パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

限定モデル 一覧

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「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」は1961年の寿屋(現サントリー)のキャンペーン広告コピー。当時僅か2歳児に過ぎなかったが、なぜか鮮烈な記憶で残っている。当時若干20歳で新人ドリンカーとなられた先輩方も早80代半ばであり、現役バリバリの吞兵衛世代の方々には全く意味不明のエピソードだろう。だが今回紹介の最新型ワールドタイムの実機操作中、至極当然に「パテックを持ってHawaiiに行こう!」と思いついたので、ここはお付き合いいただくしかない。実はスイスには職業がら毎年のように通ったが、過去の海外訪問地は多くない。実はハワイも未訪問でビックリされたりする。ずっと南国の楽園には食指が動かなかったが、最近は食わず嫌いは止めて一度は訪れてみようかなどとも思っていた。そこにこの飛んでもないワールドタイムの出現である。行きも帰りもこの時計の醍醐味を手っ取り早く味う為に日本から日付変更線をまたいでの旅となると、最短の五つ星クラスの目的地は間違いなくHawaiiという事になるだろう。余談ながら還暦越えの今日まで"Hawaii"ではなくずっと"Hawai"で末尾の i は一個だと信じていた。実機撮影時点ですら「パテックはひょっとしたら大変なミステイクをしでかしたのではないかと・・」本気でドキドキと心配したほどだ。そんなわけでRef.5330は興味深いその出自は後回しにして、約70点の新規追加パーツが組み込まれ特許取得された手品の様なカレンダー機能を真っ先に見てゆきたい。

10時位置のワンプッシュスタイルで短針を時計回りに進ませる。と同時にシティリングと24時間リングは反時計回りに一方通行で回し続けるのがおなじみのパテック方式。その実用的なワンウェイスタイルにカレンダー機能はそもそも馴染まないと思っていた。仮にカレンダー機能を付加するならば他ブランドの様に逆進用プッシュボタンを8時位置辺りに追加するしかないと信じていた。その為に実機を操作するまでは必要に応じてのカレンダーの早送り操作も覚悟をしていた。正直便利なのか面倒なのかという疑心暗鬼すらあった。と、こ、ろ、が、である。松田優作の「なんじゃぁ~、こりゃ~」だったのである。さすがに永久や年次等の特殊なカレンダーウオッチではないので小の月超えにはケアが必要だが、時差修正に関しての日付変更は全自動ノーケアの無頓着でいられる。実機を操作すればシンプルな僅かなルールで成り立っている事が判り、素直に理解できる。まず一つ目のルール、日付は24時間リングのお月様マーク(0時=24時)が時計真上の12時位置に来れば翌日に進む。ところがシティリングの日付変更線マーク(AUCKLANDの"N"あたりの赤いドット)がその12時位置を超える際には前日に戻る。そして1959年にワールドタイムの魔術師と呼びたいジュネーブの著名時計師ルイ・コティエ氏考案の特許であるワンプッシュ一方向回転時差修正機構がこれらをまとめて制御する。一方向とは地球の自転方向で北極側から見て反時計回りだ。考案から60数年後にベストマッチングなカレンダー機構とペアリングするとは大御所も想像出来なかっただろう。実際に画像で説明を試みよう。ただ解り難い、説明下手、100%自信ありまへん。
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サイズ的にとても見づらくてご容赦、一応クリックで拡大します。左側はシティリングの天辺はTOKYOなのでタイムゾーンは日本時間。時計の時分針は12時正午を指している状態。しかし赤い"TOKYO"は実に見難い。日の丸限定にちなんだ赤が濃い目の紫に実に良く溶け込むのだ。画像右側の10時位置なら充分見やすいが、上方からの光源でシャドウ気味になる12時位置で読みづらいTOKYOはこの時計の数少ない弱点だ。それはさておきボタン4PUSHでタイムゾーンは4時間分進むので午後4時のMIDWAY、右側状態になる。ところが午後3時のAUCKLANDとMIDWAYの間には、これまた見づらい極小の赤丸で示された日付変更線マークがあって最後の1PUSHでバックデイトした日付は6日となる。文字盤最外周部を指し示すのは先端に(これまた少し見難い)赤いポインターデイトを有する透明な日付針だ。この特殊なスケルトン針は雑誌クロノスの記事によれば切断面の仕上がりの関係でお馴染みのサファイアガラス製ではなくミネラルガラス製との事だ。

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さてここからはまるで手品?なので落ち着いて集中願いたい。先程の前日6日夕方4時(16時)のMIDWAY時間帯から、さらに反時計回りひたすら東に地球の自転方向に追い付け追い越せでプッシュを重ねると、1PUSHで17時Hawaii、2PUSHで18時ANCHORAGE・・8PUSHで0時B.AIRESで24時間リングの三日月マーク(深夜0時)が天辺に来て、あららっ!見事に日付は7日に進んだ。日付針は此処から15PUSH(15時間進む)はずっと7日を指し続ける。そしてその途中の12PUSH目で正午12時TOKYOとなる。見事に地球を一周して無事に振り出しに戻ったわけだ。下手くそな説明なので深く考えず次に進みませう。

なんせ約70点もの複雑なメカニズムが織りなすカラクリ的芸術なので詳しい構造説明はご容赦下さいナ。ともかく難しい事は考えずにアナタの到着地時間帯の記載都市名まで単純にぷっしゅ、プッシュ、PUSH・・・それでイイのだ。あとは時間も日付も5330にお任せナノダ。実は此処が凄い。考えなくてイイというパテックの一方通行逆進なしがエライ!大多数の他ブランドが採用する+ボタン(進む)&-ボタン(戻す)のダブルボタン方式はどっちを押すか頭に地球儀を描いた上で間違いなく操作する必要がある。時差ボケの時はもとより正気であっても結構厳しい。較べてパテックのONE WAY方式だとプッシュ回数が多くなったり、行き過ぎてもう一周分の追加プッシュというデメリットもあるが、間違えたり混乱してフリーズなんて事にならない。AWAYで泥酔して乗り込んだタクシーに「自宅(HOME)まで!」とさえお願いすれば、道順などの面倒臭い説明は不要なのである。爆睡zzzz無事ご帰還となる頼もしい便名がパテック フィリップ航空Ref.5330便なのである。

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時計の天辺12時位置に対してシティリングの日付変更線マークで後退する日付、24時間リング(時分針と連動)の深夜三日月マーク越えは日付前進。それならば上図の様にボタン1PUSHで両者が同時超えとなったらどうなる。AUKLAND時間帯で23時台(画像は23時半)状態で1プッシュすればMIDWAYタイムゾーンの深夜0時台(0時半)になるが、両リングの日付に関する前進と後退の両要因が打消しあって結果的に日付は変わらない。この状態(例えば天辺TOKYOの日本時間帯で午後8時半)でのぷっしゅ、プッシュ・・はひたすらむなしい。まるでボタン操作の耐久検査にしかならず、シオカラトンボの儚く透き通った羽根の様な芸術的日付針は打ち震える事さえしない。なおボタンの押し加減というか感触は従来のワールドタイムモデルとほぼ変わらずとても良く、耐久検査が苦になる事は無い。文字盤に隠されたメカニズムは水面下の白鳥の脚の様に複雑な仕事をしているはずなのに・・。他ブランドのワールドタイムで泣きたいくらい残念な感触を味わった事はございませんか?皆さん。 ついでに褒めておきたいのが日付早送り調整コレクターボタンの感触だ。たまたま良い個体に当たったのかは知れないが、過去触ったパテックの中でピカイチの心地よさ。スコッ、スコッ、スコッ、全く変な遊びが無くリニアなクリック感は『バターにナイフ』と評されるポルシェのマニュアルシフトゲートの恍惚感に近いとは大袈裟か。

書いている当人もしばしば混乱しながらの時間差旅行とはこの辺りでおさらばして、別角度からもこの傑作を見てゆきたい。
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ケース形状は従来のワールドタイムモデルとは異なる。かといって既視感の無い全くのおニューでも無い。横顔が酷似しているのが右側のRef.5212Aカラトラバ・ウィークリー・カレンダーだ。今春の新製品Ref.5224Rカラトラバ・トラベルタイム(とても個性的な24時間表示タイプ)もそのケース形状から同族と言えよう。いづれも個性的な顔は似ても似つかないけれど体形がそっくりな3兄弟の様だ。どうもティエリー・スターン社長が陣頭指揮を取るようになってから、このような新しいケースデザインへの挑戦が増えたように思える。1段の段付ラグからすっきり繋がるシンプルなドーム状のケース側面からの印象は、ほっこりと緩めのカジュアル。前作?の現代ワールドタイム第3世代Ref.5230凛々しく少々エッジの効き過ぎた?スーツ御用達ウォッチであった事を思えば、コーディネートの巾が広がって実にパテック的なゆるめのフォルムに仕上がっている。

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6月中旬に開催された" Watch Art Grand Exhibition東京2023"。この日本では初めての一大イベントで注目の的だったのが6点の『東京2023スペシャル・エディション』なる限定モデルだ。この中で個人的にじわじわとやられてしまったのが今回の5330だった。その特別な出自を嫌でも判らせる特別な装飾『PATEK PHILLIPE TOKYO』が施されたサファイアクリスタルバック。フロステッド仕上げによるグレーカラーの文字は、小ぶりなマイクロローター採用で銀色の受けや地板が広い背景となって目立ちにくいのだが、個人的にはこの控え目感は好もしい。でも開催年『2023』の表示が無いのは一体どうした事だろう。
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公式HPで確認可能な2019年秋開催のシンガポールでのグランド・エキシビションでリリースされた同様の限定モデル(画像左)にはしっかり年号が入っている。さらにほぼ同時期に落成した最新工場PP6の記念限定Ref.6007A-001(画像中央)ではフルローターの背景に白色転写プリント仕様の限定各表現が少々うるさいくらいだ。下方の『2019』の年号表示も勿論しっかり目立っている。この限定モデルは2020年4月に大々的なお披露目イベントを現地で開催し発表の予定だった。ところが2月からの急速な新型コロナ感染拡大でイベントはドタキャンとなり、6月にWEBにてバタバタと発表され、我々も実機を拝めぬままエクスクルーシブな販売をした経緯がある。新型コロナ禍によるこの未曾有の発表延期ショックが、開催時期が見通し辛くなってしまったTOKYOバージョンから敢えて年号を外した理由だったのだろうか。面白いのはパンデミックがまだまだ暴れまくっていた2021年12月に発表のノーチラス5711/1Aのティファニーコラボレーション限定(画像右)では年号が主役よろしくド真ん中に表示されている。これはパンデミックと相性の悪い集客イベントを伴わないリリースだったからなのか。こう見てゆくとパテックでは異例と言えそうな年号無し仕様は、人類を揺さぶった歴史が封じ込められた超稀少バージョンという見方が出来そうだ。2025年開催予定のミラノ限定の仕様が早くも気になるところだ。
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新宿の初見では、少々視認性に躊躇したのだが、プッシュ、PUSHで実用性抜群のワールドタイム新機構に感動してから惚れ込んだ一本。過去のグランド・エキシビション・スペシャル・エディションに於いてコンプリケーションのカテゴリ―絞りで、5330の様に斬新な新規機能を搭載したモデルが発表された記憶が無い。特殊な超絶グランド・コンプリケーション(2017ニューヨーク系譜のRef.5531、2019シンガポール系譜のRef.5303や東京Ref.5308等)ではなく、パテックファン全てが購入検討可能なベターゾーンからの提案が好印象だ。「えっ!日本市場の300人しかチャンスが無いのに・・」と嘆く事なかれ。きっと近いタイミングで、恐らく2024年の春?いや早ければ今秋とかにも新製品としてレギュラー追加が有りそうな予感がする。色目次第ではローズゴールド素材でのバリエーションも充分有りそうだ。待てよ!そうなると早晩Ref.5230Pは生産中止でレアモデルの殿堂入り確定なのか。レアハンド・クロワゾネ仕様の5330は一体いつ頃から投入されるのか? どこまでも興味の種が尽きないワールドタイムは、まるでパテックメゾンの屋台骨を支える重要な梁の様な存在と言えるのではないだろうか。

Ref.5331G-010

ケース径:40.0mm ケース厚:11.77mm(ガラス~ラグ)、11.57mm(ガラス~ガラス) 
ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:WG
文字盤:真鍮、プラム・カラー、中央に手仕上げギョシェ装飾
ストラップ:ブリリアント(艶有り)ブラックアリゲーター、プラム・カラーの手縫い仕様
バックル:18金WGフォールドオーバークラスプ
価格:お問い合わせください

Caliber 240 HU C

自動巻日付指針付ワールドタイム
直径:30.5mm 厚み:4.58mm 部品点数:306個 石数:37個 
パワーリザーブ:最少38時間、最大48時間
テンプ:Gyromax® 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責・撮影:乾 画像修正:新田

5711_1a_014.png右手に障害が結構残っているので腕時計の各種操作がままならない。とは言っても自分の時計だけは、何とか無理やり左手も使ったりして時刻調整をしている。特別な箸で食事もゆっくり摂ったりしているわけで全く使えない事も無い。楽しく時に苦労もする実機時計の撮影もたぶん無理なのだろうと思っていたが、退院後取り敢えず愛用時計から試して、どうにか簡単なカットなら時計によっては何とか撮れそうかもとなった。
で、最初がパテック今年最大の話題作ステンレススチール製3針ノーチラスの緑文字盤の実機撮影という幸運から再出発する事になった。撮像の出来栄えは、「あチャ~!」ピントが少々甘かった。しかし小傷がほぼ無い素晴らしい個体コンディションのおかげで結構満足の絵が撮れた。当店直近にお住いのごく親しい顧客様のご愛用品を、ご厚意によって撮影協力頂いた賜物。本当にありがとうございました。ご購入当初は普通に着用されていたらしいが、最近は繁華街とかには着用がためらわれるらしい。そりゃそうだ!2次マーケットをググる度に"驚愕"をこえ"寒気"がしてくる。
ノーチラスはとても撮りやすい時計で助かるが、緑の色目の出方がカメラのモニターでは判然としなかった。幸いPCモニターではまずまずの再現が得られホッとした。ところが原稿を書きながらPP公式サイトの画像と較べると相当に色目の差が有る。だいぶ違う。どちらが正しいのか。いや、これは見え方の差であって、いずれも正しい気がする。公式サイトの画像は思いっきり太陽光が当った感じだ。正式な色名称のオリーブグリーンの表記通りで抹茶系の色目とも言える。しかしながら室内のやや暗めの光源下では今春生産中止になったブラックブルー同様に、非常にダークで若干青味を帯びた複雑かつ色気の或る緑色と化す。残念ながら起稿中の今現在手元には無いので現物の再確認が叶わない。
実はこの原稿を書き始めたのは11月の下旬頃だった。手指のせいで恐ろしく遅筆になった事、11月末頃から12月が思いのほかバタバタした事、しかもありがたい事にその殆どがパテック絡みの商いだった。そんなこんな理由付けも有るのだが、一体何を続けて書けば良いのかネタ切れが書き進められない大きな理由だった。
時計そのものはとうの昔に紹介済み。それ以降での5711がらみの大きなトピックスは、エンジンがCal.324 S Cからストップセコンド機構新規搭載を始め様々な大幅改良がなされたCal.26-330 S Cへ積み換えられた事だろう。この新ムーブメントは2019年新作のウィークリー・カレンダーRef.5212Aのベースキャリバーとして初めて搭載されたもので、これまた昨年度モデル紹介時に詳しく書き込んでいる。さて何を書き綴ればよいものか、思い悩みながらアレコレと言い訳の日々が過ぎ、このまま越年かと思いきや、"5711ラストイヤー"を締めくくるかの様に"GOOD BYE 5711"モデルですか?というティファニー・コラボ170本限定Ref.5711/1A-018などと言うとんでもない物が発表された。さらにその最初の1本がチャリティー目的のオークションとして、12月11日にティファニー本店所在地であるニューヨークで、オークションハウス:フィリップスにより、予想落札価格5万ドルの約130倍650万3500ドル(約7億3489万5500円、1ドル=113.4円、2021年12月11日現在)という驚愕の金額で落札されたのだ。ちなみにwebChronosの12月14日同18日26日の記事が詳しい。
本稿の書き出しは春本番に発表された"これでおしまいのはずだった5711"のグリーンダイアルであったが、実はおしまいでは無く、年末にさらにこれでもかのサプライズ爆弾が仕込まれていた訳で、これについては色々思うところ多々あって、全部なんもかんもひっくるめて5711話を書く事がラストイヤーの年の瀬に相応しいという事になってしまった。

5711_1A_018tf_b.png画像はPHILLIPSサイトのPressページから頂戴した。同サイトをさらに深く見てゆくと同日に限定では無い廃番になったノーマルの5711/1Aのブラック・ブルー(010)とシルバー・ホワイト(011※画像には表示無)もオークションに出品されていた。
20211211PH5711_3.pngnew-old-stockは辞書で新古品とある。いわゆる転売なのだろうが、その辺りの詮索は置いといて、誰が考えても安すぎるEstimateもほっといて、青と白が約28万ドルと約23万ドル(同上円換算、青3200万円弱、白2600万円弱)。また今回冒頭でご紹介の緑(枝番014)も初夏の頃だったかオークション実績の記憶が有って約5400万円だったはず。パテックのリファレンス毎の年産制限数は非公表ながら1,000本程度と想像していて、仮に014が最大の1,000本だとしてもティファニーダブルネーム(同018)170本の6倍には満たない。だが落札額は14倍弱となる。う~ん、直感的には018が高すぎ!と思った無理やり比較だが、チョッと待てよ。所有権が登録されたブランド固有の著名なカラーリングをダイアルに採用している事。さらには一旦これでおしまい?のパテック製品の最終ダブルネームで有る事。それらを考慮してゆくとこれは決して法外な馬鹿騒ぎハイパーインフレ落札では無いのかもしれない気がしてきた。
青(最終枝番010)は2006年~2020年の14年間で仮にフル生産されていれば最大14,000本、同一の考察で白(011)は2012年~2019年の最大7,000本と想像している。この2色は稀少度合いと落札価格が逆転しており、青人気の凄さを裏付けている。その青だが018の80倍以上生産された可能性を考えれば、約3,200万円という落札額がいかに凄まじいかが判る。あくまで個人的な結論ながら、一見信じ難い落札金額のティファニー限定018や、皆が度肝を抜かされた今春の緑014よりもノーマルの青010や白011の方が今現在は資産価値が有りそうにも見える。ただ将来的には稀少性に応じた価格に収れんして行くのではないだろうか。確かに2021年2月の生産中止発表で青010の2次マーケット価格は急上昇した。そりゃ生産打ち止めなので当然ではある。しかしそれにしても他のノーチラス等も含めて、今はあまりにも異常なプレミアが付き過ぎていると思う。間違いなく何かおかしい!
※上記の青・白ノーチラスの金額は、市中の2次マーケット価格は無視している。あくまでティファニーとのダブルネームノーチラスとの比較の為に12月11日落札額を採用した。
しかしそれにしてもパテックとティファニーの久々のコラボ、しかも超人気モデルのフィナーレとしての特別演出は何故なのだろう。確かにティファニーとパテックの蜜月と言うのは半端では無いのは良く解る。創業者の一人であるアントワーヌ・ノルベール・ド・パテックがニューヨークのティファニーを訪れたのが取引き開始3年後の1854年。それぞれの創業から15年、17年しかたっておらず、まだまだ誕生間も無く血気盛んなファウンダー同志が馬が合ってスタートしたパートナーシップだったと想像できる。ティファニーは1870年代には自社ブランドの時計事業をヨーロッパにも拡大すべく、微妙ながらパテック社のお膝元ジュネーブに時計工場を建設するが、わずか4年でこのプロジェクトは頓挫した。パテックはその際にも、その後始末に関わり手を差し伸べている。その名残(駄賃と言うべきか)が、今もジュネーブのパテック本店サロンに鎮座している巨大な金庫である。1900年代前半の米著名時計収集家のヘンリー・グレーブス・ジュニアもティファニーを通じての購入で重厚なコレクションを築いた。
ダブルネームについては昔はロレックス、ヴァシュロンコンスタンタン、オーディマピゲ等の様々な名門時計ブランドも含めて地域一番店等とのダブルネームが普通に有った。それだけ川下の小売店が力強く自らをブランディングしていた時代があったのだ。あぁ、何と羨ましい!今や小売店舗と著名時計ブランドとのダブルネームコラボは、皆無では無いにせよ耳にする事がほぼ無い。そんな背景からしても今回のパテック&ティファニーのコラボの稀少性は大きい訳だ。なぜその発表タイミングに違和感を感じるかと言うと、ティファニーは紆余曲折を経て2021年初めにルイ・ヴィトンを筆頭にした仏高級ブランドのコングロマリットであるLVMHグループに円換算1兆6千億円ほどで完全買収されている
からだ。同グループはウブロ・ゼニス・ブルガリ・タグホイヤー等を擁する一大時計ブランド群も保有しており、我々から見るとパテックの競合先であり、決してお友達の立場とは思えない。買収決定時には、今後のティファニー各店舗内でのパテック商品の取扱いはどうなるのだろう?と思ったほどだ。しかしよくよく考えてみると買収交渉中にはとてもダブルネームを出せる様な友好的買収劇では無く、双方が裁判沙汰に持ち込んだ泥沼仕合だった。
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HODINKEEの記事によればこのノーチラスの裏蓋のサファイヤクリスタル・バックには両社のパートナーシップを意味する幾つかの刻印がなされていて、その中の"1851-2021"部分の最後の"1"には"LVMH"と隠し文字?まで確認出来る画像が掲載されている。この解釈として同記事は、今後も変わる事の無いティファニーとのパートナーシップの証であるとしている。その通りであれば今後も節目のアニバーサリーイヤーには同様のダブルネームウオッチがリリースされても不思議は無い。でも本当にそんな事になるのだろうか。個人的には凄く違和感があって、今後のダブルネームは簡単には出して欲しくないのが本音だ。だいぶ前にニューヨークのティファニー本店を訪ねパテックの売り場を視察したが、色々な点でガッカリがあった。詳細は省くが他の米国内ティファニー店舗でのパテック販売に関しても興味深いお話を顧客様から聞く事があった。アメリカのリアル小売業全般の問題点の様な気もするが、ティファニーも経営的に大丈夫ですか?感はずっと持っていた。だからLVMHへの移行完了をもってパートナーシップ解消が決定したので、個人的には特別なダブルネームを170年連れ添ったベターハーフへの格別なる慰謝料!としたのだろうと解釈した。ティエリー・スターン社長の大盤振る舞い。スゴイ!と思ったのですが・・
それにしても買収企業名の隠し文字、それも"1"の数字に横書きでは無く、実に不思議な縦書きの4文字が妙に離れて記されているのが、全く隠し文字ではなくてどちらかと言うと妙に目立っている。これではまるで慰謝料の帯封に別れたパートナーの再婚相手のイニシャルを印刷しているようではないか。どうも今後の展開が読めなくなってきて、アレコレ探っていたら米ニュースメディアCNBCにティエリー・スターン社長の動画コメント付きの下記の記事が有った。
『パテック フィリップは、170人の幸運なバイヤーのために時計の「聖杯」を復活させました』
この記事を見て結論として思うのは、5711ティファニー・ブルー限定はダブルではなく限りなくトリプルネームだったのではないか。パテック社は2019年から米市場で正規販売店約160店舗を大胆に見直し、現在(2021/12/26)の公式サイトでは実に65店舗にまで絞り込んでいる。憶測ながらティエリー社長は最近のティファニーに微妙な印象を持っていて、実はアルノー家がファミリービジネスとして展開しているLVMH対して、ラグジュアリーメゾンとしてティファニーを傘下に収めてくれる優秀なホワイトナイトの様な印象を持ったのではないだろうか。もしそうであれば今後もダブルかトリプルかは知らないがコラボモデルの可能性は有るかもしれない。でも全米で95店舗もあるティファニーの内、パテックを扱っているのは今回の限定ダブルネームを売る3店舗(ニューヨーク本店、ビバリーヒルズ、サンフランシスコ)に加えてホノルルのロイヤルハワイアン店のたったの4店舗しかない。一方では大鉈を振いながら、スイス人がこんなに義理堅いとは知らなかった。
いずれにしてもノーチラス5711/1Aは完全に終わりだと確信した。まてよ、RGの3針5711/1Rはまだラインナップに踏み留まっているぞ。しかしもうすぐに年度切り換えの2月だ。生産終了発表もある。個人的な勝手予想は、一旦RGもドロップして数年の冷却期間を空けて、コロナも落ち着いたら後継機種Ref.6711とかが発表されればナァ、とか思う新年の今日この頃でございます。そう気が付けば年が明けての公開となってしまった。本年も長文になりがちな拙ブログですが、どうか宜しくお付き合い下さい。

一応備忘録代わりにスペックも
Ref.5711/1A-014
ケース径:40.0mm(10時ー4時方向) ケース厚:8.3mm
防水:12気圧
ケースバリエーション:SSの他にRG 
文字盤:オリーブグリーン・ソレイユ 夜光付ゴールド植字インデックス
Caliber 26-330 S C
自動巻ムーブメント センターセコンド、日付表示
直径:27mm 厚み:3.30mm 部品点数:212個 石数:30個
※ケーシング径:26.6mm
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

Ref.5711/1A-018
※ティファニー・コラボ限定は文字盤とケースバック・サファイヤクリスタルのみ上記と異なるという事で・・

余談ながら或るお客様からお聞きしたのが、ノーチラス・ティファニーブルーの高額落札を受けて、ロレックスのオイスターパーペチュアルSSのターコイズブルーダイアルの2次マーケット価格が異常に高騰しているというお話。確かに色々ググるとエライ事になっていました。コレはもう全く理由がわかりません。

文責、撮影:乾

決して前回記事の続編ではない。あまりにも蜘蛛の糸が短すぎたのか。一気に極楽浄土への扉の取っ手を掴んでしまった。6月20日にPPJに申請をして、七夕の7月7日に出荷された異例尽くしのカラトラバSS限定モデル。天国よりは近そうな天の川から来たにしても呆れるほど早い。モダンな顔した特別モデルにはワープ機能が備わっていた様だ。
当店に始めてやって来る時計は、検品前に先ず撮影をする。理由は汚れ(微細な埃)がほぼ無い最高のコンディションだからだ。前にも触れたが、PPJはかなり前から日本着荷時点の検品を取り止めている。理由は初期不良率が限りなくゼロであって、むしろ検品時にキズ等の瑕疵を発生させるリスクの方が優るからと聞いている。結果、スイスパテック社で出荷検品後に真空パックされたタイムピース達は国内30店舗の着荷時まで無菌?最低埃レベルが保たれている訳だ。
これは何を意味するかというと今回の様な限定モデルの場合、PPJのスタッフですらプロトサンプルではない最終形の販売用実機を生では見ていないと言う事になるはずだ。勿論、当店が国内第一号入荷では無いと思うので、もう既に何人かの正規販売員と強運のVIP顧客様がご覧になられている事はお断りしておく。
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前回のネット画像情報のみでの印象は、あくまでも個人的見解として少々懐疑的と表明した。しかし実機を前にしてこの予測は見事に裏切られてしまった。この時計の紹介はかなり難しい。その理由は後述してゆくが各部をパート毎に見てゆくと「はて?」と首を傾けざるを得ない思いが強い。ところが全体を総合的に見た時にバランスが取れていてデザインの完成度が高く感じさせられてしまう不可思議さが、パテックらしくないこの時計にはある。
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バックルは定番のピンバックルSSなので特に説明はない。文字盤やケース、ムーブメントを飛ばして脇役とも言えそうな画像を持ち出したのは、この限定モデルの最大の特徴と言えそうな風変わりなストラップを、ぐぐっと寄りで見て頂きたかったからだ。
textileとfabricという英語はいずれも繊維を意味するが、前者が加工前の素材を後者が加工後の製品状態を表わすと初めて知った。その伝でゆくとザックリと平織されたテキスタイルを加工してこのファブリック製のストラップは作られたとなる。誰もがそう思ってしまうだろう。でもこれは物凄く良く出来たgimmickだ。ギミックの日本語訳はしっくりする言葉があまり無く『仕掛け、トリック、からくり』等が検索されるが、個人的にもギミック以外に適当な表現が、エッシャーのだまし絵の様なこの型押しカーフストラップには見い出せない。カーフ表皮にアリゲーターの文様が型押しされたなんちゃってストラップは、とうの昔に市民権を得ているので、それはギミック(だまし)では無くフェイク(模倣、模造)と呼びたい。因みにRさんに多い(しょっちゅう見ている様な気がするが)決して見た事の無い時計はコピー(偽物)と言う。
言葉遊びはこの辺りで止して、画像上はまさかの型押し?(パテック的にはエンボス)と見える。実際に起稿しながら今一度金庫から現物を出して子細にキズミで再確認せざるを得なかった。画像より実機の方がだまされ感は若干弱いが、予備知識なしの初見では誰もが化かされてしまうくらい、このキツネは凄い。
しかしこの色目には既視感が有る。前世代のメモリーしか搭載されていないオツムゆえ引き出しの数も数える程しかないが、色目の既視感が直球過ぎて間髪置かずに、ブルージーン或いはヴェールボスフォールと呼ばれるエルメスがお得意にしている青系カーフレザーの近似色ではないかとの曲解に至る。さらに白く太目なステッチが1.5mm弱の巾で粗目に施されている為に、単純迷?解な頭の中はもうHERMÈS、HERMÈS・・となってしまった。_DSC00370.png

もうこうなると何でもかんでもブランディングせずに済まされなくなってしまう。まっ、チョッとブランディングの意味は取り違えているのだが・・で、これまた何処かで見た顔ではないか?いや、何処かで絶対見ているはずだ!となってしまう。どうです、見えてきましたか?そう、そうなんですよ、"L"で始まるブランドの"T"で始まるアレですョ。
ブランドとそのアイコン、パテックでは例えばノーチラス、ルイヴィトンだと例えばモノグラム、エルメスなら例えばバーキン、それらの事である。そしてそれらの所有スタイルは乱暴に言って、完全に2種族に分類される。実に判り易いメジャーなアイコン種族は、何を所有しており、その価値も出来るだけ沢山の人々に確実に認知される事を希望しているコスパ意識が高い方々で構成されている。数的には圧倒的にマイナーな少数民族であるアンチアイコン種族は真逆であって、非常にニッチな限られたごく少数の同類、極端な例では自分しかその価値が判らないという時計やカバンを好む複雑な思考回路を持っている方々と言えよう。筆者がいづれに属するかはご想像にお任せする。
閑話休題、文字盤の色についてもう少しだけ見てゆきたい。時計を横置きした画像と文字盤に迫った直上の画像で随分と色目の違いを感じる。これは完全にライティングの差でしか無い。このブルーカラーは一見爽やかで若々しさが強調された色目なのだが、快晴の太陽光や色温度の高い蛍光灯の下ではその本来持っている青色の特性をしっかり発揮する。ところが一方でホテルのロビーやレストラン等の色温度が低く低照度の下では少し妖しさを漂わせた艶っぽい藍色の顔がちらついてくる。お日様の似合う健康的な昼の顔だけでは無く、それなりに大人のお付き合いもさせて頂きますというから驚いた。個人的にはこの時計の最大の魅力ではないかと思う。まるでカメレオンの様な二面性を隠し持つ不思議なタイムピースだ。
話を少し脱線させるがこの限定モデル、そのままダウンサイジングしてレディスモデルに仕立てたら滅茶滅茶売れそうな気がする。ケース径35mmくらい、素材は18金WGでベゼルにダイアを纏わせてやる。物凄く良い感じに仕上がりそうだ。

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紛れもなく6000系のサイドビュー。厚さは9.07mm(サファイアクリスタル・ガラス~ケースバック)で2020春生産中止となった6006Gの8.86mmより僅か0.2mm程厚い。ところが搭載されるムーブメント厚は限定6007がセンターフルローターCal.324 S Cで3.3mm、6006GのマイクロローターCal.240 PS Cは3.43mmである。Cal.240は本来マイクロローターの恩恵でパテックを代表する極薄自動巻銘キャリバーで2針の素(す)の状態では2.53mmしか厚みが無いが、スモールセコンドやポインターデイト・カレンダー等の付加機能モジュールが盛り込むれて若干厚みが出ている。それにしても薄いムーブなのに、最終のケース厚が出る6007。理由として考えられるのは文字盤の違いか。6006はセンター3針✚オフセンターの小秒針の構成で、全くのフラットダイアルにインデックス等のディスプレイは全て薄く仕上がるシリコン転写プリント。対して限定6007はセンター3針ながら、ダイアルは再外周部に秒インデックス、その内側に厚みの出るアラビア数字アワーインデックスが植字され、さらに逆三角形のインデックスが細いレールに並べられたアワーサークルが来るダブルアワー表示が来て、さらにその内側文字盤センターにカーボン調の凸凹なテクスチャーが来る4つの同心円から構成されており、それぞれのサークルに微妙な高低差が見られる。この辺りに厚みの答えが有りそうだが、良くは判らない。
尚、時計本体重量は58gで標準的なピンバックル18金モデルよりも20~25gは軽い。昨年カラトラバ・ウィークリー・カレンダー5212AがSSの定番モデルでラインナップされてはいるが、パテックの非スポーツ系のSSモデルが稀な為、手に取った際に感じる驚かされる軽さのインパクトが、初見時に普通は優先する視覚を凌駕してしまう稀有なパテックだ。

6007caseback800.png
あちゃー!久々にやってしまいました。何とも締まりのない画像。原因はモチベーション不足。最近はおうちでしっかり寝るしかないので寝不足は関係ありません。
またぞろ個人の好悪を枕詞とお断りした上で、この後ろ姿は頂けません。まず裏スケじゃなくてノーマルバックにした方が好ましかった。この限定を手に出来る最上級顧客は誰もがCal.324のスケルトンバック仕様モデルを数本は持っているはずなので、白い特別装飾で中途半端に隠されてしまったムーブメントが可哀そうですらある。逆もまた真なりで21金製のフルローター始めムーブメント構成部品が、白い特別装飾を読み取り辛くしている。"一粒で二度美味しい"では無くて、二粒で互いの味を相殺してしまっている。私見ながらポリッシュ仕上げのSS製ノーマルケースバックを採用してもう少し控えめなサイズで梨地サテンフィニッシュによる刻印装飾あたりが妥当な選択だったように思える。さらに言えば顧客にとって普段それほどなじみの無い工場に起因した限定モデルなので、少々大振りなカラトラバ十字に変えて2006年のジュネーブ・サロン改装記念限定モデルのように建築物(PP6)をデフォルメしたイラストのエングレーブにしておいた方が良かったのではないか。
本日の重箱はスミがやたらと多い様で、さらに根掘り葉掘りは続く。一見この装飾は天地がキッチリ12時-6時に垂直を通してあるように見える。しかし6000系の裏蓋はスナッチ(スナップとも)では無くてスクリューバック方式の為に10角形は天地キッチリとはまずならない。それどころかメンテナンスで開閉を繰り返すたびに微妙にその位置はずれてしまう。実際この実機も特別装飾と10角形の垂線はシンクロしていない。さらに家政婦が見るが如く眼力を上げてゆくと、納品時点でほんの僅か時計回り方向に0.2度ほど装飾がずれている。この何ともイケてない装飾工程を想像するに
①一旦スクリューケースバック(裏蓋)をミドルケースに閉めてみる
②垂線を意識した何らかのマーキングを裏蓋に施してから一旦外す
③マーキングで位置決めした裏蓋の内側に装飾を転写?する
④再度、裏蓋を閉めて、マーキングを消して、終わり
ところが最後に閉め直す段で、微妙に増し締め気味になって時計回り側にズレが出たという想像だ。
パテックのスクリューケースバック構造は、ほぼ全てが日常生活防水に過ぎない。6000系リファレンスのケース構造に拘らなければ普通にスナッチ構造を採用していれば裏蓋装飾の垂直性は容易に達成できたはずだ。それともPP6繋がりで6000系採用だったのか?いづれにせよスクリューバックに拘るのであれば10角形と特別意匠の垂線の二者をキッチリ合わせて、敢えて45度位は斜めに閉められている方が私的にはスッキリする。
長くなるがもう一つ方法があって、王者パテック的にはどうかと思いつつも、ここはもうギミックついでに見た目スクリューバック裏蓋にして実は巧妙なスナッチにする手が有る。こうすれば意匠と10角形とミドルケースの全3者ての垂線がシンクロする。これなら時計通が初見して意表を突かれ、初心者には何の事やらさっぱり気付けない。究極のだまし絵タイムピースが完成していたはずだ。
attestation_c.gif"ATTESTATION"とは英語で『証書、証明‥』の意味。過去5年の当店パテック取扱いの中で唯一の限定モデルであったノーチラス発売40周年記念限定にも発行添付されてきた。でも書体が微妙に異なったり、ノーチの時は非常に特徴的で美しかったブルーダイアルに因んで、カラトラバ十字、品番やキャリバー名がシックでメタリックな濃青色で箔押しされていた。今回は全身が青を纏っているのに金色での箔押しとなっている。また前回は無かったジュネーブ・サロン(本店ブティック)イラストが薄く背景に敷かれている。なぜかここもPP6では無い。さらに今回はご購入者名前(画像はフェイク修正済)も印字されている。保証書のように連続画一的では無くて、不定期で間隔の開いてしまうアテステーションにはアレンジがなされるようである。

そろそろ、まとめにかかりたい。記事の大半が懐疑心と猜疑心のパレードようになってしまった。しかし、冒頭でも書いたように、この時計は部分で見てはいけない。さらに見方を誤ると超有名2大ブランドのハイブリッドウォッチの気配すら漂ってきてしまう。一度その先入観に捕らわれてしまうと拭い去る事が、困難かつ厄介で始末に悪い。ギミックフルでトレンドセッターブランドの既視感満載、パテックらしさほぼ皆無?作ちゃった感が凄すぎて、自分自身の持つパテックワールドの概念に収まらない、今日的で意欲的かつ挑戦的なヤバイ一本と言えそうだ。
撮影から起稿を通して、穴の開くほど実機を見倒した。「意外と思ったより良いじゃないか」「でもなんか違うナ」「コレクションとしては悪くないぞ、資産価値もタップリ有って」「でも、着用はこっぱずかしくて、チョッと・・」これだけ延々と自問自答を繰り返した時計も過去珍しい。やっぱりヤバイ一本だ。

Ref.6007A-001 ニュースリリース(日本語)
ケース径:40mm ケース厚:9.07mm(サファイアクリスタル・ガラス~ケースバック) 
※カラトラバ十字と《New Manufacture 2019》と装飾されたサファイアクリスタル・バック
ラグ巾:22mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:SSのみ 
文字盤:真鍮製 ブルーグレー 中央にカーボン模様の浮出し装飾 夜光塗料塗布の18金植字アラビアインデックス
針:夜光塗料塗布の18金バトン形状の白ラッカー着色時分針 白塗装ブロンズ製秒針
ストラップ:ブルーグレー 織物模様がエンボス加工された装飾ステッチ入りカーフスキン


Caliber 324 S C.
センターローター自動巻 センター3針(時分秒) 3時位置
窓表示カレンダー
直径:27.0mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個 受け:6枚

パワーリザーブ:最小35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製) 髭持ち:可動式
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
価格:お問い合わせください。

文責、撮影:乾 画像修正:藤本

今年は何もかも異例尽くしだ。見送られていた2020NEW MODELが6月18日にPPJからファックスでやってきて、詳細は公式HPを参考とあって、その結果"来た!見た!驚いた!"と腰を抜かしそうになった。それでなくとも"だまし、だまし"の腰痛爆弾を抱える老体なれば、心尽くしとは言わぬが心配りぐらいの発表プロローグは欲しかった。
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※他の商品画像はPP公式HPでご覧ください
何となく想像していたのは、今春に一旦自粛されたスイス・パテック社発信の公式インスタの公開再開タイミングでのニューモデル発表。実際6月19日(ブランド創業1839年に因み毎月18日スイス時間の18:39にUP)には6007Aをトピックスにしてインスタアップされていたので、これは予想通りではあった。もしかするとこの段取りで毎月同じタイミングでチョットづつ小出しに新製品発表をするのだろうか。それはそれでエキサイティングで楽しみではある。
そして、予想通りお問い合わせの嵐が怒涛のようにやってきて、今度は足をすくわれて溺れそうになる。現在の世界に於ける日本のマーケットシェアは5~10%と想像されるが、その割に今回のカラトラバSS限定Ref.6007A-001の日本入荷予定本数は非常に厳しく、その理由も不明らしい。結果として各正規店の最重要顧客(ベスト ロイヤル カスタマーとでも言えようか)のご要望が優先されそうだが、どの辺りがカットラインになるかは視界不良にして五里霧中という状況の様だ。実機撮影のチャンスも犍陀多(かんだた)になったつもりで蜘蛛の糸を登るが如しである。
一見、限定数1,000本はパテックとしては少なすぎるという事は無さそうだが、記事を書き進める中でまたしても、ああでもない、こうでもない、ひょっとして・・などど千路に乱れる妄想が湧き上がってくるので少しお付き合い願いたい。そもそもこの限定モデルは、2015年から建築が進められていた6番目の生産拠点となる最新工場"PP6"の完成竣工を祝って発表されたものである。サファイアクリスタルのケースバックにある2019は昨年中に既に一部の部署が移転し業務を開始していた為である。勿論コロナ禍が無ければ、4月には新工場のお披露目イベントが開催予定だったので、その際に発表されていた事は想像に難くない。ところでパテックはフィリップ・スターン時代に2度同様のストーリーを持った限定モデルを発表している。
新工房落成限定_b.png
まず最初が1997年にジュネーブ郊外のプラン・レ・ワット村に社運を掛けて竣工させた新本社工場の落成記念モデル3部作だった。上画像のパゴダ(男女各1モデル)とミニット・リピーターである。これらの紹介は過去記事よりご覧下さい。此処で興味深いのはステンレスモデルが全く無い事である。逆に今回はステンレスしかない。パゴダは上の画像以外にも素材のバリエーション等が有って、全てを合計すれば2750本という事になって今回の3倍弱という随分大盤振る舞いがなされた。当時のフィリップ・スターンが新工場構想にかけた想いの強さがうかがえる。当時と現在を比較すれば、年産数もかなり増えているが、パテックの顧客の増え方はその比ではない。そう考えれば今日の1000本限定数は相対比較をすれば凄く稀少と言える。一方、プラチナ製リピーター5029のたった10本(YGとPGも各10本)なんて直営ブティックでファミリーにごく近い雲上顧客に配給販売されたのだろう。でも、今回はそんな特殊なモデルも無い。異例尽くしと言わずしてなんと表現したら良いのか。
2番目の記念モデルは、1953年から様々な運用をし続けてきたジュネーブ・ローヌ通りのブランドの本丸とも言えるサロン(直営ブティック)を2年の歳月を掛けて2006年に全面改築がなされた際に発表された下の2モデルである。
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記憶違いでなければ合計400本のこれらの限定モデルは、その出自からしてパテック直営のジュネーブサロンのみでの販売であったように思う。ただ(ご本人曰く)ブランドへの貢献度合いの高かったごく一部のパテック社スタッフにも授与では無いが購入が許可されたので、5565Aは時々間近で拝見している。今現在ならいざ知らず、当時に於いて、これは役得だったのか、拒絶不可能な義務だったのかは判断に苦しむところである。
今回の6007Aは過去のコレクションにデザインアーカイブが有るわけではなく、見た事もなく、馴染もなく、個人的にはおよそパテックらしからぬ顔と受け止めていたが、上画像左の5565Aと現行ラインナップからドロップ中のカラトラバ6000系を足して2で割って、さらにこれまで全く採用されてこなかった最近のスイス時計トレンドである"テキスタイル"の切り口をパテック風に解釈しました。ということかもしれない。ただある顧客様曰く
「カーフストラップにテキスタイルパターンを型押しする手法は、既にIWCが実装済みであり、見た目は織物にしか見えないが実際の触感は紛れもなく"皮革"だった」というご意見が有った。
ダイアルセンターのカーボン・パターン装飾もパターンに過ぎず、ギミックが詰め込まれているという点は、知りうる限りパテックの全く新しいアプローチとなる。ただ資産価値を無視して単純かつ純粋に時計として見た場合、かなり評価や好き嫌いは分かれる時計だろう。精神的にはともかくも年齢的に還暦を迎えた自分自身的にはこの時計を腕に巻きたい誘惑は全く無い。IWC云々の顧客様も含め相当数のブランドに渡って、幅広く時計収集されている方にこの傾向は強い。
また自身の計算違いか誤解であってほしいのだが価格設定が微妙なのである。比較すべきモデルは、昨年ディスコンになったカラトラバRef.5296。全く同じエンジンを積む3針センターセコンド・シンプルカレンダー自動巻でピンバックル仕様の18金素材モデル。ところがステンレスの限定6007Aの方が少し高いのである。またエンジンは異なるがデザインソースらしい今年のディスコンモデルRef.6006Gとの比較では、6007Aが10%ほど安いのだが、アリゲーターストラップ+WG製フォールディングバックル仕様の6006Gに対して、カーフストラップ+SS製ピンバックルの6007A。これらを足したり引いたりするとSSの6007A限定モデルはやはりチョッと割高になってしまう。限定だから大目に見て、目くじら立てずにマスクで隠して!と言われても1ロット1000本というのは、パテックの各リファレンスに於いて年産本数のマキシマムに近似と思われ、特別に小ロットとも思い難い。資料を見る限り、この限定モデルにはいわゆる限定シリアルナンバーの刻印が無い事もケースの加工・管理という点でコストが省かれており少し気になる。
重箱と老婆心はさておいて、パテック フィリップの顧客層はこの10数年で非常に若くなったと言われている。実際、当店でも30代前半のカスタマーもニューゲストも増えてきている。この方達には今回の6007Aは直球ド真ん中でノックアウトだろう。この若く新しいニューカマーに対して「しっかり頑張ってパテックを収集する事で、いつかこんな特別モデルを手にしてください」というメッセージがこの特殊なカラトラバには込められているのではないか。勿論、既にコレクションを充実させている若きロイヤルカスタマーにとっては、目の前にある、手を伸ばせば届く現実的な"夢"である。
今は、どうか蜘蛛の糸が切れずに「酒が旨くて♪、ネーちゃんが綺麗な♪♪」天国の撮影スタジオまで登り切れる事を願うばかりである。

Ref.6007A-001 ニュースリリース(日本語)
ケース径:40mm ケース厚:9.07mm(サファイアクリスタル・ガラス~ケースバック) 
※カラトラバ十字と《New Manufacture 2019》と装飾されたサファイアクリスタル・バック
ラグ巾:22mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:SSのみ 
文字盤:真鍮製 ブルーグレー 中央にカーボン模様の浮出し装飾 夜光塗料塗布の18金植字アラビアインデックス
針:夜光塗料塗布の18金バトン形状の白ラッカー着色時分針 白塗装ブロンズ製秒針
ストラップ:ブルーグレー 織物模様がエンボス加工された装飾ステッチ入りカーフスキン


Caliber 324 S C.
センターローター自動巻 センター3針(時分秒) 3時位置
窓表示カレンダー
直径:27.0mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個 受け:6枚

パワーリザーブ:最小35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製) 髭持ち:可動式
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
価格:お問い合わせください。

PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅰ No.2
文責:乾

「もう駄目なんやろうね」
「う~ん。もう年が明けましたからね。厳しいかもしれません」
年頭にこんな会話をした覚えがある。なんせ世界限定500本。当店のナンバーワンV.I.P.顧客様であっても2年半の購入実績しかない訳で、他店様で長期間ずっとパテックを買い続けてきた顧客様達に割り込めるかどうか?正直なところ昨年初夏の申し込み時点から一抹の不安は二人で共有していた。
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そんなRef.5650G-001アクアノート・アドバンストリサーチが一月下旬に急遽入荷してくることになった。実はタイミングがチョッと悪かった。顧客様は某ブランドブティックのご招待で初めてのSIHHや工場見学からお帰りになられたばかり。当然のことながら、そのブランドへのお付き合いのお買い物をおざなりにされるような方ではない。でも当然この特別なアクアノートの特別感がどの程度のものであるかを十分に理解されていた。お陰様で、無事ご納品がかなった。
「リサーチせなあかんと言う事は、不都合が出るかどうかどんどんプッシュボタンも押しまくった方が良いね?」
本当に嬉しいお言葉を頂いた。その通りである。ややもするとこの手のお宝モデルは手にされることなく未使用保管される事がしばしばである。パテック フィリップ社の狙いはそうではなく、正に使いまくって欲しい訳である。是非、今後もこの顧客様にアドバンストを宜しく・・・

昨年のナショナル・ジオグラフィックのバーゼルワールド取材時にスイス・パテックフィリップ本社のティアリー・スターン社長が次の様に述べている。
「父であるフィリップ・スターン会長から与えられた命題の一つが、トゥールビヨン機構を使わずにそれに匹敵する精度を実現すべし」
これを本当にやってしまったのがこのモデルの1つ目の特長。これまでにも特許取得して採用されてきた髭ゼンマイ外周部の厚みをました《パテック フィリップ・エンドカーブ》に加えて内側の髭玉に近い部分も厚く形成して、ムーブの垂直姿勢時の等時性をさらに向上させることで同社のトゥールビヨン搭載ムーブに匹敵する-1~+2秒というとんでもない精度を実現してしまった。
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2番目の技術革新はトラベルタイム機構を構成するパーツのダイナミックな統合である。上の画像で左右の✖状にクロスしスプリング機能を有するパーツは実は繋がっている。これまでトラベルタイム機構を構成していた内の何と25個のパーツをたった一つに統合してしまっている。下図の従来機構のイラストと見較べて頂きたい。
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具体的にどんな風に作られているかは知らないが、コンピューターで制御される高度な加工能力を有する工作機械が無ければ出来ない部品なのだろう。しかし、この9時位置のオープンワークは現物が凄まじく美しい。先日開催したパテック フィリップ展では顧客様のご厚意で特別出品頂いた。理想的な照明に照らされたショーケース内の5650Gには改めてその美しさを思い知らされた。
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スケルトンバックを通してみるお馴染みのセンターローターCal.324のバックシャン。今回は少しクローズアップ気味に編集してみた。ここまで肉薄してもブルーに着色されたスピロマックス髭ゼンマイは髭持ちの左上にほんの少しだけ見えているだけで、残念ながら外周幾何学形状も確認は出来ない。表のオープンワークが見事なまでに御開帳しているのと対照的である。
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横顔。トラベルタイムモジュール+センターローターの組み合わせでそれなりの厚み(11mm)は有る。ただムーブメント厚はたった4.82mm(リリースより、薄い・・)しかない。従来機はムーブメント厚4.9mm、ケース厚10.2mmなのでケースにわざとボリュームを持たせたのかもしれない。この理由はよく解らない。6時位置のプッシュボタンはカレンダー調整用である。リューズのカラトラバ十字の下側の突起が消えているのは見逃してくだされ。お触りし過ぎるとこんな羽目になる。リューズ上のベゼルサイドの黒い影も消そうと思ったが、あまりにも虚構になるのでノータッチ。

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一昨年のノーチラス40周年記念限定と言い、この限定アクアノートと言いボックスが何故か小ぶりだ。管理し易くて助かるとのお声もある。鑑賞目的の為のオープンワークを楽しんで頂けるようにケース部分もオープンワークのスケルトン仕様になっているのはご愛敬。確かにこのモデルには似つかわしい特別製化粧箱である。


この時計は先週アップしたやはりアクアノート20周年記念レギュラーモデルのRef.5168G-001アクアノート・ジャンボとほぼ同時に入荷し、同時に撮影をして同じフォルダで管理した。どちらもアクアノートなので画像編集時にどっちがどっちか一瞬こんがらがる事もあって少し難儀した。ジャンボ同様に撮影からアップまで一月以上掛かったが、この辺で投稿しないと多分日を置かずに2018年の新作情報が来るはずだ。これをもとに3月22日にはアップされるであろうPP社の公式HPの新作情報を基にスイス訪問前の予習も兼ねてバタバタと記事を書く事になるだろう。まあ例年の事なのだが、さあ出発まであと2週間・・

《Patek Philippe・Advanced Reserch》Aquanaute Travel Time Ref.5650G-001 20th Anniversary Limited Edition
世界限定500個

ケース径:40.8mm(10時ー4時方向)※リューズを含む3時ー9時方向で45.24mm
ケース厚:11mm 
防水:12気圧
ケースバリエーション:WG 
文字盤:真鍮、中央から外周に向かい明暗のグラデーション スーパールミノヴァ蓄光付18金WG植字アラビア数字インデックス
針:バトン型スーパールミノヴァ蓄光付18金WG時(ホーム及びローカル)分針、パーフィル型ホワイト塗装ブロンズ製カウンターウェイト付秒針、バトン型ホワイト塗装18金WG日付針
ストラップ:ナイトブルー・コンポジットバンド バックル:18金WGフォールドオーバークラスプ

Caliber 324 S C FUS
トラベルタイム機能付自動巻ムーブメント
直径:31.0mm 厚み:4.82mm
部品点数:269個(フレキシブル機構により従来機より25個減) 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間 テンプ:ジャイロマックス
髭ゼンマイ:外周と内端にふくらみを持つSpiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

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257グラム!そうか、プラチナが軽いのか。312gもあった紹介済みのWGクロノの82%である。幸運にも日を置かず疑問が解け、プラチナも実機撮影の機会を得た。しかし比重に優るプラチナは素直にポーズを取らせてくれず撮影には難儀をした。
当店の商いは貴金属地金に縁がなく全くのド素人。ちょうど良い?機会なので金とプラチナの相場というものを調べてみてビックリした。12月6日付け田中貴金属の1グラムの税抜小売価格は金4,668円、に対してプラチナが何と3,812円で断然安い。気色悪いので過去15年間の年間平均値(税抜小売価格/グラム)を比べてみた。
AuPt15.gif2007年ぐらいまではプラチナが金のほぼ2倍だが徐々にその差が詰まって2012年に逆転している。その後2年は再逆転するも2015年からまたも金が逆転している。金・プラチナいづれも需給バランスの崩れが原因で金はずっと高騰し続けており、プラチナはここ数年下落気味で逆転されている。それにしても15年でプラチナは2倍に、金は4倍にもなっている。そりゃ高級時計も高くなるハズである。
まあ時計の金は18金なので現在の相場4,668円に75%を掛ければ3,501円となるが25%混ぜる銀や銅だってコストは掛かる訳でノーチラスの40周年モデルに関して言えば重量差からしてWGクロノの方が素材コストは少し高いかもしれない。ムーブメントはどう考えてもプラチナ用の部品点数213点のシンプル3針自動巻よりも327点のパーツで組まれるフライバック垂直クラッチクロノグラフが高コストだろう。ただしダイヤモンドはベゼル6時下にプラチナモデルアイコンのラウンドダイアが埋め込まれ、3時以外全てバゲットダイアインデックスのプラチナモデルの合計0.36ct.に対して、WGクロノモデルは一部ラウンドダイアインデックス等になり合計0.29ct.と若干少ない。
またWGクロノグラフは過去に全くなかった最大サイズのノーチラスなので冷間鍛造用の金型も一から新規設計製造しているはず。片やプラチナ3針は過去何度か特殊なユニークピースとして販売実績があり、金型もステンレスや18金モデルと基本同じ5711型である。製造本数はプラチナがほぼ半分で割高となる。
このように見てゆくとWGクロノが何となく割安に思えてくるが、何度も繰り返してきたがプラチナ特有の粘りっこい素材特性は鍛造・切削・研磨のどれを取っても18金の何倍ものコストがかかるらしい。特にノーチラスブレスはリンクの細かさが着用感を高めているが、当然パーツ数が増えるためにそれだけ製造には手間が係るはずだ。
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6時側に2段組みされた1976-40-2016のアニバーサリーエンボスは12時側にレイアウトされたWGクロノグラフ同様に目立たない。画像ではライティングの微妙な差で異なって見える文字盤のブルーの色目は全く同じである。ただインデックスのバゲットダイアのサイズは同じだと思われるのだが文字盤面積の違いからかWGクロノの方が微妙に幅広に見える気がするのは目の錯覚か、それとも単なる老眼の進行か?
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左のステンレスモデルRef.5711/1Aと並べてじっくり視ると微妙な違いがある。まず6時位置の生産国表示がSSはSWISSと40th記念のSWISS MADE。ただこれは現行モデルでもバラバラで無表記のものも存在する。カレンダーについてはWGクロノRef.5976Gの記事で18K窓枠以外の違いは解らないとしたが、数字のフォントが異なっており少し太字にもなっている。恐らくカレンダーディスクそのものはPTとWG共通部品と思われる。
12時側のブランドロゴがSSではエンボスの上から4番目の凸部にPATEK PHILIPPE、5番目にGENEVEと転写されている。ところがPTでは転写部分全体を凸部にしてスペースを作りロゴ位置も少し下側にずれてレイアウトされている。これは6時側に配置された三角形の40・1976-2016の記念エンボス位置とのシンメトリーを意識して微妙なデザインワークがなされたようだ。
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プラチナモデルお約束のベゼル6時への隠しダイアモンドは天地巾の制約からか0.02ctとかなり小さい。プラチナケースと言えどもしっかり見えている無愛想でぶ厚い真っ黒けの防水パッキンのすぐ上にセットされるプレシャスなダイアモンド。う~ん!洒落が効いてますナァ。
元々は現会長フィリップ・スターン氏が自分のコレクションに入れてみたところスタッフに好評だった事から採用された仕様だと聞いた記憶がある。そして2000年のミレニアムを記念して限定生産された10日巻きのRef.5100のWGとPT(下画像)を区別するためにスターン氏の指示でセットされたのが始まりとなり現在に続く慣行となった。それにしても最初のダイアはチョッと大振りだったような・・・PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE No.7 P.32
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Nautilus Ref.5711/1P-001 40th Anniversary Limited Edition 世界700本限定
ケース径:40.0mm(10時ー4時方向) ケース厚:8.3mm 防水:12気圧
ケースバリエーション:PT950 
文字盤:サンバースト加工にブルーPVD加工 バゲットダイア付ゴールド植字インデックス
価格:税別 12,360,000円(税込 13,348,800円) 
2016年11月1日現在

SSと全く同じになるのでキャリバー撮影は悩んだが敢えて上下に並べてみた。下のプラチナにはラグ部4か所に貴金属ホールマークが有り、画像右端中央にA384で始まる良く似たじブレスレット品番刻印がある以外は、表面が少しクリームっぽい仕上がりのWGと違ってPTは完璧な銀色なのでSSと完全に見た目は同じである。
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Caliber 324 S C/386)
直径:27.0mm 厚み:3.3mm 部品点数:213個 石数:29個 受け:6枚
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾
PATEK PHILIPPE GENEVE(M.HUBER & A. BANBERY) P.231

5月に腕時計最高額を塗り替えて落札されたパテックフィリップのオークション記事を紹介したが、早くもこのハンマープライスが11月12日ジュネーブのオークションで塗り替えられた。1943年製造ステンレスの永久カレンダークロノグラフRef.1518が12億円。
ひょっとしたらのこんなサプライズもパテックならではのオーナーのお楽しみ。今回紹介はそんな可能性を秘めた最新のお宝限定モデル。先日の速報記事でも予想はしていたがまさかこんなに早い入荷とは・・・
パテック フィリップの取り扱い期間が浅い当店にとってめったに発表されないお宝限定は実はハードルがとても高い。実績顧客に限るという販売条件でお客さんまで限定扱いとなる事が多いからだ。でも今回は大変ありがたい事に速やかにご注文を頂き先日入荷。
心待ちにされていたオーナー様にご来店いただき検品前に真空パッケージを開封いただいた。さらにご了解を得て納品前に実機撮影の機会を得た。あぁもう少し立派な鋏を用意しておくべきだった・・
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オーナー様、当店スタッフを含めての第一印象は"重い!"そして期待たがわずカッコよろしい。発注時に現物が見られない不安感を一掃する好印象で正直「ホッ」とした。
まずブルーの色が良い。PP社のHPでの印象はかなり明るめで若々しい印象があったが、落ち着いた深みのある色目。もちろんRef.5711/1A-010ブラック・ブルーほど渋く色気が漂うわけではなく上品な青色だ。
次に賛否両論あった文字盤センター上部の40thアニバーサリーの刻印(エンボス)。これもHPではやたら目立つイメージがあったが、凝視しない限り何となくの模様であって主張は全くしてこない。プレスリリースではカレンダーが少し大ぶりになるとあったが、それの違いはよく分からない。新たに18KWGで用意されたカレンダー窓枠は高級感があって特別なモデルにふさわしい。6時側の同軸クロノグラフ積算計ももちろんダイアルのサイズアップに合わせてリサイズされているが微妙なデザインマジックで間延びが無く落ち着いた仕上がりとなっている。18KWGに縁どられたダイアインデックスも良い意味で主張しすぎず日常での着用をためらわせるものではない。特にバゲットダイアからなる9個のバーインデックスは、既存モデルRef.5724Gのそれよりも長めでバランスが良く好印象である。
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サイズはさすがノーチラス史上最大ケース径44mmなので確かに大きい。ただ並べてみればの話で単独で見ていれば抑えの効いたパテックらしいデカ厚かと・・
横に並べるとトラベルタイムクロノRef.5990/1Aケース径40.5、厚さ12.53mm)が小さく見えてくるのはご愛嬌か。5976の厚さ12.16mmは5990より僅かに薄いのだが、ケース径では3.5mm大きいのでむしろバランスが良く着用感は上回るかもしれない。面白いのは大きくなってもベゼル巾が従来モデルと同寸(約5mm)の為にこの特別なノーチラス号の窓枠は凄くスマートに見える。
しかし重量級だ。プラチナではないかと思うほどヘビーである。全駒状態でなんと312gもある。参考までにノーチラスの主要なブレスモデルを量ってみた。

7118/1A SSレディスノーチラス3針 106g
5711/1A SSメンズノーチラス3針 123g
5990/1A SSトラベルタイムクロノグラフ 162g
5711/1R RGメンズノーチラス3針 191g

残念ながら紹介モデルに最も近似のRef.5980/1Rは手元になく重量不明。尚パテックは各モデルの重量をプレスリリースやカタログ等で明らかにしていないが実は厳重に管理されており、製造工程最終段階では総重量が必ず計量され、ケースやパーツ等に誤素材の混入が無いかチェックしている。さて未入荷の3針プラチナ限定モデルはどのくらい重いのだろうか。素材の比重からすればPTがWGクロノより重そうだが、ケース厚で3.86mm薄いしブレス厚もかなり違うので結構良い勝負?するかも・・
厚み比較画像:左5976WG、右5711SSう~んやっぱり重いのはプラチナか
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1976年オリジナルノーチラス発売時に採用されたコルク製の特別ボックスが忠実に復刻されている。ビックリしたのは現行モデルの通常コレクションボックスよりかなり小ぶり(巾15cm奥行15cm高さ8.2cm)かつ軽量でずいぶんカジュアルな印象。但しヒンジで連結された上下部とも厚さ4.1cm以上のコルク無垢材から削り出された贅沢仕様だ。
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特に通しの限定シリアルは付けられておらず通常通りムーブメントNo.とケースNo.で管理されている。ただ1300本限定の1本である事を保証する限定証明書が発行添付されている。画像では解りにくいがRef.NoやCal.Noなど主要部分はダイアルカラーに通じるメタリックブルー箔押しの難い演出がされている。
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今回ご発注を頂いた顧客様より1976年と2016年が御家族(お二人)それぞれのアニバーサリーイヤーである事を伺った。感慨深いストーリーに浸りながら撮影をさせていただいた。

Nautilus Chronograph Ref.5976/1G-001 40th Anniversary Limited Edition
世界限定1300本

ケース径:44mm(10時ー4時方向)※リューズを含む3時ー9時方向で49.25mm
ケース厚:12.16mm 
防水:12気圧
ケースバリエーション:WG 
文字盤:サンバースト加工にブルーPVD加工 バゲット及びプリンセスダイア付ゴールド植字インデックス
価格:税別 10,510,000円(税込11,350,800円) 2016年11月1日時点

キャリバーは2006年にノーチラス発売30周年を記念して発表されたシリーズ初のクロノグラフモデルRef.5980/1Aに初搭載されたCal.28-520Cを積んでいる。同キャリバーはパテック社初の完全自社開発製造の自動巻きクロノグラフキャリバーで垂直クラッチを採用し、フライバック機能を備えた前衛的なムーブメントである。主時計の秒針は敢えて備えずに駆動時に殆ど主ゼンマイのトルクをロスしないパテックご自慢の垂直クラッチ方式によりクロノ秒針が主秒針として転用可能である。
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Caliber CH 28-520 C フルローター自動巻フライバッククロノグラフムーブメント コラムホイール、垂直クラッチ採用
直径:30mm 厚み:6.63mm(ベースキャリバー5.2mm、カレンダーモジュール1.43mm)
部品点数:327個 石数:35個 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
又スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから

PATEK PHILIPPE 公式ページ 

文責:乾

ついに発表。今春のバーゼルワールドでティエリー・スターン社長がコメントしていたノーチラスの限定モデル2型が本日?パテックのオフィシャルHPで公開された。PPJからはまだ正式インフォメーションが無いので価格・入荷状況等は不明。詳細判明次第追記予定です。

昨日10月5日に価格の連絡が来ましたので英文のオフィシャルHPから抜粋し、怪しい翻訳でなぞってみます。
Nautilus Ref.5711/1P-001 40th Anniversary Limited Edition 世界700本限定
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品番の"A"が"P"に変わるだけでえらい事に。プラチナのケースもブレスもサイズに関してはSSと全く同じようだ。唯一ベゼルの6時位置にはプラチナ印のダイア0.02ct.が埋め込まれる事を除いては・・
文字盤は18金イエローゴールド、時分針は18金ホワイトゴールド、秒針はロジュウムメッキされたブロンズ(青銅:銅と錫の合金)とケース素材にあわせてバージョンアップされている。インデックスはホワイトゴールドのカップにバゲットダイア(合計0.34ct.)を埋めて植字されているが、ここは好き嫌いが別れそうな気がする。カレンダー窓はわずかに大きくなりホワイトゴールドの窓枠を備えている。6時の上部には文字盤への過剰装飾を嫌うパテックにしては珍しく大胆にも40周年記念のエンボスが結構大きく記されている。
40周年記念モデルがプラチナらしい噂はあったが、ダイアがらみとは全く予想していなかった。ただモニターで見る限りは現行ステンレスモデルにほぼウリなのでこれはこれで・・お値段もそれなりなのだがプラチナは原材料費が高いだけでなく、その粘りっこい素材特性から鍛造・切削・研磨等の加工全般が物凄く大変な素材らしく、ケースのみならずブレスとバックル全てを作ればどうしてもコストがかさむようだ。

ケース径:40.0mm(10時ー4時方向)ケース厚:8.3mm
防水:12気圧
ケースバリエーション:PT950 
文字盤:サンバースト加工にブルーPVD加工 バゲットダイア付ゴールド植字インデックス
搭載キャリバー:324SC→詳細は過去記事
価格:税別 12,740,000円(税込 13,759,200円)

11月7日追記:海外サイト「MONOCHROME」中に1981年に1点限定で生産されたユニークピースRef.3700/1P(控えめなポイントダイアインデックス付き)の2013年オークション情報が掲載されていた。そのハンマープライスは783,750スイスフラン!11/7のレートが1Sfr=107円なので・・
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Nautilus Chronograph Ref.5976/1G
-001 40th Anniversary Limited Edition
世界限定1300本
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バーゼルの段階で2モデル出るらしいと言われていた。3針モデルは妥当としてあと一型は、ミニットかトゥールビヨンあたり・・はたまたクロノならCHR29系のスプリットでいづれも極少量生産かと思っていたら大外れで量産型のクロノグラフムーブCH28-520を積むことで意外に量産?1300本での発表となった。品番はノーチラスデビューの1976年にちなんでの5976。2年前のブランド175周年の限定各モデルの品番(末尾175や75)と発想が似ている。
ノーチラス最大サイズとなる44mmはレギュラーモデルより3.5~4.0mm大きい。厚さ12.16mmは同一ムーブ搭載のRef.5980よりも0.84mm薄いので腕なじみは案外良いかもしれない。大型化に伴って6時側の積算計サークルも大きくレイアウトしなおされている。
こちらの文字盤素材は真鍮。インデックスは3針モデル同様WGでダイアを包んでいるが3か所はプリンセスカットになって総カラットは3針モデルより少ない0.29ct.。時分針はWGにスーパールミノバと3針同様ながら、クロノ秒針はロジウムメッキの鉄針。クロノグラフ積算の60分と12時間計の時分針はホワイトラッカー仕上げの真鍮製。カレンダー窓も3針と同様にWGの窓枠付きで視認性に優れた大き目のレイアウト。40周年記念エンボスはスペースに余裕がある12時側に横長に配置されている。
現行モデルにプラチナブレスタイプが無いので価格の情報を貰う前は、3針プラチナとクロノグラフWGのいづれが高いのかよくわからなかった。ノーチラスにはローズゴールドのブレス仕様で3針(税別5,730,000円)とクロノグラフ(同9,550,000円)がある。単純比較はできないが3針のプラチナのケース&ブレスの製造コストが相当に高いと想像される。

ケース径:44mm(10時ー4時方向)※リューズを含む3時ー9時方向で49.25mm
ケース厚:12.16mm 
防水:12気圧
ケースバリエーション:WG 
文字盤:サンバースト加工にブルーPVD加工 バゲット及びプリンセスダイア付ゴールド植字インデックス
搭載キャリバー:CH28-520 C 自動巻フライバッククロノグラフムーブメント コラムホイール 垂直クラッチ採用
価格:税別 10,830,000円(税込11,696,400円)

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いづれのモデルもブラウンナチュラルコルク製の記念ボックスに収められる。コルクの質感は一見奇抜な印象を受けるが、リリースの説明では1976年のデビュー時のボックスをかなり忠実に復刻したレプリカボックスとしている。
11月7日追記:海外サイト「MONOCHROME」さんよりオリジナルRef.3700の箱画像拝借。サイズバランスは異なる様だがディティールまでほぼウリ。
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納期はまだはっきりしないが、そんなに先にはならないような気がする。とにもかくにも早く現物を見たい。

10月25日追記
10月14日に販売ルールの案内があった。ご購入実績店舗のみで12月末までに購入予約可能となっており、仮に予約が無ければ我々も実物を見る事すら出来ない。また受注可能本数も店舗ごとに決められているので本当に限られた方のみが購入可能となっている。


文責:乾

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