応するためパテックは徹底した歯車の設計の見直しと他ブランドでは真似のできない歯車の研磨仕上げでエネルギーロスをともかく低減させた。さらにトルクがしっかりしたベースムーブCal.324を搭載する事で安定した駆動を実現したとしている。
おさらいをさっと済ませて実機を撮影。

パテックフィリップのリファレンス番号の後ろに付く枝番は知る限り001がニューモデルの初出の文字盤。元々2006年にカラトラバケースに年次カレンダーを搭載したRef.5396の枝番001はトリプルサークルと言われる個性的な文字盤仕様。パテックではよくある常套手段でお初ものには歌舞伎の隈取りよろしくファンの耳目を集めるべく厚化粧気味のニューフェースでスタートされる事が多い。
そして4年後の2010年にトリプルサークルは生産中止となり、今回紹介のソリッドな文字盤の枝番011が発表された。文字盤モチーフとしてのトリプルサークルそのものは年次カレンダーRef.5396に一年先立つ前年の2005年に発表された自動巻き3針カレンダーのカラトラバRef.5296G-001で採用されている。そしてこの自動巻クンロクでもソリッドなノーマルダイアルが010枝番で発表されている。
この年次カレンダーモデルは既に何度も紹介しているローズゴールドと常にセットで文字盤の発表や廃番がなされている。これは昨年の新作アラビアインデックス文字盤でも同様である。ただ今年はローズのみに新たなブルーダイアルがインデックス違いで2モデル追加された。ソリッドゴールドのバーインデックス5396R-014とバゲットダイアのバーインデックス5396R-015である。イエローゴールドはデビュー時から設定が無い。

鏡面仕上げの横顔がカラトラバのクンロク(96)ケースの遺伝子を最も印象づけている。ケース厚さ11.2mmはフルローター自動巻きベースムーブメントに年次カレンダーモジュールを積み込んでなので充分に厚みは抑えられている。
パテックを代表する顔であるダブルギッシェ年次カレンダーRef.5396全6リファレンスで最もおとなしく上品な顔が今回紹介のモデル。個人的には機械式時計黄金期1920年頃~1960年頃の雰囲気が良く出ている一本かと・・
Ref.5396G-011年次カレンダー
ケース径:38.5mm ケース厚:11.2mm ラグ×美錠幅:21×16mm
防水:3気圧
ケースバリエーション:WG(別ダイアル有)、RG(別ダイアル1、2,3)
文字盤:シルバーオパーリン ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
在庫、価格:お問い合わせください
以下過去記事より転載
搭載キャリバーは21金フルローターを採用したパテックを代表する自動巻きCal324に年次カレンダーモジュールを組込んでいる。
カレンダー系の操作は禁止時間帯等あって気を使うが、パテックの場合は殆どの物が午前6時(例外あり)に時刻を合わせてプッシュ操作を行う。ムーンフェイズはいつもネット検索して確認していたが、パテックHP内にある確認ページが結構便利である。

個人的にフルローター自動巻きの裏スケルトンには一抹の気色悪さをいつも感じてしまう。ただパテックの場合はローターの仕上げが尋常でなく美しい。撮影の度に改めてそれを感じる。PCモニター画像ではそれを表現しきれていない。連日の猛暑で目も腕もなまくらになった事にしておこう。
Caliber 324 S QA LU 24H/303
直径:33.3mm 厚み:5.78mm 部品点数:347個 石数:34個 受け:10枚
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから
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文責:乾
昨年度に引き続き今年もお盆に「パテック フィリップ展」を開催いたします。
カサブランカ奈良『2017パテック フィリップ展』
日時:8月11日(金・祝)~13日(日) 3日間 11:00~20:00
場所:当店2階パテック フィリップ・コーナーにて
普段店頭ではご覧いただけないグランドコンプリケーションを始め、通常はショーケースに並ばない希少なモデルやレディスコレクションまでほぼ現行モデルのフルラインナップをご覧いただけます。同一モデルの素材違いや文字盤違い、またご興味のある複数のモデルを同時に並べて見較べられる事もパテック フィリップ展の魅力です。またカフリンクス等のアクセサリーについても多数展示致します。
世界最高峰の時計ブランド"パテック フィリップ"の様々なモデルが一堂に集う特別な3日間。ぜひこの機会にご来場いただけますようスタッフ一同心よりお待ちしております。
前回に続いてディスコン(生産中止)の銘品紹介シリーズ。レディスコンプリケーションのトラベルタイムRef.7134G。天才時計師ルイ・コティエ氏によって考案されたトラベルタイム機構の特許をパテックが取り製造を始めたのは50年以上も前の1959年。その後クォーツ全盛期時代に製造は一旦途切れている。スイスの機械式時計がようやく復活した1990年代後半になって現代のトラベルタイムの製造が再開した。
今回紹介のRef.7134Gは2013年に発表され2016年にディスコンされた少し短命なモデル。或る意味製造個数も少ないはずで希少性は高い。

実はこのモデルの生産中止で現在レディスのトラベルタイムコレクションのラインナップが無くなっている。個人的には1997年から再開された現代トラベルタイムのレディスでは一番お洒落で良い顔をしていると思う。何が良いって文字盤の色目が表現の仕様が無い微妙な薄めのブラウン。同色のアリゲーターストラップのカラー名称がシャイニー トープ(Shiny taupe)。そう、某有名ブランドE社の中々買えない超人気レディースバッグにも採用されている有名な色目。いわゆる旬のお色。
全ての針と6時側のスモールセコンドインダイアルと12時側のホームタイムと連動した24時間インダイアル、パテック フィリップのロゴ等の情報一切が白色でまとめられておりスッキリと締まった表情になっている。18金製のアラビアインデックスはポリッシュされており少々視認性に難がありそうだが、オフィスや屋外など光量がしっかりある環境なら充分見易い。逆に少しトーンダウンしたレストランのディナー席などではインデックスが変に悪目立ちしないのでラグジュアリーなドレスウオッチとなる。ベゼルにはトップウェルセットンのダイアモンド112個(~0.59ct)が丁寧にセッティングされている。パテックのダイアセットはその時計作りのポリシー同様に実用性を高めるため衣類の袖口が引っかかったりしないよう滑らかさを最優先した手法を採用している。海外を舞台に働くキャリアウーマンにはうってつけの一本と言えそうだ。
Ref.7134G-001
ケース径:35mm ケース厚:9.2mm ラグ×美錠幅:18×14mm 防水:3気圧
112個のダイヤ付ベゼル(~0.59カラット)
ケースバリエーション:WG
文字盤:ブラウン サンバースト 18金植字アラビアインデックス
ストラップ:シャイニー トープ アリゲーターストラップ
価格:税別 4,510,000円(税込 4,870,800円)2016年11月現在

Caliber:215 PS FUS 24H
この時計手巻きである。実用性からすれば極薄自動巻きCal.240にトラベルタイムモジュールを積めば良さそうだが、たぶん文字盤レイアウトに無理があって手巻きの名キャリバー215が採用されている。ビックリするのはトラベルタイムモジュールの薄さだ。ベースキャリバー215の素の厚みが2.55mmで部品点数130個なのでモジュールは厚さ0.8mmに48点のパーツで構成されている事になる。他のメンズのトラベルタイムと違ってホームとローカルタイムの昼夜表示が無いにしても凄い部品密度である。ケースの厚みは9.2mmと意外にある。たぶんトラベルタイム操作プッシャーを組み込む為にある程度の厚みが必要なのだろう。
直径:21.9mm 厚み:3.35mm 部品点数:178個 石数:18個
パワーリザーブ:最短44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから
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文責:乾
2017年6月9日現在 店頭在庫有ります