パテック フィリップに夢中

パテック フィリップ正規取扱店「カサブランカ奈良」のブランド紹介ブログ

ノーチラス 一覧

いやいや驚愕の8モデルである。クロノグラフ5型にノーチラス3型がパテックの仕訳けだが、どうしても人気シリーズのノーチラス4型をひと塊としたい。アクアノート・ルーチェのハイジュエリーモデル追加がひとつ。そして2019年初出のウィークリー・カレンダーRef.5212A、2021年の年次カレンダーRef.4947/1Aと年次カレンダー・フライバック・クロノRef.5905/1Aへ地味に続くステンレス素材コンプリケーションの流れにも1モデルが用意された。さらには異なるクロノグラフムーブメントをベースにして同一機能を有するグランド・コンプリケーションの超絶モデルも忘れず2型。この面倒臭い分類がしっくりと腑に落ちやすい。と言う勝手な個人的仕訳けで、まずは取っ付きも良いノーチラス4モデルの画像ファーストインプレッションにお付き合い頂きたい。

5811/1G-001
ついに、やっと、と色んな思いが全てのノーチラスファンにありそうな3針カレンダー・濃青色系ダイアル・銀色のケース&ブレスの復活モデル。2021年2月の定番旧モデルRef.5711/1A-010の生産中止発表から1年8カ月。特別で超レアなワンショット生産だった最終オリーブグリーン文字盤Ref.5711/1A-014と1300A-001やティファニー・ブルーダイアルの流通限定Ref.5711/1A-018等で2021年は常に話題提供がなされた5711だった。個人的にはこのタイミングと18金素材での復活はありありだと思う。しばらくノーチラスへのSS素材投入は無かろうと予想していたからだ。それゆえ後述する5990がSS素材のままダイアルチェンジでリバイバルされたのは少し意外だった。まあこれはあとで・・
5811_5711_b.png
新旧を実機で見較べる(どれだけ運の良い人だろう・・)と言うのが超難関なので、PP公式HPカタログ画像同士を左右で比較してみた。3700/1Aという遺伝子が共通なのでお互いに実によく似ているのは当たり前。でもたった1mmの微妙なケース径の違いは例え実機比較でも難しそうだ。僅か0.1mm違いの厚さはもっと無理だろう。それくらい形状はウリだ。ケースの色目は新作の画像がやたら白っぽい。パテックは大半のWGケースにロジウムの仕上げメッキを施さないので実機はもう少し黄味がかって見えるはずだ。それにしても新作は画像修正が丁寧過ぎてシャドウが殆ど無く平板で高級感に欠けて見えるのは残念だ。文字盤カラーは先代のブラック・ブルーに対し新作はブルーソレイユのブラック・グラデーション。少し暗めで複雑な色目からスッキリした濃青色系になった様に見える。横ボーダーの凹凸部の天地巾はほぼ均等だったが、ニューフェイスでは広い凸部と狭めな凹部へと変更されたように見えるのは気のせいか。明らかに異なるのはブランドロゴ廻りで、2本のボーダー凸部にシンプルに転写プリントされていたのが新作ではロゴプリント専用スペースが設えられている。ただこの仕様は過去の撮影画像を確認してゆくと2016年頃にランニングチェンジされた様である。上の5711/1AのPP画像は初期型と思われる。時分針と18金植字インデックスの蓄光型夜光塗料スーパールミノバの色目はグリーン系の標準的な物から白さが際立つタイプになり、インデックスへの塗布面積も広げられ視認性が向上している。昨今の夜光系塗料の進化によるものだろう。インデックスそのものの形状もごく僅かにずんぐりした印象を受けるが、これも気のせいだろうか。またカレンダー窓も単純な面取り枠無しから高級感の有る18金窓枠付きとなっている。知る限りだがこの仕様は2016年のシリーズ発売40周年の記念限定モデルで初採用されたものだ。尚、昨年の特別な5711最終モデルのオリーブ・グリーンダイアルモデルも窓枠(恐らく18金)仕様が採用されていた。カレンダーの日付フォントも先代初期型とは異なっていて天地が短く若干太文字となって読み取りが良くなった。こちらもノーチラス40周年で採用されたフォントが踏襲されているとの事だ。
ノーチラスの初代は1976年初出の3700/1A。当時としてはケース径40mmの非常に大きい時計で"ジャンボ"と呼ばれた。厚みは色々調べたがどうも判然としない。天才デザイナーのジェンタが採用した2ピース構造のケースで極薄の8mm程度だった様だ。先代5711/1Aもこの初代3700/1Aに近しい風貌が与えられていたが、新作の5811はさらにその意識が強い様だ。それはケース構造を現代的な3ピースから先祖返りの様に2ピースに戻した点にある。かつての3700/1Aもそうであったように2ピース構造ケースには裏蓋が無い。その為にリューズを抜いてムーブメントを裏側から取り出せない。そこでジョイントリューズ(継手巻芯)を採用し、リューズを引っこ抜いて文字盤側から機械を取り出すしかなかった。以前のパテックはこのリューズ構造を採用するモデルが多くて、時刻合わせの際に「引き出そうとしたらリューズが突然抜けてビックリした」というご相談が結構あった。しかし今回の5811は2ピース採用ながらジョイントリューズではなく新たな工夫(特許なので詳細不明)でリューズを安全に外せるらしい。だた努力の2ピース採用がたった0.1mmしか薄さ確保に貢献していないのはチョッと残念。
ムーブメントは先代の5711でも最後期に324 S Cからランニングチェンジで換装されていた最新型自動巻エンジン26-330 S Cが搭載されている。ハック(時刻合わせ時秒針停止)機能と日付早送り操作の禁止時間帯撤廃の両機能を併せ持った非常に実用性の高いパテック自慢の基幹ムーブメントだ。
予想に違わず10/18の日本時間16時にPP公式HPで発表後、SNSでの拡散効果も有ってか新作情報は瞬く間に広がった様で、閉店時間までずっと店の電話は鳴りっぱなしだった。1回線ゆえ多々ご迷惑をおかけした・・はず?。そしてその7~8割の方が5811に強いご興味を示されていた。初日にして需給バランスは大崩れなのであった。素材的に先代5711SSの倍近くする18金素材となっても、このモデルへの渇望感は何ら解決がなされないわけだ。いっその事プラチナでも良かったのではないかとも思うけれど、かつて知る限り定番ノーチラスにプラチナ採用は無かったし、2016年のシリーズ発売40周年に記念限定モデル5711/1P-001がプラチナでリリースされているのでパテックとして素材哲学的なハードルが有るのかもしれない。まあ仮に発表されれば、同じように激しい争奪戦でしょうが・・。パテック随一の"トロフィーウォッチ(説明不要の便利な言い回し、いつ誰が広めた?)"としてこの時計はこれ以上今は掘り下げようも無いので、いづれ実機にて続編としたい。
※今回新作についてはモニター初見印象のみとし、スペックの記載は実機編に譲る事にした。

5712/1R-001
通称"プチコン"は、SSブレス仕様と18金WGとRGにストラップ仕様の計3モデル展開が現行ラインナップだ。このRGモデルに同色系色目違いのダイアル(ブラウン・ソレイユ&ブラック・グラデーション)を採用しメタルブレス仕様としたバリエーションモデルが今新作だ。でもね、モニターの文字盤色は2021年に鬼籍入りした3針のRG素材5711/1R(ブラック・ブラウン)に似ているし、8mm台の薄いケース厚のゴールドブレス仕様のノーチラスが今新作のみとなるので、5711/1R買いそびれ組の受け皿モデルにもなりそうな気がする。
5712_1R_001_800.png
昨年3針の5711のディスコンが発表されて以来、5712/1AプチコンSSの連鎖?廃番の噂が絶えないが、パテックサイドからは一切そんな話は出ていない。でも今回RGブレス仕様が追加ラインナップされて勝手な憶測をするに来春のSS生産中止とWGブレス仕様追加の発表はあるのかもしれない。
この新作も予想を遥かに上回るご希望がある。ずっと日本市場では銀色系が金色より人気だったが、各ブランドでイエローゴールドからローズ(ピンクやレッドも含めて)ゴールドへの置換が進んでからは、18金素材の人気に於いてローズがホワイトを上回ってきている感がある。伸展著しかった巨大マーケットの中国本土攻略の為に赤味系18金素材投入を各ブランドがこぞって競った結果のトレンドかもしれない。
この新作モデルは完全なコスメティックチェンジの為、さらなる詳細は実機でご紹介したい。

5990/1A-011
2つ目の紹介を上述のプチコンRGブレスとどっちを先にするか迷ったのが、同じく完全なコスメティックチェンジモデルのSSノーチラス5990。この復活モデルは完全に予想外だった。
2014年にブランド初組合せのフライバック・クロノグラフ&トラベルタイムのダブルコンプリケーションを搭載して発表された。デカ厚時計ブームのトレンドともマッチして瞬く間に人気を博した。特に本年春の生産中止に向けてここ数年尻上がりに人気が高騰し大量の注文残を抱えて鬼籍入りした。現在は2021年に素材違いで投入されたローズゴールドのブレスレットモデル5990/1Rが唯一のラインナップだった。今回半年のブランクを挟みダイアルを初代のグレー系からブルー系へと変更してSS素材で再登板となった。
5990_1A_011_001_b.png
左が今回の新作、右が初代のディスコンモデル。お間違いなく。と言ううくらいダイアル周りは微細な変更が無さそうだ。両画像とも出典はPP公式カタログだが、前述の3針モデル同様にケースとブレス部分への画像修正度合いはかなり異なっている。此処だけ見較べれば別モデルにしか見えない。個人的には立体感を感じる右の初代画像が好みだ。そんな事はどうでも良いがブラック・グラデーションのブルーソレイユ(新作011)かブラック・グラデーション(初代001)かは実に悩ましい。一般的にノーチラスの青系ダイアルは鉄板人気なので新作に軍配が上がりそうだが、それに乗っかるパテックはチョッとずるい気もする。
前述したようにあまりにも高騰しすぎている人気を考慮すれば5811の様に今後ノーチラスにSS素材は敢えて投入しないのでは無いかと予想していた。それ故の2021年度の5990RGモデル発表と理解していた。しかし今新作には見事に裏切られたわけだ。自信がグラついているが、ひょっとしたら今後も価格がかなり高額になる複雑機能モデルはステンレス素材でもラインナップが続くのかもしれない。そう考えれば前段のプチコン5712ステンモデルの廃番が現実味を帯びてくる。それにしても税込600万円を超える充分高額な時計なのだが・・。
そしてこの高額な5990SS新作にもご希望は殺到している。当店の場合、新作メンズノーチラスの人気順は5811/1G、5990/1A、5712/1Rとなるがあまり大差がない。そしてどれもが供給が追い付かず潤沢に販売できない事も共通している。

7118/1300R-001
7118_1300R_001_800.png

今回発表のノーチラスの紅一点。既存ラインナップの自動巻3針カレンダーモデルのベゼルとインデックスに貴石をジェムセットしたコスメティックチェンジの新作。ジュエリーには疎いので初見はサファイアかトルマリン系の石かと思ったが、スペックにはガーネット科(属がしっくりかなァ)のスペサルタイトなる聞き始めの宝石とある。多彩な色目が有るようで、ルビー様の黒味を帯びた赤色を《コニャック》、シトリン様の文字通り《シャンパン》カラーを両端にしてベゼルは68個のバゲットカットによるダブルのグラデーションから構成されている。インデックスは濃色側の《コニャック》カラーのスペサルタイトを単なるバゲットでは無く"オジーブ"型なる縦長の樽型にカットし、18金の土台に天地留めしてセッティングされている。オジーブ型をググれば、ゴシック建築における特徴的な様式デザインで仏語で尖塔アーチとある。形状的にはロケットや口紅の様なトンガリらしいがわかったようで良く判らない。スペサルタイトはドイツ・バイエルン州シュペッサルト郡での発見が石名の由来。スペサルティンガーネットとも呼ばれ様々なオレンジカラーが有り、黄色味が強い(聞いた事が有りそうな)マンダリンガーネットなども含まれるとある。尚、ガーネットの和名は柘榴(ザクロ)石であり、インデックスや12・6時部のベゼルにセットされている《コニャック》色部はさもありなんである。
ソリッドベゼルやブリリアントダイヤベゼルの7118レギュラーモデルと時計スペックは共通で、搭載ムーブメントはCal.324 S C。なぜか新型換装エンジンCal.26-330 S Cへの積替えがレディス・ノーチラスはのんびりの様だ。リューズは捻じ込みと勘違いしがちだが、非捻じ込みで6気圧防水。少しでもリューズ操作を簡単にという配慮なのだろう。ケース厚は8.62mmでなぜかメンズの3針5711&5811(8.3&8.2mm)、プチコン5712(8.52mm)や永久カレンダー5740(8.42mm)よりも若干ながら厚い。妹分のレディスノーチラス・クォーツモデル7010系がたったの6.9mmなのだから自動巻も頑張って8mmチョイに仕上げて欲しい。
さすがにメンズの新作3兄弟?の熱狂ぶりは無いけれども、予想以上にお問い合わせはある。そしてこの手の時計は入荷が非常に少ない傾向があるのでコンスタントな納品が難しい気がする。ガーネットは比較的手頃な宝石だとしてもグラデーション表現の為の色合わせが必須の調達は簡単では無いだろう。これは次回紹介予定のアクアノート・ルーチェのレインボーでも同じことが言えそうだ。

ところで新作メンズ3型のバックルは刷新されている。正確にはバックルそのものではなくてバックルに連なるブレスレット末端部の駒に仕込まれたエクステンション構造が新たに備わったのだ。駒の裏側の微妙な出っ張りを押して2mm引き出せるので両側で4mmまでワンタッチで調整可能となった。
left_right-3-(002).png
画像の右側が未調整で出っ張りはプッシュされていない。左側はプッシュして2mm引き出した状態だ。縮める際はただ単に押し込むだけで大丈夫だ。実に簡単である。でも時計脱着時に間違って延ばしたり、意図せず縮めたりは大丈夫なのだろうか。オンラインショッピングの普及と共にエンドユーザー自身によるサイズ調整やストラップ脱着交換を可能にするシステム開発・搭載が様々なブランドで試みられている。カルティエのサントスブレス等はその代表例だろう。パテックはメタルブレスの微調整用に1.5駒のエキストラサイズリンクを別売で用意している。古い考え方かも知れぬがこれだけ高額のラグジュアリーでエレガントな時計はリアル店舗で調整もなんもかんも任せて頂きたいのだ。新機構はあくまで大汗をかいた時に引っ張って緩めるエマージェンシーとして使ってもらいたいのだ。
Clasp_center1.png
表側とサイドビューも撮って見た。お断りしておくが新作ノーチラスはまだ入荷していない。ごく最近入荷の従来品ノーチラスモデルに既に換装搭載されて初入荷したものをタイミング良く気付いて撮影したというわけだ。チラリと覗けるムーブメントをヒントにリファレンスを2つに絞れたアナタは正当かつ深刻なパテックホリックで御同輩と呼ばせて頂きたい。バックル近辺と言うのは普通は自分以外まず見えない。でも自分自身は結構よく目にする部分だ。好き嫌いと断りつつも個人的にはこの見え様はいただけない。さらに言えば汚れゴミの付着が気になり、隙間から構造内部への侵入での不具合を心配してしまう。さらに画像右側のサイドビューからはエクステンション部を仕込んだエンドピースの結構な厚みが確認できる。続きの2駒目はテーパー状となって厚いエンドピースと薄いレギュラー駒の橋渡しをしている。しっかり特許の両側プッシュの新型クラスプ部そのものも旧型より微妙に厚く中央部が少し膨らんでごつくなった感がある。これまた新旧のバックルの着け心地を較べられるオーナーはとても限られるだろうが、ケースだけでなくブレスの薄さもノーチラスの大事な持ち味なのでガチガチに固めてゆくのもナァと思ってしまう。スポーツロレックスのオイスターブレス・バックルも同じ変遷をたどってはいるが・・。

先日読んだクロノス日本版最新号(2022 no.103 P.27)に、来日した世界的に著名な時計評論家ギズベルト.L.ブルーナー氏と広田編集長の対談記事があり、興味深い下りが有った。原文のまま記すと「・・かつて、パテック フィリップのフィリップ・スターンにこう聞かれたよ。ノーチラスがまったく売れないのでどうすればいいのかと。ロイヤルオークにしたって、かつては値引の対象だった」。現在のラグジュアリースポーツの2大巨頭のファンの方の殆どが、2000年以降に興味を持ち始められた50代半ば迄の世代となっている。その方々には想像も出来ないかも知れないが最強トロフィーウオッチ達にも不遇の時代が存在し、結構長く続いていたのだ。1990年代初めに時計業界入りした頃、ロイヤルオークは常時委託で貸出しされ日々目にしていた。ノーチラスでさえも始終開催していた自前の展示販売会に当時の輸入元が無造作に持ち込んでいた。ただ当時もステンレス3針の3800/1Aだけは滅多に入荷しない稀少モデルだった。SSデイトナも同じ状況で、この二つのリファレンスだけが例外的に特殊であり、今から考えればのんびりまったりと実に平和な時代だった。

本稿もいつも通り長文で脱線しばしとなった。お宝ノーチラスが一気に4型ゆえにお赦しいただきたい。次回は残る複雑系中心に残る4モデルをサクッと紹介してみたい。

画像:パテック フィリップ
文責、撮影:乾



先頃生産中止が決定されたノーチラス・フライバック・クロノグラフ・トラベルタイムRef.5990のステンレスモデルは、2014年から長きに渡り生産されたロングセラーモデルだった。特に此処2年程前からは人気が急上昇して購入がドンドンと困難なモデルとなっていた。昨春にはローズゴールドの素材追加モデルが発表され、一年のランニングチェンジを経てバトンを譲った訳だ。
_DSC0271.png
この時計で印象的なのは何と言ってもグラマラスな厚みだ。ケース厚12.53mmはパテックの最厚モデルではないし、デカ厚トレンドがまだまだ巾を利かせている現時点で一般的に厚過ぎる時計とは言えないだろう。だが8mm台の薄いケースで装着感の良さをノーチラスに与えようとしたジェラルド・ジェンタの設計思想からすれば"結構厚いナァ"という話だ。パテックの時計作りは決して薄さ至上主義ではない。しかし装着感の良さを追求する点で、出来れば薄い方が望ましいと考えている。よってムーブメント設計も強度を保った上での薄さを求めている。厚さ話のついでに最新カタログ2020-2021で厚さランキング表(上位・下位の各5位)を作ってみた。全部をチェックした訳では無いので、たぶん?というええ加減な表ではある。そして実に見難く解り難い。
case1_5.gif
切れ味の鈍い頭でアレコレと考えた結果、作った本人しかあまり利用価値の無さそうな表になった。品番の素材や枝番と基本キャリバーも後半部分をバッサリ省略した。自動巻Mとはマイクロローター搭載の略である。まあ折角作ったし、スタッフの協力も有ったので・・参考までに本稿末尾に全体の表も掲載しておく。因みに今回紹介の5990/1の12.53mmはケース厚14番目でコレクション全体では決して厚すぎる訳では無い。但し、ノーチラスの中では最厚である。上の表で意外なのは年次カレンダー・フライバック・クロノグラフRef.5905が第5位の厚みを持っている事で、多分にフルローター自動巻に垂直クラッチが組み合わさった構造の基本キャリバー CH 28-520の厚さ6.63mmに年次カレンダー・モジュールが乗っかるとこうなる訳だ。薄い方ではクオーツ搭載のレディスでは無く、機械式しかも自動巻を積んだメンズが薄さで1~3位を占めている事だ。さすがのキャリバー240、"極薄"と称されるだけの事は有る。
6002_5738_b.png
上の画像で両者の厚みがデフォルメされている様に見えるが、比率は実寸比の3:1程度となっている。この両極の中に全コレクションの厚みが収まっている。今回の作表は素材違いや文字盤違い等のいわゆるコスメティックのチェンジモデルを無視した個人的基準でケース形状バリエーションを独断で84種とした。最新カタログ掲載モデル数が151点(懐中時計除く)なので、二つに一つは別のケースという事になって、パテックの多品種少量生産がうかがえる。生産効率は当然ながら非常に悪いだろう。そう考えればパテックの価格設定は決して高すぎるとは思えない。ただ、すみません。他ブランドを殆ど考察していません。手始めにAPの公式HPを見に行ったのですが、何と言うか疲れてしまいましたので・・
尚、個人的にケース厚9mm~12mm台は現代の時計として普通の厚みと考えていて、今回の考察の場合は84種中39種で約半分。薄さ際立つ8mm台以下が35種も有って、厚めな13mmアップがたった10種しかない。ちなみに世の中にはピアジェの様に3mm台と限界の薄さに挑戦するブランドもあるが、パテックは実用的な強度からか極端な薄型を作ってはいないけれど全般に薄く仕上げられている。ずっと気になって仕方ないのが電話での問い合わせや店頭商談の際に、皆さんケース径は気にされても、ケースの厚みを話題にする方が殆どおられない。でもサクッと見にいったロレックス・オメガ・リシャール等のHPで径は有るが、厚さ表示が見当たらない現状なら仕方の無いことかもしれない。ナンデヤネン?
ところで薄いケースは着け心地に貢献すると言われているが、必ずしもそうとは言えない気がする。幸運にも最薄ケースのゴールデン・エリプス(ディスコンの5.8mm厚Ref.3738)を愛用しているが、ケース径も小さめなので少しでも緩めに着用すると自由自在にスルスルとどこにでも、あっちこっちへと腕の廻りを散歩するのでしょっちゅう手首の上に戻してやる事になる。腕廻りの形状が特別仕様という事も無い。小型で薄型のエリプスに限らず腕時計はどれもこれも12時側に行きたがる。ブレス調整時に駒取りを工夫したり、皮ベルトの12時側と6時側を入れ替えたり、長さを別誂えしたりと様々に工夫する事二十数年になるが、納得できる回答は得られていない。個人的に言えば、トゥールビヨンやリピーターの様な超複雑機能よりも常に手首の上で理想のポジションを保ち続ける構造を開発して欲しいのだ。時計業界のノーベル賞ものだと思うのだが、どうだろうか。
この時計の強烈な印象はまだ他にもあって、「天地間違えてすみません!」という奴だ。本稿の5990は12時位置に6時側と同サイズのインダイアルが配されるのだが、恐らく3時位置に日付窓が無く6時側にブランドロゴが有る為なのか、天地がひっくり返っても違和感が無い。現実に何度かご納品時にうっかり逆向きで差し出す事が何度も有った。
6300_5235_b.png
パテックには同様のダイアルレイアウトのモデルが現行でRef.6300グランドマスター・チャイムとRef.5235レギュレーター・タイプ年次カレンダーの2モデルある。どちらも同様に間違えそうな顔だが、ショーケース内の鎮座を拝むだけで触る機会さえ無いグランドマスター・チャイムへの心配は杞憂でしかない。年次カレンダーも危なそうだが、曜日と月(month)表示窓が10時と2時辺りに有るので大丈夫なのだ。文字盤デザインはかくもデリケートで難しいものである。その事を過去最高に強く教えてくれたのが5990だ。
そして多少ネガティブな事ながら、リセットプッシュボタンがチョッと曲者というのがある。このモデルのプッシュボタン形状が結構横長な為に引き起こされる現象で、ボタン中央をまっすぐ押さずに両側どちらかに片寄って押してしまうとクロノグラフ秒針が"バシッ!"と0位置にキッチリ戻らず、変な位置に"フワッ"とだらしなく止まる現象が稀に起きる。当店は仕入検品で何度か初期不良として返品をした苦い経験があるが、結局この現象はノーチラスのケースにCal.CH28-520系を搭載し、特徴的な長方形プッシュボタンを組み合わせた場合、少しだけデリケートに操作すべき注意事項であるが初期不良では無い事を学んだ。
5980_5905_5968_5961.png
※上の画像で左二つがプッシュボタン押し方が多少デリケートなタイプ。
故にトラベルタイムを積まないシンプルクロノグラフバージョンのRef.5980でも注意すべき留意点となる。同じエンジンを積んでいるコンプリケーションカテゴリ―の年次カレンダー・クロノグラフRef.5961はプッシュボタン形状が大きく異なり、芯でしか押せないタイプなので全く心配なさそうだ。しかし派生モデルRef.5905のボタン形状は幅広なので注意が必要だ。ところがアクアノートのクロノグラフRef.5968も形状的にはいかにも危なそうで何度か試してみたが、ケースにプッシュボタンが少し埋もれる構造のお陰?なのか大丈夫そうだ。でも過去に販売したSSの5990でこの現象のご指摘を受けた事は皆無で、普通に使っていれば問題はないのでご心配なく、万が一遭遇しても決して慌てないで下さいというお話。

今回も時計そのものには殆ど触れず、結構ネガティブな辛口気味の紹介となった。でもラグジュアリースポーツジャンルを代表するノーチラスコレクションのダブルコンプリケーションがローズゴールドに滅茶苦茶映えるブルーカラーのダイアルでの登場は話題にならないはずがない。実に軽く1,000万円を超える価格にも関わらずこのモデルの人気は凄まじく中々新規のご納品が困難である。受注もどこまでお応え出来るのか・・まあ昨年後半からシリーズに関わらずパテックのメンズは品不足が激しい。入荷が決して悪いのではなく、ご購入希望が非常に増えている為だ。今年になってからはレディスモデルもかなり厳しくなっている。そんな状況下で世界を震撼させる紛争が勃発し"すわっ!入荷アブナイ"と心臓が止まりそうになったが、今のところパテックの日本向け物流は止まっていない。でもまたしても地震が東北を襲うし、ラグジュアリーブランドの異様とも言える好況感とは裏腹に世界も日本も実にきな臭い事になって来た。新製品発表直前の今は、どうかこれ以上何にも起こらない事を願うばかりである。


Ref.5990/1R-001
ノーチラス・トラベルタイム・クロノグラフ
ケース径:40.5mm(10-4時) ケース厚:12.53mm 防水:12気圧
ケースバリエーション:RGのみ
文字盤:ブルー・ソレイユ 夜行付ローズゴールド植字インデックス
ブレスレット:ノーチラス折畳み式バックル付きローズゴールド3連ブレス 
価格:お問い合わせください

Caliber CH 28-520 C FUS
トラベルタイム機構付きコラムホイール搭載フルローター自動巻フライバック・クロノグラフムーブメント
直径:31mm 厚み:6.95mm 部品点数:370個 石数:34個 
パワーリザーブ:最小45時間-最大55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

撮影、文責:乾

付表:品番別ケース厚一覧(非公式・我流) ※自動巻Mはマイクロローター搭載の意味case84.gif

5711_1a_014.png右手に障害が結構残っているので腕時計の各種操作がままならない。とは言っても自分の時計だけは、何とか無理やり左手も使ったりして時刻調整をしている。特別な箸で食事もゆっくり摂ったりしているわけで全く使えない事も無い。楽しく時に苦労もする実機時計の撮影もたぶん無理なのだろうと思っていたが、退院後取り敢えず愛用時計から試して、どうにか簡単なカットなら時計によっては何とか撮れそうかもとなった。
で、最初がパテック今年最大の話題作ステンレススチール製3針ノーチラスの緑文字盤の実機撮影という幸運から再出発する事になった。撮像の出来栄えは、「あチャ~!」ピントが少々甘かった。しかし小傷がほぼ無い素晴らしい個体コンディションのおかげで結構満足の絵が撮れた。当店直近にお住いのごく親しい顧客様のご愛用品を、ご厚意によって撮影協力頂いた賜物。本当にありがとうございました。ご購入当初は普通に着用されていたらしいが、最近は繁華街とかには着用がためらわれるらしい。そりゃそうだ!2次マーケットをググる度に"驚愕"をこえ"寒気"がしてくる。
ノーチラスはとても撮りやすい時計で助かるが、緑の色目の出方がカメラのモニターでは判然としなかった。幸いPCモニターではまずまずの再現が得られホッとした。ところが原稿を書きながらPP公式サイトの画像と較べると相当に色目の差が有る。だいぶ違う。どちらが正しいのか。いや、これは見え方の差であって、いずれも正しい気がする。公式サイトの画像は思いっきり太陽光が当った感じだ。正式な色名称のオリーブグリーンの表記通りで抹茶系の色目とも言える。しかしながら室内のやや暗めの光源下では今春生産中止になったブラックブルー同様に、非常にダークで若干青味を帯びた複雑かつ色気の或る緑色と化す。残念ながら起稿中の今現在手元には無いので現物の再確認が叶わない。
実はこの原稿を書き始めたのは11月の下旬頃だった。手指のせいで恐ろしく遅筆になった事、11月末頃から12月が思いのほかバタバタした事、しかもありがたい事にその殆どがパテック絡みの商いだった。そんなこんな理由付けも有るのだが、一体何を続けて書けば良いのかネタ切れが書き進められない大きな理由だった。
時計そのものはとうの昔に紹介済み。それ以降での5711がらみの大きなトピックスは、エンジンがCal.324 S Cからストップセコンド機構新規搭載を始め様々な大幅改良がなされたCal.26-330 S Cへ積み換えられた事だろう。この新ムーブメントは2019年新作のウィークリー・カレンダーRef.5212Aのベースキャリバーとして初めて搭載されたもので、これまた昨年度モデル紹介時に詳しく書き込んでいる。さて何を書き綴ればよいものか、思い悩みながらアレコレと言い訳の日々が過ぎ、このまま越年かと思いきや、"5711ラストイヤー"を締めくくるかの様に"GOOD BYE 5711"モデルですか?というティファニー・コラボ170本限定Ref.5711/1A-018などと言うとんでもない物が発表された。さらにその最初の1本がチャリティー目的のオークションとして、12月11日にティファニー本店所在地であるニューヨークで、オークションハウス:フィリップスにより、予想落札価格5万ドルの約130倍650万3500ドル(約7億3489万5500円、1ドル=113.4円、2021年12月11日現在)という驚愕の金額で落札されたのだ。ちなみにwebChronosの12月14日同18日26日の記事が詳しい。
本稿の書き出しは春本番に発表された"これでおしまいのはずだった5711"のグリーンダイアルであったが、実はおしまいでは無く、年末にさらにこれでもかのサプライズ爆弾が仕込まれていた訳で、これについては色々思うところ多々あって、全部なんもかんもひっくるめて5711話を書く事がラストイヤーの年の瀬に相応しいという事になってしまった。

5711_1A_018tf_b.png画像はPHILLIPSサイトのPressページから頂戴した。同サイトをさらに深く見てゆくと同日に限定では無い廃番になったノーマルの5711/1Aのブラック・ブルー(010)とシルバー・ホワイト(011※画像には表示無)もオークションに出品されていた。
20211211PH5711_3.pngnew-old-stockは辞書で新古品とある。いわゆる転売なのだろうが、その辺りの詮索は置いといて、誰が考えても安すぎるEstimateもほっといて、青と白が約28万ドルと約23万ドル(同上円換算、青3200万円弱、白2600万円弱)。また今回冒頭でご紹介の緑(枝番014)も初夏の頃だったかオークション実績の記憶が有って約5400万円だったはず。パテックのリファレンス毎の年産制限数は非公表ながら1,000本程度と想像していて、仮に014が最大の1,000本だとしてもティファニーダブルネーム(同018)170本の6倍には満たない。だが落札額は14倍弱となる。う~ん、直感的には018が高すぎ!と思った無理やり比較だが、チョッと待てよ。所有権が登録されたブランド固有の著名なカラーリングをダイアルに採用している事。さらには一旦これでおしまい?のパテック製品の最終ダブルネームで有る事。それらを考慮してゆくとこれは決して法外な馬鹿騒ぎハイパーインフレ落札では無いのかもしれない気がしてきた。
青(最終枝番010)は2006年~2020年の14年間で仮にフル生産されていれば最大14,000本、同一の考察で白(011)は2012年~2019年の最大7,000本と想像している。この2色は稀少度合いと落札価格が逆転しており、青人気の凄さを裏付けている。その青だが018の80倍以上生産された可能性を考えれば、約3,200万円という落札額がいかに凄まじいかが判る。あくまで個人的な結論ながら、一見信じ難い落札金額のティファニー限定018や、皆が度肝を抜かされた今春の緑014よりもノーマルの青010や白011の方が今現在は資産価値が有りそうにも見える。ただ将来的には稀少性に応じた価格に収れんして行くのではないだろうか。確かに2021年2月の生産中止発表で青010の2次マーケット価格は急上昇した。そりゃ生産打ち止めなので当然ではある。しかしそれにしても他のノーチラス等も含めて、今はあまりにも異常なプレミアが付き過ぎていると思う。間違いなく何かおかしい!
※上記の青・白ノーチラスの金額は、市中の2次マーケット価格は無視している。あくまでティファニーとのダブルネームノーチラスとの比較の為に12月11日落札額を採用した。
しかしそれにしてもパテックとティファニーの久々のコラボ、しかも超人気モデルのフィナーレとしての特別演出は何故なのだろう。確かにティファニーとパテックの蜜月と言うのは半端では無いのは良く解る。創業者の一人であるアントワーヌ・ノルベール・ド・パテックがニューヨークのティファニーを訪れたのが取引き開始3年後の1854年。それぞれの創業から15年、17年しかたっておらず、まだまだ誕生間も無く血気盛んなファウンダー同志が馬が合ってスタートしたパートナーシップだったと想像できる。ティファニーは1870年代には自社ブランドの時計事業をヨーロッパにも拡大すべく、微妙ながらパテック社のお膝元ジュネーブに時計工場を建設するが、わずか4年でこのプロジェクトは頓挫した。パテックはその際にも、その後始末に関わり手を差し伸べている。その名残(駄賃と言うべきか)が、今もジュネーブのパテック本店サロンに鎮座している巨大な金庫である。1900年代前半の米著名時計収集家のヘンリー・グレーブス・ジュニアもティファニーを通じての購入で重厚なコレクションを築いた。
ダブルネームについては昔はロレックス、ヴァシュロンコンスタンタン、オーディマピゲ等の様々な名門時計ブランドも含めて地域一番店等とのダブルネームが普通に有った。それだけ川下の小売店が力強く自らをブランディングしていた時代があったのだ。あぁ、何と羨ましい!今や小売店舗と著名時計ブランドとのダブルネームコラボは、皆無では無いにせよ耳にする事がほぼ無い。そんな背景からしても今回のパテック&ティファニーのコラボの稀少性は大きい訳だ。なぜその発表タイミングに違和感を感じるかと言うと、ティファニーは紆余曲折を経て2021年初めにルイ・ヴィトンを筆頭にした仏高級ブランドのコングロマリットであるLVMHグループに円換算1兆6千億円ほどで完全買収されている
からだ。同グループはウブロ・ゼニス・ブルガリ・タグホイヤー等を擁する一大時計ブランド群も保有しており、我々から見るとパテックの競合先であり、決してお友達の立場とは思えない。買収決定時には、今後のティファニー各店舗内でのパテック商品の取扱いはどうなるのだろう?と思ったほどだ。しかしよくよく考えてみると買収交渉中にはとてもダブルネームを出せる様な友好的買収劇では無く、双方が裁判沙汰に持ち込んだ泥沼仕合だった。
57111a018bigCB.png
HODINKEEの記事によればこのノーチラスの裏蓋のサファイヤクリスタル・バックには両社のパートナーシップを意味する幾つかの刻印がなされていて、その中の"1851-2021"部分の最後の"1"には"LVMH"と隠し文字?まで確認出来る画像が掲載されている。この解釈として同記事は、今後も変わる事の無いティファニーとのパートナーシップの証であるとしている。その通りであれば今後も節目のアニバーサリーイヤーには同様のダブルネームウオッチがリリースされても不思議は無い。でも本当にそんな事になるのだろうか。個人的には凄く違和感があって、今後のダブルネームは簡単には出して欲しくないのが本音だ。だいぶ前にニューヨークのティファニー本店を訪ねパテックの売り場を視察したが、色々な点でガッカリがあった。詳細は省くが他の米国内ティファニー店舗でのパテック販売に関しても興味深いお話を顧客様から聞く事があった。アメリカのリアル小売業全般の問題点の様な気もするが、ティファニーも経営的に大丈夫ですか?感はずっと持っていた。だからLVMHへの移行完了をもってパートナーシップ解消が決定したので、個人的には特別なダブルネームを170年連れ添ったベターハーフへの格別なる慰謝料!としたのだろうと解釈した。ティエリー・スターン社長の大盤振る舞い。スゴイ!と思ったのですが・・
それにしても買収企業名の隠し文字、それも"1"の数字に横書きでは無く、実に不思議な縦書きの4文字が妙に離れて記されているのが、全く隠し文字ではなくてどちらかと言うと妙に目立っている。これではまるで慰謝料の帯封に別れたパートナーの再婚相手のイニシャルを印刷しているようではないか。どうも今後の展開が読めなくなってきて、アレコレ探っていたら米ニュースメディアCNBCにティエリー・スターン社長の動画コメント付きの下記の記事が有った。
『パテック フィリップは、170人の幸運なバイヤーのために時計の「聖杯」を復活させました』
この記事を見て結論として思うのは、5711ティファニー・ブルー限定はダブルではなく限りなくトリプルネームだったのではないか。パテック社は2019年から米市場で正規販売店約160店舗を大胆に見直し、現在(2021/12/26)の公式サイトでは実に65店舗にまで絞り込んでいる。憶測ながらティエリー社長は最近のティファニーに微妙な印象を持っていて、実はアルノー家がファミリービジネスとして展開しているLVMH対して、ラグジュアリーメゾンとしてティファニーを傘下に収めてくれる優秀なホワイトナイトの様な印象を持ったのではないだろうか。もしそうであれば今後もダブルかトリプルかは知らないがコラボモデルの可能性は有るかもしれない。でも全米で95店舗もあるティファニーの内、パテックを扱っているのは今回の限定ダブルネームを売る3店舗(ニューヨーク本店、ビバリーヒルズ、サンフランシスコ)に加えてホノルルのロイヤルハワイアン店のたったの4店舗しかない。一方では大鉈を振いながら、スイス人がこんなに義理堅いとは知らなかった。
いずれにしてもノーチラス5711/1Aは完全に終わりだと確信した。まてよ、RGの3針5711/1Rはまだラインナップに踏み留まっているぞ。しかしもうすぐに年度切り換えの2月だ。生産終了発表もある。個人的な勝手予想は、一旦RGもドロップして数年の冷却期間を空けて、コロナも落ち着いたら後継機種Ref.6711とかが発表されればナァ、とか思う新年の今日この頃でございます。そう気が付けば年が明けての公開となってしまった。本年も長文になりがちな拙ブログですが、どうか宜しくお付き合い下さい。

一応備忘録代わりにスペックも
Ref.5711/1A-014
ケース径:40.0mm(10時ー4時方向) ケース厚:8.3mm
防水:12気圧
ケースバリエーション:SSの他にRG 
文字盤:オリーブグリーン・ソレイユ 夜光付ゴールド植字インデックス
Caliber 26-330 S C
自動巻ムーブメント センターセコンド、日付表示
直径:27mm 厚み:3.30mm 部品点数:212個 石数:30個
※ケーシング径:26.6mm
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

Ref.5711/1A-018
※ティファニー・コラボ限定は文字盤とケースバック・サファイヤクリスタルのみ上記と異なるという事で・・

余談ながら或るお客様からお聞きしたのが、ノーチラス・ティファニーブルーの高額落札を受けて、ロレックスのオイスターパーペチュアルSSのターコイズブルーダイアルの2次マーケット価格が異常に高騰しているというお話。確かに色々ググるとエライ事になっていました。コレはもう全く理由がわかりません。

文責、撮影:乾

例年、今時分は湿気と暑さで閉口するのだけれど、今年は網戸越しの心地良い涼風で、寝心地が良い日々が続く奈良。ついつい寝すごして早朝トレーニングをサボってしまうのが、頭の痛いところだ。
記録的に梅雨入りが遅れていた西日本。先日出張した愛媛では、主要河川が既に干上がって十数年ぶりの水不足が心配されている。本格的な給水制限が始まると、街にゴーストタウンの時間帯がやってきて商売どころでは無くなってしまう。自然の気まぐれもお国が変われば、悲喜こもごもである。

さて、少し前に取り上げたストラップ仕様のノーチラスのクロノグラフには同じローズゴールド素材でメタルブレスレット仕様も用意されている。どちらも入荷数が非常に少ないので目にする機会に中々恵まれない。一番大きな違いは勿論ストラップとブレスレットながら、文字盤のベースカラーと6時側のクロノグラフ積算計のインダイアルの色使いと60分積算針が赤では無く12時間積算針と同色の白系となる。
文字盤ベースカラーは、カタログや公式HPカタログでは両者で異なる。ストラップ仕様がブラック・ブラウン、ブレス仕様はブラック・グラデ―ションとなっていて印刷でもモニターでも黒っぽく表現されている。ところが入荷時のブレス仕様の現物は結構ブラウン系の色目に見える。バキュームパックから出して剥き出しにすればダークグレーっぽく見えてくる。両者を並べて見比べる事はまず不可能なので記憶だよりになるが、個人的には少し似た色目に思える。フランジ(文字盤廻りの土手部分)に結構な高さが有って、ローズゴールドの赤目の色味がダイアルに写り込んで茶系統の色目に錯覚させられている可能性がある。
ちなみにプチコンのRGストラップ仕様5712Rもブラック・ブラウンでクロノのストラップと同色である。でも同じブラウン系でもRG3針ブレスモデル5711/1Rはブラウン・ブラック・グラデーションで違う色目となる。
いづれにせよメンズ・ノーチラスの横ボーダーの濃色ダイアルはややこしくて、怪しくて、不可思議でミステリアス。皆さんコイツにノックアウトされてしまう。いつの日かベゼルダイア仕様のプチコン5724Rも含め、夢の競演ノーチラスRG5兄弟全員集合!で胸のつかえを落としてみたいものだ。
5980_800_b.png
※画像にすると結構グレーに写り、ストラップモデルとの文字盤カラーの違いに気づかされる。
積算計廻りの色使いの違いは好みが別れるが、個人的には同色でまとめられたブレス仕様により高級感を感じる。このクロノグラフモデルの草分けは2006年秋のノーチラス発売30周年で発表された5980/1A-001に遡る。その際に採用された積算計インダイアルの色遣いがスポーティーな2色コンビネーション。2010年にはローズゴールド仕様の現行5980Rのストラップモデルがデビュー。初めて同色のインダイアルが採用されたのは2012年に追加されたステンレス素材のシルバー・ホワイト文字盤5980/1A-019からだ。2013年にはSSとRGコンビネーション5980/1ARとRGブレスタイプの5980/1Rが同色インダイアルで発表され現行ラインナップとなっている。
5980_1a_800_a.png
搭載されるベースキャリバーCH 28-520系を積むノーチラス以外のモデル(例:5960等、全て59始まり)に関しても2011~2012年頃から積算計インダイアルのモノトーンへの移行がなされている。どうやらその時期を境にパテックの自動巻クロノグラフの顔は第一世代と第二世代に分けられそうだ。

ところで、この時計は相当に重い。手元の量りでは254g。これは大人気のSS3針5711/1Aの123gの約2倍である。これまで触れてきたパテックの時計の中では二番目の重さだ。一番は40周年記念限定のWGクロノグラフノーチラス5976/1Gで312gの超ヘビー級だった。一般的な現行コレクションに於いて、5980/1Rが最も重いモデルと思われる。
そしてお値段も結構ヘビー級なのだが、此処のところ人気上昇中で購入希望登録は増えつつある。
5980_side_800.png
ケースの厚みは12.2mm。ピン穴が見えているバックル周辺のサイズ調整用駒部分の厚みはメンズ・ノーチラス全てが共通(ピン仕様の場合)で非常に薄い。ケース厚さ8mm台の3針モデル5711やプチコン5712の場合は、同じ薄さの駒が時計部分まで連続している。しかしご覧のように複雑機能を搭載する厚めのモデルでは徐々に駒が厚くなって、ラグ厚と調和するようになっている。
ステンレスの5711/1A等は上の画像の状態にセットしても自立するが、トップが重すぎる5980/1Rは左右どちらかに倒れ込んでしまうので撮影時には少し工夫をして画像にはかなり加工を加えてある。お暇な方は違和感をヒントに間違い探しをお楽しみください。
5980caseback_800.png
18金RG素材の色目は結構赤く見える。21金のセンターローターとの違いがはっきり出ている。正面と側面の画像ではそこまで赤味を感じない。恐らく光の当たり方に加えて、異なるポリッシング手法によって仕上げられた表面状態の違いも大きく影響しているのだろう。実際ノーチラスのポリッシングの多様性は凄い。
シリーズ発売40周年の2016年秋に刊行されたパテック フィリップ インターナショナルマガジン VOL.Ⅳ 2の記事では聞きなれない手法、サティナージュ、ポリサージュ、シュタージュ、アングラージュ、アヴィヴァージュ、サブラージュ、フートラ―ジュ、エムリサージュ、ラヴァージュ、ラピタージュ等の記載がある。全部フランス語だろうけれど、最初の2つがサテン仕上、ポリッシュ仕上ぐらいしか見当もつかないが、ノーチラスの魅力的なナイスバディの完成には飛んでもない手間暇と情熱が注がれているのは間違いなさそうだ。

Ref.5980/1R-001
ケース径:40.5mm(10時ー4時方向)
ケース厚:12.2mm 防水:12気圧 ねじ込み式リュウズ
ケースバリエーション:RGのみ 他にRGストラップSS/RGブレス仕様有 
文字盤:ブラック・グラデーション、蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
価格:お問い合わせください

Caliber CH 28-520 C/522 フルローター自動巻フライバック・クロノグラフムーブメント コラムホイール、垂直クラッチ採用

直径:30mm 厚み:6.63mm(ベースキャリバー5.2mm、カレンダーモジュール1.43mm)
部品点数:327個 石数:35個 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責、撮影:乾

此処1年ぐらいでノーチラスとアクアノートの人気がさらに過熱して来た様に思う。それまでは限られたSS(ステンレススチール)モデルだけに集中していたが、そこが無理なら別のSSモデル、それも無理なら18金モデルとまるで連鎖し伝染するかのように人気と飢餓感が、縦に横に広がってきた。さらには女性モデルへもじわじわと影響が出て来ている。恐らく当店だけでなく他の正規店にも同じか、それ以上に希望者が殺到していると思われる。
_DSC7553.jpg
これに伴って毎日のようにお電話やメールで国内外からノーチラスを中心に在庫確認と予約の可否へのお問い合わせを頂いている。3年ほど前に『あぁノーチラス、されどノーチラス』とのタイトルで一番人気のRef.5711/1A-010(ブラック・ブルー文字盤)の紹介と予約に関する方針めいたものを書かせて頂いた。実は今現在でもこの記事へのアクセスは非常に多い。トータルページビューでは断トツぶっちぎり状態である。この時計への皆さんの情熱が想像以上に熱いのだろう。

あまりにもお問い合わせが多いので改めて当店の方針を説明させて頂きます。まずシリーズ等に無関係で全てのパテック フィリップのモデルに関して順番をお約束する予約はお受けしておりません。ただいつでも、どなたでも店頭に限ってお名前、ご住所とお電話番号等を頂戴するご購入希望の登録は、基本的にご本人様からは受け付けております。ただ販売の優先順位は、過去及び将来の当店でのパテック フィリップご購入実績(本数・金額等)から判断させて頂いております。
年間の入荷本数はモデル毎にほぼ決まっており、実績顧客様からの新たなご希望数が入荷数を上回っているモデルは、実績顧客様であっても全ての方には販売出来ないかも知れません。必然的にご登録だけのお客様への販売はさらに難しくなってしまいます。
この説明で再検討される方も、取り合えず来店され登録される方もおられます。誤解をされては困りますが、たまたま登録のための来店時に店頭で出会った別のモデルを購入されて実績顧客としてウエイティングされ、その後に登録モデルも購入と言う様なケースも無いわけではありません。ただし、決して無理にお奨めする気はありませんし、また時計は無理やり購入するものでもないでしょう。時計や車は"出会いと縁"が大切だと思います。
ご注意頂きたいのは他の正規店様とのダブルブッキング。パテック フィリップ ジャパンと我々正規店との受発注の詳細は控えますが、複数の店舗から同時期に同じ希望者名でのオーダーは受け付けられずキャンセルとなる事があります。明らかにあの店の方が早いと確信めいたものを持てない限り、安易なオーダー店舗の乗り換えにはリスクが伴いかねません。
全てのノーチラスやアクアノートとは言いませんが、今現在の状況が続く限りは全国のどの正規販売店であっても希望モデルのみをピンポイントで購入相談に行かれても難しいのかもしれません。
非常に辛口のお話しが続きました。ところでノーチラスとアクアノート以外のモデルではだいぶ状況が異なります。例えば立て続けに生産中止発表されたカラトラバシリーズも、コレクションの減少からなのか非常に人気が高まっています。しかし現時点なら登録だけでも、ご購入はある程度見込めると思います。ただ今後の生産の縮小や中止等もありますので100%のお約束は出来ませんが・・


ロレックスのスポーツモデルも良く似た状況と聞く。フェラーリ、ランボルギーニやポルシェなどの限定車などの特殊車両も中々簡単には買えないらしい。片方で数年前まで結構売れていたミドルレンジと言われる時計ブランドが全般的にやや苦戦気味である。車も日常の足としての軽はそれなりに売れているらしいが国産普通車はずっと厳しい状況だ。
平成の約30年は日本の社会構造を大きく変えた。一億総中流はとっくに夢まぼろしとなり、貧富まで行かぬとも格差は確実に広がった。国際情勢もゆっくり確実にきな臭くなって来た。当然世界経済も無関係ではない。
高級時計、高級車と言った贅沢品を購入する多数の方が企業経営に携わり今現在資産をお持ちの方が多い。弱いデフレがずっと続いてきたが、もし世界レベルに緊張が走る様な事態になれば一気にインフレに振れる事だって有るから、全額現金での資産保有が必ずしも安心とは言えない。見通しのきかない不透明な近い将来に備える為にも確実に価値を維持し続けそうな投資先を選びたい。あまり大きくなく持ち運びが容易で多少使用しても価値を減じず、ライフが長くて維持費もそこそこで簡単に子孫その他に手渡せて、当局の把握もしづらいパテック フィリップやロレックスの人気高級腕時計がその対象になるのも当然の流れかもしれない。そしてこの傾向はしばらくは続きそうな気がしてならない。
でも投資対象とは全く無縁にパテックを求められる本当の時計好きは確実におられる。その手の方々はカラトラバもグランド・コンプリケーションも気に入ったパテックを購入されスポーツ系に偏り過ぎることが無い。また価格帯に関わらずSEIKOやG-SHOOKの限定モデルも嬉々として購入するし、手に入らないと本気で悔しがる。何時でも愛用の時計や気になっている次のターゲットウオッチについて何でも知りたいと思っている。素晴らしい名経営者も大先生と呼ばれる医療関係者でも、皆さん時計選びを始めると完全に少年の目になっている。そして実際に日常的に使う事が前提なので、装着感、サイズバランスや自分のライフスタイルとの相性をとても大事に考えている。そんな彼らも勿論ノーチラスが大好きだ。ただそれは後付けの資産価値に惹かれているのでは無く、純粋に時計としての魅力にぞっこんなのだと思う。
個人的にはどちらの価値観もありだと思っている。両者のバランスが重要で、あまりにも資産価値ありきになり過ぎると殺伐として『売っても、買っても楽しくない』そんな不幸な展開だけは避けたいものだ。

文責 撮影:乾
690

p

_DSC9580.png
この時計のレア感が個人的には凄い。当店の歴史は20年弱あるが、パテック フィリップを取り扱ってはほぼ4年。その間にこのリファレンスが入ってきた実績が殆ど無い。共通のエンジンCH 28-520系のノーチラスとしては3年前のノーチラス発売40周年記念限定モデルのRef.5976/1Gと定番ラインナップのトラベルタイム・クロノグラフのRef.5990/1Aがある。前者は僅か2本の入荷で勿論顧客様の予約販売、後者も片手ほどに過ぎないし、最近は客注でしか入ってこない感じだ。
搭載キャリバーのCH 28-520系は2006年にクロノグラフムーブメントの自社設計開発製造計画(いわゆるマニュファクチュール化)の第2弾として発表された。その当時各ブランドが自社クロノグラフムーブメントに競って採用した垂直クラッチを備え、リセットとリスタートを容易に行えるフライバック機能が盛り込まれた超が付くアバンギャルドなキャリバーの誕生だった。
初搭載モデルは2006年1月発表の年次カレンダーモジュールを組み込んだプラチナ製の年次カレンダー搭載クロノグラフRef.5960P。同年10月にはノーチラス発売30周年を記念してフルモデルチェンジした新生ノーチラスシリーズの一つがステンレスケースを纏ったRef.5980/1Aだった。いづれもが爆発的人気のスタートを切り、様々なダイアルチェンジや素材追加をしながらロングセラーモデルとして現行ラインナップにしっかり踏みとどまっている。
現在ノーチラスシリーズ以外で同系列のエンジンを積むのは、年次カレンダー搭載フライバック・クロノグラフRef.5960及びその派生モデルと言えるRef.5905と、ワールドタイムをモジュールで組み込んだRef.5930、昨年度の話題作アクアノート・クロノグラフRef.5968の4品番になる。今回気づいたが全品番が例外なく59で始まっている。

他の手巻クロノグラフキャリバー2種と異なり、この現代的設計の自動巻クロノグラフエンジンは、いわゆる"シリーズ生産"と呼ばれ、工場のラインである程度量産が可能なムーブメントとしてデビューした。それなりの数量が生産されていると思われるが、どの搭載モデルもそんなに入荷が良いわけではない。特にノーチラスに関しては、スポーティーな外見とクロノグラフ機能のマッチングが良いために人気が有りすぎるのか、お客様注文でないと入荷が見込めない状況が続いている。
_DSC9583.png
天才時計デザイナー、チャールズ・ジェラルド・ジェンタによる防水性能を考え抜いたユニークなケース構造に加えて、表面仕上げの切りかえによる光と影の演出。優美でエレガントなポリッシュ仕上げ、武骨で粗野なサテン仕上げ。両者がダイナミックに絡むケースの造形には色気が漂い、多くのノーチラスファンを悩殺してきた。
先にも触れたように、この時計の初出はノーチラス発売30周年である2006年に遡る。現行のノーチラス各メンズモデルはこの時のフルモデルチェンジにより始まった5000番代の系譜となる。それまでの3000番代系でのコンプリケーション搭載モデルは、テストマーケティング的だと個人的に思っている2005年度一年限りで終わったプチコンRef.3712/1Aを除けば、30年間パワーリザーブしかなかった。大半の方が一本入手すれば満足できたノーチラスシリーズが、このフルモデルチェンジを境に最初のノーチラスを何にするのか。その次はプチコンなのか年次カレンダーなのか、その次はクロノグラフ系にするのか、はたまた永久カレンダー・・と選択枝が次から次へと増えて来た。
2006年以前の第一世代も需給バランスは崩れ気味で人気は高かったが、第二世代になってモデルバリエーション増加に伴い、シリーズ全体での生産個数も増えているはずなのに需給バランスの崩れは年々酷くなっている気がする。
_DSC9590.png
ケースの厚さは12.2mmある(画像は上が裏蓋側)。ノーチラスは特殊なジェムセットタイプを除いて3針(8.3mm)、プチコン(8.52mm)、永久カレンダー(8.42mm)のケース厚8mm台の薄型グループと、11mm超の年次カレンダー(11.3mm)、クロノグラフ(12.2mm)、トラベルタイム・クロノグラフ(12.53mm)のグループとに個人的に分けている。
ジェンタが追求した着け心地の良さを実現するデザイン。すなわちケースとブレスの薄さと防水性・堅牢性の両立を手首で体感できるのは8mm台の薄型グループに軍配が上がる。他方は見るからにメカメカしく引き付けられる顔と存在感があるが、それと引き換えにする代償も或る。
_DSC9601.png
12時側と6時側が非対称な両観音バックルの接写は、ため息が出るほどセクシーな絵になる。バックルへのエングレーブを有するモデルは少ないが殆どが"PATEK PHILIPPE"であり、シリーズ名を採用しているのはノーチラスだけだ。何だかとても依怙贔屓のように感じてしまうのだが・・
尚、画像中ほどの赤い半月形のものはキズ防止用の保護シールである。
_DSC9603_d.png
付属品はこちら、ケースサイド8時位置辺りにある日付調整コレクター(プッシュボタン)の調整用ピンとノーチラス用コンポジットストラップとその収納ケース。ストラップの付け替えは、よほど腕に自慢の方以外は正規販売店にお持ち込みください。

Ref.5980R-001
ケース径:40.5mm(10時ー4時方向)
ケース厚:12.2mm 防水:12気圧
ケースバリエーション:RGのみ 他にRGブレスSS/RGブレス仕様有 
文字盤:ブラック・ブラウン、蓄光塗料付ゴールド植字インデックス
ストラップ:マット(艶無) ・ダークブラウン アリゲーター
価格:お問い合わせください

尚、このクロノグラフには主時計の秒針が無い。非常に優れた垂直クラッチ方式でクロノグラフ作動時に殆どトルクロスが無い為に、文字盤センターのクロノグラフ秒針を作動させ秒針と兼用する事が可能とされている。個人的には6時側のクロノグラフの30分と12時間の同軸積算計が連動するので少し引っ掛かりがある。
下のムーブメント画像撮影時に今まで気付かなかったパーツを見つけた。11時半頃のセンターとサファイアガラス外周部の真ん中辺りに特徴的な歯数の少ないウルフティース(狼歯車)状の車だ。手巻きクロノグラフムーブだとシンプルな丸形がお決まりのパテックお得意のコラムホイールカバー(通称"シャポー"と呼ばれている物)にしては変な形状。スタート・ストップのプッシャー操作時には、連動して動くのだが回転をしている様には見えない。確認してみたら、むき出し状態のコラムホイールとの事だった。前衛的なムーブメントに合わせて斬新な形状が採用にされたのかもしれない。
※6/3加筆、別個体のCH 28-520で再確認したところ普通に回転する様が見られた。やはり個体差が有るのだナァ。
知る限りコラムホイール(ピラーホイールとも)は文字盤側にウルフトゥースが有って、その歯車に乗っかる形で裏蓋側にピラーが円状に立ち並び、ピラーとレバーの挙動を裏スケルトンから見る楽しみがある。このムーブメントではどうも天地が逆にセットされている様だ。

_DSC9591.png


Caliber CH 28-520 C/552 フルローター自動巻フライバック・クロノグラフムーブメント コラムホイール、垂直クラッチ採用

直径:30mm 厚み:6.63mm(ベースキャリバー5.2mm、カレンダーモジュール1.43mm)
部品点数:327個 石数:35個 
パワーリザーブ:最低45時間-最長55時間(クロノグラフ作動時とも)
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

文責、撮影:乾



何度か取り上げているブレスレットサイズ微調整用の1.5駒。英語では"エクステンションリンク"なので文字通りは"延伸駒"とでも言うべきか。画像はメンズ・ノーチラスの1.5駒の2種。同じもの2個ではありません。さあ問題!この2つの違いは何でしょう?
_DSC9604.png
因みにサイズは全く同じです。また右側表面に極細の筋目が有るように見えますが実際には差がありません。まずは当店スタッフに回答を求めたら、意外に殆どゼンマイ知識のない事務系も含めた女性陣は的確に違いを指摘。ウンチクたっぷりで時計大好きメンズは頭を抱えて「微妙にサイズが違う」とか「なんちゃら、かんちゃら」・・・変な先入観無しに物だけを素直に観察した『無心の勝利』。それとも『女性の直感は鋭い!』と言う事か。怖い怖い。
ではヒントです。パーツ品番は"H994.A384E.A0B"と"H994.A384D.G0B"。
ヒントその2、税抜き価格は23,000円と102,000円。
ヒントその3、重さ(パッケージ込)は5グラムと7グラム。手元のはかりがショボ過ぎて小数点以下が量れません。
ファイナルヒント、よーく色目を見比べてください。
もうお判りですね。左はステンレススチールSS、右が18金ホワイトゴールドWGという素材違いでした。自然光に近い光源で見ると明らかに色目に違いがある。WGは少しだけ柔らかい黄味が入っている。
24金はゴールド(元素記号Au)100%、18は24の75%なので18金WGもAuが主成分であり様々な白色金属(銀、パラジウム等)を25%混ぜても完全な銀色には成らない。そこで古くから白色金属のロジウムを分厚くメッキする事で銀色の表面を得ていた。詳しいレシピや製法はどのブランドも企業秘密なので良く解らないが、近年パテックでは18金WG素材自体を実に良好な銀色に仕上げる事に成功している。その結果、現在は一部のジュエリーウオッチを例外として、殆どのWGモデルにロジウムメッキはされていない。
1.5駒はSSなら東京のパテック フィリップ ジャパンに在庫がある事が多い。しかし客注だったWGは、ほぼ3ヶ月の納期が必要だった。ただしRef.5740/1Gノーチラス永久カレンダー用で従来定番モデルに無かった新たな素材設定だった為にスイスのパテック社でも新規製作とストックが必要なパーツだった事が、少し長かった納期の理由かもしれない。
ストラップやバックル等のスイスオーダーの納期は、意外にも思っているより短い傾向がある。特にスイスに在庫がある場合は、タイミング次第で翌々週着荷なんて事もあったりした。
_DSC9612.png
中駒をサイドから見るとSSの無垢に対して、WGは中空になっている。一見コストダウン?を考えるが、恐らく軽量化が主な目的だと思われる。肉抜きで得られる金のリストラ費用なんて知れているだろうし、切削加工の際に出てくるオイルまみれの削り屑から油を落として炉で溶かして・・というコストは結構なものだろう。このWGの駒が取り付けられるノーチラス永久カレンダーは205グラム、その遺伝子とも言うべきノーチラス発売40周年記念限定のジャンボサイズWGクロノグラフRef.5976/1Gが312グラムもあった。この辺りまでヘビー級になれば面倒な肉抜き工程も必要なのだろう。
ただ画像で解るように肉抜き量はそんなに多くない気がする。折角の軽量化ならばもう少し削っても良さそうだが、実用性を重んじ堅実なパテックならではの強度絶対主義なのだろう。
5740side_b.png
これは全くの私見になるが、ノーチラス永久カレンダーは全23駒を無垢駒仕様に変更しても300グラム以下には余裕で収まると思う。紳士用メタルブレスで300グラム以下は重過ぎるという事は無い。もしコスト的にもあまり変わらないのであれば無垢駒仕様の方が多少重くても購入者に対して受けが良さそうな気がする。しかしながらパテックは時として面倒かつ嫌われる道をも選ぶ孤高のブランドなのだろう。
あくまで個人的な感覚でのサイズ調整用1.5駒の必要性だが、ノーチラスご購入者では三人に一人はお奨めしている気がする。1駒のサイズが更に大きいアクアノートSSのRef.5167/1Aでは二人に一人だろうか。ノーチラスもその弟分アクアノートもケースとブレスの薄さが生み出す装着感の心地良さが最大の魅力だと思っているので、サイズ調整には出来うる限りの事をさせて頂きたい。その為に当店ではノーチラスSSメンズ1.5駒に限って常時在庫を心がけている。それ以外は時計そのものの年間入荷数が僅かなので必要に応じて取り寄せ対応としている。

注:駒や時計の重量は全て当店への納品実機測定値であり、パテック フィリップ社からの提供値ではありません。

文責、撮影、計量:乾


_DSC9455.png
ノーチラスの撮影はいつも簡単。ほんとに早い。ケースとブレスにサテン仕上げが多くて映り込みが非常に少ない。文字盤も微妙にマット調の仕上がりなので何も工夫せずともしっとりと美しく写ってくれる。上の画像も下の少し寄り気味にしてダイアルのグラデーションを少し表現したカットも埃の除去以外は、全く画像修正をしていない。もちろん時計そのものが抜群に美しく、素晴らしいブルーカラーがあってこそなのは言うまでもない。ちなみに画像中央下部の青い奇妙な映り込みはバックルの保護シール。

パテック社の期初は2月からなので今期の初荷が、待ちに待ったノーチラスの永久カレンダーだったのは何とも喜ばしい。本来は昨年のニューモデルなので、前期末の1月末までに入荷予定だった。しかし入荷状況が非常に悪いとはPPJからは聞いていたので、ご注文者様にもしばしのご辛抱をお願いしていた。結果的には10日程度の納期遅れでの入荷となった。
ところが残り物には副が有るようで、このたったの数日の遅れには小さなサプライズが付いてきた。チョッと此処には書けないが、店頭でならお相手次第ではお話出来るかも。
_DSC9461.png
このモデルの遺伝子は3年前のノーチラス発売40周年に当たる2016年に記念限定でリリースされた2モデル。すなわちWG素材でジャンボサイズが採用されたフライバッククロノグラフRef5976Gとノーマルサイズでプラチナ素材の3針モデルRef.5711/1Pの両モデルと全く同一な文字盤色となっている。上の画像では人気のSSノーチラス5711と5712のブラックブルーダイアル程ではないがブルーの濃淡がハイライトとシャドウに浮いて出ており魅惑的な表情を見せている。
さて複雑機能を備えている事とWGでの同一素材という点で今回の永久カレンダーモデルは、3年前の限定クロノグラフモデルにより近しいと言える。しかしながら決定的に違うのはそのケースサイズである。クロノグラフはセンターローター自動巻機構と垂直クラッチ方式でクロノグラフへトルクを伝達するスタイルが採用された厚み(6.63mm)のあるCal.CH28-520が搭載された。結果ケースの厚みも12.16mmとノーチラスでは最厚に近い厚みが有った。さらに定番のクロノグラフ5980系が機能付きノーチラスの主要サイズである40.5mmに収まっているのに、敢えて44mmというジャンボサイズにアップサイジングされた。かくして312グラムという筋トレにも使えそうなヘビー級の時計が出来上がった。これに対して5740はグランドコンプリケーションにもかかわらず40mm径というシンプル系ノーチラスと同サイズが採用された。さらに驚くのはその厚みで、シリーズ最薄モデルの3針5711にたった0.12mm加えただけの8.42mmに仕上げられている。これは従来の永久カレンダーモデルにも多用されている極薄ベースキャリバーCal.240の貢献が大きい。この22金のマイクロローター方式の名キャリバーの設計は1977年にまで遡り、40年以上もパテックコレクションの主要エンジンとして現役バリバリである。パテックムーブメントには本当に長寿命のものが多い。

このCal.240ベースの永久カレンダームーブは通常ケースサイドにあるコレクターと呼ばれるプッシュボタンで各カレンダーの調整を行う。下図の左が従来のラウンドケースの永久カレンダー。四か所にプッシュボタンA~Dがあるが、C,Dのボタンは曜日と日付ディスクの直近にあってアクセスが非常に良さそうだ。A,Bは対応する日付と月・閏年ディスクから離れてはいるがプッシュボタンを押す方向はムーブメント内側に向かっている。
corrector.gif
右のノーチラスケースではその独特なケース形状から9時位置の曜日調整のCボタン以外の三つのボタンは、ブレスレットの付け根付近にリプレースされている。さらにBボタンの矢印のようにあくまでプッシュ方向はケース面に垂直にせざるを得ないのでムーブメントの外縁辺りしかアクセスしえない。パテックはこれを解決するために直線的にディスクへ直接アクセスするのではなく、途中で方向転換する為の特殊な伝達機構を設けてこの問題を解決したようだ。恐らくこのニューモデルの納期が、遅れ気味になったのはこの調整部分の作りこみに手間と時間を取られたのではないかと思っている。
5740side.png
左が9時側、右がリューズ側のケースサイドビュー。コレクタープッシュボタン位置とケースとブレスレットの薄さに注目。3針モデルの5711/1Aと見た目に違いが無い。ちなみに同じベースキャリバーCal.240にパワーリザーブとムーンフェイズを乗せた人気モデルの"5712通称プチコン"のケース厚は8.52mm。カムやらレバーやらメカメカしい大道具が詰め込まれたモジュールが組み込まれた永久カレンダーの方が僅かながら0.1mmケース上で薄く仕上がっているのが凄い。さらに言えば現行のパテックフィリップ永久カレンダーラインナップで最薄モデルである。今年生産中止が発表されたクッションケースのRef.5940の8.48mmがそれまでのチャンピオンだったが、僅かながらそれを凌いでいる。スポーティなスタイリングや防水仕様から何となく骨太で厚みもありそうな印象をノーチラスは漂わせているが、ジェンタ考案の耳付き構造ケースは薄いムーブを究極に追い込んで包み込んでしまうようだ。
さて、一昨年(たぶん)迄はパテックの永久カレンダーには通常モデルのコレクションボックスではない少し大きめのワインダー内蔵タイプのボックスが用意されていた。昨年度からはこのボックス型ではない専用の独立したワインダー(SELF-WINDER CYLINDER)が用意されるようになった。
Silinder.png
交流電源ではなく単4リチウム/アルカリ電池を4本内蔵しておりその寿命は2500時間。フルローター自動巻キャリバー324ベースの永久カレンダーでは一日当たり960回転でおよそ2年で電池交換。巻き上げ効率で多少劣るマイクロローターのCal.240とR27ベースの場合は1日に1440回転となっているので、記載は無いが一年半という事になるのか。尚、出荷段階のデフォルト設定は1440回転で、本体のスイッチはスタートのオンオフだけしかできない。324ベースキャリバー用の960回転への設定変更は、スマートフォンにAPPまたはグーグルプレイから"PP Cilinder"のアプリをダウンロードし、ブルートゥースを介して操作することになる。個人的には何で此処だけ急にデジタルチックにするのかが不可解である。単純に切り替えスイッチ一個で済ませば良いのに・・まあ個人所有のスマホには既にアプリはダウンロード済みではあります。いやいや、永久カレンダーは持っていません。あくまでお客様サポート用です。

今回はご購入のお客様のご了解を得て、実機撮影が叶い記事も書けた。本当に感謝しております。ありがとうございました。
尚、かなりの高額商品にも関わらず顧客様のウエイティングがそこそこ有って、ご新規様の新たなご予約は困難な状況です。ご販売を必ずしもお約束出来ないご登録は店頭でのみ受けております。悪しからずご了承ください。

Ref.5740/1Gー001 自動巻永久カレンダー
ケース径:40mm ケース厚:8.42mm(永久カレンダーラインナップ中最薄、2019年2月時点) 
防水:60m 重量:205g
ケースバリエーション:WGのみ 
文字盤: ブルー サンバースト 蓄光塗料塗布のゴールド植字インデックス
バックル:ニュータイプ両観音クラスプ
裏蓋:サファイアクリスタルバック ※ノーマルケースバックは付属しません。
付属:セルフ-ワインダー シリンダ―(自動巻き上げ機)
価格:お問い合わせください

_DSC9470.png
肉眼だと
並べなければステンレスとの色目の違いが解りづらいが、画像撮影すると結構な黄味を帯びていることがわかる。個人的にはステンレスやプラチナのピュアな銀色と違って温かみがある色だと思っている。永久カレンダー機構は総て文字盤側に組まれているので、スケルトンバックから望むのはCal.240の見慣れた後ろ姿だ。

Caliber 240 Q 

直径:27.5mm 厚み:3.88mm 部品点数:275個 石数:27個 受けの枚数:8枚
パワーリザーブ:最低38-最長48時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:21,600振動 
ローター:22金マイクロローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

撮影、文責:乾

インスタグラムアカウントinstagram作成しました。投稿はかなりゆっくりですが・・

気がつけば平成で始まる最後の新年がもうそこまで・・例年の事と言いながら本当に年々過ぎ去る速度が速くなる。時の流れに携わる生業でありながら逃げるものを追い駆けているような気分に捉われる事しばしばである。そんなことだからブログもインスタも頻繁に空転期間が空いてしまう。
_DSC9336.png
さて、相変わらず人気の続くノーチラスシリーズ。最近はステンレスだけではなく素材や機能を問わずに人気が拡大しアクアノートも含めて不人気モデルが探せない状態である。正直言って加熱し過ぎ感が強い。
当店にはレアな旅行者のお客様も国籍を問わず全く同じ傾向にある。中国本土を例とすると現在2店舗(上海、北京)が正規店舗だが、非正規も含めてもう本当に手配が絶望的らしい。人口に対しての供給量のバランスが悪いのかもしれない。
さて、今回紹介はそんなレアノーチラスの中でもレア素材であるステンレス製年次カレンダーのブレスレットモデルRef.5726/1Aで文字盤は白(シルバリィホワイト)。強いて言えば人気はグレー(ブラックグラデーテッド)の方が高いのだが3針の5711同様に若々しさや清潔感が強く別モデルに見えてしまう。
グレーに設定があるレザーストラップモデルが白文字盤には無くステンレットブレスレットのみ用意されている。またメンズではステンレス素材のみの展開はこの年次カレンダーとトラベルタイムフライバッククロノグラフRef.5990の2モデルのみとなっているのも興味深い。
ちなみに当店では少し値の張る5990の方がチョッと人気が高い。ただカラトラバケースに収まったダブルギッシェ(12時下方に左右横並びに曜日と月がレイアウト)スタイルの年次カレンダーモデルRef.5396を愛用する我が身としては親しみを感じざるを得ない可愛いノーチラスである。
でもノーチのアイコンともいえる横ボーダーと角の取れ切ったひょうひょうとした八角形の緩いケース形状(個人的には"ナマズ顔"と密かに思っチョります)に収まりますと同じ時計が此処まで違う表情になってしまう面白さ。「似て非なるもの」では無く「似ずして同じもの」と言えばよいのだろうか。
_DSC9339.png
くどい程語ってきたノーチラスの魅力"薄さが実現する装着感"、流石にフルローター自動巻きCal.324ベース(厚さ3.3mm)に年次カレンダーモジュールを積み重ねて仕上がりムーブ厚5.78m、ケース厚11.3mmは3針の5711より3mm厚くなっている。ピンが覗く調整駒の厚みは全てのノーチラス(5990でさえも)で共通であり、シリーズ最薄の3針5711は見た目(実寸は?未検証の為)ケース側まで全駒が同厚であるのだが、5726ではケース側から5コマ目あたりはテーパーしながら厚みを減じているように見える。
「たかが3mm、されど3mm・・」両者の装着感は明らかに異なる。異なるが個人的には許せると言うかノーチラスの装着感自慢を実感できるレベルに充分収まっていると思う。明らかにシリーズ最厚のRef.5990の12.53mmケース厚とは着けた感は別物になっている。
フルローター自動巻をベースとしながら、ただでさえ厚みを食う垂直クラッチのフライバッククロノグラフとトラベルタイムと言うダブルファンクションを重ねれば当たり前の事で、むしろ良くこの厚さにまとめたパテックの技術力に脱帽かと思う。勿論この事は若干薄い年次カレンダー5726ではより顕著となる事は言うまでもない。
横顔の比較写真はRef.5990の過去記事よりどうぞ。

Ref.5726/1A-010

ケース径:40.5mm(10時ー4時方向) ケース厚:11.3mm 
防水:12気圧
ケースバリエーション:SS(白文字盤) SS(グレー文字盤) SS(グレー文字盤ストラップタイプ) 
文字盤:シルバリィホワイト 夜光付ゴールド植字インデックス
ブレスレット:両観音クラスプ付きステンレス3連ブレス 抜き打ちピン調節タイプ
価格:お問合せ下さい

Caliber 324 S QA LU 24H/303

直径:33.3mm 厚み:5.78mm 部品点数:347個 石数:34個 受け:10枚 
パワーリザーブ:最低35時間~最大45時間
テンプ:ジャイロマックス 髭ゼンマイ:Spiromax®(Silinvar®製)
振動数:28,800振動 
ローター:21金ローター反時計廻り片方向巻上(裏蓋側より)

PATEK PHILIPPE 公式ページ

文責:乾

在庫状況:11月20日時点あり




ここのところ毎日のようにPPJから通達が来る。日によっては山のように来る。しかも部署が違えば別便で来る。たまに同じ部署でも通達封筒の準備時間のズレなのか?別便で来たりする。恐らく少数精鋭過ぎて梱包しなおしたり、正規店30ドアのトレイをオフィス内の何処かに作り、各部署がほり込んで、集荷30分前にその日の専任担当が一気に梱包するなんて事やってられないのだろう。
お客様を今か?今か?と待ち続けている当店なら三日分位まとめて別店やお取引先に送らないと、ヤマトさんも郵便局さんも値上げラッシュの昨今、私の飲み代が出ません。

で、昨日は久々にたまった実機ブログネタを後回しせざるを得ない、例年恒例の通達をネタに3時間かけて書き上げたものが、ケアレスミス?で跡形も無く消え失せ、今朝から超ブルーな乾です。テンション上げてもう一回書きなおそうかと思っていた矢先、来ました又してもの嫌な予感の宅急便。
中身はたった2日前にFAXで今月26日頃決定通達となっていたノーチラス2モデルの超特急価格決定のご通達。

ノーチラスSS3針モデル
Ref.5711/1A-010&011 3針ブラックブルー及びシルバリィホワイト
ノーチラスSSプチコンプリケーションモデル
Ref.5712/1A-001
※具体的な詳細価格はお問合せ下さい。
値上り率で言えばどちらも約13%程度で一昨日の20%とは大きく乖離している。これは何ゆえか?2月中旬に東京で毎年恒例の正規店の連絡会があるので、その際に理由がわかると予想している。個人的には各国や各エリアで上げ幅の調整があったのではないかと思う。何故かというと日本ほど正規販売店が、お行儀良く売っている国は無いと聞く。とても詳細は書けないが少数のお客様から他国の正規店での信じ難いご体験談を聞く事も有りますので・・

まあバーゼルに行けば少なくともスイスの価格は分かるが、設定価格を本当に知りたい国はアソコやアッコだったりなので・・・


まあ、後半は全くの私見による与太話です。今回は画像も無しの無味乾燥で失礼。

文責:乾

追記、さてこれで我々正規店と本当に所有・愛用を切望しておられる時計愛好者(特にパテックファンで既愛用者)の需給バランスがどれ位改善されるか?完全予測ながら3針は両色とも何ら変わらないと思う。プチコンは多少玄人筋の方々の動きが鈍る程度かと・・

インスタグラムアカウントinstagram&Facebookアカウントfacebook作成しました。ぜひフォローをお願い致します。中身はオヤジのよちよち歩きですが・・・

Pagetop

カサブランカ奈良

〒630-8013 奈良市三条大路1-1-90-101
営業時間 / AM11:00~PM7:00
定休日 / 水曜日・第一木曜日
TEL / 0742-32-5555
> ホームページ / http://www.tokeinara.com/

サイト内検索