パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

手巻き 一覧

パテックはウォッチーズ&ワンダーズ終了前日の4月12日にカラトラバとコンプリケーション系でメンズとレディースの各1モデル計4型を発表した。先行発表されたノーチラス4モデルが生産量の大小はあれども、需要が供給を圧倒的に上回るのは誰の目にも明らかだろう。パテック社からは何ら発表は無いが、新型コロナ禍が時計市場に及ぼしている影響度合いは、世界各地で相当まだら模様の様で有る。想像するにスイスを含めてヨーロッパはかなり悪いのではないかと思われる。北米と中南米もかなり厳しいのでは無いだろうか。恐らく中国本土、日本、台湾、シンガポール等のアジア諸国とオーストラリアやニュージーランドなどのオセアニアは大半の販売拠点が何とか営業出来ているのではないか。正式なコメントは無いが、例年では考えられない客注商品の特別入荷が昨年秋頃から今なお続いている。今年初めにはいつまでもこんな(嬉しい)異常な状況が続く事は無いと覚悟していた。しかし変異によって繰り返し寄せ来る大波の様な新型コロナ禍は一向に改善される気配が無く、我が国も過去最悪の状況に追い込まれそうな第4波に襲われている。それでも何とか経済活動が制限されていないので、イレギュラーな入荷基調は今現在も続いている。そして有難い事にパテックに関しては、ご客注のキャンセルが殆ど無いので経営的には非常に貢献して貰っている。
しかしながら、パテックの様に新型コロナの影響を感じさせないブランドは少数派であり、ロレックスのスポーツモデル全般とオーデマ・ピゲのロイヤルオーク等がその筆頭である。特に1970年代に天才時計デザイナーのチャールズ・ジェラルド・ジェンタが考案した、ロイヤルオーク及びノーチラスとアクアノートを代表格とする全く新しい時計コンセプト、いわゆるラグジュアリースポーツカテゴリーに異様に人気が偏っている。1990年頃から始まった機械式時計の復活劇の中で、2000年頃以降はクロノグラフウォッチが人気牽引の先頭を走ってきた印象が強いが、2008年のリーマンショックを機に徐々に再販価格の価値が高級機械式腕時計の選択基準での最優先項目へと移行してきた様に思う。此処数年、"何で?"と聞きたい程にあらゆるブランドから類似するラグジュアリースポーツタイプの時計が雨後のタケノコの勢いで発表されているのは、これ如何に!
そんな状況下で特別感を持たせた2モデルを含むノーチラス4本のみ発表したパテックに、安心感と同時に"トキメキとワクワク感"皆無のフラストレーションにも揺れた5日後。4月12日に実にこれぞパテック フィリップという新製品が追加発表された。"Simple is the best"1932年に発表されパテックのみならず現代メンズウォッチデザイン原器とも評されるRef.96。只々時刻を知らせる表示機能に徹しきった"引き算の極地"カラトラバのメンズ1型2素材とレディース1型。そしてこれらとは対極に有りながらもパテックならではのお家芸としか言えない"足し算の極地"複雑時計もメンズとレディース各1モデル。

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Ref.6119は、縮少し続けていたカラトラバ・メンズコレクションへの待望のニューフェイス。品番的には2006年にマイナーチェンジデビューし2019年迄ベストセラーで有り続けたRef.5119のアップサイジングモデルと分かり易い。カラトラバを代表するモデルのひとつと言っても差し支え無い決め手の意匠は、古くは1934年のRef.96Dや、1985年のRef.3919などにも見られる特徴的なベゼルデザイン。

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"Clous de Paris"(クルドパリ 仏語 意:パリの爪または鋲釘)英語表現では"hobnail pattern(ホブネイルパターン)"で靴底用の鋲釘文様の意味なのでピラミッド状突起の連続パターンが二重円周状に装飾されている。奇をてらう事無くシンプルで派手過ぎない意匠ながら一目で、パテックお手製のタイムピースである事を証明してくれる。コピーやデフォルメを他ブランドに想起する事を考慮させ無いない程に、ブランドとして唯一無二のデザインとして確立しているのだ。歴代モデルとの外観の違いは、まずサイズで39mmは前作5119にプラス3mm、前々作3919からは5.5mmもデカい。1985年から36年でケース径で約16%だが、面積比では36%弱も巨大化している。この期間に人類の栄養事情が大きく改善し体格が、同様に向上したとも思えない。但しブランドを問わず価格だけは、間違いなく貨幣価値の変動を考慮しても大きく上回って高価格化している。ラグ形状はロー付けされた華奢なオフィサータイプからケース一体の鍛造削り上げ仕上げでシャープな形状(勿論カラトラバ普遍デザインの一つ)に変更された。

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またインデックスもシリコン転写プリントのローマンインデックスから現行手巻きカラトラバのRef.5196と同様の18金素材の四面ファセットの弾丸(オビュー)型形状のアップリケ(植字)仕様となり、針形状も呼応する様に3面のファセットから生まれるエッジの効いた尾根を持つドフィーヌ(語源はイルカDolphinでは無く、パリのシテ島内の地名)針が採用されている。文字盤の一番外側にはレール(仏:シュマン・ド・フェール)形状の分スケールがプリントされている。スモールセコンドもシンプルながらも存在感の強い新意匠でプリントされているが、何より後述する新型ムーブメントがケースのアップサイジングに追随するかの様に大型化された事での秒針(=四番車)の位置取りが良くなった要素が素晴らしい。そして目立ち難いが二重円周の"Clous de Paris"クルドパリの内側にフラットでスリムな円周縁がボックスタイプのサファイヤクリスタル・ガラスを取り巻く様に設けられている点も見逃せない。

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アリゲーターストラップとピンバックルは前モデル5119と同じ仕様だ。尚、この現行カラトラバに装着されているピンバックルが、アメリカ市場を開拓した故アンリ・スターン前々社長の同市場向け発案の賜物であった事を初めて知った。
軽く紹介のつもりが、初見の印象以上にアレもコレもと従来機に無い意匠が次々と攻め立てて来るので長文ダラダラになってしまった。サイズがデカい兄貴モデルの出現かと思ったら、クラシックなデザインの組合せではあっても実は似て非なるこれ迄に無かった時計に仕上げられていた訳だ。で、結局の処こやつのハンサム度合いを個人的にどう見るかだが、2006年に本気で購入する気だったRef.3919Gを買いそびれ生産中止に指を咥えていた身なのでオフィサーケース+プリントブラックローマンインデックスに大いに後ろ髪を惹かれっ放しだし、実機を手に取って見れていないので正直判らないが本音だ。でも画像を見れば見るほど既視感も覚える訳で、特にサイドビューは現行5196にそっくりだ。

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インデックスと時分針もほぼウリだ。しかしクルドパリ・ベゼルもしっかり主張してくる。乱暴に言えば廃番5119と現行5196を足してニで割ってサイズアップしたモデルと言えなくも無い。これは肯定的に受止めるべきで両モデルが並存していた2019年迄は、手巻きカラトラバの選択で誰もが多いに両者で悩み抜いたものだった。6119は両者の良いとこ取りでより今日的にアップデートされたクラシックなエレガンスウォッチだと思う。対して5196はカラトラバの原点Ref.96に何処までも忠実なマイルストーン的なオリジナル時計と呼びたい。今後はこの両者で悩まされる事は無さそうだ。

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尚、WG素材の6119Gの文字盤仕様はチャコールグレーの縦サテン仕上げにスモールセコンド部はブラックの微細な同心円ギョーシェ装飾の組合せで、2019年にいわゆるコスメティックチェンジでWGからRGに素材変更され発表されたレギュレーター・スタイルの年次カレンダーRef.5235/50Rの文字盤と酷似している。これは好き嫌いがはっきり出る様に思われる。

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サイズや外観の好き嫌いは別にして、手巻きのエンジンは全くの新設計だ。最近のパテックでは音鳴り系の超絶複雑時計用ムーブやクロノグラフムーブの新設計は有ったが、いわゆる汎用機に広く使い回しされるベーシックムーブメントの完全な新規開発は絶えて久しかった様に思う。2019年にウィークリーカレンダー用に開発された自動巻ムーブメントCal.26-330系も従来の主要機Cal.324系をベースに大改造が加えられたもので完全な新キャリバーとは言い難い。3919や5119に搭載されていた手巻Cal.215系も源流を遡れば1939年頃に登場したCal.10系をその遺伝子に持ち、1970年代後半に時代の要請から薄型化が計られ生み出された名機である。
ひょっとすると完全なベーシックムーブメントと言うのは、1970年代初期に短期間で開発されたマイクロローター搭載の超薄型自動巻キャリバーCal.240まで約50年程も遡るのではないか。何もパテックが開発をサボった訳ではなく、現代腕時計製作に必要な手巻きも自動巻も基幹ムーブメントをブランドとして早々と完成していたので、主ゼンマイ等の主要部品の素材見直しや部分的な設計修正で充分今日まで実用的対応が容易だったのだ。しかしながら此処10年くらいは多くの他ブランドのパワーリザーブの延長化トレンドに対して、パテックのシンプルなベーシックキャリバー群にあまりにもハンディを感じずにはいられなかった。この点は拙ブログでも個人的に何度も改善希望を訴えてきた。
但し、決してパテック社がロングパワーリザーブを敬遠していたのでは無く、ミレニアムイヤーの2000年にCal.28-20/220と言う当時最長レベルの10日間の超ロングパワーリザーブを持つ手巻きキャリバーを開発し、10-Days・Ref.5100として製品発表している。

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さらに2006年にはこのCal.28-20/220をベースに2日間のパワーリザーブをカレンダーの瞬時変更に転用し、傑作レクタングラー8-Days・Ref.5200をリリースしている。
もう一点の気掛かりが有って、現在の機械式時計でほぼ標準装備であるハック(時刻合わせ時の秒針停止)機能も"日差数秒レベルの機械式には不要"との思想がパテックには有り、未搭載での時計作りを継続して来た。だが今や業界標準に比べてあまりにも孤高に過ぎるし、自社基準精度の−3〜+2秒と言う業界最高レベルの歩度基準にこそハック機能搭載の価値があると思い続けてきた。
この二つの引っ掛かりの内、後者のハック機能は2019年新製品で大きな話題を呼んだウィークリーカレンダーRef.5212にフルローター旗艦Cal.324を徹底的に改良したCal.26-330系に搭載された。既に部分的には進行形であるが、今後は324搭載モデルにはランニングチェンジでこの新エンジンが積まれるのであろう。
今回紹介の6119に積まれる新キャリバーには、この二つの憂いが見事に解消されていてハックはテンプ(振り子)に直接ストッパーで停止・発進する非常に実用的なスタイルが採用され、ロングパワーリザーブは香箱を2個上下に重ねてひたすら駆動の長時間化を計るのでは無く、同一面上に横並びにして安定して高トルクを与えながら現代のライフスタイルに適用し週末乗り切り可能な65時間の絶妙なパワーリザーブの延長を実現した。必然的にムーブ径(ケーシング径)は30.4mmと大き目だが厚さは2.55mmと薄い。両者のサイズからムーブメント名称はCal.30-255 PSとされた。尚、3919や5119等を始めレディースモデルにも広範囲に積まれている従来の主力手巻きエンジンCal.215系もその名称はそのケーシング径21.5mmに由来する。ツインバレル化で新エンジンは直径で約9mmもサイズアップしたが、驚くべきはその厚み2.55mmが従来機と同一に抑えられている事だ。結果としてケース厚(上下サファイヤガラス部分)は8.08mmと5119の7.43mmに対して僅か0.65mmしか増していない。1900年代半ばから各ブランドのメンズの主要機械式ムーブメントの主要サイズの多くが30mmであった事からすれば、この新しいエンジンはメンズ専用と見れば大き過ぎるという事は無く、逆に今日的にはケース径30mm半ばの大振りレディースの出現も珍しく無い事からすれば、新エンジン搭載レディースの登場もあながち否定は出来ない。
しかし、この時計はRGとWGで別物に見えるくらい文字盤周りの化粧仕様が異なる。RGは何処までもコンサバでクラシック。対してWGはアバンギャルドでスポーティ、いわゆる"チョイ悪"風と言えば良いのか。個人的な空想レベルでは、来年に東京で開催予定のパテックが世界の主要都市をラウンドする"ウォッチアート・グランドエグジビジョン・東京"の日本限定モデルでステンレス素材にブルーからブラックにグラデーションするダイヤル"サムライブルー"なんぞが出たりせんかいなァ。

Ref.6119G-001
ケース径:39mm ケース厚:8.1mm 防水:3気圧
文字盤:縦サテン仕上げチャコールグレー ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有)ブラックの手縫い風アリゲーター
価格:お問い合わせください

Ref.6119R-001
ケース径:39mm ケース厚:8.1mm 防水:3気圧
文字盤:グレイン仕上げシルバー ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有)チョコレートブラウンの手縫い風アリゲーター
価格:お問い合わせください

Caliber 30-255 PS
直径:31mm 厚み:2.55mm 部品点数:164個 石数:27個
パワーリザーブ:最小65時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

文責:乾 画像:パテック フィリップ

パテックの何が売りたいって?聞かれれば、"永久カレンダー搭載手巻クロノグラフ"と"ミニット・リピーター"が個人的には一・二番だ。天文時計の"セレスティアル"や"スカイムーン・トゥールビヨン"も凄い時計なのだけれど愛用する年次カレンダーの月齢さえもテキトーにしか付き合っていないし、昨年末の"ふたご座流星群"や"土星と木星の大接近"も睡魔と寒さにあっさりスルー。天文系は奥が深すぎて入口の扉のノブにさえ手が掛けられない。
レア・ハンドクラフト群も勿論パテックの顔ではあるが美術・工芸品の趣が強いし、意匠毎の好き嫌いも各人各様あり過ぎる。時計道なる主流とは別の道を歩んでいる偉大過ぎる傍流だと思っている。
主流にはさらに、超絶コレクションのグランドマスター・チャイムやトゥールビヨンとミニットの合わせ技や、クロノグラフと永久カレンダーとミニットなんて組み合わせも或るわけだが、過去のアーカイブの分厚さで冒頭の二つが同ブランドの金字塔だと思っている。さらに言えば2015年6月の当店パテックコーナー開設以来、まだ販売が叶っていないながら、近未来的に商売が出来そうな可能性が有りそうなのもこれらであって、さらなる超絶系は販売出来るという予感が今現在は湧きそうにもない。
ところがこの両者にも格の違いがあって、永久カレンダー搭載クロノグラフには定価設定が有って販売用の店頭在庫品としてごく稀にご覧頂ける事もある。それに対してミニット・リピーターは時価の扱いで、厚みのある既存パテックコレクターからの発注をスイスのパテック社が審査し、ほぼ受注生産にて納品されるので店頭に売り物が並ぶ事は無い。ゆえに実機編記事は当店がミニットを受注・納品しなければ書きようが無い。今般機会を得て前者の実機編を綴るチャンスがやってきた。2020年は新型コロナ禍に明け暮れたぶっそうな年だったが、新年早々お年玉よろしく願ってもない幸運がやってきた。
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パテック社が永久カレンダー搭載クロノグラフを最初に発売したのが、スターン兄弟時代である1941年発表のRef.1518で、ムーブメントはバルジュー社製エボーシュを当時パテック社と強固な関係にあったヴィクトラン・ピゲ社が徹底的にチューニングしたもので、そのケース径は35mmしかなかった。現役の5270用自社ムーブメント径が32mmなので機械内部のパーツ密度は当時の方が高かった可能性がある。閏年や昼夜表示が当時は無かった事を差し引いても凄い技術力があったのだろう。現代と較べて工作機械や設備がかなり劣っていた環境で人的な技は上回っていたのかもしれない。
1518の総生産数は281個とされていて、1944年製のSSモデルが11,002,000スイスフランという腕時計落札の世界記録を2016年11月に達成している。このSSモデルは確認されている個体がたったの4個しかない稀少性が当時の日本円(同年平均レート110.39円)にして12億1450万円(ホンマかいな!)というとてつもない高額レコードを生み出したのだ。
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さてさて超人気モデルのノーチラスSS3針5711/1Aは今現在でこそとんでもないプレミア価格が2次マーケットで闊歩しているが、1リファレンス最大年産数1,000本以下というパテック社の社内ルールから推し量って、2006年デビューから14年間で恐らく1万本以上は生産されていると想像すれば、将来のアンティークとしての市場価値は非常に疑わしい気がする。個人的には生産数が限られるプラチナ製の今回の紹介モデル系統を購入したいが、先立つものが無いのと、同じベースキャリバー搭載でプラチナケース製の"素"の手巻クロノグラフを清水の舞台やら、東大寺二月堂などから10回ぐらい飛び降りて愛機にした経緯が有るので、多少持ち重なるという言い訳にて無理やり封印・納得する次第。
皆さん!子供・孫の為なら絶対コッチですよ。そしてゲットしたら一日も早い生産中止を祈る事です。愛機のプラチナクロノRef.5170Pはたった2年でディスコン、あぁ万歳!

閑話休題、アンリ・スターン時代初期の1951年にモデルチェンジしたRef.2499が同じくバルジュー製ムーブメントでリリースされた。生産数は349個。ケース径は37.5mmで、有名な落札記録は1987年製プラチナ素材の現存2点もので、長らくギタリストのエリック・クラプトン氏が愛用していた個体で2012年11月に3,443,000スイスフラン(同年平均レート85円で2億9265万円程)で高額落札されている。尚、残る1点はジュネーブのパテック フィリップ・ミュージアムに所蔵されている。
現名誉会長フィリップ・スターン時代の1986年にはRef.3970がヌーヴェル・レマニア製ムーブメント CH 27-70 Qを搭載してケース径36mmで発表された。2004年迄製造されたが、生産数等の公表はされていない様だ。
2004年にはティエリー・スターンのマネジメントで後継機Ref.5970がムーブメント継続で発表された。ケース径は時代を映して少し大ぶりな40mmとされた。ティエリーが社長就任した2009年にはレマニア社からのムーブメント供給問題もあって同モデルは5年というやや短命で生産中止となった。
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2011年クロノグラフムーブメントの完全自社開発生産プロジェクトの総仕上げとして自社クロノグラフムーブメント第3段の手巻CH 29-535 PS Q搭載のRef.5270がケース径41mmWG素材で発表され現在に至っている。
スイス機械式時計の暗黒時代(1960年頃~1990年頃あくまで自説・・)にあっても生産数量を絞りながらもパテック社は永久カレンダー搭載クロノグラフというグランド・コンプリケーションを作り続けた。ところがミニット・リピーターやワールドタイム、トラベルタイム等の現行ラインの人気シリーズの生産記録がこの期間には殆ど見当たらない。個人的には細々ではあっても途切れずに生産が継続されつづけた事が、パテックにおける永久カレンダー搭載クロノグラフの位置付けを別格なものにしていると思っている。やっぱり、ほっ!欲しい!
2499はケースデザインや文字盤によって世代交代が有り、前述の1518と併せて両方で僅か630個しかない個体群に蘊蓄や夢やロマンなどが詰まった一大世界がある様だ。パテック フィリップ・マガジンの人気ページであるオークションニュースで出場回数が最も多いのがこの2モデルでは無いだろうか。たぶん一番追いかけられているアンティークパテックである様に思える。最初はこの両モデルについて詳細に調べ上げて書き連ねようと思ったが、アンティークやヴィンテージは門外漢なので上記の様な世俗的で気になるトピックスのみをご紹介し、以下は実機を子細に見てゆきたい。尚、永久カレンダー搭載クロノグラフの参考資料(2499以降)としてWeb Chronosの記事が面白い。
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好きな時計の撮影は何故か上手く撮れると言うジンクスは時として崩れる。実機からはオーラの様な凄みが放たれているが画像には全くそれが写し込めていない。特に文字盤カラーのヴィンテージローズっぽい色目がどうにも写ってくれない。現物はもっと発色があってオレンジとサーモンピンクの中間の様な絶妙な色目。因みにPPの公式カタログではダイアルカラーをゴールデン・オパーリンとしているが個人的にはけっこう違和感が有る。その他にも後述するが現物と違うのではないか、と思わせる色絡みの記述が少し有って、ひょっとして撮影した実機が微妙な仕様変更を受けているのかと疑ってしまった。尚、5270のデビュー当時2011年頃のダイアル外周部は外から秒インデックス、分インデックスの2重レール表示サークルだったが、現在は画像の様に秒と分サークルの間にタキメーターが入って3重のサークルとなっている。その為6時位置の日付表示サークルの視認性を確保するために分サークルとタキメーターサークルの一部が削られ、3時から9時までの植字インデックスも非常に小型化された結果、独特の進化を遂げた顔になった。また閏年と昼夜の表示をそれぞれ独立した窓表示とし視認性を向上させているが、これについては後程ムーブメントと絡めて説明したい。
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18金WG製の針と植字のインデックスは、ひとつ前の文字盤全体画像では全てマット調の黒仕立て・・に見える。とこらが直上画像では針に関しては全てがシルバーカラーの鏡面仕上げの様にも見える。公式カタログには確かに針表記としてBlackened leaf-shaped in white goldとあるのでPPJに確認をしたが、全針がブラック処理でありカタログ記載通りの仕様だった。実機を今一度見直したが、見れば見る程まるで白黒判然とせぬミステリアスで magic handとでも呼びたくなってしまった。また4・5時のピラミッド状の極小インデックスの左側面はシルバーっぽく見えるがこれも照明の反射によるものだ。この豆粒の様な小さいブラックインデックスはサイズ的には視認性が悪いが、ゴールデン・オパーリンの独特な文字盤カラーには非常に映えている。
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今回の撮像で一番ましなカットが上の一枚。伝統の逆ぞり(コンケーブ)ベゼルは初代の1518でも採用されている個体があり、2499ではお約束になっていたデザイン。段付きのラグも2499からの流れ。肩パッドの様なウイングレットラグはティエリー監修の5970からの採用。今回の撮影で初めて気づいたのがケースサイドの凸状の段仕様だ。四ヶ所のラグで分断されるがケース全周に渡って施されている。過去どのモデルからの意匠なのか知りたかったが、適当な参考画像が無く不明である。しかしいづれの特徴的意匠もパテックの永久カレンダー搭載クロノグラフのアイコン的デザインであり、ダイヤルの表現が仮に酷似していても他ブランドと見間違う事は無いだろう。
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段付きケースサイドの6時側にはプラチナ製パテックの証である一粒ダイアモンドが埋め込まれている。他モデルに比べて少し大ぶりな気がするが多分気のせいだろう。左側のおへそはムーンフェイズ調整用ボタン。
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背中姿の写りもショボいナァ。ほぼ全身が鏡面仕上げの中でクロノグラフのプッシュボタンの下面(上面も)のサテンフィニッシュが実に良いアクセントなのだが残念な画像からは伝わって来ません。
パテックはクロノグラフ・ムーブメントの自社化に際して、古典的なキャリングアーム(手巻と相性の良い水平クラッチ方式)の芸術的ともいえる見た目の美しさはそのままに数々の工夫を凝らして非常に進化した中身の濃いムーブメントを設計した。例を挙げるとスケルトン面の左半ばにある黒く円盤状のパテックのクロノグラフに特徴的なコラムホイールシャポー(帽子)の偏芯化。またクロノグラフ関連歯車の形状を一般的な三角歯からウルフティース(狼歯)と呼ばれるより噛み合いの良い形状にしたり、その歯数を増やして針飛びの影響を低減させている。また一般的な永久カレンダー機構では、うるう年の2月29日表示の為に4年で一周する48ヶ月カムが組込まれているが、この自社キャリバーでは1年で一周する12ヶ月カムにうるう年調整用の突起を設ける事で2月29日を表示している。
そんなこんな各種新設計がダイアル下部にスペースを生み出し、自社ムーブ以前のモデルでは3時と9時のインダイアルに同軸の針表示としていた閏年表示と24時間表示を4時半と7時半に独立した小窓表示にして、視認性を格段に向上させている。尚、窓表示化によって24時間表示は2色(白と)の昼夜表示に変更されている。
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カレンダー調整用のファンクション・ペンシルの金属部分はPTでは無くWG製。パテックのグランド・コンプリケーションカテゴリーに属す裏スケルトンモデル全て付属するソリッドなノーマルケース・バックは5270Pでは25グラム。ところで25グラムは、昨今のプラチナ地金買取価格は1グラム3,700円前後なので9万円強となる。ちなみに金は6,800円前後なので「なぜプラチナ製時計の方が高いのだ?」と言う疑問が湧く。ところで水は1㎤で1g、24金なら19.32g、プラチナ21.45g、銀10.5g、銅8.5g。この比重だけを較べると同じ体積の時計ケースの原材料費としては金の方が高くなりそうだが、時計の素材としての金は18金なので25%は銅や銀等の低比重の金属が混ざっていて、その比重は15~16g(合金比率で変化する)とされている。残念ながら18金の価格と言うのが良く解らないので乱暴だが6,800×75%=5,100円とし、18金の比重を仮に15.5gとすれば、プラチナは比重比で21.45÷15.5=約1.38倍、価格比では逆に3700÷5100=約0.73倍となる。両者を掛けて1.38×0.73=約1.0となるが実際には25%の銀や銅等の素材代が加わるのでプラチナケースの原材料代は少し18金よりは安価に思われる。ではなぜプラチナ時計は同モデル18金素材よりも高いのか。咋秋に発表された5270の18金YGモデルと較べて本作は約17%弱高額だ。これには両者の加工の難易度が大きく影響していると思われる。18金は非常に扱いが容易だが、プラチナは叩く(鍛造)、切る(切削)、磨く(研磨・仕上げ)と何をするのもやり辛くコストがかかる素材だ。
ところで思いついて手元の2000年のカタログで当時の永久カレンダー搭載クロノグラフRef.3970の両素材の価格比較をするとプラチナが約14%高額だった。そして当時の年平均プラチナ相場はグラムあたり1,963円。純金はたったの1,014円。前述の乱暴な18金換算で75%掛けなら760円。プラチナは約2.6倍もしていた事になる。つじつまが合わない話だ。これでは3970時代は圧倒的にプラチナがお得だった事になってしまう。いやはや困った事になってしまった。迷宮に入り込んで頭を抱えているのは「おまえだけだ!」という話かもしれないが・・
そこで5270Pの総重量を計ってみた。ソリッドの裏蓋も含めて153g。この中にはムーブメントやストラップ、上下のサファイアクリスタル等のケースとバックル以外の重量も含まれるので実際の素材の重さはもっと少ないはずだ。そもそも3970と5270の重さが違う。それらの誤差や様々な無茶を承知で両者を無理やり比較してみた。

名称未設定-1.gif繰り返しになるが、上図は相当に無理があると断ったうえで細かい金額はともかく四捨五入して2千万円クラスの超複雑腕時計の原材料費は、時代による相場変動が有ろうが上代の5%未満かもという事だ。ちなみに表の右端Rhは通常プラチナ製時計やジュエリーの表面にメッキされる白色金属のロジウムの価格。従来はWG製品にもメッキされる事が常であったが、昨今はメッキ無しで良好な白色にWGを仕上げるブランドが増えて来た。ちなみにパテックも大半のWGモデルでロジウムメッキを現在は施していない。このロジウム元々高価な金属だが最近高騰が著しい。非常に産出量が少なく、殆どが車両エンジンの排ガス処理の触媒として利用されている様だ。
実に乱暴な原材料費の分析だが、他素材に較べてプラチナモデルは生産数がかなり少なく、素材特性上の加工費が想像以上なのだろう。高騰するロジウムをメッキする手間も費用もかかるし、小粒ながら6時位置のケースサイドにはダイアも埋め込まねばならぬし・・
少しプラチナウォッチの値付け解析が長くなり、無理やり納得した部分も有るがともかく昔も今も貴重で高価な"パンドラの箱!"という事にしておこう。
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ケース厚は12.4mm。ベースキャリバー CH 29-535 PSの5.35mmに僅か1.65mmしかない永久カレンダー・モジュールを乗せてムーブ厚合計は7mmに仕上がっている。さてこのサイズ感は他ブランドと比較してどうだろうか。

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手巻かつ現行モデルに限って探してみたが、上記以外オーデマピゲやブレゲ等にもありそうだったが見当たらなかった。サイズ的には各ブランドよく似たものだがムーブ径はヴァシュロンに譲るが、その他はパテックが微妙に優っている。ランゲにはパワーリザーブが搭載されるが、24時間表示ないし昼夜表示はパテックしか採用していない。尚、画像も含め検索結果ではほぼパテックの独壇場で、このジャンルに於いての王者の位置付けは盤石である。
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プラチナ製のフォールドオーバークラスプ。カラトラバ十字部分を押さえて装着するが、真上からまっすぐ下に押すのではなく若干斜め(画像では右から左側の方向)に押すのが正解。敢えてまっすぐにしていないのは、カラトラバ十字のロウ付け部4ヶ所が真上からの圧力での抜け落ちる事を予防する為である。尚、斜め度合いにはかなり個体差が有る。同形式のクラスプをご愛用のオーナー様はご参考頂ければ幸いである。
手巻永久カレンダー搭載クロノグラフは1941年のシリーズ生産初代から様々な素材で生産されているが、18金の王道であるイエローゴールドが当然主流であった。5270に於いてはWG、RG、PTの順で発表され主流YGを欠いていたが昨2020年秋に待望のYG素材モデルが追加されたのは喜ばしいニュースだ。

Ref.5270P-001
ケース径:41mm ケース厚:12.4mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:PTRGYG
文字盤:ゴールデン・オパーリン ブラック仕上げ18金WG植字アラビアインデックス
裏蓋: サファイヤクリスタル・バック(工場出荷時)と通常のソリッド・ケースバックが付属
針:ブラック仕上げの18金WG時分針
ストラップ:シャイニ―(艶有)・チョコレートブラウン手縫い・アリゲーター 
バックル:PTフォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:お問い合わせください

Caliber CH 29-535 PS Q:手巻永久カレンダー搭載クロノグラフ
直径:32mm 厚み:7mm 部品点数:456個 石数:33個
パワーリザーブ:最大65時間(クロノグラフ非作動時)最小55時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動
※古典的なブレゲ巻上げ髭ゼンマイは、現代パテックでは採用が非常に少なく稀少な仕様。単なるノスタルジックかもしれないが、何となく保有する楽しみが有る様な・・ターボじゃなくてキャブレター仕様の自然吸気と言えば良いのか。

PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅱ No.05 Vol.Ⅲ No.8 Vol.Ⅳ No.03,05
COLLECTING PATEK PHILIPPE WRIST WATCHES Vol.Ⅱ(Osvaldo Patrizzi他)
文責、撮影:乾 画像修正:藤本


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8月にはとうとう記事を一度も投稿出来なかった。酷暑のせいか、新型コロナ禍のせいか?はたまたネタ切れか?まあ全部と言えば、全部。言い訳にしかならないが"ストレスフルな夏"であったのは間違いない。おっかなびっくりの出張や面会、外食を再開し始めるも、扉は常に半開き状態で危険と背中合わせを感じつつも天照大御神のように閉じ籠り続ける事も無理が有る。奈良県もクラスターが次々発生し死者8名、累計感染者は500名を超えてしまった。当たり前の対策をしつつ生き残りは運次第という諦観も覚悟するしかないのか・・
6月にSSカラトラバ限定モデル、7月にはグランド・コンプリケーション3モデルの新製品が発表された今年のパテック。てっきり8月にもコンプリケーションかカラトラバ辺りを何点かリリースすると思いきや、その後音沙汰なし。そんな折に入荷して来たのが2019年ニューモデルの手巻クロノグラフRef.5172G。この時計は残念ながら昨年度の入荷予定が見送られた1本。入荷予定新製品が見送られるのは結構珍しいケース。勿論お客様の注文が紐付いていてが原則だけれど。と言う訳で当店初入荷の実機を撮影してご紹介の運びとなった。
パテック フィリップは決してクロノグラフ時計の専業メーカーではない。しかし歴史的にも偉大なクロノグラフを輩出してきた事実があり、中途半端なクロノグラフ専業を謳っているブランドより重厚なアーカイブを持っている。さらに言えば1920年頃から腕時計に搭載された主要な複雑機構(クロノグラフ、ミニット・リピーター、永久カレンダー、ワールドタイム等)の全てに於いて業界のパイオニアであり常にトップランナーとして走り続けてきたと言っても過言ではない。敢えて外したトゥールビヨンについてはあまり過去に製作例が無い様に思う。現行ラインナップに於いてもトゥールビヨン搭載モデルは現行3モデルに今年7月発表の5303Rが加わったに過ぎない。推察するにパテックはトゥールビヨンそのものにさほどの有効性を感じていない様に思う。
トゥールビヨンは1800年前後に仏の天才時計師アブラアム=ルイ・ブレゲが発明したとされ、機械式時計の精度安定を計る為にテンプをキャリッジと呼ばれる籠に収めて一定時間に一定速度で籠自体を回転運動させるという構造になっている。当時は懐中時計時代であり、その携帯精度の平準化には有効とされ、時計開発の歴史を何十年も早めた発見とされている。しかし常に一定の姿勢で携帯されるポケットウォッチと異なり、腕時計は手首に巻く特性上から様々なポジションを取り易いので、コストを掛けてテンプを回転させなくても精度はそもそも平準化しやすい。現代では各ブランドがその技術的優位性を誇示するために製作されている面がある。
ところで他ブランドのトゥールビヨン・キャリッジは通常ダイアル側にオープンワーク仕様で見せる構造になっている。確かに繊細で美しいキャリッジが優雅に回転する様は見栄えがある。だがパテックは伝統的に紫外線によるオイル劣化を嫌って裏蓋側からしか見えない様にしてきた。雲上機構であるトゥールビヨンでさえも見た目よりも実用性を優先するパテックらしい配慮だ。尚、今年発表(正確には昨年のシンガポール・グランド・エキジビションが初出)の5303Rは時計の裏表両面がオープン・アーキテクチャー(全面スケルトン)の為に、敢えて見栄えのする表側にキャリッジが配置された知る限りパテックでは初めての試みだが、サファイアクリスタルに無反射コートならぬ紫外線防止加工を施すというこれまた初耳の対策で悪影響を防いでいる。
さて、脱線はこのくらいにして本題のクロノグラフに話を戻しヒストリーを少しおさらいしてみたい。パテックが手巻クロノグラフをジュー峡谷のヴィクトラン・ピゲからエボーシュ供給を受けて造り始めたのが1920年代半ばである。当時はキャリバーも完成品も名称や品番が無くそれぞれ固有番号で管理されていた。またリューズ1本で操作をするシングルプッシュ方式が採られていた。さぞや良く壊れたのではないかと思われる。1932年のスターン・ファミリーへの事業継承を経て1934年9月には、ジュー峡谷のクロノグラフ専門エボーシュのヴァルジュ―社の23VZをベースにパテック向けにカスタマイズされた専用キャリバー13'''搭載の名機Ref.130が登場している。ツープッシュボタン型は遅くとも1936年製造機には登場している。今回の紹介モデル5172のルーツと言えよう。
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因みに当時からパテックのクロノグラフに共通する仕様であるコラムホイールとそのカバーであるシャポーが採用されていた。このキャリバーは供給が途絶えた3年後の1985年まで搭載され続けた"超"の着くロングライフなエンジンだった。様々な搭載機の中で特に著名でアンティークウオッチ市場で高評価なのが永久カレンダーを組み合わせたRef.1518(1941-1950)とRef.2499系(1951-1985)である。
それ以降の後継キャリバーには同じくジュー峡谷のヌーベル・レマニア社が選ばれ、同社のCal.2320をパテック社自身が大幅にカスタマイズしたCH 27-70が誕生した。これも名機の誉れが高く今現在も追い求められる人気モデルを続出した。やはり永久カレンダーを併せ持ったRef.3970(1986-2004)とその後継機Ref.5970(2004-2011)。そしてシンプルなツーカウンターとヴィンテージテイストの表情を持ち大ぶりなケースを纏ったRef.5070(1998-2009)は記憶に新しい。2000年のYGモデルがたったの税別410万円。でも当時の高級時計相場からすればかなり高目だったが絶対に買っておくべきモデルだった。参考に出来そうな後継機5170( 製造中止モデル)は倍以上の価格設定になっていた。こちらは5172に至るシンプルな手巻クロノクロノグラフの中継ぎ機種的な存在だ。
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そして2009年まで四半世紀に渡り搭載され続けたCH 27-70だが、時代の流れでスウォッチ・グループ傘下に組み込まれていたヌーベル・レマニア社はグループ外へのエボーシュ供給を絶たざるを得ない圧力が掛けられていた。その為に2000年頃からパテック社はクロノグラフの完全マニュファクチュール化計画を進めて2005年には、量産は効かないが古典的な手巻極薄スプリット秒針・クロノグラフ・キャリバーCHR 27-525 PSをリリースした。代表的搭載モデルはRef.5959Pだろう。さらに2006年には実用性に溢れシリーズ生産(量産タイプ)に向く現代的な垂直クラッチを搭載した自動巻フライバック・クロノグラフ・キャリバーCH 28-520系を発表。年次カレンダーがカップリングされた初号機Ref.5960Pは、市場でプレミア価格が横行してしまう大ヒットモデルとなった。14年が経つがつい先日の様に克明に覚えている。
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そして2009年秋にはマニュファクチュール化プロジェクトの総仕上げとなる第三段として手巻のシンプルクロノグラフ・キャリバーCH 29-535 PSが初搭載されたのは、クラシカルな婦人用クッションケースのRef.7071Rだった。同キャリバー搭載のメンズモデルとしては翌年春のバーゼルワールドで正当なラウンドシェイプでRef.5170Jが発表された。幾つかの素材・顔で製造された5170は2019年春に生産中止となり、後継機として今回紹介の5172Gが、その任を引き継いだ次第である。一気のおさらい、あぁ~しんど!5172g_side_a.png

兄貴分であったRef.5170との違いは多々あるが、最も顕著なのはケースと風防ガラスのデザインだろう。段差付きの特徴的なラグは1940年代半ばから60年代にかけて採用されていた歴史がある。最近で2017年発表の永久カレンダーRef.5320Gで久々に採用され、昨年2019年には今回紹介のクロノグラフの他にカラトラバ・ウィークリー・カレンダーRef.5212Aでも採用されている。ただ5212のケースはラグの段差が1段であり、ケースサイドも上画像の様にエッジィな出隅と入隅を伴った出っ張りは無く、少し官能的ともいえるシンプルなカーブ状に仕上げられている。この点永久カレンダー5320はケース形状的に5172とはほぼ同じである。ボックス状のヴィンテージ感漂うサファイア・ガラスが少し特殊な手法でケースに固定されるのは3モデル共通である。ケースサイドの鏡面仕上げは素晴らしい為に平滑面には顔を全く歪まずに映す事が可能だ。
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放射状にギョーシェ装飾された菊の御紋の様な丸形プッシュボタンは、同じエンジンを積む婦人用クロノグラフRef.7150/250が一年先んじて2018年に採用している。デザイン的な出自を探すと1940年代に製造された手巻クロノグラフRef.1463のプッシュボタンに酷似した意匠が見られる。ただラグは一般的な形状であって段差などは無い。
パテックのデザイン的アーカイブの活用には2通りあってクンロクやクロノメトロ・ゴンドーロの様に、ほぼオリジナルモデルのデザインを忠実にトレースする場合が一つ。その他に今回の様に過去採用してきた様々なディティールを組合せる事で新味を作ってしまうやり方が有る。前者では歴史的デザインそのものが売りであり誰もが復刻モデルと認識出来る。後者はアンティーク・パテック愛好家以外の現代パテック・コレクターには全くの新規意匠と映る。温故知新とも言えるし、実に巧妙で賢いが、分厚いアーカイブが存在し、尚且つブランドとして途切れなかった歴史に守られた資料。さらに自ら重厚なミュージアムを運営継続できる膨大なコレクションの収集があってこそ可能な事である。
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文字盤の構成も永久カレンダー5320に共通部分が多い。やや大振りで正対したアラビア数字の植字されたWG製インデックスと注射針形状と呼ばれる太目のWG製時分針にはたっぷりと夜光塗料(一般的にはスーパールミノバと呼ばれる蓄光塗料、パテックは敢えて夜光と表示)が塗布されカジュアルでスポーティな印象を与えている。ダイアルのベースはニス塗装によるブルー文字盤となっており、カラトラバ・パイロット・トラベルタイムRef.5524Gと同じ化粧がなされている。
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もう少し文字盤のディティールがそこはかとなく写り込んで欲しかったが、ただの夜光画像になってしまった。最近ロレックス社の公式インスタグラムを見ていたら、9/3投稿のオイスターパーペチュアル画像に素晴らしい文字盤と蓄光インデックスの競演画像があって感動した。ともかく画像が凄まじく美しい。実物以上に仕上がっているのが良いのか悪いのか。翻って基本パテックはカタログ等印刷物の仕上がりは絶対に現物を超えない。カタログ画像よりはずっと良い公式インスタ画像でもそれは意識されている様な気がする。まるで醜いアヒルを狙っているのかと思ってしまう。しかしまあ稚拙な画像を掲載してしまった。
因みにパテックはじめ現代時計で主流となっている蓄光というのは、光源によって蓄えられた光を発光するが時間と共に照度は弱くなり明け方にはほぼ光れない状態になる。1900年代初頭から1990年以前迄は自発光する夜光塗料が時計には主に使われていた。著名なのは軍用として開発されたパネライのオリジナル・ラジオミールで放射線物質のラジウムを含む塗料がその命名の所以だ。後期にはトリチウム等を含有した塗料が主になる。ヴィンテージ・ロレックスのダイアル6時辺りの"T<25"の表記などが有名。しかし今現在は特殊な透明ケース等に閉じ込めて放射線が洩れない構造にしなければ一切使用できなくなっている。現在この特殊方式に則って採用しているのはボールウオッチやルミノックス等である。夜光は放射性物質の長い半減期の間は昼夜関係なく常に光っている働き者だ。しかしその基本照度は低く、優れた蓄光塗料の最高輝度にはとてもかなわない。実際には一寸先が闇という漆黒でないと見づらい。まあ昔の夜は今よりずっと暗かったはずだ。ミニット・リピーターも実用性があったに違いない。
さて、今回も脱線しまくりのRef.5172G紹介だが、ストラップにも触れないわけにゆかない。2015年にカラトラバ・パイロット・トラベルタイムRef.5524まで滅多に採用される事が無かったパテックでのカーフスキン・ストラップ仕様。昨年度からは5172に加えて55205212など複数のモデルに採用されるようになった。5172の文字盤のニス塗装仕上げに質感・色共にマッチした表面感を出したブルーストラップによって、前身機の5170には全く無かったカジュアルな印象が全面に出て来た。ケース径と厚みが若干増してラグ巾が1mm絞られたのもカジュアル指向だ。ブルーデニムにTシャツでも余裕で大丈夫だろう。制服指向のかっちりしたクラシックなスーツが不振を極めており、ビジネスシーンでの服装のカジュアル化が鮮明だ。コロナ禍と酷暑でそれは益々加速されたようにも思う。隆盛を極めるラグスポ以外のクラシカルで保守的なシリーズの時計にも、カジュアルな装いを用意し始めた老舗メゾンのパテック フィリップの今後に大いに期待したい。そんなカラトラバが今年は出てくる気がしていたのに・・

Ref.5172G-001
ケース径:41mm ケース厚:11.45mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGのみ
文字盤:ニス塗装のブルー 夜光塗料塗布したゴールド植字アラビアインデックス
針:夜光塗料塗布の18金時分針
ストラップ:手縫いブルーカーフスキン 
バックル:18金フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:お問い合わせください
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いつ、どの角度から見ても惚れ惚れする美しい手巻クロノグラフ・ムーブメント。しかし必要十分にしてやり過ぎていない仕上げが施されたがっしりした受けとレバー類からは、繊細ではなく骨太で質実剛健な印象を受ける。実用性に溢れた頼もしいエンジンである。パテックの中ではロングパワーリザーブと言える最小65時間駆動も嬉しい。
また現在手巻クロノグラフ・モデルはカタログ上では、シリーズ生産が原則のコンプリケーション・カテゴリーに分類されているが、このキャリバーの製作方法はグランド・コンプリケーション並みの熟練技術者による2度組みが採用されている。四段時代に歴戦の上段者を撃破し続けた藤井聡太現二冠の様なポテンシャルタップリの素晴らしいムーブメント。パテックファンの所有欲を掻き立てるエンジンでもある。

Caliber CH 29-535 PS:コラムホイール搭載手巻クロノグラフ・ムーブメント
直径:29.6mm 厚み:5.35mm 部品点数:270個 石数:33個 受け:11枚 
パワーリザーブ:最小65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅱ No.08 Vol.Ⅲ No.11 Vol.Ⅳ No.09
COLLECTING PATEK PHILIPPE WRIST WATCHES Vol.Ⅰ,Ⅱ(Osvaldo Patrizzi他)
文責、撮影:乾 画像修正:藤本

今夏の異常気象は本当に厄介だ。予想外地域への地震、記録破りの大雨に一転しての酷暑、そして逆走台風。被災された方々は本当にお気の毒。心よりお見舞いとお悔やみを申し上げます。
相方の出が広島県。しばらく断水で難儀を強いられた血縁もいた。また百貨店部門は愛媛の松山市にあって直接被害等は無かったが県南部(南予)は報道が少ないものの結構な被災をされており、地縁と血縁強固な地方特有の事情もあって経済的影響も色々出ている。
そんな過酷な日々ながら奈良県北部の大和盆地は本当に災害が少ないエリア。日本最初の都に定められた天命を災害の報を聞くたびに強く思う。

さて、この時期は少しでも凉を感じられるモデルを紹介したい。それでいて夏色感もあるレディスコンプリケーションがRef.7121J-001。コンプリと言っても本当にプティ(小さい)コンプリでムーンフェイズ(月相)しか付いていない。実用面から言えばカレンダーの方が必要なはずだが、月の満ち欠けなどと言うロマンティックな表示が優先されているのはいかにも乙女時計らしい。
ちなみにメンズには全くラインナップされていないムーンフェイズのみという乙女時計仕様はレディスでもう一型Ref.4968があり素材やブレス違いを含めると2型で5つもバリエーションがある。
現在でこそ永久カレンダーを始め手巻きクロノグラフ、年次カレンダー、ワールドタイム、トラベルタイム等でパテックに於けるご婦人用のコンプリケーションウオッチは百花繚乱と言えるが、それはここ10年位の話でそれ以前から長きに渡って作られて来たレディス用のコンプリケーションはシンプルムーンフェイズモデルだった。
スイスでは永久カレンダー(1800年頃)よりも古くから搭載された機能で、当時は航海や狩猟、漁猟に欠かせないものだった。月齢の周期は29日12時間44分。これを29.5日として59日で2個の月が描かれたムーンフェイズディスクを一周させている。0.5歯という歯車を刻めないので倍数処理されたわけだ。
ただ、その周期だと数年で調整が必要な誤差が出てしまう。パテック フィリップを始め現代の高級時計の標準的なムーンフェイズは、複雑な歯車機構により構成されており122.6年掛けてたった1日分の誤差が蓄積して要修正となっている。前言撤回でPetitとは言えない立派なコンプリケーションだった。
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針の形状はユニークだ。ちゃんと名前が有って"スペード針"と言われている。分針が途中でくびれていて女性のセクシーなボディーラインの様に見えなくもないが、スペードの形状を限りなく伸ばした形でメンズウオッチにもこの針はそこそこ採用されている。ブレゲ数字インデックスとの相性がとても良い。
女性向けムーンフェイズの特徴の一つはムーンフェイズディスクだけでなくスモールセコンドと供用されているサークルの未開口部分にもお星さまが装飾としてプリントされている事だ。これもメンズでは見られない乙女仕様か。
ケースは腕時計黎明期を思わせるオフィサー(将校)スタイルのユニークなラグ形状。女仕立てにすると結構可愛らしい。ベゼルには0.52カラットになる66個のダイアモンドが輝いている。あまり知られていないがパテックのタイムピースにはデビアス社のトップウェッセルトン・ダイヤモンド(クラリティIF及びFLのみ)が使用されていて極めて質が高い。そしてジェムセッティングは実用性を重んじるパテックらしく滑らかな表面を意識し、衣類の袖口の繊維が引っかかったりしない手法が採用されている。
ストラップはMatte pearly beige alligator。パーリィとあるように車のパール塗装の様に光沢があってとても上品。暖色系の色目ではあるが、薄めのサンドカラーに光沢感が効いて涼しさを感じさせる夏時計に仕上げられている。

Ref.7121J-001 レディス コンプリケーション ムーンフェイズ

ケース径:33.mm ケース厚:8.35mm ラグ×美錠幅:16×14mm
防水:3気圧 66個のダイア付ベゼル(約0.52ct.)
ケースバリエーション:YGのみ 
文字盤:シルバリィ グレインド 18金植字ブレゲ数字インデックス
ストラップ:ハンドステッチのマット(艶無)パーリィベージュアリゲーター
      18KYGブレスレットのバリエーション有り
価格:お問合せ下さい
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少しでも涼し気な印象に出来ないかとフォトショップでチョッと悪戯。ムーブメントNoもあり得ないくらいラッキーな・・・不変の長命ムーブメントCal.215。人生もこうであって欲しいナァ!

Caliber:215 PS LU

ムーブメントはパテックを代表する手巻キャリバー215にスモールセコンドとムーンフェイズを組込んでいる。2006年に発表されたシリコン系素材Silinvar®「シリンバー」採用の革新的なSpiromax®スピロマックスひげゼンマイが搭載されたことで耐磁性と耐衝撃性が格段に向上している。まさにパテック フィリップの哲学"伝統と革新"を体現した頼もしいエンジンが搭載されている。

直径:21.9mm 厚み:3.00mm 部品点数:157個 石数:18個 
パワーリザーブ:最短39時間-最長44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2018年7月31日現在
7121J-001   店頭在庫有ります
関連ブログ:着物でパテックフィリップ、ショパール(2017/8/29記事)





腕時計の商品寿命は比較的長い。使われ方次第ではあるが半永久的とも言える(オーナーの元で愛用される)製品としての寿命では無く、我々流通業者が販売をする期間であるデビューから生産中止(ディスコン)までの店頭での販売期間の方の寿命である。時計ビジネスに携わり始めた30年程前より今の方がどのブランドも少し短めになった気はするけれども・・
もちろんパテック フィリップのタイムピースにもこの寿命はあって感覚的ながら長い物は十数年、平均は5年から7年くらいか。短いものはたった一年という短命モデルもある。パテックでは同一モデルの年間生産数はある程度決まっているので寿命が短ければ短いほど市場投入された個体数が限られる。オークションにおけるアンティークウオッチの落札価格がその希少性によるところが最も大きいのは明らかなので、将来のお宝度合いは数量限定モデルの次に来るのが短命モデルと言う考え方も出来る。
本日ご紹介は既に文字盤違いや素材違いで取り上げ済みながらもそんなお宝2点。共通点は今年生産中止発表後に入荷してきた事と短命モデルだった事だ。
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Ref.5710R-001は2016年デビューから2年しか生産されなかった手巻きクロノグラフ。商品詳細は紹介済みの5170G-001(廃番)及び5170P-001(唯一の現行)をご覧いただきたい。ローズゴールドの優し気な色合いに暖か味の有るクリーム系の文字盤上に2カウンターの目玉、このクロノグラフ実にあっさりスッキリしている。ブレゲ数字がカジュアルさを演出するので、さりげなく普段使いという究極に贅沢な一本だと思う。

Ref.5170R-001
ケース径:39.4mm ケース厚:10.9mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RG、PT
文字盤:シルバリィ オパーリン ゴールド植字ブレゲ数字インデックス
ストラップ:手縫いシャイニー(艶有)チョコレートブラウンアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
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Caliber CH 29-535 PS:コラムホイール搭載手巻クロノグラフムーブメント
直径:29.6mm 厚み:5.35mm 部品点数:269個 石数:33個 受け:11枚 
パワーリザーブ:最低65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

2018年6月18日現在 店頭在庫あります。価格はお問合せ下さい。

もう一点はわずか一年で今年ディスコンとなったRef.5960/1A-010年次カレンダー搭載フライバッククロノグラフ。昨年まで人気を博した白文字盤5960/1A-001と入れ替わりでデビューしたばかりの黒文字盤。いづれもがスポーツ系のノーチラスとアクアノート以外ではパテック フィリップ唯一のメンズステンレスモデルだった。昨今ノーチラスとアクアノートのスポーツ系の人気が凄すぎて、我々も含めてパテックのステンレスモデルは当たり前の様な錯覚をしているがスポーツシリーズ以外にステンレスモデルは現行でラインナップが無くなってしまった。逆にRef.5960のステンレスバージョン誕生が例外的だったと言うべきで、限定などを除いてステンレスは殆ど作らないブランドがパテックである。その意味でこのディスコンモデルの希少性はとても高い。
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センターローターに垂直クラッチ、さらに年次カレンダーモジュールを組み込めば流石に厚みはそれなりとなる。画像は使い回しですみません。
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Ref.5960/1A-010 年次カレンダー自動巻きクロノグラフ

ケース径:40.5mm ケース厚:13.5mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:SS、WG
文字盤:エボニーブラックオパーリン ゴールド植字バーインデックス
ブレスレット:両観音クラスプ付きステンレス5連ブレス 抜き打ちピン調節タイプ 

ムーブ画像も使い回しです。
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Caliber CH 28-520 IRM QA 24H:年次カレンダー機構付きコラムホイール搭載フルローター自動巻フライバッククロノグラフムーブメント

直径:33mm 厚み:7.68mm 部品点数:456個 石数:40個 受け:14枚 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

2018年6月18日現在 店頭在庫あります。価格はお問合せ下さい。


文責:乾

カラトラバ5196P

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今月はユニークなレアモデルが連続で入荷してくる。前回の年次カレンダーレギュレーターRef.5235と同様に展示会サンプルが無い(来た事が無い)手巻きカラトラバのクンロクケースのRef.5196P。モデル的にはパテックを代表するシンプルウオッチの極みでどちらの正規店でも最低一本は何色かの18金モデルが並んでいるド定番。ところがプラチナは製造数が極めて少ないらしく入荷予定が全く読めないレアモデルとなっている。
上の画像でリーフ針とブレゲスタイルのアラビアインデックス、さらにベゼルもほぼ黒に見合える。だが、ラグを見るとケースはポリッシュ仕上げされており撮影時にブラックアウトしたものと判る。
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角度を変えて実機に迫って撮るとブラックアウトするもののだいぶ印象は変わる。ともかくこの仕様は撮影が困難なので実機を見るに限るが、殆ど並ばないので今は"チャンス!"
6時の真下にはケースにラウンドダイアモンドがプラチナ製である証として埋め込まれている。これは現会長のフィリップ・スターン氏が1970年代にご自分のプラチナウオッチにカスタムで埋め込んだものが社内で評判になり標準仕様となったものである。
さて、この少しノスタルジックな文字盤は完全な復刻デザインである。カラトラバ初号機Ref.96がリリースされた1932年のわずか6年後の1938年から1960年代にかけて長く製造されたRef.570の40年代の代表的な文字盤だったようだ。
Ref.570.png
右のプラチナ製は1992年にパテック社によって文字盤交換されているミュージアムピースで、針もインデックスも18金製で極めて現行の5196に近い。それもそのはずで注釈に2004年バーゼルでのRef.5196デビューの際の原型と説明されている。機械は当時の手巻きCal.12'''-120。厚さ4mm、直径26.75mm。現行のCal.215と比べると1.45mm厚く、4.85mmも大きいがケース径は35~36mmとわずかに小さい。厚みは現代の方が若干薄い。まあ当時は薄く小さくを心掛けたムーブを素直に頃合いのケースで包み込んでいた時代だったと思われる。今気づいたが1940年代初頭と言うのは第二次世界大戦の戦時下である。アラビアインデックスの採用には影響が有ったのかもしれない。
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久々に撮るソリッドな裏蓋。現行のほぼすべての機械式モデルが裏スケルトン仕様であるパテックコレクションの中で、正に希少なノーマルケースバックモデル。今年40周年のアニバーサリーイヤーを迎えたゴールデンエリプスの定番2型(RGとPT)とこちらの5196のみの特別仕様?になっている。
僅かに空気が入ったかのような保護シールもスケルトンモデルには無い特別感?が・・・
ラグの裏4か所には、下のピンバックル裏側と共にPT950のホールマーク等がしっかり刻印されている。
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イエローゴールドモデル紹介時にも撮ったサイドビューを再撮影。個人的には最もパテックを代表する優美なフォルムだと思っている。リューズ左下側の不自然な修正はフォトショギブアップしました。修行の一環と言う事で・・
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18金モデルのバーインデックスに較べてアラビアインデックス+2トーンカラーダイアルの組合せは上品やエレガントと言うよりも遊び心が有って個性的である。それを敢えてプラチナケースでやると言うのがパテックの余裕。決して万人受けするモデルでは無いと思うが、一目惚れの人には堪らない魅力を感じさせる一本に違いない。

Ref.5196P-001

ケース径:37mm ケース厚:7.68mm ラグ×美錠幅:21×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:PTの他にYG,WG,RG,
文字盤:ツートーンシルバリィグレイ ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター
価格:お問い合わせください

Caliber:215 PS

ムーブメントはパテックを代表する手巻キャリバー215PS。構成部品たった130個の完全熟成の名機に2006年に発表されたシリコン系素材Silinvar®「シリンバー」採用の革新的なSpiromax®スピロマックスひげゼンマイが搭載されたことで耐磁性と耐衝撃性が格段に向上している。まさにパテック フィリップの哲学"伝統と革新"を体現した頼もしいエンジンである。

直径:21.9mm 厚み:2.55mm 部品点数:130個 石数:18個 パワーリザーブ:44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2018年5月20日現在
YG 5196J-001 店頭在庫有ります
WG 5196G-001 お問い合わせください
RG 5196R-001 お問い合わせください
PT 5196P-001 店頭在庫有ります

店頭に中々在庫が持てないグランドコンプリケーションクラス。皆さんご存知だとは思うけれど時価(価格表でPrice on request表示のもの)となっているモデルは100%客注対応でほぼ受注生産に近く、サンプルすら日本には常備されていない。価格設定されているモデルでも生産数が極端に少なくて人気の高い数モデルについては、ある程度の購買実績を積み上げて、手続きを経ないと購入できない。例えばワールドタイムクロワゾネモデルRef.5131や永久カレンダースプリットセコンドクロノグラフRef.5204などがそれにあたり、もちろん在庫することは不可能だ。これら特別なタイムピースは撮影のチャンスもまず無いし、手に取ってじっくり見る事すら叶わないので、掘り下げたご紹介も難しい。このように閉鎖的とも見える現在の販売手法には批判的なご意見もあるが、あくまで個人的とお断りして色んな意味で″仕方がない"と思う部分と下駄履き絶対お断りというメゾン系ブランドが時計業界に一つ位はあっても良いように思っている。
結局グラコンで在庫したり紹介出来たりするのは永久カレンダーか今回紹介の永久カレンダークロノグラフあたりに限られてしまう。それでも前者が1,000万円前後、後者は約1800万円なので気軽にストックは出来る代物ではない。今回も展示会にやってきたサンプルをドタバタと撮影した。
以前にも書いたがパテックを代表する顔はたくさんあるが、手巻きの永久カレンダークロノグラフもその一つだと思う。パテック フィリップ マガジン各号のオークションニュースでは常連のように出品が多い。

まずシリーズ生産された最初の永久カレンダークロノグラフモデルは1941年~1951年(たぶん?)に281個製作されたRef.1518。画像は1943年製作のタイムピースで極めて希少性が高くイエローゴールドの時計としてのオークションレコードCHF6,259,000(=約7億千3百万円余り)で2010年にジュネーブで落札されている。
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ちなみに昨年11月に腕時計の世界最高落札価格は更新されている。これまたRef.1518(下)で、わずか4個体しか確認されていないステンレススチール製である。価格はCHF11,002,000(約12億5400万円余り)ヴィンテージウオッチの価値においては、希少性が材質や機能性をしばしば凌駕するようだ。尚、それまでのレコードホルダーはやはりパテック。ただしヴィンテージではなく2015年にオンリーウォッチ・チャリティー・オークションの為に1点製作されたやはりステンレス仕様のRef.5016Aだった。パテックだけがパテックを超えてゆく状態はいつまで続くのやら・・
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1951年以降は1518と同じレマニアのキャリバー13'''を搭載したRef.2499が登場した。インデックスはアラビア数字からバーになり、6時のカレンダーサークルが力強く大き目になった。2499は85年まで34年間の長きにわたって製作された。生産終了時には記念のプラチナ仕様が2個だけ1987年に製作され、1989年にパテック フィリップ創業150周年にオークション出品された。当時の落札価格がCHF24万(=約2,736万円)だったが2012年に14倍の価格CHF344万(=3億9千万円強)で落札されたのは著名なロックギタリストのエリック・クラプトンが長期間所有していたからである。尚、残るもう一つのプラチナモデルはパテック社のミュージアムピースとして収蔵されている。

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1986年からはレマニアの新しいクロノグラフキャリバーCH27-70系を採用したRef.3970がスタートした。それまでのCal.13'''と異なりうるう年表示と24時間表示がインダイアルに追加された。そんなに古いものではないのに画像が荒くて恐縮です。
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Ref.3970は18年間のロングセラーの後、2004年に後継機種Ref.5970にバトンを渡す。キャリバーCH27-70Qはヌーベルレマニアエボーシュの最後のエンジンとしてそのまま引き継がれたが、ケース形状についてはクラシカルとモダンの融合への挑戦がなされた。まずウイングレットと呼ばれる翼を模した段差付きのラグ形状は1942年発表のRef.1561からインスパイアされたとある。またクロノグラフプッシャー形状も華奢なラウンドから1518時代に採用が多かった少し武骨で大振りなスクエアボタンとなった。ボタン上下面のサテン仕上げが実に渋い。それらとは裏腹に内反りしたベゼルは知る限り2000年代になってからチャレンジングなモデルに共通して採用されている現代パテックの特徴的なデザインである。
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そして2011年、今回紹介のRef. 5270がようやく登場となる。このモデルチェンジではウイングレットラグやコンケーブベゼル等のケースデザインが5970からほぼ継承されたが、エンジンはパテック初の完全自社設計製造のマニュファクチュール度100%の新開発手巻きクロノグラフCal.CH29-535をベースとして永久カレンダーモジュールが組み込まれて搭載された。新キャリバーはポストレマニア時代を背負う自社開発クロノキャリバー3部作の最終発表の集大成キャリバーとして高い完成度を有していると思われる。エンジン変更に伴って文字盤には若干の変更が加えらている。3時と9時のインダイアルがセンター針と横一線ではなくて少し6時側方向に下がった事で、4時のインデックスが歴代モデルで採用されていた短めのバーからピラミッドになった。うるう年が3時の指針から4時半の小窓の数字表示となり、24時間表示も9時の指針表示では無く単純な昼夜表示として7時半の小ぶりな窓表示に置き換えられた。結果的にインダイアルがすっきりし、視認性が格段に向上した。
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現行のRef.5270の詳細。まずウイングレットラグ。サンプルなので小キズや埃はご勘弁と言う事で・・
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サイドは当然それなりの貫禄。と言っても12.4mmはマザーキャリバーCH29-535PSを積んだRef. 5170(10.9mm厚)に加えること1.5mmで、ムーブメントの厚さ比較でも1.65mm差となっている。ただラグも含めてグラマラスなケースデザインからは数字以上の存在感を受ける。
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スクリュー(捻じ込み)構造のトランスペアレンシイのケースバックからは機械式時計一番の男前?正統派手巻きクロノグラフが堪能できる。各プッシャーと連動して正確無比に動作するレバー類のパフォーマンスは見飽きる事が無い。
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ご多聞に漏れずRef. 2499時代に迎えたスイス機械式時計暗黒時代1960年~80年代前半にはかなり生産数が絞られたようだが、1941年以来絶えることなく生産され続けているパテックの永久カレンダークロノグラフ。日常的に愛用されるシンプルな時刻表示機能に特化した腕時計がその時々の時代背景で様々な表情の流行り廃りを経験するのとは対照的に、贅沢かつ趣味性が強く蒐集指向もある為なのか殆ど顔が変わらずに脈々と作り続けられている永久カレンダークロノはやっぱり安心してお勧めできるパテック フィリップの代表格だと思う。

Ref.5270R-001

ケース径:41mm ケース厚:12.4mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RGのみ
文字盤:シルバーリィ オパーリン、ゴールド植字バーインデックス
ストラップ:手縫いマット(艶無)・ダークブラウン・アリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:税別 17,920,000円(税込 19,353,600円)2017年8月現在

Caliber CH 29-535 PS Q:手巻クロノグラフ永久カレンダームーブメント
瞬時運針式30分計、昼夜表示、コラムホイール搭載
直径:32mm 厚み:7mm 部品点数:456個 石数:33個 
パワーリザーブ:最低65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

2017年9月12日現在 ご予約対応となります。

文責:乾

Patek Philippe Internaional Magazine Vol.Ⅱ No.5 P.66 VolⅢ No.3 P.68 No.8 P.70 Vol.Ⅳ No.3 P.68
Wristwataches Martin Huber & Alan Banbery P.305

気がつけばもう8月も後半。今夏は梅雨明け以降で湿気がひどく寝苦しい夜が続いた。ところが盆を過ぎてからは夜が急に涼しくなり早朝足が攣ったり鼻かぜ気味になったりと体調管理が難しく厳しい夏だ。このやけに過ごしにくい粘着質の暑さはまだまだ続きそうなのだが・・皆様いかがお過ごしでしょうか。
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本日紹介は今年の新製品として初紹介となるRef.5170P-001。2010年にパテック フィリップ完全自社開発製造となる初の手巻クロノグラフムーブメントCH29-535PSを搭載してイエローゴールドのメンズモデルとして発売以来ホワイトゴールド、ローズゴールドとバリエーションが発表され今年初のプラチナ素材でのローンチとなった。この顔には既視感をお持ちの方も多いと思う。ケース形状は全く違うが昨年秋に発表されたノーチラス40周年限定モデルとして発表されたWGクロノグラフモデルとプラチナ3針モデルで採用された濃青色にバゲットダイアインデックスのコンビネーション。
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ノーチラスの文字盤には特徴的な横縞ボーダー柄があり、微妙な光の当たり加減によって作り出される魅惑的で多彩な表情に悩殺されっぱなしのノーチラスファンが跡を絶たない。5170PのダイアルはBlue sunburst black gradated 放射状の微細な刷毛目紋様の上に文字盤中心の青から円周部の黒へとグラデーションしている。手法は微妙に違うのだが色目の印象が非常に近くて派生モデルっぽく見える。
一般的に言ってメンズウオッチへのダイアモンド装飾はギラギラ感が押し出され過ぎる事が多く、好きな方はそれが魅力で着けておられる。パテックにおいてもベゼルへのダイアセッティイングモデルは存在感タップリで何処にも誰にも負けない立派なものです。ただ一連のノーチラスと言い、5170Pにしてもじっくり見ないと綺麗なバーインデックスに見えてしまったりする。これが押し出しは要らないが自分で満足できる特別感は欲しい時計ファン、パテックファンの背中を押したようだ。個人的にもベゼルダイアは一生腕に巻く事は無さそうだが、この手のモデルは躊躇なく着用可能だ。
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ダイアインデックスを包み込みダイアルにセットしているWGのホルダー。ショーピースを慌てての撮影なのであまり鮮明ではない。万が一の脱落を防ぐためか天地の爪がガッシリしている。ファセット面が非常に少ないのもキラキラ感を抑えている要因であろう。
今年の新製品で一番気になったこのモデル。バーゼルで始めて見てその文字盤の美しさに吸い込まれそうになった。先日久々にサンプルを見直してもその思いは変わらない。漆黒の艶っぽいアリゲーターストラップもダイアとの相性がすこぶる宜しい。
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ケース厚は10.9mmは薄すぎず暑すぎずバランスが良く端正で完成されたカラトラバクンロクケースに仕上がっている。スクエアのプッシュボタンは安定感があり、リセットボタンの押し加減は風の様に軽やかで癖になりそうな独特のフィーリングを持っている。
パテック社の商品分類ではグランド(超複雑)ではなく普通のコンプリケーション(複雑)に分類されている手巻クロノグラフ。しかしその製造方法はいわゆる″二度組"と言われるグランドコンプリケーションレベルと同じであり、時としてパテック社の関係者もグラコンと勘違いをしていることすらあって、価格的にもCH29系クロノはグラコン扱いで良いように思う。巷ではヌーベル・レマニア社のパテック向け専用手巻きクロノグラフキャリバーCH27-70が搭載された自社製化直前のRef.5070、それもプラチナ(ダイアルは確か濃い目のブルー)の人気が今日でもまだまだ高いそうだ。今回の5170のプラチナも将来そんな伝説のモデルに化ける可能性が有るかもしれない。

Ref.5170P-001

ケース径:39.4mm ケース厚:10.9mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:PT、RG(ブラック010ホワイト001
文字盤:ブルー サンバースト ブラック グラデーテッド バゲットダイアモンドアワーマーカーインデックス(~0.23ct)
ストラップ:手縫いシャイニー(艶有)ブリリアントブラックアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格、在庫:お問い合わせください

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以下過去記事より転載
搭載キャリバーは何度見ても惚れ惚れする美人ムーブのCH 29-535 PS。古典的と言われる水平クラッチ(キャリングアーム方式)は美観に優れ、クロノ操作を見る楽しみを与えてくれる。ところがクロノグラフスタート時にドライビングホイール(A、クロノグラフ出車)と常に咬み合っているトランスミッションホイール(B、中間車)が、水平移動してクロノグラフホイール(C、クロノ秒針車)と噛み合う際に、タイミングによって歯先同士がぶつかるとクロノ秒針が針飛びや後退を起こす弱点がキャリングアームにはある。これを解消するためにパテック社ではクロノグラフ輪列(前述のA~C)に特許による新しい歯型曲線を採用している。その他にもコラムホイールカバー(D、偏心シャポー)やレバーやらハンマー等々あっちゃこっちゃに、これでもかと特許技術を投入することで、古典的美観はそのままに時代を先んずる革新的かつ独創的な手巻クロノグラフキャリバーを完成させている。
※パテック社によるCH29-535の解説は→コチラから
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Caliber CH 29-535 PS:コラムホイール搭載手巻クロノグラフムーブメント

直径:29.6mm 厚み:5.35mm 部品点数:269個 石数:33個 受け:11枚 
パワーリザーブ:最低65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾

前回に続いてディスコン(生産中止)の銘品紹介シリーズ。レディスコンプリケーションのトラベルタイムRef.7134G。天才時計師ルイ・コティエ氏によって考案されたトラベルタイム機構の特許をパテックが取り製造を始めたのは50年以上も前の1959年。その後クォーツ全盛期時代に製造は一旦途切れている。スイスの機械式時計がようやく復活した1990年代後半になって現代のトラベルタイムの製造が再開した。
今回紹介のRef.7134Gは2013年に発表され2016年にディスコンされた少し短命なモデル。或る意味製造個数も少ないはずで希少性は高い。
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実はこのモデルの生産中止で現在レディスのトラベルタイムコレクションのラインナップが無くなっている。個人的には1997年から再開された現代トラベルタイムのレディスでは一番お洒落で良い顔をしていると思う。何が良いって文字盤の色目が表現の仕様が無い微妙な薄めのブラウン。同色のアリゲーターストラップのカラー名称がシャイニー トープ(Shiny taupe)。そう、某有名ブランドE社の中々買えない超人気レディースバッグにも採用されている有名な色目。いわゆる旬のお色。
全ての針と6時側のスモールセコンドインダイアルと12時側のホームタイムと連動した24時間インダイアル、パテック フィリップのロゴ等の情報一切が白色でまとめられておりスッキリと締まった表情になっている。18金製のアラビアインデックスはポリッシュされており少々視認性に難がありそうだが、オフィスや屋外など光量がしっかりある環境なら充分見易い。逆に少しトーンダウンしたレストランのディナー席などではインデックスが変に悪目立ちしないのでラグジュアリーなドレスウオッチとなる。ベゼルにはトップウェルセットンのダイアモンド112個(~0.59ct)が丁寧にセッティングされている。パテックのダイアセットはその時計作りのポリシー同様に実用性を高めるため衣類の袖口が引っかかったりしないよう滑らかさを最優先した手法を採用している。海外を舞台に働くキャリアウーマンにはうってつけの一本と言えそうだ。

Ref.7134G-001
ケース径:35mm ケース厚:9.2mm ラグ×美錠幅:18×14mm 防水:3気圧
112個のダイヤ付ベゼル(~0.59カラット)
ケースバリエーション:WG 
文字盤:ブラウン サンバースト 18金植字アラビアインデックス
ストラップ:シャイニー トープ アリゲーターストラップ
価格:税別 4,510,000円(税込 4,870,800円)2016年11月現在
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Caliber:215 PS FUS 24H
この時計手巻きである。実用性からすれば極薄自動巻きCal.240にトラベルタイムモジュールを積めば良さそうだが、たぶん文字盤レイアウトに無理があって手巻きの名キャリバー215が採用されている。ビックリするのはトラベルタイムモジュールの薄さだ。ベースキャリバー215の素の厚みが2.55mmで部品点数130個なのでモジュールは厚さ0.8mmに48点のパーツで構成されている事になる。他のメンズのトラベルタイムと違ってホームとローカルタイムの昼夜表示が無いにしても凄い部品密度である。ケースの厚みは9.2mmと意外にある。たぶんトラベルタイム操作プッシャーを組み込む為にある程度の厚みが必要なのだろう。

直径:21.9mm 厚み:3.35mm 部品点数:178個 石数:18個
パワーリザーブ:最短44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2017年6月9日現在 店頭在庫有ります

気付けば2月以来商品紹介が出来ていない。この時期はバーゼルワールドを始めとして生産中止情報や2017新作ダイジェストなど話題はそこそこにある。反面、例年2月から夏場にかけては本年の新作入荷がまずないので商品情報はどうしても少な目である。しばらくは緩やかな更新でご容赦下さい。
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パテック フィリップの七不思議に生産終了品のヒョッコリ入荷というものがある。最終生産ロット品がゆっくり出荷されたのか。最近何かの理由で再生産されたのか。パテックからの明確な答えは無い。今回は今年生産中止発表されたクロノメトロゴンドーロの多分最終生産ロットだと思われるローズゴールドモデルRef.5098Rのご紹介。
1920年代頃にブラジルの高級時計宝飾品店のゴンドーロ・ラブリオ社の求めに応じて納入されていたのはイエローゴールド製。(下画像:良く紹介されている1925年製イエローゴールドモデル)
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色目的にはローズは大変近い。ただ文字盤上に特徴的な楕円形のインデックス表示部分とPATEK PHILLIPE GENEVEやCHRONOMETRO GONDOLO、SWISS MADEの文字表記部分については金色(PP社表現はハニーブラウン)の平滑面になっていてギョーシェ装飾が施されたシルバーカラー部とくっきりとしたツートンカラー仕様になっている。2007年にローズに先駆けて復刻発表されたプラチナモデルRef.5098Pも1920年代のオリジナル同様に全体がシルバーで統一されていた。ツートン仕様は2009年発表の現代復刻モデルのローズバージョンでの新規採用となる。これは好みの別れるところで個人的には甲乙付け難い。
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何といってもこのモデルの魅力の第一は18金素材の文字盤にビッシリと施された手作業によるギョーシェ(波状の微細な彫装飾)だ。調べればこれまた18世紀の天才時計師アブラアン・ルイ・ブレゲ考案らしい。手作業とは言ってもギョーシェ専用のマシンに文字盤をセットして人の手で操作しながら複雑なパターンを掘り出すスタイル。バイトと呼ばれる鏨(のみ)を使ってムーブメント構成パーツである地板や受けにフリーハンドで施されるエングレーブ(彫金)とは異なる。またモノトーンのプラチナモデルと異なり装飾後の色付け工程も一手間増えていそうだ。
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誠に優美かつ正当なトノーシェイプのケース形状も魅力的だ。全体が曲線で構成されており色気漂う女性のグラマラスな姿態を想像させられる。表裏両面のサファイアクリスタルもケース同様緩やかにカーブしている。普通此処まで曲面だと鏡代わりに顔をうつすと歪んだりするのだが、パテックレベルになると冷間鍛造とポリッシュの技術が凄い為一切ゆがまない。ラグは紳士用腕時計黎明期に採用された貫通ピンをねじ止めしたオフィサー(将校)タイプ。画像は無いがもちろんピンタイプのバックルもオフィサー仕様となっている。
2月に紹介したRef.5205R-010を現代セクシー系とするとRef.5098Rはクラシカルな色香が漂うどこかアンティークっぽいモデル。昨今あまりにもハイテク化が進む現代車の反動なのか、アナログなヴィンテージカ―の静かなブームが起きそうな気配がある。そんなクラシックな出で立ちにこそ着けてみたい魅力的タイムピースだ。

Ref.5098R-001

ケース径:32×42mm ケース厚:8.9mm ラグ×美錠幅:17×14mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RGの他にPT いづれも製造中止
文字盤:ギヨーシェ装飾18金製 ツートーン
ストラップ:マット(艶無)ダークブラウンアリゲーター
価格:税別3,930,000円(税込 4,244,400円)2016年11月現在 


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1900年代のオリジナルクロノメトロゴンドーロのムーブメントは当時パテック社の主要エボーシュであったルクルト社製の丸型キャリバー12"'が搭載されていた。2007年のモデル復刻にあたってパテックはケース形状にふさわしい角型の専用新キャリバー25-21RECを開発した。同社にとって1934年に開発した名キャリバーCal.9"'-90(上)以来の73年ぶりの自社角形ムーブメントと言われており、明らかに意識したレイアウトが採用されている。往年の名キャリバーへの強烈なオマージュと言えそうだ。
尚、Ref.5098が全て生産中止になった今、同じくゴンドーロシリーズのレクタングラーシェイプのRef.5124のWGYGにのみこのキャリバーが搭載されている。
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Caliber 25-21 REC(手巻き)
サイズ:24.6×21.5mm 厚み:2.57mm
部品点数:142個 石数:18個 パワーリザーブ:最低44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製) 振動数:28,800振動
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

文責:乾

2017年6月2日現在
5098R-001 店頭在庫有ります
(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)

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