パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

レディス 一覧

"レディーファースト"は"淑女を優先する"で良かろうが、パテックが言うところの"レディス・ファースト"とはどう解釈すればいいのか。過去に遭遇したこの"レディス・ファースト"なる表現は、まず2009年リリースのRef.7071レディス・ファースト・クロノグラフだ。2005年から同年に渡ってパテック社が渾身の精力を込めて設計・開発し発表したマニュファクチュール・クロノグラフ・キャリバー3兄弟の末っ子Cal.CH 29-535 PS(手巻)を、紳士モデルに先駆け淑女向けに先行搭載した注目のモデル。
パテック フィリップ インターナショナルマガジンの記事『クロノグラフの系譜』で著名時計評論家ジズベルト・ブリュナー氏は、同モデルで採用されたクッションケースが、パテック社が腕時計クロノグラフ製作を始めた20世紀初頭に腕時計の隆盛を推し進めたのが,、実は女性であった事へのオマージュとしている。そして《女性のために創作された初のクロノグラフ「レディス・ファースト・クロノグラフ」は、決して偶然ではないのである。》と結んでいる。

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左:Ref.7071(2009-2016)レディス・ファースト・クロノグラフ
中:Ref.7140(2012-)現行のレディス・ファースト・パーペチュアル・カレンダー
右:レディス ペンダント時計(1898)から腕時計に換装(1925)された紳士初の永久カレンダー 、背景は販売以降のカルテの様な個体履歴(ウンウン、見た事アルアルという方は、しっかりパテックホリックと言えましょう)

そしてもう一つが上画像中央の2012年初出で現行モデルの永久カレンダーRef.7140である。カタログには"レディス・ファースト・パーペチュアル・カレンダー"とある。個人的には20世紀の何処かでクロノか永久のご婦人モデルが全く無かったかどうか疑わしいと思っているが、具体例を知らない。ただ記憶に有るのは1898年に女性用ペンダント時計としてスタートした上画像右の永久カレンダー97 975(Ref.無き時代でムーブメントNo.での識別表示)である。この個体は37年後の1925年に紳士用としては初の永久カレンダー腕時計へと換装され1927年に販売されている。19世紀末迄は懐中時計全盛期で1900年代初頭の紳士用腕時計の黎明期をへて、第一次世界大戦(2014-1918)が一気にポッケから手首へメンズウオッチスタイルを飛躍・完成させた。当時のパテック社は懐中時代の栄光からリストウオッチへのスクラップ&ビルドに遅れを取ったが、"男装の麗人"の様な裏技かもしれぬが、ともかく紳士用の複雑機能を搭載した腕時計をデビューさせ、業界最前線へ一生懸命キャッチアップを目指していたのだろう。

リピーター付きリストウオッチにも2011年にレディス・ファーストの足跡があって、"レディス・ファースト"は何も昨日今日に始まった事ではなく、パテックの社史に於いて数多くの事例が創業間もない頃から多々見られる。

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微妙に締まりのない若干ボケ気味な画像。障害気味の手指のせいにするのか。はたまたこの娘(こ)への愛情不足なのか。不思議なもので惚れ込んだ時計は何故か自画自賛レベルで撮像出来る事が多い。しかも短時間かつ、その殆どがファーストカット。理由は不明にして、今後も判らない予感がする。数十年前のまだまだ我がお尻の青い頃に、ひとめぼれする事しばしあり、間髪置かずファーストコンタクト出来ていれば・・矢沢の永ちゃんの「時間よ~止まれ ♪ 」ではなく、頼むから誰か「時間よ~戻れ ♪ 」としてくれないものか悔やまれてならない。おのれの奥手ゆえならぬ、度胸の無さを棚に上げて・・
脱線復旧、閑話休題、画像話をもう少し。だいぶ前の事だがプロカメラマン某氏に、東京のスタジオで腕時計撮影指南を受けた事がある。この経験で今日まで残っている収穫はニコンの少々ボディの長く重たい愛用マクロレンズのみしかない。その際に何より知りたかったのは鏡面仕上げのインデックスと針を如何にしてブラックアウトさせずに撮る照明技術だった。彼らは一般的にBALKAR社製ストロボを照明機材として単発で、時には複数で使用するのだが、瞬間的に閃光するタイプなので尻の青さとは無関係に素人には付き合えそうな気がしなかった。お昼前の「腹が減っては・・」という微妙な時間帯に訪問したのも反省材料だった。今は知らず、当時は時計を撮らせれば "右に・・" と本人が言う人も空腹には抗えず、指南もそこそこに某氏行きつけの天ぷら屋へ二人して遁走し、もちろん氏の"左側一歩下がって・・"は言うまでもない。うろ覚えながら屋号は『天悦』だったかと。丼から今にもこぼれてしまいそうな大振りな海老やら空飛ぶ絨毯の様な海苔や大葉が見事に盛り上げられた特性天丼の軍門に下る仕業となったのだ。本来の目的とは異なったが、互いに"食"というストロボに於いては大いにシンクロ出来たのだった。旨い物の前で、人は時に諍うが、至福の時間を共有し互いの距離を縮める経験を皆さん誰しもお持ちであろう。美人時計を前にしてか今回の脱線は、アッチこっちへと忙しい。
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さて、上の画像で具体的に説明すると左側が今回記事で採用した撮像。インデックスの12時の上部辺りが僅かに鏡面仕上げと判らなくもない。光源は馬鹿の一つ覚えなのか、疑似餌釣りの信念針みたいなのか、ともかく被写体の真上いわゆる天から(やっぱり釣りが好きやねん!テンカラってわかる?)の1光源(岩崎アイランプPRS300W)ツケッパのみで10年以上撮り続けている。リューズとクロノグラフプッシュボタンの天辺辺りにハイライトが来て、インデックスと時分針やクロノグラフ秒針には真っ暗にした部屋の黒味が写り込んでいる。右側も同じ設定だが白いレフ板(大層な、ただの余っていたスチレンボードの切れっぱし)で上部からの単光源をほんわかとダイアルに当ててやった撮像。時字("ときじ"と読む、インデックスの事)と針の鏡面は判り易くはなっても全体が白っちゃけて、物凄く薄い乳白色の膜で覆われた様になり、そのままではチョッと使えそうで使えない。時と場合と助っ人の有無によってはこれらを合体し良い所取りして合成画像とする事も有るが、今回はギブアップした。さすがにリューズだけはフォトショ君に押し込んでもらったのが上の上の画像。ストップセコンド(ハック)も無いのになんでリューズを出臍で撮る(上の画像)のか。撮影は通常、仕入の着荷直後、検品前に行う。スタジオとは名ばかりのストック部屋の一角で真空パックをおもむろに開封し、無傷かつ無塵、ゼンマイトルク限りなく"0"状態でリューズを引いて希望時刻付近で若干バックさせる裏技で秒針停止がかなう。自動巻の場合は輸送中に巻上がるトルク除去の為に数時間お寝んねさせる、大半のパテックは手巻ムーブメントでもほんの少しの揺すりで運針する。尚、現行のロレックスは自動巻でも手動巻上げをある程度しないと動き出さない。どっちが良いという話ではなく両社のモノ創りへの姿勢が出ていると思う。仙人の様に悟りも得ず、俗人の我が身には60秒ジャストでの停止はその時々の心の乱れるままにして儘なら無い。プロの様に撮影助手など居ようはずも無く、ひたすら孤独な時間が続く。ああでも無い、こうでも無いとひねくり廻し何度撮り直しても、大抵がしょっぱなのファーストカットの採用が多いのは何故か?往々にして1カットたったの15分程度で一発OK、バッチリ終了、「よっしゃ、次行こうか」が結構有るのがノーチ&アクア。関西人が北海道のニセコや富良野辺りに行って、ひたすらパウダー&ドライな最高級雪質のお陰なのに、おのれの足前が上ったと勘違いするが如しである。サテンベゼルに加えて、ダークかつ無光沢な色遣いを纏ったボーダーとエンボスが、若き日に目にした北の大地の雪の結晶、或いはダイヤモンドダストに見まがえてしまう。
ローカル線は昨今、廃線が相次ぐ。本稿もいよいよ本線に戻らねば。で、7150とのファーストコンタクトは2018年のバーゼルワールドのPPブース。当時は毎年の事で多少マンネリも感じていた春のスイス詣でだった。今、思えば何と貴重で大切な時間だったのか。今年も公式なキャンセル案内は無いが、PPに取って初となるジュネーブ開催となるはずのリアル展示会は恐らく無理だろう。仮に実施されても、行って良いのやら・・「行きはよいよい、帰りはコロナ」では洒落にならない。2018年は確か一人でバーゼル市内のB&Bに逗留し、滞在期間中市内トラム乗り放題の優待チケットでメッセ会場に通って数ブランドの商談をしたり、空き時間は気儘に美術館巡りなどの一人遊びを満喫した年だった。さてさて7150だ。初見の印象はハッキリくっきりしていて「ベゼルにダイヤが無ければメンズで大ヒットしそうなのに・・」と思いつつケースバックばかり見ていた。
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コチラも少々キレの無い画像。赤い丸2か所は本来はどちらも下側の受けの様にダークに写っている。左上のコラムホイールに被せられた帽子のような偏芯シャポーはレフ板で銀色に写し込んだ別画像を合成している。この2箇所と各マイナスねじの頭は鏡面仕上げになっているので、この様なややこしい事になっている。ま、そんな事はどうでもよろしい。この娘のバックシャンで見惚れて頂きたいのは38mm径ケースぎゅうぎゅうに詰まっているムーブメントの凝縮感である。全くの後付けではなく、ムーブメントが先に有って、パツパツのボンデージな専用ケースが用意されたものである。エンジンとボディのこの上なく幸せなマリアージュとも言えよう。大柄な体格の割に小ぶりかつクラシカルな時計を好む性分なので、38mmは女性も着用可能なメンズであって欲しいサイズだ。昨今、パテックのメンズ・コンプリケーションのバゲットダイヤベゼルモデルはどれもこれも人気が高いが、7150の様なブリリアントであれ、人気のバゲットであれケース表面にダイヤモンド仕様は、この齢になっても何かしらこっぱずかしくてよう着けられまへんのや。愛機5170Pの河島英五の歌のように"目立たぬ~♪"ダイヤインデックスがせいぜいですわ。"時代おくれ"な奴なんですわ。
最近、この珠玉のタイムピースに時代がやっと追いついてきた様な気がしている。"おくれ"とは真逆でデビューが少々早かったのではないかと思えるのだ。お恥ずかしい話ながら、リリース3年目の2021年後半に当店初のご販売をした。それ故の実機撮影成就なのだ。サイズ感に加えて淑女が機械式複雑時計のメカニカルな顔をデザイン的に抵抗なく受け止められる様になってきた。そしてそのスピードは加速してゆくのではと思わせられる。
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"菊の御紋?"と見間違うクラシックなプッシャー頭のエングレーブ。勿論、デザインアーカイブは有る。チョッと今すぐ出てこないだけ。絞りを開放値に近づけてリューズとリセットプッシャーのみフォーカスし廻りをほぼボカした。腕にハンディが残っても三脚を使って、レリーズでシャッターを切る置き撮りは何とかこなせる。やはり撮影は楽しい。
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デビアス社から提供された最上級ダイヤがセットされた尾錠(美錠とも)。ダイヤベゼルはまだまだともかく、さすがにこのバックルでの男性着用は14mm巾のサイズも含め、一般的とは言えず、そっち系のややこしい話になりそうだ。やはりこの時計は正真正銘の淑女専用機なのだと得心した。
さて、年の初めから長々ダラダラと書きなぐってきたが、本稿は時計そのものの詳細には迫れていない。でも今年はこんな感じでその時計の最もクローズアップしたい部分にフォーカスを当てて紹介してゆけたらと思っている。今回の7150の場合は、ムーブメント先に有りての専用ケースのベターハーフ設計が、生み出した後ろ姿の濃密な凝縮感がまず筆頭である。淑女のためのレディス・ファーストかも知れぬが、機会が有れば紳士諸君にも一見を是非お勧めしたいタイムピースだ。

Ref.7150/250R-001 2018年~
ケース径:38mm ケース厚:10.59mm ラグ×美錠幅:20×14mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RGのみ 72個のダイヤ付ベゼル(約0.78カラット)
文字盤:シルバー・オパーリン パルスメーター目盛 ゴールド植字ブレゲ数字インデックス
針:18金時分針
ストラップ:ラージ・スクエア手縫いシャイニー・ミンクグレー・アリゲーターストラップ 
バックル:27個のダイヤ(約0.21カラット)付18金ピンバックル
価格:お問い合わせください

Caliber CH 29-535 PS:コラムホイール搭載手巻クロノグラフ・ムーブメント
直径:29.6mm 厚み:5.35mm 部品点数:270個 石数:33個 受け:11枚 
パワーリザーブ:最小65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

文責・撮影:乾

出典
Wristwataches Martin Huber & Alan Banbery
Patek Philippe International Magazine Volume Ⅲ Number 2

追記:1月の下旬にPP公式HPより5711/1R-001、5990/1A-001が蒸発しているのを確認。その時期ネット上に出回っていた真贋不明な生産中止情報と合致していたので、それらの蒸発自体に驚きは無かった。ただ知りうる限り通常2月上旬の正規店への公式通達前に突如雲隠れは経験が無い。前者のノーチ3針RGブレスは予想通りだが、後者のノーチSSトラベルクロノは若干の予感は有っても蒸発タイミングが解せない。なぜなら恐らくと思われるその他の鬼籍入り候補が、渡し賃が心もとないのか"三途の川"を渡れないで公式の川辺に踏み止まっている様だからだ。あくまで私見ながら、まだら模様と表現すればいいのだろうか。ICUあたりで生死の境を彷徨っているのだろうか。それとも公式通達そのものが今年からは無くなって、お願いだからHP見て気づいてネ!というメッセージなのだろうか。まあ、時が来ればわかるだろう。

人生には"登り坂"もあれば"下り坂"もあるが、"まさか!"もあると言うのはよく知られた親父ギャグ。そしてあろう事か今現在、自分自身でその"まさか"をヨチヨチと這う様に登る日々を過ごしている。一方で浮世離れした時の流れに身を任せてもいるのでグズグズとブログ記事を書き連ねていたら、今年の新製品発表はマンスリー?『アクアノート、その復活とバリエーション』的な代物やら『超絶系ミニットリピーター&レアハンドクラフト』なんぞもダメ押し的にどんどん出て来て、いつもの様に"最新記事・・・"とドヤ顔での公開がはばかられる事態となってしまった。新型コロナ禍の影響は「いったい、何処まで、何すんねん!」とニューモデル発表までが全く予想不可能であって、もうコレは開き直って"なるようになれ、勝手にしやがれ、気分はLet it be!"と思うままに時系列を無視して書き連ねるしかあるまい。

我ら現存世代にとって初遭遇となったパンデミックイヤーの昨年2020年に於いても、パテックはレディスに限っては普通(変な表現だが)の新製品をリリースした。とは言ってもたったの3モデル。それもコスメティックチェンジ(ダイヤルや素材等の仕様変更)に過ぎず、とてもまともな新作発表とは言い難いが・・・そしてパンデミック2年目?の今年もレディスニューモデルのコスメティックチェンジ傾向は継続している。5月27日リリースされたニューアクアのクォーツ・トラベルタイムについては、その例外として改めて考察出来ればと思っている。しかしながら2018年秋にミラノでトゥエンティフォー・オートマチックRef.7300を華々しくデビューさせてから、パテックのレディス市場にかける意気込みにより一層のドライブがかかってきた様に思う。誤解を恐れずにあくまでも個人的な意見(偏見?)だが、女性はファッションやアクセサリー等の身の周りの装飾品(勿論、腕時計も)に関して男性に比べて、圧倒的にトレンドに敏感にして速攻で反応する。一方でブランドに対するロイヤリティや拘りも有りそうな顔して平気で浮気する。例えば新しい美容室を試す女性は意外に多いと聞いた事がある。男性は理容室(美容室派も含めて)をよほどのトラブルでも無い限り、まず変える事はない様に思う。何故か?の追求は面倒な事になりそうなので止めておくが、腕時計に当てはめるとトレンドよりも我が道の追求に重きを置くパテックはレディスに関して、自らハードルを高くしている感があるように思う。

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年次カレンダー4947/1Aは、既存の18金ストラップモデルをステンレス素材ブレスレット仕様へのコスメティックチェンジモデルと言うことになるが、デイリーユースな素材のステンレスブレス仕様に加えてダイヤが何処にも無いからか、予想外のご注文を発表直後から複数本頂戴した。コレが何と男性からなのである。考えてみればRef.7300/1200Aトゥエンティフォー・オートマチックのステンレスモデルも「ベゼルにダイヤが無ければ」と言う男性の引き合いは結構多かった。7300の36mmに対して年次カレンダー4947/1Aは38mm。先月発表されたニューアクアノート・ルーチェに至ってはリバイバルのサイズアップで何と3.2mmも大きい38.8mm径が採用された。そのニューアクアノート・ルーチェの実機を見る機会がまだ無いが、メンズのレギュラーサイズ40.5mmとその差はたった1.7mm。ちなみにそのレギュラーサイズには女性からのご注文も頂いている。
面白いのは男性のダイヤに対する視点で、簡潔に言えば(パテック限定かも知れぬが)バゲットサイズまで迫力が上がれば抵抗感が薄れる事である。現行ラインナップでベゼルダイヤ絡みのメンズモデル全8型その内6点がバゲットダイヤで、さらに今年ノーチラスSSが年度限定で追加され"そんなに来ますか?"レベルのご注文を頂いている。ちなみにラウンド形状のダイヤベゼルモデルはカラトラバRef.5297Gと年次カレンダーRef.5147Gの2モデルだが当店の販売実績はともかく結構なロングセラーなのでニッチな根強い人気モデルなのだろう。ちなみにR社ではメンズにも根強い人気のポイントダイヤインデックス的な仕様が現行品メンズパテックには無い。2000年以前には有った様な気もするが、今世紀は記憶に無い。しかし此れまたバゲットダイヤでのバーインデックスは僅かながら現行生産されている。思い出深いのは2016年のノーチラス発売40周年記念限定モデル2型(5976/1G,5711/1P)で採用されたWGの土台に埋め込まれたバゲットダイヤインデックス。間近で見れば見事なダイヤなのに遠目には普通のバーインデックスに見える抑制の効いたダンディズム仕様には、それまでのメンズダイヤの概念が撃ち下かれてしまった。ちなみにパテック社が使用するダイヤは全てデビアス社でピュア・トップウェッセルトンと格付けされた上質な物に限られている。

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この年次カレンダーSSブレスは既存モデルのバリエーションなので時計としての紹介は省くが、今春の生産中止でメンズ年次カレンダーの元祖系モデルRef.5146が、とうとう、ゴッソリ、一気に、パテックらしい潔ぎよさで、お蔵入りしたので1996年デビューの際に与えられた年次カレンダーオリジナルの顔が婦人用年次カレンダー4947の専用となった。いや、前述のダイヤベゼル仕様5147Gも辛うじてサバイブしているが、そのケース径39mmは4947に僅か+1mmでしかなく、メンズ専用と言うよりも大振りレディスとの兼用モデルと見るべきなのかもしれない。その段でゆくと自動巻カラトラバクンロクの唯一のサバイバーRef.5297Gもダイヤベゼル+ブラックダイヤルが5147Gと共通仕様、そしてケース径38mmは今回紹介のレディス4947と全く同じ・・・

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なんかもう、ケース径に関しては35mm〜39mm辺りのジェンダー属性がカオス状態になって来ている気がする。昨今の世界的なLGBTへの意識の高まりが高級時計の世界へも影響を与えたのか。その辺りのサイズレスパンデミック状況については38.8mm径のアクアノート・ルーチェ等を紹介予定の次回の投稿記事で掘り下げてゆきたい。

Ref.4947/1A-001
ケース径:38mm ケース厚:11mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:SS
文字盤:縦横サテン仕上げ(山東絹仕上げ)ブルー、ゴールド植字インデックス
裏蓋:サファイヤクリスタル・バック
ストラップ:ステンレススチール仕様
バックル:折り畳み式バックル
価格:お問い合わせください

Caliber 324 S QA LU
直径:30mm 厚み:5.32mm 部品点数:328個 石数:34個
パワーリザーブ:最小35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ゴールド中央ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

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もう一点のレディスニューモデルもアップサイジングされた超美形カラトラバ4997/200G-001。オリジナルモデル4896G-001は15年遡る2006年初出で、バーゼルのサンプル初見時にあまりの美しさにノックアウトされた記憶が今なお鮮明だ。当時は文字盤製造法の基礎知識なんぞもほとんど無く、ともかくその美し過ぎるギョーシェ装飾と長くて繊細だが厚みの有る銀色のインデックスの印象が凄かった。ただ問題はそのサイズ感で、当時はその33mm径が女性にはあまりに大きく思われ、ボーイズ的に小柄な日本人男性に薦められそうだと本気で考えていた。同モデルは2009年に見た目ほぼ変わらずの4897G-001へと引き継がれ、2020年までの長きに渡り生産された。RGの素材追加や様々なダイヤルカラーのバリエーションも加えられた。ストラップは一貫してラグジュアリー感溢れる文字盤同色のサテン調テキスタイル素材(表面)が採用された。ブラウン、シルバー・・どの色目も魅力的で使い勝手の多様性も増したが、デビューから君臨するギヨシェ・ナイトブルーダイヤルモデルの秀逸さが抜き出ていて、2016年には同色のバゲットダイヤバージョン4897/300Gも追加された。そして今春2年間のブランクを経て2mmのサイズアップと手巻から自動巻にエンジンを積み替えて4997/200Gとしてリバイバルデビューした。

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特筆すべきはサテン(シルク)の風合いを持つ合成繊維でシンセティックと呼ばれる表面素材で高級感を演出していたストラップが、高級な表面感はそのままに丈夫なカーフ(牛革)素材に置き替えられた事。相方が違うモデルでシンセティック素材ストラップを永らく愛用しているが、まあ"贅沢この上ない"。極端に言えば一回でも着用すれば"使用感"が出るし、デイリーに愛用すればほんの数ヶ月で"使えるけれども、見せられない"のでしょっちゅう交換となる。まあこの素材に限らず高級感の劣化と言う代物は、徐々にでは無く一気にみすぼらしくなり易い。ロールスロイスには擦り傷はおろか僅かな泥汚れすら受け入れ難いのと同じである。ところが最近はスタンダードな素材であるカーフのイミテーション化なるトレンド?が有って、昨年のカラトラバSS1,000本限定Ref.6007Aではザックリとした平織のコットンキャンバスにしか見えないエンボス(型押し)加工が施されたカーフ・ストラップが採用された。今回も平織テキスタイルは同じだがシルクサテンレベルの微細なテクスチャーと高級な光沢感(一体何をどうやったらこうなるの?)を見事に実現したカーフ・ストラップが採用されている。さてさて耐久性がどの程度なのか興味津々だ。
何度も書いているが、男女問わず美形過ぎるのは"人も時計も"実は考えもので、どちらも寄り添う際に"気合いと緊張"を求められ過ぎて、疲れ果ててしまうなんて事になりかねない。その点ではパテックの時計に超の付く美男と美女はほとんど無く、一生連れそうにピッタリな"女房と亭主"タイプが非常に多い。"パテックマジック"と勝手に呼んでいるが「初めはピンと来なかった」「どこが良いのかわからない」から気がつけばドップリと信者になっていたと言うパターンが結構多い。2年間のブランクなのかバケーションを経てカムバックした4997/200Gは、そのパテックマジックには当てはまら無い稀有な美人時計である。良くも悪くも愛用者が限られてしまうし、インパクト大な個性的なカラーリングはスタイリングの許容度も狭めだ。さらに言えばシチュエーション迄もが、夜間の室内こそ輝ける"最強の夜の蝶(昭和の死語)"とは全く勝手な個人的思い込み。けれども足掛け15年以上に渡り、恐らくこの先もずっと"チラ見"せずにはいられ無いパテック銀幕の超スターウォッチであり続けて欲しいのだ。

Ref.4997/200G-001
ケース径:35mm ケース厚:7.4mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:WG
文字盤:ギヨシェ装飾のラック塗装ミッドナイトブルー、パウダー仕上げのゴールド・インデックス
裏蓋:サファイヤクリスタル・バック
ストラップ:サテンの風合いを持つ、ブリリアント・ネイビーブルーの起毛仕上げカーフスキン・バンド
バックル:ピンバックル
価格:お問い合わせください

Caliber 240
直径:27.5mm 厚み:2.53mm 部品点数:161個 石数:27個
パワーリザーブ:最小48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動
ローター:21金ゴールド中央ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責:乾 画像:パテック フィリップ

すっかり秋だ。コロナ禍は依然として終息の行方が見えないが、季節は律義に粛々と巡って来る。時には終わりという事が無さそうだ。しかし我々の廻りには終わりの或るものが圧倒的に多い。人の人生はその最たるものだろう。そして形あるもの"時計"にも生産終了が遅かれ早かれやってくる。特にパテックの場合には人気の度合いに関わりなく、突然それはやってくる。特にここ数年で顕著な気がする。印象深いメンズのディスコンモデルは、カラトラバのド定番であった手巻Ref.5119、自動巻Ref.5296。レディスではトゥエンティフォーとノーチラス、アクアノートのクォーツモデルがゴッソリお蔵入りになった。中でもトゥエンティフォーシリーズの1999年デビューモデルにして超ロングセラーのレクタングル(縦長の長方形)にしてマンシェット(腕帯)型のRef.4910系は年を追うごとに人気が高まりパテックのレディスモデルの顔となっていた。飽きの来ないデザインに使い勝手の良いクォーツでSS製ならお手頃価格で圧倒的な支持を得たベストセラーだった。現在メンズモデルにクォーツは一切無い。高級にして恒久なタイムピースは機械式であるべし!の傾向は1990年代後半からずっと続いている。そしてこの10年程でレディスにもそのトレンドは浸透しつつある。パテックはその先陣を切るが如く、レディスのメカニカル化を一気呵成に進めたブランドである。2018年秋にイタリアで発表されたラウンドシェイプのトゥエンティフォー・オートマチックRef.7300。同シリーズ初のオートマチックは大ぶりな36mm径と視認性抜群のアラビアインデックス、センター秒針に窓表示のカレンダー・・とどこまでも実用性が追求されている。
まるで魔女狩りの様な"クォーツ排除"、何処まで行くのだろうと、個人的には少しやり過ぎ感を抱いていた。と思っていたら、まさかの文字盤アレンジ2色での復活モデルとして先日ラインナップに帰ってきた。
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文字盤以外のケースとブレス等は全く仕様変更無し。と思っていたら検品担当から間違い探しの様なリューズの違いを指摘された。旧タイプではブラック・オニキスのカボションがセットされた丸味の有るエレガントなリューズだった。新タイプではソリッドでごく実用的な普通のリューズになっていてメカニカルっぽく見えなくもない。文字盤も同様で12時、6時のインデックスがローマ数字から丸形オートマティックで採用されたアラビア数字となり、その他のインデックスはダイヤから《トラペーズ》と呼ばれる台形の植字インデックスとなっている。素材は時分針も含め18金WG製で夜光塗料スーパールミノバがしっかりと塗られていて昼夜共に読み取り易くトゥエンティフォーの名にふさわしい。
文字盤カラーは画像のグレー・ソレイユ、ブラック・グラデーションとブルー・ソレイユの2色があり、いづれもラウンドのステンレスモデル2型と同じカラー構成となっている。尚、公式HPのカタログ画像のグレー・ソレイユ・・の色目はラウンドと今回のクォーツで全く別色に見えるが同色で、クォーツ画像の色目が現物に近い。
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トゥエンティフォーの全てのブレスレットに共通するとても有用な仕様が通称"1.5駒"と言われる2駒のデフォルトでの採用だ。ブレス中央のカラトラバ十字駒両側がその駒。厳密には1.2倍程度の長さなので見た目の違和感はあまりない。言われなければ気付かないかもしれない。しかしその2駒によるブレス調節能力は非常に高く、あらゆる腕廻りにアジャスト可能である。この便利な駒がなぜかノーチラスやアクアノートのブレスレットには組み込まれていない。必要に応じて有料で別途手配となってしまう。経験的に3人に一人は調整駒が必要な気がするのに・・

ところでこの時計は入荷時にリューズが引かれている。要は針が止まって運針していない。埃の混入しない真空パック状態でスイスの工場から販売店に届けられるパテックならではの配慮で、かなりの電池消耗を防げる。過去国産・輸入を問わず他ブランドのクォーツ時計では見当たらない。
10月1日に久々に価格改定を実施したパテック。今回紹介のモデルは旧タイプからの値上がり幅が結構大きかったが、それでも100万円台半ばで購入可能なパテックの時計は男女を通じてこのモデルのみであり、この復活は本当に大きい。
異例尽くしの今年の新製品。婦人用はパイロット・トラベルタイムの素材違いWG製Ref.7234Gが追加されたし、今回はクォーツ トゥエンティフォーが復活したりと実に手堅くビジネスに速結する歓迎すべき中身だ。対して紳士用はお客様を絞るのに悩ましい限定モデルRef.6007Aや、超絶に近いグランド・コンプリケーション3モデルと普通の新作がまだ無い状態だ。パテックの年度末である1月末までもう3ヶ月しかない。ヨーロッパは新型コロナ感染状況が現在も非常に悪く商売の行方も不透明だが、せめて1型ぐらい"売り易く、買い易い"メンズニューモデル出て来んかい!!

Ref.4910/1200A-010
ケース径:25.1 x 30 mm ケース厚:6.8mm 防水:30m
ケースにダイヤモンドをセッティ ング(36個 約0.42カラット)     
ケースバリエーション:SS(別文字盤有) 
文字盤:グレー・ソレイユ、ブラック・グラデーション 蓄光塗料付ゴールド植字インデックス 
価格:お問い合わせ下さい

Caliber E15
サイズ:25.1 × 30mm 厚み:1.8mm 
部品点数:57個 石数:6個
電池寿命:約3年

PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅳ No.08
文責、撮影:乾 画像修正:藤本

今年は7月が涼し目で8月はお盆迄が酷暑、盆明けはずっと雨ばかりで少し暑さもやわらぎ秋の風情。ところが9月に入って残暑?とは言えない猛暑に逆戻り。世界的にもハリケーンや台風が年々その猛威を増している様で、天候不順を通り越して徐々に住みにくい地球化が進んでいるような気がする。経済、政治、宗教、移民などに端を発する世界各地での諍いにもこの異常気象による人々のいらだちが拍車をかけているのかも知れない。
前回に引き続き紹介するワールドタイムには、そんな世界でのパワーバランスの変遷が反映されてきた歴史が詰まっている。タイムピースであると同時にタイムカプセルの一面を持っている。
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最新の文字盤を装備したRef.7130R-013レディス・ワールドタイム。判り易いターニングポイントはTOKYOとBANGKOKの間に存在する。パテック社が表示都市名の変更を決めたのは昨年度で、よもや変更前の都市が一年以内にアジア最大の政治問題を抱える事になろうとは想像も出来なかっただろう。前回紹介したメンズ同様にセンターギョーシェには透明なエナメル焼結処理の上からSWISS MADEとプリントされるが、なぜなのか文字間隔がかなり開いている(特にM A D E)。気になって他のレディスモデルの実機やカタログを見たが、どうもこのワールドタイムだけの特殊仕様のようだ。
下記画像はModèle 1415 HU(1939)、現在1時間の時差を持つLONDONとPARIS、古くは同じ時間帯を採用してきた。文字表記もLONDRESだったり、東京はTOKIOとなっていて興味深い。
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当時は一つのタイムゾーンに対して2~3都市の表示がざらにあって、デザイン的な座りの良さよりも主要な都市を出来るだけ盛り込む実用性が優先されていたようだ。アラスカとタヒチが同じ時間帯を共有しているという面白い発見も出来る。さしずめ東京と併記されそうなお友達は親日国のパラオだろうか。
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メンズの現代ワールドタイムは第3世代(2000年/第1世代Ref.5110、2006年/第2世代Ref.5130、2016年/第3世代Ref.5230)まで進化している中で、レディスは2011年に初出となっている。どのメンズともペア仕様ではなく、カラトラバの素直なクンロクケースにダイアルはメンズ初代Ref.5110に似た顔が与えられた。針の形状はほぼ同じだ。
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ワールドタイムのほぼ完全なペアモデルとしては2014年の175周年記念としてムーンフェイズ付きの限定モデルが発表されている。もちろん凄まじい争奪戦だった。(上の画像)
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メンズと全く同じ極薄自動巻キャリバー240 HUを搭載するがケースの厚みは8.83mmで紳士用(10.23mm)より1.4mm薄く仕上げてある。ベゼルへのダイヤセッティングは見るからに滑らかで衣類への引っ掛かりを防止するパテックらしい実用的な設計だ。
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ピンバックルにも27個のダイヤが同様にセットされている。ところでレディスにはいわゆるメンズのフォールディングバックル(二つ折りタイプ)が初期設定されているモデルが非常に少ない。ノーチラスやアクアノートのレディスには専用のメンズ同様の両観音バックルが初期設定されているのだが、今回のワールドタイムの様なクラシックなモデルではほぼ全てピンバックル仕様でリリースされている。別売アクセサリーとして11mmや14mmの各素材の二つ折りフォールディングバックルは用意されているし、2014年リリースの175周年記念限定レディスモデルにはフォールディングバックルが初期設定だった。対応は出来るにもかかわらずピンバックル主流はなぜか。
少し前までブライトリングのストラップモデルは男女ともピンバックルとフォールディングバックルを購入時に選択する事が出来た。男性は殆どが少し高くなるフォールディングタイプを選び、女性はほぼ全員がピンタイプを選択した。着脱時の万が一の落下を嫌がる男性、一方女性は見た目同じなら少しでも財布に優しい方が良いという意見だった。パテックの場合は18金素材が圧倒的に多いので両バックルの価格差は結構あるのだが、それがレディスをピン主流にしている理由かどうかは判然としない。個人的には女性は少しでも軽くて、細めの腕にはフォールディングタイプの曲線カーブの形状が個人個人にフィットし辛いからではないかと思っている。


Ref.7130R-013
ケース径:36mm ケース厚:8.83mm 
ラグ×美錠幅:18×14mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:RG,WG
ダイヤセッティング:ベゼル(62個 約0.85ct) ピンバックル(27個 約0.21ct)
文字盤:アイボリー・オパーリン、ハンドギョーシェ ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有り)・ダーク・チェスナット手縫いアリゲーター
価格:お問い合わせください
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ケース径36mmもメンズより2.5mm絞られている。手巻きクロノグラフなどもそうだが男女共通のエンジンを積むモデルでは、ケースとムーブのタイト感がレディスの方が勝るので後ろ姿に於いては見返り美人の婦人物に軍配を上げたい。

Caliber 240 HU

直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:239個 石数:33個 
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責、撮影:乾
参考:Wristwatches Martin Huber & Alan Banbery P.243
2014年刊行-パテック フィリップ創業175周年記念 P.28,29

PATEK PHILIPPE 公式ページ
PATEK PHILIPPE 公式インスタグラム
※毎月19日未明に新規投稿有り(スイス時間18日18:39ブランド創業年度由来)月一投稿なので作り込みスゴイです。
当店インスタグラムアカウントinstagram、投稿はかなりゆっくりですが・・

メンズブランドの印象が強いパテック フィリップだが、近年はレディスウオッチの存在感が徐々に増している。昨年度のスイスの出荷本数の男女比率が約70対30%と聞いた記憶が有る。最新の2019カタログへの掲載モデル数(時計のみ)では97対66本で約40%がレディスだ。グランドコンプリケーションには2モデルしかレディスが無いので、グラコンを除いたラインナップでの男女比率は65対64本となって半々になっている。
昨年、パテックの現行ラインナップには存在しなかったペアウオッチが新規に提案された。カラトラバ ・パイロット・トラベルタイムのローズゴールドモデル(5524R7234R)である。2015年度迄はクルドパリベゼル装飾が特徴的な7119と言うカラトラバのレディスモデルがあった。このモデルには全く同デザインのメンズで5119(2019年2月生産中止発表)が有り、シンプルかつベーシックな非常に好ましいペアウオッチがあったが残念な事に消滅してしまった。
何となくペアになりそうな時計はノーチラスやアクアノートに存在するが文字盤が異なったり、ケースやストラップが異なったりで"なんちゃってペア"と呼んだ方が良さそうだ。どうもパテックはメンズとレディスに求められる時計デザインは異なるという考えを持っている様だ。ただサイズの大小だけで対応するという考え方を避けている様に思う。
その最たる現象がレディスだけのシリーズが存在している事だ。1999年に登場した『Twenty~4』は一見全く新しいデザインに見えるが、明らかにレクタングラ―(縦長長方形)ウオッチであるゴンドーロの遺伝子を引いている。これはケースのみならずブレスレットにもその特徴が取り込まれている。同シリーズはデビュー以来ハイジュエリーを含む様々なモデルが生産されてきた。その殆どがクォーツムーブを搭載したが、一部手巻きの機械式モデルも存在した。現在は随分整理されステンレスとローズゴールド各4型がラインナップされている。ステンレスモデルはクォーツゆえの魅力的な価格と安定的な供給が相まってロングセラーかつベストセラーモデルである。
誕生から20周年を迎えたTwenty~4に自動巻の基幹エンジンCal.324 S Cを搭載したラウンドシェイプのニューモデルが加わった。昨年秋にミラノで大々的に発表され、一部の店舗で先行販売されていたが先日から当店でも取り扱いがスタートしている。_DSC9627.png

ケース径36mmは最新のサイズトレンドを反映し実に見やすい。ダイアルデザインは従来の長方形の第一世代とは大きく異なる。視認性抜群のアラビアインデックスは前述の唯一のぺアウオッチであるパイロット・トラベルタイムの字体から想起されている。縁取りされた見やすいカレンダーもこれまでは備わっていなかった。従来は良くも悪くもアバウトだった分(ミニット)の読み取りも分専用インデックスによって容易になった。何よりメカニカルな秒針の動きがこの時計の実用性を決定づけている。此処まで視認性を高めた女性専用時計はブランドを問わず大変珍しい。
第一世代のTwenty~4の広告は少しセクシーなイメージで女性特有の魅力を打ち出していたように思う。新しいTwenty~4 Automaticの訴求ではそんなテイストは微塵も無く、キャリアや完全に自立した大人の女性としての打ち出し方になっている。日本でも徐々に企業での女性管理職や役員が増えつつあるが、欧米ではこの20年間でそこが激変したのだろうなと思わせられる。第一世代のTwenty~4はプレゼントされるケースも多い時計だけれど、新しいTwenty~4 Automaticはステンレスモデルでも結構な価格ながら女性が自分自身で購入する時計なのだろう。
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バックル部分は少し改良されて完全な左右対称の両観音方式となり、リリースも両側から同時にプッシュ(青い保護シール部分)する最新方式に改められた。ティエリー・スターン社長が従来のデザイン継続に強く拘ったブレスレットは、この時計で一番美しい部分かもしれない。※左側の赤い部分は保護シール
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後ろ姿からは太いラグが特徴的な頑丈そうなケース構造が見て取れる。日常生活防水の時計には見えない安心感が漂う。画像下部でケースが少し段付きで凹んでいる部分が有る。どうやらスナップ形式の裏蓋を開封する為のスリットの様だ。これは中々見た事の無い珍しい細工である。個人的にはいっそのこと裏蓋は捻じ込みにして防水性能を高めてより実用性を獲得しても良かったのではないかと思う。この時計はベゼルのダイア装飾が無ければ本当にジェンダーレスだと思う。事実、数日前に来られた新規の男性のお客様は、最初は真剣に自分用として見ておられた。
恐らくパテック フィリップの中でメンズも含めて、最高に読み取りに優れる最強装備品的なレディスウォッチであろう。素材違いのステンレスタイプや、ラグやブレスレットにもダイア装飾されたモデル、フルパヴェと呼ばれるダイアモンドテンコ盛りのゴージャスな物まで多様なラインナップがいきなり揃って居る。詳しくはHP等でご覧頂きたい。

Ref.7300/1200R-001
ケース径:36mm ケース厚:10.05mm 防水:30m
ダイヤ付ベゼル(160個 約0.77カラット)     
ケースバリエーション:RG(別文字盤有)、SS(別文字盤有) 
文字盤:ブラウン・ソレイユ 蓄光塗料付ゴールド植字アラビアインデックス 
価格:お問い合わせ下さい

Caliber 324 S C
直径:27mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax(Silinvar製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、ムーブについての過去記事はコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

参考資料:PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE Vol.Ⅳ No.7
文責 撮影:乾

今夏の異常気象は本当に厄介だ。予想外地域への地震、記録破りの大雨に一転しての酷暑、そして逆走台風。被災された方々は本当にお気の毒。心よりお見舞いとお悔やみを申し上げます。
相方の出が広島県。しばらく断水で難儀を強いられた血縁もいた。また百貨店部門は愛媛の松山市にあって直接被害等は無かったが県南部(南予)は報道が少ないものの結構な被災をされており、地縁と血縁強固な地方特有の事情もあって経済的影響も色々出ている。
そんな過酷な日々ながら奈良県北部の大和盆地は本当に災害が少ないエリア。日本最初の都に定められた天命を災害の報を聞くたびに強く思う。

さて、この時期は少しでも凉を感じられるモデルを紹介したい。それでいて夏色感もあるレディスコンプリケーションがRef.7121J-001。コンプリと言っても本当にプティ(小さい)コンプリでムーンフェイズ(月相)しか付いていない。実用面から言えばカレンダーの方が必要なはずだが、月の満ち欠けなどと言うロマンティックな表示が優先されているのはいかにも乙女時計らしい。
ちなみにメンズには全くラインナップされていないムーンフェイズのみという乙女時計仕様はレディスでもう一型Ref.4968があり素材やブレス違いを含めると2型で5つもバリエーションがある。
現在でこそ永久カレンダーを始め手巻きクロノグラフ、年次カレンダー、ワールドタイム、トラベルタイム等でパテックに於けるご婦人用のコンプリケーションウオッチは百花繚乱と言えるが、それはここ10年位の話でそれ以前から長きに渡って作られて来たレディス用のコンプリケーションはシンプルムーンフェイズモデルだった。
スイスでは永久カレンダー(1800年頃)よりも古くから搭載された機能で、当時は航海や狩猟、漁猟に欠かせないものだった。月齢の周期は29日12時間44分。これを29.5日として59日で2個の月が描かれたムーンフェイズディスクを一周させている。0.5歯という歯車を刻めないので倍数処理されたわけだ。
ただ、その周期だと数年で調整が必要な誤差が出てしまう。パテック フィリップを始め現代の高級時計の標準的なムーンフェイズは、複雑な歯車機構により構成されており122.6年掛けてたった1日分の誤差が蓄積して要修正となっている。前言撤回でPetitとは言えない立派なコンプリケーションだった。
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針の形状はユニークだ。ちゃんと名前が有って"スペード針"と言われている。分針が途中でくびれていて女性のセクシーなボディーラインの様に見えなくもないが、スペードの形状を限りなく伸ばした形でメンズウオッチにもこの針はそこそこ採用されている。ブレゲ数字インデックスとの相性がとても良い。
女性向けムーンフェイズの特徴の一つはムーンフェイズディスクだけでなくスモールセコンドと供用されているサークルの未開口部分にもお星さまが装飾としてプリントされている事だ。これもメンズでは見られない乙女仕様か。
ケースは腕時計黎明期を思わせるオフィサー(将校)スタイルのユニークなラグ形状。女仕立てにすると結構可愛らしい。ベゼルには0.52カラットになる66個のダイアモンドが輝いている。あまり知られていないがパテックのタイムピースにはデビアス社のトップウェッセルトン・ダイヤモンド(クラリティIF及びFLのみ)が使用されていて極めて質が高い。そしてジェムセッティングは実用性を重んじるパテックらしく滑らかな表面を意識し、衣類の袖口の繊維が引っかかったりしない手法が採用されている。
ストラップはMatte pearly beige alligator。パーリィとあるように車のパール塗装の様に光沢があってとても上品。暖色系の色目ではあるが、薄めのサンドカラーに光沢感が効いて涼しさを感じさせる夏時計に仕上げられている。

Ref.7121J-001 レディス コンプリケーション ムーンフェイズ

ケース径:33.mm ケース厚:8.35mm ラグ×美錠幅:16×14mm
防水:3気圧 66個のダイア付ベゼル(約0.52ct.)
ケースバリエーション:YGのみ 
文字盤:シルバリィ グレインド 18金植字ブレゲ数字インデックス
ストラップ:ハンドステッチのマット(艶無)パーリィベージュアリゲーター
      18KYGブレスレットのバリエーション有り
価格:お問合せ下さい
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少しでも涼し気な印象に出来ないかとフォトショップでチョッと悪戯。ムーブメントNoもあり得ないくらいラッキーな・・・不変の長命ムーブメントCal.215。人生もこうであって欲しいナァ!

Caliber:215 PS LU

ムーブメントはパテックを代表する手巻キャリバー215にスモールセコンドとムーンフェイズを組込んでいる。2006年に発表されたシリコン系素材Silinvar®「シリンバー」採用の革新的なSpiromax®スピロマックスひげゼンマイが搭載されたことで耐磁性と耐衝撃性が格段に向上している。まさにパテック フィリップの哲学"伝統と革新"を体現した頼もしいエンジンが搭載されている。

直径:21.9mm 厚み:3.00mm 部品点数:157個 石数:18個 
パワーリザーブ:最短39時間-最長44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2018年7月31日現在
7121J-001   店頭在庫有ります
関連ブログ:着物でパテックフィリップ、ショパール(2017/8/29記事)





気付いている方が圧倒的に多いと思われる新しいパテックフィリップの公式インスタグラム
明日は朝から公式HPを見て新作のブログを書く予定だった。ひょっとして何か欠片くらい新作について載って無いか公式HPを訪問すれば、なんと新しくインスタが始まり、つい先日の18日に2018ニューモデル2型をリヴェール(ご紹介)するとあるではないか。
で、早速インスタでPP検索したらメッチャ凝った投稿がアップされていた。従来からあったメンズのカラトラバパイロットトラベルタイムRef.5524G(WG)のローズゴールドバージョン。文字盤カラーはWGの青ではなく茶色。何となく昨今他ブランドで流行っているブロンズっぽい。ただし凄く綺麗でエイジングとは無縁、でもカッコいいRef.5524R-001。
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でもってビックリしまくったのがまんまサイズダウン(37.5mm)したレディスのパイロットトラベルRef.7234R-001。色使いもメンズと全く同じ、センターフルローター自動巻きCal.324(直径27mm)がベースキャリバーなので結構な大きさになってしまう。既に生産中止された品番が近いRef.7134Gは手巻きCal.215(直径21.9mm)にトラベルモジュールを積んで35mmで、WGケースのベゼルはダイア巻き。当時の価格は税別451万円だった。あっ、当店にデッドストック一本有りです。
となると新しいレディスパイロットトラベルの価格が気になる。たぶんメンズは現行のWGモデルと同価格のはず、とすればあんまり変わらないのだろうか。明々後日には彼女に会える。

Ref.7134Gは確か画像は撮ってたはず。記事にする前にディスコンになったのでお蔵入りさせたのをやっと探してアップしようとしたら何故かサーバートラブルのような表示が出て全く貼り付けられない。でも今晩しか価値の無い本稿なので画像無しで投稿。

文責:乾

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パテックよりイレギュラーなプチ製品追加情報が来た。こうゆう「突然お邪魔します!」的なモデル発表はいつも可哀そうだと思ってしまう。拙ブログで毎年一番アクセスが多いのがバーゼル訪問前後の新製品紹介編。2番目がそれに先立つ生産中止情報編。それほど時計ファンにとってお気に入りブランドの継続・廃番・新作は気になってしょうがないところ。昨年のノーチラス発売40周年記念限定モデルの様にストーリーが有ってそれだけで盛り上がれるタイムピースは良い。むしろブランドにとって貴重な別アカウントでの商戦作りも出来よう。だからこそ中々周知されにくいであろうプチ情報も丹念にお伝えしてゆきたい。けっして流行らない(流行り過ぎた?)寿司屋のようにネタが尽きたという訳では・・・

レディスの年次カレンダーは2005年にメンズ2代目Ref.5056と似た顔Ref.4936で発表された。女性向けにマザーオブパール(MOP)文字盤が採用され、WGにはタヒチ産黒蝶貝、YGとRGにはバリ産白蝶貝が使われていた。ベゼルには二重巻きでダイアモンドセットされていた。パワリザはゼンマイ臭いのが敬遠されてか省かれていた。翌年の2006年には豪華仕様のケースサイド及びラグにもダイアジェムセットがなされたRef.4937が追加されている。なぜかWG仕様はインデックスは斜体のかかったアラビアで転写となっていた。

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4936&4937のコンビは結構ロングセラーとなり2014年まで生産されたが、2015年発表の現行モデルRef.4947&4948に引き継がれた。二世代目の主な変更点はベゼルのみダイアの4947はダイアルがMOPからソリッド通常文字盤になり、ケースサイドとラグまでダイア装飾の入った4948のみがMOP文字盤とされて住み分けが図られた。インデックスは全て正体のアラビア植字となりケース径が1mmUPした。少し若返った印象だろうか。いづれにしても美人姉妹のような関係が続いている。
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で、いつもどおり前置きが終わって、今回の新色は豪華仕様の姉のWG素材の文字盤変更である。画像は質感が出ていないが資料には真珠母貝とある。我々もスイスパテック社のHP上の画像確認だけなので判然としないがアラビアインデックスのみが鏡面シルバー色(下画像とはかなり違うが?)でレールや曜日、月等のディスプレイはブラックのようだ。でもこの顔どっかで見た既視感があると思ったら、今年バーゼルでレディス永久カレンダーRef.7140に素材追加されたWGのスペアストラップ(シャイニーグリーンターコイズアリゲーター)仕様とか、妹分の年次Ref.4947Gに文字盤追加されたシルバリィ バーティカル アンド ホリゾンタル サテンフィニッシュド ダイアル(長っ!)とか。
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ともかく最近のパテックのトレンドなのだろうレディスはブルー系やグリーン、パープル、ピンクなど明るいビビッドカラーのアリゲーターストラップの採用がラッシュだ。

Ref.4948G-010 レディス年次カレンダー

ケース径:38.0mm ケース厚:11mm ラグ×美錠幅:19×14mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション: WG(別ダイアル有
文字盤:バリ産ホワイト マザー オブ パール、ゴールド植字インデックス
ストラップ: 青緑系アリゲーター ※カラー名称不明、パテックHP記載のブリリアント・ミンクグレーは誤植と思われる為
バックル:ピンバックル(Prong buckle)
ダイアモンド:ケース347個~2.65ct リューズ14個~0.06ct バックル27個~0.21ct 合計388個~2.92ct
価格:税別 7,670,000円(税込 8,283,600円)2017年9月現在
9月よりデリバリー予定

Caliber 324 S QA LU
直径:30mm 厚み:5.32mm 部品点数:328個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

前回に続いてディスコン(生産中止)の銘品紹介シリーズ。レディスコンプリケーションのトラベルタイムRef.7134G。天才時計師ルイ・コティエ氏によって考案されたトラベルタイム機構の特許をパテックが取り製造を始めたのは50年以上も前の1959年。その後クォーツ全盛期時代に製造は一旦途切れている。スイスの機械式時計がようやく復活した1990年代後半になって現代のトラベルタイムの製造が再開した。
今回紹介のRef.7134Gは2013年に発表され2016年にディスコンされた少し短命なモデル。或る意味製造個数も少ないはずで希少性は高い。
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実はこのモデルの生産中止で現在レディスのトラベルタイムコレクションのラインナップが無くなっている。個人的には1997年から再開された現代トラベルタイムのレディスでは一番お洒落で良い顔をしていると思う。何が良いって文字盤の色目が表現の仕様が無い微妙な薄めのブラウン。同色のアリゲーターストラップのカラー名称がシャイニー トープ(Shiny taupe)。そう、某有名ブランドE社の中々買えない超人気レディースバッグにも採用されている有名な色目。いわゆる旬のお色。
全ての針と6時側のスモールセコンドインダイアルと12時側のホームタイムと連動した24時間インダイアル、パテック フィリップのロゴ等の情報一切が白色でまとめられておりスッキリと締まった表情になっている。18金製のアラビアインデックスはポリッシュされており少々視認性に難がありそうだが、オフィスや屋外など光量がしっかりある環境なら充分見易い。逆に少しトーンダウンしたレストランのディナー席などではインデックスが変に悪目立ちしないのでラグジュアリーなドレスウオッチとなる。ベゼルにはトップウェルセットンのダイアモンド112個(~0.59ct)が丁寧にセッティングされている。パテックのダイアセットはその時計作りのポリシー同様に実用性を高めるため衣類の袖口が引っかかったりしないよう滑らかさを最優先した手法を採用している。海外を舞台に働くキャリアウーマンにはうってつけの一本と言えそうだ。

Ref.7134G-001
ケース径:35mm ケース厚:9.2mm ラグ×美錠幅:18×14mm 防水:3気圧
112個のダイヤ付ベゼル(~0.59カラット)
ケースバリエーション:WG 
文字盤:ブラウン サンバースト 18金植字アラビアインデックス
ストラップ:シャイニー トープ アリゲーターストラップ
価格:税別 4,510,000円(税込 4,870,800円)2016年11月現在
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Caliber:215 PS FUS 24H
この時計手巻きである。実用性からすれば極薄自動巻きCal.240にトラベルタイムモジュールを積めば良さそうだが、たぶん文字盤レイアウトに無理があって手巻きの名キャリバー215が採用されている。ビックリするのはトラベルタイムモジュールの薄さだ。ベースキャリバー215の素の厚みが2.55mmで部品点数130個なのでモジュールは厚さ0.8mmに48点のパーツで構成されている事になる。他のメンズのトラベルタイムと違ってホームとローカルタイムの昼夜表示が無いにしても凄い部品密度である。ケースの厚みは9.2mmと意外にある。たぶんトラベルタイム操作プッシャーを組み込む為にある程度の厚みが必要なのだろう。

直径:21.9mm 厚み:3.35mm 部品点数:178個 石数:18個
パワーリザーブ:最短44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

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文責:乾

2017年6月9日現在 店頭在庫有ります

2016年新作レディスモデルのテーマの一つが"ダイア"。既存モデルをベースにしたダイアモンドデコレーションバージョンの追加であった。圧巻はダイアモンドリボンのメレダイア文字盤敷き詰め+ラグダイアモデルRef.4968/400R-001。全くの新作としか思えないほど原型を留めていない。その一方で一体何が変わったの?間違い探しですか。というモデルがRef.4897/300G-001。その原型が下のロングセラーRef.4897G-001。
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現物ではその違いがはっきりするのだけれどもモニター画像の比較では実に解りにくい。従来72個のラウンドブリリアントカット(約0.47カラット)のダイアモンドで飾られていたベゼル。これがバージョンアップされて48個のバゲットダイア(約1.21カラット)がセットされ、さらに美錠(ストラップバックル)にも6個のこれまたバゲットダイア(約0.19カラット)が埋め込まれた。で、気になるこれらダイアモンドのお値段比較ですが、従来品Ref.4897G-001が税別314万円に対して、結構瓜二つのラグジュアリー版のRef.4897/300G-001はほぼ50%UPの同470万円ナリ。特別にモデル名も"LADIES CALATORAVA JOAILLERIE"と与えられた。
この価格差と見た目差をどう捉えるか。枕で紹介したホントに姉妹?のダイアモンドリボンでは(姉に較べれば)清楚な妹が税別594万円に対して、ゴージャス極まりない姉(但しバゲットは一切無し)が同742万円で約25%UP。こちらにもモデル名に″JOAILLERIE"の名が追加されている。種明かしすればバゲットダイアはとても高価なものなんです「チャンチャン!」と言う事なのだけれども・・・
個人的には今回紹介するRef.4897G-001はかなりお買い得ではないかと思う。ダイアのあしらわれ方もむしろラウンドの方が清楚で好感が持てるという意見もある。特に日本人女性にはこちらの方がバランスが良さそうである。

このモデルは2009年に見た目を変えずに微妙なモデルチェンジを受けているが、初代は女性用ウルトラシン(極薄)のメカニカルとして2006年にデビューしたRef.4896Gである。
今この時計をボーイズ扱いで小柄な男性にお薦めしようとは思わないが、2006年の初見時は真剣にそれを考えたし、実際に百貨店部門で男性向けの販売実績もあった。逆に言えばデビュー時には日本の女性市場では少々大振り感があった。たったの10年で我々プロのサイズ感も大きく変わっている事に我ながら愕然とする。しかしいつもながらのパテック フィリップのケースの薄さ(たった6.6mm裏スケ、初代は6.35mmでノーマルケースバック)で装着感は実に良さそうだ。
さて、この時計の最大の魅力は文字盤。妖しいまでのミステリアスなサンレイパターンを表現するギョーシェ(細かい連続パターンの筋目彫り)加工を施し、ミッドナイトブルーラッカーを塗って焼いて磨いての12工程で大層な手間をかけて仕上げている。その上から転写プリント手法で最終銀粉をまぶしたアローシェイプインデックスとブランドロゴの化粧。ルーペで見ると下地ギョーシェの影響を全く受けていないブランドロゴと楔上のアワーマーカーが少し浮き上がって見える。実は2012年の秋にスイスのダイアル工場で実際にこの転写プリントの現場を見ているのでこの時計は個人的にとても思い入れが深い。是非店頭でその吸い込まれそうな文字盤をご覧いただきたい。
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さらにロゴ廻りに肉薄すると・・ なぜか浮いているように見えるのは私だけでしょうか?
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この時計はいわゆるココイチ時計でデイリーユースにはあまりにシックで色の個性も強い。ではいわゆるパーティーウオッチかというとインデックス及び18金のドーフィンハンドの片面がサテン調(ロジウムメッキ仕上げ)なので視認性がとっても良く実用性は高いのでバリキャリ向け・・・少しオーナーとTPOを選んでしまう上級?な一本。ただ色目の違いによって印象が大きく異なるモデルでもあり、素材違いのローズゴールドを含めてカラーバリエーションが全4色用意されており、薄色2色はデイリーユースにも向いている。まあ妖艶な美人は懐もずいぶん深いと言う事なのか。

Ref.4897G-001
ケース径:33mm ケース厚:6.6mm ラグ×美錠幅:17×14mm 防水:3気圧
72個のダイヤ付ベゼル(約0.47カラット)
ケースバリエーション:WG(別ダイアル有)の他にRG(別ダイアル有) 
文字盤:ギョーシェ彫装飾のナイトブルー、18金パウダー転写インデックス
ストラップ:ミッドナイトブルーサテンストラップ
価格:税別 3,140,000円(税込 3,391,200円)2016年11月現在
4897G215.jpg
Caliber:215

ムーブメントはパテックを代表する手巻キャリバー215。シンプル極まりない2針なので超薄仕様だ。2006年に発表されたシリコン系素材Silinvar®「シリンバー」採用の革新的なSpiromax®スピロマックスひげゼンマイが搭載されたことで耐磁性と耐衝撃性が格段に向上している。まさにパテック フィリップの哲学"伝統と革新"を体現した頼もしいエンジンが搭載されている。

直径:21.9mm 厚み:2.55mm 部品点数:130個 石数:18個 
パワーリザーブ:最短44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2016年11月3日現在
4897G-001   店頭在庫有ります
色違い、素材違いはご予約対応となります。
(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)
関連ブログ:着物でパテックフィリップ、ショパール(2016/4/30記事)

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