パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

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今年は11月頭にオンリーウオッチのオークションが過去同様ジュネーブで開催される。オンリーウオッチとは難病であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー症におかされた息子を持った父親が、その難病克服研究の資金を賄うべく、2005年以降の奇数年に開催している時計のチャリティーオークションである。各著名(ニッチもあるけど・・)ブランドが、一点物のユニークピースを出品し、落札額の99%がその難病研究プロジェクトに投じられるという一大イベントだ。
パテックはその常連であり、知る限り毎回最高落札額となっていて、貢献度合いNO.1である。ちなみに前回2019年度はグランドマスター・チャイムRef.6300のステンレスバージョンを出品し、2名の落札者が競り合って邦貨換算30数億円という記録的な価格で落札された。ちなみにカタログに掲載される同一モデルのWGはザックリ3億円なので、とんでもないプレミア価格だ。ちなみに今年のオンリーウオッチとしてパテックが用意したのはコチラの伝説的デスククロック。落札予想価格はCHF400,000(123.61円換算で49,444,000円)なので、今回は天井知らずの競り合いにはなり難そうな?玄人向けの選択をしてきた感がある。
そんなことより此処しばらく110円台で動きの少なかったスイスフランに対してえらい円安が進んでいた事にビックリした。現コロナ禍で空前のヒートアップとなっているパテックを筆頭とした高級時計の人気状況と併せて価格改定が有るかもしれない。
閑話休題。オークション向けの特殊モデルを新製品と言えるかは別として、今年の新製品は6月のグランド・コンプリケーションのミニット・リピーター4点迄で終了かと思っていたら、まさかのクロノグラフ3点が先月発表された。さすがに年度末(2022年1月末)まで3ヶ月を切って、さらに今後の新製品発表は無いと思われる。6月の4点についてはあまりにも超絶系だったので記事にしなかった。今回も全て広い意味でのコスメティックチェンジ(既存モデルの派生バージョン)なのでパスしようかと思ったが、1点だけ予想を遥かに上回るお問い合わせを頂いたステンレスモデルについて遅ればせながら雑談風に印象を述べたい。
5905_1A_001_8.png年次カレンダー搭載フライバック・クロノグラフRef5905の初出は2015年だが、2006年に発表されたRef.5960Pのマイナーチェンジを受けた後継機なので、個人的にはもう15年もたったのかという時の流れを感じざるを得ない。特に2014年から2018年迄の短期間に生産された5960/1Aが、最高にプレシャスな素材であるプラチナからパテックのコンプリケーションカテゴリ―では、滅多にラインナップされないステンレスへと驚愕の素材変更コスメチェンジモデルとして印象的で、今回は後釜SSモデルがトレンドカラーの緑を纏ってデジャブの様に再来してきた。これがファーストインプレッションである。
今年のグリーントレンドはチョッとどうしたの?と言うぐらいブランドを問わず多作である。先日、2年ぶりぐらいに大阪市内に買い物に行ったが、アパレルもカーキのオンパレードだった。これは果たしてコロナ禍癒しのヒーリンググリーンなのか。はたまたパンデミックと戦うミリタリーグリーンなのか。当店のイメージカラーもグリーンなのだが、個人的には少しゲップが込み上げてくるホウレン草を食べ過ぎたポパイの心境だ。今回紹介モデルの緑の色目について、良し悪しや好き嫌いの判断はモニターチェックのみなので実機待ちとする。
で、ここから辛口も混ざった個人評価となる。時計そのものはスッキリと言う意味では5905でも良いのだが、スチール素材が持つスポーティーな質感をより際立たせるならパワーリザーブとクロノグラフに同軸12時間計が加わった2針表示を持つ5961の顔で5960/1200A(/1Aは後述のブレス違い理由で使用不可っぽいので)なんぞと言うリファレンスにした方が個人的にはストンと言う感じだ。5905顔はSSにはチョッとエレガントなんですよ。そしてブレスレットが全く同じでは無いのだろうけれど、どう見てもアクアノートのブレスにしか見えない。以前の5960/1A系は5連ブレスで現行モデルではRef.5270/1R5204/1Rに採用されているタイプだった。これら一連の5連ブレス(仕様は微妙に異なっている)は、今回の3連中駒サテン仕上げのスポーティーなアクアノートタイプより、5連フルポリッシュ仕上げと言う点でもずっとエレガントだ。何が言いたいのかと言うと、ステンレスで敢えて5905にするならエレガントに優る5連ポリッシュブレスレットが良かったと思う。でもベストチョイスは5961の顔でオリーブグリーンカラーに3連のアクアノートタイプブレスレットならグッと締まった戦闘的な面構えのステンレスモデルになったのではないかと思う。
5905_1A_001_12.pngしかしである。そんな事はおかまいなしに"鉄"の人気は想像以上で、公式HP発表の1時間後に顧客から最初のお問い合わせ電話が入り、閉店までに追加でお二人、翌日は4人様、そしてその後もTo be continued・・・

今現在パテックとロレックスが共に異常人気である。2次マーケットで見る価格もうなぎのぼりであり尋常では無い。コロナ禍が原因でごく一部の高級な時計と車に、裕福層の行き場を失った手元資金が集中している為だと思われる。それらに共通するのは物として楽しめて、いつになっても資産価値が減らないという安心感だろう。これは勿論"転売ヤー"と呼ばれる人達を論外として、"ロイヤルカスタマー"が保有目的でコレクションする際の普通の心理だと思う。
だが突出している2ブランドには様々な共通点もあるが、決定的に大きな違いがある。それはラインナップの素材構成比率とそれに起因する生産数量が大きく異なっている事だ。ロレックスは年間生産数を公表していないが70万~100万本と世間では推測されている。そしてステンレスの構成比が圧倒的多数で、私見ながら半分以上ではないかと思っている。参考の為、久々にロレックス公式HPを覗いて、ゴールドコレクションの数を見たが28ページもあって凄いリファレンス数で数えるのをあきらめた。SSは一体どうなっているのだろう。5年程前まで当店でもロレックスを販売していたが、物凄くラインナップが膨らんでいる様で驚いた。ロレックスの平均単価が決して安いとは言わないがステンレス主体なので、18金が主体で年産10万本以下のパテックと較べて生産数で稼ぐ必要がある。勿論年商はロレックスが多いのだろうが、この本数を製造し続ければいずれは市場に溢れてくる可能性を感じる。実際、2000年頃と較べて市中での着用者を目にする事が非常に多くなった。
実用時計の王者ロレックスの複雑時計はスカイドゥエラーに搭載される年次カレンダー迄であり、一番人気はデイトナに積まれている自動巻クロノグラフだろう。シンプルな3針カレンダーを始めどのムーブメントも非常に耐久性が高く信頼もおけるが、製造個数が多い為にバリエーションを増やすのが難しく、特に手作業が必須となる超複雑機能時計の製造は困難だろう。パテックは真逆の理由で年産数を大きく増やせない。もし仮にステンレスモデル比率を増やせばゴールドに積むムーブメントが減って、年商に影響が出る事態になりかねない。これが超人気のノーチラスとアクアノートのSSモデルが、需要を大きく下回ってしか供給されない理由なのだろう。
ところで何となくこの新作時計の製造はあまり長くないような気がする。理由はダイアルカラーの特殊性で、例えば赤や黄色の文字盤はブライトリングなど他ブランドで過去に採用実績があるが売れ筋になって長らく継続するという事が無い。緑も数年前から幾つかのブランドで前のめりトレンドとして市場投入されてはいるが絶好調とは言い難い。個人的には定番化する色目では無く、刺し色感の側面が強い様に思う。その意味に於いて今すぐゲットして腕に巻くべき旬のモデルなのだろう。

Ref.5905/1A-001 年次カレンダー搭載フライバック・クロノグラフ

ケース径:42mm ケース厚:14.13mm ラグ×美錠幅:22×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:SS
文字盤:オリーブグリーン・ソレイユ ゴールド植字バーインデックス
ブレスレット:ステンレススチール仕様 両観音フォールドオーバークラスプ 

搭載されるキャリバーCal.CH 28-520は、それまで頑なに手巻きの水平クラッチに拘っていたパテックのクロノグラフ史を2006年に塗り替えたエポックメイキングなエンジンである。前年発表の完全自社クロノキャリバーCal.CHR 27-525は確かに最初の100%自社製造ではあったが、それまでの伝統的製造手法でコツコツと工房で少量生産される手作り的エンジンであり、搭載されるタイムピースも商品というより作品と呼ばれるのがふさわしいユニークピースばかりだ。対してCal.CH 28-520は、"シリーズ生産"と呼ばれる或る程度の工場量産をにらんだ商業的エンジンであり、パテック フィリップが新しいクロノグラフの歴史を刻み込むために満を持して誕生させた自信作だ。
パテックの自社クロノキャリバー3兄弟の価格は、その搭載機能や構成部品点数に比例せず、どれだけの手仕事が盛り込まれているかで決定される。金銭感覚抜群で働き者の次男CH 28-520 C(自動巻、垂直クラッチ、フライバック、部品点数327点)、次がクラシックだけどハイカラな3男坊のCH 29-535 PS(手巻き、水平クラッチ、部品点数269点)、そして金に糸目をつけない道楽な長男CHR 27-525 PS(手巻き、水平クラッチ、ラトラパンテ、部品点数252点)の順にお勘定は大変な事になってゆく。
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上記画像でローターで隠された部分は3枚の受けがあるが、この部分はどの派生キャリバーもほぼ変化が無い。それに対してテンプ左のPPシールの有る受け、さらに左の複雑なレバー類がレイアウトされた空間は派生キャリバー毎にけっこう異なる。必要なミッションに応じて搭載モジュールがダイアル側で単純にチェンジされるだけでなく裏蓋側の基幹ムーブメントへもアレコレと手が入れられている。

Caliber CH 28-520 QA 24H:年次カレンダー機構付きコラムホイール搭載フルローター自動巻フライバック・クロノグラフムーブメント

直径:33mm 厚み:7.68mm 部品点数:402個 石数:37個 受け:14枚 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より) 

文責:乾
画像提供:パテック フィリップ

追記
リハビリを兼ねて?のPC操作なのでとにかく時間が掛かる。本稿も10月下旬から書き始めて推敲などしている内に公開が、11月も中旬となってしまった。そして公開前にONLY WATCHの落札結果記事を見つけてしまった。今年は最高落札をわざと外しにいったな、と思っていたパテック。でもやっぱり・・見事に裏切ってくれました。なんと落札予想額の19倍の950万スイスフラン(約11億7725万円、1スイスフラン=123.79円、2021年11月9日レート)、他ブランドも軒並み凄まじい落札のオンパレードだった。此処でも時計バブルは顕著なようだ。

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8月にはとうとう記事を一度も投稿出来なかった。酷暑のせいか、新型コロナ禍のせいか?はたまたネタ切れか?まあ全部と言えば、全部。言い訳にしかならないが"ストレスフルな夏"であったのは間違いない。おっかなびっくりの出張や面会、外食を再開し始めるも、扉は常に半開き状態で危険と背中合わせを感じつつも天照大御神のように閉じ籠り続ける事も無理が有る。奈良県もクラスターが次々発生し死者8名、累計感染者は500名を超えてしまった。当たり前の対策をしつつ生き残りは運次第という諦観も覚悟するしかないのか・・
6月にSSカラトラバ限定モデル、7月にはグランド・コンプリケーション3モデルの新製品が発表された今年のパテック。てっきり8月にもコンプリケーションかカラトラバ辺りを何点かリリースすると思いきや、その後音沙汰なし。そんな折に入荷して来たのが2019年ニューモデルの手巻クロノグラフRef.5172G。この時計は残念ながら昨年度の入荷予定が見送られた1本。入荷予定新製品が見送られるのは結構珍しいケース。勿論お客様の注文が紐付いていてが原則だけれど。と言う訳で当店初入荷の実機を撮影してご紹介の運びとなった。
パテック フィリップは決してクロノグラフ時計の専業メーカーではない。しかし歴史的にも偉大なクロノグラフを輩出してきた事実があり、中途半端なクロノグラフ専業を謳っているブランドより重厚なアーカイブを持っている。さらに言えば1920年頃から腕時計に搭載された主要な複雑機構(クロノグラフ、ミニット・リピーター、永久カレンダー、ワールドタイム等)の全てに於いて業界のパイオニアであり常にトップランナーとして走り続けてきたと言っても過言ではない。敢えて外したトゥールビヨンについてはあまり過去に製作例が無い様に思う。現行ラインナップに於いてもトゥールビヨン搭載モデルは現行3モデルに今年7月発表の5303Rが加わったに過ぎない。推察するにパテックはトゥールビヨンそのものにさほどの有効性を感じていない様に思う。
トゥールビヨンは1800年前後に仏の天才時計師アブラアム=ルイ・ブレゲが発明したとされ、機械式時計の精度安定を計る為にテンプをキャリッジと呼ばれる籠に収めて一定時間に一定速度で籠自体を回転運動させるという構造になっている。当時は懐中時計時代であり、その携帯精度の平準化には有効とされ、時計開発の歴史を何十年も早めた発見とされている。しかし常に一定の姿勢で携帯されるポケットウォッチと異なり、腕時計は手首に巻く特性上から様々なポジションを取り易いので、コストを掛けてテンプを回転させなくても精度はそもそも平準化しやすい。現代では各ブランドがその技術的優位性を誇示するために製作されている面がある。
ところで他ブランドのトゥールビヨン・キャリッジは通常ダイアル側にオープンワーク仕様で見せる構造になっている。確かに繊細で美しいキャリッジが優雅に回転する様は見栄えがある。だがパテックは伝統的に紫外線によるオイル劣化を嫌って裏蓋側からしか見えない様にしてきた。雲上機構であるトゥールビヨンでさえも見た目よりも実用性を優先するパテックらしい配慮だ。尚、今年発表(正確には昨年のシンガポール・グランド・エキジビションが初出)の5303Rは時計の裏表両面がオープン・アーキテクチャー(全面スケルトン)の為に、敢えて見栄えのする表側にキャリッジが配置された知る限りパテックでは初めての試みだが、サファイアクリスタルに無反射コートならぬ紫外線防止加工を施すというこれまた初耳の対策で悪影響を防いでいる。
さて、脱線はこのくらいにして本題のクロノグラフに話を戻しヒストリーを少しおさらいしてみたい。パテックが手巻クロノグラフをジュー峡谷のヴィクトラン・ピゲからエボーシュ供給を受けて造り始めたのが1920年代半ばである。当時はキャリバーも完成品も名称や品番が無くそれぞれ固有番号で管理されていた。またリューズ1本で操作をするシングルプッシュ方式が採られていた。さぞや良く壊れたのではないかと思われる。1932年のスターン・ファミリーへの事業継承を経て1934年9月には、ジュー峡谷のクロノグラフ専門エボーシュのヴァルジュ―社の23VZをベースにパテック向けにカスタマイズされた専用キャリバー13'''搭載の名機Ref.130が登場している。ツープッシュボタン型は遅くとも1936年製造機には登場している。今回の紹介モデル5172のルーツと言えよう。
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因みに当時からパテックのクロノグラフに共通する仕様であるコラムホイールとそのカバーであるシャポーが採用されていた。このキャリバーは供給が途絶えた3年後の1985年まで搭載され続けた"超"の着くロングライフなエンジンだった。様々な搭載機の中で特に著名でアンティークウオッチ市場で高評価なのが永久カレンダーを組み合わせたRef.1518(1941-1950)とRef.2499系(1951-1985)である。
それ以降の後継キャリバーには同じくジュー峡谷のヌーベル・レマニア社が選ばれ、同社のCal.2320をパテック社自身が大幅にカスタマイズしたCH 27-70が誕生した。これも名機の誉れが高く今現在も追い求められる人気モデルを続出した。やはり永久カレンダーを併せ持ったRef.3970(1986-2004)とその後継機Ref.5970(2004-2011)。そしてシンプルなツーカウンターとヴィンテージテイストの表情を持ち大ぶりなケースを纏ったRef.5070(1998-2009)は記憶に新しい。2000年のYGモデルがたったの税別410万円。でも当時の高級時計相場からすればかなり高目だったが絶対に買っておくべきモデルだった。参考に出来そうな後継機5170( 製造中止モデル)は倍以上の価格設定になっていた。こちらは5172に至るシンプルな手巻クロノクロノグラフの中継ぎ機種的な存在だ。
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そして2009年まで四半世紀に渡り搭載され続けたCH 27-70だが、時代の流れでスウォッチ・グループ傘下に組み込まれていたヌーベル・レマニア社はグループ外へのエボーシュ供給を絶たざるを得ない圧力が掛けられていた。その為に2000年頃からパテック社はクロノグラフの完全マニュファクチュール化計画を進めて2005年には、量産は効かないが古典的な手巻極薄スプリット秒針・クロノグラフ・キャリバーCHR 27-525 PSをリリースした。代表的搭載モデルはRef.5959Pだろう。さらに2006年には実用性に溢れシリーズ生産(量産タイプ)に向く現代的な垂直クラッチを搭載した自動巻フライバック・クロノグラフ・キャリバーCH 28-520系を発表。年次カレンダーがカップリングされた初号機Ref.5960Pは、市場でプレミア価格が横行してしまう大ヒットモデルとなった。14年が経つがつい先日の様に克明に覚えている。
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そして2009年秋にはマニュファクチュール化プロジェクトの総仕上げとなる第三段として手巻のシンプルクロノグラフ・キャリバーCH 29-535 PSが初搭載されたのは、クラシカルな婦人用クッションケースのRef.7071Rだった。同キャリバー搭載のメンズモデルとしては翌年春のバーゼルワールドで正当なラウンドシェイプでRef.5170Jが発表された。幾つかの素材・顔で製造された5170は2019年春に生産中止となり、後継機として今回紹介の5172Gが、その任を引き継いだ次第である。一気のおさらい、あぁ~しんど!5172g_side_a.png

兄貴分であったRef.5170との違いは多々あるが、最も顕著なのはケースと風防ガラスのデザインだろう。段差付きの特徴的なラグは1940年代半ばから60年代にかけて採用されていた歴史がある。最近で2017年発表の永久カレンダーRef.5320Gで久々に採用され、昨年2019年には今回紹介のクロノグラフの他にカラトラバ・ウィークリー・カレンダーRef.5212Aでも採用されている。ただ5212のケースはラグの段差が1段であり、ケースサイドも上画像の様にエッジィな出隅と入隅を伴った出っ張りは無く、少し官能的ともいえるシンプルなカーブ状に仕上げられている。この点永久カレンダー5320はケース形状的に5172とはほぼ同じである。ボックス状のヴィンテージ感漂うサファイア・ガラスが少し特殊な手法でケースに固定されるのは3モデル共通である。ケースサイドの鏡面仕上げは素晴らしい為に平滑面には顔を全く歪まずに映す事が可能だ。
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放射状にギョーシェ装飾された菊の御紋の様な丸形プッシュボタンは、同じエンジンを積む婦人用クロノグラフRef.7150/250が一年先んじて2018年に採用している。デザイン的な出自を探すと1940年代に製造された手巻クロノグラフRef.1463のプッシュボタンに酷似した意匠が見られる。ただラグは一般的な形状であって段差などは無い。
パテックのデザイン的アーカイブの活用には2通りあってクンロクやクロノメトロ・ゴンドーロの様に、ほぼオリジナルモデルのデザインを忠実にトレースする場合が一つ。その他に今回の様に過去採用してきた様々なディティールを組合せる事で新味を作ってしまうやり方が有る。前者では歴史的デザインそのものが売りであり誰もが復刻モデルと認識出来る。後者はアンティーク・パテック愛好家以外の現代パテック・コレクターには全くの新規意匠と映る。温故知新とも言えるし、実に巧妙で賢いが、分厚いアーカイブが存在し、尚且つブランドとして途切れなかった歴史に守られた資料。さらに自ら重厚なミュージアムを運営継続できる膨大なコレクションの収集があってこそ可能な事である。
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文字盤の構成も永久カレンダー5320に共通部分が多い。やや大振りで正対したアラビア数字の植字されたWG製インデックスと注射針形状と呼ばれる太目のWG製時分針にはたっぷりと夜光塗料(一般的にはスーパールミノバと呼ばれる蓄光塗料、パテックは敢えて夜光と表示)が塗布されカジュアルでスポーティな印象を与えている。ダイアルのベースはニス塗装によるブルー文字盤となっており、カラトラバ・パイロット・トラベルタイムRef.5524Gと同じ化粧がなされている。
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もう少し文字盤のディティールがそこはかとなく写り込んで欲しかったが、ただの夜光画像になってしまった。最近ロレックス社の公式インスタグラムを見ていたら、9/3投稿のオイスターパーペチュアル画像に素晴らしい文字盤と蓄光インデックスの競演画像があって感動した。ともかく画像が凄まじく美しい。実物以上に仕上がっているのが良いのか悪いのか。翻って基本パテックはカタログ等印刷物の仕上がりは絶対に現物を超えない。カタログ画像よりはずっと良い公式インスタ画像でもそれは意識されている様な気がする。まるで醜いアヒルを狙っているのかと思ってしまう。しかしまあ稚拙な画像を掲載してしまった。
因みにパテックはじめ現代時計で主流となっている蓄光というのは、光源によって蓄えられた光を発光するが時間と共に照度は弱くなり明け方にはほぼ光れない状態になる。1900年代初頭から1990年以前迄は自発光する夜光塗料が時計には主に使われていた。著名なのは軍用として開発されたパネライのオリジナル・ラジオミールで放射線物質のラジウムを含む塗料がその命名の所以だ。後期にはトリチウム等を含有した塗料が主になる。ヴィンテージ・ロレックスのダイアル6時辺りの"T<25"の表記などが有名。しかし今現在は特殊な透明ケース等に閉じ込めて放射線が洩れない構造にしなければ一切使用できなくなっている。現在この特殊方式に則って採用しているのはボールウオッチやルミノックス等である。夜光は放射性物質の長い半減期の間は昼夜関係なく常に光っている働き者だ。しかしその基本照度は低く、優れた蓄光塗料の最高輝度にはとてもかなわない。実際には一寸先が闇という漆黒でないと見づらい。まあ昔の夜は今よりずっと暗かったはずだ。ミニット・リピーターも実用性があったに違いない。
さて、今回も脱線しまくりのRef.5172G紹介だが、ストラップにも触れないわけにゆかない。2015年にカラトラバ・パイロット・トラベルタイムRef.5524まで滅多に採用される事が無かったパテックでのカーフスキン・ストラップ仕様。昨年度からは5172に加えて55205212など複数のモデルに採用されるようになった。5172の文字盤のニス塗装仕上げに質感・色共にマッチした表面感を出したブルーストラップによって、前身機の5170には全く無かったカジュアルな印象が全面に出て来た。ケース径と厚みが若干増してラグ巾が1mm絞られたのもカジュアル指向だ。ブルーデニムにTシャツでも余裕で大丈夫だろう。制服指向のかっちりしたクラシックなスーツが不振を極めており、ビジネスシーンでの服装のカジュアル化が鮮明だ。コロナ禍と酷暑でそれは益々加速されたようにも思う。隆盛を極めるラグスポ以外のクラシカルで保守的なシリーズの時計にも、カジュアルな装いを用意し始めた老舗メゾンのパテック フィリップの今後に大いに期待したい。そんなカラトラバが今年は出てくる気がしていたのに・・

Ref.5172G-001
ケース径:41mm ケース厚:11.45mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGのみ
文字盤:ニス塗装のブルー 夜光塗料塗布したゴールド植字アラビアインデックス
針:夜光塗料塗布の18金時分針
ストラップ:手縫いブルーカーフスキン 
バックル:18金フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:お問い合わせください
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いつ、どの角度から見ても惚れ惚れする美しい手巻クロノグラフ・ムーブメント。しかし必要十分にしてやり過ぎていない仕上げが施されたがっしりした受けとレバー類からは、繊細ではなく骨太で質実剛健な印象を受ける。実用性に溢れた頼もしいエンジンである。パテックの中ではロングパワーリザーブと言える最小65時間駆動も嬉しい。
また現在手巻クロノグラフ・モデルはカタログ上では、シリーズ生産が原則のコンプリケーション・カテゴリーに分類されているが、このキャリバーの製作方法はグランド・コンプリケーション並みの熟練技術者による2度組みが採用されている。四段時代に歴戦の上段者を撃破し続けた藤井聡太現二冠の様なポテンシャルタップリの素晴らしいムーブメント。パテックファンの所有欲を掻き立てるエンジンでもある。

Caliber CH 29-535 PS:コラムホイール搭載手巻クロノグラフ・ムーブメント
直径:29.6mm 厚み:5.35mm 部品点数:270個 石数:33個 受け:11枚 
パワーリザーブ:最小65時間(クロノグラフ非作動時)クロノグラフ作動中は58時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:ブレゲ巻上ヒゲ
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅱ No.08 Vol.Ⅲ No.11 Vol.Ⅳ No.09
COLLECTING PATEK PHILIPPE WRIST WATCHES Vol.Ⅰ,Ⅱ(Osvaldo Patrizzi他)
文責、撮影:乾 画像修正:藤本

「多分、今年はまだ無理だと思いますが駄目モトでエントリーしときましょう」
パテック フィリップのコレクションには購入しにくいモデルが多々あるが、さらに購入方法が一筋縄でゆかない物もある。正直なところ我々販売店にも明確な基準が掴めているわけでも無い。さらに突っ込んで言えば輸入元であるPPJ(パテック フィリップ ジャパン)のスタッフですら、納期は勿論の事、入荷の可否が薄ぼんやりとしか予想出来ない事も間々ある様だ。
判り易いのは通常のカタログに未掲載の限りなくユニークピース(一点もの)や或いはそれに近い一桁しか製作されないレア・ハンドクラフト群。当然時価であり、現物はショーケースのガラス越しに年一回のスイスの展示会(昨年まではバーゼルワールド)の際にパテックのブース内展示を見るしかない。PPJ経由で注文を入れても大半が却下され極少数しか入荷していないようだ。
次がカタログUPされているが価格設定が、時価となっているグランド・コンプリケーション群。ミニット・リピーターとスプリットセコンド・クロノグラフが代表モデルで、永久カレンダーやトゥールビヨンが追加搭載されたハイブリッドな超複雑モデル等も有る。さらには現代に於いては新月の夜を選んで、人跡未踏地まで赴むかねば感動に浸る事すら難しくなった満天の星座達が生み出す一大叙事詩を、手首の上で真昼でも堪能できる"どこでもプラネタリウム!"の様な天文時計が組み合わさったドラえもんウオッチの様なモデル等もそれである。
アレや、コレや、ソレらの時計達は、注文そのものは一応可能だ。ただ経験的に複数のパテック フィリップのタイムピースを購入している実績の有る店舗からのオーダーでないとまず購入の見込みは無いと思われる。では、どの程度の実績が必要か?という事が判然としない。基準と言うものが無い。しかし無い無い尽くしで、取りつく島もなく溺れる人を見捨てる訳にもゆかず、個人的な独断でロープ付きの浮き輪を投げる事とする。
本数的な実績(同一店舗限定)は、8本から10本程度かと思われる。その内には定価設定有りのグランド・コンプリケーションが2本位(永久カレンダーと永久カレンダー・クロノグラフとか)含まれるのが望ましそうだ。さらにはノーチラス&アクアノート比率が半分以下と言う辺りだろうか。さらに言えば理由の如何を問わず、購入品が間を置かずに夜店の屋台などに並んでいたりすると実に面倒で難儀な話になって・・・1970年代のジャンジャン横町のようなラビリンスに迷い込み生還はおぼつかなくなるのである。
では、皆さんが高い関心を持たれているノーチラス&アクアノートの購入基準はどうか。過去何度かこの難問には触れてきた経緯があるが、コロナがやって来ようが、世界各地でデモの嵐が吹き荒れようが、お問い合わせの電話とメールと来店は引きも切らない。増える一方の狂喜乱舞にして百花繚乱なのである。2015年という微妙な最近にパテックの取り扱いをスタートした当店の最初の2年ぐらいは、今にして思えば"パラダイス"と呼んで差支え無かった。狂喜乱舞の温度が今現在より低温だった事もあるが、運よく知名度の低い天国に辿り着かれた幸運な方がおられた。しかし今は、この2年弱位で天国は、地獄とは言わずとも荒涼な荒野になってしまった。店頭限定での購入希望登録は受け付けているが、過去と将来のパテックご購入実績がお有りの顧客様へ優先的に販売したいので、中々ご登録だけのお客様にまで現在の入荷数では廻らない状況になってしまった。パテック社の方針として生産数を増やす事は考え辛いので、現在の異常人気が落ち着かない限り荒野を襲う嵐の厳しさは増すばかりではなかろうか。ただし、アレやコレやソレやの時価モデルの購入が棒高跳びレベルとすれば、ノーチやアクアはモデルによっては少し高目のハードル程度の高さだと言えなくもない。
毎回の事ながら長い前置きはさておいて、本題に入ろう。前述の棒高跳びレベルにはもう一群あって、定価設定の有るカタログモデルながら、本日冒頭の「駄目モトでエントリーしときましょう」というややこしいモデル。エントリー過程は、もっとややこしい話になるので、僭越な言い方になるが棒高跳びの半分くらいまでよじ登って頂ければご説明申し上げます。そんな意味深な本日の紹介モデルRef.5231J-001YG製ワールドタイム・クロワゾネ文字盤仕様。
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通常の現代ワールドタイム第三世代Ref.5230と何がどう違うのか。結論から言うと品番末尾と見た目が違うだけである。具体的には素材が、5230には設定の無いイエローゴールドである事。次に文字盤センターがギョーシェ装飾ではなくクロワゾネ(有線七宝)と称される特殊なエナメル加工で装飾されている事。最後が時針の形状がパテック特有の穴開き針(Pierced hour hand)では無くてRef.5130(2006~2015年、現代ワールドタイム第二世代)で採用されてファンも多かったアップルハンドが採用されている。分針はリーフハンドでほぼ同じ形状だ。個性的で押出の強いクロワゾネの印象によってレギュラーモデルの5230との相違感が圧倒的で、見落としてしまいそうになるがアップルハンドも特別感の醸成に大きく貢献している。
過去にベースモデルの5230を始め、第2世代5130も紹介してきた。さらにレア・ハンドクラフトの一つであるエナメルも或る程度(完璧に理解出来ているわけでは無いが・・)記述している。まさかの入荷に発注されたお客様同様にビックリして意気込んで撮影し、記事を書き始めたものの、さて一体何を書こうかしらん。
一体全体どうしてこのタイムピースがそれほど希少で追い求められるのか。これは重要な考察になりそうである。思うに幾つかの要素がありそうだ。まずレア・ハンドなのでそもそも年間の製作数が非常に限られる。価格がそこまで高額ではなく、永久カレンダーや手巻クロノグラフより手頃である為に購入を検討をする方が多い。カタログ外のユニークピース・クラスの文字盤全面クロワゾネ2針のシンプル自動巻時計よりも手頃で、購入過程はややハードルが低い(あくまで今回感じた事だが・・コロナが影響したか)。そんなこんな諸事情が有るが、恐らく最大の理由はその歴史に有りそうな気がする。ワールドタイムの父とも言えるジュネーブの時計師ルイ・コティエは、1937年~1965年の間にワールドタイムを400個あまり製作しているのだが、当時製作された世界地図をモチーフにしたクロワゾネ装飾のセンターダイアルを持つヴィンテージな個体が、2000年頃以降のオークションで「そら、もう、なんで?」だったり「・・・・・?」だったりが続いた。いつの世も数寄者のガマ口は、熱気球クラスだという事らしい。

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28年間で400個は平均年産数は約14個。『パテック フィリップ正史』によれば、アンリ・スターンが社長就任した1959年の年産が6,000個とあるので、わずか2.3%に過ぎない。その中でクロワゾネ技法による地球装飾バージョンはどの程度あったのかは判然としない。さらに上図の中央は北米大陸であり、左はユーラシア大陸とアフリカ、さらにオセアニアまでが広く描かれたバージョンとなっていて図柄にはかなりバリエーションがある。現代よりはクロワゾネに携わる職人が多かったと思われるが、手仕事ゆえ量産は利かなかっただろうからモチーフ毎の個体数は限定的と想像される。
単純比較は出来ないが6月1日の為替レート(1CHF≒112円)として、左の1415の売価が約219,000円。49年後の落札額が約3億840万円で単純計算では1,400倍。中央の2523は売価不明ながら1989年にCHF36万(4千万円強)で落札された経緯を持ち、その後23年で約3億1千万円に大化けしている。
2000年に40年以上の時を経て復刻された現代ワールドタイムのRef.5110にはクロワゾネバージョンが用意されなかった。2006年にその第2世代としてRef.5130がデビュー。さらに2年後の2008年に待望の現代版クロワゾネダイアル・バージョン(上画像右端)が蘇った。大西洋を中心に両側にヨーロッパ・アフリカ大陸と南北アメリカ大陸が描かれている。今回紹介の5231とほぼ図柄は重なるが、使用されている七宝釉薬の多彩さでは5231の方が上回っている様に見られる。同モデルでは他にWG・PT素材も製作された。図柄は全て異なっており、PTはメタルブレス仕様で今現在も継続生産販売されているが入手の困難度合いは、やはり棒高跳びの世界となっている。
生産中止YGモデル5130Jの市場価格だが、個体によって非常にばらつきがある様だ。OSVALDO PATRIZZI他の資料では上記の60万ユーロ(約7,400万円)等というとんでもない見積もりもあるが、一方で18,000ユーロ(220万円余り)と言うにわかに信じがたい見積もりもある。ネット検索での国内2次マーケットでは税込1,100~1,200万円辺りが多いようだ。現代ワールドタイムもクロワゾネ仕様になるとプレミア価格にはなっている。ただ、なってはいるもののノーチラスSSの様な狂乱相場ではない。これはやはり実用性の延長にある時計として捉えられるばかりでは無く、嗜好、趣味、鑑賞といった芸術的側面を有している事で、良くも悪くも対象顧客が絞り込まれてしまうからだろう。平たく言えばニッチマーケットの稀少モデルなのであろう。
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さて、クロワゾネ(仏:cloisonné、有線七宝)等のエナメル技法について書きだすとキリがない。そしてまた何度も繰り返しになるが、製作現場をおのれのマナコで確と見た事も無いので資料を探してきて、ふわふわと書き綴っているに過ぎない。上画像の左右を較べると右側で有線の何たるかが何となく判るだろうか。
久々のエナメル紹介なので、製作工程のおさらいを少し。まず文字盤素材(大体18金)
に図柄を描いて(鉛筆なのかペンなのか、良く知らない)、高さ0.5mmの金線(銀、銅の事も)をスケッチに従って、辛気臭く曲げながら接着剤で文字盤に貼り付けてゆく。次にフォンダンと呼ばれる透明の釉薬(粉状ガラスの水溶液)を塗布し摂氏750~800度辺りの決められた温度に熱した窯で焼く。時間は極めて短い様だ。焼結の状態を常に目視して焼き過ぎを防ぐ。この際に文字盤裏側にも透明釉薬の捨て焼をする。これは表側の塗布・焼成を繰り返す事で表裏の膨張率が異なって文字盤が反る事を防止するためである。金線で囲まれた部分に様々な色の釉薬を焼成後の色滲みを想像しながら塗布してゆく。これを焼成するが、釉薬は焼成で目減りするので、何度も塗布と焼成を繰り返して金線の高さまで焼成面を盛り上げてゆく。勿論、この時点で表面は凸凹なので金線もろとも全体を均一にポリッシュ(恐らく砥石と水)する。平滑になったら最後にフォンダン(透明釉薬)を塗布焼成し保護膜を作って完成。
15分、30分等のクォーターインデックスはかなり早い段階で植字されていると思われる。時分針用のセンターの針穴は元々開いているだろうが、焼結後にエナメル層を穿って開け直す必要があるはずだが、クラックが入るリスクがある。その他にも焼成時のトラブルもあるので、エナメル文字盤は歩留まりがとても悪い。ゆえに生産数が限られてしまう。幾多の艱難辛苦を乗り越えて完成した良品文字盤にPATEK PHILIPPE GENEVEのブランドロゴをシリコン転写してお疲れさまとなる。かなり書き込んだ過去記事はコチラから。
日本に於いてシルクロードから伝わった七宝が盛んに作られるようになったのは17世紀と割に遅い。さらに有線七宝は、明治時代になってから急速に技術発展したが、現在は後継者難もあり存続が危ぶまれている。
愛知県には2010年まで七宝町という町があって、現在も僅かに数軒が七宝を製作している。前から信州に行くときにでもどちらかの窯元?さんを訪問して、見学したいものだと思いつつ未だ実現できていない。彼の地の若き有線七宝職人達の挑戦が紹介された動画が有ったのでご興味のある方はコチラから。スイスのクロワゾネダイアルそのものの製作工程動画は、残念ながら適当なものが見つからなかった。

Ref.5231J-001
ケース径:38.5mm ケース厚:10.23mm 
ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:YGのみ
文字盤:18金文字盤、クロワゾネエナメル(中央にヨーロッパ、アフリカ、アメリカ大陸)
ストラップ:ブリリアント(艶有り)チョコレートブラウン手縫いアリゲーター
バックル:18金YGフォールドオーバークラスプ
価格:お問い合わせください

マイクロローター採用の極薄自動巻Cal.240をもう何度撮影した事だろう。でもこの角度から捉えたのは初めての気がする。初見でどうという事なく、必要な仕上げをぬかりなく極めてまじめに、そう必要にして充分に施されているのはパテックのエンジン全てに共通である。奇をてらっておらず、飽きが来ないのは表の顔だけじゃなくパテックのデザイン哲学の土台なのだろう。
世の中に彼女にしたい美人時計は一杯あるが、雨の日も、晴れの日も、健やかなる時も、病める時も、絶品の糠漬けを作り続けてくれる愛妻時計の趣を持っているのがパテック フィリップの最大の魅力だと思う。
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Caliber 240 HU

直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:239個 石数:33個 
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅱ No.01
PATEK PHILIPPE INTERNATONAL MAGAZINE Vol.Ⅲ No.07
PATEK PHILIPPE THE AUTHORIZED BIOGRAPHY パテック フィリップ正史(Nicholas Foulkes ニコラス・フォークス)
COLLECTING NAUTILUS AND MODERN PATEK PHILIPPE Vol.Ⅲ(Osvaldo Patrizzi他)

文責・撮影:乾 画像提供:PATEK PHILIPPE S.A.

さすがに何度目かの紹介となると蘊蓄を書く事は難しい。だがインスタ用に取り直した下の画像が結構気に入ってしまって、無理やりしつこい紹介をそのイケメンな造形を切り口に挑戦する事にした。お暇な方はお付き合いください。
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個人的にはとても好印象な2016年デビューのハンサムウオッチ。ただ長男(Ref.5110、2000年発表)と次男(Ref.5130、2006年発表)に備わっていたチョッとボテッとした平たいお餅か饅頭を想像させる親しみやすいケース形状と比べると、凛々しさが災い?してか求める方が少しだけ厳選されている感じがする。このところビジネスシーンでのドレスコードのトレンドは、かなりカジュアルになって来ていてスーツよりジャケパンが主流になって来ている事なども影響しているのかもしれない。
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しかし、自分自信の本性が全く凛々しくなく軟弱なので個人的にはクンロクケースっぽい三男坊の折り目正しさに惹かれてしまう。真正面から見たサイドラインが、長男と次男は柔らかくまるで女性の姿態を思わせるシルエットをラグからリューズにかけての描き(リューズガードのお陰で)凸凹無く反対側のラグまで流れてゆく。対して末っ子はウイングレットラグでまずエッジを効かせリューズもしっかり露出させて、どこまでもメリハリがついている。本当にマッチョで端正なのである。まるで異母兄弟か種違い(下品な表現ですみません!)の様だが、搭載されるエンジンは全く同じであり血統は守られている。ちなみに年子?の2017年リリースのRef.5930ワールドタイムクロノグラフのケース形状も厚さが増すもののほとんど三男と同じである。

ところで不勉強の故、最近まで気付いていなかったのがギョーシェ装飾におけるフランケエナメルの存在。これはギョーシェの掘り込みが施された上に透明な釉薬(ブルーやグレー・ブルーの金釉)を焼成し、研磨を掛けてギョーシェの美しさを封じ込めると共に透明な平滑面を得る手法である。この手の文字盤をじっくり観察すれば宙に浮くシリコン転写プリント部分によって誰でも簡単にそれを確認できる。
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白色のSWISS MADEの転写プリントはどう見ても平滑面に乗っかっている。さらに文字の影がギョーシェ表面に写っている。もっとダイナミックな以前に紹介済みのレディスカラトラバRef.4897の参考画像をもう一枚。
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勿論パテック フィリップの専売特許では無くて、スイス時計ではよく知られた技法ではある。しかし良好なエナメル焼成を文字盤に施せるのは非常に限られたダイアルサプライヤーに限られており、文字盤に妥協の無いパテックならではと言える。現行ラインナップで同様のギョーシェ文字盤が採用されているモデルは限られておりメンズのワールドタイム系のメンズRef.5230、5930、レディスRef.7130と上記画像のRef.4897のみとなっている。ワールドタイムの歴史、機能や機械については繰り返しとなるので過去紹介記事をご参考されたい。
尚、都市表記が一か所(HONG KONG→BEIJING)に最近変更されている。


Ref.5230G
ケース径:38.5mm ケース厚:10.23mm 
ラグ×美錠幅:20×16mm 防水:3気圧
ケースバリエーション:WG,RG,
文字盤:ラック・アントラサイト、ハンドギョーシェ ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有り)ブラック手縫いアリゲーター
価格:お問い合わせください


キャリバー名Cal.240 HU末尾のHUはHeures Universelles(仏:時間 世界)の頭文字だ。ちなみにパテック社のHP内には用語解説ページがあって時々御厄介になっている。1977年開発の極薄型自動巻キャリバー240(厚さ2.53mm)にワールドタイムモジュールを組み込んだ240 HUは3.88mm。これは厚み的には永久カレンダーキャリバーの240 Qと全く同寸である。たった1.35mmの各モジュールに地球やら100年やらが封じ込められている。
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Caliber 240 HU

直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:239個 石数:33個 
パワーリザーブ:最低48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ
PATEK PHILIPPE 公式インスタグラム
※毎月19日未明に新規投稿有り(スイス時間18日18:39ブランド創業年度由来)月一投稿なので作り込みスゴイです。
当店インスタグラムアカウントinstagram、投稿はかなりゆっくりですが・・

【2019パテック フィリップ展のご案内】
とき:2019年8月31日(土)・9月1日(日)11:00-19:00
ところ:カサブランカ奈良 2階パテック フィリップ・コーナー

文責、撮影:乾

例年、今時分は湿気と暑さで閉口するのだけれど、今年は網戸越しの心地良い涼風で、寝心地が良い日々が続く奈良。ついつい寝すごして早朝トレーニングをサボってしまうのが、頭の痛いところだ。
記録的に梅雨入りが遅れていた西日本。先日出張した愛媛では、主要河川が既に干上がって十数年ぶりの水不足が心配されている。本格的な給水制限が始まると、街にゴーストタウンの時間帯がやってきて商売どころでは無くなってしまう。自然の気まぐれもお国が変われば、悲喜こもごもである。

さて、少し前に取り上げたストラップ仕様のノーチラスのクロノグラフには同じローズゴールド素材でメタルブレスレット仕様も用意されている。どちらも入荷数が非常に少ないので目にする機会に中々恵まれない。一番大きな違いは勿論ストラップとブレスレットながら、文字盤のベースカラーと6時側のクロノグラフ積算計のインダイアルの色使いと60分積算針が赤では無く12時間積算針と同色の白系となる。
文字盤ベースカラーは、カタログや公式HPカタログでは両者で異なる。ストラップ仕様がブラック・ブラウン、ブレス仕様はブラック・グラデ―ションとなっていて印刷でもモニターでも黒っぽく表現されている。ところが入荷時のブレス仕様の現物は結構ブラウン系の色目に見える。バキュームパックから出して剥き出しにすればダークグレーっぽく見えてくる。両者を並べて見比べる事はまず不可能なので記憶だよりになるが、個人的には少し似た色目に思える。フランジ(文字盤廻りの土手部分)に結構な高さが有って、ローズゴールドの赤目の色味がダイアルに写り込んで茶系統の色目に錯覚させられている可能性がある。
ちなみにプチコンのRGストラップ仕様5712Rもブラック・ブラウンでクロノのストラップと同色である。でも同じブラウン系でもRG3針ブレスモデル5711/1Rはブラウン・ブラック・グラデーションで違う色目となる。
いづれにせよメンズ・ノーチラスの横ボーダーの濃色ダイアルはややこしくて、怪しくて、不可思議でミステリアス。皆さんコイツにノックアウトされてしまう。いつの日かベゼルダイア仕様のプチコン5724Rも含め、夢の競演ノーチラスRG5兄弟全員集合!で胸のつかえを落としてみたいものだ。
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※画像にすると結構グレーに写り、ストラップモデルとの文字盤カラーの違いに気づかされる。
積算計廻りの色使いの違いは好みが別れるが、個人的には同色でまとめられたブレス仕様により高級感を感じる。このクロノグラフモデルの草分けは2006年秋のノーチラス発売30周年で発表された5980/1A-001に遡る。その際に採用された積算計インダイアルの色遣いがスポーティーな2色コンビネーション。2010年にはローズゴールド仕様の現行5980Rのストラップモデルがデビュー。初めて同色のインダイアルが採用されたのは2012年に追加されたステンレス素材のシルバー・ホワイト文字盤5980/1A-019からだ。2013年にはSSとRGコンビネーション5980/1ARとRGブレスタイプの5980/1Rが同色インダイアルで発表され現行ラインナップとなっている。
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搭載されるベースキャリバーCH 28-520系を積むノーチラス以外のモデル(例:5960等、全て59始まり)に関しても2011~2012年頃から積算計インダイアルのモノトーンへの移行がなされている。どうやらその時期を境にパテックの自動巻クロノグラフの顔は第一世代と第二世代に分けられそうだ。

ところで、この時計は相当に重い。手元の量りでは254g。これは大人気のSS3針5711/1Aの123gの約2倍である。これまで触れてきたパテックの時計の中では二番目の重さだ。一番は40周年記念限定のWGクロノグラフノーチラス5976/1Gで312gの超ヘビー級だった。一般的な現行コレクションに於いて、5980/1Rが最も重いモデルと思われる。
そしてお値段も結構ヘビー級なのだが、此処のところ人気上昇中で購入希望登録は増えつつある。
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ケースの厚みは12.2mm。ピン穴が見えているバックル周辺のサイズ調整用駒部分の厚みはメンズ・ノーチラス全てが共通(ピン仕様の場合)で非常に薄い。ケース厚さ8mm台の3針モデル5711やプチコン5712の場合は、同じ薄さの駒が時計部分まで連続している。しかしご覧のように複雑機能を搭載する厚めのモデルでは徐々に駒が厚くなって、ラグ厚と調和するようになっている。
ステンレスの5711/1A等は上の画像の状態にセットしても自立するが、トップが重すぎる5980/1Rは左右どちらかに倒れ込んでしまうので撮影時には少し工夫をして画像にはかなり加工を加えてある。お暇な方は違和感をヒントに間違い探しをお楽しみください。
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18金RG素材の色目は結構赤く見える。21金のセンターローターとの違いがはっきり出ている。正面と側面の画像ではそこまで赤味を感じない。恐らく光の当たり方に加えて、異なるポリッシング手法によって仕上げられた表面状態の違いも大きく影響しているのだろう。実際ノーチラスのポリッシングの多様性は凄い。
シリーズ発売40周年の2016年秋に刊行されたパテック フィリップ インターナショナルマガジン VOL.Ⅳ 2の記事では聞きなれない手法、サティナージュ、ポリサージュ、シュタージュ、アングラージュ、アヴィヴァージュ、サブラージュ、フートラ―ジュ、エムリサージュ、ラヴァージュ、ラピタージュ等の記載がある。全部フランス語だろうけれど、最初の2つがサテン仕上、ポリッシュ仕上ぐらいしか見当もつかないが、ノーチラスの魅力的なナイスバディの完成には飛んでもない手間暇と情熱が注がれているのは間違いなさそうだ。

Ref.5980/1R-001
ケース径:40.5mm(10時ー4時方向)
ケース厚:12.2mm 防水:12気圧 ねじ込み式リュウズ
ケースバリエーション:RGのみ 他にRGストラップSS/RGブレス仕様有 
文字盤:ブラック・グラデーション、蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
価格:お問い合わせください

Caliber CH 28-520 C/522 フルローター自動巻フライバック・クロノグラフムーブメント コラムホイール、垂直クラッチ採用

直径:30mm 厚み:6.63mm(ベースキャリバー5.2mm、カレンダーモジュール1.43mm)
部品点数:327個 石数:35個 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責、撮影:乾

前回記事のノーチラス永久カレンダーと同様に2018新作で納期が遅れ気味で入荷が悪かった年次カレンダーの新色文字盤モデルRef.5205G。文字盤上半分に円弧形で3個の窓表示(aperture:アパーチャー)のカレンダーディスプレイがレイアウトされた独特な年次カレンダースタイルの初出は2010年。
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1996年に年次カレンダーファーストモデルが永久カレンダーの省略版ではなく、全く新しい歯車で構成する設計で開発された経緯は何度も紹介してきた。その進化系として針表示からよりトルクの必要なディスク表示によるダブルギッシェ(文字盤センター直上に左右隣接窓)スタイルのRef.5396が2006年に年次カレンダーの次男として追加リリースされた。ダブルギッシェレイアウトは1940年代から約40年間に渡って、永久カレンダーの代表的な顔として採用され続けたパテックの看板スターのマスクだ。その偉大なレジェンドを現代パテックの実用時計最前線に投入してきた事にパテック社の年次カレンダーに掛ける本気度合いを思い知らされた。

第3世代の5205のダイアルレイアウトでは、大きな窓枠が用いられる事で視認性がさらに高められた。またケース形状も大胆なコンケーブ(逆ぞり)ベゼルが表裏とも採用され、4本のラグには大胆な貫通穴が穿たれており、すこぶるモダンでスタイリッシュな3男が登場したわけだ。この斬新なケースデザインは、2006年の自社開発クロノグラフムーブメント第2弾CH 28-520 IRM QA 24Hを搭載して登場し、一躍人気モデルになったRef.5960Pにそのルーツを持つ。以降パテックコレクションの革新的なモデルに次々と採用され続けているアバンギャルドなフォルムだ。
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画像は2015年撮影分(5205G-010)流用。
実はこのブルー・ブラック・グラデーションという文字盤カラーに極めて近いダイアルカラーを持つモデルがある。残念ながら今年生産中止発表されたプラチナ製手巻クロノグラフRef.5170P。2017年に発表され個人的に大好きなこのモデルの文字盤色(日本語表記:ブラック・グラデーションのブルー・ソレイユ、英語表記では同一)と同じだろうという事で、昨年の発表時には大きすぎる期待を持ってバーゼルでの出会いを楽しみにしていた。履歴書や釣書(今や死語か)の写真でもよくある事ながら期待過剰で現物と対面すると今一つピンと来ない事が多い。この5205Gも同様で、実は対面後の個人的評価はあまり芳しい物ではなかった。恐らくバーインデックス内側の極細に抉られた円周サークルで内と外が分断される事で、面積的に5170Pのように濃青から黒色へのグラデーションがリニアに感じられないからだと思う。

この事は昨年夏の当店展示会で再開した展示サンプルでも、ほぼ同様の感触を得ていた。ところが改めて実機を撮影するために、じっくり眺めなおしてみると結構いい色なのである。一枚目の画像は結構にグラデーションが出た写り方なのだが、むしろグラデをさほど意識せずに単純なモノトーンカラーとして見た時に実に秀逸で高貴な濃紺の文字盤である事に改めて気づかされた。
従来機の文字盤チェンジモデルなのに入荷スピードが今一芳しく無かった要因は、文字盤供給だとしか思えない。たしかグラデーションを表現する吹付塗装はすこぶる微妙な手作業と聞いた。歩留まりも非常に悪いのだろう。


この時計敢えて欠点を言えば、少しスタイリッシュに過ぎる文字盤が、結構ファッションスタイルを絞り込んでしまう事かもしれない。フォーマル過ぎず、カジュアル過ぎずのスーツスタイルが基本。でも白シャツに濃紺スーツというビジネスシーンでの普遍にして王道に、これ以上心強い相棒はいないだろう。

Ref.5205G-013 年次カレンダー
ケース径:40.0mm ケース厚:11.36mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WGRG別ダイアル有
文字盤:ブルー ・ブラック・グラデーション、ゴールド植字インデックス
ストラップ:ブリリアント(艶有)・ブラック アリゲーター 
バックル:フォールディング(Fold-over-clasp)
価格、在庫:お問い合わせください


搭載キャリバーは21金フルローターを採用したパテックを代表する自動巻きCal.324に年次カレンダーモジュールを組込んでいる。
カレンダー系の操作は禁止時間帯等あって気を使うが、パテックの場合は殆どの物が午前6時(例外あり)に時刻を合わせてプッシュ操作を行う。ムーンフェイズはいつもネット検索して確認していたが、パテックHP内にある確認ページが結構便利である。
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Caliber 324 S QA LU 24H/206

直径:32.6mm 厚み:5.78mm 部品点数:356個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)
PATEK PHILIPPE 公式ページ

撮影、文責:乾

ついこの間、雑煮とおせちを頂いたばかりなのに目も前に鰯と恵方巻がちらついている。なんという時の流れの早いこと。一か月は1時間で言えば5分に値するが、この間何をしたと言う訳でもないが、店は結構賑わいもあってお陰様な結果が残せそうである。感謝!感謝!
一月末はパテックフィリップにとっては節目で会計年度の年度末に当たる。ロレックスなどは年度末(12月末)が近づくと入荷が少なくなる傾向があったが、パテックはこの12月から1月にかけて入荷がすこぶる良かった。多くが客注分とイレギュラーの店頭分の入荷。パテックの売上げというのは客注商品の入荷次第というところがあるので全国的にここ数ヶ月は相当な売上げに成っているはずだ。

今回はそんな状況で入荷してきた年次カレンダー2本を紹介したい。まずは1996年の年次カレンダーデビューモデルRef.5035のダイアルレイアウトを引き継ぐ血族直系であるRef.5146。ローズゴールドケースにクリーム色のラッカーで仕上げられた文字盤がセットされた何とも優し気なカラーリングの一本。
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このモデル自体は既に紹介済みなので細かくはそちらを見ていただくとして今回は文字盤のデザインについて少々掘り下げてみたい。
文字盤中心から少し上に左右に並ぶ"曜日"と"月"の指針表示は古くからパテックが永久カレンダーで採用してきたレイアウトパターンなのだが年次カレンダーのそれは、両サークルがかなり寄り目でかつセンター指針と一直線では無く上側にシフトされている点で、似て非なる印象を受ける。
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1996年にファーストモデルとして発表されたRef.5035からこの部分は変更がなく、このモデル系列の決定的な遺伝子的要素と言える。6時位置のディスクスタイルの日付表示も同様である。進化した点は1998年に業界に先駆けて初採用された12時直下のパワーリザーブ機構である。パテックにはともかく"時計業界初"が多い。同時にムーンフェイズも追加されて、それまでの24時間表示位置に取って代わって備えられるようになった。その結果パワーリザーブ表示に追いやられたブランドロゴが行き場を失ってダイアル下部の6時位置に配された為に24時間表示が、そのとばっちりで消去されてしまった。
しかし、中央より下側にブランドロゴがレイアウトされるのはかなりレアケース。現行モデルではセレスティアルシリーズとノーチラスのトラベルタイムクロノグラフRef.5990のみだ。ダイアルセンターの右側にエングレーブでロゴ配置されるのが、12時側にも6時側にもスペースが全くない年次カレンダーレギュレーターのRef.5235G。また超絶系のリバーシブルウオッチのグランドマスターチャイムRef.6300はカレンダー側(裏側?)にはスペースが全く無く、時間表示サイド(表側?)のセンター指針の両側に振り分けてかろうじてロゴを表示している。極めつけは文字盤に全くスペースが無いためにベゼルに無理やりっぽく刻印されるプラチナのワールドタイムRef.5131P。多軸やディスプレイが多すぎるのも悩みのタネのようでデザイナーの苦労もさぞやと思う。
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最後にこのモデルのセールストークを少し。現在年次の定番は3型あるが、パワーリザーブ付きの5146が価格的には一番お買い得である。他の2モデルは同素材なら価格も同じでケースが凝っているRef.5205が通常尾錠、ごくノーマルなクンロクケースを纏うRef.5396(後述)が折畳み式バックルの違いがある。折畳みバックル付きの5146はRG・WG素材なら両者に比べ税別約70万円以上お安い価格設定。この価格差は魅力だ。


Ref.5146R-001 年次カレンダー

ケース径:39.0mm ケース厚:11.23mm ラグ×美錠幅:20×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:RG WG(別ダイアル有YG(別ダイアル有) PT ※別途ブレスレットモデル有り
文字盤:クリームラッカー、ゴールド植字インデックス
ストラップ:マット(艶無)チョコレートブラウンアリゲーター
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:お問い合わせください。
在庫:2019年2月1日現在有ります。

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Caliber 324 S IRM QA LU

直径:30mm 厚み:5.32mm 部品点数:355個 石数:36個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)


さて、今回は二番煎じで中身が薄い分、もう一服としてさらに年次カレンダー入荷モデルを追加紹介。
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2006年に年次カレンダーの2番目のシリーズとして発表されたRef.5396。通称ダブルギッシェ(二つの小窓)と言われるセンター指針の直上に左右に狭い間隔で"曜日"と"月"が並ぶレイアウト。もともとは1900年代半ばから1980年代までもっぱらパテックの永久カレンダーのド定番顔として採用され続けていた由緒正しいマスクである。その特徴的なレイアウトはそのままに6時側インダイアルで針表示していた日付をより実用的な小窓のディスク表示にし、インダイアル指針は24時間表示として時刻合わせをすこしでも容易にする機能を持たせた。この伝統的なレイアウトはクロノグラフと組み合わされる永久カレンダーではずっと採用され続けている。しかしシンプル永久カレンダーとしては2017年発表のRef.5320で久々にリバイバルされたのが記憶に新しい。
さて、しばしば触れているがわが愛機はこのモデルのローズゴールド版である。早いもので愛用歴は3年半になる。精度も調子もすこぶる良いのだが、少し小言もあって、まず搭載キャリバーののCal.324は現在パテックの主流のフルローター自動巻ベースムーブメント。だがパワーリザーブが最大で45時間しかない。10年前なら常識的な長さだが今日に於いては少々短い気がする。72時間駆動するグランドセイコーの愛機と交互に着用することが多いが、たった28時間の差が実用度合いに大きく影響する。
2番目には時間合わせ運針がローギヤで辛気臭い。輪列保護の為にはこのローギヤードが良いのだろうけれど高級実用ブランドであるロレックスやグランドセイコーと比べ非常に遅い。車で言うと2速と4速くらいの違いを感じる。特に年次カレンダーの場合パワリザ不足からの止まった場合は1~2日の遅れであれば一々小さなコレクターを何か所も調整するよりも時刻を手動で進めた方が楽なのだが、忙しい出勤前などはこれが何ともまどろっこしい。近い将来の改良を願う。
そして自分の不注意から一か所不調を抱えている。月齢の調整コレクターがサクサクと押せないのだ。おそらく原因は安価な爪楊枝でコレクターを押した際に先端が微細に砕けてコレクター内に粉末として混入したのだろう。パテックフィリップの取扱説明書には必ず付属の調整ピン(金属製)の使用を限定している。しかし現実的にはコレクターとその周辺のケースにも傷がつきそうな付属ピンはチョッと使う気になれない。当店では原理原則をご説明した上で、自身の失敗から考察して現在は女性がネイルケアの際に使用する木製のスティックを個人責任で使っていただくようにお渡ししている。だがさらに良いものがないか常に日ごろから目を凝らしている。多分非常に硬い竹製で先端がごくわずかに丸められていて軸にはそれなりの太さと長さのある様なものがほしいと思っている。どなたかおすすめのツールがあれば是非コメントください。
閑話休題、現在5396のバリエーションは6型。その内4型は2016年以降の発表なのでバリエーションが増えているモデルである。それと対照的にアバンギャルドなデザインのRef.5205は昨年発表のWG素材のブルーブラック文字盤を入れて僅か3型に集約されてしまっている。個人的にはいづれも甲乙つけがたい素敵な年次カレンダーだと思っているのだが・・

何とか本稿は1月中に今年2本目として掲載したかったのだが、月末に"どうしても源泉かけ流しに行きたい病"を発症して臨時休業をいただき本日のアップとなった。そして例年通りであれば、次の記事は生産中止モデルの発表という事になる。これも例年のことながら年末くらいからディスコンにまつわる色々な詮索話をお客様から伺うことがあった。さすがに此処には書かないが興味深いお噂もあって、あと数日を心待ちにしている。

Ref.5396G-011年次カレンダー
ケース径:38.5mm ケース厚:11.2mm ラグ×美錠幅:21×16mm 
防水:3気圧
ケースバリエーション:WG別ダイアル有)、RG別ダイアル1

文字盤:シルバーオパーリン ゴールド植字インデックス
ストラップ:シャイニー(艶有)ブラックアリゲーター 
バックル:フォールデイング(Fold-over-clasp)
価格:お問い合わせください。
在庫:2019年2月1日現在有ります。

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Caliber 324 S QA LU 24H/303

直径:33.3mm 厚み:5.78mm 部品点数:347個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責、撮影、修正:乾

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気がつけば平成で始まる最後の新年がもうそこまで・・例年の事と言いながら本当に年々過ぎ去る速度が速くなる。時の流れに携わる生業でありながら逃げるものを追い駆けているような気分に捉われる事しばしばである。そんなことだからブログもインスタも頻繁に空転期間が空いてしまう。
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さて、相変わらず人気の続くノーチラスシリーズ。最近はステンレスだけではなく素材や機能を問わずに人気が拡大しアクアノートも含めて不人気モデルが探せない状態である。正直言って加熱し過ぎ感が強い。
当店にはレアな旅行者のお客様も国籍を問わず全く同じ傾向にある。中国本土を例とすると現在2店舗(上海、北京)が正規店舗だが、非正規も含めてもう本当に手配が絶望的らしい。人口に対しての供給量のバランスが悪いのかもしれない。
さて、今回紹介はそんなレアノーチラスの中でもレア素材であるステンレス製年次カレンダーのブレスレットモデルRef.5726/1Aで文字盤は白(シルバリィホワイト)。強いて言えば人気はグレー(ブラックグラデーテッド)の方が高いのだが3針の5711同様に若々しさや清潔感が強く別モデルに見えてしまう。
グレーに設定があるレザーストラップモデルが白文字盤には無くステンレットブレスレットのみ用意されている。またメンズではステンレス素材のみの展開はこの年次カレンダーとトラベルタイムフライバッククロノグラフRef.5990の2モデルのみとなっているのも興味深い。
ちなみに当店では少し値の張る5990の方がチョッと人気が高い。ただカラトラバケースに収まったダブルギッシェ(12時下方に左右横並びに曜日と月がレイアウト)スタイルの年次カレンダーモデルRef.5396を愛用する我が身としては親しみを感じざるを得ない可愛いノーチラスである。
でもノーチのアイコンともいえる横ボーダーと角の取れ切ったひょうひょうとした八角形の緩いケース形状(個人的には"ナマズ顔"と密かに思っチョります)に収まりますと同じ時計が此処まで違う表情になってしまう面白さ。「似て非なるもの」では無く「似ずして同じもの」と言えばよいのだろうか。
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くどい程語ってきたノーチラスの魅力"薄さが実現する装着感"、流石にフルローター自動巻きCal.324ベース(厚さ3.3mm)に年次カレンダーモジュールを積み重ねて仕上がりムーブ厚5.78m、ケース厚11.3mmは3針の5711より3mm厚くなっている。ピンが覗く調整駒の厚みは全てのノーチラス(5990でさえも)で共通であり、シリーズ最薄の3針5711は見た目(実寸は?未検証の為)ケース側まで全駒が同厚であるのだが、5726ではケース側から5コマ目あたりはテーパーしながら厚みを減じているように見える。
「たかが3mm、されど3mm・・」両者の装着感は明らかに異なる。異なるが個人的には許せると言うかノーチラスの装着感自慢を実感できるレベルに充分収まっていると思う。明らかにシリーズ最厚のRef.5990の12.53mmケース厚とは着けた感は別物になっている。
フルローター自動巻をベースとしながら、ただでさえ厚みを食う垂直クラッチのフライバッククロノグラフとトラベルタイムと言うダブルファンクションを重ねれば当たり前の事で、むしろ良くこの厚さにまとめたパテックの技術力に脱帽かと思う。勿論この事は若干薄い年次カレンダー5726ではより顕著となる事は言うまでもない。
横顔の比較写真はRef.5990の過去記事よりどうぞ。

Ref.5726/1A-010

ケース径:40.5mm(10時ー4時方向) ケース厚:11.3mm 
防水:12気圧
ケースバリエーション:SS(白文字盤) SS(グレー文字盤) SS(グレー文字盤ストラップタイプ) 
文字盤:シルバリィホワイト 夜光付ゴールド植字インデックス
ブレスレット:両観音クラスプ付きステンレス3連ブレス 抜き打ちピン調節タイプ
価格:お問合せ下さい

Caliber 324 S QA LU 24H/303

直径:33.3mm 厚み:5.78mm 部品点数:347個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

在庫状況:11月20日時点あり




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パテック フィリップは同一デザインのペアウオッチと言うのが非常に少ないブランドだ。2015年度まではカラトラバのクルドパリベゼルが特徴的な手巻メンズRef.5119をダウンサイジングしたレディスRef.7119というズバリのペアモデルが存在した。そしてここ2年はカップルモデル根絶状態だったが、今年想像もしなかったペアウオッチの提案がなされた。
2015年に発表され、良くも悪くもパテックらしからぬ風貌でバーゼルワールドで最も話題を振りまいたWGのカラトラバ・パイロット・トラベルタイムRef.5524。賛否両論があったこのモデルは結局大人気となり今現在も品不足が続いている。このユニークなコンプリケーションにRGケースが追加素材として今年のバーゼルで発表された。特筆すべきは4.5mmサイズダウンされたパートナーとなるレディスモデルを伴っていたことだ。厳密に言えばローズゴールドの色目がレディスの方が微妙に赤く仕上げられているのだが見た目殆ど判らない。
さて、コンプリケーションとしてのトラベルタイムの歴史は既に60年近く有り、初出は1959年でジュネーブの天才時計師ルイ・コティエ氏が考案しパテックが特許取得した画期的でシンプルで操作性に優れたGMT機構。当時は1950年代に実用化が進んだジェット旅客機が一般化していった時代であり、裕福層旅行者に各ブランドからトラベル用腕時計の提案がなされていた。1957年ロレックスGMTマスター、1958年ブライトリングトランスオーシャン等が有名だが、単純な回転ベゼル機能やデザイン上でのイメージ訴求に過ぎなかった。その点においてパテックのトラベルタイム機構は画期的であったと思われる。1960年代後半から1990年代半ばまではトラベルタイムは殆ど生産されなかったようだが、スイス機械式時計の復活と共に再生産されるようになった。驚くのは初出の頃のシステムを殆どいじる事なしに現代に充分通用している事だ。
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5524カラトラバ・パイロット・トラベルタイムの詳細はホワイトゴールド5524Gの過去記事をご覧頂くとして、従来のトラベルタイムから工夫されているのがローカルタイムを1時間ずつ進みまたは遅らせるプッシュボタンのロック機構である。従来機のアクアノート・トラベルタイム等はこのプッシャー部が大振りである事もあって、時計の脱着時に意図せず押されてしまった結果の時間ずれトラブルがあった。5524ではねじ込みではないが90度回転のロック機構が備わりこのトラブルが解消されている。
顔はパイロット(アビエーション)と言うよりもミリタリー調で、スーパールミノバ(夜光塗料)がタップリと盛られた個性的なアラビアインデックスと太く武骨な時分針が抜群の視認性を生んでいる。6時側サークルの指針制カレンダーも大きくて読み取り易い。日付の調整はリューズでは無くケース外周の6時半辺りにあるコレクター(プッシュボタン)でおこなう。3時9時に振り分けられたホームとローカルタイムの表示窓はさりげない大きさながら文字盤色とのカラーコントラストで判別は容易だ。パテックのコレクションには珍しいカーフ素材のストラップは武骨すぎる事がない絶妙な太さの白いステッチが粗野にならない程度に適度なミリタリー感を醸している。文字盤はホワイトゴールド版の艶消しの均一な仕上げの濃い青とは対照的にセンターからダイアル外周に向かって濃茶にグラデーションする艶有の仕上げでローズゴールドケースの赤味と合わさってしっかり色気がある。両者の価格は同じながら好き嫌いは別にして明らかに高級感はローズにあるように思う。
尚、サイズ違いのペアになるレディースモデルに分類される7234Rは、ケースサイズは異なれども機械は全く同じCal.324が搭載されて約10%もお買い得である。外径37.5mmは小ぶり好みの日本人男性なら充分検討の余地があるサイスだと思う。

Ref.5524R-001 カラトラバ パイロット トラベルタイム
ケース径:42mm(10-4時方向)ケース厚:10.78mm ラグ×美錠幅:21×18mm 防水:30m 
ケースバリエーション:RG, WG 
文字盤:ブラウン サンバースト、ブラックグラデーテッド 夜光塗料付ゴールド植字インデックス
ストラップ:ヴィンテージ ブラウン カーフレザー クレビスプロングバックル付き 
価格:お問合せ下さい

Caliber 324 SC FUS

直径:31.0mm 厚み:4.9mm 部品点数:294個 石数:29個
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 拘束角51°
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

在庫:お問合せ下さい




今夏の異常気象は本当に厄介だ。予想外地域への地震、記録破りの大雨に一転しての酷暑、そして逆走台風。被災された方々は本当にお気の毒。心よりお見舞いとお悔やみを申し上げます。
相方の出が広島県。しばらく断水で難儀を強いられた血縁もいた。また百貨店部門は愛媛の松山市にあって直接被害等は無かったが県南部(南予)は報道が少ないものの結構な被災をされており、地縁と血縁強固な地方特有の事情もあって経済的影響も色々出ている。
そんな過酷な日々ながら奈良県北部の大和盆地は本当に災害が少ないエリア。日本最初の都に定められた天命を災害の報を聞くたびに強く思う。

さて、この時期は少しでも凉を感じられるモデルを紹介したい。それでいて夏色感もあるレディスコンプリケーションがRef.7121J-001。コンプリと言っても本当にプティ(小さい)コンプリでムーンフェイズ(月相)しか付いていない。実用面から言えばカレンダーの方が必要なはずだが、月の満ち欠けなどと言うロマンティックな表示が優先されているのはいかにも乙女時計らしい。
ちなみにメンズには全くラインナップされていないムーンフェイズのみという乙女時計仕様はレディスでもう一型Ref.4968があり素材やブレス違いを含めると2型で5つもバリエーションがある。
現在でこそ永久カレンダーを始め手巻きクロノグラフ、年次カレンダー、ワールドタイム、トラベルタイム等でパテックに於けるご婦人用のコンプリケーションウオッチは百花繚乱と言えるが、それはここ10年位の話でそれ以前から長きに渡って作られて来たレディス用のコンプリケーションはシンプルムーンフェイズモデルだった。
スイスでは永久カレンダー(1800年頃)よりも古くから搭載された機能で、当時は航海や狩猟、漁猟に欠かせないものだった。月齢の周期は29日12時間44分。これを29.5日として59日で2個の月が描かれたムーンフェイズディスクを一周させている。0.5歯という歯車を刻めないので倍数処理されたわけだ。
ただ、その周期だと数年で調整が必要な誤差が出てしまう。パテック フィリップを始め現代の高級時計の標準的なムーンフェイズは、複雑な歯車機構により構成されており122.6年掛けてたった1日分の誤差が蓄積して要修正となっている。前言撤回でPetitとは言えない立派なコンプリケーションだった。
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針の形状はユニークだ。ちゃんと名前が有って"スペード針"と言われている。分針が途中でくびれていて女性のセクシーなボディーラインの様に見えなくもないが、スペードの形状を限りなく伸ばした形でメンズウオッチにもこの針はそこそこ採用されている。ブレゲ数字インデックスとの相性がとても良い。
女性向けムーンフェイズの特徴の一つはムーンフェイズディスクだけでなくスモールセコンドと供用されているサークルの未開口部分にもお星さまが装飾としてプリントされている事だ。これもメンズでは見られない乙女仕様か。
ケースは腕時計黎明期を思わせるオフィサー(将校)スタイルのユニークなラグ形状。女仕立てにすると結構可愛らしい。ベゼルには0.52カラットになる66個のダイアモンドが輝いている。あまり知られていないがパテックのタイムピースにはデビアス社のトップウェッセルトン・ダイヤモンド(クラリティIF及びFLのみ)が使用されていて極めて質が高い。そしてジェムセッティングは実用性を重んじるパテックらしく滑らかな表面を意識し、衣類の袖口の繊維が引っかかったりしない手法が採用されている。
ストラップはMatte pearly beige alligator。パーリィとあるように車のパール塗装の様に光沢があってとても上品。暖色系の色目ではあるが、薄めのサンドカラーに光沢感が効いて涼しさを感じさせる夏時計に仕上げられている。

Ref.7121J-001 レディス コンプリケーション ムーンフェイズ

ケース径:33.mm ケース厚:8.35mm ラグ×美錠幅:16×14mm
防水:3気圧 66個のダイア付ベゼル(約0.52ct.)
ケースバリエーション:YGのみ 
文字盤:シルバリィ グレインド 18金植字ブレゲ数字インデックス
ストラップ:ハンドステッチのマット(艶無)パーリィベージュアリゲーター
      18KYGブレスレットのバリエーション有り
価格:お問合せ下さい
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少しでも涼し気な印象に出来ないかとフォトショップでチョッと悪戯。ムーブメントNoもあり得ないくらいラッキーな・・・不変の長命ムーブメントCal.215。人生もこうであって欲しいナァ!

Caliber:215 PS LU

ムーブメントはパテックを代表する手巻キャリバー215にスモールセコンドとムーンフェイズを組込んでいる。2006年に発表されたシリコン系素材Silinvar®「シリンバー」採用の革新的なSpiromax®スピロマックスひげゼンマイが搭載されたことで耐磁性と耐衝撃性が格段に向上している。まさにパテック フィリップの哲学"伝統と革新"を体現した頼もしいエンジンが搭載されている。

直径:21.9mm 厚み:3.00mm 部品点数:157個 石数:18個 
パワーリザーブ:最短39時間-最長44時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

2018年7月31日現在
7121J-001   店頭在庫有ります
関連ブログ:着物でパテックフィリップ、ショパール(2017/8/29記事)





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