パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

アドバンスド・リサーチ 一覧

「もう駄目なんやろうね」
「う~ん。もう年が明けましたからね。厳しいかもしれません」
年頭にこんな会話をした覚えがある。なんせ世界限定500本。当店のナンバーワンV.I.P.顧客様であっても2年半の購入実績しかない訳で、他店様で長期間ずっとパテックを買い続けてきた顧客様達に割り込めるかどうか?正直なところ昨年初夏の申し込み時点から一抹の不安は二人で共有していた。
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そんなRef.5650G-001アクアノート・アドバンストリサーチが一月下旬に急遽入荷してくることになった。実はタイミングがチョッと悪かった。顧客様は某ブランドブティックのご招待で初めてのSIHHや工場見学からお帰りになられたばかり。当然のことながら、そのブランドへのお付き合いのお買い物をおざなりにされるような方ではない。でも当然この特別なアクアノートの特別感がどの程度のものであるかを十分に理解されていた。お陰様で、無事ご納品がかなった。
「リサーチせなあかんと言う事は、不都合が出るかどうかどんどんプッシュボタンも押しまくった方が良いね?」
本当に嬉しいお言葉を頂いた。その通りである。ややもするとこの手のお宝モデルは手にされることなく未使用保管される事がしばしばである。パテック フィリップ社の狙いはそうではなく、正に使いまくって欲しい訳である。是非、今後もこの顧客様にアドバンストを宜しく・・・

昨年のナショナル・ジオグラフィックのバーゼルワールド取材時にスイス・パテックフィリップ本社のティアリー・スターン社長が次の様に述べている。
「父であるフィリップ・スターン会長から与えられた命題の一つが、トゥールビヨン機構を使わずにそれに匹敵する精度を実現すべし」
これを本当にやってしまったのがこのモデルの1つ目の特長。これまでにも特許取得して採用されてきた髭ゼンマイ外周部の厚みをました《パテック フィリップ・エンドカーブ》に加えて内側の髭玉に近い部分も厚く形成して、ムーブの垂直姿勢時の等時性をさらに向上させることで同社のトゥールビヨン搭載ムーブに匹敵する-1~+2秒というとんでもない精度を実現してしまった。
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2番目の技術革新はトラベルタイム機構を構成するパーツのダイナミックな統合である。上の画像で左右の✖状にクロスしスプリング機能を有するパーツは実は繋がっている。これまでトラベルタイム機構を構成していた内の何と25個のパーツをたった一つに統合してしまっている。下図の従来機構のイラストと見較べて頂きたい。
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具体的にどんな風に作られているかは知らないが、コンピューターで制御される高度な加工能力を有する工作機械が無ければ出来ない部品なのだろう。しかし、この9時位置のオープンワークは現物が凄まじく美しい。先日開催したパテック フィリップ展では顧客様のご厚意で特別出品頂いた。理想的な照明に照らされたショーケース内の5650Gには改めてその美しさを思い知らされた。
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スケルトンバックを通してみるお馴染みのセンターローターCal.324のバックシャン。今回は少しクローズアップ気味に編集してみた。ここまで肉薄してもブルーに着色されたスピロマックス髭ゼンマイは髭持ちの左上にほんの少しだけ見えているだけで、残念ながら外周幾何学形状も確認は出来ない。表のオープンワークが見事なまでに御開帳しているのと対照的である。
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横顔。トラベルタイムモジュール+センターローターの組み合わせでそれなりの厚み(11mm)は有る。ただムーブメント厚はたった4.82mm(リリースより、薄い・・)しかない。従来機はムーブメント厚4.9mm、ケース厚10.2mmなのでケースにわざとボリュームを持たせたのかもしれない。この理由はよく解らない。6時位置のプッシュボタンはカレンダー調整用である。リューズのカラトラバ十字の下側の突起が消えているのは見逃してくだされ。お触りし過ぎるとこんな羽目になる。リューズ上のベゼルサイドの黒い影も消そうと思ったが、あまりにも虚構になるのでノータッチ。

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一昨年のノーチラス40周年記念限定と言い、この限定アクアノートと言いボックスが何故か小ぶりだ。管理し易くて助かるとのお声もある。鑑賞目的の為のオープンワークを楽しんで頂けるようにケース部分もオープンワークのスケルトン仕様になっているのはご愛敬。確かにこのモデルには似つかわしい特別製化粧箱である。


この時計は先週アップしたやはりアクアノート20周年記念レギュラーモデルのRef.5168G-001アクアノート・ジャンボとほぼ同時に入荷し、同時に撮影をして同じフォルダで管理した。どちらもアクアノートなので画像編集時にどっちがどっちか一瞬こんがらがる事もあって少し難儀した。ジャンボ同様に撮影からアップまで一月以上掛かったが、この辺で投稿しないと多分日を置かずに2018年の新作情報が来るはずだ。これをもとに3月22日にはアップされるであろうPP社の公式HPの新作情報を基にスイス訪問前の予習も兼ねてバタバタと記事を書く事になるだろう。まあ例年の事なのだが、さあ出発まであと2週間・・

《Patek Philippe・Advanced Reserch》Aquanaute Travel Time Ref.5650G-001 20th Anniversary Limited Edition
世界限定500個

ケース径:40.8mm(10時ー4時方向)※リューズを含む3時ー9時方向で45.24mm
ケース厚:11mm 
防水:12気圧
ケースバリエーション:WG 
文字盤:真鍮、中央から外周に向かい明暗のグラデーション スーパールミノヴァ蓄光付18金WG植字アラビア数字インデックス
針:バトン型スーパールミノヴァ蓄光付18金WG時(ホーム及びローカル)分針、パーフィル型ホワイト塗装ブロンズ製カウンターウェイト付秒針、バトン型ホワイト塗装18金WG日付針
ストラップ:ナイトブルー・コンポジットバンド バックル:18金WGフォールドオーバークラスプ

Caliber 324 S C FUS
トラベルタイム機能付自動巻ムーブメント
直径:31.0mm 厚み:4.82mm
部品点数:269個(フレキシブル機構により従来機より25個減) 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間 テンプ:ジャイロマックス
髭ゼンマイ:外周と内端にふくらみを持つSpiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

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≪イベントのお知らせ≫
新年早々、1月末に下記展示会の開催が決まりました。皆様お気軽にお越しください。
『パテック フィリップ年次カレンダー展示会』
日時:2017年1月20日(金)21日(土)22日(日) 11:00~20:00
会場:店舗2階パテック フィリップ コーナー
詳細はコチラからどうぞ

ということで数回にわたって年次カレンダーモデルを集中的に掘り下げます。
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年次カレンダーダーの元祖は1996年発表のRef.5035である。この全く新しいパテックのカレンダーの発表までは機械式腕時計のカレンダー機構は大小の月さえ乗り越えられぬシンプルカレンダーか、いきなり2100年までノータッチで突き進む永久カレンダーかの両極端しか無かった。前者は実用性に難があり、後者は機構の複雑さから高額で顧客が限られ一般的ではなかった。そのためか特許を取得した革新的かつ有用な年次カレンダーはデビュー年のスイス時計専門誌モルトン・パッション誌の「ウォッチ・オブ・ザ・イヤー」に審査員全員一致で選ばれている。

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このほとんど"発明"とも言えそうな快挙は1991年、パテックが創造的な産学協同の一環としてジュネーブ州立技師学校の或る学生に卒業研究課題を提示した事に始まったそうだ。この研究に携わった学生さんはその後パテック社に入社し現在も在籍中との事である。
開発の方向性は、カム、ラック、コハゼ、ジャンパー等で構成される既存の永久カレンダーの簡素化ではなく、シンプルカレンダーからスタートした洗練かつ独創的な輪列が採用された。主要な歯車には新たに設計された高精度の歯形曲線が採用されてエネルギーロスが低減した。その結果カレンダーディスクはほとんど機械的抵抗なしに回転出来るようになったらしい。年次の開発=歯車の進化というようなことらしい。
年次に関して調べるとあくまで永久の簡素版でなく、"新規開発のなめらか歯車輪列機構である"との上述のようなくだりにいつも出くわす。ではなぜ永久の簡素版では駄目だったのか。それは永久カレンダーで採用されている大型レバー等は組立時にデリケートかつ高コストの調整手作業が必須となり、一人の職人が全工程を組み上げるグランドコンプリケーションスタイルなら可能だが、或る程度の量産を行う"シリーズ生産"モデルにはなじまないと言う理由があったようだ。調整が容易で信頼性と耐久性を上げつつコストを下げるには白紙からの新規開発しか無かったのだろう。この難問をパテックの開発陣は5年かけて解決した。
デビュー2年後の1998年にはムーンフェイズとパテックが業界で初装備をしたパワーリザーブ表示をそれぞれ独立輪列で追加搭載したRef.5036/1が出る。顔的に今回紹介のRef.5146のルーツと言えるモデルで専用に新規設計され現在ドロップ・リンク・ブレスレットと呼ばれるメタルブレス仕様で発表された。さらに1999年には5036/1の姉妹モデルで現社長ティアリー・スターン氏が創作したプラチナケース+ストラップ仕様のRef.5056が追加発表される。ここまでは全て21600振動の48時間駆動のCal.315 Sをベースムーブとして搭載した37mm径ケースの仕様であった。5036-5056.jpg

大ベストセラーとなったRef.50系年次カレンダーは2005年にRef.5146にフルモデルチェンジされる。ケース径が2mmアップされ39mmとなり文字盤レイアウトはRef.5036そのままとされたがインデックスはそれまでのローマンから12・3・9アラビア+バーの組合せになった。ムーブメントもCal.315から高振動の28800振動・45時間駆動で4本アームに4個の慣性ウェイトからなる新設計のジャイロマックス・テンプを組み込んだCal.324に積み替えられた。
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画像は素材違いのYGモデルである。これは実機サンプルで最上段画像も昨夏の展示会に借用したサンプルを撮っている。その為カレンダーが3月18日土曜日になっている。時計の各ブランドは何故かサンプルの日付を統一する傾向が有る。皆それぞれが一番バランスが良い見た目を選んでいるらしい。で、各ブランドほぼ全部バラバラなのはなんで?・・
ちなみにRef.5146は実はYGのグレーダイアルがとても良い。カタログから想像がつかないくらいケースと文字盤の相性がよろしい。是非現物を見る価値がある。ただ上の撮影画像は時間の制約もあって・・・
Ref.5146のメタルブレスの採用時期は調べきれなかったが取り合えずサンプルがあったので一応撮影し画像アップした。このブレス装着感の良さも是非機会があればお試し価値は絶対にあり。

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さて2005年には合わせて初代Ref.5035のイメージが色濃く残された37mmサイズ・パワーリザーブ表示無し・フルローマンインデックスのRef.4936がレディース初の年次カレンダーモデルとして発表された。
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この年には先端テクノロジーを追求する「パテック フィリップ アドバンストリサーチ」第一弾の年次カレンダーモデルRef.5250Gが限定100個で発表された、Ref.5146と外見は同じながら従来型のCal.315ベースの年次キャリバーにシリコン系素材であるSilinvar®製ガンギ車を搭載していた。さらに翌2006年にアドバンストリサーチ第2弾としてローズゴールド仕様の年次Ref.5350Rが300個限定で発表されている。エンジンはCal.324に変更され、ガンギ車に加えてSilinvar®製のSpiromax®髭ゼンマイが採用された。2008年にはアドバンストリサーチの完結編として年次Ref.5450Pがプラチナ限定300個で製作された。このモデルの脱進機はPulsomax®脱進機と呼ばれアンクル素材もSilinvar®製となった。

ところでアドバンストリサーチそのものは機械式時計の心臓部である調速機構の最重要パーツである髭ゼンマイ及び脱進機を構成するガンギ車とアンクルのシリコン化プロジェクトである。必ずしも時計は年次カレンダーである必然性はなかったはずだ。それを敢えてフルモデルチェンジをした第二世代年次カレンダーRef.5146のデビューに花を添えるという演出をしたパテック フィリップは中々の役者である。

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実を言うと個人的にこの第2世代の年次カレンダーはノーチラスと同様で最初あまり印象が良くなかった。もっと正確に言えばRef.5146の顔が何とも緩くてもっちゃりした印象しかなかったからだ。きっとバーゼルでも悪態をつき、短寿命モデルと予想した記憶がある。ところが今年で満12歳もの長寿モデルとなってしまった。初代Ref.5035(10年)より長期政権でロングかつベストセラーなのだ。そして兄弟姉妹的モデルが15型もある大家族構成でもある。時々パテックにはこうゆう大穴というか裏をかかれるモデルが出てくる。気張らずに普段感覚で着けられる気楽さ、それでいて世界最高峰の満足感が同居するのが人気の秘密なのか。さらに言えばパワリザーブ機能無しの分家モデルのRef.53965205と比較して求めやすい価格もRef.5146の魅力なのだろう。

厚みは11.23mmでクラシカルデザインRef.5396の11.2mm、前衛デザインRef.5205の11.36mmとほぼ同じで決して装着感を損なう厚みではなくええ感じの存在感だ。
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今回撮影中にRef.5146のムーンフェイズのプリント仕様が他のモデルと微妙に異なっている事に初めて気付いた。普通は月も星も単純な塗装と思われるのだが、Ref.5146の星は周囲が盛り上がった凝った仕上げがなされている。他モデルにもあるかもなので今後注意を払いたい。尚、RGの文字盤はYGのラッカー塗装と異なりSlate gray sunburstで全く印象別物なのだが・・個人的には実に実に美しい。1月の年次展示会にはWG素材サンプルのSlate gray sunburstとの見比べも楽しみだ。
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下はRG素材のクリームのラッカー塗装の月齢表示部
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Ref.5146R-001 年次カレンダー

ケース径:39.0mm ケース厚:11.23mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RG WG(別ダイアル有YG(別ダイアル有) PT ※別途ブレスレットモデル有り
文字盤:クリームラッカー、ゴールド植字インデックス
ストラップ:マット(艶無)チョコレートブラウンアリゲーター
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:税別 4,520,000円(税込 4,881,600円)2016年11月現在
※WGは同額、YG、PT及びブレスレットタイプの価格はお問い合わせください。


搭載キャリバーは21金フルローターを採用したパテックを代表する自動巻きCal324に年次カレンダーモジュールを組込んでいる。
カレンダー系の操作は禁止時間帯等あって気を使うが、パテックの場合は殆どの物が午前6時(例外あり)に時刻を合わせてプッシュ操作を行う。ムーンフェイズはいつもネット検索して確認していたが、パテックHP内にある確認ページが結構便利である。
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画像は都合でYGを撮影。裏蓋はスケルトンでスクリューバック仕様。これも少し不思議でほぼ同じ厚みの年次兄弟モデルのRef.5396と5205はスナッチ(抉じ開け)が採用されているのだ。ところで撮影時に惚れ込んだYGモデルはサンプルとして余程人気があるのかお勤めがずいぶん長いようで懐かしいホールマークを久々に見つけてしまった。

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Caliber 324 S IRM QA LU

直径:30mm 厚み:5.32mm 部品点数:355個 石数:36個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
尚、スピロマックス等のパテック フィリップの革新的素材についてはコチラから
PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2017年12月20日現在
5146J-001 お問い合わせください。その他はご予約対応となります。

(パテック フィリップ在庫管理担当 岡田)


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